説明

複合ポリマー粒子及びその製法

【課題】W/O乳化化粧料中でも配合安定性に優れ、紫外線防御効果が高く、使用感の良い複合ポリマー粒子、その製法及びそれを含有する化粧料の提供。
【解決手段】シリコーン及び/又はフッ素化合物で被覆された、平均粒子径1μm以下の金属酸化物を含有した複合ポリマー粒子であって、化粧料中、金属酸化物量として5質量%に相当する量の複合ポリマー粒子、及び1質量%の4−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシルを含有した化粧料のSPFが7以上である複合ポリマー粒子、その製法及びそれを含有する化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、W/O系化粧料への配合安定性、使用感及び紫外線防御能に優れた、金属酸化物を含有した複合ポリマー粒子、その製法及びそれを含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品には紫外線から素肌を保護する目的で紫外線吸収剤が配合されている。紫外線吸収剤は有機系と無機系に大別でき、前者は桂皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、メチルアミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体等が挙げられ、後者は酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化鉄等の金属酸化物が挙げられる。有機系紫外線吸収剤の場合、吸収波長領域が低波長であること、化合物が安定でないこと、皮膚に浸透し効果が持続しないことが問題であった。無機系紫外線吸収剤の場合、配合系への分散性が良くないことや使用感があまりよくないことが問題であった。
【0003】
配合系への分散性と使用感を両立させる提案の一つとして、金属酸化物のカプセル化が知られている。例えば特許文献1には、平均粒子径0.003〜0.1μmの金属酸化物を内包させた樹脂粉体を乳液化粧品に配合した化粧料が開示されている。しかし、この方法では、金属酸化物を分散させるのにイオン性の分散剤を用いているため、金属酸化物が樹脂粉体の表面上に一部存在した場合、W/O乳化化粧料中では、金属酸化物の親水部分が凝集し、配合安定性が悪くなると共に、紫外線防御効果が十分に発揮されないことがある。
【特許文献1】特開平9−208437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、W/O乳化化粧料中でも配合安定性に優れ、紫外線防御効果が高く、使用感の良い複合ポリマー粒子、その製法及びそれを含有する化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、シリコーン及び/又はフッ素化合物で被覆された、平均粒子径1μm以下の金属酸化物を含有した複合ポリマー粒子であって、化粧料中、金属酸化物量として5質量%に相当する量の前記複合ポリマー粒子、及び1質量%の4−メトキシ桂皮酸 2−エチルヘキシルを含有した化粧料のSPFが7以上である、複合ポリマー粒子、その複合ポリマー粒子の製法及びその複合ポリマー粒子を含有する化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0006】
紫外線防御能を発揮するためには、複合ポリマー粒子中に金属酸化物が、相当の有効量を有し、均一に分散していること、並びに配合組成中で複合ポリマー粒子が均一に分散していることの2条件を満たす必要がある。通常、表面未処理の金属酸化物を高濃度配合するとモノマーを吸収し流動性が無くなり、乳化することが出来なくなるが、本発明では、平均粒子径が1μm以下であるシリコーン及び/又はフッ素化合物で被覆された金属酸化物と、溶解度パラメータが8.9未満のモノマーを用いることで、複合ポリマー粒子中に金属酸化物のかなりの量を、比較的均一に分散させることが出来、流動性が良好で、乳化することが出来る。しかも化粧料中に安定に配合することができるため、本発明の複合ポリマー粒子を配合した化粧料は、紫外線防御能が高く、使用感も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[複合ポリマー粒子]
本発明の複合ポリマー粒子は、紫外線防御能が高く、使用感に優れることから、平均粒子径0.1〜20μmが好ましく、1〜20μmが更に好ましい。20μm以下では、遮蔽面積が大きくなり、紫外線防御効果が高くなる。粒径が小さすぎると“きしみ感”が生じるため、0.1μm以上であることが好ましい。粒子の形状は、特に限定されるものではないが、使用感に優れるため球状が好ましい。
