説明

被覆鋼管の自動溶接装置及びその接続方法

【課題】 同一の装置で鋼管本体の溶接処理と保護シート層の溶着処理とを行うことができる被覆鋼管の自動溶接装置を提供する。
【解決手段】 鋼管本体2の外周面が樹脂を主体とされた被覆層4により覆われた被覆鋼管の端部同士を溶接し、その後、保護シート層10で覆って防食保護する被覆鋼管の自動溶接装置において、前記鋼管本体の端部同士の溶接と前記被覆層と前記保護シート層との溶着とを行う溶接手段22と、前記溶接手段を前記被覆鋼管の軸心廻りに回転させる回転手段24と、前記溶接手段を前記被覆鋼管の軸心方向に沿って移動させる水平移動手段26と、装置全体の動作を制御する制御手段28とを備える。これにより、同一の装置で鋼管本体の溶接処理と保護シート層の溶着処理とを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管本体の外周面が樹脂を主体とした被覆層で被覆された被覆鋼管同士を接続する自動溶接装置及びその接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、地中に埋設されるガス配管としては、地中に埋設された後の配管の腐食を防止するために、表面をポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のオレフィン系樹脂などの被覆層で被覆してなる被覆鋼管が使用されている。
この被覆鋼管同士を接続する場合、図8に示すように、被覆鋼管2の端部を覆う樹脂を主体とした被覆層4を所定の長さだけ剥離して鋼管本体6を剥き出しにしてから溶接される。溶接された接続部8が剥き出しにされた鋼管本体6の表面に防食機能を備えた保護シート層10で被覆して該接続部8を気密状態にすることが行われている。この方法としては、従来、溶接後に周囲の被覆層4を含むように接続部8の周りに熱収縮性のシートまたはチューブよりなる上記保護シート層10を巻回して設け、この保護シート層10をガスバーナ等で人手により加熱することで収縮させて接続部8に密着させ、この接続部8を被覆するようにした方法が採用されてきた。
【0003】
この方法は、現場で簡易に施工できるという利点はあるものの、鋼管の溶接、ならびに保護シート層10の加熱を人手で行うため、作業に長時間を要すると共に、保護シート層10においては加熱の均一性に欠ける場合があり、保護シート10の密着度が低下するという問題があった。
【0004】
この問題を解決する方法の一例が下記特許文献1〜3に提案されている。例えば特許文献1においては、自動検査から自動溶接までを一人の作業員で一貫して実施することを可能にした全自動溶接装置が開示されている。この自動溶接装置においては、鋼管の管端把持機構を複数の棒を平行に並べた連結バーで結び、その上に移動可能な検査・溶接ヘッドを設けている。そして、回転部に突き合わせた開先間の空隙と見かけの軸のズレとの検査を行うための開先検査センサと、TIG溶接トーチを取り付けて、突き合わせた鋼管の自動溶接を一人の作業員で一貫して実施するようにしたものである。
【0005】
また特許文献2においては、レーザ溶接機を用いて薄肉配管の全姿勢溶接を行う点が開示されている。このレーザ溶接機にあっては、回転駆動手段に、レーザ溶接手段と位置検出手段とを設け、突き合わせ溶接継手部の位置認識を行った後、溶接時にはその位置情報に基づいて位置制御機構及び回転駆動手段を制御しながら、レーザ溶接手段により継手溶接を行うようになっている。
また特許文献3においては、透明な被覆部材をパイプ形状品にレーザ光で接合するようにした接続方法が開示されている。具体的には、レーザ光に対して吸収性を有するパイプ形状品をレーザ光に対して透過性を有する継手に挿入し、この継手側からレーザ光を照射して両者を熱溶着するようになっている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−334564号公報
【特許文献2】特開平10−94889号公報
【特許文献3】特開2004−90628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記した特許文献1〜3に開示された溶接方法或いは溶接装置では以下のような問題があった。すなわち、特許文献1、2に開示された溶接装置では、溶接機を用いて溶接工程を行った後に、熱収縮チューブ等の保護シート層を用いて防食工程を行う際、これを実施するために管端把持機構などを取り外す作業を行わなければならず、全体の施工時間が長くなってしまう、という問題があった。
