説明

製版層塗布液の調製方法およびネガ型平版印刷材料の製造方法

【課題】保存時の安定性に優れ、感度の高いネガ型平版印刷用版材が作製できるものが得られる製版層塗布液の調整方法、および前記製版層塗布液を用いたネガ型平版印刷版の製造方法の提供。
【解決手段】酸架橋性化合物のpHを2.5〜6の範囲に調節する第1の工程と、pHを前記範囲に調節した酸架橋性化合物と、アルカリ可溶性樹脂、酸発生剤、および赤外線吸収剤と混合して製版層塗布液を調製する第2の工程とを有することを特徴とする製版層塗布液の調製方法、および前記製版層塗布液を支持体に塗布して製版層を形成する平版印刷材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製版層塗布液の調製方法およびネガ型平版印刷材料の製造方法に係り、特に、保存時の安定性に優れ、感度の高いネガ型製版層を形成できる製版層塗布液の調製方法、および前記調製方法で形成された製版層塗布液を用い、感度の高いネガ型平版印刷材料を工業的なスケールで安定的に、しかも簡便に製造できるネガ型平版印刷材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータのデジタルデータから直接製版するシステムとしては、これまで、(1)電子写真法によるシステム、(2)青色または緑色を発光するレーザを用い露光する光重合系によるシステム、(3)銀塩を感光性樹脂上に積層したシステム、および(4)銀塩拡散転写法を用いたシステムなどが提案されている。
【0003】
しかしながら電子写真法を用いる(1)のシステムは、帯電、露光、現像等画像形成のプロセスが煩雑であり、装置が複雑で大がかりなものになるという問題がある。光重合系による(2)のシステムは、青色や緑色の光に対して高感度な版材を用いるため、明室での版材の取扱いが難しくなるという問題がある。(3)および (4)のシステムには、銀塩を使用するため現像等の処理が煩雑になり、さらに当然ながら処理廃液中に銀が含まれるという欠点がある。
【0004】
一方、近年におけるレーザの発展は目ざましく、特に波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザは、高出力かつ小型のものが容易に入手できる様になっている。コンピュータ等のデジタルデータから直接製版する際の記録光源として、これらのレーザは非常に有用である。
【0005】
しかし、実用上有用な多くの感光性記録材料は、感光波長が760nm以下の可視光域であるため、これらの赤外線レーザでは画像記録できない。このため、赤外線レーザで記録可能な材料が望まれている。
【0006】
赤外線レーザにて記録可能な記録材料としては、レゾール型フェノール樹脂やカーボンブラックを含む特開昭56−69193号に記載の感熱記録材料、オニウム塩、レゾール樹脂、ノボラック樹脂、および赤外線吸収剤より成る特開平7−20629号に記載の記録材料がある。また、特開平7−271029号には、ハロアルキル置換されたs−トリアジン、レゾール樹脂、ノボラック樹脂、及び赤外線吸収剤より成る記録材料が記載されている。これらの記録材料は、画像露光により発生した酸の存在下で加熱する事により架橋を起こさせ、画像を形成するものであるが、感光層を構成する樹脂類、架橋剤、および酸発生剤等の組み合わせの最適化が検討されている。
【特許文献1】特開昭56−69193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、好適な組み合わせの樹脂類、架橋剤、および酸発生剤を用いて製版層塗布液を調製しても、製版層塗布液は塗布乾燥時の系のpHや乾燥温度に影響を受けやすいので、記録材料の製造条件が不安定になると言う問題があった。たとえば、酸架橋型化合物として好ましいアルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物を製造する際、ヒドロキシ芳香族化合物のホルムアルデヒドとの反応物をアルコール中で濃硫酸を加えて反応させ、ヒドロキシル基に隣接する位置にアルコキシメチル基を導入するが、この際、アルキル硫酸が生成し、これが反応生成物中に不純物として残存して経時的に加水分解し、硫酸が生成することによって予期しないpH変動を生じ、感度異常がおこる場合があることが見いだされた。
【0008】
本発明は、コンピュータ等のデジタルデータから直接製版可能なネガ型平版印刷版の製版層の形成に使用される製版層塗布液であって保存時の安定性に優れ、感度の高いネガ型平版印刷用版材が作製できるものが得られる製版層塗布液の調整方法、および前記製版層塗布液を用いたネガ型平版印刷版の製造方法であって、保存時の安定性に優れ、しかも感度の高いネガ型平版印刷用版材を、工業的なスケールにおいても安定的に簡便に製造し得るネガ型平版印刷用版材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、酸架橋性化合物のpHを2.5〜6の範囲に調節する第1の工程と、pHを前記範囲に調節した酸架橋性化合物と、アルカリ可溶性樹脂、酸発生剤、および赤外線吸収剤と混合して製版層塗布液を調製する第2の工程とを有することを特徴とする製版層塗布液の調製方法に関する。
【0010】
本発明の製版層塗布液の調製方法によって得られる製版層塗布液を支持体に塗布して製版層を形成したネガ型画像記録材料においては、以下の連鎖的メカニズムによって画像形成される。即ち、赤外線吸収剤が、(1) 赤外線レ−ザを吸収して熱を発生させ、(2) 次に、この熱により、熱の作用により酸を発生する化合物が酸を発生させ、(3) 更に、発生した酸により架橋する性質を有する化合物が架橋することによりネガ型画像が形成される。
【0011】
前記製版層塗布液の調製方法においては、酸架橋性化合物のpHを2.5〜6の範囲とすることにより、製版層塗布液中の各成分の架橋反応、分解や発生する酸の無効化などの望ましくない反応が防止される。これによって製版層塗布液の保存安定性が向上し、スケールアップした条件や塗布液を長期間保存後に塗布する場合においても、各種の配合された化合物の特性を損なうことなく、感度の高いネガ型平版印刷用版材を安定的に製造できると推定される。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記第1の工程において酸架橋性化合物のpHを3〜5の範囲に調節する請求項1に記載の製版層塗布液の調製方法に関する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記第1の工程において酸架橋性化合物のpHを4〜5の範囲に調節する請求項1に記載の製版層塗布液の調製方法に関する。
