説明

補助食品としてまたは薬剤として使用するための新規硫黄含有脂質

本発明は、一般式(I){式中、R1はC10-C22アルキル、1〜6個の二重結合をもつC10-C22アルケニル、及び1〜6個の三重結合をもつC10-C22アルキニルから選択され;R2及びR3は同一または異なり、種々の置換基の群から選択することができ;Yは硫黄、スルホキシド及びスルホンから選択され;Xはカルボン酸またはその誘導体、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物若しくはカルボキサミドを表す}の脂質化合物またはその医薬的に許容可能な塩、錯体または溶媒和物に関する。本発明は、薬剤として使用するためまたは治療に使用するため、特に心臓血管、代謝及び炎症性疾患領域に関連する疾患の治療のためのかかる化合物を含む医薬組成物及び脂質組成物、並びにかかる化合物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I):
【化1】

{式中、R1はC10-C22アルキル、1〜6個の二重結合をもつC10-C22アルケニル、及び1〜6個の三重結合をもつC10-C22アルキニルから選択され;
R2及びR3は同一または異なり、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる置換基の群から選択することができ、但しR2及びR3は両方とも水素原子であることはできない;または
R2及びR3はシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタンまたはシクロヘキサンのようなシクロアルカンを形成するために結合することができ;
Yは硫黄、スルホキシド及びスルホンから選択され;
Xはカルボン酸またはその誘導体、カルボン酸エステル若しくはカルボキサミドを表す}
の脂質化合物またはその医薬的に許容可能な塩、溶媒和物、かかる塩の溶媒和物またはプロドラッグに関する。
【0002】
R2及びR3が異なる場合、式(I)の化合物は立体異性体で存在し得る。本発明は、式(I)の化合物の全ての光学異性体及びその混合物を包含するものと理解される。
【0003】
また本発明は、かかる化合物を含む医薬組成物及び脂質組成物、並びに薬剤として使用するための、または治療に使用するための、特に心臓血管、代謝及び炎症性疾患領域に関連する疾患の治療に使用するためのかかる化合物に関する。
【背景技術】
【0004】
これまで、健康及び慢性疾患に影響を与える様々な生理学的過程における脂肪酸類似体及びその効果に関し、多くの研究がなされてきた。
【0005】
例えば、食物の多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acid:PUFA)は、血漿脂質レベル、心臓血管及び免疫機能、インスリン作用、並びに神経発達及び視覚機能を調節することが示されている。
【0006】
テトラデシルチオ酢酸(tetradecylthioacetic acid:TTA)は、インビボ及びインビトロの両方で多くの強い影響を示す修飾脂肪酸である。
【0007】
TTAは、天然脂肪酸と非常に似た特性をもち、主な違いはミトコンドリアβ-酸化により酸化されないが、他の脂肪酸の酸化を顕著に増加させるということである。TTAはβ-酸化を受けないにもかかわらず、殆どの場合、通常の飽和脂肪酸として代謝される。
【化2】

【0008】
TTAは、そのフリーラジカル掃去能によりそれ自身が酸化防止剤であることに加えて、酸化防止剤防衛組織を変える能力を持つことによって種々のレベルで酸化状態に影響を与える。
【0009】
TTAを添加することにより、血漿中の低比重リポタンパク質(LDL)粒子の酸化的変性を防ぎ、且つ脂質ペルオキシドの生成を低下させることができる。
【0010】
3-位置に硫黄をもつ数種の多価不飽和脂肪酸誘導体が合成されてきた(Flockら、Acta Chemica Scand.,1999年,53巻,436頁)(非特許文献1)。メチル(全て-Z)-3-チア-6,9,12,15-オクタデカテトラエノエートはウィスター系ラットモデルで試験し、効果をTTAの効果と比較した。結果から、いずれの飽和脂肪酸も不能和脂肪酸も、血漿トリグリセリドを同程度まで低下させたことが示唆された(Willumasenら,J.Lipid Mediators Cell Signaling,1997年、17巻,115頁)(非特許文献2)。
【0011】
意外にも、一般式(I)により表される新規脂肪酸誘導体は、TTA及び(全て-Z-)-3-チア-チア-6,9,12,15-オクタデカテトラエノン酸と比較して受容体PPARα及びPPARγに対して高い親和性をもつことが知見された。一般式(I)により表される脂肪酸誘導体はまた、TTA及び(全て-Z-)-3-チア-チア-6,9,12,15-オクタデカテトラエノン酸よりも脂質異常症マウスモデルでトリグリセリド、コレステロール及び遊離脂肪酸を大きく減少させた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Flockら、Acta Chemica Scand.,1999年,53巻,436頁
【非特許文献2】Willumasenら,J.Lipid Mediators Cell Signaling,1997年、17巻,115頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一つの目的は、3-チア脂肪酸と比較して優れた生物学的活性をもつ脂質化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
特に、本発明は式(I)の化合物の脂質化合物またはその医薬的に許容可能な塩、溶媒和物、かかる塩の溶媒和物またはプロドラッグ:
【化3】

に関し、ここで、
・R1はC10-C22アルキル、1〜6個の二重結合をもつC10-C22アルケニル、及び1〜6個の三重結合をもつC10-C22アルキニルから選択され;
・R2及びR3は同一または異なり、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる置換基の群から選択することができ、但しR2及びR3は両方とも水素原子であることはできない;または
・R2及びR3はシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタンまたはシクロヘキサンのようなシクロアルカンを形成するために結合することができる;
・Yは硫黄、スルホキシド及びスルホンから選択され;
・Xはカルボン酸またはその誘導体、カルボン酸エステル若しくはカルボキサミドを表す。
【0015】
本発明に従う化合物において、前記アルキル基はメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル及びn-ヘキシルからなる群から選択され得;前記アルケニル基はアリル、2-ブテニル、及び3-ヘキセニルからなる群から選択され得;前記アルキニル基はプロパルギル、2-ブチニル、及び3-ヘキシニルからなる群から選択され得;前記ハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素からなる群から選択され得;前記アルコキシ基はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、sec-ブトキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、OCH2CF3及びOCH2CH2OCH3からなる群から選択され得;前記アシルオキシ基はアセトキシ、プロピオノキシ及びブチルオキシからなる群から選択され得;前記アリール基はフェニル基であり;前記アルキルチオ基はメチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ及びフェニルチオからなる群から選択され得;前記アルコキシカルボニル基はメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル及びブトキシカルボニルからなる群から選択され得;前記アルキルスルフィニル基はメタンスルフィニル、エタンスルフィニル及びイソプロパンスルフィニルからなる群から選択され得;前記アルキルスルホニル基はメタンスルホニル、エタンスルホニル及びイソプロパンスルホニルからなる群から選択され得;前記アルキルアミノ基はメチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、及びジエチルアミノからなる群から選択され得;前記カルボキシレート基はエチルカルボキシレート、メチルカルボキシレート、n-プロピルカルボキシレート、イソプロピルカルボキシレート、n-ブチルカルボキシレート、sec-ブチルカルボキシレート、及びn-ヘキシルカルボキシレートからなる群から選択され得;前記カルボキサミド基はN-メチルカルボキサミド、N,N-ジメチルカルボキサミド、N-エチルカルボキサミド及びN,N-ジエチルカルボキサミドからなる群から選択され得る。
【0016】
本発明の一態様では、式(I)の化合物の置換基R2及びR3の一方は水素であり、他方はヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる置換基の群から選択される。
【0017】
好ましい態様では、R2及びR3は水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基から独立して選択されるか;またはR2及びR3はシクロアルカンを形成するために結合することができる。
【0018】
別の好ましい態様では、R2及びR3は水素原子、アルキル基、またはメトキシ基若しくはエトキシ基から独立して選択される。
【0019】
さらに別の好ましい態様では、R2及びR3は水素原子、エチル、メトキシ若しくはエトキシ、フェニルから選択されるか;またはR2及びR3はシクロブタン基を形成するために結合する。
【0020】
本発明の別の態様では、式(I)の化合物の置換基R2及びR3は同一または異なり、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基からなる群から選択されえる。好ましくはR2及びR3はメチル、エチル、n-プロピルまたはイソプロピルから選択されるアルキル基であり、より好ましくはメチルまたはエチルから選択され、最も好ましくはR2及びR3はエチルである。
【0021】
本発明の一態様において、式(I)の化合物の置換基R1はC10-C22アルキルであり、前記化合物は飽和脂肪酸から誘導される。
【0022】
好ましくは式(I)の化合物の置換基R2及びR3は同一または異なり、上記の置換基の群から選択され得、置換基R1はC10-C22アルキルであり、前記化合物は飽和脂肪酸から誘導される。
【0023】
多価飽和脂肪酸から誘導される場合、R1は2〜6個、たとえば3〜6個の二重結合をもつC10-C22アルケニル、たとえばメチレンで中断された3〜6個の二重結合をZ-配置でもつC10-C22-アルケニルである。たとえば、R1は以下のものである:
・メチレンで中断された4つの二重結合をZ-配置でもつC15-アルケニル;
・3〜5個の二重結合をもつC18アルケニル、たとえばメチレンで中断された5個の二重結合をZ-配置でもつC18アルケニル;
・Z配置をもち、且つ炭素鎖のオメガ(ω)端から三番目の炭素-炭素結合に最初の二重結合をもつ少なくとも一つの二重結合をもつC14-C22アルケニル基;
・メチレンで中断された5個の二重結合をZ-配置でもつC20アルケニル;
・メチレンで中断された6個の二重結合をZ-配置でもつC22アルケニル。
【0024】
さらにR1はC10-C22アルキニル、たとえば1〜6個の三重結合をもつC16-C22アルキニルである。
【0025】
本発明の一態様において、式(I)の化合物の置換基Yは硫黄である。
【0026】
本発明の別の態様において、式(I)の化合物の置換基Yはスルホキシドである。
【0027】
本発明のさらに別の態様において、式(I)の化合物の置換基Yはスルホンである。
【0028】
本発明の一態様において、式(I)の化合物の置換基Xはエステル、遊離酸、トリグリセリドまたはリン脂質の形態のカルボン酸である。
【0029】
好ましくは、置換基Xはエステル、または遊離酸の形態のカルボン酸であり、より好ましくは、Xは遊離酸の形態のカルボン酸である。
【0030】
本発明の別の態様において、置換基R1はC10-C22アルキルであり、脂質化合物は飽和脂肪酸から誘導され;R2及びR3は同一または異なり、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基からなる置換基の群の基から選択することができ;好ましくは、R2及びR3はアルキル基である;及び
Xは遊離酸の形態のカルボン酸である。
【0031】
また本発明は、式(I)の化合物の塩にも関する。そのような塩は、以下の式:
【化4】

