説明

複合基板及びそれを用いた弾性波デバイス

【課題】弾性波デバイスに利用される複合基板であって、耐熱性の優れたものを提供する。
【解決手段】複合基板10は、弾性波を伝搬可能なタンタル酸リチウム(LT)からなる圧電基板12と、方位(111)面で圧電基板12に接合されたシリコンからなる支持基板14と、両基板12,14を接合する接着層16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合基板及びそれを用いた弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話等に使用されるフィルタ素子や発振子として機能させることができる弾性表面波デバイスや、圧電薄膜を用いたラム波素子や薄膜共振子(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)などの弾性波デバイスが知られている。こうした弾性表面波デバイスとしては、支持基板と弾性表面波を伝搬させる圧電基板とを貼り合わせ、圧電基板の表面に弾性表面波を励振可能な櫛形電極を設けたものが知られている。このように圧電基板よりも小さな熱膨張係数を持つ支持基板を圧電基板に貼付けることにより、温度が変化したときの圧電基板の大きさの変化を抑制し、弾性表面波デバイスとしての周波数特性の変化を抑制している。例えば、特許文献1には、圧電基板であるLT基板(LTはタンタル酸リチウムの略)と支持基板であるシリコン基板とをエポキシ接着剤からなる接着層によって貼り合わせた構造の弾性表面波デバイスが提案されている。こうした弾性表面波デバイスは、金ボールを介してフリップチップボンディングによってセラミック基板に搭載したあと樹脂で封入し、そのセラミック板の裏面に設けられた電極を鉛フリーのはんだを介してプリント配線基板に実装される。また、こうした弾性表面波デバイスは、金ボールの代わりに鉛フリーのはんだからなるボールを介してセラミック基板に実装することもある。この場合も、実装時には鉛フリーのはんだをリフロー工程で溶融・再凝固させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−150931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の弾性表面波デバイスでは、リフロー工程終了後に素子の割れが発生することがあり、生産時の歩留まりが悪いという問題があった。こうした問題が発生する原因は、圧電基板と支持基板との熱膨張係数差が大きく、リフロー工程の温度(260℃程度)に耐えられなかったと考えられる。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、弾性波デバイスに利用される複合基板であって、耐熱性の優れたものを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の複合基板は、
弾性波を伝搬可能な圧電基板と、
方位(111)面で前記圧電基板の裏面に有機接着層を介して接合され、該圧電基板よりも熱膨張係数の小さなシリコン製の支持基板と、
を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複合基板によれば、圧電基板がこの圧電基板よりも熱膨張係数の小さなシリコン製の支持基板と有機接着層を介して接合されているため、圧電基板の周波数温度特性の変動を有効に抑制することができる。また、支持基板が方位(100)面や方位(110)面で圧電基板に接合されたものと比べて耐熱性が高くなり、例えばこの複合基板を利用して作製した弾性表面波デバイスを実装基板に実装する際にリフロー工程を採用したとしても、リフロー時の温度条件(260℃程度)によって弾性表面波デバイスに割れが発生するのを有効に抑制することができる。このように耐熱性が高くなる理由は、支持基板が方位(111)面で圧電基板に接合されているため、熱が加わったときの熱応力がXYZ軸方向に3等分され、一つの分力が小さくなることによると考えられる。これに対し、支持基板が方位(100)面や方位(110)面で圧電基板に接合されている場合には、熱応力がX軸方向のみに加わったりXY軸方向に2等分されて加わったりするため、一つの分力が大きくなり、耐熱性が高くならないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の複合基板10の斜視図である。
【図2】実施例1の複合基板10の製造工程を模式的に示す説明図である。
【図3】実施例1の複合基板10を用いて作製した弾性表面波デバイス30の斜視図である。
