説明

複合中空パイプおよびその製造方法

【課題】エネルギー効率や演色性に優れることから、広く利用が進んできているLED照明装置の筐体等として有用な、光透過性と熱伝導性(放熱性)を兼ね備えた複合中空パイプを提供する。
【解決手段】断面形状が相似形である1次元中空パイプであって、光透過率が35%以上の樹脂または樹脂組成物からなる光透過性樹脂層8と、2W/m・K以上の熱伝導率を有する樹脂組成物からなる熱伝導性樹脂層9とを組み合わせて構成される複合中空パイプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にLED照明装置の筐体等として有用な、光透過性と熱伝導性(放熱性)を兼ね備えた複合中空パイプとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LED照明はエネルギー効率、演色性に優れる事から、近年、広く利用が進んできている。ただしLED光は一般に点光源状の為、照明として用いる上では、何がしかの光制御を必要とする場合が多い。例えばプリズム、レンズ等の光学素子と組み合わせる事で光の指向性や集光性の制御ができ、また光拡散性を有する光学素子を組み合わせる事により、出射光強度の角度分布の制御や、点光源状から面光源状への変換(ライトスポットの拡散、消失)が可能になる。
【0003】
例えば、不活性ガス内の放電現象を利用して発光し、光発光面が一方向に連続して伸びる従来型の蛍光灯の形状に類似したLED照明装置を作成しようとする場合、LED素子を1次元アレー状に実装したLED実装基板を用い、このLED実装基板を中心部に配置し、その周囲を光透過性の中空パイプで覆うといった構造が取られる。尚、このような構造は断面方向には相似形となるとの特徴を有する。
【0004】
ところでLED素子、その中でも特に光出力の大きなLED素子においては、素子のパフォ−マンスを発揮させる為に放熱対策が必要となる場合が多い。放熱対策とは、LED素子の発熱によって生じるヒートスポットを熱拡散して解消するとともに、発生した熱量を装置外部に放散する為の技術的対策を言う。
【0005】
これはLED素子のパフォーマンス(輝度、寿命等)がLED素子の発熱による温度上昇により制限される事情がある為である。すなわちLED素子の輝度や寿命はどの程度効率的な放熱対策を施しているかによって大きく左右される。
【0006】
LED照明装置における放熱対策には種々のものがあるが、放熱部はアルミニウム合金やマグネシウム合金などの熱伝導性金属素材で形成され(例えば特許文献1〜2参照)、LED基板3と支持体との間には、熱伝導性樹脂による熱伝導シートが介装してあるものも提案されている(例えば特許文献3)
【0007】
このように光発光面が一方向に連続しているLED照明装置に関しては、LED実装基板にアルミニウム等の熱伝導率の高い金属板を積層した基板を用い、このLED実装基板を中心部に配置し、その周囲を光透過性の中空パイプで覆うといった構造(以下、構造例Aという)が用いられる場合がある。(一例を図1に例示)
【0008】
また、この他の放熱対策の例として、LED実装基板の背面に熱伝導率の高い金属材料で作成した台座部を設け、この台座部がそのままLED照明装置の筐体を兼ねるといった構造(以下、構造例Bという)を取る場合もある。(一例を図2に例示)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−339653号公報
【特許文献2】特開2008−243498号公報
【特許文献3】特開2008−287994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記構造例Aでは、LED素子の発熱(ヒートスポット)は実装基板全体に熱拡散され、LED素子の温度をある程度低減する事が可能であるが、熱伝導率の極めて低い空気層が介在する為に、実装基板から中空パイプならびに照明装置外部に熱を放散する能力が低いため、放熱対策としては十分ではない。
また中空パイプを透明性の高い樹脂材料で作成した場合には剛性が不十分になりやすく、特に1mを超える照明装置を作成した場合には、照明装置の自重により撓み変形が生ずる場合がある。
【0011】
また前記構造例Bでは、LED素子の発熱を、熱伝導性の高い金属製の台座部を通じて、照明装置外部に効率的に放散する事が可能で、照明装置の剛性も確保する事ができるが、金属製の台座部の比重が高いために照明装置の全体重量が著しく増大してしまう。この為、照明装置の取り扱い性や装置落下時の安全性に劣るといった問題点がある。また更には、樹脂製のパイプと金属製の台座を組み合わせて用いる事から、その接合部において、熱膨張率、吸湿率等の違いにより、応力歪が発生して破損の原因になったり、接合部に隙間を生じて、そこから水分が浸入してLED照明装置に悪影響を与えるといった問題点もある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は断面形状が相似形である1次元中空パイプであって、光透過率が35%以上の樹脂または樹脂組成物からなる光透過性樹脂層と、2W/m・K以上の熱伝導率を有する樹脂組成物からなる熱伝導性樹脂層とを組み合わせて構成される複合中空パイプである。なかでも好ましくは、複合中空パイプの外周面において、外周面の全表面積に対し、表面積の40〜80%が光透過性樹脂層で構成され、表面積の20〜60%が熱伝導性樹脂層を少なくとも含んで構成されている複合中空パイプ、もしくは複合中空パイプ外周面が光透過性樹脂層で構成され、外周面の面積20〜60%は内周に熱伝導性樹脂層を有して構成されている複合中空パイプである。また本発明は該複合中空パイプの製造方法であり、また該複合中空パイプを用いたLED照明装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複合中空パイプは、光拡散と放熱の2つの機能を有する複合中空パイプであるため、例えばLEDアレーを用いた照明装置の筐体兼台座として用いた場合、LED照明光の制御とLEDデバイスの放熱が同時に可能になる。また熱伝導性樹脂層の曲げ弾性率が非常に高く、かつ比重が小さい為に、複合中空パイプ全体の剛性が高まり、例えば複合中空パイプを1m以上の長さに形成した場合でも複合中空パイプの自重による撓み変形を抑制でき、また更には照明装置の落下時の安全性等に優れ、防水性にも優れた、高品質な複合中空パイプ、もしくはLED照明装置を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来のLED照明装置の断面構造の一例(構造例A)を示す模式図である。
【図2】従来のLED照明装置の断面構造の他の一例(構造例B)を示す模式図である。
【図3】本発明の複合中空パイプの断面形状の一例である。
【図4】本発明の複合中空パイプの断面形状の他の一例である。
【図5】本発明の複合中空パイプの断面形状の他の一例である。
【図6】本発明の複合中空パイプの断面形状の他の一例である。
【図7】本発明の複合中空パイプの断面形状の他の一例である。
【図8】本発明の複合中空パイプの断面形状の他の一例である。
【図9】本発明の複合中空パイプの断面形状の他の一例である。
【図10】本発明の複合中空パイプの断面形状の他の一例である。
【図11】本発明の複合中空パイプの断面形状の他の一例である。
【図12】本発明の複合中空パイプの断面形状の他の一例である。
【図13】実装基板固定の為のガイド形状に関する一例である。
【図14】熱伝導性樹脂層固定用のガイド形状に関する一例である。
【図15】本発明の複合中空パイプを用いたLED照明装置の断面構造の一例である。
【図16】本発明の複合中空パイプを用いたLED照明装置の断面構造の他の一例である。
【図17】本発明の複合中空パイプを用いたLED照明装置の断面構造の他の一例である。
【図18】本発明の複合中空パイプを用いたLED照明装置の断面構造の他の一例である。
【図19】本発明の複合中空パイプを用いたLED照明装置のパイプ長さ方向の断面構造の一例である。
【図20】複合中空パイプ端部の封止構造の一例を示す断面模式図である。
【図21】光透過性樹脂層の分散度の測定に関する説明図である。
【図22】本発明の複合中空パイプの製造に関し、二色押し出し成型装置の配置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について順次説明する。
[複合中空パイプの構造]
本発明の複合中空パイプは断面形状が相似形となる1次元中空パイプであり、その断面を見た場合に、光透過性樹脂層と熱伝導性樹脂層の2層が組み合わさってなる形状をしている。ここで断面形状が相似形となる1次元中空パイプとは、基本となる断面構造は同一であって、長さ方向において不連続に、付属部、例えばガイド形状や羽板のような付属部を有する場合を含む中空パイプである。
【0016】
複合中空パイプの太さはとくに制限はなく、例えばLED照明装置の筐体として用いる場合は、内部のLED等の光源の大きさや照明装置としての外観仕様等にもよるが、例えば円形断面のパイプの場合には、およそ直径15〜45mm程度である事が一般的である。
【0017】
同様に複合中空パイプの長さはとくに制限はなく、例えばLED照明装置の筐体として用いる場合の例として、図19に複合中空パイプを用いたLED照明装置のパイプ長さ方向の断面構造を例示するように、複合中空パイプの長さは使用目的に応じて適宜選択できる。ここで複合中空パイプの自重による撓み変形が無い長さに留めることが好ましいが、具体的にはおよそ100〜2500mm程度の長さである事が一般的である。