[式中、XはCOO-であり;
Z+は、Li+、Na+、K+、NH4+
【化5】

メグルミン、
【化6】

トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、
【化7】

ジエチルアミン、及び
【化8】

アルギニンからなる群から選択される}または
【化9】

[式中、XはCOO-であり;Z2+は、Mg2+、Ca2+
【化10】

エチレンジアミン及び
【化11】

ピペラジンからなる群から選択される]により表される。
【0032】
別の代表的な塩は、
【化12】

であり、ここでXはCOO-であり、Zn+
【化13】

キトサンである。
【0033】
式(I)の化合物がリン脂質の形の場合には、かかる化合物は、以下の式(II)〜(IV)により表すことができる:
【化14】

[式中、Zは、
【化15】

である]及び
【化16】

[式中、Zは、
【化17】

である]及び
【化18】

[式中、Zは
【化19】

である]。
【0034】
式(I)の化合物[式中、Xはトリグリセリド、1,2-ジグリセリド、1,3ジグリセリド、1-モノグリセリド及び2-モノグリセリドの形態のカルボン酸である]も本発明に含まれる。これらは以後、それぞれ式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)及び(IX)により表す。
【化20】

【化21】

【0035】
式(I)の化合物は立体異性体で存在し得る。本発明は、式(I)の化合物の全ての光学異性体及びその混合物を包含するものと理解される。従って、ジアステレオマー、ラセミ体及びエナンチオマーとして存在している式(I)の化合物も含まれる。
【0036】
本発明の好ましい態様において、式(I)の化合物は、
【化22】

エチル2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノエートである。
【0037】
本発明の別の好ましい態様において、式(I)の化合物は、
【化23】

エチル1-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)シクロブタンカルボキシレートである。
【0038】
また本発明は、薬剤として使用するための式(I)に従うリン脂質に関する。
【0039】
さらなる側面では、本発明は、式(I)のリン脂質を含む補助食品、食品添加剤、または栄養補助食品(neutraceutical preparation)を提供する。
【0040】
かかる補助食品は任意の投与経路によって投与するために製造することができる。たとえば補助食品は、液体栄養物または飲料として投与することができる。
【0041】
補助食品は、カプセル、たとえばゼラチンカプセルの形態であってもよく、カプセルにはフレーバーをつけることができる。
【0042】
さらなる側面では、本発明は、好ましくは一種以上の医薬的に許容可能なキャリヤまたは賦形剤と一緒に式(I)の化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0043】
本発明の新規脂質化合物及び組成物は、慣用の賦形剤、たとえば溶媒、希釈剤、バインダー、甘味料、香料、pH調節剤、粘度調節剤、酸化防止剤、コーンスターチ、ラクトース、グルコース、微結晶質セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、クエン酸、酒石酸、水、エタノール、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール、カルボキシメチルセルロース若しくは脂肪物質、たとえば固い脂肪またはその混合物を使用して、錠剤、コーティング化錠剤、カプセル、粉末、粒状物、溶液、分散液、懸濁液、シロップ、エマルション、スプレーなどの慣用の経口投与形に配合することができる。当業界で知られる慣用の配合法を使用することができる。
【0044】
本組成物は、慣用の投与経路、即ち経口投与により同様に投与することができる。錠剤、コーティング化錠剤、カプセル、シロップなどの経口投与可能な組成物の使用が特に好ましい。
【0045】
式(I)の化合物の好適な一日分の用量は前記化合物1mg〜10g;前記化合物50mg〜1gまたは前記化合物50mg〜200mgである。
【0046】
本発明に従う医薬組成物は、薬剤として使用することができる。
【0047】
本発明はまた式(I)の脂質化合物を含む脂質組成物に関する。好適には脂質組成物の少なくとも60重量%、または少なくとも80重量%が前記化合物から構成される。
【0048】
脂質組成物はさらに医薬的に許容可能な酸化防止剤、たとえばトコフェロールを含むことができる。
【0049】
さらに本発明は薬剤として使用するための脂質組成物に関する。
【0050】
さらに本発明は、以下の分野において使用するための式(I)の脂質化合物の使用に関する:
・ヒトペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)異性体α、γまたはδの少なくとも一つの活性化または調節、ここで前記化合物はパン-アゴニストまたはモジュレーターである。
・脂質異常症、たとえば高トリグリセリド血漿(HTG)の予防及び/または治療。
・高トリグリセリドレベル、LDLコレステロールレベル、及び/またはVLDLコレステロールレベルの予防及び/または治療。
・肥満または過体重の症状の治療及び/または予防。
・減量及び/または体重増加の予防。
・脂肪肝疾患、たとえば非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の治療及び/または予防。
・アテローム性動脈硬化症の治療及び/または予防。
・心筋梗塞症の予防。
・末梢インスリン耐性及び/または糖尿病の症状の治療及び/または予防。
・2型糖尿病の治療及び/または予防。
・血漿インスリン、血糖及び/または血清トリグリセリドの低下。
・炎症性疾患または症状の治療及び/または予防。
【0051】
本発明はまた、上記症状の治療のための式(I)に従う脂質化合物、及び上記症状の治療及び/または予防の必要な哺乳類に医薬的に活性量の式(I)の化合物を投与することを含む、上記症状の治療及び/または予防法に関する。
【0052】
さらに本発明は、式(I)の脂質化合物の製造法を包含する。原材料は、野菜、微生物及び/または動物源、たとえば海産魚油に由来することができる。好ましくは海産物油またはオキアミ油を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は本発明の化合物のインビトロでのPPAR活性化を示す。
【図2】図2は本発明の化合物が脂質代謝に及ぼす効果を示す。
【図3】図3は本発明の化合物がグルコース代謝に及ぼす効果を示す。
【図4】図4は本発明の化合物がグルコース代謝に及ぼす効果を示す。
【図5】図5は本発明の化合物がグルコース代謝に及ぼす効果を示す。
【図6】図6は本発明の化合物がグルコース代謝に及ぼす効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明者らは、上記式(I)の化合物が際立って優れた薬学的活性をもつことを知見した。
【0055】
本明細書中で使用する場合、「脂質化合物」なる用語は、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸及び1〜6個の三重結合をもつ脂質などから誘導される脂肪酸類似体をさす。
【0056】
「医薬的に活性量」とは、所望の薬理学的及び/または治療的効果をもたらす量、即ちその目的を達成するのに効果的な組み合わせ製品の量をさす。個々の患者が必要とする量は変動し得るが、組み合わせ製品の有効量の最適範囲を決定することは当業者の技量の範囲内である。通常、本発明の組み合わせ製品と用いて症状を治療するための投薬計画は、患者の種類、年齢、体重、性別、食事及び病状などの種々の因子に従って選択される。
【0057】
「医薬的組成物」とは、医薬用途で使用するのに適した任意の形状の本発明に従う脂質化合物を意味する。
【0058】
「治療」とは、ヒトまたは非ヒト哺乳類の利益になりえる全ての治療的適用を包含する。ヒト及び獣医治療のいずれも本発明の範囲内である。治療は、現状に関するものであっても、予防的であってもよい。
【0059】
命名及び専門用語
脂肪酸は、一端(α)にカルボキシル(COOH)基と、(通常)もう一端(ω)にメチル基をもつ直鎖炭化水素である。化学的には、炭素原子の番号付けはα端から開始する。
【化24】

α炭素は、官能基に結合する炭素の後の最初の炭素をさし、第二の炭素はβ炭素である。
【0060】
本明細書中で使用する場合、「メチレンで中断された二重結合(methylene interrupted double bond)」なる表現は、メチレン基が脂質化合物の炭素鎖中の二重結合を隔てるようにその間に配置されている場合をさす。
【0061】
発明の詳細な説明
意外にも、本発明者らはカテゴリーA〜Eに示されている以下の脂質化合物が特に好ましいことを知見した。
【0062】
カテゴリーA
・飽和脂肪酸から誘導される。
・R1はC10-C22アルキルである。
・Xはカルボン酸またはその誘導体、カルボン酸エステル若しくはカルボキサミドを表す。
例i:
R1=C14、Y=Sである。
【化25】