【0008】
尚、複合ポリマー粒子の平均粒子径は、レーザー(光)回折/散乱法(堀場製作所製LA-910)又は電気抵抗法(コールターカウンター)で測定される体積平均粒子径である。
【0009】
本発明の複合ポリマー粒子は、金属酸化物の含有量が、複合ポリマー粒子全体の25〜90質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることが更に好ましい。この範囲内では、優れた紫外線防御能を有する。
【0010】
本発明の複合ポリマー粒子は、後述する試験例1の配合組成でのSPFの同測定法により測定されるSPFが7以上であることが好ましい。
即ち、本発明の複合ポリマー粒子は、シリコーン及び/又はフッ素化合物で被覆された、平均粒子径1μm以下の金属酸化物を含有した複合ポリマー粒子であって、化粧料中、金属酸化物量として5質量%に相当する量の前記複合ポリマー粒子、及び1質量%の4−メトキシ桂皮酸 2−エチルヘキシルを含有した化粧料のSPFが7以上である、複合ポリマー粒子である。
【0011】
金属酸化物量として5質量%に相当する量の複合ポリマー粒子、及び1質量%の4−メトキシ桂皮酸 2−エチルヘキシルを含有した化粧料が、後述する測定法においてSPFが7以上となるためには、金属酸化物が化粧料中に分散されていることが必要である。従ってSPFは、ポリマー粒子中に金属酸化物が分散されていることを示す、分散指標でもある。
【0012】
[金属酸化物]
金属酸化物としては、二酸化ケイ素、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等が挙げられるが、紫外線防御能が高いことから、酸化亜鉛、酸化チタン及び/又は酸化セリウムからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0013】
金属酸化物は、シリコーン及び/又はフッ素化合物で被覆されたものを用いる。シリコーン及び/又はフッ素化合物で被覆し、疎水化することで、モノマーとの分散性がよくなると共に、複合ポリマー粒子の表面上に存在しても、金属酸化物表面が疎水化されているため、ポリマー同士が凝集するのを防ぐと共に紫外線防御能が高くなる。
【0014】
シリコーン及び/又はフッ素化合物で被覆するためには、金属酸化物の表面処理を行うことが好ましい。処理剤としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、特開平5−339518号公報や特開平7−196946号公報に記載されているようにヒドロキシ基、ハロゲン原子、アミノ水素基、又はアルコキシ基等を有する反応性アルキルポリシロキサン(これらの官能基は片末端、両末端、側鎖中にあってもよく、ケイ素原子に直接又は置換基を有していてもよい、二価の炭化水素基を介して結合したもの)、特開平6−23262号公報に記載されているフッ素基含有ハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。これらは、必要なら加熱等を行い金属酸化物と反応させることができる。また市販の、シリコーン及び/又はフッ素化合物で被覆された金属酸化物を用いることもできる。
【0015】
シリコーン及び/又はフッ素化合物の被覆量は、金属酸化物100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部が更に好ましい。
【0016】
金属酸化物の平均粒子径は、紫外線防御能及び複合ポリマー粒子の透明性を高める観点から、1μm以下が好ましく、0.01〜1μmが更に好ましく、0.1〜1μmが特に好ましい。
【0017】
尚、金属酸化物の平均粒子径は、動的光散乱法(大塚電子製ELS-8000)で測定される体積平均粒子径である。
【0018】
[モノマー]
本発明の複合ポリマー粒子の原料として用いられるビニルモノマーは、シリコーン及び/又はフッ素化合物で被覆された金属酸化物の分散性を高くし、金属酸化物の粒子内の不均一化を出来るだけ少なくする観点から、溶解度パラメータが8.9未満のモノマーを用いることが好ましく、8.8以下のモノマーが更に好ましく、モノマーの入手し易さから下限は6.0以上が好ましく、7.0以上が更に好ましい。溶解度パラメータは、小数点の2桁目の値を四捨五入した値である。溶解度パラメータが高い場合、モノマー中では金属酸化物は均一分散しているが、重合後の複合ポリマー粒子中では表層付近に金属酸化物が集まり、紫外線防御効果は低くなる。