断面形状については、特に制限はなく、真円、楕円、正方形、長方形、ひし形、多角形その他、各種の形状を取る事ができる。
【0018】
光透過性樹脂層は、例えば中空パイプの内部にLED等の光源が配置された場合に、そのカバーとして、それら内部のデバイス類を保護する役割を担うと共に、光源で発せられた光を透過させ、パイプ外部に出射する役割を担う。
【0019】
光透過性樹脂層の平均厚みは0.5〜5mm、より好ましくは1〜3mmの範囲にある事が好ましい。0.5mm未満では機械的強度の面で不十分になりやすく、また5mm超になると光の透過損失が大きくなり、またパイプ重量の増加が無視できなくなる事から好ましくない。
【0020】
また光透過性樹脂層は前述の使用目的において、光透過率が少なくとも35%以上の樹脂または樹脂組成物からなる。光透過率がより好ましくは45%以上、更に好ましくは55%以上、最も好ましくは65%以上である。ここで光透過性樹脂層は樹脂単独であっても、樹脂に光拡散フィラー等の各種添加剤を混合した樹脂組成物であっても、光透過率が35%以上であればよい。
【0021】
尚、ここで光透過率は層に垂直に入射する光に対して、層の反対面側に出射する光の光量を百分率で示したものであるが、出射光は反対面側に出射する全方位の光、すなわち出射角が0°〜90°のすべての光を積算した光量として、測定する。このような測定は一般に積分球方式の光透過率測定装置により、測定が可能である。
【0022】
また光透過率は利用対象とする波長領域の光の平均透過率とし、例えば、可視光を利用対象とする場合には380〜780nmの波長領域の平均透過率とする。
また光透過性樹脂層は、広範な利用を可能とする観点より、耐熱性に優れ、低吸水性の層である事がより好ましく、熱変形温度が90℃以上、より好ましくは100℃以上の層であり、吸水率が2%以下、より好ましくは1%以下の層である事が好ましい。
【0023】
また光透過性樹脂層は、利用目的に応じて、光の散乱性、拡散性、屈折性、集光性などのコントロール機能を併せ持つ層としても良い。これらの機能は、光透過性樹脂層の内部にこうした光学機能を付与するフィラーを分散する方法や、こうした光学機能を付与するための数μm〜数mm単位の凹形状およびまたは凸形状(レンズ、プリズム等の形状含む)を光透過性樹脂層の表面形状として賦型する方法等が挙げられる。
【0024】
尚、後者の賦型方法に関しては、光透過性樹脂層を成形する為の金型に予め対応する形状を刻印しておき、成形時に自動的に形状が付与されるとの方法が好ましいが、場合によっては、成型後の後加工として、光透過性樹脂層に形状刻印する加工を行ったり、光透過性樹脂層上に前記光学的を有する樹脂層をコーティングで形成したり、パターン状に印刷する等の方法によって、これら形状や機能の付与を行っても良い。
光透過性樹脂層の組成に関する詳細については後で詳述する。
【0025】
熱伝導性樹脂層は、例えば中空パイプの内部にLED等の光源が配置された場合に、光源で発した熱を広く拡散しながら中空パイプの外周面に向け、輸送する機能を担う層であり、一般の樹脂層に比べて、熱伝導率が極めて高い特徴を有する層である。
熱伝導性樹脂層は、熱伝導性のフィラーを層内に含む事により高い熱伝導率を有している層であるが、層の熱伝導率として少なくとも層内の一方向に対して2W/m・K以上、より好ましくは4W/m・K以上、更に好ましくは6W/m・K以上、最も好ましくは8W/m・K以上を有する層である。
【0026】
熱伝導性樹脂層の平均厚みは、1〜30mm、より好ましくは1.5〜20mm、更に好ましくは2〜10mmの範囲にある事が好ましい。1mm未満では熱の拡散、輸送能力、ならびに機械的強度が不十分になりやすい。一方、30mm超ではパイプ全体の重量増加が無視できなくなり、好ましくない。
熱伝導性樹脂層の比重は、複合中空パイプの重量を低減する観点において、少なくとも2.0g/cm以下、より好ましくは1.9g/cm以下、更に好ましくは1.8g/cm以下、最も好ましくは1.7g/cm以下である事が好ましい。
【0027】
また熱伝導性樹脂層は、複合中空パイプの全体の剛性を高める観点より、曲げ弾性率が5GPa以上、より好ましくは7GPa以上、更に好ましくは9GPa以上の層である事が好ましい。
また熱伝導性樹脂層は、広範な利用を可能とする観点より、耐熱性に優れ、低吸水性の層である事がより好ましく、熱変形温度が90℃以上、より好ましくは100℃以上の層であり、吸水率が2%以下、より好ましくは1%以下の層である事が好ましい。
【0028】
熱伝導性樹脂層の外周面側に熱伝導性樹脂層を形成する樹脂とは別種の樹脂からなる層を配置しても良い。本層を設ける目的は熱伝導性樹脂層表面の機械的保護、もしくは照明装置として用いる場合の組み立て性を高める目的からである。その場合の層の平均肉厚は0.03〜3mm程度とすることが好ましい。本層は樹脂溶融成型での形成、インサート成型用樹脂フィルムとして一体形成、樹脂塗装による積層形成等の手段で形成される。特に樹脂溶融成型で形成する場合には前記の光透過性樹脂層をそのまま用いる事もできる。
熱伝導樹脂性層の組成の詳細に関しては後で詳述する。
【0029】
さて本発明における光透過性樹脂層と熱伝導性樹脂層は、複合中空パイプの断面において、適切な比率で組み合わされる。
光透過性樹脂層は、光源の光をできるだけ有効に、かつ広範囲に出射する目的において、複合中空パイプの外周面の全表面積に対し、表面積の40〜80%を占めている事が好ましい。
一方、熱伝導性樹脂層は、光源の発する熱をできるだけ広範囲に拡散する目的において、複合中空パイプの外周面の全表面積に対し、20〜60%の表面積を占めている事が好ましい。
【0030】
なお本発明の複合中空パイプは断面形状が相似形であるため、外周面の面積比率は、断面図における各層の外周における長さの比より求められる。
この態様の具体例として複合中空パイプの断面構造において、図3〜7、11、12に例示するような組み合わせ構造が特に好ましく例示される。
【0031】
また熱伝導性樹脂層の外面およびまたは内面には、熱伝導性樹脂層と別種の樹脂による表面層(以下、表面層という)が設けられていても良い。表面層は、パイプの機械的強度、衝撃強度、落下衝撃性、耐摩耗性、表面傷付き性、意匠性、デザイン性、装飾性の向上、電気絶縁性の確保等の目的にて設けられる。
【0032】
表面層の平均肉厚は0.03〜3mmの範囲にある事が好ましい。平均厚みが0.03mm未満であると、これら目的の実現において、不十分になりやすく、また3mm超では、熱伝導性樹脂層の放熱性能の低下や、パイプの重量増加が顕著になる等の問題が生ずるので好ましくない。
表面層の熱伝導率については特に制限はないが、熱伝導性樹脂層の放熱性に顕著な悪影響を与えないとの観点より、より好ましくは0.5W/m・K以上、更に好ましくは1W/m・K以上である。
【0033】
これら表面層は、紫外線硬化型樹脂等の樹脂コーティング、熱収縮性チューブによる樹脂層被覆、熱可塑性フィルムのインサート成型や熱可塑性樹脂の二色成型(射出成型、押出成型)等の手法で形成が可能である。
尚、二色成型法を用いる場合、本発明における光透過性樹脂層をそのまま表面層として用いた構成も可能であり、好ましく例示される。本構造の場合、複合中空パイプ外周面が光透過性樹脂層で構成され、外周面の面積20〜60%は内周に熱伝導性樹脂層を有して構成されていることが好ましい。この態様の具体例として複合中空パイプの断面構造において、図8〜10に例示するような組み合わせ構造が特に好ましく例示される。内周の熱伝導性樹脂層は図8、9に例示するような中実のものであっても、図10に例示するような中空のものであってもよい。
【0034】
ここで光透過性樹脂層と熱伝導性樹脂層は、接着剤、粘着剤、接着シート、粘着シート等の粘接着手段を介して、その界面を接して配置されても良い。この場合、光透過性樹脂層と熱伝導性樹脂層を別々に成型して、両者を噛み合わせて一体化したり、一方の層を他方の層に差し込んで一体化する等の方法により、目的とする複合中空パイプの構造を得る事ができる。
【0035】
また光透過性樹脂層と熱伝導性樹脂層はその界面が溶融接合や超音波接合等により一体化していても良い。
溶融接合とは両樹脂層が互いに溶融状態で接合して、一体化している状態を指す。溶融接合は光透過性樹脂層や熱伝導性樹脂層の成形段階で一括実施する事が好ましく、一般にはいわゆる二色成型(射出成型、押出成型)の手法が用いられる。
【0036】
ここで二色成型とは、例えば、二種以上の樹脂組成物を、相異なる複数の樹脂押し出し用ノズルから溶融吐出させた後に、金型、ダイス内で一体化させ、その後に冷却固化する事により、界面で溶融接合、一体化した二種以上の樹脂組成物の複合成型体を得る手法を指す。
【0037】
尚、本発明で記載している各図例では、断面がほぼ円形の複合中空パイプを例示しているが、本発明は円形断面に限定されるものではなく、他の各種断面形状においても、基本的には円形断面での前記例示と同様の技術思想での構造設計が可能である。
【0038】
[二色成型による複合中空パイプの製造方法の開示]
本発明の複合中空パイプの製造方法の一例として、二色押し出し成型法を用いた製造方法を例示する。
二色押し出し成型法とは、相異なる複数の押出機から溶融押し出しした後に、それら複数の押出機に接続された1基のダイス内で一体化させ、その後、冷却固化する工程を含む成形方法を指す。
【0039】
押出機の種類としては、例えば単軸フルフライト・ダブルフライト等押出機で口径φ10〜90mm・押出能力0.2〜100kg/hr、昇温可能温度600℃以下、2軸押出機同方向回転式で口径φ10〜50mm・押出能力0.2〜100kg/hr、昇温可能温度600℃以下、2軸押出機異方向回転式で口径φ10〜50mm・押出能力0.2〜100kg/hr、昇温可能温度600℃以下等が挙げられる。本発明においては単軸フルフライト押出機が好ましく用いられる。
