説明

製塩装置及び製塩方法

【課題】イオン交換膜電気透析装置における海水の濃縮効率を良好とするとともに、海水を昇温させるために要する電力消費を抑制することができる製塩装置及び製塩方法を提供することを目的とする。
【解決手段】製塩装置1は、供給経路を介して供給された海水を濃縮するイオン交換膜電気透析装置と、濃縮した海水の水分を蒸発させて塩を結晶化させる蒸発結晶化装置9と、前記イオン交換膜電気透析装置の前段で、海水を前記供給経路からタービン用復水器に冷媒として使用可能に導く第1経路6と、前記タービン用復水器11で冷媒として使用された海水を、前記第1経路6よりも下流側の前記供給経路に導く第2経路7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製塩装置及び製塩方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
代表的な製塩装置として、イオン交換膜電気透析装置を用いたものがある(特許文献1参照)。イオン交換膜電気透析装置は、イオン交換膜と電気の働きで溶液中のイオン性物質を分離し、濃縮する装置である。イオン交換膜電気透析装置では、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを交互に並べ、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜で形成された室内の1室おきに海水を流し、両端から電流を流すことで海水を濃縮する。濃縮した海水(かん水)は、蒸発缶で水分を蒸発させて結晶化され、塩となる。
【0003】
イオン交換膜を用いて電気透析する際、供給された海水温度によって濃縮効率が変化することが知られている。海水温度が低すぎると、同じ電力量をかけてもかん水の塩分濃度は低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−227120号公報(段落[0002])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
海水温度が低くなる冬場には、イオン交換膜電気透析装置にて海水を電気加熱等で加温し、海水温度を上昇させるという手法も取り得る。しかしながら、これにより、かん水の塩分濃度は高くなるが、加熱用に電力を消費するため、製塩コストも増加する。その他、製塩過程で発生する温海水を加温に使用するシステムも採用し得るが、設備の複雑化と効率の面から同様に製塩コストに影響が出る。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、イオン交換膜電気透析装置における海水の濃縮効率を良好とするとともに、海水を昇温させるために要する電力消費を抑制することができる製塩装置及び製塩方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、供給経路を介して供給された海水を濃縮するイオン交換膜電気透析装置と、濃縮した海水の水分を蒸発させて塩を結晶化させる蒸発結晶化装置と、前記イオン交換膜電気透析装置の前段で、海水を前記供給経路からタービン用復水器に冷媒として使用可能に導く第1経路と、前記タービン用復水器で冷媒として使用された海水を、前記第1経路よりも下流側の前記供給経路に導く第2経路と、を備えた製塩装置を提供する。
【0008】
上記発明によれば、海水はイオン交換膜電気透析装置によって濃縮され、蒸発結晶化装置で塩の結晶となる。海水はイオン交換膜電気透析装置に供給される前に、第1経路を介してタービン用復水器に導かれ、冷媒として使用され得る。海水を復水器の冷媒として使用することにより、タービンからの蒸気が凝縮水になると同時に熱交換が生じて冷媒として使用した海水の温度が上昇する。復水器はタービン用復水器を使用するため、タービンが稼働している間であれば、海水温度を昇温させるためだけに独立に電力を消費することなく、海水温度を上昇させることができる。また、復水器で得られた熱エネルギーを別媒体と熱交換させずに利用するため、熱エネルギーを有効に利用することができる。昇温させた海水を供給経路に戻してイオン交換膜電気透析装置に供給することで、イオン交換膜電気透析装置での海水の濃縮効率を向上させることができる。