【0014】
前記製版層塗布液の調製方法によれば、製版層塗布液の各成分間における好ましくない反応を更に効果的に防止できるから、製版層塗布液の保存安定性が更に向上し、スケールアップした条件や塗布液を長期間保存後に塗布する場合においても、感度の高いネガ型平版印刷用版材を安定して製造できる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記第1の工程においては、酸架橋性化合物に溶解し得る酸性化合物または塩基性化合物を添加して前記酸架橋性化合物のpHを調整する請求項1〜3の何れか1項に記載の製版層塗布液の調製方法に関する。
【0016】
前記調整方法は、幅広い範囲の酸架橋性化合物に適用できる点で好ましい。
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記第1の工程においては、pHの高い酸架橋性化合物とpHの低い酸架橋性化合物とを混合して酸架橋性化合物のpHを調整する請求項1〜3の何れか1項に記載の製版層塗布液の調製方法に関する。
【0018】
前記調整方法においては、酸架橋性化合物、アルカリ可溶性樹脂、酸発生剤、および赤外線吸収剤以外に特に酸性化合物や塩基性化合物を添加する必要がないから、添加した酸性化合物や塩基性化合物によって予想外の副反応が生じることを避けることができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、前記酸架橋性化合物がメチロール基を有するメチロール系化合物である請求項1〜5の何れか1項に記載の製版層塗布液の調製方法に関する。
【0020】
本発明の製版層塗布液の調製方法は、酸架橋性化合物としてレゾール樹脂のようなメチロール化合物を含有する製版層塗布液の製造に特に好適である。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか1項に記載の製版層塗布液の調製方法で調製された製版層塗布液を支持体に塗布して製版層を形成することを特徴とするネガ型平版印刷材料の製造方法に関する。
【0022】
請求項1〜6に記載の調製方法によれば、製版層塗布液中の各成分の架橋反応、分解や発生する酸の無効化などの望ましくない反応が防止されるから、保存安定性の高い製版層塗布液が得られる。したがって、スケールアップした条件や塗布液を長期間保存後に塗布する場合においても、各種の配合された化合物の特性を損なうことなく、感度の高いネガ型平版印刷用版材を安定的に製造できる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明によれば、コンピュータ等のデジタルデータから直接製版可能であって保存時の安定性に優れ、しかも感度の高いネガ型平版印刷用版材を、工業的なスケールにおいても安定的に簡便に製造できる製版層塗布液が得られる製版層塗布液の調整方法が提供される。また、前記調製方法で得られた製版層塗布液を用いることにより、保存時の安定性に優れ、しかも感度の高いネガ型平版印刷用版材を、工業的なスケールにおいても安定的に簡便に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
1.製版層塗布液の調整方法について
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の製版層塗布液の調整方法は、アルカリ可溶性樹脂、酸発生剤、酸架橋性化合物、赤外線吸収剤を含有する製版層塗布液(以下、適宜、塗布液と称する)を調製する工程を含み、酸架橋性化合物のpHを2.5〜7の範囲に調節することを特徴とする。なお、酸架橋性化合物のpHは、酸架橋性化合物溶液を5gに対し、メタノールを30ml、イオン交換水を5ml加え、通常のガラスpH電極で測定した値を指す。以下、本発明におけるpHは、特に断りのない限りはこの条件で測定したものを指す。
【0025】
酸架橋性化合物のpHは2.5〜6であることを要し、得られる感光層の感度の観点からは酸架橋性化合物のpHは3〜5であることが好ましい。酸架橋性化合物のpHが2.5未満であると、現像不良を起こしやすく好ましくない。さらに、配合成分として比較的酸に弱い赤外線吸収染料を用いた場合には赤外線吸収染料が分解し、感度低下を引き起こす虞がでるなど、使用しうる成分が制限される。また、酸架橋性化合物のpHが6を超えた場合もまた、感度低下を引き起こし、いずれも好ましくない。
【0026】
本発明の調製方法は、酸架橋性化合物としてメチロール系化合物を用いる場合に特に有効である。メチロール系化合物としてはレゾール樹脂、低分子メチロール化合物が挙げられる。更に特に有効な例としてアルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物及び複素環化合物を架橋剤として用いる場合を挙げられる。
【0027】
酸架橋性化合物pHの調整は任意の方法で行うことができる。例えば、(a)該酸架橋性化合物に溶解しうる酸性もしくは塩基性物質を添加する方法、(b) pHの高い酸架橋性化合物とpHの低い酸架橋性化合物を混合する方法、(c) バッファー溶液系を組んでpHを調節する方法(d)合成時の中和剤の量によりpHを調節する方法などを例示できる。
【0028】
具体的には、例えば、方法(a)においては、酸架橋性化合物のpHを所定の方法で測定した後、その測定値に応じて添加する酸性物質、塩基性物質の種類及び量を検討して酸架橋性化合物の溶液を攪拌しながら徐々に添加し、その後サンプルを採取して所定の方法で、pHが2.5〜6の範囲にあることを確認するのが好適である。ここで使用し得る酸性物質、塩基性物質は塗布液中の化合物に影響を与えない物質を選択するとよい。一般的に用いられる酸性物質、塩基性物質としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸、硫酸、塩酸等の無機酸、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基、p−トルエンスルホン酸のトリエチルアミン塩等の塩類などを挙げることができる。特に好ましいものは、硫酸である。
【0029】