【図4】弾性表面波デバイス30をセラミック基板40に搭載し樹脂で封入し、プリント配線基板60に実装した様子を示す断面図である。
【図5】ラム波素子70の断面図である。
【図6】ラム波素子の複合基板80の断面図である。
【図7】薄膜共振子90の断面図である。
【図8】薄膜共振子100の断面図である。
【図9】薄膜共振子100の複合基板110の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の複合基板は、弾性波を伝搬可能な圧電基板と、方位(111)面で前記圧電基板の裏面に有機接着層を介して接合され、該圧電基板よりも熱膨張係数の小さなシリコン製の支持基板と、を備えたものであり、弾性波デバイスに利用されるものである。
【0011】
本発明の複合基板において、圧電基板と支持基板との熱膨張係数差は10ppm/K以上であることが好ましい。この場合、両者の熱膨張係数差が大きいため加熱時に割れが発生しやすく、本発明を適用する意義が高いからである。
【0012】
本発明の複合基板において、圧電基板は、タンタル酸リチウム(LT)、ニオブ酸リチウム(LN)、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶、水晶又はホウ酸リチウムであることが好ましく、このうち、LT又はLNであることがより好ましい。LTやLNは、弾性表面波の伝搬速度が速く、電気機械結合係数が大きいため、高周波数且つ広帯域周波数用の弾性表面波デバイスとして適しているからである。また、圧電基板の主面の法線方向は、特に限定されないが、例えば、圧電基板がLTからなるときには、弾性表面波の伝搬方向であるX軸を中心に、Y軸からZ軸に36〜47°(例えば42°)回転した方向のものを用いるのが伝搬損失が小さいため好ましく、圧電基板がLNからなるときには、弾性表面波の伝搬方向であるX軸を中心に、Y軸からZ軸に60〜68°(例えば64°)回転した方向のものを用いるのが伝搬損失が小さいため好ましい。更に、圧電基板の大きさは、特に限定されないが、例えば、直径50〜150mm,厚さが0.2〜60μmである。
【0013】
本発明の複合基板において、支持基板は、シリコン製である。シリコンは、半導体デバイス作製用として最も実用化されている材料であるため、この複合基板を用いて作製した弾性表面波デバイスと半導体デバイスとを複合化しやすくなるからである。また、支持基板の大きさは、特に限定されないが、例えば、直径50〜150mm,厚さが100〜500μmである。また、支持基板の熱膨張係数は、圧電基板の熱膨張係数が13〜20ppm/Kの場合には、2〜7ppm/Kのものを用いるのが好ましい。
【0014】
本発明の複合基板において、圧電基板と支持基板は有機接着層を介して間接的に接合されている。両基板を有機接着層を介して間接的に接合する方法としては、以下の方法が例示される。すなわち、まず、両基板の接合面を洗浄し、該接合面に付着している不純物を除去する。次に、両基板の接合面の少なくとも一方に有機接着剤を均一に塗布する。その後、両基板を貼り合わせ、有機接着剤が熱硬化性樹脂の場合には加熱して硬化させ、有機接着剤が光硬化性樹脂の場合には光を照射して硬化させる。
【0015】
本発明の複合基板は、弾性波デバイスに用いられるものである。弾性波デバイスとしては、弾性表面波デバイスやラム波素子、薄膜共振子(FBAR)などが知られている。例えば、弾性表面波デバイスは、圧電基板の表面に、弾性表面波を励振する入力側のIDT(Interdigital Transducer)電極(櫛形電極、すだれ状電極ともいう)と弾性表面波を
受信する出力側のIDT電極とを設けたものである。入力側のIDT電極に高周波信号を印加すると、電極間に電界が発生し、弾性表面波が励振されて圧電基板上を伝搬していく。そして、伝搬方向に設けられた出力側のIDT電極から、伝搬された弾性表面波を電気信号として取り出すことができる。こうした弾性表面波デバイスは、例えばプリント配線基板に実装する際にはリフロー工程が採用される。このリフロー工程において、鉛フリーのはんだを用いた場合、弾性表面波デバイスは260℃程度に加熱されるが、本発明の複合基板を利用した弾性表面波デバイスは耐熱性に優れるため圧電基板や支持基板の割れの発生が抑制される。
【0016】
本発明の複合基板において、圧電基板は、裏面に金属膜を有していてもよい。金属膜は、弾性波デバイスとしてラム波素子を製造した際に、圧電基板の裏面近傍の電気機械結合係数を大きくする役割を果たす。この場合、ラム波素子は、圧電基板の表面に櫛歯電極が形成され、支持基板に設けられたキャビティによって圧電基板の金属膜が露出した構造となる。こうした金属膜の材質としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、金などが挙げられる。なお、ラム波素子を製造する場合、裏面に金属膜を有さない圧電基板を備えた複合基板を用いてもよい。