【0009】
上記発明の一態様において、前記第1経路、前記第2経路、及び前記第1経路と前記第2経路との間に位置する供給経路に、それぞれ海水の流量を制御する流量制御弁が設けられることが好ましい。
【0010】
流量制御弁を設けることで、タービン用復水器に導かれる海水の量を制御することができる。これにより、イオン交換膜電気透析装置に供給する海水温度の昇温幅を調整することが可能となる。ここで、例えば、イオン交換膜電気透析装置に供給する海水温度を昇温させる必要がない場合には、タービン用復水器へ導かれる海水の流量をゼロとすることで、海水温度を過度に昇温させることなくイオン交換膜電気透析装置へ供給させることができる。
【0011】
上記発明の一態様において、前記イオン交換膜電気透析装置へ供給される海水の温度を計測する計測装置と、前記計測した海水の温度が所定値以下である場合に、前記イオン交換膜電気透析装置に供給する前の海水をタービン用復水器へと導いて冷媒として使用し、前記計測した海水の温度が所定値を超える場合に、第1経路及び第2経路における海水の流量をゼロとし、供給経路に海水が流れるよう海水の流路を切替える流路切替え装置と、を備えることが好ましい。
【0012】
計測装置及び流路切替え装置を備えることで、イオン交換膜電気透析装置へ供給される海水の温度(入口温度)に応じてイオン交換膜電気透析装置に供給する前の海水をタービン用復水器で昇温させるか否かを選択することができる。入口温度が所定値以下である場合、海水をタービン用復水器の冷媒として使用し昇温させることで、イオン交換膜電気透析装置での濃縮効率を向上させることができる。入口温度が所定値より高い場合、海水はタービン用復水器を経由させずにイオン交換膜電気透析装置に供給されるため、過度な海水の昇温を防止できる。
【0013】
上記発明の一態様において、前記イオン交換電気透析装置が、海水濃縮に伴う排水を排出する排出経路と、前記排水を前記排出経路から前記タービン復水器に冷媒として使用可能に導く第3経路と、前記タービン復水器で冷媒として使用された排水を、前記第3経路よりも下流側の前記排出経路に導く第4経路と、を備えていても良い。
【0014】
イオン交換電気透析装置で濃縮された海水(かん水)を生成する際に出る排水(廃海水)は、通常、排出経路を介してそのまま系外へと排出される。上記発明の一態様によれば、排出経路には、第3経路が接続されており、排水をタービン用復水器へと導くことができる。排水は、タービン用復水器で冷媒として使用され得る。冷媒として使用された排水は、第4経路を介して排出経路へと戻り、系外へ排出される。一般的なタービン用復水器では、復水器で使用した冷媒を冷却塔に導いて冷却した後、再度復水器へと循環させる。しかしながら、イオン交換電気透析装置からの排水をタービン用復水器の冷媒として使用した場合には、復水器にて昇温した排水は系外へと排出され、イオン交換電気透析装置で生じた別の排水が順次供給される。そのため、冷媒を冷却塔で冷却して循環させる必要がなくなる。それによって、省エネルギー方式の復水器とすることに寄与できる。
【0015】
上記発明の一態様において、前記計測装置で計測した海水の温度が所定値を超える場合、流路切替え装置が前記排水の流路を前記排出経路から前記第3経路へと切替え可能であることが好ましい。
【0016】
海水をタービン用復水器を経由させずにイオン交換膜電気透析装置に供給する場合、イオン交換電気透析装置から排出された排水を、冷媒としてタービン用復水器へと導くと良い。それにより、入口温度に関係なく、タービン用復水器へ冷媒を供給することが可能となるため、タービン用復水器に冷却塔を設ける必要がなくなる。
【0017】
上記発明の一態様において、前記第1経路が、更に、前記供給経路からの海水を、冷媒として使用可能に発電機用エアクーラー及びタービン用オイルクーラーの少なくとも一方に導くよう設けられ、前記第2経路が、前記発電機用エアクーラー及び前記タービン用オイルクーラーの少なくとも一方で冷媒として使用された海水を前記第1経路よりも下流側の前記供給経路に導くよう設けられても良い。
