説明

被覆電線および被覆電線の製造方法

【課題】耐摩耗性を向上させた被覆電線およびその製造方法を提供する。
【解決手段】他方の振動体2C,2Dの押出方向の端部2Cに嵌合されて他方の振動体2C,2Dにおける振動振幅が最大となる位置にダイス6の突出部61の端面61Aが配置されたダイス6のガイド孔65より被覆電線が引き出される。このため、ダイス6の突出部61の端面61Aの位置で超音波振動が最大の振幅となる。したがって、この端面61Aを通過する溶融樹脂14は、超音波振動の作用を最大限に受けて十分に軟らかい状態になり、ダイス6内壁との摩擦抵抗を低下させることができ、被覆電線Wの表面が平滑となり耐摩耗性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被覆電線およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被覆電線の絶縁樹脂としてはポリ塩化ビニル(PVC)が用いられてきた。近年では環境問題に対する配慮から、ポリ塩化ビニルはポリエチレン樹脂に置き換えられつつある。しかし、ポリエチレン樹脂は、押出成形に際して、その性質上メルトフラクチャーと呼ばれる成形品の表面荒れや、脈動を生じやすく樹脂被覆の耐摩耗性が低下するという問題がある。被覆電線において耐摩耗性は重要な特性であり、電線の細径化や樹脂被覆の薄肉化に対応して耐摩耗性を満足するためには、絶縁樹脂材料を高硬度化或いは高強度化する必要がある。特に、被覆電線の製造においては、樹脂被覆の表面を平滑化或いは高引落化することにより配向性を高めて高強度化を行う必要がある。従来、このような被覆電線の耐摩耗性を向上させるため、超音波振動を印加する押出成形装置が用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
図7に示すように、超音波振動を印加する押出成形装置100は、ヘッド101と、ヘッド101内に形成された貫通孔内に配置され、孔内側面との間に所定のクリアランスを介して樹脂流路を形成し、内部に導体109を挿通させるニップル102と、ヘッド101の後端側でニップル102が樹脂流路を形成するように嵌合された押出ブロック105と、押出ブロック105とニップル102との間の樹脂流路に樹脂110を注入する押出部106と、ヘッド101に結合された超音波振動部107などを備えて概略構成されている。ヘッド101の先端側には、ニップル102の先端部分を樹脂流路となるクリアランスを介して取り囲むように形成された押出成形部としてダイス103が挿入されている。ダイス103は、このダイス103の先端面に当接した状態で、ヘッド101の先端面から螺子結合するダイス支持部材104で固定されている。導体109に樹脂110が被覆された被覆電線Wは、ダイス103の先端面の開口部より連続的に繰り出される。
【0004】
図7に示すように、超音波振動部107の振動軸108は、ヘッド101に対して押出方向(ニップルの軸方向)と直交するように結合されている。そして、超音波振動に伴い、変位波形の振幅はヘッド101の先端面で最大となるように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3665790号公報
【特許文献2】特開2003−305709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の押出成形装置100では、ヘッド101の先端面において、被覆電線Wが取り出されるダイス103の先端面(開口部)は、ヘッド101の先端面よりも押出方向後側に位置する。このようにダイス103先端面がヘッド101の先端面よりも後側に位置する理由は、ヘッド101の先端部に螺子結合するダイス支持部材104の後側面でダイス103の先端面周縁を押さえているためである。したがって、実質的に被覆電線Wの取り出し口となるダイス103先端面は共振波形(変位波形)の振幅が最大値を示す位置から外れたものとなり、ダイス103先端面(開口部)内での樹脂の流動性が低くなる。このようにダイス103先端面(開口部)内での樹脂の流動性が低くなると、耐摩耗性が悪く樹脂材料の変更が必要となることがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、耐摩耗性を向上させた被覆電線およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の特徴は、押出成形装置を用いることにより、溶融樹脂供給部から供給される溶融樹脂を振動させながら押出方向に押し出して、押出方向に沿って供給される導線に溶融樹脂を被覆する被覆電線の製造方法であって、柱状の一対の振動体同士が直交した振動方向変換体の、一方の前記振動体の端部に振動を入力することにより、当該入力した振動を直交変換して他方の前記振動体の端部に出力させながら、導線を押出方向に沿って供給し、溶融樹脂供給部から樹脂を押出方向に押し出し、他方の振動体の押出方向の端部に嵌合されて他方の振動体における振動振幅が最大となる位置に押出方向の端面が配置されたダイスの押出口より被覆電線を引き出すこと要旨とする。