【0019】
尚、本明細書でいう溶解度パラメータとは、Fedorsの方法〔R. F. Fedors. Polyme. Eng. Sic., 14, 147(1974)〕により下記式(I)で計算された値δ(cal/cm1/2値(以下、SP値ともいう)である。
【0020】
【数1】

【0021】
溶解度パラメータが8.9未満のビニルモノマーとしては、フッ素化されていてもよい炭素数8以上(より好ましくは炭素数8〜40)の直鎖又は分岐鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、更に好ましくは、フッ素化されていてもよい炭素数10〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、分子鎖の片末端にラジカル重合性基を有するジメチルポリシロキサン化合物が挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。具体例としては、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、炭素鎖6以上の2−(パーフルオロアルキル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。片末端にラジカル重合性基を有するジメチルポリシロキサン化合物は、特開平11−181003号公報記載の、一般式(II) で表される化合物であることが好ましい。
【0022】
【化1】

【0023】
〔式中、
A:CH2=C(R1)COO−, CH2=C(R1)CONR2−又はCH2=CH-C6H4−で表される基を示す。ただし、R1=H 又はCH3 、R2=H 又はCYH2Y+1 (Y=1〜4の整数)
B:−(CH2O)m-CnH2n− (m=0又は1、 n=1〜10の整数)で表される基を示す。
E:CpH2p+1 (p=1〜4の数)で表される基を示す。
a:3〜1500の数を示す。〕
【0024】
片末端にラジカル重合性基を有するジメチルポリシロキサン化合物の数平均分子量(Mn)には特に制限はないが、500〜100,000のものが好ましく、より好ましくは1,000〜50,000のものである。
【0025】
本発明の効果を損なわない限り、スチレン、メタクリル酸メチル等の溶解度パラメータが8.9以上のビニルモノマーを共重合してもよい。溶解度パラメータが8.9未満のビニルモノマーは、全モノマー及び架橋剤の合計100質量部に対して25質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることが更に好ましく、99.9質量部以下が好ましく、97質量部以下が更に好ましくし、90質量部以下が特に好ましい。
【0026】
[架橋剤]
本発明では、複合ポリマー粒子の被膜を、物理的及び化学的に強固にするため、架橋剤を用いる。架橋剤として、少なくとも2個のラジカル重合性基(反応性不飽和基)を分子中に有する架橋性ビニル化合物が挙げられる。
【0027】
少なくとも2個のラジカル重合性基を有する架橋性ビニル化合物の具体例としては、(1)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート残基を2つ以上有する多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル化合物;(2)N−メチルアリルアクリルアミド、N−ビニルアクリルアミド、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸等のアクリルアミド化合物;(3)ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルエチレン尿素等のジビニル化合物;(4)ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、トリアリルアンモニウム塩、ペンタエリスリトールのアリルエーテル化体、分子中に少なくとも2個のアリルエーテル単位を有するスクローゼのアリルエーテル化体等のポリアリル化合物;(5)ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート等の不飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0028】