【0018】
上記発明の一態様において、前記第3経路が、更に、前記供給経路からの海水を、冷媒として使用可能に発電機用エアクーラー及びタービン用オイルクーラーの少なくとも一方に導くよう設けられ、前記第4経路が、前記発電機用エアクーラー及び前記タービン用オイルクーラーの少なくとも一方で冷媒として使用された海水を前記第3経路よりも下流側の前記供給経路に導くよう設けられても良い。
【0019】
上記発明の一態様によれば、イオン交換膜電気透析装置へ供給される前の海水、及び海水濃縮に伴う排水は、タービン用復水器に加えて、発電機用エアクーラー及びタービン用オイルクーラーの冷媒として使用することができる。
【0020】
また、本発明は、海水をタービン用復水器に導き、冷媒として使用して前記海水の温度を昇温させる昇温工程と、前記昇温させた海水をイオン交換膜電気透析装置に供給し、濃縮する濃縮工程と、前記濃縮した海水の水分を蒸発させて塩を結晶化させる蒸発結晶化工程と、を含む製塩方法を提供する。
【0021】
上記発明によれば、海水はイオン交換膜電気透析装置によって濃縮され、蒸発結晶化装置で塩の結晶となる。海水はイオン交換膜電気透析装置に供給される前に、タービン用復水器に導かれ、冷媒として使用される。海水が復水器の冷媒として使用されると、タービンからの蒸気が凝縮水になると同時に熱交換が生じて海水の温度は上昇する。復水器はタービン用復水器を使用するため、タービンが稼働している間であれば、海水温度を昇温させるためだけに別途電力を消費することなく、海水温度を上昇させることができる。昇温させた海水をイオン交換膜電気透析装置に供給することで、イオン交換膜電気透析装置での海水の濃縮効率を向上させることができる。
【0022】
上記発明の一態様によれば、前記イオン交換膜電気透析装置へ供給される海水の温度を計測する計測工程を備え、前記計測装置で計測した海水の温度が所定値以下である場合に、前記昇温工程を実施することが好ましい。
【0023】
上記発明の一態様によれば、イオン交換膜電気透析装置へ供給される海水の温度(入口温度)に応じてイオン交換膜電気透析装置に供給する前の海水をタービン用復水器で昇温させるか否かを選択することができる。入口温度が所定値以下である場合、海水をタービン用復水器の冷媒として使用し、昇温させることで、イオン交換膜電気透析装置での濃縮効率を向上させることができる。入口温度が所定値より高い場合、海水はタービン用復水器を経由させないため、海水温度を過度に上昇させずにイオン交換膜電気透析装置へと供給することができる。
【0024】
上記発明の一態様において、前記計測装置で計測した海水の温度が所定値を超える場合、前記昇温工程に替えて、前記イオン交換電気透析装置での海水濃縮に伴う排水を、前記タービン用復水器に導き冷媒として使用すると良い。
【0025】
上記発明の一態様によれば、入口温度が所定値を超える場合には、イオン交換電気透析装置から排出された排水を、冷媒としてタービン用復水器へ導く。そうすることで、入口温度に関係なく、製塩装置からタービン用復水器へ冷媒を供給することが可能となる。これにより、使用済みの冷媒を冷却塔にて冷却し、タービン用復水器へと循環させる必要がなくなるため、省エネルギー方式の復水器とすることに寄与できる。
【0026】
上記発明の一態様において、海水を、前記タービン用復水器に導くとともに、発電機用エアクーラー及びタービン用オイルクーラーの少なくとも一方に導き、冷媒として使用した後に、前記イオン交換膜電気透析装置に供給しても良い。
【0027】
上記発明の一態様において、前記排水を、前記タービン用復水器に導くとともに、発電機用エアクーラー及びタービン用オイルクーラーの少なくとも一方に導き、冷媒として使用しても良い。
【0028】