【0063】
カテゴリーB
・一価飽和脂肪酸から誘導される。
・R1は1個の二重結合をもつC10-C22アルケニルである。
・Xはカルボン酸またはその誘導体、カルボン酸エステル若しくはカルボキサミドを表す。
【0064】
例ii:
R1=C18、Y=Sである。
【化26】

【0065】
例iii:
R1=C14、Y=Sである。
【化27】

【0066】
カテゴリーC
・多価飽和脂肪酸から誘導される。
・R1は2〜6個の二重結合をもつC10-C22アルケニルである。
・Xはカルボン酸またはその誘導体、カルボン酸エステル若しくはカルボキサミドを表す。
【0067】
例iv:
R1=チレンで中断された5つのメ二重結合をZ-配置でもつC20、Y=Sである。
【化28】

【0068】
例v:
R1=メチレンで中断された6つの二重結合をZ-配置でもつC22、Y=Sである。
【化29】

【0069】
例vi:
R1=メチレンで中断された3つの二重結合をZ-配置でもつC18、Y=Sである。
【化30】

【0070】
例vii:
R1=メチレンで中断された4つの二重結合をZ-配置でもつC15、Y=Sである。
【化31】

【0071】
例viii:
R1=メチレンで中断された3つの二重結合をZ-配置で、1つの二重結合をE-配置でもつC15、Y=Sである。
【化32】

【0072】
例ix:
R1=メチレンで中断された5つの二重結合をZ-配置でもつC18、Y=Sである。
【化33】

【0073】
例x:
R1=メチレンで中断された4つの二重結合をZ-配置で、1つの二重結合をE-配置でもつC18、Y=Sである。
【化34】

【0074】
カテゴリーD
・1〜6個の三重結合をもつ脂質から誘導される。
・R1はC10-C22アルキニルである。
・Xはカルボン酸またはその誘導体、カルボン酸エステル若しくはカルボキサミドを表す。
【0075】
例xi:
R1=1つの三重結合をもつC14、Y=Sである。
【化35】

【0076】
カテゴリーE
・R1はC10-C22アルキル、1〜6個の二重結合をもつC10-C22アルケニル及び1〜6個の三重結合をもつC10-C22アルキニルから選択される。
・Xはカルボン酸またはその誘導体、カルボン酸エステル若しくはカルボキサミドを表す。
・Yはスルホキシドまたはスルホンである。
【0077】
例xii:
R1=メチレンで中断された4つの二重結合をZ-配置でもつC15、Y=SOである。
【化36】

【0078】
例xiii:
R1=メチレンで中断された4つの二重結合をZ-配置でもつC15、Y=SO2である。
【化37】

【0079】
本発明の好ましい脂質化合物の具体例は以下のとおりである:
カテゴリーA−飽和脂肪酸:
【化38】

2-(テトラデシルチオ)ブタン酸(1)
R1=C14H29、R2=エチル、R3=水素原子、Y=S及びX=COOHである。
【0080】
【化39】

2-メトキシ-2-(テトラデシルチオ)酢酸(2)
R1=C14H29、R2=メトキシ、R3=水素原子、Y=S及びX=COOHである。
【0081】
【化40】

2-(イコシルチオ)ブタン酸(3)
R1=C20H41、R2=エチル、R3=水素原子、Y=S及びX=COOHである。
【0082】
【化41】

2-エチル-2-(テトラデシルチオ)ブタン酸(4)
R1=C14H29、R2=R3=エチル、Y=S及びX=COOHである。
【0083】
カテゴリーB−一価不飽和酸:
【化42】

2-エチル-3-チア-12Z-ヘンイコサン酸(5)
R1=C18H35、R2=エチル、R3=水素原子、Y=S及びX=COOHである。
【0084】
【化43】

(Z)-2-エチル-2-(オクタデク-9-エニルチオ)ブタン酸(6)
R1=C18H35、R2=R3=エチル、Y=S及びX=COOHである。
【0085】
カテゴリーC−多価不飽和脂肪酸誘導体:
【化44】

2-((3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエニルチオ)ブタン酸(7)
R1=C15H23、R2=エチル、R3=水素原子、Y=S及びX=COOHである。
【0086】
【化45】

2-エチル-2-((3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエニルチオ)ブタン酸(8)
R1=C15H23、R2=R3=エチル、Y=S及びX=COOHである。
【0087】
【化46】

2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)プロパン酸(9)
R1=C20H31、R2=メチル、R3=水素原子、Y=S及びX=COOHである。
【0088】
【化47】

2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)プロパン酸(10)
R1=C20H31、R2=エチル、R3=水素原子、Y=S及びX=COOHである。
【0089】
【化48】

2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)プロパン酸(11)
R1=C20H31、R2=メチル、R3=メチル、Y=S及びX=COOHである。
【0090】
【化49】

2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸(12)
R1=C20H31、R2=R3=エチル、Y=S及びX=COOHである。
【0091】
【化50】

1-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)シクロブタンカルボン酸(13)
R1=C20H31、R2及びR3は組み合わさってシクロブタン環を形成する、Y=S及びX=COOHである。
【0092】
【化51】

2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)-2-フェニル酢酸(14)
R1=C20H31、R2=フェニル、R3=水素原子、Y=S及びX=COOHである。
【0093】
【化52】

2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)-2-メトキシ酢酸(15)
R1=C20H31、R2=メトキシ、R3=水素原子、Y=S及びX=COOHである。
【0094】
【化53】

2-((4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)-ドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエニルチオ)ブタン酸(16)
R1=C22H33、R2=エチル、R3=水素原子、Y=S及びX=COOHである。
【0095】
【化54】

2-((4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)-ドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエニルチオ)-2-エチルブタン酸(17)
R1=C22H33、R2=R3=エチル、Y=S及びX=COOHである。
【0096】
【化55】

2-((9Z,12Z,15Z)-オクタデカ-9,12,15-トリエニルチオ)ブタン酸(18)
R1=C18H31、R2=エチル、R3=水素原子、Y=S及びX=COOHである。
【0097】
【化56】

2-エチル-2-((9Z,12Z,15Z)-オクタデカ-9,12,15-トリエニルチオ)ブタン酸(19)
R1=C18H31、R2=R3=エチル、Y=S及びX=COOHである。
【0098】
【化57】

プロパン-1,2,3-トリルトリス(2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノエート(20)
R1=C20H31、R2=エチル、R3=水素原子、Y=S及びX=トリグリセリドの形状のカルボン酸である。
【0099】
カテゴリーD−三重結合を含む脂肪酸:
【化58】

2-(テトラデク-12-イニルチオ)ブタン酸(21)
R1=C14H25、R2=エチル、R3=水素原子、Y=S及びX=COOHである。
【0100】
【化59】

2-エチル-2-(テトラデク-12-イニルチオ)ブタン酸(22)
R1=C14H25、R2=R3=エチル、Y=S及びX=COOHである。
【0101】
【化60】

2-メトキシ-2-(テトラデク-12-イニルチオ)酢酸(23)
R1=C14H25、R2=メトキシ、R3=水素原子、Y=S及びX=COOHである。
【0102】
カテゴリーE−スルホン及びスルホキシド:
【化61】

2-((3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエニルスルフィニル)ブタン酸(24)
R1=C15H23、R2=エチル、R3=水素原子、Y=SO及びX=COOHである。
【0103】
【化62】

2-((3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエニルスルホニル)ブタン酸(25)
R1=C15H23、R2=エチル、R3=水素原子、Y=SO2及びX=COOHである。
【0104】
【化63】

2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルスルフィニル)ブタン酸(26)
R1=C20H31、R2=エチル、R3=水素原子、Y=SO及びX=COOHである。
【0105】
【化64】

2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルスルホニル)ブタン酸(27)
R1=C20H31、R2=エチル、R3=水素原子、Y=SO2及びX=COOHである。
【0106】
【化65】

2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルスルフィニル)ブタン酸(28)
R1=C20H31、R2=R3=エチル、Y=SO及びX=COOHである。
【0107】
【化66】

2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルスルホニル)ブタン酸(29)
R1=C20H31、R2=R3=エチル、Y=SO2及びX=COOHである。
【0108】
上記カテゴリーA〜Eの化合物であって、式中、R2及びR3が異なるものは、光学異性体形で存在することが可能であり、即ち化合物の全ての光学異性体及びその混合物が包含される。従って、前記化合物はジアステレオマー、ラセミ体及びエナンチオマーとして存在することができる。
【0109】
本明細書中に記載される化合物の一般的な合成法
一般式(I)の化合物は、以下の一般的な手順により合成することができる。
【0110】
【化67】