【0009】
ダイスの押出方向の端面は、他方の振動体の押出方向の端面と面一に設定されている構成としてもよい。通常、振動方向変換体の他方の振動体の押出方向の端面は、振動振幅が最大に設定されているため、ダイスの押出方向の端面を他方の振動体の端面と面一にすることが有効となる。
【0010】
ダイスは、ダイス支持部材により、他方の振動体の押出方向の端部に固定して支持されている構成としてもよく、ダイス支持部材は、ダイスに対して、このダイスの押出方向の端面より押出方向上流側に形成されたフランジ部で当接することが好ましい。
【0011】
本発明の第2の特徴は、押出成形装置を用いることにより、溶融樹脂供給部から供給される溶融樹脂を振動させながら押出方向に押し出して、押出方向に沿って供給される導線に溶融樹脂を被覆した被覆電線であって、柱状の一対の振動体同士が直交した振動方向変換体の、一方の振動体の端部に振動を入力することにより、この入力した振動を直交変換して他方の振動体の端部に出力させながら、導線を押出方向に沿って供給し、溶融樹脂供給部から樹脂を押出方向に押し出し、他方の振動体の押出方向の端部に嵌合されて他方の振動体における振動振幅が最大となる位置に押出方向の端面が配置されたダイスの押出口より被覆電線を引き出すことによって生産されること要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐摩耗性を向上させた被覆電線およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る被覆電線を製造するための押出成形装置の要部断面図である。
【図2】図1に示した押出成形装置に用いられるダイスの斜視図である。
【図3】図2III−III断面図である。
【図4】図1に示した押出成形装置に用いられるダイス支持部材の斜視図である。
【図5】図4のV−V断面図である。
【図6】従来例と実施例のスクレープ回数ならびに表面粗さを測定した結果を示す図である。
【図7】従来の押出成形装置を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る押出成型装置を用いた被覆電線の製造方法および被覆電線の詳細について図面を用いて説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係る押出成形装置1は、振動方向変換体2と、この振動方向変換体2に振動子31で結合された超音波振動部3と、振動方向変換体2に結合されたニップル挿入筒9と、この振動方向変換体2およびニップル挿入筒9で形成された空間に、溶融樹脂14を流通する樹脂流路を周囲に確保した状態で前端側が挿入され、軸方向に貫通した導線ガイド孔(図示省略)が形成されたニップル5と、ニップル5の後端側が挿入され、樹脂流路に溶融樹脂14を供給する溶融樹脂供給部4と、を備えている。
【0016】
振動方向変換体2は、端部2Aおよび端部2Bを含む角柱状の振動体と、端部2Cおよび端部2Dを含む角柱状の振動体とが互いに直交するように設けられたものである。これら一対の振動体のうち、一方の振動体(2Aおよび2Bを含む)の端部(2A)には、超音波振動部3の振動子31が結合されている。このような構造の振動方向変換体2では、端部2Aから入力した振動を直交変換して、他方の振動体(2Cおよび2Dを含む)の端部2Cに出力するようになっている。
【0017】
振動方向変換体2の他方の振動体(2Cおよび2Dを含む)には、押出方向に沿って円柱状の軸孔が貫通して形成され、ニップル挿入筒9の内側面がこの軸孔と面一となるように設定されている。ニップル5は、この軸孔に嵌合され周囲が軸孔と接触せずに樹脂流路14が介在されている。ニップル5の押出方向先端は漸次細径となり先端から導線13が引き出されるようになっている。
【0018】