上記発明の一態様によれば、イオン交換膜電気透析装置へ供給される前の海水、及び海水濃縮に伴う排水は、タービン用復水器だけでなく、発電機用エアクーラー及びタービン用オイルクーラーの冷媒として使用することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、イオン交換膜電気透析装置に供給する前段で、海水をタービン用復水器に導き、冷媒として使用することで、独立して電力を消費せずに、海水を昇温させることができる。これにより、電力消費を抑えつつ、イオン交換膜電気透析装置における海水の濃縮効率を高めることが可能となる。すなわち、製塩効率の高い製塩装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態に係る製塩装置の系統図である。
【図2】従来の製塩装置の系統図である。
【図3】従来のタービン用復水器の系統図である。
【図4】第2実施形態に係る製塩装置の系統図である。
【図5】第3実施形態に係る製塩装置の系統図である。
【図6】第3実施形態に係る製塩装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明に係る製塩装置及び製塩方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
図1に、本実施形態に係る製塩装置1の系統図を示す。製塩装置1は、取水ポンプ2、海水ろ過装置3、バロメトリックコンデンサー4、海水供給経路5、海水加温用の分岐経路となる第1経路6、加温された海水を戻す経路となる第2経路7、電気透析槽(イオン交換膜電気透析装置)8、及び蒸気結晶缶(蒸発結晶化装置)9を含む構成とされる。
【0032】
取水ポンプ2は、海水を汲み上げ、該汲み上げた海水を海水ろ過装置3へと送ることができる。海水ろ過装置3は、海水中に含まれる固形異物を除去する役割を果たす。海水ろ過装置3の後段には供給経路5を介して電気透析槽8が接続されている。
【0033】
本実施形態における供給経路5は、一旦、供給経路5a及び供給経路5bに分岐した後、電気透析槽8の手前で合流する。供給経路5aにはブースターポンプ10及びバロメトリックコンデンサー4が設けられている。バロメトリックコンデンサー4は、蒸気と海水を直接接触させて蒸気を液化させることにより真空を形成させる機器である。
【0034】
バロメトリックコンデンサー4と電気透析槽8との間の合流前の供給経路5aには、第1経路6及び第2経路7が接続されている。第1経路6は、バロメトリックコンデンサー4を経由した海水を供給経路5aから、タービン19に接続されたタービン用復水器11に冷媒として使用可能に導くことができる。第2経路7は、タービン用復水器11で冷媒として使用された海水を、第1経路6よりも下流側に位置する供給経路5aに導くことができる。
【0035】
なお、タービン19に、発電機用エアクーラー/タービン用オイルクーラー12が接続されている場合には、海水加温源を増加させるべく、第1経路6及び第2経路7は、発電機用エアクーラー/タービン用オイルクーラー12の少なくとも一方に、冷媒として使用可能に接続されていてもよい。その場合、発電機用エアクーラー/タービン用オイルクーラー12は、タービン用復水器11と並列となるよう第1経路6及び第2経路7に接続されると良い。
【0036】
第1経路6、第2経路7、及び第1経路6と第2経路7との間に位置する供給経路5aには、それぞれ海水の流量を調整する流量制御弁(13,14,15)が設けられると良い。本実施形態における流量制御弁(13,14,15)は、タービン19の運転状況やタービン用復水器11の仕様に応じて開度を調整することで、経路内を流れる海水の流量を適切に制御することができる。また、経路内の圧力が低い場合には、流量調整弁13の下流側に、ブースターポンプ16を配置しても良い。
【0037】
電気透析槽8の内部には、陽イオンだけを通す陽イオン交換膜と、陰イオンだけを通す陰イオン交換膜とが交互に並べられている。電気透析槽8の両端に直流電流を流すことで、海水中に溶けているイオン成分が移動して各イオン交換膜で選択的に分離され、濃縮された海水(かん水)を生成させることができる。濃縮された海水(かん水)を生成した残りの廃海水は排出経路18を介して系外へと排出される。