【0111】
【化68】

【0112】
方法I及びIIに記載されるアルコールは、−10〜0℃で水素化リチウムアルミニウムまたは水素化ジイソブチルアルミニウムのような還元剤との還元により、たとえば天然の脂肪酸、アルファ-リノレン酸、共役リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)のカルボン酸エステルから直接製造することができる。アルコールはHolmeideら(J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,2000年、2271ページ)に記載されているように、多価不飽和脂肪酸EPA及びDHAの分解によっても製造することができる。この場合、精製EPAまたはDHAから出発することができるが、混合物中にEPAとDHAを含む魚油から出発することも可能である。
【0113】
式(X)及び(XI)の化合物は市販されているか、文献から知られるか、または当業界で知られる標準的な方法によって製造する。式(XI)の化合物中に存在する離脱基(leaving group:LG)は、たとえばメシレート、トシレート、または臭素などの好適なハロゲンであってもよい。
【0114】
方法Iを使用すると、得られたアルコールは、官能基の相互変換を使用して、当業者に知られる方法(段階I)により、末端のヒドロキシ基が好適な離脱基(LG)に変換された化合物に転換することができる。好適な離脱基としては、臭素、メシレート及びトシレートが挙げられる。これらの化合物は、さらに塩基の存在下、置換反応で好適に置換されたチオール酢酸誘導体(X)と反応することができる(段階II)。
【0115】
方法IIを使用すると、アルコールは、当業者に知られる方法を使用して対応するチオール(段階IV)に転換することができる。次いでチオールはさらに好適な溶媒系中、塩基の存在下で式(XI)の化合物と置換反応で反応することができる(段階V)。
【0116】
対応するスルホキシド及びスルホン(Y=SOまたはSO2)は、好適な酸化剤でチオエーテル(Y=S)の酸化により製造することができる(段階III)。酸化剤の例としては、m-クロロ-過安息香酸(MCPBA)、過酸化水素(H2O2)及びオキソン(カリウムパーオキシモノサルフェート)がある。1当量未満の酸化剤を使用することにより、主生成物はスルホキシドである。過剰量の酸化剤を使用すると、主生成物はスルホンである。
【0117】
使用した酸誘導体がカルボン酸エステルである場合、遊離酸を得るために加水分解を実施することができる。好適な溶媒系中でアルカリ金属の水酸化物、たとえばLiOH、NaOH若しくはKOHなどの塩基、またはEt3Nなどの有機塩基とLiClなどの無機塩とを使用するアルカリ性加水分解などによって、メチル基またはエチル基などのエステル化基を除去することができる。Tert-ブチル基は、好適な溶媒系中、酸、たとえばトリフルオロ酢酸若しくは蟻酸などの有機酸との処理によって除去することができる。ベンジル基などのアリールメチル基は、好適な溶媒系中、炭素上に担持させたパラジウムなどの触媒で水素化することなどにより除去することができる。
【0118】
方法IまたはIIに従う式Iの化合物の製造により、立体異性体の混合物を得ることができる。必要により、これらの異性体は当業者に知られる方法により、キラル分割剤で及び/またはキラルカラムクロマトグラフィーで分離することができる。
【0119】
方法III
式(I)の化合物{式中、Xはリン脂質の形状のカルボン酸である}は以下のプロセスにより製造することができる。
【化69】

【0120】
sn-グリセロ-3-ホスホコリン(GPC)の脂肪酸イミダゾリドなどの活性化脂肪酸とのアシル化は、ホスファチジルコリン合成における標準手順である。これは通常、溶媒としてDMSOを使用し、DMSOアニオンの存在下で実施する(Hermetter;Chemistry and Physics of lipids,1981年,28巻,111頁)。カドミウム(II)付加物としてのSn-グリセロ-3-ホスホコリンは、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン)の存在下でイミダゾリド活性化脂肪酸と反応して、個々の脂肪酸のホスファチジルコリンを製造する(PCT国際特許出願第PCT/GB2003/002582号)。酵素的トランスホスファチジル化(transphosphatidylation)によりホスファチジルコリンをホスファチジルエタノールアミンへ転換することができる(Wangら,J.Am.Chem.Soc.,1993年,115巻,10487頁)。
【0121】
リン脂質は、リン脂質の酵素的エステル化及びトランスエステル化またはリン脂質のトランスホスファチジル化によっても製造することができる(Hosokawa,J.Am.Oil Chem.Soc.,1995年,1287;Lilja-Hallberg,Biocatalysis,1994年,195)。
【0122】
方法IV
式(I)の化合物{式中、Xはトリグリセリドの形状のカルボン酸である}は、以下のプロセスにより製造することができる。過剰量の脂肪酸を、ジメチルアミノピリジン(DMAP)及び2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)を使用してグリセロールにカップリングさせることができる。
【0123】
方法V
式(I)の化合物{式中、Xはジグリセリドの形状のカルボン酸である}は、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下、脂肪酸(2当量)とグリセロール(1当量)との反応により製造することができる。
【0124】
方法VI
式(I)の化合物{式中、Xはモノグリセリドの形状のカルボン酸である}は、以下のプロセスにより製造することができる。
【化70】

【0125】
クロロホルム中、DCC及びDMAPを使用する1,2-O-イソプロピリデン-sn-グリセロールの脂肪酸によるアシル化により、モノジエノイルグリセロールが得られる。イソプロピリデン基の脱保護は、酸(HCl、酢酸など)で保護化グリセロールを処理することにより実施することができる(O'Brian,J.Org.Chem.,1996年,5914)。
【0126】
2-位置で脂肪酸を使用するモノグリセリドの製造に関しては幾つかの製造法がある。一つの方法では、グリシジル誘導体を生成するのに、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)と4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下で脂肪酸のグリシドールでのエステル化を利用する。トランス-エステル化前、グリシジル誘導体の無水トリフルオロ酢酸(TFAA)の処理により、モノグリセリドが得られる(Parkkariら,Bioorg.Med.Chem.Lett.2006年,2437)。
【化71】

【0127】
脂肪酸誘導体のモノ-、ジ-及びトリ-グリセリドの製造のさらなる方法は、PCT国際特許出願第PCT/FR02/02831号に記載されている。
【0128】
脂肪酸のモノ-、ジ-、トリ-グリセリドへの変換に関しては、酵素的プロセス(リパーゼ反応)を使用することも可能である。菌Mucor miehei由来の1,3-部位特異的なリパーゼを使用して、多価不飽和脂肪酸及びグリセロールからトリグリセリドまたはジグリセリドを製造することができる。別のリパーゼ、Candida antartica由来の非-部位特異的な酵母リパーゼは、多価不飽和脂肪酸からトリグリセリドを製造するのに非常に効率的である(Haraldsson,Pharmazie,2000年,3)。
【実施例】
【0129】
製造例:式(I)の具体的な脂肪酸誘導体のキャラクタリゼーション及び生物学的試験
本発明は以下の非限定的な実施例により詳述されるが、当分野の化学者に知られる標準的な方法及びこれらの実施例に記載のものと類似の方法を必要に応じて使用することができる。他に記載しない限り、以下のとおりである。
・蒸発は真空中、ロータリーエバポレーションで実施した。
・全ての反応は、室温、通常18〜25℃で、無水条件下、HPLCグレード溶媒で実施した。
・カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル40〜63μm(Merck)上のフラッシュ手段により、またはシリカゲルカラム“MiniVarioFlash”、“SuperVarioFlash”、“SuperVarioPrep”若しくは“EasyVarioPrep”(Merck)を使用してArmen Spotflashにより実施した。
・収率は、説明のためだけに提供されたものであり、必ずしも達成できる最大ではない。
・核磁気共鳴(NMR)シフト値は、Bruker Avance DPX200若しくは300装置で記録し、ピーク多重度は以下のように示す:s,一重線;d,二重線;t,三重線;q,四重線;p,五重線(pentet);m,多重線;br,ブロード。
・マススペクトルはLC/MS分光計で記録した。分離は、勾配溶離液を使用してEclipse XDB-C18 2.1×150mmカラム上、Agilient 1000シリーズモジュールを使用して実施した。溶離液として0.01%トリフルオロ酢酸または0.005%蟻酸ナトリウムを含有する緩衝液中5〜95%アセトニトリルの勾配液を使用した。マススペクトルは、正負イオン化モードを切り替えてG 1956 A質量分光計(エレクトロスプレー、3000V)で記録した。
【0130】
中間体の製造
実施例1
S-(3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエニルエタンチオエートの製造
【化72】

トリフェニルホスフィン(PPh3)(41.7g,159mmol)を不活性雰囲気下、0℃で乾燥テトラヒドロフラン(THF)(250mL)中に溶解し、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)(30.8mL,159mmol)を添加した。この混合物を0℃で40分間攪拌し、次いで乾燥THF(150mL)中の(全て-Z)-3,6,9,12-ペンタデカテトラエノール(17.5g,79.4mmol)とチオ酢酸(11.4mL,159mmol)の溶液を滴下添加した。得られた不透明な混合物を0℃で40分間攪拌し、次いで周囲温度で2時間攪拌した。ヘプタン(300mL)を添加し、混合物を10分間攪拌し、沈殿した白色固体を濾過により分離した。この手順を二回繰り返し、最終的に濃縮した後、残渣をヘプタン(100mL)中で16時間攪拌した。残渣を濾過及びフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン中1%EtOAc)で精製すると、油状の表記化合物137g(収率62%)が得られた。
【化73】

【0131】
実施例2
(3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエン-1-チオールの製造
【化74】

LiAlH4(2.05g,54.1mmol)を0℃、周囲雰囲気下で乾燥ジエチルエーテル(100mL)中に懸濁させた。この懸濁液に、乾燥ジエチルエーテル(50mL)中の(3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエニルエタンチオエート(13.7g,49.2mmol)の溶液を滴下添加し、得られた灰色混合物を0℃で10分間攪拌し、次いで周囲温度で30分間攪拌した。この混合物を〜5℃に冷却し、pH=2になるまで1MのHClを添加し、セライトの短いパッドを通して濾過した。このパッドを水及びジエチルエーテルで洗浄し、相分離し、水性相をジエチルエーテル(それぞれ100mL)で2回抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥(Na2SO4)し、濾過し、減圧下で濃縮すると、油状の表記化合物7.8g(収率67%)が得られた。
【化75】