【0017】
本発明の複合基板において、圧電基板は、裏面に金属膜と絶縁膜を有していてもよい。金属膜は、弾性波デバイスとして薄膜共振子を製造した際に、電極の役割を果たす。この場合、薄膜共振子は、圧電基板の表裏面に電極が形成され、絶縁膜をキャビティにすることによって圧電基板の金属膜が露出した構造となる。こうした金属膜の材質としては、例えば、モリブデン、ルテニウム、タングステン、クロム、アルミニウムなどが挙げられる。また、絶縁膜の材質としては、例えば、二酸化ケイ素、リンシリカガラス、ボロンリンシリカガラスなどが挙げられる。
【0018】
本発明の複合基板の圧電基板及び支持基板に用いられる代表的な材質の熱膨張係数を表1に示す。
【0019】
【表1】

【実施例】
【0020】
[実施例1]
図1は、本実施例の複合基板10の斜視図である。この複合基板10は、弾性表面波デバイスに利用されるものであり、1箇所がフラットになった円形に形成されている。このフラットな部分は、オリエンテーションフラット(OF)と呼ばれる部分であり、弾性表面波デバイスの製造工程において諸操作を行うときのウエハ位置や方向の検出などに用いられる。本実施例の複合基板10は、弾性表面波を伝搬可能なタンタル酸リチウム(LT)からなる圧電基板12と、方位(111)面で圧電基板12に接合されたシリコンからなる支持基板14と、両基板12,14を接合する接着層16とを備えている。圧電基板12は、直径が100mm、厚さが30μm、熱膨張係数が16.1ppm/Kである。この圧電基板12は、弾性表面波の伝搬方向であるX軸を中心に、Y軸からZ軸に42°回転した、42°YカットX伝搬LT基板である。支持基板14は、直径が100mm、厚さが350μm、熱膨張係数が3ppm/Kである。したがって、両者の熱膨張係数差は13.1ppm/Kである。接着層16は、熱硬化性のエポキシ樹脂接着剤が固化したものであり、厚さが0.3μmである。
【0021】
こうした複合基板10の製造方法について、図2を用いて以下に説明する。図2は、複合基板10の製造工程を模式的に示す説明図(断面図)である。まず、支持基板14として、OFを有し、直径が100mm、厚さが350μm、面方位が(111)のシリコン基板を用意した。また、研磨前の圧電基板22として、OFを有し、直径が100mm、厚さが250μmの42°YカットX伝搬LT基板を用意した(図2(a)参照)。次いで、圧電基板22の裏面にスピンコートにより熱硬化性のエポキシ樹脂接着剤26を塗布し、支持基板14の表面に重ね合わせたあと180℃で加熱することによりエポキシ樹脂接着剤26を硬化させ、貼り合わせ基板(研磨前複合基板)20を得た。この貼り合わせ基板20の接着層16は、エポキシ樹脂接着剤26が固化してできたものである(図2(b)参照)。このときの接着層16の厚さは0.3μmであった。
【0022】
次いで、研磨機にて圧電基板22の厚さが30μmとなるまで研磨した(図2(c)参照)。研磨機としては、まず圧電基板22の厚みを薄くし、その後鏡面研磨を行うものを用いた。厚みを薄くするときには、研磨定盤とプレッシャープレートとの間に貼り合わせ基板20を挟み込み、その貼り合わせ基板20と研磨定盤との間に研磨砥粒を含むスラリ
ーを供給し、このプレッシャープレートにより貼り合わせ基板20を定盤面に押し付けながらプレッシャープレートに自転運動を与えて行うものを用いた。続いて、鏡面研磨を行うときには、研磨定盤を表面にパッドが貼られたものとすると共に研磨砥粒を番手の高いものへと変更し、プレッシャープレートに自転運動及び公転運動を与えることによって、圧電基板22の表面を鏡面研磨した。まず、貼り合わせ基板20の圧電基板22の表面を定盤面に押し付け、自転運動の回転速度を100rpm、研磨を継続する時間を60分として研磨した。続いて、研磨定盤を表面にパッドが貼られたものとすると共に研磨砥粒を番手の高いものへと変更し、貼り合わせ基板20を定盤面に押し付ける圧力を0.2MPa、自転運動の回転速度を100rpm、公転運動の回転速度を100rpm、研磨を継続する時間を60分として鏡面研磨した。この結果、研磨前の圧電基板22が研磨後の圧電基板12になり、複合基板10が完成した。
【0023】
