説明

補修用シート及び補修方法

【解決手段】少なくとも不透水性シートを有する防水シートの、該不透水性シートの損傷部位を補修する補修用シートであって、該補修用シートが該不透水性シートと熱融着可能な熱可塑性樹脂層と、これより高融点の耐熱層の少なくとも2層構成からなることを特徴とする補修用シート、及び前記補修用シートを用いて、防水シートの損傷部位に該補修用シートの熱可塑性樹脂層側を対向させて重ね、該補修用シートの耐熱層側から加熱加圧し、防水シート損傷部位に該補修用シートを熱融着することによって補修することを特徴とする補修方法。
【効果】本発明によれば、トンネル等の施工に用いる防水シートに生じた損傷部位を簡便に作業性良く、かつ安定した品質に補修する補修用シート及び補修方法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等の施工に用いる防水シートに生じた損傷部位を簡便に作業性良く、かつ安定した品質に補修する補修用シート及び補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、NATM工法に見られるように、トンネルの一次覆工コンクリートと二次覆工コンクリートとの間に防水シートを介装し、一次覆工コンクリート側からの湧水が二次覆工コンクリート側に漏水するのを防止することが行われている。
一般に、この防水シートは、透水性シートと不透水性シートとからなり、該透水性シート側を一次覆工コンクリート側に、該不透水性シート側を二次覆工コンクリート側になるよう介装することにより、地山からの湧水を該透水性シートによってトンネル外に導出すると共に、該不透水性シートによって二次覆工コンクリート側への漏水を防止している。
従って、当該施工にあたっては、防水シートによる二次覆工コンクリートに対する一次覆工コンクリートの液密な展張が必須となる。しかし、一次覆工コンクリート打設・防水シート展張後、二次覆工コンクリート打設までの間に、やむを得ず鉄筋の突き刺しや砕石の飛散等により防水シートを損傷させてしまうことがあり、この場合、二次覆工コンクリート打設までに、防水シートの損傷補修を行う必要がある。
【0003】
特開平8−100466号公報(特許文献1)には、建造物等の既設の下地防水シート又は新規に貼り付ける防水シートの少なくとも一方の接着面に変成シリコーン系化合物及び/又はイソシアネート基を有する化合物よりなる1液の湿気硬化型接着剤を塗布し、タックを発現するまで所定時間放置した後、上記下地防水シートに新規な防水シートを接着するようにした防水接着工法について記載されている。
しかし、当該防水接着工法は下地防水シート又は新規に貼り付ける防水シートの少なくとも一方の接着面への接着剤の均一塗布(幅,厚さ管理)が意外と難しく、その塗布状況によって接着品質(接着強度,接着耐久性など)が変動するため熟練工に委ねざるを得なかった。しかも該接着剤がタックを発現し、硬化するまでにかなりの時間を要するため、防水シートの損傷補修の作業性が極めて悪かった。
【0004】
また、特開平10−6409号公報(特許文献2)には、防寒防水布、ターポリンなどの防水布の破損部分にポリエステル系樹脂シートを積層するか、もしくはホットメルトタイプのポリエステル系樹脂接着剤を塗布し、その上に該防水布と同種の防水布を積層した後、該積層部分を加熱圧着する補修方法について記載されている。
しかし、当該補修方法をトンネル施工における防水シートの補修作業に適用する際は、破損部位が天井や壁面に生じ、この破損部位を地に対して略水平な状態で地方向から天方向へ向けて補修することが前提となり、重力に逆らいながら、該破損部位にポリエステル系樹脂シートを積層するか、もしくはホットメルトタイプのポリエステル系接着剤を塗布し、その上に補修用の防水布を積層しなければならないため、必然的にポリエステル系樹脂シートの落下やホットメルトタイプのポリエステル系接着剤の垂れ、さらには補修用の防水布の落下が生じ、作業性が極めて悪かった。また、ホットメルトタイプのポリエステル系接着剤の防水シートへの均一塗布(幅,厚さ管理)は、特許文献1と同様に難しく、その塗布状況によって接着品質(接着強度,接着耐久性など)が変動するため熟練工に委ねざるを得なかった。
【0005】
即ち、いずれの例(特許文献1,2)もトンネル等の施工に用いる防水シートに生じた損傷部位を簡便に作業性良く、かつ安定した品質で補修する補修用シート及び補修方法とは言い難かった。