【0008】
また特許文献3に開示された接合装置では、配管と接合するために例えば特許文献1、2に開示されたような自動溶接装置を用いなければならず、従って、鋼管溶接工程と保護シート層を溶着する防食工程とで、それぞれ別装置の組み付け、段取り替えが発生し、施工時間の全体が長くなってしまうのみならず、溶接用装置と防食用装置の2種の装置を揃えなければならず、コストアップを余儀なくされてしまう、といった問題があった。
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、同一の装置で鋼管本体の溶接処理と保護シート層の溶着処理とを行うことができる被覆鋼管の自動溶接装置及びその接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、鋼管本体の外周面が樹脂を主体とされた被覆層により覆われた被覆鋼管の端部同士を溶接し、その後、保護シート層で覆って防食保護する被覆鋼管の自動溶接装置において、前記鋼管本体の端部同士の溶接と前記被覆層と前記保護シート層との溶着とを行う溶接手段と、前記溶接手段を前記被覆鋼管の軸心廻りに回転させる回転手段と、前記溶接手段を前記被覆鋼管の軸心方向に沿って移動させる水平移動手段と、装置全体の動作を制御する制御手段と、を備えるように構成したことを特徴とする被覆鋼管の自動溶接装置である。
【0010】
このように、溶接手段に鋼管本体の端部同士を溶接する機能と、被覆鋼管の被覆層と保護シート層とを溶着する機能とを持たせるようにしたので、同一の装置で鋼管本体の溶接処理と保護シート層の溶着処理とを行うことができる。この結果、被覆鋼管の溶接の全工程を迅速に且つ短時間で行うことができる。
【0011】
この場合、例えば請求項2に規定するように、前記溶接手段は、20〜300Wの範囲内の出力でレーザ光を発振する低出力レーザ発振器と、2000W以上の出力でレーザ光を発振する高出力レーザ発振器とを有する。
また例えば請求項3に規定するように、前記高出力レーザ発振器はYAGレーザ素子を有する。
また例えば請求項4に規定するように、前記溶接手段は、前記鋼管本体との間でアークを発生させつつ溶接を行うアーク溶接部と、20〜300Wの範囲内の出力でレーザ光を発振する低出力レーザ発振器と、を有する。
また例えば請求項5に規定するように、前記低出力レーザ発振器は、半導体レーザ素子を有する。
また例えば請求項6に規定するように、前記保護シート層は、熱可塑性樹脂よりなる。
【0012】
請求項7に係る発明は、鋼管本体の外周面が樹脂を主体とされた被覆層により覆われた被覆鋼管の端部同士を溶接し、その後、保護シート層で覆って防食保護する被覆鋼管の溶接方法において、前記被覆鋼管の端部の被覆層を除去して前記鋼管本体を露出させる工程と、前記端部の露出された鋼管本体の端面同士を突き合わせる工程と、前記端面同士を突き合わせた状態で請求項1乃至5のいずれかに記載の自動溶接装置の溶接手段を前記被覆鋼管の軸心廻りに移動させて溶接を行う溶接工程と、少なくとも前記鋼管本体の露出された端部同士を掛け渡すように覆って前記保護シート層を設ける工程と、前記溶接手段を前記軸心廻りと軸心方向とに沿って移動させることにより前記保護シート層の両端部と前記各被覆鋼管の各被覆層とをそれぞれ溶着する溶着工程と、を有することを特徴とする被覆鋼管の接続方法である。
この場合、例えば請求項8に規定するように、前記保護シート層は、熱可塑性樹脂よりなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る被覆鋼管の自動溶接装置及びその接続方法によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
