説明

補体阻害剤

【解決手段】本発明は、補体古典経路と補体代替経路の両方を阻害する補体阻害剤に関する。本発明は特に、補体古典経路と補体代替経路の両方を阻害する、吸血性節足動物の唾液腺由来の補体阻害剤に関する。更に本発明は疾患の治療及び予防におけるこのような補体阻害剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補体古典経路と補体代替経路の両方を阻害する補体阻害剤に関する。本発明は特に、補体古典経路と補体代替経路の両方を阻害する、吸血性節足動物の唾液腺由来の補体阻害剤に関する。更に本発明は疾患の治療及び予防におけるこのような補体阻害剤の使用に関する。
【0002】
本文中に記載し本明細書の末尾に掲載した文献は、全て本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【背景技術】
【0003】
補体タンパク質は、エフェクター免疫系における重要な一翼を担っている(ロー(Law)とレイド(Reid)、1995;ドッズ(Dodds)とシム(Sim)、1997;ウェーリー(Whaley)、1993)。血清中或いは細胞表面の30種を超えるタンパク質が補体系の機能と調節とに関与している。この系は、外来の抗原の存在により活性化される。2種類の活性経路が存在する。即ち、(1)IgMとIgGの複合体により或いは炭水化物の認識により活性化される古典経路と、(2)非自己表面(特異的な調節分子を有さない)により或いは細菌内毒素により活性化される代替経路とが存在する。これら2経路は、図1に示すように、細胞表面に類似のC3変換酵素及びC5変換酵素を形成して炎症の急性メディエーター(C3aとC5a)を放出し膜侵襲複合体を形成して補体活性化を生じせしめる並列イベントカスケードを含む。
【0004】
補体活性化の影響は多岐に亘るが、例えば炎症の開始、とりわけ急性メディエーターC3a及びC5aの放出による炎症の開始;C4b或いはC3bの付着(deposition)による病原体のオプソニン化と貪食作用;マクロファージのリクルート(動員)による免疫細胞複合体のクリアランス;抗原とC3dの共有結合(covalent association)によるB細胞レセプターへの抗原提示効率の向上;肺中心における抗原の保持;抗原提示細胞による抗原取込みの向上;外来細胞或いは障害細胞(細菌、寄生虫、腫瘍細胞等)の膜浸襲複合体(MAC)仲介破壊(disruption)等が挙げられる。
【0005】
補体の活性化は、生体自己組織に対する損傷を防ぐために綿密に制御されなければならない。制御は、半減期の短い活性化タンパク質と血漿中或いは細胞膜上に存在する制御タンパク質とによって仲介される。補体制御が間違って行われると、生体組織が損傷して疾患を生じる可能性がある。サフ(Sahu)とランブリス(Lambris)(2000)は、補体活性化の制御が不十分であることが何らかの役割を果たしている29の病態を挙げた。その中には、急性膵炎、アルツハイマー病、アレルギー性脳脊髄炎、同種移植(allotransplatation)、喘息、成人性呼吸窮迫症候群、火傷(burn injuries)、クローン病、糸球体腎炎、溶血性貧血、血液透析、遺伝性血管浮腫、虚血性再潅流障害、多臓器不全、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋梗塞、乾癬、リウマチ様関節炎、敗血症性ショック、全身性エリテマトーデス、卒中、血管漏出症候群、異種移植が含まれている。これら疾患の一部における補体活性化の基本的な役割を示す動物モデル(ノックアウトマウスとトランスジェニックマウス)データがウォード(Ward)ら、2000において詳細に検討されている。
【0006】
補体活性化から生じる組織の損傷は、MACとアナフィラトキシンC3a及びC5aとが仲介している。これら2種のペプチドは、好中球、好酸球、マクロファージ、小膠細胞、好塩基球、及びマスト細胞に作用することにより損傷を誘起する。アナフィラトキシン刺激細胞は、プロ炎症性メディエーター、組織分解酵素(tissue degradative enzymes)、酸素フリーラジカルを放出し、接着分子と炎症性サイトカインの発現を増加させる(エンバー(Ember)ら、1998)一方、免疫応答を複雑化すると共に凝固や繊維素溶解等の止血機構の活性化を導く。感染性疾患或いは非感染性疾患におけるアナフィラトキシンの役割は、最近コール(Kohl)(2001)によって詳細に検討された。MACのプロ炎症性活性は主に、接着分子、組織因子及びケモカインの発現増加を生じさせ細胞活性化を間接的に誘起させることにより仲介される。
【0007】
医学的疾患や障害の治療における補体制御の重要性に鑑み、各種補体阻害剤が治療用途のために開発されつつある(表1)。これら阻害剤の一部は現在フェーズI/IIの臨床試験中ではあるものの、臨床の場では未だに利用可能となっていない。これら開発中の阻害剤分子は、高分子量の天然の阻害剤(ヘベル(Hebell)ら、1991;ワイズマン(Weisman)ら、1990)であり、工学的に特定の修飾を施されているものもある(ムリガン(Mulligan)ら、1999;スミス(Smith)とスミス(Smith)、2001;ザン(Zhang)ら、2001)。これらは、特異的な補体成分を指向する抗体(フレイ(Frei)ら、1987;リンク(Link)ら、1999)や、RNAアプタマーを含む小分子(ビエセッカー(Biesecker)ら、1999)、補体レセプターを特異的にターゲットとする分子である。
【0008】
【表1】

【0009】
広範囲の疾患及び症状の処置において補体阻害剤が重要であることから、別の補体阻害剤が未だに要求されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、その第1の様相において、補体活性化の古典経路及び代替経路を阻害する補体阻害剤分子を提供する。
【0011】
ここで「阻害」とは、補体活性化の古典経路及び代替経路の作用が低減されることをいう。分子が補体の古典経路及び代替経路の作用を低減する能力は、実施例やギクラス(Giclas)ら(1994)等に記載の当技術分野において知られている標準的な溶血アッセイによって測定できる。好ましくは、本発明の補体阻害剤分子が存在することにより、補体活性化の古典経路及び代替経路のための標準的な溶血アッセイにおいて、補体阻害剤分子の非存在下で行う標準的なアッセイと比べて赤血球溶解が少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、40%、50%、60%、70%或いは80%減少する。
【0012】
好ましくは、本発明の補体阻害剤分子は、古典経路C5変換酵素のC5切断と代替経路C5変換酵素によるC5切断とを阻害する。図1に示すように、C5変換酵素によるC5からC5bへの変換は、補体代替経路と補体古典経路の両方において起こる。古典経路におけるC5変換酵素はC4b3b2aであり、代替経路におけるC5変換酵素はC3b2Bbである。このように両経路のC5変換酵素によるC5切断を阻害することにより、補体活性化の古典経路と代替経路の両方が阻害される。或る分子が古典経路C5変換酵素によるC5切断と代替経路C5変換酵素によるC5切断とを阻害する能力は標準的なインビトロアッセイによって測定できる。好ましくは、本発明の補体阻害剤分子が存在することにより、補体阻害剤分子の非存在下で行う標準的なアッセイに比べ、古典経路C5変換酵素及び代替経路C5変換酵素によるC5切断が少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、40%、50%、60%、70%或いは80%減少する。好ましくは、本発明の補体阻害剤分子は、特定の範囲の哺乳動物種において古典経路C5変換酵素によるC5切断と代替経路C5変換酵素によるC5切断とを阻害できる。
【0013】
本発明はその第2の様相において、C5変換酵素によるC5切断を阻害する補体阻害剤分子を提供する。本発明の本様相に係る補体阻害剤分子は、補体活性化の古典経路C5変換酵素によるC5切断を阻害するものでもよい。これに替え、本発明の本様相に係る補体阻害剤分子は、補体活性化の代替経路C5変換酵素によるC5切断を阻害するものでもよい。或る分子が古典経路C5変換酵素によるC5切断か代替経路C5変換酵素によるC5切断を阻害する能力は、上に述べたように標準的なインビトロアッセイによって測定できる。好ましくは、本発明の補体阻害剤分子が存在することにより、補体阻害剤分子の非存在下で行う標準的なアッセイと比べて古典経路C5変換酵素によるC5切断か代替経路C5変換酵素によるC5切断が少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、40%、50%、60%、70%或いは80%減少する。
【0014】
本発明の補体阻害剤分子は、C5に直接結合することにより、或いはC5変換酵素の一方又は両方に直接結合することにより、古典経路C5変換酵素によるC5切断、代替経路C5変換酵素によるC5切断、或いは両経路のC5変換酵素によるC5切断を阻害するものとすることができる。好ましくは、本発明の補体阻害剤分子はC5に直接結合することによりC5切断を阻害する。これに替え、補体阻害剤分子は、C5とC5変換酵素からなる複合体に結合することによりC5切断を阻害するものでもよい。本発明は更に、C5と複合体を形成するか、C5変換酵素と複合体を形成するか、或いはC5とC5変換酵素の双方と共に複合体を形成する補体阻害剤分子を提供する。これら複合体におけるC5変換酵素は、古典経路C5変換酵素でもよいし、代替経路の変換酵素でもよい。
【0015】
好ましくは、補体阻害剤分子は吸血性節足動物由来のものである。「吸血性節足動物」という用語は、適切な宿主から吸血する全ての節足動物を含み、例としては昆虫、マダニ(ticks)、シラミ、ノミ、ダニ(mites)等が挙げられる。
【0016】
補体は、吸血期のマダニが吸血しようとするときに最初に遭遇する免疫防御系の一つである。もし吸血中のマダニが、補体活性化に対する迅速な制御ができなければ、宿主の炎症反応によってマダニ自身が傷害される可能性がある。補体活性化の代替経路を阻害する、マダニの一種であるイクソデス・スカプラリス(Ixodes scapularis)から得た18.5kDaのタンパク質がクローニングされ発現された(ヴァレンツェラ(Valenzuela)ら、2000)。また、ダーマセンター・アンダーソニ(森林ダニ;Dermacentor andersoni)(リベイロ(Ribeiro)、1987)とオルニトドロス・ムバータ(Ornithodoros moubata)(アスティガラガ(Astigarraga)ら、1997)の唾液腺抽出物に補体阻害活性があることが記載されているが、活性成分は特定されていない。マダニにおいては、補体の代替経路と古典経路の両方を阻害する分子はこれまで特定されていない。
【0017】
本発明の補体阻害剤分子を吸血性節足動物から得る場合、マダニから得るのが好ましい。補体阻害剤分子はマダニのオルニトドロス・ムバータ(Ornithodoros moubata)由来であるのが好ましい。
【0018】
好ましくは、オルニトドロス・ムバータ(Ornithodoros moubata)由来の補体阻害剤分子は、図4のアミノ酸配列の19番〜168番のアミノ酸を含むタンパク質又はその機能同等物である。補体阻害剤分子は特に、図4のアミノ酸配列の1番〜168番のアミノ酸を含むタンパク質或いはその機能同等物である。
【0019】
図4に示すアミノ酸配列を有するタンパク質は、本明細書においては「OmCIタンパク質」ともいうが、マダニであるオルニトドロス・ムバータ(Ornithodoros moubata)の唾液腺から単離され、補体古典経路及び補体代替経路を阻害することがわかっている。より詳細には、C3活性化に影響を及ぼすことなくC5ステップをターゲットとし、補体活性化の古典経路C5変換酵素によるC5切断と代替経路C5変換酵素によるC5切断の両方を阻害することがわかっている。このOmCIタンパク質は、特定の範囲の哺乳動物においてC5変換酵素によるC5切断を阻害する。図4に示すOmCIタンパク質配列の最初の18個のアミノ酸は、補体阻害活性には必要ない信号配列を形成している。「OmCIタンパク質」という用語は、本明細書においてはこの信号配列を含む場合と含まない場合とに関わらず図4に示す配列をいう。
【0020】
「機能同等物」という用語は、本明細書においては、補体の古典経路と代替経路を阻害する能力を有するOmCIタンパク質の相同体或いはフラグメントをいう。好ましくは、機能同等物は、古典経路C5変換酵素によるC5切断と代替経路C5変換酵素によるC5切断の両方を阻害する能力を有する。機能同等物には更に、古典経路C5変換酵素によるC5切断の阻害により古典経路を阻害する能力を有するか或いは代替経路C5変換酵素によるC5切断を阻害することにより補体の代替経路を阻害する能力を有するOmCIタンパク質の相同体及びフラグメントが含まれる。
【0021】
「相同体」という用語は、図4において明確に特定されるOmCI配列のパラログ(paralogues)及びオーソログ(orthologues)も含み、他のマダニ種、例えばリピセファラス・アッペンディクラータス(Rhipicephalus appendiculatus)、R.サングイネウス(R.sanguineus)、R.ブルサ(R.bursa)、A.アメリカナム(A.americanum)、A.カジェネンセ(A.cajennense)、A.ヘブレウム(A.hebraeum)、ブーフィラス・ミクロプラス(Boophilus microplus)、B.アニュラトゥス(B.annulatus)、B.デコロラタス(B.decoloratus)、ダーマセンター・レティキュラトゥス(Dermacentor reticulatus)、D.アンダーソニ(D.andersoni)、D.マーギナツス(D.marginatus)、D.バリアビリス(D.variabilis)、ヘマフィサリス・イネルミス(Haemaphysalis inermis)、Ha.レアチイ(Ha.leachii)、Ha.プンクタタ(Ha.punctata)、ヒアロンマ・アナトリクム・アナトリクム(Hyalomma anatolicum anatolicum)、Hy.ドロメダリー(Hy.dromedarii)、Hy.マージナトゥム・マージナトゥム(Hy.marginatum marginatum)、イクソデス・リシナス(Ixodes ricinus)、I.ペルスルカトゥス(I.persulcatus)、I.スカプラリス(I.scapularis)、I.ヘキサゴナス(I.hexagonus)、アルガス・ペルシカス(Argas persicus)、A.リフレクサス(A.reflexus)、オルニトドロス・エラティカス(Ornithodoros erraticus)、O.ムバータ・ムバータ(O.moubata moubata)、O.m.ポルシナス(O.m.porcinus)、O.サウィギニュイ(O.savignyi)からのOmCIタンパク質配列も含む。「相同体」という用語は更に、例えばキュレックス(Culex)、アノフェレス(Anopheles)、アエデス(Aedes)属、中でもキュレックス・キンクファッシアタス(Culex quinquefasciatus)、アエデス・アエジプチ(Aedes aegypti)、アノフェレス・ガンビエ(Anopheles gambiae等のカ(mosquito)種;クテノセファリデス・フェリス(Ctenocephalides felis)(ネコノミ)等のノミ種;ウシアブ(horseflies);サシチョウバエ(sandflies);ブヨ;ツェツェバエ;シラミ;ダニ(mites);ヒル;扁形動物から得られるOmCIタンパク質配列も含む。