図1に示すように、他方の振動体(2Cおよび2D)の端部2C側には、ニップル5の先端部を取り囲むように、ダイス6が装着されている。図2および図3に示すように、ダイス6は、比較的小径で円筒状の突出部61と、突出部61の基部に外側へ突出して周回する大径の円盤状のフランジ部62と、フランジ部62の裏面に上記突出部61より大径で円筒状の嵌合部63と、を備える。
【0019】
そして、突出部61の先端面の中央には、導線13を導き出すガイド孔65が形成されている。また、このガイド孔65より嵌合部63の後端に亘って、すり鉢内状の流路形成面64が形成されている。
【0020】
この突出部61の突出寸法は、振動体(2Cおよび2Dを含む)の端部2Cの軸孔に嵌め込んだときに、突出部61の端面61Aが端部2Cの端面と面一になるように設定されている。図1の下部に示す波形図のように、振動方向変換体2は、端部2Cの端面で共振の変位波形の振幅が最大となるように設定されている。このため、ダイス6の突出部61の端面61Aを端部2Cの端面と面一となるように設定したことで、ガイド孔65の位置で超音波振動が最大の振幅となる。したがって、このガイド孔65を通過する溶融樹脂14は、超音波振動の作用を最大限に受けて、ダイス6内壁との摩擦抵抗を低下させることができる。このように樹脂とダイス6内壁との摩擦抵抗を低下させることにより、導線13を良好な状態で被覆することが可能となり、樹脂被覆の表面が滑らかな状態となる。このため、ダイス6から繰り出される被覆電線Wは表面が平滑となり耐摩耗性を向上することができる。
【0021】
図1に示すように、ダイス6はダイス支持部材7で端部2C側へ固定されている。図4および図5に示すように、ダイス支持部材7は環状の部材であり、先端のフード部71と、周面72に形成された雄ネジ74と、後端側の凹んだ部分の底部に形成されたフランジ当接面75とを有する。図1に示すように、ダイス支持部材7が装着される振動体の端部2Cには、軸方向に沿って雄ネジ72が螺合する雌ネジが形成されている。このダイス支持部材7を端部2Cに螺合させることにより、ダイス6のフランジ部62をダイス支持部材7のフランジ当接面75が圧接してダイス6を端部2C側へ支持している。
【0022】
図1に示すように、ニップル5の後端部は、溶融樹脂供給部4の流路ブロック8に嵌合するように装着されている。具体的には、ニップル5の後端部は流路ブロック8内に軸方向に沿って同軸的に配置された装着用筒体12の内側面に密着するように嵌合されている。この装着用筒体12の筒穴12Aには、導線13が挿通されている。流路ブロック8には溶融樹脂供給部4に連通する連通孔4Aが形成され、この連通孔4Aが樹脂流路に連通している。
【0023】
このような押出成形装置1を用いることにより、被覆電線Wは、溶融樹脂供給部4から供給される溶融樹脂14を振動させながら押出方向に押し出して、押出方向に沿って供給される導線13に溶融樹脂14を被覆することにより製造される。この場合、被覆電線Wは、柱状の一対の振動体2A2B,2C2D同士が直交した振動方向変換体2の、一方の振動体2A2Bの端部2Aに振動を入力することにより、この入力した振動を直交変換して他方の振動体2C2Dの端部2Cに出力させながら、以下の(A)〜(C)ステップを行うことにより製造される。
(A)導線を押出方向に沿って供給する
(B)溶融樹脂供給部4から樹脂を押出方向に押し出す
(C)他方の振動体2C2Dの押出方向の端部2Cに嵌合されて他方の振動体2C2Dにおける振動振幅が最大となる位置に押出方向の端面61Aが配置されたダイス6の押出口より被覆電線Wを引き出す
【0024】
上述したように、例えばポリエチレン樹脂は、押出成形に際して、その性質上メルトフラクチャーと呼ばれる成形品の表面荒れや、脈動を生じやすく樹脂被覆の耐摩耗性が低下するという問題があり、被覆の薄肉化に対応して耐摩耗性を満足するためには、絶縁樹脂材料を高硬度化或いは高強度化する必要があった。しかし、本実施の形態に係る押出成形装置1を用いた被覆電線の製造方法では、このような樹脂材料変更をすることなく、耐摩耗性の高い被覆電線を製造することができる。また、押出成形の条件を変更しても、本実施形態を適用して最適化したダイス6のみを交換するだけで、樹脂材料を変えることなく、良好な被覆電線Wを製造することができる。
【0025】
(実験例)
