説明

複合材料およびこれらの使用

複合材料であって、下記の成分:(a)微小座屈およびキンクバンド形成に対して向上した抵抗を示す1番目のプレプレグ材料および(b)層間剥離に対して向上した抵抗を示す2番目のプレプレグ材料を含有して成る複合材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料である積層品のデザインおよびそれらを複雑で多様な高性能複合材用途で用いることに関する。好適な態様において、本発明は、最大限の切り欠き特性(高いOHCおよびFHC)、損傷許容性(CAI)および損傷抵抗(層間剥離面積および繊維破壊が小さいこと)が達成されるように調整することができる複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂マトリクス複材料は、飛行機構造用途などで金属に置き換わる高強度で低重量のエンジニアリング材料として用いるに適することが幅広く受け入れられている。そのような複合材料の製造は、熱硬化性もしくは熱可塑性樹脂マトリクスを染み込ませておいた高強度の強化用繊維、例えばガラス、グラファイト(炭素)、ホウ素、アラミドなどを含有して成る材料であるプレプレグを積層させることで実施可能である。そのような複合材料の重要な特性は強度と剛性が高くかつ重量が低いことである。
【0003】
重合体樹脂と強化用繊維の混合物を含有して成るプレプレグ材料組成物は、その成分である重合体樹脂と強化用繊維が個別の物理的および化学的特性を有することで特徴づけられ、その組成は特定用途の目的で選択可能である。典型的には、高い溶媒抵抗、熱サイクル抵抗などを与える熱硬化性樹脂マトリクス成分を存在させる。加うるに、高い度合のじん性などを与える熱可塑性樹脂成分を前記熱硬化性樹脂に添加してもよくかつ高い度合の剛性および強度を与える強化用繊維も存在させる。
【0004】
複合材料の製造は伝統的に硬化性樹脂マトリクス組成物を染み込ませておいた強化用繊維もしくは構造布で構成させた材料であるプレプレグを用いて行われる。所定複合材料を製造する時、プレプレグ材料のシートをレイアップ、鋳込み、硬化および積層に適した大きさに切断してもよい。プレプレグの特性および結果としてもたらされる複合材料の品質を調節することで、結果としてもたらされる複合材料が示す特性、例えばじん性、強度および柔軟性などを操作することができる。
【0005】
じん性を向上させる目的で添加剤を基礎熱硬化性樹脂マトリクス配合物に添加してもよい。適切な添加剤には、熱可塑性プラスチック、流動性改良剤、充填材などが含まれる。
【0006】
また、プレプレグ含浸用の熱可塑性樹脂に添加剤を添加することも可能である。そのような添加剤には、可塑剤、充填材、流動性改良剤などが含まれる。
【0007】
複合材料に関するデザインを行う時、考慮すべき複合材料を特徴づける応力の状態、形状および境界状態に応じて、いろいろなデザイン許容性が用いられる。そのような1つのデザイン許容性は切り欠き特性である。切り欠き特性は、そのデザインする構造物が穴を含有しかつ固定具が用いられる時に非常に重要である。切り欠き特性は、所定複合材料自身の荷重負担領域に穴を開けた後にその複合材料が荷重を担持する能力の尺度である。そのような切り欠き特性はフィルドホールテンション(Filled Hole Tension)およびフィルドホールコンプレッション(Filled Hole Compression)(FHT、FHC)およびオープンホールテンション(Open Hole Tension)およびオープンホールコンプレッション(Open Hole Compression)(OHT、OHC)と呼ばれる。そのような切り欠き特性は典型的に厚みが3mm以上の部分にとって重要なデザイン許容性である。
【0008】
引張り特性は一般に強化用繊維が示す特性の影響を受ける一方、圧縮特性は一般に樹脂
マトリクスばかりでなく強化用繊維と樹脂の間の繊維/マトリクス界面が示す特性の影響を受ける。
【0009】
複合材料である積層品に負荷が圧縮下でかかると微小座屈が起こる可能性がある。微小座屈は、複合材料に入っている強化用繊維が圧縮負荷下で座屈を起こした時に起こる現象である。
【0010】
微小座屈はいくつかの理由で特定の場所で始まる可能性があり、そのような理由には、強化用繊維の局所的不整合、強化用繊維の支援の不足、応力集中などが含まれる。微小座屈が始まると、それが複合材料全体に渡って広がることで損傷を受けた複合材料の帯(またキンクバンドとしても知られる)の形成がもたらされる可能性がある。微小座屈の一例を添付図の図1に示す。