【0022】
図4に示すOmCI配列の相同体の特定方法は、当業者には明らかであろう。例えば、公的或いは私的な配列データベースの相同性検索によって相同体を特定できる。公的に入手できるデータベースを用いるのが便利ではあるが、私的なデータベース或いは市販のデータベースも、特に公的データベースに示されていないデータを含む場合に同様に役に立つ。プライマリーデータベースは、プライマリーヌクレオチド或いはプライマリーアミノ酸配列のデータ寄託サイトであり、公的に利用可能でもあるし市販されてもいる。公的に利用可能なプライマリーデータベースの例としては、GenBankデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)、EMBLデータベース(http://www.ebi.ac.uk/)、DDBJデータベース(http://www.ddbj.nig.ac.jp/)、SWISS−PROTタンパク質データベース(http://expasy.hcuge.ch/)、PIR(http://pir.georgetown.edu/)、TrEMBL(http://www.ebi.ac.uk/)、TIGRデータベース(http://www.tigr.org/tdb/index.html参照)、NRL−3Dデータベース(http://www.nbrfa.georgetown.edu)、タンパク質データベース(http://www.rcsb.org/pdb)、NRDBデータベース(ftp://ncbi.nlm.nih.gov/pub/nrdb/README)、OWLデータベース(http://www.biochem.ucl.ac.uk/bsm/dbbrowser/OWL/)、セカンダリーデータベースPROSITE(http://expasy.hcuge.ch/sprot/prosite.html)、PRINTS(http://iupab.leeds.ac.uk/bmb5dp/prints.html)、Profiles(http://ulrec3.unil.ch/software/PFSCAN form.html)、Pfam(http://www.sanger.ac.uk/software/pfam)、Identify(http://dna.stanford.edu/identify/)、Blocks(http://www.blocks.fhcrc.org)の各データベースが挙げられる。市販データベースと私的データベースの例としては、PathoGenome(Genome Therapeutics Inc.)とPathoSeq(Incyte Pharmaceuticals Inc.)が挙げられる。
【0023】
通常、2個のポリペプチドの(好ましくは特定の領域に亘る)同一性(identity)が30%を超える場合、機能面において同等であり、従って2個のタンパク質は相同性を有すると考えられる。好ましくは、相同体であるタンパク質は、図4に示すOmCIタンパク質配列に対し60%超の配列同一性を有する。より好ましい相同体は、図4に示すOmCIタンパク質配列に対し70%、80%、90%、95%、98%或いは99%超の同一性を有する。本明細書における同一率(percentage identity)は、BLAST2.1.3バージョンで、NCBI(the National Center for Biotechnology Information;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)が規定するデフォルトパラメータ[Blosum 62 matrix;gap open penalty=11、gap extension penalty=l]を用いて決定したものである。
【0024】
図4に示すOmCIタンパク質配列の相同体には、野生株タンパク質配列による補体古典経路或いは補体代替経路の阻害が保持されるのであれば、野生株配列のアミノ酸が置換、挿入、欠失した変異体(mutant)も含まれる。好ましくは、変異体は補体古典経路及び補体代替経路の両方を阻害する能力を有する。好ましくは、このような変異体は代替経路C5変換酵素によるC5切断と古典経路C5変換酵素によるC5切断の両方を阻害する能力を有する。補体古典経路か補体代替経路を阻害する能力を有する変異体は、代替経路C5変換酵素によるC5切断か古典経路C5変換酵素によるC5切断が阻害される能力を有するのであれば、この変異体も相同体という用語に含まれる。従って、変異体には、前記タンパク質の機能や活性に悪影響を及ぼさない保存性のアミノ酸置換(conservative amino acid substitutions)を有するタンパク質が含まれる。この用語は更に、天然の生物学的バリアント(例えばOmCIタンパク質を得る種の中のアレルバリアント(allelic variants)や配列バリエーション(geographical variations))も含む。前記タンパク質配列の特定の残基を系統的且つ指向的に変異させることにより、野生株タンパク質配列に比べ古典経路或いは代替経路の阻害活性の高い変異体を設計することもできる。好ましくは、このような変異体は、古典経路C5変換酵素によるC5切断か代替経路C5変換酵素によるC5切断の阻害の向上を示す。好ましくは、これら変異体は、代替経路C5変換酵素によるC5切断と古典経路C5変換酵素によるC5切断の両方の阻害の向上を示す。
【0025】
本発明は、OmCIタンパク質及びOmCIタンパク質の相同体のフラグメントも提供する。このようなフラグメントには、本明細書の図4に明確に示すO.ムバータ(O.moubata)のOmCIタンパク質のフラグメントだけでなく、上述のこのタンパク質の相同体のフラグメントも含まれる。このような相同体のフラグメントは通常、図4のOmCIタンパク質配列のフラグメントに対し60%超の同一性を有しているが、より好ましいフラグメントは、図4のOmCIタンパク質配列に対して70%、80%、90%、95%、98%或いは99%超の同一性を有する。図4の配列を含むOmCIタンパク質のフラグメント及び該タンパク質の相同体のフラグメントは、好ましくは、補体古典経路C5変換酵素によるC5切断と代替経路C5変換酵素によるC5切断の両方を阻害することにより古典経路と代替経路を阻害する。補体古典経路か補体代替経路を阻害するOmCIタンパク質のフラグメントとその相同体も、古典経路C5変換酵素によるC5切断か代替経路C5変換酵素によるC5切断を阻害する能力を有するのであれば、本発明に含まれる。当然のことながら、野生株配列を系統的に変異させ或いは断片化した後、適切な活性アッセイを行うことにより、補体古典経路か補体代替経路の阻害活性の高いフラグメント、特に両C5変換酵素によるC5切断の阻害活性の高いフラグメントを合理的に設計できる。
【0026】
「機能同等物」という用語は、OmCIタンパク質と構造的に類似している分子や、類似或いは同一の三次構造を特にOmCIの一以上の活性部位の周辺において有する分子もいう。OmCIは、前記C5変換酵素の一方又は両方に直接結合するか或いはC5とC5変換酵素からなる複合体に直接結合することによりC5変換酵素によるC5切断を阻害すると考えられる。本明細書の実施例において、OmCIはC5に結合することが示されており、OmCIが単独のC5に直接結合することにより、或いはC5変換酵素との複合体の一部を構成している場合に、C5変換酵素によるC5切断を阻害するという示唆を裏づけている。本出願人は理論に固執するものではないが、OmCIのC5への結合によって、C5変換酵素のC5切断部位へのアクセスが阻害されることが考えられる。従って、OmCIの機能同等物として好ましいものには、C5に直接結合できる能力を有する相同体やフラグメント等の分子が含まれる。
【0027】
更にOmCIは、小リガンドを内的に結合するタンパク質のリポカリンファミリーのメンバーと考えられている。小リガンドは通常、C5やC5変換酵素やMACに結合し正常機能のために必要とされるが、OmCIがこの小リガンドに結合することにより、C5切断及び/又はMACの付着(deposition)を間接的に阻害する。MACのC8ガンマ成分は小リガンドに結合するリポカリンであるが、これまで補体系機能に必須であるとして記載された小リガンドはない。従って、その機能同等物には、C5或いはC5変換酵素に結合するOmCIタンパク質の活性部位及び/又は小リガンドに結合するOmCIタンパク質の活性部位と類似或いは同一の3次構造を有する分子が含まれる。特に、OmCIタンパク質の3次構造或いは活性部位が類似するように設計した合成分子は機能同等物であると考えられる。
【0028】
本発明は更に、C5と複合体を形成しているか、C5変換酵素と複合体を形成しているか、C5とC5変換酵素の両方と複合体を形成しているOmCIタンパク質、OmCIタンパク質のフラグメント或いは機能同等物を提供する。これら複合体におけるC5変換酵素は古典経路C5変換酵素でもよいし、代替経路変換酵素でもよい。
【0029】
既にかなり詳細に説明したことではあるが、補体阻害剤、特に補体活性化の古典経路と代替経路の両方を阻害する補体阻害剤が引続き必要とされている。OmCIタンパク質や該タンパク質の機能同等物等の本発明の補体阻害剤分子は、各種疾病や症状の治療、予防或いは診断における多様な医療用途で使用できると共に、補体阻害の研究や補体活性化の代替経路と古典経路の両経路の阻害の研究において研究ツールとして有用である。OmCIタンパク質そのものが、多岐に亘る哺乳動物種の補体カスケードを阻害するため、これら用途において特に有用であろう。
【0030】
OmCIタンパク質やその機能同等物等の本発明の補体阻害剤分子は、宿主細胞内で発現させることにより組換え体として調製できる。このような発現方法は当業者にはよく知られており、サンブルック(Sambrook)ら(2000)やフェルナンデス(Fernandez)とホフラー(Hoeffler)(1998)によって詳細に記述されている。本発明のタンパク質とフラグメントは、タンパク質化学における従来の技法を用いても調製できる。例えば、化学合成によってタンパク質の断片を調製できる。
【0031】
本発明はその更なる実施形態において、上に述べた補体阻害剤分子に結合する抗体を提供する。詳細には、本発明はOmCIタンパク質或いはその機能同等物に結合する抗体を提供する。OmCIタンパク質或いはその機能同等物等の補体阻害剤分子を免疫原として用いて標準的なプロトコルにより免疫血清モノクローナル抗体を製造できる(例えば、「抗体:実験マニュアル」 ハーロー及びレーン編(Antibodies:A Laboratory Manual ed.By Harlow and Lane)、Cold Spring Harbor Press、1988参照)。本明細書において「抗体」という用語は、補体阻害剤分子に特異的に結合する抗体のフラグメントも含む。更に「抗体」という用語には、本発明の補体阻害剤分子に特異性を有するヒト化キメラ抗体分子も含まれる。検出を容易にするために抗体に標識を付けることが好ましい場合がある。好ましくは、標識は酵素、放射標識或いは蛍光タグである。
【0032】
本発明の実施形態には、上述の補体阻害剤の誘導体も含まれる。詳細には、本発明は、OmCIタンパク質の誘導体或いはその機能同等物の誘導体を提供する。このような誘導体は、一以上のペプチド或いはポリペプチドと遺伝子工学的或いは化学的に融合した補体阻害剤分子を含む融合タンパク質を含む。ペプチド或いはポリペプチドを融合させる目的は、該タンパク質の検出、発現、分離、精製を容易にすること、或いは該タンパク質に所望の特性を付加させることである。可能性のある融合パートナーの例としては、β−ガラクトシダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、ルシフェラーゼ、ポリヒスチジンタグ、T7ポリメラーゼフラグメント、分泌シグナルペプチド等が挙げられる。その他の可能性のある融合パートナーとしては、特定の疾患を治療するための医薬として使用するために開発中のタンパク質等の潜在的バイオ医薬等が挙げられる。
【0033】
補体阻害剤分子はマーカードメインと融合させることもできる。マーカードメインは好ましくは、蛍光タグ、親和性結合による精製を行うことができるエピトープタグ、組織化学的標識或いは蛍光標識を行うことができる酵素タグ、或いは放射化学タグである。好ましい実施形態においては、マーカードメインは放射化学タグである。
【0034】
融合タンパク質の製造方法は、当該技術分野における標準的な方法であるので、当業者には公知であろう。例えば、大抵の一般分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、及び免疫学的技法については、サンブルック(Sambrook)ら(2000)やオースベル(Ausubel)ら(1991)の文献を参照することができる。一般に、融合タンパク質は、最も簡便には2個の核酸配列をインフレームで互いに融合させる組換え技法によって核酸分子から製造することができる。これら融合タンパク質は、当該融合タンパク質のコード配列を含む核酸分子によってコードされるであろう。
【0035】
本発明は、その更なる様相において、本発明の上述の様相に係る補体阻害剤分子をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。このような分子としては、一本鎖或いは二本鎖のDNA、cDNA、RNAの他、合成核酸種が挙げられる。好ましくは、この核酸配列はDNAを構成するものである。