【0040】
この理由として単軸押出機の場合、スクリューデザインの変更等により剪断力を出来るだけ低く調整できる能力に優れていることにより炭素短繊維フィラーの折損率を低減できることが挙げられる。同時に熔融樹脂の発熱量を抑えることができ、樹脂の熱劣化を低減できることも挙げられる。
【0041】
また熱可塑性樹脂組成物を押出す押出機のシリンダー、スクリューには表面硬化処理を施工したものを用いることが好ましい場合が多い。この理由として熱可塑性樹脂組成物に含まれるフィラーの中には金属表面を磨耗せしめる性質があるものもあり、長期間の成形においてはスクリュー、シリンダーが磨耗し樹脂押出量の低減、熔融樹脂吐出量安定性の低減、熔融樹脂温度安定性の低減、熔融樹脂粘度低下等が発生することにより押出製品品質の低下を招く。この予防処置とすることが挙げられる。表面硬化処理の種類としては硬質クロームメッキ、チッ化処理、各種セラミックコーティング等が挙げられる。
【0042】
引取機の種類としてはベルト式リングコーンモーターチェーン駆動引取機、ベルト式サーボモーター直駆動式引取機、キャタピラ式リングコーンモーターチェーン駆動引取機、キャタピラ式サーボモーター直駆動式引取機等が挙げられる。本発明においてはベルト式サーボモーター直駆動式引取機が好ましく用いられる。この理由としてベルト式サーボモーター直駆動式引取機の場合、キャタピラ式引取機で発生する振動が製品外観に及ぼす悪影響が発生しないことが挙げられる。またサーボモーター直駆動の場合、2台の押出機による樹脂の押出量の比率を一定に制御することが容易に出来ることが挙げられる。
【0043】
水槽、切断機等は特に機種を選ばないが、複合中空パイプの外径サイズに適合したものを選択する必要がある。
これら各設備は例えば図22に示すように配置すると良い。
尚、このようにして成形された複合中空パイプには、必要に応じ、熱処理(アニーリング)を施す事も可能である。
【0044】
[光透過性樹脂層の詳細開示]
本発明において、光透過性樹脂層のマトリックスに用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂や硬化性樹脂が利用できる。ただし成型性や耐衝撃性の確保する必要が高い場合には、熱可塑性樹脂の利用が好ましい場合が多い。
【0045】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン類及びその共重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体など)、ポリメタクリル酸類及びその共重合体(ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸エステルなど)、ポリアクリル酸類及びその共重合体、ポリアセタール類及びその共重合体、フッ素樹脂類及びその共重合体(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリエステル類及びその共重合体(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレート、液晶性ポリマーなど)、ポリスチレン類及びその共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂など)、ポリアクリロニトリル類及びその共重合体、ポリフェニレンエーテル(PPE)類及びその共重合体(変性PPE樹脂なども含む)、脂肪族ポリアミド類及びその共重合体、芳香族ポリアミド類及びその共重合体、ポリイミド類及びその共重合体、ポリアミドイミド類及びその共重合体、ポリカーボネート類及びその共重合体、ポリフェニレンスルフィド類及びその共重合体、ポリサルホン類及びその共重合体、ポリエーテルサルホン類及びその共重合体、ポリエーテルニトリル類及びその共重合体、ポリエーテルケトン類及びその共重合体、ポリエーテルエーテルケトン類及びその共重合体、ポリケトン類及びその共重合体、ポリシリコーン系重合体等が挙げられる。
【0046】
これら熱可塑性樹脂では、その柔軟性、後加工性、取り扱い性を高める目的で、ソフトセグメントとなる各種エラストマー成分等を共重合成分として用いた樹脂、もしくはマトリックスの樹脂中にマトリックスとは別種の樹脂を海島状に分散してなる樹脂を用いることも可能である。
【0047】
また熱硬化性樹脂としては、アクリル類、シリコーン類等の透明性に優れた樹脂が好適に挙げられ、また前記の硬化性樹脂にエラストマー成分、ゴム成分を共重合もしくは内部に分散した硬化性樹脂も好ましく用いる事ができる。
【0048】
本発明の光透過性樹脂層のマトリックスとして用いる樹脂としては、特にポリカーボネート樹脂、なかでも芳香族ポリカーボネートや脂肪族環などの共重合成分を含むような共重合体ポリカーボネートが好ましく用いられる。この理由として、透明性、光透過性、耐熱性、耐衝撃性に優れ、吸水率が小さい事が挙げられる。ポリカーボネート樹脂については後で詳述する。
【0049】
さて光透過性樹脂層に、光散乱性、光拡散性などのコントロール機能を付与する際には、マトリックス樹脂と屈折率が相異なり、透明性を有するフィラーを光散乱性/光拡散性フィラーとして混合させる事により、樹脂層に光散乱性/光拡散性を賦与する事ができる。
フィラーの混合量は、樹脂層の全光線透過率と光散乱性/光拡散性を満足するように決められる。
【0050】
本発明においては、光透過性樹脂層を厚み3mmのシートに成型した時の、シートの光透過率が35%以上であり、分散度が20度以上である光散乱性を有する光透過性樹脂層を用いる事が好ましい。尚、分散度とは図21において光線を上方から垂直に試験片面に当てたときγ=0度のときの透過光量を100とした場合、その透過光量が50になるときのγの角度をいう。
【0051】
こうしたフィラーとしては、例えば、カオリンに代表されるシリカアルミナ系粘土鉱物(含水ケイ酸アルミニウム類)、タルクに代表されるシリカマグネシウム系粘土鉱物(含水ケイ酸マグネシウム類)、炭酸カルシウム等の無機化合物、ポリメタクリル酸メチル樹脂架橋物、シリコーン樹脂架橋物、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物、アルミニウム−ホウケイ酸ガラス等の石英ガラス等、による微粒子、中空微粒子、短繊維状、立方体状、紡錘状、針状、棒状、板状、不定形状のフィラーが例示される。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、これらフィラーにはマトリックスとの密着性を高めたり、耐久性を高める目的において適当な表面処理が為されていても良い。
【0052】
フィラーのサイズは真球近似の粒径として、0.1〜100μm、より好ましくは1〜30μmである事が好ましい。0.1μm未満もしくは100μm超ではともに光拡散性が不十分となる。
また短繊維状である場合には、L/D≦10を満足する事が好ましい。ここでLは短繊維の平均繊維長、Dは平均直径である。L/Dの値が10より大きいと成形品の外観が低下したり、成形品中での繊維配向によって、均一な光拡散性が失われるため好ましくない場合がある。また直径は特に制限する必要はないが、3〜20μmの範囲が好ましい。
【0053】
フィラーの混合割合は、熱可塑性樹脂組成物全体の0.2〜40重量%の範囲、より好ましくは0.5〜30重量%の範囲、更に好ましくは1〜20重量%の範囲にあることが好ましく、0.2重量%未満では、充分な光拡散性が得られにくく、40重量%より多くなると加工性および成形品の外観が低下するため好ましくない。
【0054】
尚、光透過性樹脂層には、層の安定性、耐久性を高める目的、成形性を高める目的、光の透過波長をコントロールする目的等において、適当な添加剤を用いる事も可能である。これら添加剤としては、より具体的には、公知の紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、色素、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、可塑剤、難燃剤等が挙げられる。
【0055】
[熱伝導性樹脂層の詳細開示]
熱伝導性樹脂層は、少なくともマトリックスとなる樹脂と熱伝導性フィラーとを混合してなる層である。マトリックスとして用いる樹脂としては、熱可塑性樹脂や硬化性樹脂が利用可能である。ただし成型性や耐衝撃性の確保する必要が高い場合には、熱可塑性樹脂の利用が好ましい場合が多い。
【0056】
尚、本発明においては、熱伝導性樹脂層のマトリックスに用いる樹脂は、光透過性樹脂層のマトリックスに用いる樹脂と同種もしくは互いに相溶性を有する樹脂を用いる事が好ましい。これは本発明の実施の一形態として、熱伝導性樹脂層と光透過性樹脂層を二色成型法等により一体成型する場合に、両層の接着強度を高め、成形条件の設定を容易にする目的である。
