説明

補強ゴムホースの製造方法

【課題】内層ゴムとその外周に被覆した補強層との間の接着性を低下させることなく、補強層の隙間からの内層ゴムの噴き出しを抑制することができる補強ゴムホースの製造方法を提供する。
【解決手段】マンドレル6の外周に未加硫の内層ゴム2を被覆し、その被覆した内層ゴム2の表面に、照射線量が20〜40kGyとなるように電子線9を照射して半加硫状態にした後に、内層ゴム2の外周に補強層3を被覆し、その補強層3に外層ゴム4を被覆してホース本体12を形成し、そのホース本体12を加硫した後にマンドレル6を抜き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強ゴムホースの製造方法に関し、更に詳しくは、内層ゴムとその外周に被覆した補強層との間の接着性を低下させることなく、補強層の隙間からの内層ゴムの噴き出しを抑制するようにした補強ゴムホースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械や工作機械などに用いられる耐油圧性の高いゴムホースは、一般に内層ゴムと外層ゴムとの間に補強層を挟み込んだ構造を有している。通常、このようなゴムホースは、金属製又は樹脂製のマンドレルの外周に未加硫の内層ゴムを被覆し、その内層ゴムの外周に補強層と外層ゴムとを順に被覆して形成したホース本体を加硫した後に、マンドレルを抜き取ることにより製造される。
【0003】
しかし、上記の補強層は、内層ゴムの表面を覆うように金属ワイヤなどの補強コードに高張力を加えながら編組して形成されるので、流動性の高い未加硫の内層ゴムが、高い張力の締め付けにより、軸方向に移動して肉厚が変化したり、編組の網目から表面側に噴き出したりして、ゴムホースの品質低下を招くという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するため、特許文献1は、マンドレルの外周に被覆した未加硫の内層ゴムの表面に電子線を照射して、内層ゴムの表面を半加硫状態にして硬化させることにより、内層ゴムの流動性を抑制するようにしたゴムホースの製造方法を提案している。
【0005】
しかし、上記の製造方法は、上述した問題点のうち未加硫の内層ゴムのホース軸方向への移動による肉厚変化の防止を主目的にしているため、内層ゴムの照射線量を50〜120kGyの範囲にして、内層ゴムの硬化度を比較的高いものにしている。しかし、このように硬化度が高くなると、内層ゴムの表面の濡れ性が低くなるため、内層ゴムと補強層との間の接着性が低下し、ゴムホースの強度が低下してしまうという問題があった。
【特許文献1】特公平4−23629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、内層ゴムとその外周に被覆した補強層との間の接着性を低下させることなく、補強層の隙間からの内層ゴムの噴き出しを抑制することができる補強ゴムホースの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明の補強ゴムホースの製造方法は、マンドレルの外周に未加硫の内層ゴムを被覆し、該内層ゴムの表面に電子線を照射して半加硫状態にした後、該内層ゴムの外周に補強層を被覆し、該補強層に外層ゴムを被覆してホース本体を形成し、該ホース本体を加硫する補強ゴムホースの製造方法において、前記未加硫の内層ゴムの照射線量が20〜40kGyとなるように前記電子線を照射することを特徴とするものである。
【0008】
上記の構成において、内層ゴムとしてはアクリロニトリルブタジエンゴムを主成分とするゴム組成物を用いることが望ましい。また、補強層には、真鍮がメッキされた鋼線の編組を用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の補強ゴムホースの製造方法によれば、未加硫の内層ゴムに照射線量が20〜40kGyとなるように電子線を照射するようにしたので、内層ゴムの加硫の進行を、補強層との間の接着性を低下させない程度の半加硫状態に抑制し、しかも補強層の隙間からの内層ゴムの噴き出しを抑制するため、ゴムホースの品質低下を招かないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の補強ゴムホースの製造方法により製造したゴムホースの一例を示す。
【0012】
このゴムホース1は、内層ゴム2の外周面に補強層3と外層ゴム4とを順に積層した構造を有している。内層ゴム2には、耐油性に優れたアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を主成分とするゴム組成物が好ましく用いられる。なお、図示の例では補強層3を一層としているが、層間に中間ゴム層が配置された複数の補強層3を設けるようにしてもよい。
【0013】
この本発明の補強ゴムホースの製造方法を、図1及び図2を基にして以下に説明する。
【0014】
まず、巻出機5から繰り出したマンドレル6の外周面に、第1押出機7により未加硫の内層ゴム2を被覆する。その内層ゴム2の表面に、電子線照射装置8内で電子線9を照射して内層ゴム2の表面を架橋反応させ、半加硫状態にして硬化させる。このとき内層ゴム2の照射線量は、20〜40kGyの範囲になるように制御される。
【0015】