溶接手段に鋼管本体の端部同士を溶接する機能と、被覆鋼管の被覆層と保護シート層とを溶着する機能とを持たせるようにしたので、同一の装置で鋼管本体の溶接処理と保護シート層の溶着処理とを行うことができる。この結果、被覆鋼管の溶接の全工程を迅速に且つ短時間で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る被覆鋼管の自動溶接装置及びその接続方法の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る被覆鋼管の自動溶接装置を示す側面図、図2は自動溶接装置の動作状態を示す側面図、図3は自動溶接装置の正面図、図4は自動溶接装置の溶接手段を示す模式図、図5は被覆鋼管の接続工程を完了した時の状態を示す部分断面図、図6は本発明に係る被覆鋼管の接続工程を示す工程図である。
まず、ここで接続の対象となる被覆鋼管2は、図1、図6(A)及び図8に示すように、断面円形の鋼管本体6の外周面に樹脂を主体とした被覆層4により覆って形成されている。上記被覆層4は、ここでは上記鋼管本体6の外周に接着剤を介して被覆された例えばポリエチレンよりなる被覆膜4Aと、この上に被覆された例えばポリプロピレンよりなる包装膜4Bとの2層構造になされている。尚、この被覆層4は、上記材料及び2層構造に限定されない。
【0015】
そして、上記した被覆鋼管2の端部同士を接合する場合には、前述したように被覆鋼管2の端部の上記被覆層4を剥ぎ取って鋼管本体6を剥き出し状態とし、この剥き出し状態の鋼管本体6同士を溶接した後に、この部分を例えば熱可塑性樹脂よりなる保護シート層10で覆ってこれを熱によって溶着することになる。図1では、この保護シート層10は、例えばポリエチレンよりなる熱伸縮可能な防食シート10Aと、例えばポリエチレンよりなる保護シート10Bとの2枚構造になされている。尚、上記保護シート層10の熱可塑性樹脂としては上記ポリエチレン他に、例えばポリプロピレン、ポリブテン等を用いることができ、更に、熱可塑性樹脂に限定されず、熱によって溶融する気密性のある材料であるならばどのような材料でも用いることができる。
【0016】
さて、上述したような一連の溶接工程及び溶着工程を行うために本発明の自動溶接装置20が用いられることになる。次に、この自動溶接装置20について説明する。
図1〜図3にも示すように、この自動溶接装置20は、上記鋼管本体6の端部同士を溶接する溶接工程と、上記被覆層4と保護シート層10とを溶着する溶着工程との両工程を行う溶接手段22と、上記溶接手段22を上記被覆鋼管2の軸心X1の廻り(軸心廻り)に回転させる回転手段24と、上記溶接手段22を軸心X1の方向(軸心方向)に沿って移動させる水平移動手段26と、この装置全体の動作を制御する例えばマイクロコンピュータ等よりなる制御手段28とにより主に構成されている。
【0017】
具体的には、上記溶接手段22は、レーザ光を発振するレーザ発振部30と、溶接等の対象物にレーザ光を直接的に照射するレーザ照射部32とよりなり、両者はレーザ光を伝搬する光ファイバ34により連結されている。このレーザ発振部30は、図4に示すように、鋼管溶接用の高出力のレーザ光L1を発生する高出力レーザ発振器36と、樹脂溶着用の低出力のレーザ光L2を発生する低出力レーザ発振器38とを有している。上記高出力レーザ発振器36は、例えばYAGレーザ素子よりなり、例えば2000W(ワット)以上の高出力レーザ光L1を出力できるようになっている。他方、上記低出力レーザ発振器38は、例えば半導体レーザ素子よりなり、例えば20〜300Wの範囲内の低出力レーザ光L2を出力できるようになっている。
【0018】
上記各レーザ光L1、L2は選択的に出力され、偏光ビームスプリッタ等の光学素子40により一方向へ向けて出力され、集光レンズ42により集光されて光ファイバ34内へ伝搬させるようになっている。上記レーザ照射部32は、例えば図示しない対物レンズを有するレーザ照射トーチ44を有しており、これよりレーザ光を照射するようになっている。
【0019】
一方、上記回転手段24は、上記被覆鋼管2の周囲を囲むようにして取り付けられる円環状の案内レール46と、この案内レール46に摺動可能に装着されて軸心廻りに回転する方向のみに移動できるベース部48と、このベース部48に設けられて上記ベース部48を軸心廻り方向へ移動させる回転駆動部50とよりなる。上記案内レール部46は、図3にも示すように、円弧状に2ツ割りになされて、被覆鋼管2の外周に着脱自在になされている。具体的には、この案内レール部46には、その周方向に沿って複数、図示例では6個の短い支柱52が略等間隔で配置されており、各支柱52の内周側面が、被覆鋼管2の外周面に直接接触して支持されるようになっている。