【0057】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン類及びその共重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体など)、ポリメタクリル酸類及びその共重合体(ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸エステルなど)、ポリアクリル酸類及びその共重合体、ポリアセタール類及びその共重合体、フッ素樹脂類及びその共重合体(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリエステル類及びその共重合体(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレート、液晶性ポリマーなど)、ポリスチレン類及びその共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂など)、ポリアクリロニトリル類及びその共重合体、ポリフェニレンエーテル(PPE)類及びその共重合体(変性PPE樹脂なども含む)、脂肪族ポリアミド類及びその共重合体、芳香族ポリアミド類及びその共重合体、ポリイミド類及びその共重合体、ポリアミドイミド類及びその共重合体、ポリカーボネート類及びその共重合体、ポリフェニレンスルフィド類及びその共重合体、ポリサルホン類及びその共重合体、ポリエーテルサルホン類及びその共重合体、ポリエーテルニトリル類及びその共重合体、ポリエーテルケトン類及びその共重合体、ポリエーテルエーテルケトン類及びその共重合体、ポリケトン類及びその共重合体、ポリシリコーン系重合体等が挙げられる。
【0058】
これら熱可塑性樹脂にはその柔軟性、後加工性、取り扱い性を高める目的で、ソフトセグメントとなる各種エラストマー成分等を共重合成分として用いた樹脂、もしくはマトリックスの樹脂中にマトリックスとは別種の樹脂を海島状に分散してなる樹脂を用いることも可能である。
【0059】
また硬化性樹脂としては、エポキシ類、アクリル類、ウレタン類、フェノール類、シリコーン類、不飽和ポリエステル類ほかの樹脂が挙げられるが、成形性、耐熱性において、エポキシ類、ウレタン類、シリコーン類等の熱硬化性樹脂が好ましく、前記の硬化性樹脂にエラストマー成分、ゴム成分を共重合もしくは内部に分散した硬化性樹脂も好ましく用いる事ができる。
【0060】
本発明の熱伝導性樹脂層のマトリックスには、特にポリカーボネート樹脂、なかでも芳香族ポリカーボネートや脂肪族環などの共重合成分を含むような共重合体ポリカーボネートが好ましく用いられる。この理由として、耐熱性、耐衝撃性に優れ、吸水率が小さい事が挙げられる。
【0061】
尚、熱伝導性樹脂層の安定性、耐久性を高める目的、成形性を高める目的等において、適当な添加剤を用いる事も可能である。これら添加剤としては、より具体的には、公知の紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、色素、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、可塑剤、難燃剤等が挙げられる。
【0062】
熱伝導性フィラーとしては、金、銀、銅、アルミニウム、珪素等の金属およびその合金類、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛等の金属酸化物類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物類、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物類、窒化炭素類、酸化窒化アルミニウム等の金属酸窒化物類、炭化珪素等の金属炭化物類、天然黒鉛、人造黒鉛(カーボンブラック、ケッチェンブラック等も含む)、高結晶性の黒鉛構造を有する炭素繊維、黒鉛、膨張黒鉛、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等の炭素系材料類、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩類、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩類、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩類等による粒子状、不定形状、繊維状、ウイスカ状等の形態を持ったフィラー類が挙げられる。
【0063】
これらの中で本発明の熱伝導性樹脂層に主に用いる熱伝導性フィラーとしては、高結晶性の黒鉛構造を有する炭素繊維が好ましい。黒鉛結晶構造の成長度合は機器分析可能な幾つかの物性値により表現することができ、例えば黒鉛結晶の結晶子サイズや面間隔、炭素材料の真密度等の物性値が挙げられるが、本発明に用いる炭素繊維としては、それらの物性値を代表して、少なくとも黒鉛結晶の六角網面の厚み方向に由来する結晶子サイズ(Lc)として20nm以上の黒鉛化性に優れた炭素繊維を用いることが好ましい。
【0064】
尚、Lcの値が20nm未満であると、例えば数100W/m・Kを超える高熱伝導率が得られにくく、本発明の目的に不十分となりやすい。
これらの条件を満たす黒鉛化性に優れた炭素繊維としては、異方性ピッチ系黒鉛化炭素繊維が特に好ましく例示される。異方性ピッチ系黒鉛化炭素繊維については後で詳述する。
【0065】
熱伝導性フィラーは、熱伝導性樹脂層内に20〜70重量%、より好ましくは25〜60重量%、更に好ましくは30〜50重量%の範囲で複合されることが好ましい。
20重量部未満では熱伝導樹脂層の熱伝導性が不十分となり易く、70重量部超では熱伝導樹脂層の機械的強度や成形性が顕著に低下する場合が多くなる。
【0066】
尚、熱伝導性樹脂層には機械的強度を高める為の補強用フィラーや、耐久性、成形性等を高めるための添加剤が添加されても良い。
補強用フィラーとしては、繊維長が0.1〜10mm程度、より好ましくは0.3〜6mm程度のガラス短繊維、炭素短繊維、アラミド短繊維等が挙げられる。尚、炭素短繊維としては特にポリアクリロニトリルを出発原料とするPAN系炭素繊維が好ましい。
添加剤としては、公知の分散性向上剤、離型剤、難燃剤、乳化剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等を挙げることができる。
【0067】
またマトリックス樹脂への熱伝導性フィラー、補強用フィラー、添加剤等の混合に関しては、単軸もしくはニ軸の混練用スクリューを有する公知の溶融混練装置、各種ミキサー、ブレンダー、撹拌機などを単体もしくは組み合わせて実施する事ができる。
【0068】
[異方性ピッチ系黒鉛化炭素短繊維に関する詳細開示]
熱伝導樹脂層を構成する熱伝導性フィラーに好適に用いられる異方性ピッチ系黒鉛化炭素繊維は、液晶性のピッチを用いて紡糸を行うことから、Lcが20nm以上の発達した黒鉛結晶が得られやすい特徴を有する。
平均繊維径は、真円換算平均繊維径として、3〜20μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは5〜17μm、更に好ましくは7〜15μmである。
【0069】
尚、繊維径のバラツキを示す分散値(CV値)は所定本数測定時の繊維径の標準偏差を繊維径の平均値で除した値の百分率であるが、CV値は3〜20の範囲にあることが好ましく、より好ましくは3〜15の範囲である。
本発明では異方性ピッチ系黒鉛化炭素繊維を短繊維形状にて用いる事が好ましく、その繊維長は平均繊維長として30〜1000μm、より好ましくは50〜500μm、更に好ましくは100〜300μmの範囲にある事が好ましい。
【0070】
これら異方性ピッチ系黒鉛化炭素短繊維の好ましい製造方法については、例えば以下の通りである。
異方性ピッチ系黒鉛化炭素繊維の原料としては、例えば、ナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物、石油系ピッチや石炭系ピッチといった縮合複素環化合物等が挙げられる。その中でもナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物が好ましく、特にメソフェーズピッチが好ましい。
【0071】
メソフェーズピッチのメソフェーズ率としては少なくとも90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上である。なお、メソフェーズピッチのメソフェーズ率は、溶融状態にあるピッチを偏光顕微鏡で観察することで確認できる。尚、ピッチは必要に応じ、二種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0072】
ピッチの軟化点温度は230〜360℃の範囲にあることが好ましい。軟化点温度は例えばメトラー法により求めることができる。軟化点温度が230℃より低いと、後述の不融化処理温度が低くなる関係で、不融化工程に長時間を要するため好ましくない。また一方、360℃を超えると、ピッチの熱分解による劣化を引き起こしやすくなり、発生したガスで繊維中に気泡が発生するなどの問題を生じるため好ましくない。
軟化点温度のより好ましい範囲は250℃以上340℃以下、更に好ましくは260℃以上320℃以下である。
【0073】
このメソフェーズピッチを用いて、まず紡糸工程を行い、異方性ピッチ系黒鉛化炭素繊維の前駆体繊維(以下、前駆体繊維という)を得る。
紡糸方法には特に制限はないが、いわゆる溶融紡糸法が好ましく用いられる。より具体的には、例えば、口金から吐出したメソフェーズピッチをワインダーで引き取る通常の紡糸延伸法、熱風をアトマイジング源として用いるメルトブロー法、遠心力を利用してメソフェーズピッチを引き取る遠心紡糸法などが挙げられる。
これらの中でも前駆体繊維の形態制御、生産性の高さなどの理由からメルトブロー法を用いることが望ましい。
【0074】
以下、メルトブロー法による前駆体繊維の紡糸方法について詳述する。
紡糸ノズルの形状については特に制約なく、通常真円状のものが使用されるが、適時楕円などの異型形状のノズルを用いても何ら問題ない。