方法(b) においては、使用する酸架橋性化合物のpHを予め測定して、配合量とのバランスを検討すればよい。
【0030】
また、方法(c)としては、具体的には、緩衝液としてトリス(ヒドロキシメチル)と塩酸の組み合わせを用いる“Anal. Chem.第28巻、第1322頁(1956年)”に記載のBaltes−Bowerの方法等が挙げられる。
【0031】
2.製版層塗布液の各成分について
次に、本発明の調整方法で調製される製版層塗布液の各成分について説明する。
【0032】
2−1 赤外線吸収剤
前記製版層塗布液に配合される赤外線吸収剤は、赤外線を吸収して発熱する化合物を指し、具体的には、波長760nmから1200nmの赤外線を有効に吸収する染料又は顔料であり、好ましくは、波長760nmから1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料である。染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外線吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料の好ましい別の例として米国特許第4,756,993号に式(I)、(II)として記載されている近赤外線吸収染料を挙げることができる。これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。
【0033】
ここで、使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料で赤外から近赤外域に吸収を持つものが利用できる。顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0034】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の感光層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると画像記録層の均一性の点で好ましくない。顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載がある。これらの赤外線吸収剤は、平版印刷材料の全固形分に対し0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜10重量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10重量%、顔料の場合特に好ましくは3.1〜10重量%の割合で平版印刷材料中に添加することができる。赤外線吸収剤の添加量が0.01重量%未満であると感度が低くなり、また50重量%を越えると印刷時非画像部に汚れが発生する。また機上現像を容易にし、印刷機を汚染しないという観点からは、赤外線吸収剤として染料を用いることが望ましい。
【0035】
2−2 酸発生剤
前記製版層塗布液に配合される酸発生剤は熱若しくは光により酸を発生する化合物であり、一般的には、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている公知の光により酸を発生する化合物及びそれらの混合物等を挙げることができ、これらを適宜選択して使用することができる。例えば、S.I.Schlesinger, Photogr. Sci. Eng., 18,387(1974) 、T.S.Bal etal., Polymer, 21,423(1980) 等に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055 号、同4,069,056 号、特開平3-140,140 号等に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al., Macromolecules, 17,2468(1984)、C.S.Wen et al., Teh, Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478, Tokyo, Oct(1988) 、米国特許第4,069,055 号、同4,069,056 号等に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello et al., Macromolecules, 10(6),1307(1977) 、Chem. & Eng. News, Nov. 28, p31(1988) 、欧州特許第104,143 号、米国特許第339,049 号、同第410,201 号、特開平2-150,848 号、特開平2-296,514 号等に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivelloet al., PolymerJ. 17, 73(1985)、J.V.Crivelloet al., J.Org. Chem., 43,3055(1978)、W.R.Watt et al., J.Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 22, 1789(1984)、J.V.Crivello et al., Polymer Bull., 14,279(1985)、J.V.Crivello et al., Macromolecules, 14(5), 1141(1981)、J.V.Crivello et al., J.Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17,2877(1979) 、欧州特許第370,693 号、米国特許第3,902,114 号、欧州特許第233,567 号、同297,443 号、同297,442 号、米国特許第4,933,377 号、同410,201 号、同339,049 号、同4,760,013 号、同4,734,444 号、同2,833,827 号、独国特許第2,904,626 号、同3,604,580 号、同3,604,581 号等に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivelloet al., Macromolecules, 10(6), 1307(1977)、J.V.Crivelloet al., J.Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17,1047(1979) 等に記載のセレノニウム塩、C.S.Wenet al., Teh, Proc. Conf. Rad. Curing ASIA,p478, Tokyo, Oct(1988) 等に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、米国特許第3,905,815 号、特公昭46-4605 号、特開昭48-36281号、特開昭55-32070号、特開昭60-239736 号、特開昭61-169835 号、特開昭61-169837 号、特開昭62-58241号、特開昭62-212401 号、特開昭63-70243号、特開昭63-298339 号等に記載の有機ハロゲン化合物、K.Meieret al., J.Rad. Curing, 13(4),26(1986) 、T.P.Gill et al., Inorg. Chem., 19,3007(1980)、D.Astruc, Acc. Chem. Res., 19(12), 377(1896)、特開平2-161445号等に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、S.Hayase et al., J.Polymer Sci., 25,753(1987) 、E.Reichman et al., J.PolymerSci., PoliymerChem. Ed., 23,1(1985) 、Q.Q.Zhu et al., J.Photochem., 36, 85, 39, 317(1987) 、B.Amitet al., Tetrahedron Lett., (24)2205(1973)、D.H.R.Barton et al., J.Chem. Soc., 3571(1965) 、P.M.Collins et al., J.Chem. Soc., Perkin I,1695(1975) 、M. Rudinstein et al., Tetrahedron Lett.,(17), 1445(1975)、J.W.Walkeret al., J. Am. Chem. Soc., 110,7170(1988)、S.C.Busmanet al., J. Imaging Technol., 11(4), (1985) 、H.M.Houlihan etal., Macromolecules, 21,2001(1988)、P.M.Collins et al., J.Chem. Soc., Chem. Commun., 532(1972)、S.Hayase et al., Macromolecules, 18,1799(1985),E.Reichmanis et al., J.Electrochem. Soc., Solid State Sci. Technol., 130(6) 、F.M.Houlihanet al., Macromolecules, 21,2001(1988)、欧州特許第0290,750号、同046,083 号、同156,535 号、同271,851 号、同0,388,343 号、米国特許第3,901,710 号、同4,181,531 号、特開昭60-198538 号、特開昭53-133022 号等に記載の0-ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、TUNOOKA et al., Polymer Preprints Japan, 35(8)、G.Berner et al., J.Rad. Curing, 13(4) 、W.J.Mijset al., Coating Technol., 55(697), 45(1983), Akzo、H.Adachi et al., Polymer Preprints, Japan, 37(3)、欧州特許第0199,672号、同84515 号、同199,672 号、同044,115 号、同0101,122号、米国特許第4,618,554 号、同4,371,605 号、同4,431,774 号、特開昭64-18143号、特開平2-245756号、特開平3-140109号等に記載のイミノスルホネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、特開昭61-166544 号等に記載のジスルホン化合物を挙げることができる。
【0036】
また、酸発生剤をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、例えば、M.E.Woodhouse et al., J. Am. Chem. Soc., 104, 5586(1982)、S.P.Pappas et al., J.Imaging Sci., 30(5), 218(1986) 、S. Kondo et al., Makromol. Chem. RapidCommun., 9,625(1988) 、Y.Yamada et al., Makromol, Chem. 152, 153,163(1972) 、J.V.Crivello et al., J.Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17,3845(1979) 、米国特許第3,849,137 号、独国特許第3914407 、特開昭63-26653号、特開昭55-164824 号、特開昭62-69263号、特開昭63-14603号、特開昭63-163452 号、特開昭62-153853 号、特開昭63-146029 号等に記載の化合物を用いることができる。さらに、V.N.R.Pillai, Synthesis, (1),1(1980)、A. Abad et al., Tetrahedron Lett., (47)4555(1971) 、D.H.R.Barton et al., J.Chem. Soc., (C), 329(1970) 、米国特許第3,779,778 号、欧州特許第126,712 号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0037】
上記熱若しくは光により酸を発生する化合物の中で、特に有効に用いられるものを以下に示す。
(1)トリハロメチル基が置換した下記一般式(PAG1)で表されるオキサゾール誘導体又は一般式(PAG2)で表されるS−トリアジン誘導体。
【0038】
【化1】