【0006】
【特許文献1】特開平 8−100466号公報
【特許文献2】特開平10−6409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、トンネル等の施工に用いる防水シートに生じた損傷部位を簡便に作業性良く、かつ安定した品質で補修する補修用シート及び補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため、鋭意検討を行なった結果、少なくとも不透水性シートを有する防水シートの、該不透水性シートの損傷部位を補修する補修用シートであって、該補修用シートが該不透水性シートと熱融着可能な熱可塑性樹脂層と、これより高融点の耐熱層の少なくとも2層構成からなる補修用シートが上記損傷部位補修に有効であること、さらに該補修用シートを用い、該防水シートの透水性シートの損傷部位に該補修用シートの熱可塑性樹脂層側を対向させて重ね、該補修用シートの耐熱層側から加熱加圧し、該不透水性シートに該補修用シートを熱融着することによって補修する補修方法によれば、一次覆工コンクリート打設後の防水シート展張以降に、該防水シートの不透水性シートにやむを得ず損傷が生じても、該損傷部位を簡便に作業性良く、かつ安定した品質(接着強度,接着耐久性など)で補修することが可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
即ち、本発明は下記補修用シート及び補修方法を提供する。
請求項1:
少なくとも不透水性シートを有する防水シートの、該不透水性シートの損傷部位を補修する補修用シートであって、該補修用シートが該不透水性シートと熱融着可能な熱可塑性樹脂層と、これより高融点の耐熱層の少なくとも2層構成からなることを特徴とする補修用シート。
請求項2:
前記熱可塑性樹脂層が、酢酸ビニルを16〜50質量%含有するエチレン−酢酸ビニル共重合体からなることを特徴とする請求項1記載の補修用シート。
請求項3:
前記熱可塑性樹脂層が、極性基を3〜50質量%グラフト重合している変性ポリオレフィンからなることを特徴とする請求項1記載の補修用シート。
請求項4:
前記耐熱層が、金属箔からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の補修用シート。
請求項5:
請求項1乃至4のいずれか1項記載の補修用シートを用いて、防水シートの不透水性シートの損傷部位に前記補修用シートの熱可塑性樹脂層側を対向させて重ね、該補修用シートの耐熱層側から加熱加圧し、該不透水性シートに該補修用シートを熱融着することによって補修することを特徴とする補修方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トンネル等の施工に用いる防水シートに生じた損傷部位を簡便に作業性良く、かつ安定した品質に補修する補修用シート及び補修方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態及び実施例】
【0011】
以下、本発明について図面を参照してより詳細に説明する。
図1(A)は、本発明の一構成例に係る補修用シート1の断面図であり、(B)は、本発明の他の構成例に係る補修用シート1’の断面図である。
補修用シート1は、熱可塑性樹脂層2の一面に、これより高融点の耐熱層3が積層されてなる。また、補修用シート1’は、熱可塑性樹脂層2と、これより高融点の耐熱層3との間に両者を接合する接着層4が介挿されてなる。ここで、後述するように補修用シート1又は1’の熱可塑性樹脂層2は、いずれも防水シート5の不透水性シート7に熱融着可能なものである。
補修用シート1は、熱可塑性樹脂層2と耐熱層3の相溶性(接着性)が高く、例えば、押出しラミネート法などを用い、接着層4を介すことなく、熱可塑性樹脂層2と耐熱層3がラミネートされた形態を示し、補修用シート1’は、熱可塑性樹脂層2と耐熱層3の相溶性(接着性)が低く、例えば、ドライラミネート法などを用い、粘着剤や接着剤による接着層4を介して、熱可塑性樹脂層2と耐熱層3がラミネートされた形態を示している。
【0012】
図2は、本発明の一構成例に係る補修用シート1を用いた補修方法を説明するために、その様子の一部を拡大して示す概略断面図である。