一般に、超音波押出技術を用いることによって期待される効果として、高引落化による薄肉押出がある。しかし、高引落化による薄肉押出品はメルトフラクチャーの発生により、耐摩耗性が低下する。また、絶縁被覆を薄肉化することで耐摩耗性が低下することも知られている。そこで、本実施の形態に係る押出成形装置1と、従来の押出成形装置とを用いて超音波押出成形による高引落化薄肉押出を行った被覆電線Wの摩耗性を評価した。
【0026】
被覆樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、PE系のポリエチレンであるミラソン3530(プライムポリマー社製)を用いた。
【0027】
評価方法としては、スクレープ評価と、表面粗さ評価を行った。スクレープ評価は、荷重7N、ピアノ線(φ0.45)、ストローク15mmの評価条件で、試験機としてスクレープ試験機(PFA200、TVAB社製)を用いて行った。表面粗さ評価は、中心線平均粗さRaの評価条件で、試験機として触針式表面粗さ計(SJ−402、ミツトヨ社製)を用いて行った。
【0028】
実験例としては、図1に示した押出機としてφ40押出機(大宮精機製)を用いた。スクリューは、BMスクリュー(バリアフライトマイファタイプスクリュー)で、L/Dが25、C/Rが2.8である。ヘッドとしては、本実施の形態と同様のヘッドであり、ダイス6(ストレートφ0.83)、ダイス支持部材7(ストレートφ1.8)のものを用いた。従来のヘッドとしては、図7に示すようなダイスの端面が端部の端面よりも押出方向上流側へ凹んでいるものを用いた。
【0029】
押出条件は、以下の通りである。
(1)従来ヘッドを用いて押出温度200℃、引落比1.10、絶縁体の厚さ0.270mm、電線径1.72mmとした。
(2)従来ヘッドを用いて押出温度200℃、引落比1.16、絶縁体の厚さ0.245mm、電線径1.67mmとした。
(3)実施例(本実施形態の超音波ヘッド)を用いて押出温度200℃、引落比1.10、絶縁体の厚さ0.270mm、電線径1.72mmとした。
(4)実施例(本実施形態の超音波ヘッド)を用いて押出温度200℃、引落比1.19、絶縁体の厚さ0.235mm、電線径1.65mmとした。
(5)実施例(本実施形態の超音波ヘッド)を用いて押出温度200℃、引落比1.22、絶縁体の厚さ0.225mm、電線径1.63mmとした。
【0030】
その結果、図6に示すように、スクレープ回数は従来例(1)、(2)が約100回であるのに対して、実施例(3)〜(5)は約120回と耐摩耗性が向上した。また、表面粗さは、実施例(3)、(4)でRaが約0.8以下となり低い値を示した。
【0031】
また、表1に、押出成形装置により製造された被覆電線Wの同心率を評価した結果を示す。ここで、同心率は、導体(導線)に対する絶縁体の軸心のずれであり、両者の軸心が対応している状態で100%を示し、両者の軸心のずれが大きい程小さい値を示す。同図において、実施例1〜5は、押出成形装置1(本実施形態の超音波ヘッド)により製造された被覆電線Wの評価結果を示し、比較例1〜5は、従来ヘッドの押出成形装置により製造された被覆電線Wの評価結果を示す。
【表1】

【0032】
実施例1〜5は、表1に記載の通り、所定の絶縁体材料(低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC))、所定の電線サイズ(0.35sq,0.22sq,0.13sq)、所定の絶縁体の厚さ(0.30mm,0,20mm,0.15mm)、導線の線速900m/minを条件とした。
【0033】
一方、比較例1〜5は、所定の絶縁体材料(低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC))、所定の電線サイズ(0.35sq,0.22sq,0.13sq)、所定の絶縁体の厚さ(0.30mm,0,20mm,0.15mm)、導線の線速600m/minを条件とした。
【0034】
表1の実施例1〜5から分かるように、絶縁体の厚さが0.3mm以下で線速900m/min以上にした場合に、同心率が90%を超える結果を得ることができる。これに対して、比較例1〜5では、絶縁体の厚さが0.3mm以下で線速600m/minの場合であっても、同心率が90%を超える結果を得ることができない。
【0035】
このように本実施形態にかかる押出成形装置1を用いた被覆電線の製造方法および被覆電線によれば、前述の如く耐摩耗性の高い被覆電線およびその製造方法を提供することができるとともに、絶縁体の厚さが0.3mm以下で線速が速い(線速900m/min以上)場合にも高い同心率となる被覆電線およびその製造方法を提供することができる。