一般にノズル孔の長さLと孔径Dの比L/Dは2〜30程度であることが好ましい。L/Dが2未満では、ピッチ溶融時のせん断力を高めることが難しくなり、L/Dが30を越えると紡糸圧力を高める必要が生じ、装置強度の確保を含めて装置のサイズアップが必要になったり、紡糸孔の面密度を上げ難くなり、生産性が低下する等の問題がある。
【0075】
一般にメルトブロー法における紡糸安定性を確保する上では、ノズル孔を通過する際のピッチの溶融粘度はおよそ1〜100Pa・sの範囲にあることが好ましい。
溶融ピッチの溶融粘度が1Pa・s未満であると、繊維形状を維持することが難しくなる。一方、溶融粘度が100Pa・sを超えると、紡糸ノズルの耐圧を相当に高める必要が出てくる為、装置のコストパフォーマンスの上で望ましくない。
【0076】
尚、紡糸工程においては、ノズル孔径の変更、ノズルからの原料ピッチの吐出量の変更、あるいはブロー風による前駆体繊維のドラフト比を変更する等の手法により、前駆体繊維の繊維径の調整が可能である。
このうちドラフト比の変更は、100〜400℃に加温された毎分100〜20000mの線速度のガスを、ノズルから吐出された紡糸ピッチの細化点近傍に吹き付けることによって達成することができる。吹き付けるガスに特に制限は無いが、コストパフォーマンスと安全性の面から空気が望ましい。
【0077】
製造時の紡糸安定性、ならびに後述する不融化・炭化工程を含む生産性の観点において、前駆体繊維の繊維径は真円換算平均繊維径として、およそ5〜25μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは7〜20μmである。
【0078】
メルトブロー法により紡糸された前駆体繊維は、例えば、ベルト可動の金網等にウェブ状の形態で捕集される。ウェブの厚みや目付量、密度等は紡糸条件とベルト搬送速度の設定により任意に調整できる。また必要に応じ、クロスラップ等の手法によりウェブを積層させることも可能である。ウェブの目付量としては生産性及び工程安定性を考慮して、150〜1000g/mが好ましい。
このようにして得られた前駆体繊維によるウェブは、ベルト等で搬送され、不融化処理の工程に送られる。
【0079】
不融化処理は公知の方法で行うことができる。例えば、空気、或いはオゾン、二酸化窒素、窒素、酸素、ヨウ素、臭素を空気に添加したガスを用いた酸化性雰囲気下で実施できるが、安全性、利便性を考慮すると空気中で実施することが望ましい。尚、不融化処理は、バッチ処理、連続処理のどちらでも処理可能であるが、生産性を考慮すると連続処理が望ましい。
【0080】
不融化処理は、ピッチの軟化点温度よりも低温で処理することが好ましく、概ね150〜350℃の温度で、一定時間の熱処理を付与することで達成される。より好ましい温度範囲は160〜340℃である。
昇温速度は1〜10℃/分が好適に用いられ、連続処理の場合は任意の温度に設定した複数の反応室を順次通過させることで、上記昇温速度を達成できる。昇温速度のより好ましい範囲は、生産性及び工程安定性を考慮して、3〜9℃/分である。
【0081】
不融化処理の完了したウェブは、ベルト等で搬送され、炭化処理の工程に送られる。
炭化処理も公知の方法にて行うことができる。例えば、真空中、或いは窒素、アルゴン、クリプトン等の不活性ガスを用いた非酸化性雰囲気中にて、ウェブを600〜2500℃前後の温度に加熱、熱処理することにより行うことができる。
【0082】
炭化処理を施した炭素繊維内部では有意に黒鉛結晶構造の発達が見られ、一般には熱処理温度が高いほど、熱処理時間が長いほど、また繊維に与える総熱量が大きいほど、結晶構造は大きく発達する。ただし後述の高度黒鉛化処理の工程を実施する場合には、同工程で黒鉛結晶構造の著しい発達が期待できることから、炭化処理工程の熱処理温度、時間、総熱量等を適宜抑えても構わない。
【0083】
炭化処理の工程はコスト面を考慮すると常圧かつ窒素雰囲気下で行うことが望ましい。また炭化処理は、バッチ処理、連続処理のどちらでも可能であるが、生産性を考慮すれば連続処理が望ましい。
炭化処理の完了したウェブは、続いて粗粉砕工程を施すことが好ましい。粗粉砕工程とは各種の切断機およびまたは破砕・粉砕機等にウェブを投入し、ウェブの形状を破壊するとともに、ウェブ内部の炭素繊維を適当な繊維長を有する短繊維に切断する工程である。
【0084】
このように適当な長さの短繊維状に切断する目的は、後述の高度黒鉛化工程や湿式微粉砕工程における生産性、生産安定性、制御性等を高めることにある。ここで生産性を挙げた理由については、高度黒鉛化工程や湿式微粉砕工程が装置の関係上、バッチ処理で行われる場合が多い為、バッチ処理で一度に投入できる炭素繊維の量を増やす必要があり、これには一般にウェブ状であるよりは適当な繊維長の短繊維状である方が好ましいからである。すなわちバッチ処理用の容器や装置類に炭素繊維を充填する際の嵩密度を高めることが主目的であり、短繊維状の炭素繊維の嵩密度が少なくとも0.1g/cm以上、より好ましくは0.3g/cm以上、更に好ましくは0.5g/cm以上、最も好ましくは0.7g/cm以上となるように粗粉砕を行うことが好ましい。
【0085】
切断機としては、例えば、ギロチン式、1軸、2軸及び多軸回転式等のカッターが好適に使用することができる。また破砕・粉砕機としては、例えば、衝撃作用を利用したハンマ式、ピン式、ボール式、ビーズ式及びロッド式、粒子同士の衝突を利用した高速回転式、圧縮・引裂き作用を利用したロール式、コーン式及びスクリュー式等の破砕・粉砕機等が好適に使用される。また必要に応じ、切断と破砕・粉砕を多種複数機で構成することも可能である。
【0086】
短繊維状炭素繊維の嵩密度もしくは繊維長の制御に関しては、目的とする繊維長の範囲に対して好適な装置・機種もしくはその組み合わせ等を選定するとともに、ロータ・回転刃等の回転数、供給量、刃間クリアランス、系内滞留時間等を適宜調整することによって、好ましく制御することができる。
【0087】
尚、切断機や破砕・粉砕機のみでは繊維長制御が不十分となる場合には、更に分級工程を付け加えることができる。分級工程はすなわち篩い分けの操作を行う工程であり、所定以上もしくは所定以下の繊維長の成分を篩い分けにより効率的に分離する工程であり、振動篩い式、遠心分離式、慣性力式、濾過式等の各種の分級装置を用いて実施される。
【0088】
粗粉砕工程を経た短繊維状の炭素繊維には、必要に応じ、炭素繊維内部の黒鉛結晶構造を更に大きく成長させる目的で、より高温の熱処理を施す高度黒鉛化処理の工程を行うことが好ましい。高度黒鉛化処理の工程は具体的には、例えば、アチソン炉、電気炉等を用い、真空中、あるいは窒素、アルゴン、クリプトン等の不活性ガスを用いた非酸化性雰囲気下等で、2500〜3500℃前後で熱処理を施す工程である。
【0089】
[ポリカーボネート樹脂の開示]
本発明の光透過性樹脂層、および/または熱伝導性樹脂層には、上述のとおり特にポリカーボネート樹脂、なかでも芳香族ポリカーボネートや脂肪族環などの共重合成分を含むような共重合体ポリカーボネートを用いる事が好ましい。
【0090】
ポリカーボネート樹脂としては、二価フェノールとカーボネート前駆体を反応させて得られる芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイドおよびビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。好ましい二価フェノールはビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでもビスフェノールAが特に好ましい。
【0091】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0092】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を反応させて芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するに当たり、二価フェノールは単独または2種以上を使用することができ、また芳香族ポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、2種以上の芳香族ポリカーボネート樹脂の混合物であってもよい。また、必要に応じて触媒、分子量調節剤、酸化防止剤等を使用してもよい。
【0093】
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量については、12000〜26000前後のものが好ましい。比粘度(ηsp)として表現すれば、例えば二価フェノールとしてビスフェノールA、カーボネート前駆体としてホスゲンを用いて芳香族ポリカーボネート樹脂を得た場合、濃度0.7g/dl塩化メチレン溶液により温度20℃で測定した比粘度(ηsp)が0.15〜1.5のもの、より好ましくは0.2〜0.8のものが好ましい。
【0094】
[照明装置への応用]
本発明の複合中空パイプは、内部にLED等の光源を有するパイプ状の照明装置に、好ましく応用される。図15〜17にこのような利用の一例を例示したが、LED素子の実装基板の全体もしくは一部が、熱伝導樹脂層に直接接触もしくは接着剤、粘着剤等を介して接触するような構造を取る事により、LED素子の発熱が実装基板を介して、熱伝導樹脂層に効率的に伝熱する事が可能になる。
【0095】
尚、これらの構造設計は、LED素子実装基板の形状、LED素子その他の実装部品の配置を考慮して行う事が好ましく、その構造設計に応じ、光透過性樹脂層や熱伝導樹脂層の形状(断面形状)を適宜変更する事ができる。
これら実装基板は熱伝導性樹脂層上に配置される事が好ましく、かつ両者の界面に空気等の隙間の介在が無い事が望まれる。