通例、防水シート5は、透水性シート6,不透水性シート7からなる積層体でトンネル地山、一次覆工コンクリート11の面に透水性シート6側の面が対向するように展張された後、不透水性シート7側の面に図示しない二次覆工コンクリートが打設されるが、図2は、二次覆工コンクリート打設までに、防水シート5の不透水性シート7に損傷部位8(穴など)が生じた状況を示している。
本発明の補修用シート1により、この損傷部位8を補修する際は、補修シート1の熱可塑性樹脂層2側の面を、該損傷部位8を中心に対向させて重ね、補修シート1の耐熱層3側の面からアイロンなどの加熱機9のコテ10で加熱加圧することにより、少なくとも補修用シート1の熱可塑性樹脂層2を溶融、流動化させて、防水シート5の不透水性シート7と熱融着し、該損傷部位8を閉塞、補修することができる。
また、本発明の他の補修用シート1’により、上記損傷部位8を補修する際も上記補修用シート1を用いた時と全く同様に、補修シート1’の熱可塑性樹脂層2側の面を、該損傷部位8を中心に対向させて重ね、補修シート1’の耐熱層3側の面からアイロンなどの加熱機9のコテ10で加熱加圧することにより、少なくとも補修用シート1’の熱可塑性樹脂層2を溶融、流動化させて、防水シート5の不透水性シート7と熱融着し、該損傷部位8を閉塞、補修することができる。
【0013】
このように本発明の補修用シート1又は1’は、低融点の熱可塑性樹脂層2とこれより高融点の耐熱層3が一体にラミネートされているので、該補修用シートを用いた補修方法は、本シート1枚のみで防水シート5の不透水性シート7の損傷部位8を容易に閉塞、補修することができる簡便さと単調な作業性の良さを備えたものである。しかも、補修用シート1又は1’をなす各層は、公知のシート成形技術を用いて作製され、その一体化は後述する公知のラミネート技術で作製されるので、該各層の厚さはもとより、ラミネート後の厚さもばらつきの少ない高品質なものであることから、補修用シート1又は1’の熱可塑性樹脂層2と防水シート5の不透水性シート7との接着品質(接着強度,接着耐久性など)も変動しにくい高品質なものとなる。
【0014】
ここで、本発明の補修用シート1又は1’の熱可塑性樹脂層2の材質としては、トンネル等の施工に用いられる防水シート5をなす不透水性シート7に熱融着できる材質でなければならず、通例、該不透水性シート7の材質は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、‘EVA’と略記)樹脂、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が用いられることから、これらと同種の樹脂や、これらの樹脂をベースに熱融着性等を考慮した変性樹脂を用いることができ、中でもEVA樹脂又は変性ポリオレフィン樹脂が好適である。
【0015】
本発明の補修用シート1又は1’の熱可塑性樹脂層2に用いられるEVA樹脂は、酢酸ビニル(以下、‘VA’と略記)含有量を適宜調整することによりEVA樹脂の接着性、強度、伸びを調整することができる。一般に、EVA樹脂へのVA含有量を増やせば、強度は減少し、接着性、伸びは増大し、逆にEVA樹脂へのVA含有量を減らせば、強度は増大し、接着性、伸びは減少することから、EVA樹脂のVA含有量は16〜50質量%が好ましく、より好ましくは20〜35質量%とすることができる。
【0016】
また、本発明の補修用シート1又は1’の熱可塑性樹脂層2に用いられるポリオレフィン樹脂には、通例のポリエチレン(以下、‘PE’と略記)やポリプロピレン(以下、‘PP’と略記)などの完全非極性のポリオレフィン樹脂、及びそれらにアクリル酸や無水マレイン酸などの極性基(カルボキシル基)をグラフト重合することにより極性を持たせ、接着性を付与させた変性ポリオレフィン樹脂を用いることができる。
この場合、ポリオレフィン樹脂(PE樹脂,PP樹脂等)へのアクリル酸や無水マレイン酸などの極性基(カルボキシル基)のグラフト量は3〜50質量%、より好ましくは7〜40質量%とすることができる。3質量%よりも極性基のグラフト量が少ないと十分な接着性を付与させることができず、逆に50質量%より極性基のグラフト量が多いとポリオレフィン樹脂本来の化学的特性(耐薬品性等)や物理的特性(剛性強度等)が失われるばかりか、接着性も効率的に上げられないため好ましくない。
【0017】