【0036】
好ましくは、核酸分子は、OmCIタンパク質或いはその機能同等物をコードするヌクレオチド配列を含む。好ましくは、このような核酸分子は、図4のヌクレオチド配列の53〜507番の塩基を含む。このヌクレオチド配列は、シグナル配列を含まないOmCIタンパク質をコードする。図4のヌクレオチド配列の最初の54個の塩基は、補体活性剤の活性に必要ないOmCIのシグナル配列をコードしている。本発明は更に、シグナル配列を含むOmCIタンパク質をコードする、図4の核酸配列の1〜507番の塩基を含む核酸分子を提供する。本明細書において「OmCIタンパク質をコードする核酸分子」という記載は、シグナル配列を含むOmCIタンパク質をコードする核酸分子とシグナル配列を含まないOmCIタンパク質をコードする核酸分子の両方を含む。
【0037】
本発明は更に、本発明の本様相における核酸分子を用いるクローニング及び発現ベクターを含む。この発現ベクターは、本発明の核酸分子にインフレームで結合した適切な転写調節配列及び翻訳調節配列、例えばエンハンサー要素、プロモーター−オペレーター領域、ターミネーションストップ配列(termination stop sequence)、mRNA安定化配列(mRNA stability sequence)、開始コドンと終止コドン、リボソーム結合部位等を含むことができる。
【0038】
更に、特定の宿主から組換えタンパク質を分泌させるのが簡便であろう。従って、このようなベクターの更なる成分は、分泌配列、シグナル配列或いはプロセシング配列をコードする核酸配列を含むことができる。
【0039】
本発明に係るベクターはプラスミドとウイルス(バクテリオファージや真核ウイルスを含む)を含むと共に、他の線形又は円形DNAキャリア、例えば転移因子や相同組換え技法を用いるものを含む。このようなベクターと発現系の多くは公知であり本技術分野において文献に記載されている(フェルナンデス(Fernandez)とホフラー(Hoeffler)(1998)。特に好適なウイルスベクターとしては、バキュロウイルス系ベクター、アデノウイルス系ベクター、ワクシニアウイルス系ベクターが挙げられる。
【0040】
組換え発現に好適な宿主としては、一般的に使用されている大腸菌等の原核細胞種や、高濃度の組換えタンパク質を発現するように作成でき大量増殖が容易に行える真核酵母が挙げられる。好ましくは、宿主細胞は真核酵母細胞である。インビトロで増殖した哺乳動物細胞系も、特に、ウイルスによる発現系を用いる場合に好適である。別の好適な発現系は、昆虫細胞を宿主として用いたバキュロウイルス発現系である。発現系は更に、ゲノムにDNAが組み込まれた宿主細胞で構成することもできる。タンパク質或いはタンパク質フラグメントは更に、インビボ、例えば昆虫の幼虫内や哺乳動物組織中で発現させることもできる。
【0041】
本発明に係るベクターを原核細胞或いは真核細胞に導入するのに種々の技法を用いることができる。好適な形質転換或いはトランスフェクション技法が文献に記載されている(サンブルック(Sambrook)ら、1989;オースベル(Ausubel)ら、1991;スペクター(Spector)、ゴールドマン(Goldman)及びレインワルド(Leinwald)、1998)。真核細胞においては、発現系はそのニーズによって、一時的なもの(例えばエピソーム)とすることもできるし、恒久的なもの(染色体の一体化)とすることもできる。
【0042】
本発明は更に、補体阻害剤分子をコードする核酸分子に非常にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするアンチセンス核酸分子を提供する。具体的には、本発明は、OmCIタンパク質をコードする核酸分子に非常にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするアンチセンス核酸分子を提供する。本明細書において、非常にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、50%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×Denhardts溶液、10%硫酸デキストラン及び20(g/mLの変性せん断サケ精子DNAを含有する溶液中、42℃で一晩インキュベートした後、フィルターを0.1×SSC中、約65℃で洗浄することをいう。
【0043】
好ましい実施形態においては、検出可能な標識をこれらアンチセンス核酸分子に取り付ける。好ましくは、標識は、放射性同位元素、蛍光化合物及び酵素からなる群から選択される。
【0044】
本発明は更に、上述の核酸分子、アンチセンス核酸分子又はベクターを含む形質転換された或いはトランスフェクトされた原核宿主細胞或いは真核宿主細胞を含む。宿主細胞が原核細胞である場合、好ましくは大腸菌細胞である。好ましい真核宿主細胞としては、真核酵母細胞、哺乳動物細胞等が挙げられる。
【0045】
本発明は更に、上述の補体阻害剤分子の調製方法であって、本発明に係る核酸分子を含む宿主細胞を、前記タンパク質を発現させる条件で培養することと、産生されたタンパク質を回収することとを含む方法を提供する。好ましくは、宿主細胞は酵母細胞である。
【0046】
機能同等物に関連して既に述べたように、OmCIはタンパク質のリポカリンファミリーのメンバーであり、未確認の小リガンドに結合することによりその作用の一部を発揮するのであろうと考えられている。本発明のその他の補体阻害剤分子及びその機能同等物も、小リガンドに結合することにより補体活性化の各経路に対する阻害作用を発揮するのであろう。これら天然の(naturally-occuring)リガンドは、それ自体が補体活性化の古典及び/又は代替経路のアゴニスト或いはアンタゴニストとして作用する可能性があるため、特定することが望まれる。このような天然のリガンド自体が、補体経路の異常な高活性化或いは低活性化に起因する疾患の治療に有用であるし、また、このような疾患の治療のための合成リガンドの有用な開発起点となるであろう。これに替え、天然のリガンドは、これらリガンドに結合する別の補体阻害剤分子の開発の有用なターゲットである。本発明は、その更なる様相において、上述の補体阻害剤分子或いはその機能同等物のリガンドを特定する方法であって、(a)補体阻害剤分子或いはその機能同等物を候補リガンドに接触させる段階と(b)リガンド−補体阻害剤分子の複合体の形成を検出する段階とを含む方法を提供する。
【0047】
この方法においては任意の候補リガンドを使用できる。候補リガンドは、例えば細胞、無細胞調製物、化学ライブラリー、天然物混合物から単離できる。補体阻害剤分子の天然のリガンドを特定したら、この天然のリガンドの3次構造を模倣した合成小分子を設計することが望ましい。このような合成分子が補体阻害剤分子と結合する能力も、本発明の方法を用いて試験できる。
【0048】
この方法で使用する補体阻害剤分子は、溶液中に自由存在(free in solution)させるか、固体サポートに付着させるか、細胞表面に支持させるか、細胞内に存在させることができる。例えば、補体阻害剤分子を固体サポートに付着させた後、候補リガンドを添加することができる。これに替え、一以上の候補リガンドを固体サポートに付着させ、補体阻害剤分子に接触させることもできる。
【0049】
候補リガンドと補体阻害剤分子からなる複合体の形成を検出する段階は、候補リガンドに直接的又は間接的に組み合わせた標識を用いて、或いは標識した競合物質との競合を用いたアッセイによって行うことができる。別の実施形態においては、補体阻害剤分子に結合可能な中和抗体と候補リガンドを競合させて該分子に特異的に結合させる競合スクリーニングアッセイを用いる。この方法では、この抗体を用いて、ポリペプチドに対して特異的結合親和性を有する任意の被検化合物の存在を検出できる。
【0050】
本発明の方法では、当業者に公知の高処理量(high throughput)スクリーニング技法を用いることができ、これにより複数の候補リガンドの補体阻害剤分子との結合能力を同時にスクリーニングすることができる。例えばWO84/03564には、固体基体上で多種の候補リガンドを合成することが開示されており、これらを本発明の補体阻害剤と反応させ、洗浄する。補体阻害剤分子が候補リガンドに結合したか否かは、本技術分野においてよく知られた方法を用いて検出できる。
【0051】
本発明は更に、上述の方法によって特定された或いは特定可能な、補体阻害剤分子のリガンドを提供する。補体阻害剤分子がOmCIタンパク質又はその機能同等物である場合、リガンドはC5かC5変換酵素かMACの成分に結合する小分子であると考えられる。
【0052】
本発明はその更なる様相において、上述の本発明の各様相にかかる補体阻害剤分子、補体阻害剤分子を含む融合タンパク質、補体阻害剤分子をコードする核酸配列を含む核酸分子、或いは補体阻害剤分子のリガンドと、医薬的に許容される担体とを含む組成物を提供する。具体的には、OmCIタンパク質又はその機能同等物、OmCIタンパク質又はその機能同等物を含む融合タンパク質、OmCIタンパク質又はその機能同等物をコードする核酸配列を含む核酸分子、OmCIタンパク質又はその機能同等物のリガンドと医薬的に許容される担体とを含む組成物を提供する。
【0053】
本明細書において「医薬的に許容される担体」という用語は、遺伝子、ポリペプチド、抗体、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、不活性ウイルス粒子を含むが、実際にはそれらばかりか、賦形剤(excipient)が、それ自体毒性作用を誘起せず、医薬組成物を受け入れる個体にとって有害な抗体を産生させないものである限り、その他の任意の剤を含む。医薬的に許容される担体は更に、水、生理食塩水、グリセリン、エタノール等の液体や、湿潤剤や乳化剤等の補助剤、pH調整剤等を含有することができる。賦形剤を添加することによって、患者が摂取しやすいように医薬組成物を錠剤や丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤に調製できる。医薬的に許容される担体については、レミントン医薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(Mack Pub.Co., N.J.1991)に詳細に議論されている。
【0054】
組成物はワクチン組成物として使用でき、従って、必要に応じアジュバント等の免疫刺激剤を含むことができる。本発明はその更なる様相において、ワクチン組成物を調製するための方法であって、本発明の上述の各様相に係るOmCIタンパク質又はその機能同等物等の補体阻害剤分子を、医薬的に許容される担体と、任意成分としてのアジュバントとを組み合わせることを含む方法を提供する。適切なアジュバントは本技術分野においてよく知られており、例としては水中油乳液調製物、サポニンアジュバント、完全フロイントアジュバント(CFA)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、組成物の有効性を高めるための免疫刺激剤として作用するその他の物質等が挙げられる。
【0055】
本発明はその更なる様相において、治療に用いるための上述の補体阻害剤分子、補体阻害剤分子を含む融合タンパク質、補体阻害剤分子をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子、或いは補体阻害剤分子のリガンドを提供する。
【0056】
本発明は更に、補体仲介疾病或いは障害に罹患している動物を治療する、或いは動物が補体仲介疾病或いは障害を発症することを予防する方法であって、治療有効量或いは予防有効量の、本発明の上述の各様相に係る補体阻害剤分子、補体阻害剤分子を含む融合タンパク質、補体阻害剤分子をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子、補体阻害剤分子のリガンド、或いは医薬組成物を前記動物に投与することを含む方法を提供する。
【0057】
好ましくは、前記動物は哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0058】
「治療有効量」という用語は、対象の疾患或いは症状を治療する或いは緩和するのに必要な化合物量をいう。本明細書において「予防有効量」という用語は、対象の疾患或いは症状を予防するのに必要な化合物量をいう。正確な用量は、通常、投与時の患者の症状によって決まる。用量を決定する際に考慮するファクターとしては、患者の病状の重篤度、患者の一般的健康状態、年齢、体重、性別、食事、投与時間と投与頻度、薬の組合せ、反応感度、治療に対する患者の耐容性や応答等が挙げられる。正確な量は通常の実験によって決めることができるが、基本的には臨床医の判断に従うべきである。一般に、有効用量は0.01mg/kg(患者の体重に対する医薬の質量)〜50mg/kg、好ましくは0.05mg/kg〜10mg/kgであろう。組成物は、患者に対し単独で投与することもできるし、他の剤、医薬、ホルモン剤と組合せて投与することもできる。
【0059】
本発明は更に、補体仲介疾患又は障害の治療或いは予防のための医薬の製造における、本発明に係る補体阻害剤分子、補体阻害剤分子を含む融合タンパク質、補体阻害剤分子をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子又は補体阻害剤分子のリガンドの使用を提供する。
【0060】
本発明の補体阻害剤分子、とりわけOmCIタンパク質或いはその機能同等物は、補体が何らかの役割を果たす全ての病状の治療において臨床的に使用できる可能性を有している(サフ(Sahu)とランブリス(Lambris)、2000)。
【0061】
本発明に係るOmCIタンパク質或いはその機能同等物等の補体阻害剤分子として好ましいものは、補体古典経路C5変換酵素によるC5切断と補体代替経路C5変換酵素によるC5切断の両方の阻害によって古典経路と代替経路とを阻害する。両C5変換酵素によるC5切断の特異的阻害は、C5a及びMACの生成を導く補体活性化の三経路全てをブロックするが、C3bに依存した補体の免疫クリアランス機能とオプソニン化機能とは保存される。このようなプロファイルは、アルツハイマー病、リウマチ様関節炎、糸球体腎炎、遅延型過敏症障害等の特定の疾患における治療的介入に有用であろう(コール(Kohl)、2001).