【0096】
実装基板を熱伝導性樹脂層上に配置する方法として、例えば、実装基板を中空パイプの端部から内部にスライドさせながら導入する方法があるが、この場合、図13に例示したような実装基板の位置固定の為のガイド形状(例えば爪状の構造体)をあらかじめ一括成型で設けておく事が好ましい。この爪状構造体はパイプ部分を構成する光透過性樹脂を用いて、パイプ部分と一括作成する事が好ましい。爪状構造体の長さは1〜4mm程度とする事が好ましい。
これらガイド形状(爪状構造体)と熱伝導性樹脂層との間に実装基板が挟まれて配置される事により、実装基板の位置決めが簡単になり、また実装基板と熱伝導性樹脂層との面接触が安定に確保できる。
【0097】
また実装基板と熱伝導性樹脂層の間にあらかじめ適当なグリスや液体接着剤などを塗布しておく事により、実装基板をスライド導入する際に界面に空気を噛み込まないようにする事ができる。また更には熱伝導性樹脂層や実装基板の微小な表面凹凸にこれらの液体が充填される事により、界面での空気層の介在をより低減する事が可能になる。尚、これらグリス、液体接着剤は好ましくは熱伝導率1W/mK以上のものを選択すると良い。また実装基板や熱伝導性樹脂層の表面に幅、深さとも0.5mm前後の微細な溝をあらかじめ形成しておき、これら液体が溝の中に充填されるようにしておくと、表面張力によって、グリスや液体接着剤が溝内から界面全体に薄く均一な厚みで濡れ広がりやすくなり、より均一な界面接触状態が安定に得られ、好ましい場合がある。
【0098】
また実装基板を熱伝導性樹脂層上への固定に関しては、この他に、粘着シートを介して固定する方法も好ましく挙げられる。粘着シートを用いた固定の場合、実装基板をパイプ内に導入する前にあらかじめ、実装基板の少なくとも一部分に粘着シートを貼り付けておき、実装基板を熱伝導性樹脂層上に導入した後、所定の位置で圧着すれば良い。尚、実装基板が幾分の反りを有しているような場合には、実装基板の反りを補正し、圧着時の面圧を一定にする目的で適当な治具を用いる事も好ましい。
【0099】
粘着シートはアクリル系、シリコーン系等の粘着性樹脂をシート化したものが例示され、より好ましくはそれらの樹脂内に熱伝導性フィラーを混合してなる熱伝導性の粘着シートを用いる事が好ましい。
【0100】
ところで本発明の複合中空パイプの端部は開口部となるが、照明装置として利用する場合にはこの開口部を封止する必要が出てくる。
この目的には、適当な樹脂板を中空パイプの端部に接着固定する方法、中空パイプに差し込み固定可能な樹脂成型キャップ等を用いる方法が挙げられる。この封止部は電源配線が中を通過したり、もしくはジョイント部としての役割を持たせるのが通例であり、機械的強度、電気的信頼性に優れた材料を用いる事が好ましい。樹脂成形キャップを用いる場合、図20に示すような内部にOリング等のパッキン構造を組み合わせて作り込んだ樹脂成型キャップ等を用いる事も好ましい。
【0101】
尚、本発明の複合中空パイプ内部には、LED等光源デバイスの実装基板を配置する以外に、それらデバイス駆動用の電源回路(AC/DC変換回路、AD変換回路、変圧回路、定電流回路、過電流保護回路、間欠点灯用回路、調光制御用回路等)を実装した基板を設けても構わない。またLEDの温度を測定するセンサーとLED温度が所定範囲の温度になるようにLEDへの入力電力を自動コントロールする制御回路を組み合わせて設けても良い。
【実施例】
【0102】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。本発明はこれにより何等限定を受けるものではない。
【0103】
(1)炭素繊維の平均繊維径:
JIS R7607に準じ、光学顕微鏡下でスケールを用いて60本の炭素繊維の繊維径を真円換算平均繊維径として測定し、その平均値から求めた。
【0104】
(2)炭素繊維の繊維径の変動係数(CV値):
前記60本の炭素繊維の繊維径測定値の標準偏差をその平均値で除した値の百分率として求めた。
【0105】
(3)炭素短繊維の平均繊維長:
光学顕微鏡下、測長器を用いて2000本の炭素短繊維を測定し(10視野、200本ずつ測定)、その個数平均繊維長として求めた。尚、倍率は測定する繊維長に応じて適宜調整した。
【0106】
(4)炭素繊維の断面構造の観察
走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジー製S−2400)を用いて観察を行った。
【0107】
(5)炭素繊維の真密度:
浮沈法を用いて測定した。即ち、シリンダー内に比重2.17(g/cm)のジブロモエタンと比重2.89(g/cm)のブロモホルムの混合溶液を作成し、25±0.2℃の温度にコントロールする。上記混合溶液に炭素短繊維を浸析させ、1.3kPaで3分間保持した後、炭素短繊維が混合液の中央に来るまでかき混ぜる。10分後、炭素短繊維が浮上するようであればジブロモエタンを追加し、沈むようであればブロモホルムを滴下する。この操作を炭素短繊維が静止するまで繰り返し、静止の後、その混合液体の密度を比重浮ひょうで測定し、炭素繊維の真密度とした。
【0108】
(6)黒鉛結晶の結晶子サイズ、面間隔:
X線回折法にて求め、黒鉛結晶の六角網面の厚み方向に由来する結晶子サイズ(Lc)と黒鉛結晶の面間隔(d002)は(002)面からの回折線を用いて求め、六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズ(La)は(110)面からの回折線を用いて求めた。
尚、X線回折測定結果からのデータ解析と数値算出方法は学振法に準拠して実施した。
【0109】
(7)炭素繊維の熱伝導率、電気比抵抗値:
炭素繊維の粗粉砕処理を実施せず、炭化処理工程後もしくは高度黒鉛化処理工程後のウェブから単糸状の炭素繊維をサンプルとして抜き取って、以下の要領で測定を行った。
すなわち前記でサンプルとして抜き取った繊維を平面上に固定した後、繊維上の所定の間隔をもって測定用の一対の端子部を設け、両端子間の電気比抵抗を測定する。尚、端子部となる繊維部分には銀ペーストを塗り、接触抵抗を低減するとともに、電気比抵抗の測定は四端子法をもって行った。
このようにして炭素繊維の繊維軸方向の電気比抵抗率を測定した後、特開平11−117143号公報に開示されている熱伝導率と電気比抵抗との関係を表す下記式より熱伝導率を求めた。
K=1272.4/ER−49.4
ここで、Kは炭素繊維の熱伝導率(単位:W/(m・K))、ERは炭素繊維の電気比抵抗(単位:μΩ・m)を表す。
【0110】
(8)樹脂層の熱伝導率:
別途、50mm×90mm×2mm厚の板状に射出成型し、本成型板から測定用の試料片を切り出し、レーザーフラッシュ法(NETZSCH製LFA−457)を用いて、サンプルの面内方向の熱伝導率を測定した。
尚、面内方向の測定に関しては、前記成型板をまず2mm×10mm×2mm厚で切り出し、この試料片を5枚重ねる事により、測定に必要なサイズである10mm×10mm×2mm厚の試料片を作成して測定を行った。
【0111】
(9)樹脂層の曲げ弾性率:
ISO 178に準拠して測定を行った。
【0112】
(10)光透過性樹脂層の光透過率:
一辺150mm、厚み3mmの試験片を用い、村上色彩技術研究所(株)製のヘーズメーターHR−100を使用して、その厚み方向の全光透過率をASTM D1003に従い測定した。
【0113】
(11)光透過性樹脂層の分散度:
一辺150mm、厚み3mmの試験片を用い、日本電色工業(株)製の分散度測定計を使用して測定した。測定方法を図18に示した。尚、分散度とは図18において光線を上方から垂直に試験片面に当てたときγ=0度のときの透過光量を100とした場合、その透過光量が50になるときのγの角度をいう。
【0114】
(異方性ピッチ系黒鉛化炭素短繊維の作成)
縮合多環炭化水素化合物よりなるピッチを主原料とした。光学的異方性割合は100%、軟化点が288℃であった。335℃で溶融したピッチを、直径0.2mmφの孔の口金を使用し、スリットから加熱空気を毎分10000mの線速度で噴出させて、溶融ピッチを牽引して、メルトブロー法により、平均繊維径が約11.0μmの炭素繊維前駆体を作製した。
本紡糸における紡糸ノズルのL/Dは10であり、温度335℃、せん断速度6000s−1における紡糸時のピッチの溶融粘度は10.5Pa・sであった。
得られた炭素繊維前駆体を多孔ベルト上に捕集し、さらにクロスラッパーで目付量が350g/mとなるように調整し、炭素繊維前駆体ウェブを得た。
次に炭素繊維前駆体ウェブを空気中で170℃から290℃まで平均昇温速度4℃/分で昇温して不融化処理を行った後、引き続いて窒素雰囲気中800℃で炭化処理を施し、炭化繊維ウェブを得た。
この後、この炭化繊維ウェブを粗粉砕処理し、平均繊維長約200μmの炭化繊維粗粉砕物を得た。
この炭化繊維粗粉砕物について、高度黒鉛化処理として、非酸化性雰囲気とした電気炉内で3100℃の熱処理を施し、目的とする黒鉛化炭素短繊維を作成した。
このようにして得られた黒鉛化炭素短繊維の平均繊維長は8.0μmであり、炭素繊維の真比重は2.20g/cmであり、黒鉛の六角網面の厚み方向に由来する結晶子サイズ(Lc)は44nm、六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズ(La)は106nm。また黒鉛結晶の面間隔(d002)は0.3365nmであった。
更に炭素繊維の電気比抵抗は1.6μΩ・mであり、熱伝導率は750W/(m・K)であった。
【0115】
(熱伝導性樹脂の作成)