式中、R1 は置換若しくは無置換のアリール基又はアルケニル基、R2 は置換若しくは置換のアリール基、アルケニル基又はアルキル基、又は−CY3 を示す。Yは塩素原子又は臭素原子を示す。具体的には以下の化合物を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0039】
【化2】

【0040】
【化3】

【0041】
(2)下記の一般式(PAG3)で表されるヨードニウム塩、又は一般式(PAG4)で表されるスルホニウム塩。
【0042】
【化4】

式中、Ar1 及びAr2 は各々独立に置換又は無置換のアリール基を示す。好ましい置換基としては、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基及びハロゲン原子が挙げられる。R3 、R4 及びR5 は各々独立に、置換若しくは無置換のアルキル基又はアリール基を示す。好ましくは炭素数6〜14のアリール基、炭素数1〜8のアルキル基及びそれらの置換誘導体である。好ましい置換基としては、アリール基に対しては炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルキル基、ニトロ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基およびハロゲン原子であり、アルキル基に対しては炭素数1〜8のアルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基である。
【0043】
- は対アニオンを示し、例えば、BF4 、AsF6 - 、PF6 - 、SbF6- 、SiF62- 、ClO4 - 、CF3 SO3 - 等のパーフルオロアルカンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アニオン、ナフタレン−1−スルホン酸アニオン等の縮合多核芳香族スルホン酸アニオン、アントラキノンスルホン酸アニオン、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸アニオン、スルホン酸基含有染料等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、R3 、R4 及びR5 のうちの2つ並びにAr1 及びAr2 はそれぞれの単結合又は置換基を介して結合してもよい。
【0044】
具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化5】

【0045】
【化6】

【0046】
一般式(PAG3)又は(PAG4)で示される上記オニウム塩は公知であり、例えば、J.W.Knapczyk et al., J. Am. Chem. Soc., 91,145(1969)、A.L.Maycok et al., J.Org. Chem., 35,2532,(1970) 、E.Goethas et al., Bull. Soc. Chem. Belg., 73,546,(1964) 、H.M.Leicester 、J. Ame. Chem. Soc., 51,3587(1929) 、J.V.Crivello et al., J.Polym. Chem. Ed., 18,2677(1980)、米国特許第2,807,648 号及び同4,247,473 号、特開昭53-101,331号等に記載の方法により合成することができる。
【0047】
(3)下記一般式(PAG5)で表されるジスルホン誘導体又は一般式(PAG6)で表されるイミノスルホネート誘導体。
【0048】
【化7】

式中、Ar3 及びAr4 は各々独立に置換又は無置換のアリール基を示す。R6 は置換若しくは無置換のアルキル基又はアリール基を示す。Aは置換若しくは無置換のアルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を示す。具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
【化8】

【0050】
【化9】

【0051】
これらの酸発生剤の添加量は、平版印刷材料の全固形分を基準として通常0.001〜40重量%の範囲で用いられ、好ましくは0.01〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%の範囲で使用される。
【0052】
2−3 酸架橋性化合物
前記製版層塗布液に配合される酸架橋性化合物とは、酸の存在下で架橋する化合物を指し、例えば、ヒドロキシメチル基、アセトキシメチル基、若しくはアルコキシメチル基でポリ置換されている芳香族化合物及び複素環化合物が挙げられるが、その中でも好ましい例として、フェノール類とアルデヒド類を塩基性条件下で縮合させた化合物が挙げられる。前記の化合物のうち好ましいものとしては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドを前記のように塩基性条件下で縮合させた化合物、同様にして、m−クレゾールとホルムアルデヒドから得られる化合物、ビスフェノールAとホルムアルデヒドから得られる化合物、4,4’−ビスフェノールとホルムアルデヒドから得られる化合物、その他、GB第2,082,339号にレゾール樹脂として開示された化合物等が挙げられる。これらの酸架橋性化合物は、重量平均分子量が500〜100,000で数平均分子量が200〜50,000のものが好ましい。
【0053】
他の好ましい例としては、EP−A第0,212,482号に開示されているアルコキシメチル又はオキシラニルメチル基で置換された芳香族化合物、EP−A第0,133,216号、DE−A第3,634,671号、DE第3,711,264号に開示された単量体及びオリゴマーメラミン−ホルムアルデヒド縮合物並びに尿素−ホルムアルデヒド縮合物、EP−A第0,212,482号に開示されたアルコキシ置換化合物等がある。さらに他の好ましい例は、例えば、少なくとも2個の遊離N−ヒドロキシメチル、N−アルコキシメチル又はN−アシルオキシメチル基を有するメラミン−ホルムアルデヒド誘導体である。このなかでは、N−アルコキシメチル誘導体が特に好ましい。また、低分子量又はオリゴマーシラノールは、ケイ素含有架橋剤として使用できる。これらの例は、ジメチル−及びジフェニル−シランジオール、並びに既に予備縮合され且つこれらの単位を含有するオリゴマーであり、例えば、EP−A第0,377,155号に開示されたものを使用できる。
【0054】
アルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物及び複素環化合物のなかでは、ヒドロキシル基に隣接する位置にアルコキシメチル基を有し、且つそのアルコキシメチル基のアルコキシ基が炭素数18以下の化合物を好ましい例として挙げることができ、特に好ましい例として、下記一般式(1)〜(4)の化合物を挙げることができる。
【化10】