【0132】
実施例3
(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルエタンチオエートの製造
【化76】

トリフェニルホスフィン(21.0g,80mmol)を0℃、不活性雰囲気下で乾燥THF(170mL)に溶解し、DIAD(15.8mL,80mmol)を滴下添加した。40分後、0℃で白色懸濁液を乾燥THF(50mL)中の(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタン-1-オール(11.5g,40mmol)及びチオ酢酸(5.7mL,80mmol)の溶液に15分で滴下添加した。得られた不透明混合物を0℃で30分間攪拌し、続いて周囲温度で1.5時間攪拌した。ヘプタン(200mL)を添加し、混合物を10分間攪拌し、沈殿した白色固体を濾別除去し、ヘプタン(150mL)で濯いだ。残渣を濃縮してTHFを殆ど除去し、周囲温度で18時間攪拌した。混合物を濾過し、濃縮し、ヘプタン(200mL)を添加した。得られた混合物を2時間攪拌し、濾過し、蒸発させた。残渣をEtOAc:ヘプタン(2:98)、続いてEtOAc:ヘプタン(4:96)、最終的にEtOAc:ヘプタン(5:95)を使用するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーで精製した。好適な画分を濃縮すると、油状の表記化合物11.0g(収率79%)が得られた。
【化77】

【0133】
実施例4
(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエン-1-チオールの製造
【化78】

S-(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルエタンチオエート(7.00g,20.2mmol)を油滴が溶解するまで10分間攪拌することによりMeOH(100mL)に溶解してから、無水炭酸カリウムK2CO3(2.79g,20.2mmol)を一度に添加した。混合物を周囲温度で1時間20分攪拌し、1MのHCl(50mL)と水(150mL)を添加してクエンチした。白い曇った混合物をEt2O(250mL)に添加し、相分離した。水性相をEt2O(2×250mL)で抽出した。合わせた有機相を塩水(250mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。濾過及び蒸発により油状の表記化合物(5.99g,収率97%)が得られ、これをさらに精製することなく使用した。
【化79】

【0134】
実施例5
(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルメタンスルホネートの製造
【化80】

Et3N(1.50mL,10.8mmol)及びメタンスルホニルクロリド(402μL,5.20mmol)を、窒素下、0℃でCH2Cl2(40mL)中の(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエエン-1-オール(1.15g,4.0mmol)の溶液に添加した。この混合物を0℃で1時攪拌し、氷水(100g)に注ぎ、水性相をEt2O(50mL)で抽出した。合わせた有機相を0.5M H2SO4(35mL)に添加し、有機相をNaHCO3(飽和水溶液)(25mL)で洗浄してから乾燥した(Mg2SO4)。濾過及び真空濃縮すると、粗な油状物1.24グラムが得られた。15〜40μmのMerckシリカ30gを充填したArmen,SVP D26カラム上、フロー20mL/分、UV 210nm及び15mL画分を収集する精製を、勾配溶離液(ヘプタン:EtOAc(100:0)で開始し、10分で10%EtOAcに上げ、次いで5分で20%EtOAc(10分保持)に上げ、次いで5分で40%EtOAc(0分保持)に上げる)で実施した。画分6〜14から油状の表記化合物1.16g(79%収率)が得られた。
【化81】

【0135】
実施例6
(4S,5R)-3-((S)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノイル)-4-メチル-5-フェニルオキサゾリジン-2-オン及び(4S,5R)-3-((R-)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノイル)-4-メチル-5-フェニルオキサゾリジン-2-オンの製造
【化82】

【0136】
窒素下、0℃に保持した乾燥ジクロロメタン(40mL)中の2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸(3.0g,7.9mmol)の混合物を、DMAP(1.0g,9.5mmol)及び1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(1.8g,8.7mmol)に添加した。得られた混合物を0℃で20分間攪拌し、(4S,5R)-4-メチル-5-フェニル-2-オキサゾリジノン(1.7g,9.5mmol)を添加し、得られた濁った混合物を周囲温度で24時間攪拌した。混合物を濾過し、減圧下で濃縮すると、二種類のジアステレオマーの混合物として所望の生成物を含む粗な生成物が得られた。この残渣を溶離液としてヘプタン中2%酢酸エチルを使用する、シリカゲル上のArmen Spotflash装置上でフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。この二種のジアステレオマーを分離し、好適な画分を濃縮した。(4S,5R)-3-((R)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノイル)-4-メチル-5-フェニルオキサゾリジン-2-オンは最初に溶離され、油状物として0.95g(47%収率)であった。(4S,5R)-3-((S)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノイル)-4-メチル-5-フェニルオキサゾリジン-2-オンは油状物として得られた。1.47g(67%収率)。
【0137】
(4S,5R)-3-((R)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノイル)-4-メチル-5-フェニルオキサゾリジン-2-オン(E1):
【化83】

(4S,5R)-3-((S)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノイル)-4-メチル-5-フェニルオキサゾリジン-2-オン:
【化84】

【0138】
ターゲット分子の製造
実施例7
エチル2-((3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエニルチオ)ブタノエート(30)の製造
【化85】

窒素雰囲気下、0℃で(3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエン-1-チオール(9.80g,41.5mmol)の乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)(70mL)の溶液をNaH(鉱油中60%,1.82g,45.6mmol)に添加し、この温度で10分間攪拌した。エチルブロモブチラート(6.39mL,43.5mmol)を添加し、混合物を周囲温度で30分間攪拌した。混合物を飽和NH4Cl(150mL)とヘプタン(150mL)との間で分配した。水性層をヘプタン(それぞれ100mL)で2回抽出し、合わせた有機抽出物を水(100mL)及び塩水(100mL)で洗浄した。有機層を乾燥(Na2SO4)し、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン:EtOAc=99:1次いで95:5)で精製した。好適な画分を濃縮すると、油状物の表記化合物14.1g(97%収率)が得られた。
【化86】

【0139】
実施例8
エチル2-((3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエニルスルホニル)ブタノエート(31)の製造
【化87】

エチル2-((3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエニルチオ)ブタノエート(2.7g,7.7mmol)を乾燥CH2Cl2(40mL)に溶解し、この溶液を不活性雰囲気下、−20℃に冷却した。メタ-クロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)(〜77%,4.0g,18mmol)を乾燥CHCl3(10mL)に溶解したものを滴下添加し、得られた溶液を−20℃で30分間攪拌し、放置してゆっくりと周囲温度に到達させ、次いで一晩攪拌した。溶媒を真空下で蒸発させ、残渣をヘプタン(30mL)に添加し、得られた白色沈殿物を濾別除去した。濾液を真空下で濃縮し、残渣をヘプタン(10mL)に添加した。得られた白色沈殿物を再び濾過により除去した。濾液を真空中で濃縮し、残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン:EtOAc=4:1)で精製した。好適な画分を濃縮すると、油状物の表記化合物0.37g(13%収率)が得られた。
【化88】

【0140】
実施例9
2-((3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエニルチオ)ブタン酸(7)の製造
【化89】

エチル2-((3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエニルチオ)ブタノエート(14.1g,40.2mmol)をエタノール(200mL)に溶解し、水(50mL)中のLiOH×H2O(13.5g,322mmol)の溶液を添加した。得られた濁った溶液を不活性雰囲気下、70℃で90分間攪拌し、冷却し、水(100mL)と3M HClをpH=2まで添加した。混合物をヘプタン(それぞれ100mL)で3回抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥(Na2SO4)し、濾過し、減圧下で濃縮すると、油状物の表記化合物11.8g(91%収率)が得られた。
【化90】

【0141】
実施例10
2-((3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエニルスルフィニル)ブタン酸(24)の製造
【化91】

2-((3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエニルチオ)ブタン酸(0.20g,0.62mmol)を乾燥CH2Cl2(10mL)に溶解し、この溶液を不活性雰囲気下、−20℃に冷却した。mCPBA(〜77%,0.15g,0.68mmol)を乾燥CHCl3(2mL)に溶解したものを滴下添加し、得られた溶液を−20℃で35分間攪拌した。溶媒を真空下で蒸発させ、残渣をヘプタン(10mL)に添加し、得られた白色沈殿物を濾別除去した。濾液を真空下で濃縮し、残渣をヘプタン(10mL)に添加した。得られた白色沈殿物を再び濾過により除去した。濾液を真空中で濃縮し、残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン:EtOAc+w/1% HCOOH 4:1〜1:1)で精製した。好適な画分を濃縮すると、油状物の表記化合物100mg(48%収率)が得られた。
【化92】

【0142】
実施例11
2-((3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエニルスルホニル)ブタン酸(25)の製造
【化93】

エチル2-((3Z,6Z,9Z,12Z)-ペンタデカ-3,6,9,12-テトラエニルスルホニル)ブタノエート(370mg,0.97mmol)をエタノール(10mL)に溶解し、H2O中LiOHの溶液(1M,3.9mL,3.9mmol)を添加した。得られた混合物を60℃で3時間攪拌し、冷却し、pH=2になるまで0.1M HClを添加し、ジエチルエーテル(それぞれ15mL)で2回抽出した。合わせた有機層を塩水(15mL)で洗浄し、乾燥し、濾過し、真空下で濃縮し、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン:EtOAc w/5% HCOOH 4:1)で精製した。好適な画分を濃縮すると、油状物の表記化合物250mg(73%収率)が得られた。
【化94】