【0062】
例えば、アルツハイマー病(AD)は(補体が部分的に仲介する)顕著な脳の炎症を伴うが、そのマウスモデルにおいては、C3の阻害によってβアミロイドプラークの蓄積速度が上昇した(ウィス−コライ(Wyss-Coray)ら、2002)。従って、C3ではなくC5の阻害はADの治療に利益をもたらすであろう。
【0063】
C5変換酵素の役割の研究の結果、C5変換酵素によるC5切断を阻害するOmCIタンパク質或いはその機能同等物等の本発明の補体阻害剤分子は、他の広範な種類の疾患や障害の治療においても役立つであろうことが判明している。C5変換酵素の天然の阻害剤は報告されていないため、このステップを研究対象とする研究者はこれまで、阻害性を有する抗C5抗体、阻害性を有するRNAアプタマー、或いはC5a受容体を標的とする合成ペプチドを開発することによって研究を行ってきた(サフ(Sahu)とランブリス(Lambris)、2000に詳細に記載されている)。抗C5mAbBB5.1を用いた初期の研究(フレイ(Frei)ら、1987)では、免疫複合体腎炎(ワング(Wang)ら、1996)、コラーゲン誘起関節炎(ワング(Wang)ら、1995)、心筋虚血及び再潅流(Vakevaら、1998)、心肺バイパス患者(ローリンス(Rollins)ら、1998)等の各種疾患におけるC5aとMACの病理的役割を明確に確立している。抗C5mAB(18A10)は、ラットにおける神経移植片残存性を高めることがわかっている(チッケティ(Ciccheti)ら、2002)。
【0064】
従って、補体古典経路C5変換酵素によるC5切断と補体代替経路C5変換酵素によるC5切断の両方を阻害することによって両経路を阻害する、OmCIタンパク質或いはその機能同等物等の本発明の補体阻害剤分子は、次の重要な三領域、即ち(1)リウマチ様関節炎等の自己免疫疾患の制御、(2)手術後の補体による組織損傷の低減、及び(3)組織拒絶、特にトランスジェニック器官移植分野における組織拒絶の抑制の領域においてこれら疾患及び障害の治療に使用できるであろう。
【0065】
リウマチ様関節炎や糸球体腎炎等の自己免疫疾患の病理は多くの病因因子を有している。補体活性化の古典経路は、両疾患において一定の役割を果たしており、自己抗体の存在によってIgG及びIgA抗体−抗原免疫複合体が滑液或いは糸球体内に形成される(ダーハ(Daha)、1993)結果、補体の不適切な活性化と組織損傷を起こす。また、Crry(CR1マウス相同体)の過剰発現は、トランスジェニックマウスを抗体誘起急性腎不全から守る(シラー(Schiller)ら、2001)。更に、補体仲介免疫沈降を妨げることができるIgMリウマチ様因子の存在によって(ヤービス(Jarvis)ら、1993)、或いはMACが仲介する細胞作用と溶解に対する滑膜細胞の保護が低減することによって(コンティネン(Kontinnen)、1996)リウマチ様関節炎免疫複合体は複雑化する。補体代替経路によって作用するC5は、K/BxNマウスのリウマチ様関節炎モデルにおいて重要な役割を果たしていると見られる(ソロモン(Solomon)ら、2002)。従って、OmCIタンパク質或いはその機能同等物等の本発明の補体阻害剤分子はこれら自己免疫疾患の治療に有用であろう。
【0066】
補体活性化は、心筋機能の低下と冠再潅流圧力及びリンパ流量の上昇を惹き起こす。これら変化の多くはMACによって仲介される(ホメイスター(Homeister)、1992)。組換えDNA技術によって産生される溶解性CR1タンパク質は、ラットの一過性心筋虚血の再潅流傷害モデルにおける補体活性化とそれに続く炎症性作用を阻害するのに有効である(ワイズマン(Weisman)ら、1990)。Crryは、マウスの腸に対する虚血再潅流傷害を低減させる(レーリッヒ(Rehrig)ら、2001)。ヒトにおいては、単鎖ヒト化抗体h5G1.1−ScFVによるC5の阻害によって、心肺バイパス後の患者における術後心筋傷害、認知欠損(cognitive deficits)、血液損失がかなり緩和される(フィッチ(Fitch)ら、1999)。従って、古典経路C5変換酵素及び代替経路C5変換酵素の作用を阻害する本発明の補体阻害剤分子は、再潅流傷害等の術後心筋傷害の予防治療に有用であろう。
【0067】
超急性異系及び異種臓器(心臓と肝臓)拒絶に有効と考えられる古典経路及び代替経路補体阻害剤は目下注目の的となっている(ダイアモンド(Diamond)ら、1995;トーマス(Thomas)ら、1996;プラット(Pratt)ら、1996;タナカ(Tanaka)ら、1996;フィオランテ(Fiorante)ら、2001;バオ(Bao)ら、2002)。ヒトとブタの間の異種移植に対する主要な免疫学的なバリアは、プレフォームド天然抗体(preformed natural antibodies)と補体即ち古典経路の活性化によって仲介される急速な拒絶プロセスである。正常な状態では細胞を傷害から保護する補体調節タンパク質が異種補体の調節においてあまり機能しないため、異種移植した器官の移植片は特に補体仲介傷害を受けやすい。従って、本発明の補体阻害剤分子は、移植拒絶の予防においても有用であろう。OmCIタンパク質或いはその機能同等物は特に、OmCIタンパク質が広範な種類の哺乳動物種のC5変換酵素を阻害するため、移植拒絶の予防に有用であろう(齧歯動物と霊長類は今日までに調べられている)。
【0068】
C5変換酵素によるC5の変換中に産生されるアナフィロトキシンC5aは、敗血病、免疫複合体疾患、遅延型過敏症に関与することがわかっている。C5変換酵素を阻害するOmCIタンパク質或いはその機能同等物と本発明の他の補体阻害剤タンパク質はこれら障害の治療に有用であろう。OmCIタンパク質或いはその機能同等物は、移植の動物モデルにおいてC5a形成の阻害と、組織因子及びP−セレクチンの発現のアップレギュレーションを惹き起こす可能性のあるMACの付着の阻止によって、異種移植中のアジュバント治療剤として有用であることが立証されるかもしれない(フェッケ(Fecke)ら、2002)。
【0069】
その他の可能性のある具体的な用途としては、(1)血小板濃縮物の保管中の補体による血小板活性化の防止(ミレティック(Miletic)とポポビック(Popovic)、1993)、(2)輸血中のバイオ材料表面による補体活性化、(3)不妊治療(ベッドフォード(Bedford)とウィトキン(Witkin)、1983)、(4)遺伝子治療中の天然抗体及び補体による遺伝子治療レトロウィルスベクターの溶解からの保護(ローリンス(Rollins)ら、1996)が挙げられる。
【0070】
マダニ等の吸血性節足動物は疾患の媒介体として非常に有効である。従来、マダニの数を制御する技法においては、動物を殺ダニ剤等の薬剤で処理していた。この方法では、耐性を有するマダニを発生させてしまったが、これは新たな種類の薬剤を導入しなければならないことを意味している。更に、このような薬剤は殆ど効果が残存しないため、頻繁に使用しなければならない。第2の方法は、マダニ耐性を有する動物を育てることであるが、得られる耐性は理想のレベルからは程遠い。
【0071】
寄生虫媒介疾患を克服するため、マダニ全体の抽出物或いはマダニの消化管の抽出物を用いて動物を免疫感作する試みが数多くなされてきた。幾つかの報告においては、組換えマダニタンパク質を用いている(例えば、国際特許出願WO88/03929参照)。しかしながら、このように開発されてはいるものの、市販のマダニワクチンはB.ミクロプラス(B.microplus)マダニの成体段階にしか効果がなく、この種が生息する地理学的地域によって効率も様々である。
【0072】
本発明はその更なる様相において、吸血性節足動物によって媒介される疾病或いは障害に対して動物に予防接種をする方法であって、上述の本発明の各様相に係る補体阻害剤分子、補体阻害剤分子を含む融合タンパク質、補体阻害剤分子をコードする核酸分子又は組成物を前記動物に投与することを含む方法を提供する。
【0073】
好適なワクチン対象候補としては、ヒトや、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ等の吸血性節足動物(特にマダニ)とそれらが伝搬する感染に対して保護する必要のあるその他の動物等の飼育動物が挙げられる。ワクチンは単独で投与してもよいし、他の免疫原と組み合わせて投与することもできる。本発明の本様相の方法は、吸血性節足動物が伝搬する任意の疾患或いは障害に対して動物の予防接種を行うのに使用できる。吸血性節足動物は好ましくはマダニ、好ましくはO.ムバータ(O.moubata)である。オルニトドロス(Ornithodoros)類のマダニが伝搬する疾患或いは障害としては、ヒトについては回帰熱(Borreliosis)や西ナイルウイルス、ブタについてはアフリカ豚コレラウイルスが挙げられる。
【0074】
本発明は更に、診断ツールとしての本発明の上述の各様相に係る補体阻害剤分子の使用を提供する。本発明において補体阻害剤分子が特定されたことによって、研究者は、補体古典経路と補体代替経路の両方を同時に阻害する効果を検討できるであろう。とりわけOmCIタンパク質の特定によって、C5変換酵素の阻害による補体古典経路と補体代替経路の両方の同時阻害の効果を研究者は検討できるであろう。
【0075】
本発明は更に、細胞、組織又は非ヒト生物における補体古典経路及び補体代替経路を阻害する方法であって、本発明の上述の各様相に係る補体阻害剤分子、補体阻害剤分子を含む融合タンパク質、補体阻害剤分子をコードする核酸分子を前記細胞、組織又は生物に投与することを含む方法を提供する。具体的には本発明は、細胞、組織或いは非ヒト生物におけるC5変換酵素の作用を阻害する方法であって、OmCIタンパク質若しくはその機能同等物、OmCIタンパク質若しくはその機能同等物を含む融合タンパク質、OmCIタンパク質若しくはその機能同等物をコードする核酸分子を前記細胞、組織又は生物に投与することを含む方法を提供する。この方法によって研究者は、様々な疾患或いは障害におけるC5の役割を明確にすることができる。例えば、C5は喘息予防において予防を促進する役割を果たすかもしれないということが示唆されている(コール(Kohl)、2001)。本発明のC5変換酵素阻害剤は、それが本当であるかを決定するのに使用できる。
【0076】
次に、本発明の様々な様相及び実施形態を実施例によってより詳細に説明する。本発明の範囲から逸脱することなく詳細の変更を行うことができることは明らかであろう。
【実施例】
【0077】
実施例
材料及び方法
材料
ヒツジ及びウサギの赤血球は組織培養サービス(Tissue Culture Services)から入手し、溶血素、プール正常ヒト血清(NHS)及び除去血清(depleted sera)は全てシグマ社から入手した。モルモット血清は家庭用動物から得た。不純物を含まないC3、C4、C5、C8及びC9、並びにB因子及びD因子はカルビオケム(Calbiochem)から購入した。抗ヒトC3aウサギポリクローナル抗血清はカルビオケム(Calbiochem)から入手し、コブラ毒因子(CVF)はキデル(Quidel)から入手した。C5aELISA検出キットは、イムノ−バイオロジカル研究所(Immuno-Biological Laboratories)(IBL)から購入した。
【0078】
マダニ
オルニトドロス・ムバータ(Ornithodorus moubata )マダニはジョーンズ(Jones)ら(1988)に従い飼育した。
【0079】
唾液腺試料の調製と精製
唾液腺を顕微鏡下で切り取り、冷PBS緩衝液(0.O1Mリン酸緩衝液と0.15M NaCl pH7.2)中で簡単に濯ぎ、ドライアイスに入れたエッペンドルフ管に移して−20℃で凍結保存した。使用時に30対の唾液腺を解凍し、1mLダウンス(Dounce)ホモジナイザーを用いてPBS(500μL)に破壊した。ベンチトップ遠心分離機を用いて15000RPMでホモジネートを遠心分離し、上清(唾液腺抽出物(SGE)という)を回収して−70℃で保存、或いは補体阻害剤作用について試験をし、活性画分の分離に用いた。
【0080】
補体溶血アッセイの古典経路(CH50)