このようにして作成した異方性ピッチ系黒鉛化炭素短繊維フィラー40重量部と、芳香族ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製パンライトL−1225、ηsp=0.41)60重量部とを溶融混練して、熱伝導性樹脂Aを得た。
また更には、異方性ピッチ系黒鉛化炭素短繊維フィラー45重量部と、芳香族ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製パンライトL−1225、ηsp=0.41)55重量部とを溶融混練して、熱伝導性樹脂Bを得た。
該熱伝導性樹脂A、Bの熱伝導率はそれぞれ6.2W/m・K、8.3W/m・K、曲げ弾性率はそれぞれ11.5MPa、13.1MPaであった。
【0116】
(光透過性樹脂の作成)
芳香族ポリカーボネート樹脂95重量部(帝人化成社製パンライトL−1225、ηsp=0.41)、炭酸カルシウム1重量部(シプロ化成(株)製シプロンA 重量平均粒子径10μm)、ガラス短繊維4重量部(日東紡績(株)製PFE−301 平均直径9μm、平均長さ40μm)とを溶融混練し、光拡散性を有する光透過性樹脂Aを得た。
また芳香族ポリカーボネート樹脂90重量部(帝人化成社製パンライトL−1225、ηsp=0.41)、炭酸カルシウム5重量部(シプロ化成(株)製シプロンA 重量平均粒子径10μm)、ガラス短繊維5重量部(日東紡績(株)製PFE−301 平均直径9μm、平均長さ40μm)とを溶融混練し、光拡散性を有する光透過性樹脂Bを得た。
また芳香族ポリカーボネート樹脂80重量部(帝人化成社製パンライトL−1225、ηsp=0.41)、炭酸カルシウム10重量部(シプロ化成(株)製シプロンA 重量平均粒子径10μm)、ガラス短繊維10重量部(日東紡績(株)製PFE−301 平均直径9μm、平均長さ40μm)とを溶融混練し、光拡散性を有する光透過性樹脂Cを得た。
光透過性樹脂A、B、Cの全光透過率はそれぞれ78.5%、48.5%、38.8%であり、分散度はそれぞれ25度、58度、64度であった。
【0117】
(LED実装基板の仕様)
LED実装基板としては、三層CCLフレキシブル基板の片面に、三菱オスラム社製の白色LED素子(出力1W)を20mm間隔で一方向にアレー状に実装したものを用いた。
すなわち厚み50μmのポリイミドフィルム、厚み20μmのエポキシ系接着層、厚み32μmの圧延銅を積層してなる三層CCLフレキシブル基板の片面にLEDを実装し、LED実装面の反対側には50μm厚の熱伝導性両面アクリル粘着シートを介して1mm厚のアルミ板を貼り付けた構成を有するアルミ複合基板(以下、LED実装基板という)を用いた。
尚、実施例、比較例において、LED素子の放熱状況を比較する為に、LED素子直下の温度測定を行った。すなわち三層フレキシブル基板と熱伝導性両面アクリル粘着シートとの界面で、かつLED素子の実装部直下の数箇所に、厚み100μmの薄膜熱電対(安立計器製)を差し込んで測定を行った。
【0118】
[実施例1]
前記熱伝導性樹脂Aと光透過性樹脂Aからなる複合中空パイプを作成した。すなわち断面構造は図5に示す形状とし、パイプの外径は20mm、長さは680mmとし、パイプ外周の全表面積における光透過性樹脂層の面積比率は65%、熱伝導性樹脂層の面積比率は35%、光透過性樹脂層の平均肉厚は1.5mm、熱伝導性樹脂層の平均肉厚は3.5mmとした。
本パイプの作成には、図22に模式的に示す、二色押し出し成型装置を用いた。すなわち熱伝導性樹脂Aと光透過性樹脂Aを別々の押し出し装置から溶融押し出し、ヒートダイス内で合流せしめ、溶融接着を進行させながら所望の形状に押出成形を完了させた。
このとき図22中67の押出機は据え置き型単軸フルフライト式押出機を用いたが、図22中68の押出機は移動式昇降機能付きの単軸フルフライト押出機を用いた。その理由として移動式昇降機能付きの単軸フルフライト押出機の場合、金型とそれぞれの押出機を組付ける際の位置決めが容易であることが挙げられる。
また金型に流入する樹脂の方向は、ひとつは後方から。もうひとつは上方からとしている。ただし移動・昇降機能付き押出機から流入せしめる樹脂の方向は上方からのみに限定されるものではなく後方または側面から流入させても良い。
【0119】
押出機設定条件として再重要なパラメーターとしては熔融樹脂吐出量と熔融樹脂温度の2点が挙げられる。まず、それぞれの押出機から吐出される単位時間当たりの樹脂重量は均一にする必要がある。これは押出機スクリュー回転数を一定にすること、および押出機スクリュー形状によって得られるが、今回はポリカーボネート樹脂専用のスクリューを用いることで吐出量の安定性を得た。
また熔融樹脂温度を一定に保つことはヒーター温度調節機のPID制御機能によって得た。特に今回用いた熱伝導性樹脂Aと光透過性樹脂Aは同一の温度では熔融粘度に著しい差が見られる。熱伝導性樹脂Aは高い熔融粘度に対し、光透過性樹脂Aは低い熔融粘度を持つ。非結晶性樹脂であるポリカーボネート樹脂の特性として、熔融粘度は熔融温度に依存し温度が高くなると下がるということがあるが、今回はこの特性を利用し光透過性樹脂Aの熔融温度に対し熱伝導性樹脂Aの熔融温度を高くすることによってできるだけ熔融粘度を近づけた。このとき熔融粘度の差はMI値で4以下が好ましいが実際の成形では2以下であった。
このようにヒートダイス内で合流、溶融接着された樹脂を熔融した状態でサイジングダイス内に引き込んだ。サイジングダイスは樹脂ガラス転移温度以下に設定しサイジングダイス内面の形状に賦形することにより中空パイプ形状となる。さらに水槽内において、引き込まれた中空パイプに残っている熱量を、冷却水を噴霧することによって除去した。このとき冷却水は噴霧する方法もあるが、水槽に水をためその中を通過させる方法もある。
【0120】
次に水槽から出た中空パイプをベルト式サーボモーター直駆動式引取機により引き取った。このとき引取速度を一定にすることが重要である。2台の押出機より押出される樹脂の量とこの引取機の速度のバランスによって中空パイプの厚みが制御できる。
また押出量の若干のバラツキを補正する目的でエッジコントローラという設備を用い引取機の速度を自動制御することもある。
エッジコントローラーとは、ヒートダイスとサイジングダイスの空間に設置し熔融樹脂のたれ加減を感知するセンサーでこの変異量を引取機にフィードバックし速度を自動制御せしめるものである。引取機・押出機それぞれにフィードバックすることが出来るがリニアに反応させる目的で引取機側を制御する方が好ましい。今回は樹脂吐出量のバラツキが製品要求精度と比較し大きくないため使用しなかった。
【0121】
最後に、自動切断機によって指定寸法に自動切断することにより複合中空パイプ製品を得た。
尚、本パイプには、LED実装基板の機械的固定を目的に、光透過性樹脂Aによる肉厚1.5mm、長さ3mmの爪部形状を設けた。(すなわち断面構造は図13に示す形状である。)
アルミ面側に市販の熱伝導性グリスを塗ったLED実装基板を、複合中空パイプの端部より内部にスライド挿入し、熱伝導性樹脂層の上に積層固定し、パイプの両端部にポリカーボネート樹脂製キャップをはめ込んで封止して、LED照明装置を作成した。このLED照明装置の断面模式図を図15に示す。
本LED照明装置において、各LED素子に150mAの電流を流した後、30分間経過時のLED素子直下の温度は平均63℃であった。また本LED照明装置ではパイプ長さ方向の反りは殆ど観られず、照明装置は非常に軽量であった。
【0122】
[実施例2]
実施例1において熱伝導性樹脂Aの代わりに熱伝導性樹脂Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合中空パイプならびにLED照明装置を作成した。
このLED照明装置において、各LED素子に150mAの電流を流した後、30分間経過時のLED素子直下の温度は平均61℃であった。また本LED照明装置でもパイプ長さ方向の反りは殆ど観られず、照明装置は非常に軽量であった。
【0123】
[実施例3]
前記熱伝導性樹脂Aと光透過性樹脂Cからなる複合中空パイプを作成した。すなわち断面構造は図8に示す形状とし、パイプの外径は32mm、長さは680mmとし、パイプ外周の全表面積において光透過性樹脂層が単独で存在している部分の面積比率は60%、残る40%の面積は光透過性樹脂層を外層、熱伝導性樹脂層を内層として積層形成されている。光透過性樹脂層が単独で存在している部分の平均肉厚は1.5mm、熱伝導性樹脂層と積層されている部分の光透過性樹脂層の平均肉厚は1mm、最薄部の肉厚を0.8mmとした。また熱伝導性樹脂層の平均厚みは5mmとした。
本パイプの作成にも実施例1と同様の二色押し出し成型装置を用いた。すなわち熱伝導性樹脂Aと光透過性樹脂Cを別々の押し出し装置から溶融押し出し、主たる押出機のダイス内で合流せしめ、溶融接着を進行させながら所望の形状に押出成形を完了させた。
また本パイプにも、LED実装基板の機械的固定を目的に、光透過性樹脂Cによる肉厚1.5mm、長さ3mmの爪部形状を設けた。
【0124】
実施例1と同様に、アルミ面側に市販の熱伝導性グリスを塗ったLED実装基板を、複合中空パイプの端部より内部にスライド挿入し、熱伝導性樹脂層の上に積層固定し、パイプの両端部にポリカーボネート樹脂製キャップをはめ込んで封止して、LED照明装置を作成した。このLED照明装置の断面模式図を図16に示す。
各LED素子に150mAの電流を流した後、30分間経過時のLED素子直下の温度は平均62℃であった。また本LED照明装置でもパイプ長さ方向の反りは殆ど観られず、照明装置は非常に軽量であった。
また更には、光透過性樹脂層の光散乱性に起因して、20mm間隔で並べたLED素子の光スポットがほぼ消失し、均一性の高い面照明、線状照明として利用が可能であった。