複合基板10は、この後、一般的なフォトリソグラフィ技術を用いて、多数の弾性表面波デバイスの集合体としたあと、ダイシングにより1つ1つの弾性表面波デバイス30に切り出される。このときの様子を図3に示す。弾性表面波デバイス30は、フォトリソグラフィ技術により、圧電基板12の表面にIDT電極32、34と反射電極36とが形成されたものである。得られた弾性表面波デバイス30は、次のようにしてプリント配線基板60に実装される。即ち、図4に示すように、IDT電極32,34とセラミック基板40のパッド42,44とを金ボール46,48を介して接続したあと、このセラミック基板40上で樹脂50により封入する。そして、そのセラミック基板40の裏面に設けられた電極52,54とプリント配線基板60のパッド62,64との間に鉛フリーのはんだペーストを介在させたあと、リフロー工程によりプリント配線基板60に実装される。なお、図4には、はんだペーストが溶融・再固化したあとのはんだ66,68を示した。
【0024】
なお、複合基板10から、弾性表面波デバイス30の代わりに、図5(a)に示すラム波素子70を作製してもよい。ラム波素子70は、圧電基板12の表面にIDT電極72を有し、支持基板14にキャビティ74を設けて圧電基板12の裏面を露出させた構造を持つ。こうしたラム波素子70は、図5(b)に示すように圧電基板12の裏面にアルミニウム製の金属膜76を有していてもよい。この場合には、図6に示すように、圧電基板12の裏面に金属膜76を有する複合基板80を用いることになる。この複合基板80は、上述した複合基板10の製造方法(図2)において、圧電基板12の代わりに裏面に金属膜76を有する圧電基板12を用いれば製造することができる。
【0025】
また、図7に示すように、図5(a)と同じ構造で電極のみ、圧電基板12の表面及び裏面に作成した薄膜共振子90にも図6に示す複合基板80が適用できる。
【0026】
さらに、図8に示す薄膜共振子100を作成してもよい。薄膜共振子100は、圧電基板12の表面に電極102を有し、支持基板14と圧電基板12の裏面電極としての役割を果たす金属膜76との間にキャビティ104を設けた構造を持つ。キャビティ104は、絶縁膜106と接着層16を酸性液(例えば、フッ硝酸、フッ酸など)でエッチングして得られる。また、絶縁膜106の材質としては、例えば、二酸化ケイ素やリンシリカガラス、ボロンリンシリカガラスなどが挙げられる。ここでは、二酸化ケイ素を用いるものとする。更に、絶縁膜106の厚さは、特に限定するものではないが、0.1〜2μmである。この薄膜共振子100は、図9に示すように、圧電基板12の裏面に金属膜76及び絶縁膜106を有する複合基板110を用いて製造することができる。
【0027】
[比較例1]
支持基板14として、面方位が(100)のシリコン基板を用いた以外は実施例1と同様にして複合基板10を作製した。
【0028】
[比較例2]
支持基板14として、面方位が(110)のシリコン基板を用いた以外は実施例1と同様にして複合基板10を作製した。
【0029】
[耐熱性の評価1]
実施例1及び比較例1,2の複合基板10につき、加熱炉に入れて280℃まで昇温したときの様子を調べた。そうしたところ、実施例1の複合基板10では、280℃まで圧電基板12にも支持基板14にも割れが発生しなかった。一方、比較例1の複合基板10では、200℃からOFに対しほぼ平行方向に圧電基板12の割れが発生し、280℃では圧電基板12のほぼ全面に割れが発生した。また、比較例2の複合基板10では、250℃からOFに対しほぼ平行方向に圧電基板12の割れが発生し、280℃では圧電基板12のほぼ全面に割れが発生した。こうしたことから、実施例1の複合基板10は、比較例1,2と比べて格段に耐熱性が高いことがわかった。
【0030】
[実施例2]
支持基板14が厚さ250μmであり、接着層16がエポキシ樹脂接着剤26に代えてアクリル樹脂接着剤を固化してできた厚さ0.6μmの層である点以外は実施例1と同様にして複合基板10を100枚作製した。
【0031】
[比較例3]
支持基板14として、面方位が(100)のシリコン基板を用いた以外は実施例2と同様にして複合基板10を50枚作製した。
【0032】
[比較例4]
支持基板14として、面方位が(110)のシリコン基板を用いた以外は実施例2と同様にして複合基板10を50枚作製した。
【0033】
[耐熱性の評価2]
実施例2及び比較例3,4の複合基板10は、いずれも作製した全てについて割れは発生していなかった。これらの複合基板10を、加熱炉に入れて280℃まで昇温し、その後一時間にわたって280℃で加熱処理を行った。そうしたところ、実施例2の複合基板10では圧電基板12にも支持基板14にも割れやクラックは発生しなかった。一方、比較例3の複合基板10では、50枚全てについて圧電基板12に割れ又はクラックが発生していた。また、比較例4の複合基板10では、50枚のうち35枚について圧電基板12に割れ又はクラックが発生していた。こうしたことから、実施例2の複合基板10は、比較例3,4と比べて格段に耐熱性が高いことがわかった。