新鮮なヒツジ血液をAlsever’s溶液に添加したもの(5mL、1:1 vol/vol)をゼラチンベロメナールバルビタール−EDTA(GVB−EDTA)(50mL)中で1回、GVB2+緩衝液(Mg2+及びCa2+を含有するGVB緩衝液)(50mL)中で3回洗浄した。この血液を1×109細胞/mLとなるように希釈した。赤血球は、文献(コリガン(Coligan)、1994)の記載に従い力価を測定したウサギ溶血素を用いて感作した。アッセイは、補体材料としてのNHS或いはモルモット血清のGVB2+希釈液(1:40)(100μL)と、2×108個の感作赤血球(EA)(100μL)とを合せた総量200μLを用いて標準的なプロトコル(ギクラス(Giclas)、1994)に従い行った。SGE、ネイティブ或いは組換えOmCI(nOmCI或いはrOmCI)、或いはPBS(1〜5μL)を最後に添加し、反応物を37℃でインキュベートした。所定の時間(〜32分)の後、全細胞を12000×gで5秒間遠沈させ、分光測定(412nm)により溶血を測定した(コリガン(Coligan)、1994)。全てのアッセイは少なくとも3回行った。
【0081】
補体溶血アッセイの代替経路(AH50)
新鮮なウサギ血液をAlsever's溶液に添加したもの(5mL、1:1 vol/vol)をGVB/Mg(10mM)EGTA緩衝液(50mL)中で3回洗浄した。各洗浄の間には1500×gで10分間遠心分離を行った。このウサギ血液を、2×108細胞/mLとなるように希釈した。NHSをGVB/Mg EGTA緩衝液に希釈した。アッセイ量は、調製した血液50μLを用いて150μLとした。最後に1〜5μLのSGE、PBS、ネイティブOmCI或いは組換えOmCIを反応物に添加し、反応物を37℃でインキュベートした。所定の時間(〜60分)の後、全細胞を12000×gで5秒間遠沈させ、分光測定(412nm)により溶血を測定した(コリガン(Coligan)、1994)。全てのアッセイは少なくとも3回行った。
【0082】
特定の補体成分を除去した血清を用いた溶解アッセイ
ヒト除去血清をメーカーの指示に従い用いたが、各反応物の総量は減らして200μLとした。90%溶解を示す不純物を含まない補体成分の量及び希釈度は経験的に決定した。反応物は37℃で30分間インキュベートした。全てのアッセイは少なくとも3回行った。
【0083】
SGEからのO.ムバータ(O.moubata)補体阻害剤(OmCI)の精製
SGE(150μL)を25mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)、50mM NaCl(5mL)に希釈し、1mLのQ−セファロースHP陽イオン交換カラム(ファルマシア)に流量1mL/分で通した。カラム体積の10倍量のランニングバッファで洗浄した後、結合したタンパク質を40分、0.05〜0.75M NaCl勾配を用いて流量0.5mL/分で溶離させ、280nmを観測した。1mLずつの画分として回収し、10μLをアッセイに用いて補体阻害剤作用を測定し、総量200μLのCH50アッセイを行った。代表的な活性画分及び非活性画分をセントリコン3濾過装置(アミコン)を用いて50μLに濃縮し、PBS(2mL)を添加し、画分を再度50μLに濃縮し、各1.5μLを4〜12%トリス−トリシン変性SDSゲル(インビトロジェン)上で泳動させた。活性画分及び非活性画分について1レーンあたり5μLをpH3〜7のIEFゲル(インビトロジェン)上を泳動させ、0.7%酢酸を用いてイモビロンTM−P(ImmobilonTM-P)(ミリポア)にエレクトロブロッティングした。膜をポンソーSで染色し、主要なバンドを切り取って、1分間ボルテックスし10分間15000回転で3回遠心分離をすることによって200μLの50mMトリス(pH8)、2%Triton−X100に溶出させた。Triton−X100は、上述の条件下でタンパク質をQ−セファロースHPカラムで再精製することによって除去した。セントリコン3濃縮を行い、緩衝液をPBSに交換した後、補体阻害剤活性測定のため、試料をアッセイして、4〜12%ゲル上で調べるか、HPLC分画とタンパク質配列解析に付した。
【0084】
溶血アッセイ中のC3a産生の検出
CH50/AH50アッセイは、ネイティブOmCIを含有している或いは含有していないNHS又はモルモット血清を総量200μL(最終希釈度1:80)で用いて行った。反応物を37℃とし、所定の時間に水槽から取り出し、12000gで10秒間スピンし、上清を取って続くイムノブロッティングによる分析に用いた。減少(reduced)した各上清試料(l0μL)を4〜12%ビス−トリスゲル上でMESランニングバッファ(インビトロジェン)を用いて電気泳動した後、ニトロセルロースに転写した。全てのレーンに等しくローディングされ均一に転写されていることは、ポンソー染色した血清アルブミンの強度で判断した。C3のC3a切断は抗ヒトC3aウサギ単一特異的抗血清(カルビオケム)を用いたイムノブロッティングにより検出した。ニトロセルロース膜をリン酸緩衝生理食塩水、0.1%Tween20、5%無脂肪乾燥ミルク(PBSTM)で一晩ブロッキングした。この後に行う全ての希釈及び洗浄工程は、特段の記載のないかぎりこの緩衝液を用いた。抗C3a抗血清を1:500に希釈し、膜を2時間インキュベートした。次に膜を20分間2回洗浄し、抗ウサギアルカリホスファターゼコンジュゲート(シグマ)のPBSTM希釈物(1:3000)を添加した。膜を更に2時間インキュベートした後、5分間2回洗浄し、水で簡単にすすぎ、BCIP/NBTパープルリキッドアルカリホスファターゼサブストレート(シグマ)(10mL)を添加した。
【0085】
溶血アッセイ中のC5a産生の検出
C3a検出と同様にして溶血アッセイを行った。C5aELISAキット(IBL)を用いてC5からC5aへの切断を検出した。未切断のC5との交叉反応が起こらないようにするため、キットメーカーが提供した試薬を用いて、溶血アッセイから得た上清中のC5を沈澱させた。キットの測定範囲は0.1〜10μg/Lである。検出下限は0.02μg/Lである。
【0086】
コブラ毒因子(CVF)による血清からの補体除去
ヒト血清(5μL)に0.25μgのCVF(0.25μg/μLストック)とネイティブOmCI(1μL)或いはPBS(1μL)とを添加し37℃で1時間インキュベートした。このCVF処理血清の半分量をGVB2+(97.5μL)及びEA(100μL)に添加した。37℃で20分間インキュベートした後、反応上清中のC5aの溶解率及び濃度(上を参照)を測定した。
【0087】
活性画分のHPLC、タンパク質配列解析及びトリプシン消化
IEF分解タンパク質から溶出した活性画分(20μL)をジュピター(Jupiter)C4カラム/150×1.0mm(0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)含有勾配10〜40%アセトニトリル(ACN)、流量1mL/分、0.5%ACN/分漸増)に通し、215nmをモニターした。約53分における4本の近接したランニングピークをイモビロン(Immobilon)−P膜に転写し、アプライドバイオシステムズミニブロット(Mini-Blott)カートリッジを用いて配列解析した。各タンパク質に対し25サイクル行った。
【0088】
トリプシン消化産物の配列解析のため、(最初のHPLC分離において観察された4本のピーク全てを含む)53分の主要ピークをSpeedVacで乾燥し、6Mグアニジン 0.5M Tris pH8.0に再度溶解後、4−ビニルピリジン使用下で減容化しアルキル化した(reduced and alkylated)。これを再度、同じジュピター(Jupiter)C4カラムに通した。保持時間の変化は見られなかった。主要ピークをSpeedVacで乾燥し、0.1M重炭酸アンモニウムpH8.1に再溶解した。10μLのピアス(Pierce)固定化トリプシンを添加し、間欠的に混合しながら37℃で5時間インキュベートした。次に混合物を10000rpmでスピンし、上清について173aマイクロブロッティングHPLC(アクアポア(Aquapore)C18カラム/100×0.5mm)を行った。目的のピークを膜から切り取り配列解析を行った。各タンパク質に対して15サイクル行った。
【0089】
O.ムバータ(O.moubata)cDNAライブラリーの構築
3回乃至4回の給餌後のO.ムバータ(O.moubata)幼虫から60対の唾液腺を上述のように切り取り、1mLのRNAlaterTM(アンビオン(Ambion))(PBSの替わり)に添加し−20℃で保存した。FastTrackTM2.0mRNA単離キット(インビトロジェン)を用いてmRNAを単離し、ストラタジーンcDNA合成キット(カタログ番号200401−5)を用いてcDNAを合成した。セファロースCL−2Bカラムを通して大きなcDNAと小さなcDNAを分画後、エタノール沈澱させた各cDNAペレットをddH2O(3.5μL)に再懸濁させた。cDNA収量は、大きな分子については約3.0ng/μL、小さな分子については5ng/μLであった。残留した大きなcDNAと小さなcDNAは全て、ストラタジーン UniZAP XRファージベクター(カタログ番号237211)を用いて連結し、Gigapack(登録商標)III Goldパッケージングエキストラクトを用いてパッケージングした。大きなcDNAのライブラリーには11500のプライマリープラークがあり、小さなcDNAのライブラリーには480500のプライマリープラークがあった。増幅後の大ライブラリー及び小ライブラリーのタイターはそれぞれ1.5×108pfu/mL及び4×109pfu/mLであった。
【0090】
各ライブラリーから20個のプラークを取り出して0.5mLのSM緩衝液(0.1M NaCl、8mM MgSO4、50mM TRIS.HCl pH7.5、0.01%ゼラチン)1%クロロホルムに添加し、ボルテックスによりアガロースプラグから溶出させる。ファージ挿入サイズを、T7(T7 5’TAA TAC GAC TCA C
TA TAG 3’)プライマー及びT3(5’AAT TAA CCC TCA CT
A AAG3’)プライマーを用いてPCRにより確認する。各100μLの反応液は、
溶出されたファージ(2μL)、10mM dNTPs(2μL)、各プライマー(2μL)(0.5μg/mLのストックから)、10X REDTaq(シグマ)PCR反応緩衝液(10μL)(100mM Tris−HCl pH8.3、500mM KC1、llmM MgCl2、0.1%ゼラチン)、REDTaq(シグマ)DNAポリメラーゼ(3μL)(20mM Tris−HCI、pH8.0、100mM KCl、0.1mM EDTA、1mM DTT、0.5% Tween20、0.5% Igepal CA−630、不活性染色剤、50%グリセロール中に1unit/μL)、及びddH2O(79μL )からなる。熱サイクル(Hybaid Touchdown thermal cycler)パラメータは、1×94℃ 4分、30×94℃ 1分、48.5℃ 45秒、72℃ 90秒、1×72℃ 5分とした。このPCR産物のアガロースゲル電気泳動を行った結果、大ライブラリーインサートは≧1000塩基対であり、小ライブラリーインサートは≦1000塩基対であることがわかった。
【0091】
cDNAコード補体阻害剤のクローニング
HPLCで53分に溶出された2本の主要ピークについて決定した各N末端配列を用いて、T7プライマー(UniZAP XRベクターに結合)と共に用いるための縮重(degenerate)プライマー(OF4)を設計し、補体阻害剤をコードするcDNAを増幅した。OF4の配列は、5’GTAC WSN GGN WSN GAR CCN GT3’(N=A又はC又はG又はT;R=G又はA;S=G又はC;W=A又はT)であった。100μLの反応液は、大又は小のcDNAライブラリー(3μL)、10mM dNTPs(3μL)、T7(2μL)とOF4(4μL)(0.5μg/mLのストックから)、10X REDTaq PCR反応緩衝液(10μL)、REDTaqDNAポリメラーゼ(3μL)及びdH2O(75μL)からなる。熱サイクルパラメータは1×94℃ 4分、30×94℃ l分、48.5℃ 45秒、72℃ 90秒、1×72℃ 5分であった。