【0038】
電気透析槽8の後段には、蒸気結晶缶9が接続されている。蒸発結晶缶9は、通常、多段式で構成されている。蒸気結晶缶9には、低圧蒸気を供給することができ、該低圧蒸気との熱交換により電気透析槽8から供給されたかん水の水分を蒸発させ、塩を結晶化させ得る。蒸発結晶缶9には結晶化させた塩を搬出する搬出経路17が接続されている。
【0039】
次に、本実施形態に係る製塩装置1を用いた製塩方法について説明する。
まず、取水ポンプ2で海水を汲み上げる。汲み上げ量は、取水ポンプ2の性能によるが、例えば3000m/h〜4000m/h程度とする。汲み上げた海水は海水ろ過装置3に送液され、ろ過されて海水に含まれる固形異物が除かれる。ろ過された海水は、一部がブースターポンプ10によってバロメトリックコンデンサー4へとポンプアップされ、残部はバロメトリックコンデンサー4をバイパスするよう供給経路5bを介して後段へと流動する。バロメトリックコンデンサー4へ送られる海水の量は、ブースターポンプ10の性能に依存する。バロメトリックコンデンサー4には低圧蒸気を供給し、真空を立てる。バロメトリックコンデンサー4に供給する低圧蒸気は、タービン用復水器11に接続されたタービン19で発生した低圧蒸気を利用すると良い。バロメトリックコンデンサー4を経由させることで、海水温度は数℃上昇する。
【0040】
バロメトリックコンデンサー4を経由した海水の少なくとも一部は、第1経路6を介してタービン用復水器11へと導かれ、冷媒として使用される。復水量は40t/h〜50t/h程度とされる。一般的なタービンの稼働条件下において、冷媒として使用された海水は、熱交換により数℃〜十数℃の範囲で昇温される。昇温温度は、冷媒流量、冷媒温度及び復水量などから概算することもできる。
【0041】
第1経路6へと導かれる海水の量は、電気透析槽8へ供給される海水温度が所定値となるよう流量制御弁(13,14,15)により制御すると良い。電気透析槽8へ供給される海水温度の所定値は、10℃〜30℃、好ましくは20℃〜30℃とされる。
電気透析槽8へ供給される海水温度は、バロメトリックコンデンサー4の後段に位置する供給経路5a、第1経路6、第2経路7及び供給経路5bを流れる海水の量及び温度などから算出できる。
【0042】
タービン用復水器11にて冷媒として使用された海水は加温され、第2経路7を介して供給経路5aへと戻る。バロメトリックコンデンサー4を経由した海水の残部は、第1経路6と第2経路7との間の流量制御弁15が配された供給経路5aを通った後、第2経路7を介してタービン用復水器11から戻った加温海水と合流する。
【0043】
バロメトリックコンデンサー4を経由した海水、及び、供給経路5bによりバロメトリックコンデンサー4をバイパスした海水は、合流した供給経路5を介して電気透析槽8へと供給される。電気透析槽8では、両端に直流電流を流し、塩分が濃縮された海水(かん水)を生成させる。
【0044】
電気透析槽8で濃縮された海水(かん水)は、蒸気結晶缶9に送られる。蒸気結晶缶9に低圧蒸気を供給し、かん水の水分を蒸発させ、塩を結晶化させる。蒸気結晶缶9に供給する低圧蒸気は、タービン19で発生した低圧蒸気を利用すると良い。結晶化した塩は、搬出経路17から搬出される。蒸発した水分は、かん水と熱交換させるなどして凝縮水とし、不図示の機構により系外へと排出される。
【0045】
比較のため、従来の製塩装置及びタービン用復水器の系統図を図2及び図3に示す。図2に示す製塩装置20では、バロメトリックコンデンサー4を経由した海水は、合流した供給経路5を介して電気透析槽8に供給される。電気透析槽8では供給された海水を濃縮するが、海水の温度が所定温度より低い場合、海水を電気加熱しながら濃縮させる。消費電力は、例えば、冬場の場合、7〜8MWh程度とされる。電気透析槽8で濃縮された海水(かん水)は、蒸気結晶缶9で水分を蒸発させ、塩を結晶化させる。蒸発させた水分は凝縮水にするなどした後、系外へと排出される。また、電気透析槽8においてかん水生成した際に出る廃海水も系外へ排出される。
【0046】