【0011】
複合材料に関するデザインを行う時に広範に用いられる別のデザイン許容性は衝撃後圧縮強度(Compression Strength After Impact)(CAIまたはCSAI)である。CAIは、複合材料が損傷に耐える能力の尺度である。CAI測定試験では、複合材料に所定エネルギーの衝撃を与えた後に負荷を圧縮下で与える。衝撃後と圧縮試験前に損傷領域およびへこみの深さを測定する。この試験中、弾性不安定性が起こらないことを確保する目的で試験中の複合材料を拘束しそしてその複合材料の強度を記録する。
【0012】
当該技術分野で公知の使用可能な方策がいくつか存在する。じん性を向上させる手段を見つけだす開発が継続して行われているが、じん性を向上させることでCAIを改善する1つの方策は、粒子による強化、熱可塑性プラスチック、ゴム、コア−シェルゴムなどの粒子による強化、熱可塑性プラスチックのベールまたはフィルムまたは他の公知強化用材料を用いた層間強化による方策である。
【0013】
そのような1つの方策は、複合材料のCAIを改善する目的で不溶またはある程度可溶な粒子を用いることを伴う。しかしながら、従来技術には、OHCを向上させる目的で特定の特性を有する不溶またはある程度溶解する粒子を用いることは示されていない。具体的には、不溶またはある程度溶解する粒子を用いてCAIを向上させるようとする時に用いられた熱可塑性重合体は樹脂に可溶でありかつ硬化中に相分離を起こす。
【0014】
複合材料が示すCAIを向上させようとする別の公知方策は、いろいろなプレプレグ材料層の間の層間領域を改変する目的で粒子を用いる方策である。その粒子によって複合材料が示す層間じん性が改善されることで、衝撃によって誘発される層間剥離領域の減少がもたらされる。そのように層間剥離領域が減少することは残存圧縮強度がより高くなると解釈される。
【0015】
複合材料の別の重要な特性は損傷抵抗である。損傷抵抗値が高い複合材料は所定の衝撃イベントによって被る損傷の度合が低いであろう。その代わりに、損傷許容性が高い複合材料が被る物理的損傷の度合は様々であり得るが、それは残存強度を高い度合で保持するであろう。
【0016】
複合材料が示す切り欠き圧縮特性を向上させようとする方策に関して実施された研究は限られている。特許文献1は、オープンホール圧縮性能を向上させる目的で特定のエポキシ樹脂材料を特定の領域で用いることに向けたものである。しかしながら、切り欠き特性を向上させる目的で複合材料を調整する方法に関する例は特許文献にも出版物にも見られない。
【0017】
本発明は、驚くべきことに、いろいろなプレプレグ材料を同じ複合材料の中に用いることで結果としてもたらされる複合材料が示す切り欠き圧縮特性、損傷許容性および損傷抵抗性を向上させることによって従来の複合材料が有する問題を克服するものである。
【特許文献1】米国特許第5 985 431号
【発明の概要】
【0018】
発明の定義
本発明の1番目の面では、
(a)微小座屈およびキンクバンド形成に対して向上した抵抗を示す1番目のプレプレグ材料、および
(b)層間剥離に対して向上した抵抗を示す2番目のプレプレグ材料、
を含有して成る複合材料を提供する。
【0019】
本発明の2番目の面では、
(a)不溶および/またはある程度溶解する粒子が中に組み込まれている1番目のプレプレグ材料、および
(b)(i)熱可塑性プラスチック成分が2番目のプレプレグ材料の中に組み込まれていること、
(ii)不溶またはある程度溶解する粒子が2番目のプレプレグ材料の中に組み込まれていること、
(iii)不溶またはある程度溶解する粒子が2番目のプレプレグ材料の層間に組み込まれていること、および
(iv)1種以上の強化用インターリーフが2番目のプレプレグ材料の層間に組み込まれていること、
の中の少なくとも1つで特徴づけられる2番目のプレプレグ材料、
を含有して成る複合材料を提供する。
【0020】
本発明の3番目の面では、本発明の1番目または2番目の面に従う複合材料を製造する方法を提供し、この方法は、前記1番目および2番目のプレプレグ材料を一緒に硬化させることを含んで成る。
【0021】
本発明の4番目の面では、本発明の1番目または2番目の面に従う複合材料を含有して成る製造品を提供する。
【0022】