【0036】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態および実施例について説明したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0037】
例えば、上記実施の形態では、導線として被覆電線Wの導体を適用したが、カーボンファイバー、グラスファイバー、光ファイバーなどの芯材を適用してもよい。
【0038】
また、上記実施の形態では、振動方向変換体2が一対の振動体を直交させた構成としたが、分割可能としてもよく、実質的に振動体の端部が最大の振幅となるように設定されていればよい。
【0039】
さらに、上記実施の形態では、ダイス6の突出部61の端面61Aが、振動方向変換体2の端部2Cの端面と面一になるように設定した。これは、通常、端部2Cの端面の振幅が最大となるように設定するためである。しかし、端部2Cの端面が最大振幅となるように設定されていない場合には、実質的に、端面61Aで振幅が最大となる位置になっていればよい。
【0040】
また、上記実施の形態において、ダイス6の内壁に例えばフッ素樹脂などの摩擦抵抗を低減する材料を塗布、形成する構成としてもよい。これにより、溶融樹脂とダイス6との摩擦抵抗が低下して、せん断応力を低下させ高延伸(高引落)でき、かつ樹脂の表面平滑化を促進することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…押出成形装置
2…振動方向変換体
2A,2B,2C,2D…端部(振動体)
3…超音波振動部
4…溶融樹脂供給部
5…ニップル
6…ダイス
7…ダイス支持部材
61…突出部
61A…端面
62…フランジ部
63…嵌合部
64…流路形成面
71…フード部
74…雄ネジ
75…フランジ当接面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形装置を用いることにより、溶融樹脂供給部から供給される溶融樹脂を振動させながら押出方向に押し出して、押出方向に沿って供給される導線に溶融樹脂を被覆する被覆電線の製造方法であって、
柱状の一対の振動体同士が直交した振動方向変換体の、一方の前記振動体の端部に振動を入力することにより、当該入力した振動を直交変換して他方の前記振動体の端部に出力させながら、
導線を押出方向に沿って供給し、
溶融樹脂供給部から樹脂を押出方向に押し出し、
前記他方の振動体の押出方向の端部に嵌合されて前記他方の振動体における振動振幅が最大となる位置に押出方向の端面が配置されたダイスの押出口より被覆電線を引き出すことを特徴とする被覆電線の製造方法。
【請求項2】
前記ダイスの前記押出方向の端面は、前記他方の前記振動体の押出方向の端面と面一に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の被覆電線の製造方法。
【請求項3】
前記ダイスは、前記ダイス支持部材により、前記他方の振動体の押出方向の端部に固定して支持されており、
前記ダイス支持部材は、前記ダイスに対して、当該ダイスの前記押出方向の端面より押出方向上流側に形成されたフランジ部で当接することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の被覆電線の製造方法。
【請求項4】
押出成形装置を用いることにより、溶融樹脂供給部から供給される溶融樹脂を振動させながら押出方向に押し出して、押出方向に沿って供給される導線に溶融樹脂を被覆した被覆電線であって、
柱状の一対の振動体同士が直交した振動方向変換体の、一方の前記振動体の端部に振動を入力することにより、当該入力した振動を直交変換して他方の前記振動体の端部に出力させながら、
導線を押出方向に沿って供給し、
溶融樹脂供給部から樹脂を押出方向に押し出し、
前記他方の振動体の押出方向の端部に嵌合されて前記他方の振動体における振動振幅が最大となる位置に押出方向の端面が配置されたダイスの押出口より被覆電線を引き出すことによって生産されることを特徴とする被覆電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−233313(P2011−233313A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101584(P2010−101584)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】