架橋剤は、全モノマー及び架橋剤の合計100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、3質量部以上が更に好ましく、10質量部以上が特に好ましく、上限は75質量部以下が好ましく、60質量部以下が更に好ましく、55質量部以下が特に好ましい。
【0029】
[複合ポリマー粒子の製法]
本発明の複合ポリマー粒子は、シリコーン及び/又はフッ素化合物で被覆された金属酸化物、溶解度パラメータが8.9未満のビニルモノマーを含むモノマー成分及び架橋剤を分散混合する工程(以下工程1という)と、その後、懸濁重合する工程(以下工程2という)により製造される。
【0030】
工程1において、シリコーン及び/又はフッ素化合物で被覆された金属酸化物とモノマー成分(溶解度パラメータが8.9未満のビニルモノマーと必要に応じて8.9以上のモノマーを含めたもの)及び架橋剤との質量比は、金属酸化物/モノマー成分と架橋剤の合計量=25/75〜90/10が好ましく、30/70〜70/30が更に好ましい。
【0031】
ビニルモノマーの分散には、分散効率を上げるため、必要に応じて有機溶媒を加えてもよい。このような有機溶媒としては、例えば、直鎖又は環状の飽和炭化水素系溶剤(n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、シクロヘキサン等)、直鎖又は環状の不飽和炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン等)、ケトン系有機溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル系有機溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、直鎖又は環状のポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0032】
ここで分散には、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、アトライターミル、ボールミル、サンドミル等の分散機が用いられる。
【0033】
必要に応じて、工程2で添加する分散・乳化剤を工程1で添加してもよい。添加する場合は、金属酸化物100質量部に対して、1〜30質量部添加することが好ましい。分散時間は、30分〜5時間程度が好ましい。
【0034】
工程2においては、工程1で得られた分散液と、水、重合開始剤、分散・乳化剤を混合し、乳化又は懸濁させた後、重合させる。
【0035】
懸濁重合のための分散・乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム、アルキル(メチル)タウリンナトリウム等のアニオン性界面活性剤、その他の、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の低分子の界面活性剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルキルエーテル等の高分子分散剤;硫酸バリウム、硫酸カリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の難水溶性無機塩が挙げられる。分散・乳化剤は、工程1で得られた分散液100質量部に対して、0.1〜20質量部添加することが好ましい。
【0036】
重合開始剤としては、反応系に応じて決められるが、パーオキサイド系開始剤、有機又は無機過酸若しくはその塩、アゾビス系化合物の単独或いは還元剤との組合せによるレドックス系のものが挙げられる。
【0037】
例えば、t−ブチルパーオキサイド、t−アミルパーオキサイド、クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ベンゾイルイソブチリルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド(LPO)、t−ブチルハイドロパーオキサイド、シクロヘキシルハイドロパーオキサイド、テトラリンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーアセテート、t−ブチルパーベンゾエート、ビス(2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'−アゾビスイソバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、フェニルアゾトリフェニルメタン、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過硫酸塩とトリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアニリン等の第3級アミンとの組合せ等が挙げられる。