【0034】
[実施例3]
支持基板14が厚さ200μmであり、圧電基板12が厚さ20μmであり、接着層16がエポキシ樹脂接着剤26に代えてアクリル樹脂接着剤を固化してできた厚さ0.6μmの層である点以外は実施例1と同様にして複合基板10を100枚作製した。
【0035】
[比較例5]
支持基板14として、面方位が(100)のシリコン基板を用いた以外は実施例3と同様にして複合基板10を50枚作製した。
【0036】
[比較例6]
支持基板14として、面方位が(110)のシリコン基板を用いた以外は実施例3と同様にして複合基板10を50枚作製した。
【0037】
[耐熱性の評価3]
実施例3及び比較例5,6の複合基板10は、いずれも作製した全てについて割れは発生していなかった。これらの複合基板10を、加熱炉に入れて280℃まで昇温し、その後一時間にわたって280℃で加熱処理を行った。そうしたところ、実施例3の複合基板10では圧電基板12にも支持基板14にも割れやクラックは発生しなかった。一方、比較例5の複合基板10では、50枚全てについて圧電基板12に割れ又はクラックが発生していた。また、比較例6の複合基板10では、50枚のうち40枚について圧電基板12に割れ又はクラックが発生していた。こうしたことから、実施例3の複合基板10は、比較例5,6と比べて格段に耐熱性が高いことがわかった。
【0038】
[実施例4]
圧電基板12が36°YカットX伝搬LT基板であり、接着層16がエポキシ樹脂接着剤26に代えてアクリル樹脂接着剤を固化してできた厚さ0.6μmの層である点以外は実施例1と同様にして複合基板10を100枚作製した。
【0039】
[比較例7]
支持基板14として、面方位が(100)のシリコン基板を用いた以外は実施例4と同様にして複合基板10を50枚作製した。
【0040】
[比較例8]
支持基板14として、面方位が(110)のシリコン基板を用いた以外は実施例4と同様にして複合基板10を50枚作製した。
【0041】
[耐熱性の評価4]
実施例4び比較例7,8の複合基板10は、いずれも作製した全てについて割れは発生していなかった。これらの複合基板10を、加熱炉に入れて280℃まで昇温し、その後一時間にわたって280℃で加熱処理を行った。そうしたところ、実施例4の複合基板10では圧電基板12にも支持基板14にも割れやクラックは発生しなかった。一方、比較例7の複合基板10では、50枚全てについて圧電基板12に割れ又はクラックが発生していた。また、比較例8の複合基板10では、50枚のうち32枚について圧電基板12に割れ又はクラックが発生していた。こうしたことから、実施例4の複合基板10は、比較例7,8と比べて格段に耐熱性が高いことがわかった。
【0042】
[実施例5]
圧電基板12が47°YカットX伝搬LT基板であり、接着層16がエポキシ樹脂接着剤26に代えてアクリル樹脂接着剤を固化してできた厚さ0.6μmの層である点以外は実施例1と同様にして複合基板10を100枚作製した。
【0043】
[比較例9]
支持基板14として、面方位が(100)のシリコン基板を用いた以外は実施例5と同様にして複合基板10を50枚作製した。
【0044】
[比較例10]
支持基板14として、面方位が(110)のシリコン基板を用いた以外は実施例5と同様にして複合基板10を50枚作製した。
【0045】
[耐熱性の評価5]
実施例5及び比較例9,10の複合基板10は、いずれも作製した全てについて割れは発生していなかった。これらの複合基板10を、加熱炉に入れて280℃まで昇温し、その後一時間にわたって280℃で加熱処理を行った。そうしたところ、実施例5の複合基板10では圧電基板12にも支持基板14にも割れやクラックは発生しなかった。一方、比較例8の複合基板10では、50枚全てについて圧電基板12に割れ又はクラックが発生していた。また、比較例10の複合基板10では、50枚のうち38枚について圧電基板12に割れ又はクラックが発生していた。こうしたことから、実施例5の複合基板10は、比較例9,10と比べて格段に耐熱性が高いことがわかった。
【0046】
[実施例6]
圧電基板12が64°YカットX伝搬LN基板であり、接着層16がエポキシ樹脂接着剤26に代えてアクリル樹脂接着剤を固化してできた厚さ0.6μmの層である点以外は実施例1と同様にして複合基板10を100枚作製した。
【0047】
[比較例11]