本発明の追加的面では、プレプレグ材料が自動もしくは非自動付着方法[自動繊維配置、自動テープ敷設、連続テープ敷設製造、ハンドレイアップ、フィラメント巻き取り、予備成形、編み、織り]に適するようにそれを前記道具でか或は他の層に付着させながら特定の成分を添加することで前記材料の調整を行う方法を提供する。
【0023】
本発明の好適な非限定特徴を添付請求項および以下の説明で定義する。
【0024】
発明の詳細な説明
1番目および2番目のプレプレグ材料を同じ複合材料の中で一緒に硬化させることができる。そのようなレイアップの前記プレプレグ材料の組み合わせを調整することによって、結果としてもたらされる複合材料が示す切り欠き圧縮特性、損傷許容性および損傷抵抗性を有意に向上させることができる。
【0025】
プレプレグ材料は熱硬化性プレプレグ、熱可塑性プレプレグ、樹脂注入織物および予備成形品およびこれらの組み合わせから選択可能である。
【0026】
前記1番目のプレプレグ材料に関する微小座屈およびキンクバンド形成に対する向上した抵抗は、例えば不溶および/またはある程度溶解する粒子をその中に組み込むことなどで達成可能である。
【0027】
前記2番目のプレプレグ材料に関する層間剥離に対する向上した抵抗は、
(i)熱可塑性プラスチック成分を前記2番目のプレプレグ材料の中に組み込むこと、
(ii)不溶またはある程度溶解する粒子を前記2番目のプレプレグ材料の中に組み込むこと、
(iii)不溶またはある程度溶解する粒子を前記2番目のプレプレグ材料の層間に組み込むこと、および
(iv)1種以上の強化用インターリーフを前記2番目のプレプレグ材料の層間に組み込むこと、
の中の少なくとも1つで達成可能である。
【0028】
本複合材料の中のプレプレグ材料層の配列を好適には
・ 微小座屈およびキンクバンド伝播抵抗を向上させたプレプレグ材料層を0゜層で用い、そして
・ 層間剥離抵抗を向上させたプレプレグ材料層を他の層、最も好適には前記0゜層に隣接して位置する層で用いる、
ように選択する。
【0029】
そのような配列を用いると、前記成分の中の1種類のみを用いて製造された複合材料が達成する切り欠き圧縮特性、損傷許容性および損傷抵抗性能より高いそれらを達成することが可能になる。
【0030】
本発明は、様々な角度で位置するプレプレグ材料層をいろいろなパーセントで含有する多様なプレプレグ材料レイアップに適合する。典型的に用いる角度には、これらに限定するものでないが、0゜、30゜、45゜、60゜および90゜が含まれる。
【0031】
負荷がかかる構造の場合、0゜の方向が典型的に当該部分が耐えるべき最も高い負荷の方向である。OHCの場合には0゜の方向が圧縮の方向である。プレプレグ材料の場合、0゜がプレプレグ材料のロールの中の縦繊維方向である。
【0032】
本発明は、本開示に従ういろいろなプレプレグ材料で構成させた層を持たせた複合材料を製造する方法に頼るものである。
【0033】
本発明では、微小座屈およびキンクバンド形成に対して向上した抵抗を示す複合材料が向上したOHCを示すことを立証する。本発明では、微小座屈およびキンクバンド形成に対する抵抗を向上させる、即ちOHCを向上させる組み込み方法がもたらされたのは0゜層中で用いたプレプレグ材料層が向上した微小座屈およびキンクバンド伝播抵抗を示したことによるものであることを見いだした。本明細書の以下に記述する如き実施例2および3に示すように粒子を樹脂マトリクスの中に入れると複合材料内の強化用繊維の配列が応力のかかっている間でも維持されかつ層間剥離部分が含まれることで見られるように微小座屈およびキンクバンド形成に対する抵抗を向上させる手段が得られる。他の手段は樹脂マトリクス系の改善、好適には弾性率を向上させることによる改善である。樹脂マトリクスが示す弾性率を向上させるとOHCが改善される例を添付図の図2に示す。
【0034】
微小座屈およびキンクバンド形成に対する抵抗を向上させるさらなる手段は、強化用繊維の強度および/または弾性率をより高くする手段である。
【0035】
微小座屈およびキンクバンド形成に対する抵抗を向上させる他の方法には、強化用繊維の表面処理および/またはサイジングに影響を与えることで樹脂マトリクスと強化用繊維の間の界面を改変する方法が含まれる。
【0036】
また、添付図の図3に示すように、OHCがプレプレグ材料のレイアップの影響を受けることも示す。
【0037】
OHCは、また、硬化プレプレグ材料の層厚およびAWの影響も受ける。
【0038】
本発明は、OHC障害が当該複合材料の層間剥離に関係していることを見いだしたことが基礎になっている。層間剥離をCAI試験で評価することができることから、本発明では、向上したCAIを示す材料を選択した層中で用いるとOHCが改善されることを立証する。