【0038】
重合開始剤は、ビニルモノマー及び架橋剤の合計量に対して、0.1〜5質量%が好ましい。重合開始温度は、20〜95℃が好ましく、重合させる時間は、3〜48時間が好ましい。
【0039】
以上のように、シリコーン及び/又はフッ素化合物で被覆された金属酸化物、溶解度パラメータが8.9未満のビニルモノマーを含むモノマー成分及び架橋剤を、上述のごとき公知の方法に従って水中に分散あるいは懸濁させ液滴とし、重合反応を行うことによって目的とする複合ポリマー粒子を製造することが出来る。
【0040】
重合後、複合ポリマー粒子を濾過や遠心分離等で固液分離し、水相を除去し、必要に応じて水洗を行い、減圧乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥等の通常の手段によって粉体として単離することができる。また必要に応じて凝集物の解砕を行う。解砕方法としては、ジェットミル、ピンミル、コーミル、ハンマーミル、フェザーミル等の乾式法、ラインミキサー、ディスパー、ホモジナイザー、マイルダー、ホモミキサー等の湿式法を用いることが出来る。
【0041】
[化粧料]
本発明の複合ポリマー粒子を配合し得る化粧料としては、UV遮蔽効果,皮膚隠蔽効果を発揮させ得るものであれば通常の化粧料に配合することができる。具体的にはファンデーション、頬紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、口紅、ネイルエナメル等のメイクアップ化粧料、サンスクリーン化粧料、下地化粧料が好ましい。化粧料中の複合ポリマー粒子の含有量は0.1〜60質量部が好ましく、1〜40質量部が更に好ましい。
【0042】
また更に化粧料には、通常の化粧料用原料として用いられる他の成分、例えば、白色顔料(酸化チタン等)、体質顔料(マイカ、タルク、セリサイト、硫酸バリウム等)、着色顔料(ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、黄色401号、赤色226号、カプセル化有色顔料、有機色素等)、パール顔料、天然鉱物、有機粉末、油剤(ワセリン、ラノリン、セレシン、オリーブ油、ホホバ油、ひまし油、スクワラン、流動パラフィン、エステル油、ジグリセリド、トリグリセリド、シリコーン油、パーフルオロポリエーテル、フッ素変性シリコーン油等)、紫外線防御剤、ゲル化剤、ワックス(マイクロクリスタリンワックス、高級脂肪酸や高級アルコール等の固形・半固形油分等)、金属石鹸、界面活性剤、保湿剤、防腐剤、香料、増粘剤、酸化防止剤、殺菌剤、制汗剤、その他各種添加剤を適宜選択して配合することができる。
本発明の化粧料は固体化粧料,ワックス化粧料,乳液(O/W,W/O)化粧料,液体化粧料,ゲル化粧料等の製品形態で用いられる。
【実施例】
【0043】
実施例1
ビーズミルを用いて、テイカ製シリコーン処理酸化亜鉛(MZ−507S)60gを、ラウリルメタクリレート(SP値 8.7)45g、エチレングリコールジメタクリレート45g中で3時間撹拌した(大塚電子製ELS-8000で測定した酸化亜鉛の平均粒子径0.3μm)。その後、ラウロイルパーオキサイド3gを加えた。イオン交換水1500gにラウリル硫酸ナトリウム20gを溶解し、前述の酸化亜鉛スラリーに加え、マイルダーを用いて分散した(堀場製作所製LA-910で測定したエマルジョンの平均粒子径1.6μm)。次いで、該分散液を2000mLのセパラブルフラスコに仕込み、窒素置換後、200r/minで攪拌しながら、70℃まで昇温し、70℃で10時間、さらに80℃まで昇温し、80℃で10時間窒素雰囲気下で重合を行った。重合終了後、遠心分離にて固体を集め、水で洗浄し、凍結乾燥後、ジェットミルで解砕して、複合ポリマー粒子120gを得た(酸化亜鉛の内包率40質量%)。
得られた複合ポリマー粒子の走査型電子顕微鏡写真を図1に、透過型電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0044】
実施例2