【0092】
アガロースゲル電気分解の結果、各種PCR産物が示された。OF4プライマー由来の2種の産物をQiaex IIゲル抽出キット(キアゲン)を用いて精製し、ABI PRISMTMダイターミネーター法サイクル・シーケンシング・レディ・リアクション・キット(dye terminator cycle sequencing ready reaction kit)とABIシーケンサ(パーキン・エルマー)を用いて配列解析した。
【0093】
T7と共にプライマーOF4を用いて小cDNAライブラリーから得た最大(約500bp)で最も強度の強いPCR産物のコンセプト翻訳(conceptual translation)を行った結果、O.ムバータ(O.moubata)血小板凝固阻害剤ムバチン(moubatin)(ワックスマン(Waxman)とコノリー(Connolly)、1993)のC末端配列との高いBlastX(アルツシュル(Altschul)ら、1997)マッチングが示された。この配列は、このペプチドをコードするcDNAの停止コドンを超えて延びている。この停止コドンを超えた領域に適合するリバースプライマー(OR1 5’GGG AGG CTT TCT G
TA TCC 3’)をT3プライマー(UniZAP XRベクターに連結)と共に用
いてこのcDNAの5’末端を得た。650bpのPCR産物をクローニングしてpGEM(−T Easyベクター(プロメガ)とした後、別のプライマー(OR3 5’CG
T CCA ATC GGT TGA AG 3’及びOF6 5’GAC TCG
CAA AGT CAT CAC 3’)を用いて配列解析した。
【0094】
配列解析
解析は、GCGの一連のプログラム(ウィスコンシン・パッケージ(Wisconsin Package)バージョン10.1、ジェネティックス・コンピュータ・グループ(Genetics Computer Group)(GCG)、ウィスコンシン州マジソン)とスイス・バイオインフォマティクス研究所(Swiss Institute of Bioinformatics)(http://expasy.hcuge.ch/)のExPASy(エキスパートタンパク質解析システム(Expart Protein Analysis System))プロテオミクス・サーバーとを用いて行った。配列は、BlastXプログラム(アルツシュル(Altschul)ら、1997)を用いてGenBankノンリダンダント(non-redundant)(NR)タンパク質データベースと比較し、Pfam(ベートマン(Bateman)ら、2000)タンパク質ドメインとSMART(シュルツ(Schultz)ら、2000)タンパク質ドメインとについて検索した。Clustal X(ジーンムジン(Jeanmougin)ら、1998)を用いて多重配列アラインメントを行った。
【0095】
酵母の発現とOmCIの精製
OmCIコード領域をポリメラーゼ連鎖反応(PCR;95℃ 30”、50℃ 30”、72℃ 30”;18サイクル)により増幅した。増幅には、フォワードプライマーとしてOM1Y(5’−ATAGAGCTCAAAATGCTGGTTTTGGTGACC−
3’)を用い、リバースプライマーとしてOR7a(タグ化産物のための5’ACTGA
GCGGCCGCCTAGTGATGGTGATGGTGAT GACCGCAGTCCTTGAGATGGGG 3’)或いはOR6(5’ACT GAGCGGCCGCCT
AGCAGTCCTTGAGATGGGG 3’ 非タグ化産物)を用いた。これらプラ
イマーは制限部位に組み込み、開始コドンの上流にSac I部位が挿入され、停止コドンの下流にNot I部位が挿入されるようにした。これをpMETαCトランスファーベクター(インビトロジェン)のSac I部位とNot I部位の間に連結した。このプラスミド(XL1−Blue細胞(ストラタジーン)において増幅)を、供給者(インビトロジェン)の指示に従いピッチア・メタノリカ(Pichia methanolica)のpMAD16株及びpMADll株に形質転換した。陽性クローンは緩衝デキストロース複合培地(Buffered Dextrose-complex Medium)BMDY中で増殖させ、タンパク質発現を緩衝メタノール複合培地(Buffered Methanol-complex Medium)中で誘起した。上清及び6種の陽性クローンにおけるタンパク質発現をCH50溶解アッセイにより24時間毎に5日間アッセイした。
【0096】
96時間インキュベーション後、500mLの酵母細胞培地を6370×gで15分間遠心分離し、30%(w/v)のPEG−8000を添加し氷冷下1時間攪拌して上清から阻害剤を沈澱させた。23700×gで1時間遠心分離後、タンパク質ペレットを50mLの25mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)、50mM NaClに再懸濁させ、6000rpmで遠心分離して不溶物を除去した。除去後の溶液を1mLのQ−セファロースHP陽イオン交換カラムに通し、各画分の補体阻害活性を上述のように測定した。活性画分をプールし、セントリコン(Centricon)3濾過装置(アミコン)を用いてPBS(300μL)に対し交換した。18900×gで10分間遠心分離後、ランニングバッファとして20mM Tris(pH7.6)、200mM NaClを用い流速0.5mL/分でスーパーデックス(Superdex)TM75カラム(ファルマシア)に付した。各画分(0.5mL)について280nmを監視し、30分間回収した。各画分(5μL)の阻害活性をアッセイし、活性画分をPBSに対して交換し、変性SDS−PAGEにより視覚化した。
【0097】
精製したrOmCIをメーカー(ニュー・イングランド・バイオラボ(New England Biolabs))の指示に従いペプチドN−グリコシダーゼF(PNGaseF)で処理した。脱グリコシル化されたrOmCIを上述の通りにゲル濾過により再精製した。CH50により阻害性を有する画分を5画分特定し、各15μLを変性条件下或いは非変性条件下でSDS PAGEに供した。
【0098】
ネイティブOmCIの熱安定性及びpH安定性
モルモット血清1:40希釈物の場合に古典経路仲介細胞溶解を約90%阻害するネイティブOmCIの最小量は、全反応量100μLに対して25ngであった。熱安定性を確認するため次の処理を行った。1μLのネイティブOmCI(250ng)をPBS(9μL)に希釈した。各試料を0、3、9、27分沸騰させ、急速に氷冷し、1μL(25ng)を100μLのCH50アッセイ試料(1:40モルモット血清希釈物)に添加した。pH安定性を測定するため次の処理を行った。1μLのネイティブOmCI(250ng)を9μLの10mM酢酸ナトリウム(pH4.5及び5.5)、10mM Tris.Cl(pH7及び8.2)或いは10mM CAPS(pH10及び11)緩衝液で希釈した。37℃で30分間インキュベート後、1μL(25ng)を100μLのCH50アッセイ試料(1:40モルモット血清希釈物)に添加した。対照として、1:40血清希釈物の存在下或いは非存在下において各緩衝液1μLのみを含有する物を用いた。全てのアッセイは三連で行った。
【0099】
OmCIに結合しているC5の検出方法
0.5μgのネイティブOmCI及び5μgのRaHBP2を非変性SDS−PAGEに付し、ニトロセルロースに転写して、PBS、0.05%Tween20、5%無脂肪乾燥ミルク(non-fat dried milk)(PBSTM)中で一晩ブロッキングした。C3及びC5をIodogenを用いてメーカー(ピアス社)の指示に従いI125で標識した。ブロットを、PBSTM(15mL)中、I125標識C3(1440kcpm/分)(2μg)及びI125標識C5(2160kcpm/分)(2μg)を用いて室温で4時間インキュベートした。室温でPBSTMを用いて3×20分洗浄後、ニトロセルロース膜を乾燥し、オートラジオグラフィーに付した。
【0100】
ゲル濾過クロマトグラフィーのため、0.07μgのI125標識OmCI(1687kcpm/分)を2μgの純粋なC3又はC5で、或いは23.8μLのNHS或いはC3又はC5除去血清でインキュベートした。PBSを全量100μLとなるように添加し、混合物を10分間インキュベート後、1mL/分PBSの流速でスーパーローズ(Superose)12 10/30カラムを用いてクロマトグラフィーを行った。各1mLの画分を回収し、手持ちサイズのガイガーカウンターを用いて所定の距離においてcpmを測定した。
【0101】
結果
O.ムバータ(O.moubata)SGEからの活性画分の精製及び特定
陽イオン交換クロマトグラフィー後、活性画分を0.25M NaClで溶出させた(図2a及び図2b、矢印)。活性画分と対照画分(図3a)をIEFゲル(図3b)からPVDF膜に電気ブロットし、膜をポンソーSで染色した。主要なバンドを切り取り、溶出させ、陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製して、補体阻害活性をアッセイした。変性SDS PAGEの結果、阻害活性は、質量約19kDaのトリプレットのタンパク質に関連していることが分かった(図3a)。IEFの結果、阻害活性はpIが約4.2のシングルの支配的バンドに関連していることが分かった(図3b、画分17からの上方バンドキャリーオーバー)。PVDF溶出画分のHPLCでは、隣接する4本のピークを示した(図3c)。最も大きなピーク(図3c、ピークD)から獲られた17アミノ酸N末端配列(DSESDXSGSEPVDAFQA)を用いて、このN末端配列に適合するO.ムバータ(O.moubata)cDNAライブラリーからのPCR産物を精製する縮重プライマーを設計した。
【0102】
cDNAコードOmCIの一次構造
完全長クローンの配列から、OmCIは168個のアミノ酸長であることが分かる(図4)。このタンパク質は最初の18個の残基からなるN末端分泌シグナルを有する。N末端配列解析によると、シグナルペプチド切断部位はAla18〜Aspl9である。成熟(mature)タンパク質の予想分子量は16.77kDaであり、等電点は4.3である。予想されるNグルコシル化部位(Asn78とAsnl02)は2箇所であり、12の潜在的リン酸化部位(Ser20、22、25、84、113、115、156、Thr90、Tyr17、43、111、130、162)が存在する。しかしながら、このような部位の出現可能性は高く(タンパク質キナーゼC部位、カゼインキナーゼII部位、チロシンキナーゼ部位)、部位予想は必ずしも真の変化(genuine modification)を示していない。
【0103】
OmCIの一次配列は、ソフトマダニ(soft tick)であるオルニトドロス・サウィギニュイ(Ornithodorus savignyi)のマダニ唾液腺タンパク質2及び3(TSGP2及び3)に対する同一率が58%であり(マンズ(Mans)ら、2001)、オルニトドロス・ムバータ(Ornithodorus moubata)からのムバチンに対する同一率は49%である(ワックスマン(Waxman)とコノリー(Connolly)、1993)。これら4種のタンパク質には、全てのシステイン残基、従って恐らくはジスルフィド架橋パターンが保存されている(図5)。このアラインメント分析から、OmCIには、2個の明らかな短いアミノ酸挿入、即ちアミノ末端のSESDと成熟ペプチドの配列全体の2/3程度の部分のPDとが挿入されていることが分かる(図5)。この一次配列は、I.スカプラリス(I.scapularis)の抗補体タンパク質を含む、各種公共データベース上の他のいずれの配列とも顕著なマッチングを示していない(ヴァレンツェラ(Valenzuela)ら、2000)。ムバチンとTSGP2及び3とは、マダニ特異的タンパク質のヒスタミン結合タンパク質ファミリーを含む、ベータバレル形成タンパク質のリポカリンファミリーのメンバーであると考えられる(ピーセン(Paesen)ら、2000)。