他方、従来のタービン用復水器では、図3に示したように、タービン19で生じた蒸気は、復水器21へと導かれる。該蒸気は、復水器21に流れる冷却水と間接的に接触することで、熱交換されて凝縮水となる。凝縮水は、ボイラ用低圧給水ラインなどへ送られる。熱交換された冷却水は温度が上昇するため、冷却塔22で冷却された後、復水器21の冷却水として再利用される。復水器21の冷却水には、取水ポンプなどによって汲み上げられた海水が使用されている。
【0047】
図2及び図3に示すように、従来の製塩装置20及びタービン用復水器21はそれぞれ独立して稼働可能な装置である。本実施形態に係る製塩装置1では、製塩装置1の供給経路5aと、タービン用復水器11とを第1経路6及び第2経路7にて接続することで、製塩装置1及びタービン用復水器11における電力消費を抑制することができる。すなわち、従来、タービン用復水器で冷媒が得られる熱エネルギーは排熱し、汲み上げた海水の温度が低い場合には、電気透析槽8で電気加熱を実施していたが、本実施形態では、従来、電気透析槽8で行われていた海水の加温を、タービン用復水器11を利用して行うことにより、従来の排熱源を有効に活用し、独立に電力を消費せずに海水温度を昇温させることができる。一方、タービンシステムとしてみた場合、製塩装置1から導かれた海水は、タービン用復水器11の冷媒として使用されるので、冷媒を冷却塔22で冷却して循環させる必要がなくなるため、省エネルギー方式の復水器とすることができる。
【0048】
本実施形態に係る製塩装置1は、海水温度が低い場合に適用すると良い。特に、本実施形態に係る製塩装置1は、年間を通して海水温度が所定温度以下である地域での使用に好適である。
【0049】
〔第2実施形態〕
本実施形態に係る製塩装置は、計測装置と流路切替え装置とを備えている。特に説明がない限り、それ以外の構成は、第1実施形態と同様とされる。
図4に、本実施形態に係る製塩装置23の系統図を示す。製塩装置23は、電気透析槽8の上流側で合流した供給経路5に、温度指示調節計(TIC:Temperature indicating controller)24が設けられている。
【0050】
温度指示調節計24は、計測装置及び流路切替え装置の機能を兼ね備えている。詳細には、温度指示調節計24は、電気透析槽8に供給される海水温度を計測し、計測した海水温度に応じて流量制御弁(25,26,27)の開度をそれぞれ制御して海水の流路を切替えることができる。本実施形態において流量制御弁(25,26)は、温度指示調節計で開度を制御可能な自動三方弁とされる。計測した海水の温度が電気透析槽8へ供給される海水温度の所定値以下である場合には、第1実施形態と同様に、電気透析槽8に供給する前の海水をタービン用復水器11へと導き、冷媒として使用する。他方、計測した海水の温度が所定値を超える場合、図4に示すように、流量制御弁(25,26)を閉じ、第1経路6及び第2経路7における海水の流量をゼロとし、実質的に流量制御弁27が配された供給経路5aにのみ海水が流れるように流路を切替える。
【0051】
本実施形態によれば、電気透析槽8に供給される海水温度に応じて、流路を切替えることにより、過度に海水温度を上昇させずに海水を電気透析槽8に供給することができる。製塩装置23からタービン用復水器11へと海水を導かない場合、図4に示すように、流量制御弁(25,26)に冷却塔22を接続しておくと良い。そうすることにより、タービン用復水器11への低温冷媒の供給を維持することができる。
【0052】
本実施形態に係る製塩装置23は、海水温度が〜数十℃である場合に適用すると良い。特に、本実施形態に係る製塩装置23は、年間を通して海水温度が所定温度を跨いで変動する地域での使用に適している。
【0053】
〔第3実施形態〕
本実施形態に係る製塩装置は、電気透析槽8に接続された排出経路18に、タービン復水用の冷媒として排水を供給する第3経路及び復水に利用した排水を排出経路に戻す第4経路が設けられている。それ以外の構成は、特に説明がない限り、第2実施形態と同様とされる。
【0054】