【0055】
【化11】

式中L1 〜L8 は同じであっても異なっていてもよく、メトキシメチル、エトキシメチル等のように炭素数18以下のアルコキシ基で置換された、アルコキシメチル基を示す。これらは架橋効率が高く、耐刷性を向上させることができる点で好ましい。上記の熱により架橋する化合物は、1種類のみで使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。本発明に係る酸架橋性化合物は平版印刷材料の全固形分中、5〜80重量%、好ましくは10〜75重量%、特に好ましくは20〜70重量%の添加量で用いられる。酸架橋性化合物の添加量が5重量%未満であると得られる平版印刷材料の感光層の耐久性が悪化し、また、80重量%を越えると保存時の安定性の点で好ましくない。
【0056】
2−4 アルカリ可溶性樹脂
本発明において使用されるアルカリ可溶性樹脂としては、ノボラック樹脂や側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーなどが挙げられる。本発明においてアルカリ可溶性樹脂として使用しうるノボラック樹脂は、フェノール類とアルデヒド類を酸性条件下で縮合させた樹脂である。好ましいノボラック樹脂としては、例えばフェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、p−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、o−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、オクチルフェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,o−またはm−/p−,m−/o−,o−/p−混合のいずれでもよい)の混合物とホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂などが挙げられる。これらのノボラック樹脂は、重量平均分子量が800〜200,000で、数平均分子量が400〜60,000のものが好ましい。
【0057】
また、本発明におけるアルカリ可溶性樹脂としては、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーも好ましく挙げることができる。このポリマーにおいて、ヒドロキシアリール基とは−OH基が1個以上結合したアリール基を示す。アリール基としては例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等を挙げることができるが、入手の容易さ及び物性の観点から、フェニル基あるいはナフチル基が好ましい。従って、ヒドロキシアリール基としては、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、トリヒドロキシフェニル基、テトラヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基、ジヒドロキシナフチル基等が好ましい。これらのヒドロキシアリール基は、さらに、ハロゲン原子、炭素数20個以下の炭化水素基、炭素数20個以下のアルコキシ基及び炭素数20個以下のアリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。これらのヒドロキシアリール基は、ポリマーの側鎖としてペンダント状にポリマー主鎖へ結合しているが、主鎖との間に連結基を有していても良い。
【0058】
本発明において好適に用いられる、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーは、下記一般式(IX)〜(XII) で表される構成単位の内いずれか1種を含有するポリマーである。
【0059】
【化12】

(式中、R11は水素原子またはメチル基を示す。R12およびR13は、同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数10個以下の炭化水素基、炭素数10個以下のアルコキシ基又は、炭素数10個以下のアリールオキシ基を示す。また、R12とR13が結合して、縮環したベンゼン環やシクロヘキサン環を形成していても良い。R14は、単結合または、炭素数20個以下の2価の炭化水素基を示す。R15は、単結合または、炭素数20個以下の2価の炭化水素基を示す。R16は、単結合または、炭素数10個以下の2価の炭化水素基を示す。X1は、単結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合またはアミド結合を示す。pは1〜4の整数を示す。q及びrはそれぞれ0〜3の整数を示す。)
【0060】
一般式(IX)〜(XII) で表される構成単位のうち、本発明において好適に用いられる具体的な構成単位の例を以下に挙げる。
【0061】
【化13】