【0104】
組換え(r)OmCIの発現及び精製
アッセイした6種の陽性酵母クローンは、様々なレベルのOmCI発現を示した(図6a及びb)。発現が検出された場合は全て、阻害活性は5日目の最終アッセイポイントまで増加し続けた。発現されたタンパク質の約90%は上清中に存在していた(図6b)。クローン13.1は、最も高い発現レベルを示したので、続く発現研究に用いた。PEG沈澱及び2回のクロマトグラフィー段階を経て一部精製された活性rOmCIは、かなりグリコシル化された形態(図7a、画分9、10及び11)とグリコシル化されていない形態(図7a、画分12及び13)で存在する。グリコシル化された形態は、PNGaseFで処理することにより、グリコシル化されていない形態に対応することが示された(図7b)。グリコシル化されたrOmCI及びネイティブOmCIと、グリコシル化されていない或いは脱グリコシル化されたrOmCI及びネイティブOmCIとは、CH50アッセイにおいていずれも等しく活性を有していた(データは示さず)。rOmCIの最終収量は約0.3μg/mL培地であった。
【0105】
OmCIの作用機構
OmCIは両方の補体経路を阻害する。しかしながら、古典経路は完全に阻害できるが、代替経路による赤血球の溶解の阻害は、過剰量のOmCIを使用した場合であっても80%しか阻害できない(図8)。
【0106】
OmCIは、事前形成された(preformed)C5b−7及びC5b−8へのC8及びC9のそれぞれの取り込みを阻害しない(図9)。更に、OmCIは、古典経路或いは代替経路によるC3α切断によるC3a生成速度に影響を与えることもない(図10)。OmCIは、正に両経路によるC5からのC5aの生成を阻止するのである(図11)。過剰な純粋C5は、C3と異なり、古典的溶血アッセイにおけるOmCI阻害剤の作用に打ち勝つ(図12)。OmCIは、CVFによる血清からの補体除去(decomplementation)を阻止しない(データは示さず)。またOmCIは、CVFC3/C5変換酵素(CVFBb)によるC5aの産生も阻止しない(図11)。
【0107】
ネイティブOmCIの熱安定性及びpH安定性
OmCIの煮沸は、9分まで行ってもこのタンパク質の阻害活性には大きく影響しないが、27分後までには阻害活性が低減する(図13)。ネイティブOmCIは、pH11までのアルカリ性緩衝液との接触による影響を受けない(図14)。OmCIの阻害活性はpH4.5の緩衝液との接触により大きく低減する(図14)。銀染色ゲルにより、これが単にこのpHにおけるOmCIの沈澱によるものではないことが分かった。
【0108】
OmCIに結合しているC5の検出
125標識C3及びI125標識C5のウェスタンブロッティングから、OmCIは、関連するタンパク質C3に結合するのではなくC5に直接結合することが分かる(図15)。
【0109】
OmCIとC5が直接相互作用することに対する別の証拠を、ゲル濾過クロマトグラフィーにより得た。精製したC5の存在下においてはI125標識nOmCIの一部の明らかな質量シフトが観察されたが、C3存在下においては観察されなかった(図16a)。同様の質量シフトが、NHS或いはC3除去血清の存在下において見られたが、C5除去血清存在下では見られなかった(図16b)。1M NaCl存在下においても質量シフトは見られたが、2M NaCl存在下では観察されなかったことから、阻害剤とC5の間に強い静電相互作用があることが分かる(データは示さず)。
【0110】
考察
他の各種タンパク質と従来の補体阻害剤との関係
OmCIは、ソフトマダニであるO.サウィギニュイ(O.savignyi)(マンズ(Mans)ら、2001)のマダニ唾液腺タンパク質2及び3(TSGP2及び3)と血小板凝固阻害剤のムバチン(ワックスマン(Waxman)とコノリー(Connolly)、1993)とに最も密接に関連している。これら3種のタンパク質(図5)のいずれも補体を阻害することはこれまで示されてもいないし、示唆もされていない。これら密接に関連する各タンパク質(図5)には存在せずOmCIには存在するこの2個の小さなアミノ酸挿入は、将来、OmCIにおける補体結合部位を確定するための突然変異研究において注目される部位であることはが明らかである。
【0111】
TSGP2と3のアミノ酸同一性は95%であり、マダニ唾液腺における顆粒(granule)のバイオゲネシスにおいて役割を有しているのではないかと提唱されている(マンズ(Mans)ら、2001)。TSGP2はマウスに対し毒性を有するが、TSGP3は有さない(マンズ(Mans)ら、2002)。O.ムバータ(O.moubata)が非毒性であるため、OmCIは毒物となる可能性は低い(アスティガラガ(Astigarraga)ら、1997)が、O.サウィギニュイ(O.savignyi)は幅広い種類の哺乳動物においてスナダニ中毒(sand tampan toxicoses)を惹き起こす(マンズ(Mans)ら、2002)。更に、抗血清製造時にモルモットに100μgの精製ネイティブOmCIを接種しても、何ら明白な病態生理学的作用を示さない(個人的な観察)。
【0112】
OmCIは恐らく、マダニ特異的タンパク質のヒスタミン結合タンパク質ファミリーを含むタンパク質のリポカリンファミリーのメンバーである(ピーセン(Paesen)ら、2000)。リポカリンは主に、そのベータバレル構造内の小さな疎水性細胞外リガンドと結合する。しかしながら、マダニのリピセファラス・アッペンディクラータス(Rhipicephalus appendiculatus)のヒスタミン結合タンパク質は、このタンパク質を親水性分子に結合することができる通常のリポカリンとは非常に異なる構造を有する(ピーセン(Paesen)ら、1999;ピーセン(Paesen)ら、2000)。OmCIがどの小リガンドとも結合するか否かについては未だ分かっていない。
【0113】
OmCIの一次配列は、生体自身が保有する補体阻害剤(H因子、C4BP、CR1、CR2、MCP、DAF等)の多くを形成する補体制御タンパク質(CCP)ドメイン(複数の約60アミノ酸の繰返し部分)に対し、検知可能な同一性を有さない。しかも、イクソデス・スカプラリス(Ixodes scapularis)の唾液腺補体代替経路阻害剤タンパク質Isacを含め、公的データベースに載っている従来知られた他のどの補体阻害剤とも類似していない(ヴァレンツェラ(Valenzuela)ら、2000)。また、O.ムバータ(O.moubata)やO.エラティカス(O.erraticus)のSGEにおいて従前観察された強力な補体阻害をもたらす因子ではないか(アスティガラガ(Astigarraga)ら、1997)として挙げられたO.ムバータ(O.moubata)抗原20A1のN末端配列とも関連していない(バランダ(Baranda)ら、2000)。
【0114】
補体阻害機構
酵母に発現したグリコシル化rOmCIと脱グリコシル化rOmCIの両方とも、SGEから精製されたネイティブタンパク質と同等に強力である。昆虫細胞において発現したC末端ヒスチジンタグ化OmCIはそれ程強力ではない(データは示さず)。OmCIは、ヒトとモルモットの補体活性化の古典経路と代替経路の両方を阻害するので、恐らく他の哺乳動物の経路も同様に阻害するであろう。この性質は、どのようにOmCIが作用するかを正確に規定するのに有用であろう。また、現在のC5阻害剤の種特異性が齧歯目動物を用いたインビボ研究の妨げとなる場合には、この性質は補体仲介疾患の動物モデルの開発においては価値がないものであろう(リンク(Link)ら、1999)。
【0115】
OmCIはC3α切断速度に何ら影響しない(図10)ので、古典経路の(C4bC2a)C3変換酵素も代替経路の(C3bBb)C3変換酵素も阻害しない。しかしOmCIはC5からのC5a産生を阻害する(図11)。過剰なC5が阻害剤OmCIの作用に競い勝つ(図12)ことからみて、本マダニ阻害剤存在下で機能的古典経路C5変換酵素(C4bC2aC3b)と代替経路C5変換酵素(C3b2Bb)とが形成されているに相違ない。OmCIは変換酵素触媒成分C2a或いはBbの直接的なセリンプロテアーゼ阻害剤ではないであろう。もし阻害剤であるならば、C5a産生と同様にC3a産生も阻害するであろう。本阻害剤はCVFC3/C5変換酵素(CVFBb)によるC5a産生を阻止しない(図11)が、これは、OmCIはC5に結合せず、C5a切断部位をブロックするのでもないことを示唆する。後者の知見は、OmCIがCVF変換酵素に結合するのではなく正常血清のC5変換酵素への結合を阻害するC5上の部位に結合するという可能性を排除するものではない(サンドバル(Sandoval)ら、2000)。
【0116】
独立して行った2系統の証拠から、OmCIの作用はC5への直接的な結合によって仲介されることが示唆される(図15及び図16)。
【0117】
OmCIは両方の補体経路を阻害するが、過剰の阻害剤を用いた場合であっても、代替経路はせいぜい80%しか阻害されない(図8)。これは、古典経路(C4bC2aC3b)と代替経路(C3b2Bb)で使用されるC5変換酵素が異なるということで説明できるが、この機構は調査中である。
【0118】
要約すると、OmCIは恐らく、C5に結合してC5がC5変換酵素と相互作用するのを阻害するか、或いはC5変換酵素とC5とに結合してC5切断を阻害する。現時点では、本発明者らは一方の可能性が他方より高いことを確信できる証拠は得ていない。
【0119】
ネイティブOmCIの熱安定性及びpH安定性
OmCIは熱安定性を有するが、27分間煮沸すると活性は失われ始める。OmCIは酸による影響は受けるが、アルカリには影響されないと考えられる。恐らく、より長時間の煮沸と酸への曝露によってこのタンパク質を不活性化する立体配置変化が起こるであろう。
【0120】
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【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】補体活性化の古典経路及び代替経路の概略図(酵素成分は濃い灰色で示し、アナフィラトキシンは白抜き多型星印で囲む)。
【図2】O.ムバータ(O.moubata)補体阻害剤(OmCI)の精製。a.陽イオン交換クロマトグラフィー。ピークは、矢頭で示す阻害剤を含む。b.古典的溶血アッセイ。試料1(黒バー)は100%溶解;試料2は0%溶解;試料3(斜線ハッチバー)は血清のみ;試料4は血清+SGE(1μL);試料5〜23(灰色バー)は血清+パネルaに示す画分10〜28(10μL)。3連の平均。
【図3】精製OmCIの(a)変性SDS−PAGE解析、(b)等電点電気泳動(IEF)解析、(c)高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)解析。パネルaとbの画分f15及びf17は同一である。画分f15は回収後HPLC解析を行った。cパネルについては、サイズマーカー及び等電点(PI)マーカーはパネルa及びbの左に示す。
【図4】OmCIの一次配列。シグナル配列には下線を付した。システイン残基は太字で示し、ヌクレオチド番号及びアミノ酸番号は右に記す。
【図5】OmCI、マダニ唾液腺タンパク質2及び3(TSGP2及び3)、並びにムバチンのクルスタルX配列アラインメント。同一の残基は灰色(システインは黒)でハイライトしアスタリスクを付す。
【図6】OmCIをゲノムに挿入した酵母クローン(13.1〜13.5)と、ベクターのみをゲノムに挿入したクローン(対照)の上清(a)及び細胞ペレット(b)における阻害活性。
【図7】酵母細胞発現rOmCIの発現(a)及び脱グリコシル化(b)。a.スーパーデックス−75ゲル濾過カラムからの画分9〜13のSDS PAGE、b.PNGaseF処理による高度にグリコシル化されたrOmCI(パネルaの画分9〜11)の移動度への影響。矢印はPNGaseF(上の矢印)とネイティブOmCI(下の矢印)を示す。EV504はOmCIとの関連が薄く、グリコシル化されることが知られている。サイズマーカー(kDa)はパネルの左に示す。