【0125】
[実施例4]
前記熱伝導性樹脂Aと光透過性樹脂Bからなる複合中空パイプを作成した。すなわち断面構造は図11に示す形状とし、パイプの外径は39mm、長さは1160mmとし、パイプ外周の全表面積における光透過性樹脂層の面積比率は53%、熱伝導性樹脂層の面積比率は47%とした。
光透過性樹脂層の平均肉厚は1.5mm、熱伝導性樹脂層の平均厚みは4.5mmで最薄部の肉厚を2mmとした。
本パイプの作成にも実施例1と同様の二色押し出し成型装置を用いた。すなわち熱伝導性樹脂Aと光透過性樹脂Cを別々の押し出し装置から溶融押し出し、主たる押出機のダイス内で合流せしめ、溶融接着を進行させながら所望の形状に押出成形を完了させた。
【0126】
さて本実施例4では、LED実装基板のアルミ面は、両端5mm幅の部分が熱伝導性樹脂層と直接接するようになっており、この接触部分には50μm厚みの熱伝導性アクリル粘着シートをあらかじめ貼り付けておく。そして、この粘着シートを介して、LED実装基板を熱伝導性樹脂層上の所定の位置に圧着固定し、パイプの両端部にポリカーボネート樹脂製キャップをはめ込み、接着封止して、LED照明装置を作成した。このLED照明装置の断面模式図を図17に示す。
各LED素子に150mAの電流を流した後、30分間経過時のLED素子直下の温度は平均63℃であった。また本LED照明装置でもパイプ長さ方向の反りは殆ど観られず、照明装置は非常に軽量であった。
また更には、光透過性樹脂層の光散乱性に起因して、20mm間隔で並べたLED素子の光スポットがほぼ消失し、均一性の高い面照明、線状照明として利用が可能であった。
【0127】
[比較例1]
実施例1、2との比較として、光透過性樹脂Aを用い、パイプ外周の全表面が肉厚1.5mmの光透過性樹脂層のみからなる、図1の模式図に表される外形20mmの中空パイプを作成した。
実施例と同じLED実装基板を用いて、LED照明装置を作成し、各LED素子に150mAの電流を流した後、30分間経過時のLED素子直下の温度は平均72℃であり、実施例1、2に比較して有意に高い温度となった。また本LED照明装置では自重に起因したパイプ長さ方向に有意な反りが認められた。
【0128】
[比較例2]
実施例3との比較として、光透過性樹脂Cを用い、パイプ外周の全表面が肉厚1.5mmの光透過性樹脂層のみからなる、図1の模式図に表される外形32mmの中空パイプを作成した。
実施例と同じLED実装基板を用いて、LED照明装置を作成し、各LED素子に150mAの電流を流した後、30分間経過時のLED素子直下の温度は平均70℃であり、実施例3に比較して有意に高い温度となった。また本LED照明装置では自重に起因したパイプ長さ方向に有意な反りが認められた。
【0129】
[比較例3]
実施例4との比較として、光透過性樹脂Bを用い、パイプ外周の全表面が光透過性樹脂層のみからなる、図1の模式図に表される外形39mmの中空パイプを作成した。
実施例と同じLED実装基板を用いて、LED照明装置を作成し、各LED素子に150mAの電流を流した後、30分間経過時のLED素子直下の温度は平均69℃であり、実施例4に比較して有意に高い温度となった。また本LED照明装置では自重に起因したパイプ長さ方向に有意な反りが認められた。
【符号の説明】
【0130】
1、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、32、37、42、47、53 光透過性樹脂層
2、5、31、36、41、46、55 LED素子
3、6、33、38、43、48、54 LED実装用基板
7 金属ヒートシンク
9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、35、40、45、50、58 熱伝導性樹脂層
28、30 実装基板固定用ガイド構造(爪状構造体)
29 ガイド構造(爪状構造体)の長さ
34、39、44、49、56 低熱抵抗インターフェイス材
51 配線
52 コネクタ
57、60 樹脂成型キャップ
59 パッキン構造(Oリング等)
61 分散度測定用光源
62 入射光(垂直入射光)
63 光透過性樹脂層によるシート
64 出射光(散乱光)
65 第一の成型材料(例えば熱伝導性樹脂)用の除湿エアー循環式ホッパードライヤー
66 第二の成型材料(例えば光透過性樹脂)用の除湿エアー循環式ホッパードライヤー
67 単軸フルフライト押出機
68 単軸フルフライト押出機(移動・昇降機能付き)
69 ヒートダイス
70 サイジングダイス
71 水槽
72 ベルト式サーボモーター直駆動式引取機
73 2色中空パイプ製品(切断前)
74 切断機
75 2色中空パイプ製品(切断後)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状が相似形である1次元中空パイプであって、光透過率が35%以上の樹脂または樹脂組成物からなる光透過性樹脂層と、2W/m・K以上の熱伝導率を有する樹脂組成物からなる熱伝導性樹脂層とを組み合わせて構成される複合中空パイプ。
【請求項2】
複合中空パイプの外周面において、外周面の全表面積に対し、表面積の40〜80%が光透過性樹脂層で構成され、表面積の20〜60%が熱伝導性樹脂層を少なくとも含んで構成されている事を特徴とする請求項1に記載の複合中空パイプ。
【請求項3】
複合中空パイプ外周面が光透過性樹脂層で構成され、外周面の面積20〜60%は内周に熱伝導性樹脂層を有して構成されている請求項1に記載の複合中空パイプ。
【請求項4】
熱伝導樹脂性層の外周側に、平均肉厚0.03〜3mmの熱伝導性樹脂層とは別種の樹脂層が積層されてなる請求項1〜3のいずれに記載の複合中空パイプ。
【請求項5】
光透過性樹脂層と熱伝導性樹脂層が溶融接合により一体形成されている事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合中空パイプ。
【請求項6】
光透過性樹脂層が、少なくとも、光拡散性フィラーを0.5〜40重量%の範囲で含む樹脂組成物からなり、厚み3mmのシートに成形したときのシートの全光線透過率が35%以上であり、分散度が20度以上である事を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合中空パイプ。
【請求項7】
熱伝導性樹脂層は、少なくともマトリックスとなる樹脂と熱伝導性フィラーとを含み、熱伝導性フィラーは20〜70重量%の範囲である樹脂組成物から構成されている事を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複合中空パイプ。
【請求項8】
熱伝導性フィラーは、少なくとも、黒鉛結晶の六角網面の厚み方向に由来する結晶子サイズ(Lc)が少なくとも20nm以上の異方性ピッチ系黒鉛化炭素短繊維である事を特徴とする請求項7に記載の複合中空パイプ。
【請求項9】
光透過性樹脂層を構成する樹脂が熱可塑性樹脂からなる事を特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の複合中空パイプ。
【請求項10】
熱伝導性樹脂層を構成する樹脂が熱可塑性樹脂からなる事を特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の複合中空パイプ。
【請求項11】
光透過性樹脂層のマトリックス樹脂が、ポリカーボネート類もしくはその重合体からなる熱可塑性樹脂である事を特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の複合成型パイプ。
【請求項12】
熱伝導性樹脂層のマトリックス樹脂が、ポリカーボネート類もしくはその重合体からなる熱可塑性樹脂である事を特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の複合成型パイプ。
【請求項13】
光透過性樹脂層のマトリックス樹脂と、熱伝導性樹脂層のマトリックス樹脂とが、同種もしくは互いに相溶性を有する樹脂からなる事を特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の複合中空パイプ。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の複合成形パイプの熱伝導性樹脂層の少なくとも一部に、LED素子の実装基板を積層配置して、線状もしくは面状の光源とした事を特徴とするLED照明装置。
【請求項15】
少なくとも、光透過性を有する熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物と、熱伝導性を有する熱可塑性樹脂組成物とを、相異なる複数の押出機から溶融押し出しした後に、それら複数の押出機に接続された1基のダイス内で一体化させ、その後、冷却固化する工程を含む二色押し出し成型法によって製造される事を特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の複合中空パイプの製造方法。

【図21】
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【図22】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−214628(P2010−214628A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61219(P2009−61219)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】