支持基板14として、面方位が(100)のシリコン基板を用いた以外は実施例6と同様にして複合基板10を50枚作製した。
【0048】
[比較例12]
支持基板14として、面方位が(110)のシリコン基板を用いた以外は実施例6と同様にして複合基板10を50枚作製した。
【0049】
[耐熱性の評価6]
実施例6及び比較例11,12の複合基板10は、いずれも作製した全てについて割れは発生していなかった。これらの複合基板10を、加熱炉に入れて280℃まで昇温し、その後一時間にわたって280℃で加熱処理を行った。そうしたところ、実施例6の複合基板10では圧電基板12にも支持基板14にも割れやクラックは発生しなかった。一方、比較例11の複合基板10では、50枚全てについて圧電基板12に割れ又はクラックが発生していた。また、比較例12の複合基板10では、50枚のうち40枚について圧電基板12に割れ又はクラックが発生していた。こうしたことから、実施例6の複合基板10は、比較例11,12と比べて格段に耐熱性が高いことがわかった。
【0050】
[実施例7]
実施例6と同様にして複合基板10を50枚作製した。
【0051】
[比較例13]
支持基板14として、面方位が(111)のシリコン基板上に熱処理により厚さ0.5μmのSiO2層をつけたシリコン基板を使用し、接着層16で支持基板14と圧電基板12とを貼り合わせる代わりに真空中で接合面である圧電基板12の裏面とSiO2層の表面とにAr不活性ガスを照射することで圧電基板12と支持基板14とを直接接合した以外は実施例7と同様にして複合基板10を50枚作製した。
【0052】
[耐熱性の評価7]
実施例7及び比較例13の複合基板10は、いずれも作製した全てについて割れは発生していなかった。これらの複合基板10を、加熱炉に入れて300℃まで昇温し、その後一時間にわたって300℃で加熱処理を行った。そうしたところ、実施例7の複合基板10では圧電基板12にも支持基板14にも割れやクラックは発生しなかった。一方、比較例13の複合基板10では、50枚全てについて圧電基板12に割れ又はクラックが発生していた。こうしたことから、実施例7の複合基板10は、比較例13と比べて格段に耐熱性が高いことがわかった。
【符号の説明】
【0053】
10,80,110 複合基板、12 圧電基板、14 支持基板、16 接着層、20
貼り合わせ基板(研磨前複合基板)、22 圧電基板(研磨前)、26 エポキシ樹脂接着剤、30 弾性表面波デバイス、32,34 IDT電極、36 反射電極、40 セラミック基板、42,44 パッド、46,48 金ボール、50 樹脂、52,54
電極、60 プリント配線基板、62,64 パッド、66,68 はんだ、70 ラム波素子、72 IDT電極、74 キャビティ、76 金属膜、90,100 薄膜共振子、102 電極、104 キャビティ、106 絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性波を伝搬可能な圧電基板と、
方位(111)面で前記圧電基板の裏面に有機接着層を介して接合され、該圧電基板よりも熱膨張係数の小さなシリコン製の支持基板と、
を備えた複合基板。
【請求項2】
前記圧電基板は裏面に金属膜を有する、
請求項1に記載の複合基板。
【請求項3】
前記圧電基板は裏面に金属膜と絶縁膜を有する、
請求項1に記載の複合基板。
【請求項4】
前記圧電基板と前記支持基板との熱膨張係数差が10ppm/K以上である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合基板。
【請求項5】
前記圧電基板は、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶、水晶又はホウ酸リチウムからなる、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合基板。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合基板を用いて形成される弾性表面波フィルター。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合基板を用いて形成される弾性表面波レゾネーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−187373(P2010−187373A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5401(P2010−5401)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】