ビーズミルを用いて、テイカ製シリコーン処理酸化亜鉛(MZ−507S)90gを、ステアリルメタクリレート(SP値 8.7)45g、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート45g、ヘプタン30g中で3時間撹拌した(大塚電子製ELS-8000で測定した酸化亜鉛の平均粒子径0.4μm)。その後、ラウロイルパーオキサイド3gを加えた。イオン交換水1500gにココイルメチルタウリンナトリウム15gを溶解し、前述の酸化亜鉛スラリーに加え、ホモジナイザーを用いて分散した(堀場製作所製LA-910で測定したエマルジョンの平均粒子径1.6μm)。次いで、該分散液を2000mLのセパラブルフラスコに仕込み、窒素置換後、200r/minで攪拌しながら、70℃まで昇温し、70℃で10時間、さらに80℃まで昇温し、80℃で10時間窒素雰囲気下で重合を行った。重合終了後、遠心分離にて固体を集め、水で洗浄し、凍結乾燥後、ジェットミルで解砕して、複合ポリマー粒子120gを得た(酸化亜鉛の内包率50質量%)。
【0045】
実施例3
ビーズミルを用いて、テイカ製シリコーン処理酸化亜鉛(MZ−507S)40gを、ラウリルメタクリレート(SP値 8.7)30g、エチレングリコールジメタクリレート30g中で3時間撹拌した(大塚電子製ELS-8000で測定した酸化亜鉛の平均粒子径0.3μm)。その後、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル1.5gを加えた。イオン交換水500gにポリビニルアルコール(日本合成化学工業製EG-30)30g、ステアロイルメチルタウリンナトリウム1gを溶解し、前述の酸化亜鉛スラリーに加え、マイルダーを用いて分散した(堀場製作所製LA-910で測定したエマルジョンの平均粒子径2.0μm)。次いで、該分散液を1000mLのセパラブルフラスコに仕込み、窒素置換後、200r/minで攪拌しながら、60℃まで昇温し、60℃で2時間、さらに80℃まで昇温し、80℃で4時間窒素雰囲気下で重合を行った。重合終了後、遠心分離にて固体を集め、水で洗浄し、凍結乾燥後、ジェットミルで解砕して、複合ポリマー粒子90gを得た(酸化亜鉛の内包率40質量%)。
【0046】
実施例4
ビーズミルを用いて、シリコーン処理酸化チタン(平均粒子径0.25μmの酸化チタン(石原産業製、CR−50)をメチルハイドロジェンポリシロキサン(酸化チタンに対して2質量%)を用いて撥水処理したもの)50gを、ラウリルメタクリレート(SP値 8.7)56g、エチレングリコールジメタクリレート19g中で3時間撹拌した(大塚電子製ELS-8000で測定した酸化チタンの平均粒子径0.3μm)。その後、ラウロイルパーオキサイド1.5gを加えた。イオン交換水750gにポリビニルアルコール(日本合成化学工業製EG-30)7.5gを溶解し、前述の酸化チタンスラリーに加え、ホモジナイザーを用いて分散した(堀場製作所製LA-910で測定したエマルジョンの平均粒子径11.5μm)。次いで、該分散液を2000mLのセパラブルフラスコに仕込み、窒素置換後、150r/minで攪拌しながら、75℃まで昇温し、75℃で8時間、窒素雰囲気下で重合を行った。重合終了後、遠心分離にて固体を集め、水で洗浄し、凍結乾燥後、ジェットミルで解砕して、複合ポリマー粒子120gを得た(酸化チタンの内包率40質量%)。
【0047】
実施例5
ビーズミルを用いて、石原産業製シリコーン処理酸化チタン(平均粒子径0.25μmの酸化チタン(石原産業製、CR−50)をメチルハイドロジェンポリシロキサン(酸化チタンに対して2質量%)を用いて撥水処理したもの)50gを、ポリジメチルシロキシプロピルメタクリレート(チッソ社製、サイラプレーンFM0711、MW1000、SP値 7.6)10g、イソステアリルメタクリレート(SP値 8.2)50g、エチレングリコールジメタクリレート40g、ポリジメチルシロキサン(5000cs)10g中で3時間撹拌した(大塚電子製ELS-8000で測定した酸化チタンの平均粒子径0.4μm)。その後、ラウロイルパーオキサイド3gを加えた。イオン交換水1500gにポリビニルアルコール(日本合成化学工業製EG-30)45gを溶解し、前述の酸化チタンスラリーに加え、ホモジナイザーを用いて分散した(堀場製作所製LA-910で測定したエマルジョンの平均粒子径1.8μm)。次いで、該分散液を2000mLのセパラブルフラスコに仕込み、窒素置換後、200r/minで攪拌しながら、70℃まで昇温し、70℃で10時間、さらに80℃まで昇温し、80℃で10時間窒素雰囲気下で重合を行った。重合終了後、遠心分離にて固体を集め、水で洗浄し、凍結乾燥後、ジェットミルで解砕して、複合ポリマー粒子120gを得た(酸化チタンの内包率31質量%)。
【0048】
比較例1