【0039】
層間剥離に対して向上した抵抗を示す複合材料は、向上したCAI、G1CおよびG2Cを示す複合材料である。当該プレプレグ材料を改善することでCAIを向上させる様々な方法を組み込むことができる。そのような1つの方法はじん性を向上させることによる方法であり、これを、熱可塑性プラスチックを樹脂マトリクスに添加するか、粒子を樹脂マトリクスまたはプレプレグ材料層間に添加するか、或はフィルム、ベールなどを用いたインターリーフ強化手段で熱可塑性プラスチックをプレプレグ材料層間に添加することで達成する。
【0040】
CAIを向上させるさらなる方法には、強化用繊維の表面処理および/またはサイジングに影響を与えることで樹脂マトリクスと強化用繊維の間の界面を改変する方法が含まれる。
【0041】
更に、向上した層間剥離抵抗を示すプレプレグ材料層を0゜以外の層、最も好適には0゜プレプレグ材料層に隣接して位置するプレプレグ材料層中で用いることも見いだした。0゜層の記述は、1番目(任意)の基準方向に配列する層を意味し、他の方向に位置する層に関して指定する角度は前記基準方向を基準にした角度である。
【0042】
本発明は、OHC障害が起こる原因が最初に強化用繊維の微小座屈およびキンクバンド伝播が起こった後に層間剥離が起こることによるものであることを見いだしたことが基礎になっている。言い換えれば、キンクバンド伝播は0゜層を通して起こる一方で強化用繊維が回転を起こす時に層間剥離の核が発生して成長する。このように、OHCを改善する最良の方法は、向上した微小座屈およびキンクバンド伝播抵抗を示すプレプレグ材料を0゜層中で用いかつ層間剥離に対する抵抗が改善するように向上したCAIを示すプレプレグ材料を0゜層以外の層、最も好適には0゜プレプレグ材料層に隣接して位置するプレプレグ材料層中で用いることで調整した複合材料生成方策を用いる方法である。このことは添付図の図4から分かるであろう。プレプレグ材料層をいろいろなパーセントで様々な角度で用いて最適なプレプレグ材料レイアップを同定することでOHCを追加的に最適にすることができることも分かるであろう。
【0043】
OHC試験結果における改善は、調整していない複合材料、即ち改善する方法が全く組み込まれていないか或はほんの1つのみ組み込まれている複合材料との比較が基準になっている。添付図の例1、2および3に、本発明の調整方策と比較した時のベースラインとなる複合材料特性を示す。
【0044】
複合材料の中に組み込むべきプレプレグ材料をいろいろな方策でデザインして製造することができる。
【0045】
下記のいろいろな方策の中の1つ以上を用いて調整したインターリーフを作り出すことができる:
・ 異なる2種類のプレプレグ材料の間の領域の中に樹脂が豊富な領域を作り出す目的で熱硬化性樹脂フィルムを用いてもよく、その熱硬化性樹脂は場合により強化用繊維に染み込ませる樹脂マトリクスと同じか或は異なる樹脂であってもよく、
・ 有機もしくは無機繊維およびこれらの組み合わせで出来ている不織布地、ベールもしくはフリースを用いてもよく、
・ 有機もしくは無機材料およびこれらの組み合わせで出来ているフィルムもしくは膜を用いてもよく、その膜は場合によりいろいろな透過度を示してもよく、そして
・ 有機もしくは無機材料およびこれらの組み合わせで出来ていて強化用繊維による強化で用いた繊維とは異なる異成分から成る繊維を用いてもよく、これをまた調整したインターリーフとして用いることも可能である。
【0046】
不溶またはある程度溶解する粒子をプレプレグ材料の層間に組み込みそして/または所定プレプレグ材料層の強化用繊維の間に分布させてもよい。そのような粒子は有機および/または無機材料またはこれらの混成物、組み合わせおよび混合物を含有して成っていてもよいか或はそれらで構成されていてもよい。熱可塑性樹脂の粒子をプレプレグの中に取り込ませることは、例えばヨーロッパ特許出願公開第0 707 032、ヨーロッパ特許出願公開第0 383 174、ヨーロッパ特許出願公開第0 274 899または米国特許第4 874 661号から公知である。
【0047】