図5及び図6に、本実施形態に係る製塩装置32の系統図を示す。図5では電気透析槽8の入口での海水温度が所定温度以下である場合の海水の流れ、図6では電気透析槽8の入口での海水温度が所定温度を超える場合の海水の流れを太線で示している。
第3経路28は、電気透析槽8から排出された排水(廃海水)を排出経路18からタービン用復水器11に冷媒として使用可能に導くことができる。第4経路29は、タービン用復水器11で冷媒として使用された廃海水を、第3経路28よりも下流側の排出経路18に導くことができる。本実施形態において、第3経路28及び第4経路29は、それぞれ第1経路6及び第2経路7の途中に設けられた流量制御弁(30,31)を介して接続されている。流量制御弁(30,31)は、温度指示調節計24によって開度を制御可能な自動三方弁とされる。また、経路内の圧力が低い場合には、第3経路28にブースターポンプ33を配置しても良い。
【0055】
本実施形態に係る製塩装置32を用いた製塩方法では、第2実施形態と同様に、電気透析槽8に供給される海水温度に応じて、海水の流路を切替える。計測した海水の温度が所定値以下である場合には、図5に示すように、流量制御弁(30,31)を第3経路28及び第4経路29側で閉じて、電気透析槽8に供給する前の海水をタービン用復水器11へと導き、冷媒として使用する。他方、計測した海水の温度が所定値を超える場合、図6に示すように、流量制御弁(30,31)を第1経路6及び第2経路7側で閉じ、実質的に供給経路5aにのみ海水が流れるようにする。また、電気透析槽8でかん水生成に伴い排出された廃海水を、排出経路18から第3経路28を介してタービン用復水器11へと導き、冷媒として使用する。冷媒として使用した廃海水は、第4経路29を介して第3経路28よりも下流側の排出経路18へと戻され、排水される。
【0056】
本実施形態によれば、電気透析槽8に供給される海水温度が所定値を超える場合であっても、冷却塔を使用せずにタービン用復水器11に冷却能を有する冷媒を供給することができる。電気透析槽8から排出される廃海水は、従来、特に利用されずに排水されていたものである。この廃海水をタービン用復水器11の冷媒として利用することで、冷媒を冷却塔で冷却して循環させる必要がなくなるため、省エネルギー方式の復水器とすることができる。また、電気透析槽8から排出される廃海水を、タービン用復水器だけでなく、発電機用エアクーラー及びタービン用オイルクーラー12の冷媒として使用することも可能である。
【0057】
(第3実施形態の変形例)
本変形例における製塩装置は、第1経路及び第2経路を備えていない以外は第3実施形態と同様の構成とされる。すなわち、タービン用復水器及び製塩装置は、第3経路及び第4経路のみで接続されている。そうすることで、従来は系外へと排出されるだけであった電気透析槽8から排出される廃海水を、タービン用復水器の冷媒として使用することができる。よって、タービン用復水器が冷却塔を備える必要がなくなるため、省エネルギー方式の復水器とすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1,20,23,32 製塩装置
2 取水ポンプ
3 海水ろ過装置
4 バロメトリックコンデンサー
5,5a,5b 海水供給経路
6 第1経路
7 第2経路
8 電気透析槽(イオン交換膜電気透析装置)
9 蒸気結晶缶(蒸発結晶化装置)
10,16,33 ブースターポンプ
11,21 タービン用復水器
12 発電機エアクーラー/タービン用オイルクーラー
13,14,15,25,26,27,30,31 流量制御弁
17 搬出経路
18 排出経路
19 タービン
22 冷却塔
24 温度指示調節計
28 第3経路
29 第4経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給経路を介して供給された海水を濃縮するイオン交換膜電気透析装置と、
濃縮した海水の水分を蒸発させて塩を結晶化させる蒸発結晶化装置と、
前記イオン交換膜電気透析装置の前段で、海水を前記供給経路からタービン用復水器に冷媒として使用可能に導く第1経路と、