【0020】
そして、この案内レール46の外周面に沿って円環状にラック54が設けられている。そして、このラック54には、上記ベース部48側に回動自在に支持されるピニオン56が歯合されると共に、このピニオン56は電動モータ58に連結されている。このピニオン56及び電動モータ58は、上記回転駆動部50を構成するものであり、このピニオン56を電動モータ58により回転させることにより、上記ベース部48を上記被覆鋼管2の軸心X1廻りに移動できるようになっている。
【0021】
そして、上記ベース部48には、上記水平移動手段26の一部を構成する水平移動部60が設けられている。この水平移動部60には、水平方向へ前進及び後退可能になされた支持ロッド62が挿通されており、この支持ロッド62の先端部に、上記レーザ照射部32が取り付けられている。この支持ロッド62と上記レーザ照射部32との接合部には、軸心X1の方向(半径方向)へスライド移動可能とするスライド機構64が設けられており、上記レーザ照射部32を被覆鋼管2の半径方向へ移動させて、レーザ光の焦点調整を行い得るようになっている。
【0022】
また上記レーザ照射部32の図1中の下端側部には、一対の押圧部材66が互いに僅かな間隙を隔てて設けられている(図3参照)。この押圧部材66は、圧縮バネ(図示せず)により軸心X1方向へ押圧されて回転可能になされたローラ68を有しており、上記被覆鋼管2の表面と接触してこれを軸心X1方向へ押圧しつつ周方向へ転動し得るようになっている。そして、この装置全体の動作は、例えばマイクロコンピュータ等よりなる制御手段28(図1参照)により、制御されることになる。
【0023】
次に、以上のように構成された自動溶接装置を用いて行われる本発明に係る被覆鋼管の接続方法について説明する。
まず、上記自動溶接装置20の基本的な操作について説明する。
溶接エネルギーを発生するには、溶接手段22のレーザ発振部30にてレーザ光を発生させるが、この場合、鋼管本体6同士を溶接する時には、高出力レーザ発振器36から高出力レーザ光L1を出力し、また保護シート層10等の樹脂同士を溶着する時には低出力レーザ発振器38から低出力レーザ光L2を出力し(図4参照)、これを光ファイバ34内を伝搬させてレーザ照射部32のレーザ照射トーチ44より接続対象箇所に向けて放射する。
【0024】
またこのレーザ照射部32を軸心X1の方向、すなわち被覆鋼管2の長手方向に沿って移動させる場合には、図1に示すように水平移動手段26の水平移動部60を駆動させることにより、支持ロッド62を水平方向へ前進、或いは後退させることにより行う。また、接続対象箇所に向けて放射するレーザ光の焦点位置を調整するには、上記支持ロッド62の先端部に設けたスライド機構64を駆動することにより、上記レーザ照射部32を被覆鋼管2の半径方向へ移動させて焦点位置調整を行う。
【0025】
更に、上記レーザ照射部32を、被覆鋼管2の周方向、すなわち軸心X1廻りに移動させるには、回転手段24の回転駆動部50における電動モータ58を回転駆動する。これにより、この電動モータ58によって回転されるピニオン56が、上記被覆鋼管2の外周に沿って配設しているラック54に沿って移動し、この結果、ベース部48及びこれに支持ロッド62を介して支持されているレーザ照射部32が一体的に被覆鋼管2の周方向に沿って移動するようになっている。
【0026】
次に、被覆鋼管2同士の実際の接続工程について説明する。図5は被覆鋼管の接続工程を完了した時の状態を示しており、2本の被覆鋼管2の端部の、被覆膜4Aと包装膜4Bとよりなる被覆層4が剥ぎ取られ、端部同士が突き合わせ溶接された後に、この部分を防食シート10Aと保護シート10Bとよりなる保護シート層10により覆い、上層の保護シート10Bを下層の樹脂と熱溶着して接合している。従って、保護シート10Bの両端と被覆膜4Aとの両端の溶着部72Aができることになる。
【0027】
次に、図6に示すフローチャートを参照して上記接続工程の具体的工程について説明する。まず、図6(A)に示すような接続すべき被覆鋼管2を2本用意し、図6(B)に示すように、この被覆鋼管2の端部の被覆層4を所定の長さだけ剥がして鋼管本体6を剥き出し状態とする。
【0028】