このように、また、前記プレプレグ材料のいずれかまたは両方に1種以上の粒子を含有させることも可能である。有機粒子を考慮する場合、いろいろな重合体およびこれらの組み合わせを用いることができる。その粒子はポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアラミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、酢酸セルロースおよび酪酸セルロースおよびこれらの共重合体から成る群より選択した1種以上の樹脂で作られていてもよい。
【0048】
架橋剤を粒子配合に用いることで架橋した網状組織を達成することも可能である。
【0049】
また、その粒子は熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂、弾性重合体および架橋弾性重合体の混合物(即ちZeon Chemicals inc.が販売しているDuoMod DP5045)であってもよい。
【0050】
無機粒子には、ガラス、シリカ、炭素、金属が含まれ得る。
【0051】
この特別な発明の粒径分布は好適には1μmから150μmの範囲内のいずれかの範囲に渡る。
【0052】
本発明では、また、驚くべきことに、不溶またはある程度溶解する重合体粒子を用いると樹脂系が示すOHCが21%に及んで向上することも示す。その向上に様々な要因が影響を与え、その粒子の種類を樹脂の種類に合わせるのが好適である。
【0053】
平均サイズが40μmから60μmの様々な粒子および様々な樹脂系を用いて実施した試験を以下の表Iに示す。
【0054】
【表1】

【0055】
前記表は、OHCの向上が樹脂および粒子の種類に依存することを示している。PEKK、PPOおよびDP5045で構成されている粒子がOHC性能の改善を示す一方で、TN、TR55、P84およびP84NTはどちらとも言えないと思われる。
【0056】
また、そのようなプレプレグのレイアップの各層に適するように調整した繊維をプレプレグ材料中で用いることも可能である。使用可能な候補繊維は、直径が1umから150umの範囲で弾性率が1GPaから700GPaの範囲で引張り強度が200MPaから10,000MPaの範囲であってもよい繊維であり得る。その繊維は有機、特に堅い重合体、例えばポリパラフェニレンテレフタルアミドなどまたは無機であってもよい。無機繊維の中ではガラス繊維、例えば「E」または「S」など、またはアルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、他の化合物であるセラミックまたは金属を用いることができる。非常に適した強化用繊維は炭素、特にグラファイトとしての炭素である。特に本発明で用いるに有用であることを確認したグラファイト繊維は、Cytec Carbon Fibersが商標T40/800、T650−35およびT300の下で供給している繊維、Torayが商標T300、T700、T800G、T800S、T800−HB、T1000G、M46J、M50J、M55J、M60Jの下で供給している繊維、Hexcelが商標AS4、AS7、IM7、IM8およびIM9の下で供給している繊維、およびToho Tenaxが商標HTA、HTS、UTS、IMSの下で供給している繊維である。有機もしくは炭素繊維は好適にはサイズ処理されていないものであるか或はそれらにそれらが有害反応無しに樹脂に溶解するか或は当該繊維および本発明に従う熱硬化性/熱可塑性組成物の両方に結合する意味で本発明に従う組成物に適合し得る材料を用いたサイズ処理を受けさせる。特に、炭素またはグラファイト繊維にサイズ処理を受けさせないか或はエポキシ樹脂前駆体を用いたサイズ処理を受けさせる。無機繊維に好適には当該繊維および重合体組成物の両方に結合する材料を用いたサイズ処理を受けさせるが、その例はガラス繊維に付着する有機シランカップリング剤である。
【0057】
更に、様々な表面処理を用いて強化用繊維の特性を用途に適するように調整することも
可能である。
【0058】
1番目のプレプレグ材料は、好適には、当該技術分野で良く知られている1種以上の材料で構成されている樹脂マトリクス、例えばヨーロッパ特許出願公開第0 311 349、ヨーロッパ特許出願公開第0 707 032およびWO−A−02/16481のいずれかに開示されている樹脂マトリクスと強化用繊維のそれぞれを含有して成る。
【0059】
この1番目のプレプレグ材料は、好適には、層間粒子を有する高弾性率エポキシ樹脂から選択した樹脂マトリクスと強化用繊維を含有して成る。好適な樹脂は弾性率が3.4GPA以上の樹脂である。好適な樹脂の例は、Cytec Industries Inc.が製造しているCycom 977−3およびCycom 997である。好適な層間粒子には、粒径分布が10から40ミクロンの範囲のPEKK、PPOが含まれる。