前記タービン用復水器で冷媒として使用された海水を、前記供給経路の前記第1経路よりも下流側に導く第2経路と、
を備えた製塩装置。
【請求項2】
前記第1経路、前記第2経路、及び前記第1経路と前記第2経路との間に位置する供給経路に、それぞれ海水の流量を制御する流量制御弁が設けられる請求項1に記載の製塩装置。
【請求項3】
前記イオン交換膜電気透析装置へ供給される海水の温度を計測する計測装置と、
前記計測した海水の温度が所定値以下である場合に、前記イオン交換膜電気透析装置に供給する前の海水を前記タービン用復水器へと導いて冷媒として使用し、前記計測した海水の温度が所定値を超える場合に、第1経路及び第2経路における海水の流量をゼロとし、供給経路に海水が流れるよう海水の流路を切替える流路切替え装置と、
を備える請求項2に記載の製塩装置。
【請求項4】
前記イオン交換膜電気透析装置が、海水濃縮に伴う排水を排出する排出経路と、
前記排水を前記排出経路から前記タービン復水器に冷媒として使用可能に導く第3経路と、
前記タービン復水器で冷媒として使用された排水を、前記第3経路よりも下流側の前記排出経路に導く第4経路と、
を備える請求項2または請求項3に記載の製塩装置。
【請求項5】
前記計測装置で計測した海水の温度が所定値を超える場合、流路切替え装置が前記凝縮水の流路を前記排出経路から前記第3経路へと切替え可能である請求項4に記載の製塩装置。
【請求項6】
前記第1経路が、更に、前記供給経路からの海水を、冷媒として使用可能に発電機用エアクーラー及びタービン用オイルクーラーの少なくとも一方に導くよう設けられ、
前記第2経路が、前記発電機用エアクーラー及び前記タービン用オイルクーラーの少なくとも一方で冷媒として使用された海水を前記第1経路よりも下流側の前記供給経路に導くよう設けられる請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の製塩装置。
【請求項7】
前記第3経路が、更に、前記供給経路からの海水を、冷媒として使用可能に発電機用エアクーラー及びタービン用オイルクーラーの少なくとも一方に導くよう設けられ、
前記第4経路が、前記発電機用エアクーラー及び前記タービン用オイルクーラーの少なくとも一方で冷媒として使用された海水を前記第3経路よりも下流側の前記供給経路に導くよう設けられる請求項4または請求項5に記載の製塩装置。
【請求項8】
海水をタービン用復水器に導き、冷媒として使用して前記海水の温度を昇温させる昇温工程と、
前記昇温させた海水をイオン交換膜電気透析装置に供給し、濃縮する濃縮工程と、
前記濃縮した海水の水分を蒸発させて塩を結晶化させる蒸発結晶化工程と、
を含む製塩方法。
【請求項9】
前記イオン交換膜電気透析装置へ供給される海水の温度を計測する計測工程を備え、
前記計測した海水の温度が所定値以下である場合に、前記昇温工程を実施する請求項8に記載の製塩方法。
【請求項10】
前記計測した海水の温度が所定値を超える場合、前記昇温工程に替えて、前記イオン交換膜電気透析装置での海水濃縮に伴う排水を、前記タービン用復水器に導き冷媒として使用する請求項9に記載の製塩方法。
【請求項11】
海水を、前記タービン用復水器に導くとともに、発電機用エアクーラー及びタービン用オイルクーラーの少なくとも一方に導き、冷媒として使用した後に、前記イオン交換膜電気透析装置に供給する請求項8または請求項9に記載の製塩方法。
【請求項12】
前記凝縮水を、前記タービン用復水器に導きとともに、発電機用エアクーラー及びタービン用オイルクーラーの少なくとも一方に導き、冷媒として使用する請求項11に記載の製塩方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−46422(P2012−46422A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−241394(P2011−241394)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(511266726)
【Fターム(参考)】