【0062】
【化14】

【0063】
【化15】

【0064】
【化16】

【0065】
【化17】

【0066】
これらのポリマーは、従来公知の方法により合成することができる。例えば、一般式(IX)で表される構成単位を有するポリマーは、ヒドロキシ基を酢酸エステルあるいはt−ブチルエーテルとして保護された、対応するスチレン誘導体をラジカル重合もしくはアニオン重合しポリマーとした後、脱保護することにより得られる。また、一般式(X)で表される構成単位を有するポリマーは、特開昭64−32256号および同64−35436号等に記載されている方法により合成することができる。さらに、一般式(XI)で表される構成単位を有するポリマーは、ヒドロキシ基を有するアミン化合物と無水マレイン酸を反応させ、対応するモノマーを得た後、ラジカル重合によりポリマーとすることにより得られる。また、一般式(XII) で表される構成単位を有するポリマーは、クロロメチルスチレンやカルボキシスチレン等、合成上有用な官能基を持つスチレン類を原料として一般(XII) に対応するモノマーへ誘導し、さらにラジカル重合によりリマーとすることにより得られる。
【0067】
本発明では、一般式(IX)〜(XII) で表される構成単位のみから成るホモポリマーであっても良いが、他の構成単位をも含む共重合体であっても良い。好適に用いられる他の構成単位としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーより導入される構成単位が挙げられる。
【0068】
用いることのできるアクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート等が挙げられる。
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、グリシジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート等が挙げられる。
【0069】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(p−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(p−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0070】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0071】
これらのモノマーのうち特に好適に使用されるのは、炭素数20以下のアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類及び、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリルである。
【0072】
これらを用いた共重合体中に含まれる一般式(IX)〜(XII) で表される構成単位の割合は、5〜100重量%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜100重量%である。また、本発明で使用されるポリマーの分子量は好ましくは重量平均分子量で4000以上であり、更に好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量で好ましくは1000以上であり、更に好ましくは2000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。これらのポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでも良いが、ランダムポリマーであることが好ましい。
【0073】
本発明で使用されるアルカリ可溶性樹脂は1種類のみで使用してもよいし、あるいは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。アルカリ可溶性樹脂の添加量は全画像記録材料固形分中、5〜95重量%、好ましくは10〜95重量%、特に好ましくは20〜90重量%で用いられる。アルカリ可溶性樹脂の添加量が5重量%未満であると記録層の耐久性が悪化し、また、添加量が95重量%を超える場合は、画像形成されない。
【0074】
2−5 その他の成分
本発明の調整方法で調整される製版層塗布液においては、上述の4つの成分が必須であるが、必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加しても良い。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。 具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)など、あるいは特開昭62−293247号公報に記載されている染料を挙げることができる。これらの染料は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。尚、添加量は、平板印刷材料全固形分に対し、0.01〜10重量%の割合である。
【0075】
また、前記製版層塗布液中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。上記非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の平板印刷材料中に占める割合は、0.05〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0076】
更に本発明に係る平板印刷材料中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジへキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸またはメタアクリル酸のオリゴマーおよびポリマー等が用いられる。
【0077】
これら以外にも、前述のオニウム塩やハロアルキル置換されたS−トリアジン、及びエポキシ化合物、ビニルエーテル類、さらには特願平7−18120に記載のヒドロキシメチル基を持つフェノール化合物、アルコキシメチル基を有するフェノール化合物等を添加しても良い。
【0078】
本発明に係る平板印刷材料は、通常上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより製造することができる。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等をあげることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50重量%である。また塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版印刷用版材についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像記録膜の皮膜特性は低下する。
【0079】
前記製版層塗布液中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、全平板印刷材料固形分中0.01〜1重量%さらに好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0080】
3.平版印刷材料の製造方法
本発明の平版印刷材料の製造方法は、上述の成分を用い、上述の手順で調整された製版層塗布液を支持体に塗布し、乾燥して製版層を形成するものである。
【0081】
本発明の平版印刷材料の製造方法で使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物が挙げられ、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着された紙、もしくはプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0082】
前記支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10重量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.8mmである。
【0083】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理および中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0084】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと、耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなったりする。陽極酸化処理を施した後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号および第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるかまたは電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウムおよび米国特許第3,276,868号、同第4,158,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0085】
前記平板印刷材料には、必要に応じて支持体上に下塗層を設けることができる。下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸およびエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸およびグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸およびグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、およびトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2が適当である。
【0086】
前記平板印刷材料は、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光される。本発明においては、レーザ照射後すぐに現像処理を行っても良いが、レーザ照射工程と現像工程の間に加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理の条件は、80℃〜150℃の範囲内で10秒〜5分間行うことが好ましい。この加熱処理により、レーザ照射時、記録に必要なレーザエネルギーを減少させることができる。
【0087】
必要に応じて加熱処理を行った後、本発明に係る平板印刷材料はアルカリ性水溶液にて現像される。本発明に係る平板印刷材料の現像液および補充液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウム、第3リン酸アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ほう酸ナトリウム、ほう酸カリウム、ほう酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。これらのアルカリ剤の中で特に好ましい現像液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由はケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2 とアルカリ金属酸化物M2 Oの比率と濃度によって現像性の調節が可能となるためであり、例えば、特開昭54−62004号公報、特公昭57−7427号に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が有効に用いられる。
【0088】
更に自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量の平版印刷用版材版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。現像液および補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤があげられる。更に現像液および補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。上記現像液および補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明に係る平板印刷材料を印刷用版材として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0089】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化および標準化のため、印刷用版材用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽およびスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷用版材を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0090】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング面に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、あるいは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥重量)が適当である。
【0091】
整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(たとえば富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:BP−1300)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができるが水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
(酸架橋性化合物(一般式(I))の合成)
【0094】
{4−1{1−{4−[1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル}−1−メチルエチル}フェノール200gを水酸化カリウム水溶液(10%)1000mlに溶解させた。この反応液にホルマリン(37%)600mlを室温で撹拌しながら1時間かけて滴下した。反応液を室温にてさらに6時間撹拌した後、硫酸水溶液中に投入し、晶析させた。得られたペースト状沈殿をよく水洗した後、メタノール300mlを用いて再結晶することにより、白色粉末を得た。収量200g。得られた化合物は、NMRにより{4−1{1−{4−[1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル}−1−メチルエチル}フェノールのヘキサメチロール化物であることがわかった。
【0095】
このヘキサメチロ−ル化合物200gをメタノール1400gに加温溶解させ、濃硫酸20mlを加え12時間加熱還流した。反応液を冷却後、炭酸バリウム20gを加え、さらに撹拌後、メチルエチルケトン(MEK)600gを加え、撹拌後、セライトろ過を行い、{4−1{1−{4−[1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル}−1−メチルエチル}フェノールのヘキサメトキシメチル化物の10%溶液(メタノール/MEK比=68/32)2100gを得た。
【0096】
得られた酸架橋性化合物溶液5gに対し、メタノール30ml、イオン交換水5ml加え、通常のガラスpH電極で測定したpH値は、6.5であった。1年間経時品では、pHが2.0まで低下した。
【0097】
これは、メチロール基のメトキシメチル基への反応において、メタノールと硫酸からアルキル硫酸が生成し、反応生成物中に不純物として残存し、経時で加水分解により分解し、硫酸が生成するためである。
【0098】
(実施例1、2 比較例1、2)
厚さ0.30mmのアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレン洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミストン−水懸濁液を用いてその表面を砂目立てし、よく水で洗浄した。この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い水洗後、更に2%HNO3により20秒間浸漬して水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。次にこの板を7%H2 SO4 を電解液として電流密度15A/dmで3g/mの直流陽極酸化被膜を設けた後、水洗乾燥した。次にこのアルミニウム板に下記下塗り液を塗布し、80℃、30秒乾燥した。乾燥後の被覆量は10mg/mであった。
【0099】
(1)下塗り液
β−アラニン 0.1g
メタノール 45g
純水 30g
【0100】
更にこのアルミニウム板に、下記製版層塗布液を塗布し、100℃で2分間乾燥してネガ型感光性平版印刷版を得た。乾燥後の塗布液重量は2.0g/mであった。
【0101】
(2)製版層塗布液
・下記構造式を有する赤外線吸収色素 ・・・0.1g
【化18】