ビーズミルを用いて、テイカ製シリコーン処理酸化亜鉛(MZ−507S)60gを、スチレン(SP値 9.2)60g、ジビニルベンゼン30g中で3時間撹拌した(大塚電子製ELS-8000で測定した酸化亜鉛の平均粒子径0.3μm)。その後、ラウロイルパーオキサイド3gを加えた。イオン交換水1500gにラウリル硫酸ナトリウム20gを溶解し、前述の酸化亜鉛スラリーに加え、マイルダーを用いて分散した(堀場製作所製LA-910で測定したエマルジョンの平均粒子径2.1μm)。次いで、該分散液を2000mLのセパラブルフラスコに仕込み、窒素置換後、200r/minで攪拌しながら、70℃まで昇温し、70℃で10時間、さらに80℃まで昇温し、80℃で10時間窒素雰囲気下で重合を行った。重合終了後、遠心分離にて固体を集め、水で洗浄し、凍結乾燥後、ジェットミルで解砕して、複合ポリマー粒子110gを得た(酸化亜鉛の内包率40質量%)。
得られた複合ポリマー粒子の走査型電子顕微鏡写真を図3に、透過型電子顕微鏡写真を図4に示す。
【0049】
比較例2
ビーズミルを用いて、テイカ製シリコーン処理酸化亜鉛(MZ−507S)30gをメチルメタクリレート(SP値 8.9)70g中で3時間撹拌した(大塚電子製ELS-8000で測定した酸化亜鉛の平均粒子径0.3μm)。その後、ラウロイルパーオキサイド2.1gを加えた。イオン交換水500gにラウリル硫酸ナトリウム5gを溶解し、前述の酸化亜鉛スラリーに加え、マイルダーを用いて分散した(堀場製作所製LA-910で測定したエマルジョンの平均粒子径2.2μm)。次いで、該分散液を2000mLのセパラブルフラスコに仕込み、窒素置換後、200r/minで攪拌しながら、70℃まで昇温し、70℃で10時間、さらに80℃まで昇温し、80℃で10時間窒素雰囲気下で重合を行った。重合終了後、遠心分離にて固体を集め、水で洗浄し、凍結乾燥後、ジェットミルで解砕して、複合ポリマー粒子70gを得た(酸化亜鉛の内包率30質量%)。
得られた複合ポリマー粒子の走査型電子顕微鏡写真を図5に、透過型電子顕微鏡写真を図6に示す。
【0050】
比較例3
ビーズミルを用いて、テイカ製酸化亜鉛(MZ−700:カタログによる粒径0.02μm、シリコーン未処理品)20gを、ラウリルメタクリレート(SP値 8.7)40g、エチレングリコールジメタクリレート40g、ヘプタン20g中で3時間撹拌した。その後、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル1.6gを加えた。イオン交換水500gにラウリル硫酸ナトリウム6.5gを溶解し、前述の酸化亜鉛スラリーに加え、マイルダーを用いて分散した(堀場製作所製LA-910で測定したエマルジョンの平均粒子径2.0μm)。次いで、該分散液を1000mLのセパラブルフラスコに仕込み、窒素置換後、200r/minで攪拌しながら、60℃まで昇温し、60℃で2時間、さらに80℃まで昇温し、80℃で4時間窒素雰囲気下で重合を行った。重合終了後、遠心分離にて固体を集め、水で洗浄し、凍結乾燥後、ジェットミルで解砕して、複合ポリマー粒子70gを得た(酸化亜鉛の内包率20質量%)。
【0051】
試験例1
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られた複合ポリマー粒子について、以下の方法で、SPFを測定した。また製品への配合性及び使用感を下記方法で評価した。結果を表1に示す。
【0052】
<SPFの測定法>
・配合組成
1.ポリエーテル変性シリコーン(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、SH3775M):1.8質量%
2.ジカプリン酸ネオペンチルグリコール :2.0質量%
3.スクアラン :4.0質量%
4.4−メトキシ桂皮酸 2−エチルヘキシル :1.0質量%
5.直鎖ジメチルシリコーン(2cs) :36.0質量%
6.複合ポリマー粒子 :金属酸化物として5.0質量%
7.グリセリン :4.3質量%
8.水 :バランス
・配合手順
a) 成分1〜4を均一配合し、成分5と6の分散液を加えさらに分散する。
b) 成分7と8を混合する。
c) a)にb)を徐々に添加し、ホモミキサーをかけて乳化物を作成する。
・試料調製
医療用テープ(Transpore surgical tape)を用意する。5×8cm2のテープ上に前述の乳化物をシリンジで80μL載せ、指で一面に広げる。
・SPF測定
簡易型SPF測定器(labsphere製;UV TRANSMITTANCE ANALYZER)に前述の試料をセットし、測定する。5回測定し、平均を採用する(下一桁を四捨五入)。
【0053】
<製品への配合性及び使用感の評価法>