本発明の補修用シート1又は1’の熱可塑性樹脂層2の厚さは、0.1〜1.5mm、より好ましくは、0.2〜1.0mmとすることができる。熱可塑性樹脂層2の厚さが0.1mmよりも薄いと、加熱機9のコテ10による熱印加によって溶融し、流動する熱可塑性樹脂の量が不足するため、補修用シート1又は1’の熱可塑性樹脂層2と防水シート5の不透水性シート7との熱融着が不十分になり、損傷部位8を閉塞、補修する補修機能が不足するおそれがあり、逆に1.5mmよりも厚いと、熱可塑性樹脂層2の剛性強度が上がって、熱可塑性樹脂層2を防水シート5の損傷部位8へ馴染ませることが困難になり、やはり防水シート5の損傷部位8を閉塞、補修する補修機能が不足するおそれがある。
【0018】
本発明の補修用シート1又は1’の耐熱層3の材質は、熱可塑性樹脂層2との融点の差、熱可塑性樹脂層2との相溶性(接着性)、そして熱伝導速度(熱伝導率)を考慮して決めることができる。
ここで、耐熱層3の融点は、熱可塑性樹脂層2(及び接着層4)の融点に対して50℃以上、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上の温度差があることが好ましい。50℃の未満の温度差の場合、加熱機9のコテ10により耐熱層3を経て熱可塑性樹脂層2に十分に熱伝導する前に耐熱層3が容易に溶融し、加熱機9のコテ10に溶着してしまい、補修作業を中断させざるを得なくなるおそれがある。
また、耐熱層3を、熱可塑性樹脂層2に対して相溶性(接着性)が高いものとすることにより、図1(B)のような接着層4を介す必要がなくなるため(従って、図1(A)のような構成にできるため)、コスト的に有利になると共に、耐熱層3から熱可塑性樹脂層2への熱伝導を直接的なものとすることができ、より好ましい。
さらに、耐熱層3は、0.1W/mK以上の熱伝導率のものを使用することが好ましい。これは0.1W/mK未満の熱伝導率のものを使用すると、加熱機9のコテ10からの熱を、耐熱層3を介して熱可塑性樹脂層2へ十分に伝えることができないためである。
【0019】
このような条件を満たす耐熱層3の材質として、具体的には、熱可塑性樹脂層2の材質よりも高融点であることが前提となるが、ポリエステル、ポリアミド(以下、順に‘PET’,‘PA’と略記)等のプラスチック樹脂や、アルミ、銅、ステンレス(以下、順に‘Al’,‘Cu’,‘Stl’と略記)等の金属箔を挙げることができる。
【0020】
本発明の補修用シート1又は1’として、上記防水シート5の不透水性シート7への熱融着性、熱可塑性樹脂層2と耐熱層3との融点の差、熱可塑性樹脂層2と耐熱層3との相溶性(ラミネート加工性,接着層有無)、耐熱層3の熱伝導速度(熱伝導率)を勘案すると、熱可塑性樹脂層2と耐熱層3との材質的な組み合わせの中で最も好ましい組み合わせは、(熱可塑性樹脂層2/耐熱層3)=(プラスチック樹脂/金属箔)とするのが好ましく、具体的に例示すると、(熱可塑性樹脂層2/耐熱層3)=(EVA樹脂/Al箔),(EVA樹脂/Cu箔),(EVA樹脂/Stl箔),(PE樹脂/Al箔),(PE樹脂/Cu箔),(PE樹脂/Stl箔),(変性PE樹脂/Al箔),(変性PE樹脂/Cu箔),(変性PE樹脂/Stl箔),(変性PP樹脂/Al箔),(変性PP樹脂/Cu箔),(変性PP樹脂/Stl箔)等の組み合わせが好適である。
【0021】
また、(熱可塑性樹脂層2/耐熱層3)=(プラスチック樹脂/プラスチック樹脂)の組み合わせも勿論可能であり、具体的に例示すると、(熱可塑性樹脂層2/耐熱層3)=(EVA樹脂/PET樹脂),(EVA樹脂/PA樹脂),(PE樹脂/PET樹脂),(PE樹脂/PA樹脂),(変性PE樹脂/PET樹脂),(変性PE樹脂/PA樹脂),(変性PP樹脂/PET樹脂),(変性PP樹脂/PA樹脂)等の組み合わせを採用することができる。
【0022】
さらに、本発明の補修用シート1又は1’の耐熱層3は、上記プラスチック樹脂、金属箔を任意の組み合わせでラミネートしたものも用いることもできる。
【0023】
また、本発明の補修用シート1又は1’の耐熱層3の厚さは、0.01〜0.1mm、より好ましくは0.03〜0.08mmとすることができる。耐熱層3の厚さが0.01mmよりも薄いと、耐熱層3の剛性強度が不足するおそれがあり、逆に0.1mmよりも厚いと、耐熱層3の剛性強度が上がって、熱可塑性樹脂層2を防水シート5の損傷部位8へ馴染ませることが困難になり、防水シート5の損傷部位8を閉塞、補修する補修機能が不足するおそれがある。
【0024】
上記熱可塑性樹脂層2と耐熱層3は公知のラミネート技術を用い容易に積層することができる。