・4−(p−N,N−ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル)−2,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン ・・・0.8g
・アルカリ可溶性樹脂(ポリビニルフェノール(丸善石油化学(株)製、「マルカリンカーMS−4P(商品名)」) ・・・2.0g
・酸架橋性化合物(架橋剤(一般式(I)のL1〜L6がメトキシメチル体の10%溶液、下記表1の手順に従ってpHを調整したもの) ・・・7.0g
・ビクトリアピュアブルーBOHの対イオンを1−ナフタレン−スルホン酸にした染料
・・・0.06g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−177、大日本インキ化学工業(株)製)
・・・0.06g
・メタノール ・・・20g
・2−メトキシ−1−プロパノール ・・・10g
【0102】
【表1】

【0103】
得られたネガ型平版印刷用版材を、ヒートモードレーザとしての半導体レーザ(波長825nm、ビーム径:1/e2 =6μm)を用い、線速度8m/secで版面出力110mWに調節し、露光した。露光後110℃で1分間加熱処理した後、富士写真フイルム(株)製現像液、DP−4(1:8)、リンス液FR−3(1:7)を仕込んだ自動現像機を通して処理した。次いで富士写真フイルム(株)製ガムGU−7(1:1)で版面を処理し、ハイデルKOR−D機で印刷した。結果を表2に示す。
【0104】
【表2】

【0105】
上に示すように、本発明では、酸架橋性化合物のpHを所定の範囲に調節することにより、コンピューター等のデジタルデータから直接製版可能であり、さらに保存時の安定性に優れ、かつ印刷時の耐刷性が良好であるネガ型平版印刷用版材を安定的に製造し得る製造方法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸架橋性化合物のpHを2.5〜6の範囲に調節する第1の工程と、
pHを前記範囲に調節した酸架橋性化合物と、アルカリ可溶性樹脂、酸発生剤、および赤外線吸収剤と混合して製版層塗布液を調製する第2の工程と
を有することを特徴とする製版層塗布液の調製方法。
【請求項2】
前記第1の工程において酸架橋性化合物のpHを3〜5の範囲に調節する請求項1に記載の製版層塗布液の調製方法。
【請求項3】
前記第1の工程において酸架橋性化合物のpHを4〜5の範囲に調節する請求項1に記載の製版層塗布液の調製方法。
【請求項4】
前記第1の工程においては、酸架橋性化合物に溶解し得る酸性化合物または塩基性化合物を添加して前記酸架橋性化合物のpHを調整する請求項1〜3の何れか1項に記載の製版層塗布液の調製方法。
【請求項5】
前記第1の工程においては、pHの高い酸架橋性化合物とpHの低い酸架橋性化合物とを混合して酸架橋性化合物のpHを調整する請求項1〜3の何れか1項に記載の製版層塗布液の調製方法。
【請求項6】
前記酸架橋性化合物はメチロール基を有するメチロール系化合物である請求項1〜5の何れか1項に記載の製版層塗布液の調製方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の製版層塗布液の調製方法で調製された製版層塗布液を支持体に塗布して製版層を形成することを特徴とするネガ型平版印刷材料の製造方法。

【公開番号】特開2007−286515(P2007−286515A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116049(P2006−116049)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】