【0143】
実施例12
エチル2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)プロパノエート(32)の製造
【化95】

(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタン-1-チオール(305mg,1.00mmol)を不活性雰囲気下、0℃に保持した乾燥DMF(10mL)中のNaH(鉱油中60%,44mg,1.10mmol)の溶液に添加した。10分後、エチルブロモプロピオネート(136μL,1.05mmol)を添加し、混合物を0℃で1.5時間攪拌した。反応混合物を飽和NH4Cl水溶液(20mL)とヘプタン(50mL)に添加した。相を分離し、水性相をヘプタン(2×25mL)で抽出した。合わせた有機物を塩水(25mL)で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、濾過し、蒸発させると、油状物の表記化合物376mgが得られた。勾配溶離液(純粋なヘプタンから開始し、段階的にヘプタン:EtOAc=95:5に増加)を使用するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによる精製で、油状の表記化合物318mg(79%収率)が得られた。
【化96】

【0144】
実施例13
エチル2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノエート(33)の製造
【化97】

(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタン-1-チオール(305mg,1.00mmol)を不活性雰囲気下、0℃に保持した乾燥DMF(10mL)中の溶液に、NaH(鉱油中60%,44mg,1.10mmol)を添加した。15分後、エチルブロモプロピオネート(154μL,1.05mmol)を添加した。混合物を0℃で1時間攪拌した。飽和NH4Cl水溶液(20mL)、水(20mL)とヘプタン(50mL)を添加した。相を分離し、水性相をヘプタン(2×25mL)で抽出した。合わせた有機物を水(25mL)及び塩水(25mL)で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、濾過し、蒸発させると、油状の表記化合物379mgが得られた。勾配溶離液(純粋なヘプタンから開始し、段階的にヘプタン:EtOAc=95:5に増加)を使用するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによる精製で、油状の表記化合物345mg(82%収率)が得られた。
【化98】

【0145】
実施例14
2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸(10)の製造
【化99】

エチル2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノエート(209mg,0.50mmol)をエタノール(2.5mL)に溶解し、水(2.5mL)中のLiOH×H2O(168mg,4.0mmol)の溶液に添加した。得られた濁った溶液を不活性雰囲気下、70℃で2時間攪拌し、冷却し、水(10mL)と1M HCl(5mL)をpH=1〜2まで添加した。混合物をヘプタン(2×20mL)とジエチルエーテル(20mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥(Na2SO4)し、濾過し、減圧下で濃縮すると、油状物の表記化合物154mgが得られた。勾配溶離液(純粋なヘプタンから開始し、段階的にヘプタン:EtOAc(5%HOAc)=80:20に増加)を使用するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによる精製で、油状の表記化合物151mg(77%収率)が得られた。
【化100】

【0146】
実施例15
(S)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸(34)の製造
【化101】

過酸化水素(水中30%,0.71mL,6.91mmol)及び水酸化リチウム一水和物(0.15g,3.46mmol)を窒素下、0℃に保持したテトラヒドロフラン(12mL)と水(4mL)中の(4S,5R)-3-((S)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノイル)-4-メチル-5-フェニルオキサゾリジン-2-オン(0.95g,1.73mmol)の溶液に添加した。この反応混合物を0℃で30分間攪拌した。10%Na2SO3(水溶液)(30mL)を添加し、5MのHClでpHを〜2に調節し、混合物をヘプタン(30mL)で2回抽出した。混和した有機抽出物を乾燥(Na2SO4)し、濾過し、濃縮した。残渣を溶離液としてヘプタンと酢酸エチル(98:8〜1:1)の極性を高める混合物を使用するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにかけた。好適な画分を濃縮すると、油状の表記化合物0.15g(17%収率)が得られた。
【化102】

【0147】
実施例16
(R)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)-2-ブタン酸(35)の製造
【化103】

過酸化水素(水中30%,1.04mL,10.2mmol)及び水酸化リチウム一水和物(0.21g,5.09mmol)を窒素下、0℃に保持したテトラヒドロフラン(15mL)と水(5mL)中の(4S,5R)-3-((R)-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノイル)-4-メチル-5-フェニルオキサゾリジン-2-オン(1.40g,2.55mmol)の溶液に添加した。この反応混合物を0℃で45分間攪拌した。10%Na2SO3(水溶液)(35mL)を添加し、5MのHClでpHを〜2に調節し、混合物をヘプタン(35mL)で2回抽出した。混和した有機抽出物を乾燥(Na2SO4)し、濾過し、濃縮した。残渣を溶離液としてヘプタンと酢酸エチル(98:8〜1:1)の極性を高める混合物を使用するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーにかけた。好適な画分を濃縮すると、油状の表記化合物0.17g(22%収率)が得られた。
【化104】

【0148】
実施例17
エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)-2-メチルプロパノエート(36)の製造
【化105】

不活性雰囲気下、0℃で(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエン-1-チオール(305mg,1.00mmol)の乾燥DMF(10mL)中の溶液に、NaH(鉱油中60%,44mg,1.10mmol)を添加した。15分後、エチル2-ブロモ-2-メチルブチラート(154μL,1.05mmol)を添加し、この混合物を0℃で1.5時間攪拌した。飽和NH4Cl水溶液(20mL)を添加してクエンチした。水(20mL)とヘプタン(50mL)を添加して水性相を分離した。水性相をヘプタン(2×25mL)で抽出した。合わせた有機物を塩水(25mL)及び塩水(2×25mL)で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、濾過し、蒸発させると、油状の表記化合物377mgが得られた。等張溶離液(ヘプタン:EtOAc=98:2)を使用するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによる精製で、油状の表記化合物307mg(77%収率)が得られた。
【化106】

【0149】
実施例18
2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)-2-メチルプロパン酸(11)の製造
【化107】

エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)-2-メチルプロパノエート(209mg,0.50mmol)をエタノール(2.5mL)に溶解し、これを水(2.5mL)中のLiOH×H2O(168mg,4.0mmol))の溶液に添加した。得られた曇った溶液を不活性雰囲気下、70℃で2時間攪拌し、冷却し、水(10mL)を添加し、pH=1〜2になるまで1MのHCl(5mL)を添加した。混合物をヘプタンで3回(3×20mL)抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥(Mg2SO4)し、濾過し、減圧下で濃縮すると、粗な油状の表記化合物101mgが得られた。これを勾配溶離液(純粋なヘプタンから開始し、段階的にヘプタン:EtOAc(5%HOAc)=80:20に増加)を使用するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによる精製で、油状の表記化合物78mg(40%収率)が得られた。
【化108】

【0150】
実施例19
エチル1-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)シクロブタンカルボキシレート(37)の製造
【化109】

不活性雰囲気下、0℃で(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエン-1-チオール(305mg,1.00mmol)の乾燥DMF(10mL)中の溶液に、NaH(鉱油中60%,44mg,1.10mmol)を添加した。15分後、エチル2-ブロモ-シクロブタンカルボキシレート(170μL,1.05mmol)を添加し、この混合物を0℃で1.5時間攪拌した。飽和NH4Cl水溶液(20mL)を添加して反応物をクエンチした。ヘプタン(50mL)を添加し、相を分離した。水性相をヘプタン(2×25mL)で抽出した。合わせた有機物を水(25mL)及び塩水(25mL)で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、濾過し、蒸発させると、粗な油状の表記化合物409mgが得られた。等張溶離液(ヘプタン:アセトン=98:2)を使用するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによる精製で、油状の表記化合物243mg(56%収率)が得られた。
【化110】

【0151】
実施例20
2-エチル-2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタン酸(12)の製造
【化111】

NaOEt(EtOH中21重量%,0.37mL,0.98mmol)を周囲雰囲気下、0℃に保持した乾燥EtOH(7mL)中の2-メルカプト-2-エチル酪酸(0.08g,0.49mmol))の溶液に滴下添加した。得られた混合物を0℃で30分間攪拌してから、乾燥EtOH(3mL)中の(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルメタンスルホネート(0.15g,0.41mmol)の溶液を滴下添加した。得られた曇った溶液を周囲雰囲気で24時間攪拌し、NH4Cl(飽和水溶液)(15mL)に注ぎ、pH=〜2になるまで3MのHClを添加してから、EtOAcで二回抽出した(2×20mL)。合わせた有機抽出物を塩水(10mL)で洗浄し、乾燥(Mg2SO4)し、濾過し、真空下で濃縮した。残渣を溶離液としてヘプタン中の10〜25%酢酸エチルの勾配液を使用するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによる精製で、油状の表記化合物0.12g(70%収率)が得られた。
【化112】

【0152】
実施例21
エチルエチル2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)-2-フェニルアセテート(38)の製造
【化113】