上記熱可塑性樹脂層2の材質と耐熱層3の材質との相溶性(接着性)が高い組み合わせ、例えば、(熱可塑性樹脂層2/耐熱層3)=(EVA樹脂/Al箔),(EVA樹脂/Cu箔),(変性PE樹脂/PA樹脂),(変性PE樹脂/PET樹脂),(変性PE樹脂/Al箔),(変性PE樹脂/Cu箔),(変性PP樹脂/PA樹脂),(変性PP樹脂/PET樹脂),(変性PP樹脂/Al箔),(変性PP樹脂/Cu箔)等であれば、例えば、予め公知のシート化技術で作製された耐熱シート(層)3の上に熱可塑性樹脂を溶融・押出して熱可塑性樹脂層2を形成し、これを加圧ロール間に通過させ、加圧一体化し、補修用シート1とする押出しラミネート法、或いは耐熱性樹脂及び熱可塑性樹脂を共に溶融・押出して耐熱層3と熱可塑性樹脂層2を形成し、これを加圧ロール間に通過させ、加圧一体化し、補修用シート1とする共押出しラミネート法等を用いることができる。
【0025】
また、特に上記熱可塑性樹脂層2の材質と耐熱性層3の材質との相溶性(接着性)が低い組み合わせ、例えば、(熱可塑性樹脂層2/耐熱層3)=(EVA樹脂/PA樹脂),(EVA樹脂/PET樹脂),(PE樹脂/Al箔),(PE樹脂/Cu箔),(PE樹脂/PET樹脂),(PE樹脂/PA樹脂)等であれば、例えば、耐熱シート(層)3と熱可塑性樹脂シート(層)2のどちらか一方或いは両方に液状のイソシアネート系やウレタン系などの接着剤を塗布して接着層4を形成し、これを一旦、乾燥させた後、重ね合わせ、これらを加圧ロールで加圧一体化し、補修用シート1’とするドライラミネート法等を用いることができる。
なお、上記熱可塑性樹脂層2の材質と耐熱層3の材質との相溶性(接着性)が高い組み合わせであっても、両者間に接着層4を介挿し、例えば、上記ドライラミネート法等により一体化し、補修用シート1’とすることも勿論可能である。
【0026】
このように本発明の補修用シート1又は1’は、公知のシート成形技術やラミネート技術を用いて形成できるので、これをなす各層(熱可塑性樹脂層2,耐熱層3,必要に応じて接着層4)の厚さは数μmの公差にコントロールでき、厚さばらつきの少ない高品質なものとすることができる。
【0027】
また、例えば上記の接着剤に変えてアクリル系やシリコーン系などの粘着剤を、耐熱シート(層)3と熱可塑性樹脂シート(層)2のどちらか一方、或いは両方に塗布又は転写して接着層4を形成し、これらを加圧ロールで加圧一体化し、補修用シート1’とすることもできる。この場合、必要に応じて、補修後に耐熱層3を剥ぎ取り除去することも可能となる。
【0028】
このようにして積層・形成される補修用シート1又は1’の大きさ、厚さなどは、上記熱可塑性樹脂層2及び耐熱層3(そして接着層4)の厚さを考慮しつつも、特に制限されず、従来よりトンネルの防水施工に使用されている防水シート5の不透水性シート7に生じる損傷部位8の大きさや厚さを考慮し、幅150mm程度、厚さ0.3〜1.6mm,特に0.5mm程度とするのが好適である。
また、このような補修用シート1又は1’をロール状とし、必要に応じて、任意の長さに切り出せるようなカッター手段を付与させると、さらに使い勝手がよくなり好ましい。
【0029】
こうして得られる補修用シート1又は1’を用いて、防水シート5の損傷部位8を補修するに際しては、該損傷部位8を中心に補修用シート1又は1’の熱可塑性樹脂層2側を対向させて重ね、補修用シート1又は1’の耐熱層3側から、該損傷部位8に位置する部分の周辺を加熱機9のコテ10で加熱加圧し、補修用シート1又は1’の熱可塑性樹脂層2と防水シート5の不透水性シート7とを熱融着し、該破損部位8を閉塞・補修する補修方法を採ることができる。
【0030】
この場合、接着品質(接着強度,接着耐久性など)と、接着時間を勘案すると、(熱可塑性樹脂層2/耐熱層3)=(プラスチック樹脂/金属箔)の組み合わせ,具体的には、(EVA樹脂/Al箔),(EVA樹脂/Cu箔),(EVA樹脂/Stl箔),(PE樹脂/Al箔),(PE樹脂/Cu箔),(PE樹脂/Stl箔),(変性PE樹脂/Al箔),(変性PE樹脂/Cu箔),(変性PE樹脂/Stl箔),(変性PP樹脂/Al箔),(変性PP樹脂/Cu箔),(変性PP樹脂/Stl箔)等の組み合わせなら、加熱機9のコテ10の表面温度は300〜600℃、より好ましくは400〜500℃であり、加熱機9のコテ10の上記耐熱層3への加圧は0.5〜1.5MPa、より好ましくは0.7〜1.2MPaであり、時間は10〜90秒、