【0060】
2番目のプレプレグ材料は、好適には、層間粒子を有する高じん性エポキシ樹脂から選択した樹脂マトリクスと強化用繊維を含有して成る。好適な樹脂は破壊じん性Gが0.200kJ/m以上の樹脂であり、ここで、Gは、作り出される新しい亀裂領域の中の臨界歪みエネルギー解放率である。適切な樹脂系の例には、Cytec Industries Inc.が製造しているCycom 977−2が含まれる。
【0061】
好適な層間粒子にはDP5045、P84、Nylon、PPOおよびPPSが含まれ、好適な粒径は10から40ミクロンの範囲である。本発明に好適な層間粒子含有系の例には、Cytec Industries Inc.が製造しているCycom 5276−1が含まれる。
【0062】
また、そのようなレイアップの各層に適するように調整した樹脂マトリクスをプレプレグ材料で用いることも可能である。そのような樹脂マトリクスの化学的性質を変えることで樹脂マトリクスが示すいろいろな特性を変えることができる。本発明に適するように以下の特性を変えることができる:克服強度、弾性率、繊維湿潤能力、相分離、じん性、Tg、架橋密度。
【0063】
一般に、本発明で用いる樹脂マトリクスはいずれも熱可塑性もしくは熱硬化性樹脂を含有して成るか或は本質的にそれで構成されていてもよい。プレプレグ材料のレイアップのデザインを好適には0゜プレプレグ材料層中の樹脂マトリクスが示す弾性率の方が他のプレプレグ材料層中の樹脂マトリクスが示すそれよりも高くなるように行う。好適には、熱硬化性樹脂を用い、これはエポキシ樹脂、付加重合樹脂、特にビス−マレイミド樹脂、ホルムアルデヒド縮合樹脂、特にホルムアルデヒド−フェノール樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、フェノール樹脂およびこれらの2種以上の混合物から成る群より選択可能であり、好適には、芳香族ジアミン、芳香族モノ第一級アミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、ポリカルボン酸などまたはこれらの混合物から成る群の化合物の中の1種以上のモノもしくはポリ−グリシジル誘導体から生じさせたエポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、ベンゾイミダゾール、ポリスチリルピリジン、ポリイミドまたはフェノール樹脂である。付加重合樹脂の例は、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ビス−マレイミド樹脂および不飽和ポリエステル樹脂である。ホルムアルデヒド縮合樹脂の例は尿素樹脂、メラミン樹脂およびフェノール樹脂である。より好適には、熱硬化性マトリクス樹脂に少なくとも1種のエポキシ、シアン酸エステルまたはフェノール樹脂前駆体を含有させるが、それは周囲温度で液状であり、例えばヨーロッパ特許出願公開第0311349、ヨーロッパ特許出願公開第0365168、ヨーロッパ特許出願公開第91310167.1またはPCT/GB95/01303に開示されている如くである。好適な熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂である。
【0064】
エポキシ樹脂は、50℃における粘度が10−20PasのN,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(例えばHuntsmanが販売している「MY
9663」、「MY 720」または「MY 721」)(MY 721はMY 720の低粘度バージョンであり、より高い使用温度の目的で考案された樹脂である)、110℃における粘度が18−22ポイズのN,N,N’,N−テトラグリシジル−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソ−プロピルベンゼン(例えばHexionが販売しているEpon 1071)、110℃における粘度が30−40ポイズのN,N,N’,N’−テトラグリシジル−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(例えばHexionが販売しているEpon 