不活性雰囲気下、0℃で(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエン-1-チオール(305mg,1.00mmol)の乾燥DMF(10mL)中の溶液に、NaH(鉱油中60%,44mg,1.10mmol)を添加した。15分後、エチル2-ブロモ-2-フェニルアセテート(255mg,1.05mmol)を添加し、この混合物を0℃で1.5時間攪拌した。飽和NH4Cl水溶液(25mL)を添加して反応混合物をクエンチした。ヘプタン(50mL)を添加し、相を分離した。水性相をヘプタン(2×25mL)で抽出した。合わせた有機物を水(25mL)及び塩水(25mL)で洗浄し、乾燥(MgSO4)し、濾過し、蒸発させると、粗な油状の表記化合物453mgが得られた。等張溶離液(ヘプタン:EtOAc=98:2)を使用するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによる精製で、油状の表記化合物177mg(38%収率)が得られた。
【化114】

【0153】
生物学的試験
実施例22
インビトロPPAR活性化の評価
本アッセイでは、酵母トランス活性化因子GAL4 DNA結合ドメイン(DBD)に融合するヒトPPARα、ヒトPPARδまたはヒトPPARγのリガンド結合ドメイン(ligand binding domain:LBD)を含むキメラタンパク質をそれぞれ表す、三つの安定なレポーター細胞株、PPARα、PPARδまたはPPARγでインビトロで実施した。
【0154】
ルシフェラーゼ(Luc)レポーター遺伝子は、β-グロビンプロモーターの前でGAL4認識配列のパラメーターにより誘導する。GAL4-PPARα、GAL4-PPARδ及びGAL4-PPARγキメラレポーターを使用すると、同じレポーター遺伝子で三種のPPARサブタイプにわたり相対的活性の定量化及び内因性レセプター由来のバックグラウンド・アクティビティ除去を可能にするという効果がある。
【0155】
二つの非置換参照物質、参照1及び2と、五種の試験物質(7)、(10)、(11)、(24)及び(25)を10μMの濃度で試験した。試験した物質の構造式は以下のとおりである:
【化115】

【0156】
物質のPPAR選択性は、100%活性の既知の参照薬剤セット(drug reference)(PPARαに関しては1μM GW7647、PPARδに関しては1μM L-165041及びPPARγに関しては1μM BRL49653)に対する比較により決定した。
結果を図1に示す。
【0157】
実施例23
インビトロPPARα活性化の評価(濃度応答データ)
本アッセイは、一過性にトランスフェクトしたHEK293細胞中で5×GAL4-部位誘導Photinus pyralisルシフェラーゼレポーター構築物と組み合わせてGAL4-DNA結合ドメイン-PPARα-LBD融合構築物を含む哺乳類ワンハイブリッドアッセイ(M1H)を使用してインビトロで実施した。
化合物(12)及び正の対照(GW7647)は、種々の濃度で試験した。結果を表1に示す。
【0158】
【表1】

【0159】
実施例24
脂質異常症モデル(APOE*3ライデントランスジェニックマウス)におけるインビボ脂質代謝における効力の評価
この動物モデルは、血漿リポタンパク質レベル、リポタンパク質プロフィール、脂質低下薬(スタチン、フィブラートなど)に対するその応答性及び栄養素に関するヒトの状況の代表であることが証明されている。さらに、血漿コレステロールレベルに応じて、APOE*3ライデンマウスは、細胞構成並びにモルフォロジー及び免疫組織化学的特徴に関してヒトで知見されるものに似ている大動脈中のアテローム性動脈硬化症を発症する。
【0160】
メスAPOE*3ライデンマウスに半合成ウェスタンタイプ規定食(Western-type diet:WTD,15%ココアバター,40%蔗糖及び0.25%コレステロール;全てw/w)を処方した。この規定食で、血漿コレステロールレベルは約12〜15mmol/lの軽度に上昇したレベルまで到達した。4週間の実施期間後、血漿コレステロール、トリグリセリド及び体重に合うマウスをそれぞれ10匹ずつの群に小分けした(t=0)。
【0161】
試験物質はウェスタンタイプ規定食に混ぜて経口投与した。化合物を混合しやすくするために、ひまわり油を10mL/食事kgの総油量で添加した。
【0162】
処置3週間(t=3週間)後、マウスを一晩断食(o/n)させて、血漿ケトン体及び遊離脂肪酸を測定するために血液サンプルを採取した。T=0及び4週間で、血漿コレステロール及びトリグリセリドを測定するために4時間の断食期間後、血液サンプルを採取した。
【0163】
2種の非置換参照物質、参照3及び2と、三種の試験物質(7)、(10)及び(12)を0.33mmol/体重kg/日で投与した。試験した物質の構造式は以下の通りである:
【化116】

結果を図2に示す。
【0164】
実施例25
糖尿病II型モデル(オス ob/obマウス)におけるグルコース代謝に及ぼす効果の測定
II型糖尿病用のモデルとしてob/obマウスを使用することができる。マウスはレプチン欠損につながる肥満自然突然変異(Lepob)に関してホモ接合性である。肥満(ob/obマウスは、野生型対照の正常体重の3倍に到達しえる)に加えて、ob/obマウスは高血糖症、耐糖能異常、血漿インスリンの上昇、不妊症、創傷治癒障害、並びに下垂体及び副腎由来のホルモン産生上昇のII型様糖尿病症候群を示す。
【0165】
順化のため、オスob/obマウスに、数週間、低脂肪食を与えた。順化期間後、体重、血漿グルコース及びインスリンにあわせてそれぞれマウス10匹の3つのグループにさらに分けた(t=0)。
【0166】
全ての化合物はAM II規定食と混合して経口投与した。化合物を混合し易くするために、ひまわり油を10ml/規定食kgの総量になるまで添加した。
【0167】
T=0、2及び4週で体重及び食事摂取量を測定した。t=0、2及び4週で、全血HbA1c及び血漿グルコース、インスリン、コレステロール及びトリグセリドを測定するために4時間の絶食期間後に全血サンプルを採取した。
【0168】
ピオグリタゾン(pioglitazone)を参照として使用した(15mg/体重kg/日)。化合物(10)を0.6mmol/体重kg/日で投与した。結果(t=4)を図3から6に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

{式中、R1はC10-C22アルキル、1〜6個の二重結合をもつC10-C22アルケニル、及び1〜6個の三重結合をもつC10-C22アルキニルから選択され;
R2及びR3は同一または異なり、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる置換基の群から選択することができ、但しR2及びR3は両方とも水素原子であることはできない;または
R2及びR3はシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタンまたはシクロヘキサンのようなシクロアルカンを形成するために結合することができる;
Yは硫黄、スルホキシド及びスルホンから選択され;
Xはカルボン酸またはその誘導体、カルボン酸エステル若しくはカルボキサミドを表す}の脂質化合物またはその医薬的に許容可能な塩、溶媒和物、かかる塩の溶媒和物またはプロドラッグ。
【請求項2】
R2及びR3は独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基から選択されるか;またはR2及びR3はシクロアルカンを形成するために結合することができる、請求項1に記載の脂質化合物。
【請求項3】
R2及びR3は独立して水素原子、アルキル基、またはメトキシ基若しくはエトキシ基から選択される、請求項2に記載の脂質化合物。
【請求項4】
R2及びR3は独立して水素原子、エチル、メトキシまたはエトキシ基、フェニルから選択されるか;またはR2及びR3は結合してシクロブタン基を形成する、請求項2に記載の脂質化合物。
【請求項5】
R2及びR3の一方は水素原子であり、他方はヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる置換基の群から選択される、請求項1に記載の脂質化合物。
【請求項6】
R2及びR3は同一または異なり、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基からなる置換基の群から選択されえる、請求項1に記載の脂質化合物。
【請求項7】
R2及びR3はアルキル基である、請求項6に記載の脂質化合物。
【請求項8】
R2及びR3は同一または異なり、メチルまたはエチルから選択される、請求項7に記載の脂質化合物。
【請求項9】
R2及びR3はエチルである、請求項7に記載の脂質化合物。
【請求項10】
R1はC10-C22アルキルであり、前記脂質化合物は飽和脂肪酸から誘導されたものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項11】
R1はC10-C22アルキルであり、前記脂質化合物は飽和脂肪酸から誘導されたものである、請求項6〜9のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項12】
R1は1〜6個の二重結合をもつC10-C22-アルケニルである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項13】
前記脂質化合物は一価不飽和脂肪酸から誘導されたものである、請求項12に記載の脂質化合物。
【請求項14】
前記脂質化合物は多価不飽和脂肪酸から誘導されたものである、請求項12に記載の脂質化合物。
【請求項15】
R1は3〜6個の二重結合をもつC10-C22-アルケニルである、請求項12または14のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項16】
R1はメチレンで中断された3〜6個の二重結合をZ-配置でもつC10-C22-アルケニルである、請求項15に記載の脂質化合物。
【請求項17】
R1は、Z配置をもち、且つ炭素鎖のオメガ(ω)端から三番目の炭素-炭素結合に第一の二重結合をもつ、少なくとも一つの二重結合をもつC14-C22アルケニル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
R1は5〜6個の二重結合をもつC14-C22アルケニルである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
R1はC10-C22アルキニルであり、前記脂質化合物は1〜6個の三重結合を含む脂質から誘導されたものである、請求項1に記載の脂質化合物。
【請求項20】
Yが硫黄である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項21】
Yはスルホキシドである、請求項1〜20のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項22】
Yはスルホンである、請求項1〜21のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項23】
Xはエステル、遊離酸、トリグリセリドまたはリン脂質の形状のカルボン酸である、請求項1〜22のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項24】
Xはエステル、または遊離酸の形状のカルボン酸である、請求項23に記載の脂質化合物。
【請求項25】
Xは遊離酸の形状のカルボン酸である、請求項23または24に記載の脂質化合物。
【請求項26】
R1はC10-C22アルキルであり、前記脂質化合物は飽和脂肪酸から誘導されたものであり;
R2及びR3は同一または異なり、ヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アミノ基からなる置換基の群から選択されえる;及び
Xは遊離酸の形状のカルボン酸である、請求項1に記載の脂質化合物。
【請求項27】
R2及びR3はアルキル基である、請求項26に記載の脂質化合物。
【請求項28】
前記脂質化合物の前記塩は、Li+、Na+、K+、NH4+、メグルミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ジエチルアミン、アルギニンなどの一価カチオン;Mg2+、Ca2+、エチレンジアミン、ピペラジンなどの二価イオン;またはキトサンなどの多価カチオンを含む、請求項1に記載の脂質化合物。
【請求項29】
ジアステレオマー(diasteromere)異性体の混合物中にあるかまたはラセミ体の形である、請求項1〜28のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項30】
ジアステレオマーまたはエナンチオマーの形状の請求項29に記載の脂質化合物。
【請求項31】
そのR立体異性体の形状の請求項29に記載の脂質化合物。
【請求項32】
そのS立体異性体の形状の請求項29に記載の脂質化合物。
【請求項33】
前記化合物が、
【化2】