より好ましくは30〜60秒とすることができ、(熱可塑性樹脂層2/耐熱層3)=(プラスチック樹脂/プラスチック樹脂)の組み合わせ,具体的には、(EVA樹脂/PET樹脂),(EVA樹脂/PA樹脂),(PE樹脂/PET樹脂),(PE樹脂/PA樹脂),(変性PE樹脂/PET樹脂),(変性PE樹脂/PA樹脂),(変性PP樹脂/PET樹脂),(変性PP樹脂/PA樹脂)等の組み合わせなら、加熱機9のコテ10の表面温度は120〜300℃、より好ましくは150〜280℃であり、加熱機9のコテ10の上記耐熱層3への加圧は0.5〜1.5MPa、より好ましくは0.7〜1.2MPaであり、時間は10〜90秒、より好ましくは30〜60秒とすることができる。
【0031】
いずれにせよ、本発明の補修用シート1又は1’は、低融点の熱可塑性樹脂層2と、これより高融点の耐熱層3(と必要に応じ接着層4)とが公知のラミネート技術に基づき、一体にラミネートされているので、各層の厚さも一体ラミネート後の厚さのばらつきも極めて小さく、結果として該補修用シート1又は1’を用い、損傷部位8を補修する際も本シート1枚のみで扱い易く、該熱可塑性樹脂層2は、容易に該損傷部位8の周辺の不透水性シート7に熱融着し、該損傷部位8を閉塞、補修することができる簡便さと作業性の良さを備え、しかも接着品質(接着強度,接着耐久性など)が変動しにくい高品質なものである。
なお、上述の加熱機9にかえて、熱風ガンと加圧コテを用いても何ら問題なく、本発明と同様な作用効果を奏することができる。また、その他の構成についても本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更して差支えない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(A)は、本発明の一構成例に係る補修用シートの断面図である。(B)は、本発明の他の構成例に係る補修用シートの断面図である。
【図2】本発明の一構成例に係る補修用シートを用いた補修方法を説明するために、補修する様子の一部を拡大して示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 補修用シート
2 熱可塑性樹脂層
3 耐熱層
4 接着層
5 防水シート
6 透水性シート
7 不透水性シート
8 損傷部位
9 加熱機
10 コテ
11 一次覆工コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも不透水性シートを有する防水シートの、該不透水性シートの損傷部位を補修する補修用シートであって、該補修用シートが該不透水性シートと熱融着可能な熱可塑性樹脂層と、これより高融点の耐熱層の少なくとも2層構成からなることを特徴とする補修用シート。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂層が、酢酸ビニルを16〜50質量%含有するエチレン−酢酸ビニル共重合体からなることを特徴とする請求項1記載の補修用シート。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂層が、極性基を3〜50質量%グラフト重合している変性ポリオレフィンからなることを特徴とする請求項1記載の補修用シート。
【請求項4】
前記耐熱層が、金属箔からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の補修用シート。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の補修用シートを用いて、防水シートの不透水性シートの損傷部位に前記補修用シートの熱可塑性樹脂層側を対向させて重ね、該補修用シートの耐熱層側から加熱加圧し、該不透水性シートに該補修用シートを熱融着することによって補修することを特徴とする補修方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−19664(P2008−19664A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193776(P2006−193776)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【出願人】(591029921)フジモリ産業株式会社 (65)
【Fターム(参考)】