次に、図6(C)に示すように、端部が剥き出し状態になされた被覆鋼管2の鋼管本体6の端部同士を突き合わせ、この被覆鋼管2に前記自動溶接装置20を装着し、この状態で上記突き合わせ部分に沿って軸心X1廻りにレーザ照射トーチ44を移動させつつ高出力レーザ光L1により端部同士の溶接を行う。これにより接合端部に沿って溶接部74が形成される。このような溶接には、前述のように2000W以上のレーザ光L2を用いればよく、例えば3500Wのレーザ光を用いて1m/minの速度で、厚さ6mmの鋼板溶接ができる溶接装置がすでに知られており、最大10mm程度の厚さの鋼板も溶接することができる。
【0029】
上述のように、鋼管本体6同士の溶接が完了したならば、図6(D)に示すように、被覆層4の内の内周側に位置する被覆膜4Aよりもこの外周側に位置する包装膜4Bの方を長く剥ぎ取り、段部状の断面形状とする。
そして、図6(E)に示すように上記溶接部74を覆うようにして保護シート層10の一部である防食シート10Aを設ける。この防食シート10Aの両端部は、上記被覆膜4Aの端部と重ね合わされるような状態となっている。そして、この防食シート10Aの両端部には、例えば自己融着テープ(図示せず)が巻き付けられて、その下層と接着されている。
【0030】
この防食シート10Aとしては、例えば予め内側にブチルゴム等を塗布した熱伸縮性を持つチューブ状のポリエチレン等を用いることができ、このチューブ状のポリエチレンは溶接前に予め一方の被覆鋼管2の外周に仮に装着させておくのがよい。そして、上記した防食シート10Aは、上記溶接部74を覆うように装着された状態でバーナ等により焙ることによって熱収縮し、下層に密着状態になされる。
【0031】
次に、図6(F)に示すように、上記防食シート10Aの全体を完全に覆って保護シート層10の一部である保護シート10Bを設ける。この保護シート10Bは上記防食シート10Aよりも長くして、その両端部は、上記被覆膜4Aと重ね合わされるような状態とする。この保護シート10Bとしては、ポリエチレンを用いることができる。
【0032】
次に、図6(G)に示すように、上記保護シート10Bの両端部を、レーザ照射トーチ44より放出される低出力レーザ光L2によって熱して溶融させ、この保護シート10Bと下層の被覆膜4Aとを溶着させる。この結果、上記保護シート10Bの両端部には溶着部72Aが形成されることになる。このような溶着には、前述のように20〜300Wの範囲の低出力レーザ光L2を用いればよい。このようにして、自動溶接装置20を被覆鋼管2から取り外して被覆鋼管2の接続作業を完了することになる。
【0033】
以上のように、溶接手段22のレーザ発振部30に高出力レーザ発振器36と低出力レーザ発振器38とを設けて、溶接手段22に鋼管本体6の端部同士を溶接する機能と、被覆鋼管2の被覆層4と保護シート層10とを溶着する機能とを持たせるようにしたので、同一の装置で鋼管本体6の溶接処理と保護シート層10の溶着処理とを行うことができる。この結果、被覆鋼管2の溶接の全工程を迅速に且つ短時間で行うことができる。
【0034】
尚、上記実施例においては、溶接手段22に、鋼管本体6の接続を行うための高出力レーザ発振器36を設けたが、これに代えてアーク溶接部を設けるようにしてもよい。図7はこのような溶接手段22の変形例を示す模式図である。図7では図4に示す構成部分と同一構成部分については同一符号が付されている。上述したようにここでは、高出力レーザ発振器36に代えてアーク溶接部80を設けているので、レーザ発振部30には、低出力レーザ発振器38だけが設けられている。
【0035】
また上記アーク溶接部80は、例えばMAG溶接やTIG溶接等を行うものである。アーク溶接部80として例えばTIG溶接を行う場合には、アーク溶接部80は、引き出される溶接ワイヤ82が巻回されて貯蔵される溶接ワイヤリール84と、アーク溶接トーチ86と、アーク電源88とを有している。上記アーク溶接トーチ86は、上記レーザ照射部32のレーザ照射トーチ44に隣り合うように並設して設けられており、溶接対象物との間でアーク90を発生させつつ上記溶接ワイヤリール84より送給される溶接ワイヤ82を溶融させて鋼管本体6同士を接続し得るようになっている。