【図8】異なる濃度のネイティブOmCI用いた、補体活性化の古典(CH50)及び代替(AH50)経路により惹き起こされる溶解の阻害。4連の平均。
【図9】部分的に形成された膜浸襲複合体(MAC)へのC8及びC9の添加に対するOmCIの影響。100%溶解及び0%溶解、阻害剤(PBS)非存在下、並びに阻害剤(SGE)存在下の吸光度を示す。6連の平均。
【図10】(a)変性SDS−PAGE及び(b)C3a特異的抗血清を用いたイムノブロットにより解析した結果、C3αからC3aへの古典経路切断に対してOmCIの影響がないことを示す時間変化。a.反応開始後の時間(分)を示す。反応は、阻害剤(OmCI)あり或いは阻害剤なし(PBS)で、或いは10mM EDTA存在下で行った。ウシ血清アルブミン(BSA)及びヘモグロビン(HAE)の位置を示す。サイズマーカー(kDa)はパネルの左に示す。b.パネルaと同様に、C3a及びC3αの位置を示す。
【図11】古典経路C5変換酵素、代替経路C5変換酵素、或いはコブラ毒因子(CVF)C5変換酵素によるC5αからC5aへの切断に対するOmCIの影響(ELISA解析)。放出された数ピコグラム/μLのC5aを測定した。測定は、水によるヒツジ赤血球の100%溶解後、GVB2+のみにおける0%溶解後、阻害剤(OmCI)を用いた反応後、及び阻害剤なし(PBS)での反応後に行った。4連の平均。
【図12】完全に溶解を阻止できるOmCI最小量の存在下(+)又は非存在下(−)におけるヒツジ赤血球の古典経路溶解に対する、C3除去血清及びC5除去血清への純粋なC3及びC5添加の影響(1対数倍過剰における)。4連の平均。
【図13】CH50アッセイにおけるOmCIの阻害活性に対する煮沸の影響。
【図14】CH50アッセイにおけるOmCIの阻害活性に対するpH処理の影響。
【図15】nOmCIに結合しているC5の検出。ニトロセルロースに転写したnOmCI及びRaHBP2(対照)をI125標識C3或いはC5でプローブ後、オートラジオグラフィーに付した。タンパク質サイズマーカー(kDa)はパネルの左に示す。
【図16】ゲル濾過クロマトグラフィーによるC5に結合しているnOmCIの検出。(a)精製C3及びC5(純粋C3/C5)の存在下或いは非存在下の、或いは(b)NHS、C3除去血清或いはC5除去血清(デルタC3/C5)の存在下或いは非存在下の放射線標識nOmCI。タンパク質サイズマーカー(kDa)は矢印で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補体古典経路及び補体代替経路を阻害する補体阻害剤分子。
【請求項2】
古典経路C5変換酵素或いは代替経路C5変換酵素によるC5切断を阻害する、請求項1に記載の補体阻害剤分子。
【請求項3】
C5変換酵素によるC5切断を阻害する補体阻害剤分子。
【請求項4】
C5変換酵素が古典経路C5変換酵素である、請求項3に記載の補体阻害剤分子。
【請求項5】
C5変換酵素が補体代替経路C5変換酵素である、請求項3に記載の補体阻害剤。
【請求項6】
C5に結合することによりC5切断を阻害する、請求項2〜5のいずれか一項に記載の補体阻害剤。
【請求項7】
C5と複合体を形成している、請求項6に記載の補体阻害剤分子。
【請求項8】
吸血性節足動物由来の、請求項1〜7のいずれか一項に記載の補体阻害剤分子。
【請求項9】
前記節足動物がマダニである、請求項8に記載の補体阻害剤分子。
【請求項10】
前記マダニがオルニトドロス・ムバータ(Ornithodoros moubata)である、請求項9に記載の補体阻害剤分子。
【請求項11】
図4のアミノ酸配列の19番〜168番のアミノ酸を含む、請求項10に記載の補体阻害剤分子又はその機能同等物。
【請求項12】
図4のアミノ酸配列の1番〜168番のアミノ酸を含む、請求項10に記載の補体阻害剤分子又はその機能同等物。
【請求項13】
補体古典経路及び補体代替経路を阻害する補体阻害剤分子であって、前記補体阻害剤は、
a)図4のアミノ酸配列の19番〜168番のアミノ酸或いは1番〜168番のアミノ酸を含むタンパク質、
b)a)に定義したタンパク質と少なくとも60%の同一性を有する相同体、
又は
c)上のa)に定義したタンパク質或いは上のb)に定義した相同体の活性フラグメントである補体阻害剤分子。
【請求項14】
C5変換酵素によるC5切断を阻害する補体阻害剤分子であって、前記補体阻害剤は、
a)図4のアミノ酸配列の19番〜168番のアミノ酸或いは1番〜168番のアミノ酸を含むタンパク質、
b)a)に定義したタンパク質と少なくとも60%の同一性を有する相同体、
又は
c)上のa)に定義したタンパク質或いは上のb)に定義した相同体の活性フラグメントである補体阻害剤分子。
【請求項15】
C5に直接結合することによりC5切断を阻害する、請求項14に記載の補体阻害剤分子。
【請求項16】
C5と複合体を形成する、請求項15に記載の補体阻害剤分子。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の補体阻害剤分子又はその機能同等物に結合する抗体。
【請求項18】
一以上のペプチド又はポリペプチドに遺伝子工学的或いは化学的に融合した請求項1〜17のいずれか一項に記載の補体阻害剤分子又はその機能同等物を含む融合タンパク質。
【請求項19】
前記補体阻害剤分子又はその機能同等物がマーカードメインに遺伝子工学的或いは化学的に融合した、請求項18に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
前記マーカードメインが放射化学タグである、請求項19に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の補体阻害剤分子若しくはその機能同等物又は請求項18〜20のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸配列を含む核酸分子。
【請求項22】
図4の核酸配列の53番〜507番のヌクレオチドを含む、請求項21に記載の核酸分子又はその機能同等物。
【請求項23】
図4の核酸配列の1番〜507番のヌクレオチドを含む、請求項21に記載の核酸分子又はその機能同等物。
【請求項24】
非常にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で請求項21〜23のいずれか一項に記載の核酸分子とハイブリダイズするアンチセンス核酸分子。
【請求項25】
請求項21〜24のいずれか一項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項26】
請求項21〜23のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項24に記載のアンチセンス核酸分子又は請求項25に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項27】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の補体阻害剤分子若しくはその機能同等物又は請求項18〜20に記載の融合タンパク質の調製方法であって、前記タンパク質が発現する条件下で請求項26に記載の宿主細胞を培養すること、及び産生された前記タンパク質を回収することを含む方法。
【請求項28】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の補体阻害剤分子又はその機能同等物のリガンドを特定するための方法であって、
a)補体阻害剤分子又はその機能同等物を候補リガンドに接触させる段階と、
b)リガンド−補体阻害剤分子複合体の形成を検出する段階とを含む方法。
【請求項29】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の補体阻害剤分子、請求項18〜20のいずれか一項に記載の融合タンパク質又は請求項21〜23のいずれか一項に記載の核酸分子と、医薬的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項30】
アジュバントを更に含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
治療に使用するための、請求項1〜16のいずれか一項に記載の補体阻害剤分子、請求項18〜20のいずれか一項に記載の融合タンパク質又は請求項21〜23のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項32】
補体仲介疾病或いは障害に罹患している動物を治療する、或いは動物が補体仲介疾病或いは障害を発症することを予防する方法であって、治療有効量或いは予防有効量の請求項1〜16のいずれか一項に記載の補体阻害剤分子若しくはその機能同等物、請求項18〜20のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項21〜23のいずれか一項に記載の核酸分子又は請求項29若しくは30に記載の組成物を前記動物に投与することを含む方法。
【請求項33】
補体仲介疾病或いは障害の治療又は予防のための医薬の製造における、請求項1〜16のいずれか一項に記載の補体阻害剤分子、請求項18〜20のいずれか一項に記載の融合タンパク質又は請求項21〜23のいずれか一項に記載の核酸分子の使用。
【請求項34】
前記疾病或いは障害が、アルツハイマー病、リウマチ様関節炎、糸球体腎炎、再潅流傷害、移植拒絶、敗血病、免疫複合体病、或いは遅延型過敏症である、請求項32に記載の方法又は請求項33に記載の使用。
【請求項35】
吸血性節足動物によって媒介される疾病或いは障害に対して動物に予防接種をする方法であって、請求項1〜16のいずれか一項に記載の補体阻害剤分子若しくはその機能同等物、請求項18〜20のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項21〜23のいずれか一項に記載の核酸分子又は請求項29若しくは30に記載の組成物を前記動物に投与することを含む方法。
【請求項36】
吸血性節足動物によって媒介される疾病或いは障害に対して動物を保護するためのワクチン製造における、請求項1〜16のいずれか一項に記載の補体阻害剤分子若しくはその機能同等物、請求項18〜20のいずれか一項に記載の融合タンパク質又は請求項21〜23のいずれか一項に記載の核酸分子の使用。
【請求項37】
吸血性節足動物がO.ムバータ(O.moubata)である、請求項35に記載の方法又は請求項36に記載の使用。
【請求項38】
疾病或いは障害が回帰熱、アフリカ豚コレラ、或いは西ナイル熱である、請求項37に記載の方法又は使用。
【請求項39】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の補体阻害剤分子又は請求項18〜20に記載の融合タンパク質の診断ツールとしての使用。
【請求項40】
細胞、組織又は非ヒト生物における補体古典経路及び補体代替経路を阻害する方法であって、請求項1〜16のいずれか一項に記載の補体阻害剤、請求項18〜20に記載の融合タンパク質又は請求項21〜23のいずれか一項に記載の核酸分子を前記細胞、組織又は生物に投与することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2007−536894(P2007−536894A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508386(P2006−508386)
【出願日】平成16年6月2日(2004.6.2)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002341
【国際公開番号】WO2004/106369
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(505445016)エヴォルーテック・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】