1072)、25℃における粘度が0.55−0.85Pas、好適には25℃における粘度が8−20Paのp−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(例えばHuntsmanが販売している「MY 0510」)[好適には、これが使用エポキシ成分の少なくとも25%を構成するようにする]、ビスフェノールAが基になった材料、例えば2,2−ビス(4,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパンのグリシジルエーテル(例えばDowが販売している「DE R 661」またはHexionが販売している「Epikote 828」)、および25℃の粘度が好適には8−20PasのNovolak樹脂、フェノールNovolak樹脂のグリシジルエーテル(例えばDowが販売している「DEN 431」または「DEN 438」)、これの低粘度種類の変形(これが本発明に従う組成物を製造する時に好適である)、1,2−フタル酸ジグリシジル、例えばGLY CEL
A−100、ジヒドロキシジフェニルメタン(ビスフェノールF)のジグリシジル誘導体(例えばHuntsmanが販売している「PY 306」)[これは低粘度の種類である]から選択可能である。他のエポキシ樹脂前駆体には、環式脂肪族、例えば3’,4’−エポキシシクロヘキシル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えばCiba Geigyが販売している「CY 179」)およびHexionの「Bakelite」範囲に入るそれらなどが含まれる。
【0065】
シアン酸エステル樹脂は、一般式NCOAr(YxArm)qOCNで表される1種以上の化合物およびこれらのオリゴマーおよび/またはポリシアン酸エステルおよびこれらの組み合わせから選択可能であり、ここで、Arは単一もしくは縮合芳香族もしくは置換芳香族およびこれらの組み合わせであり、それらの間に位置する核はオルソ、メタおよび/またはパラ位に結合しており、そしてx=0から2であり、そしてmおよびqは独立して0から5である。Yは、酸素、カルボニル、硫黄、硫黄オキサイド、化学結合、オルソ、メタおよび/またはパラ位に結合している芳香族および/またはCR2[ここで、R1およびR2は水素、ハロゲン置換アルカン、例えばフッ素置換アルカンなどおよび/または置換芳香族および/または炭化水素単位であり、かつ前記炭化水素単位は単結合もしくは複結合しており、R1および/またはR2の各々の炭素原子数は20以下である]およびP(R3R4R’4R5)[ここで、R3はアルキル、アリール、アルコキシまたはヒドロキシであり、R’4はR4と同じであってもよく、単結合酸素または化学結合であってもよく、そしてR5は二重結合酸素または化学結合である]またはSi(R3R4R’4R6)[ここで、R3およびR4、R’4は前記P(R3R4R’4R5)で定義した通りであり、そしてR5は前記R3と同様に定義される]から成る群より選択される連結単位である。場合により、その熱硬化性樹脂を本質的にフェノール/ホルムアルデヒド誘導Novolakのシアン酸エステルまたはそれのジシクロペンタジエン誘導体で構成させてもよく、それの一例はDow Chemical Companyが販売しているXU71787である。フェノール樹脂は、アルデヒド、例えばメタナール、エタナール、ベンズアルデヒドまたはフルフルアルデヒドなどとフェノール、例えばフェノール、クレゾール、二価フェノール、クロロフェノールおよびC1−9アルキルフェノール、例えばフェオール、3−および4−クレゾール(1−メチル、3−および4−ヒドロキシベンゼン)、カテコール(2−ヒドロキシフェノール)、レゾルシノール(1,3−ジヒドロキシベンゼン)およびキノール(1,4−ジヒドロキシベンゼン)などから誘導されたアル
デヒド縮合樹脂のいずれからも選択可能である。好適なフェノール樹脂はクレゾールおよびノボラックフェノールを含有して成る。適切なビスマレイミド樹脂は、マレイミド基を反応性官能基として含有する熱硬化性樹脂である。
【0066】
本明細書で用いる如き用語「ビスマレイミド」には、これらに限定するものでないが、モノ−、ビス−、トリス−、テトラキス−および官能性がより高いマレイミドばかりでなくそれらの混合物も含まれる。平均官能性が約2のビスマレイミド樹脂が好適である。このように定義した如きビスマレイミド樹脂の調製は、無水マレイン酸もしくは置換無水マレイン酸、例えば無水メチルマレイン酸などと芳香族もしくは脂肪族ジ−もしくはポリアミンを反応させることで実施される。
【0067】