製品への配合性は、上記SPF測定用と同様の配合組成での1ヶ月の保存安定性を、下記の基準で3段階で評価し、また使用感は、上記SPF測定用と同様の配合組成での感触を、専門パネラー1名により、下記の基準で3段階で評価した。
・配合性(1ヶ月の保存安定性)
○:全く、凝集していない。
△:やや凝集が見られる。
×:凝集が著しく見られる。
・使用感
○:違異感なく使用できる。
△:ややざらざら感がある。
×:ざらざら感が感じられる。
【0054】
【表1】

【0055】
試験例2
表2に示す組成の本発明及び比較の乳液を常法により製造し、下記方法でSPF及び使用感を評価した。結果を表2に示す。
【0056】
<SPFの測定法>
試験例1記載の試料調製及びSPF測定と同様に評価した。
<使用感の評価法>
本発明及び比較の乳液について、専門パネラー10人の手の甲に塗布して感触評価を行なった(塗布量:それぞれ容器から出したときに手の甲の上で直径2cmの円になるようにした)。評価は乳液を塗布したときに、よい、どちらとも言えない、悪いの3段階で行ない、よい:1点、どちらとも言えない:0.5点、悪い:0点として、10人の合計で、10点満点で表した。
【0057】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1で得られた複合ポリマー粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例1で得られた複合ポリマー粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【図3】比較例1で得られた複合ポリマー粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】比較例1で得られた複合ポリマー粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【図5】比較例2で得られた複合ポリマー粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】比較例2で得られた複合ポリマー粒子の透過型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン及び/又はフッ素化合物で被覆された、平均粒子径1μm以下の金属酸化物を含有した複合ポリマー粒子であって、化粧料中、金属酸化物量として5質量%に相当する量の前記複合ポリマー粒子、及び1質量%の4−メトキシ桂皮酸 2−エチルヘキシルを含有した化粧料のSPFが7以上である、複合ポリマー粒子。
【請求項2】
金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化チタン及び/又は酸化セリウムからなる群から選ばれる1種以上である請求項1記載の複合ポリマー粒子。
【請求項3】
金属酸化物の含有量が、複合ポリマー粒子全体の25〜90質量%である、請求項1又は2記載の複合ポリマー粒子。
【請求項4】
シリコーン及び/又はフッ素化合物で被覆された金属酸化物、溶解度パラメータが8.9未満のビニルモノマーを含むモノマー成分及び架橋剤を分散混合した後、懸濁重合する請求項1〜3何れかの項記載の複合ポリマー粒子の製法。
【請求項5】
溶解度パラメータが8.9未満のビニルモノマーが、フッ素化されていてもよい炭素数8以上の直鎖又は分岐鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含む、請求項4記載の製法。
【請求項6】
溶解度パラメータが8.9未満のビニルモノマーが、分子鎖の片末端にラジカル重合性基を有するジメチルポリシロキサン化合物を含む、請求項4又は5記載の製法。
【請求項7】
架橋剤が、全モノマー及び架橋剤の合計100質量部に対して0.1〜75質量部である、請求項4〜6何れかの項記載の製法。
【請求項8】
請求項1〜3何れかの項記載の複合ポリマー粒子を含有する化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−1828(P2009−1828A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240187(P2008−240187)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【分割の表示】特願2003−52325(P2003−52325)の分割
【原出願日】平成15年2月28日(2003.2.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】