また、上記実施例では、被覆層4と保護シート10は、共に2層構造になされているが、この層構造に限定されるものではなく、また、各構成材料についても、上記説明した材料に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る被覆鋼管の自動溶接装置を示す側面図である。
【図2】自動溶接装置の動作状態を示す側面図である。
【図3】自動溶接装置を示す正面図である。
【図4】自動溶接装置の溶接手段を示す模式図である。
【図5】被覆鋼管の接続工程を完了した時の状態を示す部分断面図である。
【図6】本発明に係る被覆鋼管の接続工程を示す工程図である。
【図7】溶接手段の変形例を示す模式図である。
【図8】被覆鋼管同士を接続する場合の状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
2 被覆鋼管
4 被覆層
6 鋼管本体
10 保護シート層
20 自動溶接装置
22 溶接手段
24 回転手段
26 水平移動手段
28 制御手段
30 レーザ発振部
32 レーザ照射部
36 高出力レーザ発振器
38 低出力レーザ発振器
44 レーザ照射トーチ
80 アーク溶接部
86 アーク溶接トーチ
X1 軸心


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管本体の外周面が樹脂を主体とされた被覆層により覆われた被覆鋼管の端部同士を溶接し、その後、保護シート層で覆って防食保護する被覆鋼管の自動溶接装置において、
前記鋼管本体の端部同士の溶接と前記被覆層と前記保護シート層との溶着とを行う溶接手段と、
前記溶接手段を前記被覆鋼管の軸心廻りに回転させる回転手段と、
前記溶接手段を前記被覆鋼管の軸心方向に沿って移動させる水平移動手段と、
装置全体の動作を制御する制御手段と、
を備えるように構成したことを特徴とする被覆鋼管の自動溶接装置。
【請求項2】
前記溶接手段は、20〜300Wの範囲内の出力でレーザ光を発振する低出力レーザ発振器と、
2000W以上の出力でレーザ光を発振する高出力レーザ発振器とを有することを特徴とする請求項1記載の被覆鋼管の自動溶接装置。
【請求項3】
前記高出力レーザ発振器はYAGレーザ素子を有することを特徴とする請求項2記載の被覆鋼管の自動溶接装置。
【請求項4】
前記溶接手段は、前記鋼管本体との間でアークを発生させつつ溶接を行うアーク溶接部と、
20〜300Wの範囲内の出力でレーザ光を発振する低出力レーザ発振器と、
を有することを特徴とする請求項1記載の被覆鋼管の自動溶接装置。
【請求項5】
前記低出力レーザ発振器は、半導体レーザ素子を有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の被覆鋼管の自動溶接装置。
【請求項6】
前記保護シート層は、熱可塑性樹脂よりなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の被覆鋼管の自動溶接装置。
【請求項7】
鋼管本体の外周面が樹脂を主体とされた被覆層により覆われた被覆鋼管の端部同士を溶接し、その後、保護シート層で覆って防食保護する被覆鋼管の溶接方法において、
前記被覆鋼管の端部の被覆層を除去して前記鋼管本体を露出させる工程と、
前記端部の露出された鋼管本体の端面同士を突き合わせる工程と、
前記端面同士を突き合わせた状態で請求項1乃至5のいずれかに記載の自動溶接装置の溶接手段を前記被覆鋼管の軸心廻りに移動させて溶接を行う溶接工程と、
少なくとも前記鋼管本体の露出された端部同士を掛け渡すように覆って前記保護シート層を設ける工程と、
前記溶接手段を前記軸心廻りと軸心方向とに沿って移動させることにより前記保護シート層の両端部と前記各被覆鋼管の各被覆層とをそれぞれ溶着する溶着工程と、
を有することを特徴とする被覆鋼管の接続方法。
【請求項8】
前記保護シート層は、熱可塑性樹脂よりなることを特徴とする請求項7記載の被覆鋼管の接続方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−334617(P2006−334617A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160652(P2005−160652)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】