次に、内層ゴム2を覆うように、編組機10により編組して補強層3を形成する。この補強層3のコードには、金属ワイヤ又は有機繊維が用いられる。金属ワイヤの場合にはゴムとの接着性を良好にするため、真鍮をメッキした鋼線が好ましく用いられ、有機繊維の場合には、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)で処理されたものが好ましく用いられる。なお、補強層3は、金属ワイヤ又は有機繊維をスパイラルに巻き回すことにより形成するようにしてもよい。
【0016】
次に、第2押出機11により補強層3の上に未加硫の外層ゴム4を被覆してホース本体12を形成し、そのホース本体12を巻取機13に巻き取る。最後に、ホース本体12を図示しない加硫槽内で加硫してからマンドレル6を抜き取る。なお、加硫工程は、ホース本体12を巻取機13を経由せずに加硫槽に直接送る連続工程であってもよい。
【0017】
このようなゴムホース1の製造方法において、上述したように電子線9は内層ゴム2の照射線量が20〜40kGyとなるように照射される。照射線量が20kGy未満だと内層ゴム2の架橋が不十分であるため流動性が高くなり、内層ゴムが編組の隙間から表面側に噴き出す。また、照射線量が40kGy超だと内層ゴム2の加硫が進み過ぎて硬化度が高くなるため、表面の濡れ性が低くなって補強層3との接着性が低下する。
【0018】
このように、本発明では内層ゴム2に対し電子線を照射して半加硫状態にするに当たり、照射線量が20〜40kGyとなるようにしたので、内層ゴム2の加硫の進行を、補強層3との接着性が低下しない程度であって、かつ補強層の隙間からの内層ゴム2の噴き出しが起こらない程度に抑制することができる。
【実施例】
【0019】
図1に示す構造のゴムホース1を製造するに当たり、内層ゴム2のゴム成分として、表1に示す組成を有する2種類のゴム組成物A及びBを用意し、図2に示す製造工程において、表2に示すように内層ゴム2のゴム成分と照射線量とを異ならせて、16種類のゴムホース(実施例1〜6、比較例1〜10)を製造した。
【0020】
これらゴムホースは、ホース内径25.4mm、ホース外径32.3mm、内層ゴム厚2.2mm及び外層ゴム厚1.2mmの形状を有し、補強層3は0.25mm径の鋼線からなる編組密度84.7の編組1層から構成されている。ゴムホースの加硫は、未加硫ゴムホース外面に樹脂(TPX)を被覆して、142℃、90分の条件でスチーム加硫により行った。
【0021】
上記の製造工程において、補強層3を構成する編組の隙間からの内層ゴム2の噴き出しの有無、及び製造されたゴムホースにおける内層ゴム2の編組からの剥離強さをそれぞれ評価し、その結果を表2に示した。なお、剥離強さの測定については、JIS K 6330−6に準拠して、試験片のタイプ5(短冊状の試験片で、長さ160mm×ホース外周の1/2幅)で行った。剥離強さが、JIS K 6349−1、2に規定する内層ゴム2と補強層3間の剥離強さの下限値である2.5(kN/m)以上の値を示したゴムホースを合格(○印)、それ以外を不合格(×印)とした。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
表2に示す実験結果から、実施例1〜6のゴムホースは、補強層である編組の隙間からの噴き出しがなく、しかも編組との接着性に優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の補強ゴムホースの製造方法により製造したゴムホースの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の補強ゴムホースの製造方法を実施する製造工程の一部を示す工程図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ゴムホース
2 内層ゴム
3 補強層
4 外層ゴム
5 巻出機
6 マンドレル
7 第1押出機
8 電子線照射装置
9 電子線
10 編組機
11 第2押出機
12 ホース本体
13 巻取機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンドレルの外周に未加硫の内層ゴムを被覆し、該内層ゴムの表面に電子線を照射して半加硫状態にした後、該内層ゴムの外周に補強層を被覆し、該補強層に外層ゴムを被覆してホース本体を形成し、該ホース本体を加硫する補強ゴムホースの製造方法において、
前記未加硫の内層ゴムの照射線量が20〜40kGyとなるように前記電子線を照射する補強ゴムホースの製造方法。
【請求項2】
前記内層ゴムがアクリロニトリルブタジエンゴムを主成分とするゴム組成物からなる請求項1に記載の補強ゴムホースの製造方法。
【請求項3】
前記補強層が、真鍮がメッキされた鋼線の編組からなる請求項1又は2に記載の補強ゴムホースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−76154(P2010−76154A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244839(P2008−244839)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】