エチル2-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)ブタノエート;または
【化3】

エチル1-((5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)-イコサ-5,8,11,14,17-ペンタエニルチオ)シクロブタンカルボキシレートである、請求項1に記載の脂質化合物。
【請求項34】
R1はC10-C22アルキルであり、前記脂質化合物は飽和脂肪酸から誘導されたものであり;
Xはカルボン酸またはその誘導体、カルボン酸エステル若しくはカルボキサミドを表し;及び
Yは硫黄である、請求項1に記載の脂質化合物。
【請求項35】
R1は1個の二重結合をもつC10-C22アルケニルであり、前記脂質化合物は一価不飽和脂肪酸から誘導されたものであり;
Xはカルボン酸またはその誘導体、カルボン酸エステル若しくはカルボキサミドを表し;及び
Yは硫黄である、請求項1に記載の脂質化合物。
【請求項36】
R1は2〜6個の二重結合をもつC10-C22アルケニルであり、前記脂質化合物は多価不飽和脂肪酸から誘導されたものであり;
Xはカルボン酸またはその誘導体、カルボン酸エステル若しくはカルボキサミドを表し;及び
Yは硫黄である、請求項1に記載の脂質化合物。
【請求項37】
R1はC10-C22アルキニルであり、前記脂質化合物は1〜6個の三重結合をもつ脂質から誘導されたものであり;
Xはカルボン酸またはその誘導体、カルボン酸エステル若しくはカルボキサミドを表し;及び
Yは硫黄である、請求項1に記載の脂質化合物。
【請求項38】
R1はC10-C22アルキル、1〜6個の二重結合をもつC10-C22アルケニル、及び1〜6個の三重結合をもつC10-C22アルキニルから選択され;
Xはカルボン酸またはその誘導体、カルボン酸エステル若しくはカルボキサミドを表し;及び
Yはスルホキシドまたはスルホンである、請求項1に記載の脂質化合物。
【請求項39】
請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物を含む補助食品。
【請求項40】
請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物を含む医薬組成物。
【請求項41】
医薬的に許容可能なキャリヤ、賦形剤若しくは希釈剤、またはその任意の組み合わせをさらに含む、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
さらに医薬的に許容可能な酸化防止剤を含む、請求項40または41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記酸化防止剤がトコフェロールである、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
経口投与用に配合されている、請求項40〜43のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項45】
カプセルまたは錠剤の形状である、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記脂質化合物1mg〜10gの一日の投与量を提供するために配合されている、請求項40〜45のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記脂質化合物は50mg〜1gの一日の投与量を提供するために配合されている請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記脂質化合物50mg〜200mgの一日の投与量を提供するために配合されている、請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
薬剤としてまたは診察目的で使用するための請求項40〜48のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項50】
請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物を含む脂質組成物。
【請求項51】
前記脂質組成物の少なくとも60重量%が前記脂質化合物から構成されている、請求項50に記載の脂質組成物。
【請求項52】
前記脂質組成物の少なくとも80重量%が前記脂質化合物から構成されている、請求項51に記載の脂質組成物。
【請求項53】
さらに医薬的に許容可能な酸化防止剤を含む、請求項50〜52のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【請求項54】
前記酸化防止剤がトコフェロールである、請求項53に記載の脂質組成物。
【請求項55】
薬剤として使用するための請求項50〜54のいずれか一項に記載の脂質組成物。
【請求項56】
ヒトペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)異性体α、γまたはδの少なくとも一つの活性化または調節に使用するための、請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項57】
前記化合物はパン-アゴニストまたはモジュレーターである、請求項56に記載の脂質化合物。
【請求項58】
脂質異常症の症状の予防及び/または治療に使用するための、請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項59】
前記脂質異常症の症状が高トリグリセリド血症である、請求項58に記載の脂質化合物。
【請求項60】
高トリグリセリドレベル、LDLコレステロールレベル、及び/またはVLDLコレステロールレベルの予防及び/または治療に使用するための、請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項61】
肥満または過体重の症状の治療及び/または予防に使用するための、請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項62】
減量で及び/または体重増加の予防に使用するための、請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項63】
脂肪肝疾患の治療及び/または予防に使用するための、請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項64】
前記脂肪肝疾患が非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)である、請求項63に記載の脂質化合物。
【請求項65】
アテローム性動脈硬化症の治療及び/または予防に使用するための、請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項66】
心筋梗塞症の予防に使用するための、請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項67】
末梢インスリン耐性及び/または糖尿病の症状の治療及び/または予防に使用するための、請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項68】
2型糖尿病の治療及び/または予防に使用するための、請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項69】
血漿インスリン、血糖及び/または血清トリグリセリドの低下に使用するための、請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項70】
炎症性疾患または症状の治療及び/または予防に使用するための、請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物。
【請求項71】
医薬的に活性量の請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物をヒトペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)異性体α、γまたはδの少なくとも一つの活性化または調節に関連する症状の治療の必要な哺乳類に投与することを含む、ヒトペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)異性体α、γまたはδの少なくとも一つの活性化または調節に関連する症状の治療法。
【請求項72】
前記化合物はパンアゴニストまたはモジュレーターである、請求項71に記載のヒトペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)異性体の少なくとも一種の活性化または調節に関連する症状の治療法。
【請求項73】
医薬的に活性量の請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物を脂質異常症の症状の予防及び/または治療の必要な哺乳類に投与することを含む、脂質異常症の症状の予防及び/または治療法。
【請求項74】
前記脂質異常症が高トリグリセリド血症である、請求項73に記載の脂質異常症の症状の予防及び/または治療法。
【請求項75】
医薬的に活性量の請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物を高トリグリセリドレベル、LDLコレステロールレベル、及び/またはVLDLコレステロールレベルの予防及び/または治療の必要な哺乳類に投与することを含む、高トリグリセリドレベル、LDLコレステロールレベル、及び/またはVLDLコレステロールレベルの予防及び/または治療法。
【請求項76】
肥満または過体重の症状の治療及び/または予防の必要な哺乳類に、医薬的に活性量の請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物を投与することを含む、肥満または過体重の症状の治療及び/または予防法。
【請求項77】
減量及び/または体重増加を予防することが必要な哺乳類に、医薬的に活性量の請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物を投与することを含む、減量及び/または体重増加を予防する方法。
【請求項78】
脂肪肝疾患の治療及び/または予防の必要な哺乳類に、医薬的に活性量の請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物を投与することを含む、脂肪肝疾患の治療及び/または予防法。
【請求項79】
前記脂肪肝疾患が非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)である、請求項78に記載の脂肪肝疾患の治療及び/または予防法。
【請求項80】
アテローム性動脈硬化症の治療及び/または予防の必要な哺乳類に、医薬的に活性量の請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物を投与することを含む、アテローム性動脈硬化症の治療及び/または予防法。
【請求項81】
心筋梗塞症の予防の必要な哺乳類に、医薬的に活性量の請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物を投与することを含む、心筋梗塞症の予防法。
【請求項82】
末梢インスリン耐性及び/または糖尿病の症状の治療及び/または予防の必要な哺乳類に、医薬的に活性量の請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物を投与することを含む、末梢インスリン耐性及び/または糖尿病の症状の治療及び/または予防法。
【請求項83】
2型糖尿病の治療及び/または予防の必要な哺乳類に、医薬的に活性量の請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物を投与することを含む、2型糖尿病の治療及び/または予防法。
【請求項84】
血漿インスリン、血糖及び/または血清トリグリセリドの低下の必要な哺乳類に、医薬的に活性量の請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物を投与することを含む、血漿インスリン、血糖及び/または血清トリグリセリドの低下法。
【請求項85】
炎症性疾患または症状の治療及び/または予防の必要な哺乳類に、医薬的に活性量の請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物を投与することを含む、炎症性疾患または症状の治療及び/または予防法。
【請求項86】
請求項1〜38のいずれか一項に記載の脂質化合物の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−528350(P2011−528350A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518677(P2011−518677)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【国際出願番号】PCT/NO2009/000262
【国際公開番号】WO2010/008299
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(509123471)プロノヴァ バイオファーマ ノルゲ アーエス (5)
【Fターム(参考)】