その合成の例を例えば米国特許第3,018,290号、3,018,292号、3,627,780号、3,770,691号および3,839,358号に見ることができる。密に関連したナジックイミド樹脂も同様にまた有用であり、これの製造はジ−もしくはポリアミンを用いて行われるが、この場合には、無水マレイン酸の代わりに無水マレイン酸もしくは置換無水マレイン酸とジエン、例えばシクロペンタジエンなどのディールス・アルダー反応生成物が用いられる。本明細書および請求項で用いる如き用語「ビスマレイミド」にはナジックイミド樹脂も含まれる。好適なジ−もしくはポリアミン前駆体には脂肪族および芳香族ジアミンが含まれる。脂肪族ジアミンは直鎖、分枝または環式であってもよくかつヘテロ原子を含有していてもよい。そのような脂肪族ジアミンの数多くの例をこの上で引用した文献の中に見ることができる。
【0068】
特に好適な脂肪族ジアミンは、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、デカンジアミン、ドデカンジアミンおよびトリメチルヘキサンジアミンである。芳香族ジアミンは単核もしくは多核であってもよくかつ加うるに縮合環系を含有していてもよい。好適な芳香族ジアミンは、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、いろいろなメチレンジアニリン、特に4,4’−メチレンジアニリン、ナフタレンジアミン、式H2N−Ar[X−Ar]nNH2[ここで、各Arは個別に単核もしくは多核アリーレン基であってもよく、各Xは個別に−O−、−S−、−CO2、−SO2−、−O−CO−、C1−C10低級アルキル、C1−C10ハロゲン置換アルキル、C2−C10低級アルキレンオキシ、アリーレンオキシ、ポリオキシアルキレンまたはポリオキシアリーレンであってもよく、そしてnは約1から10の整数である]に相当するいろいろなアミノ末端ポリアリーレンオリゴマーまたは類似物、および第一級アミノアルキル末端ジ−およびポリシロキサンである。特に、数種のビスマレイミドを含有するビスマレイミド「共晶」樹脂混合物が有用である。そのような混合物が示す融点は一般に個別のビスマレイミドが示すそれよりもかなり低い。そのような混合物の例を米国特許第4,413,107号および4,377,657号に見ることができる。そのような共晶混合物は商業的に数種類入手可能である。
【0069】
樹脂マトリクスはまた熱可塑性樹脂であってもよい。そのような熱可塑性プラスチックは結晶性、半結晶性または非晶質重合体であってもよい。適切な熱可塑性プラスチックの例には、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアラミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、酢酸セルロースおよび酪酸セルロースおよびこれらの共重合体が含まれる。
【0070】
複合材料中の硬化層厚または強化用繊維の面積重量を用いてその複合材料の特性を調整することができる。適切な硬化層厚の例は50ミクロンから1000ミクロンの範囲である。適切な繊維面積重量AWの例は50gsmから1000gsmの範囲である。
【0071】
本発明は、手動もしくは自動方法を用いてある構成要素を製造している間に一般にインターリーフ、粒子、樹脂および修飾剤を導入することで実施可能である。
【0072】
好適な態様では、プレプレグ材料を製造しながらそれの表面に粒子およびインターリーフを付着させることを可能にする自動ヘッドを用いる。それによってプレプレグ材料を「インシトゥ」で調整することができる。
【0073】
適切な方法の例には、自動繊維配置、自動テープ敷設、連続テープ敷設製造、ハンドレイアップおよびフィラメント巻き取りが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1に、座屈を表す顕微鏡写真を示す。
【図2】図2に、樹脂マトリクスの弾性率を高くした時のOHCに対する影響を表すグラフ図を示す。
【図3】図3に、いくつかのOHC強度データを示す。
【図4】図4に、OHCを粒子の位置の関数として示す。
【図5】図5に、ある実施例で用いる試片の寸法を示す。
【0075】
ここに、本発明を以下の実施例でより詳細に説明する。
【0076】
実施例
【実施例1】
【0077】
樹脂混合物の調製を表1に記述する材料を用いて実施する:
【0078】
【表2】

【0079】
材料1および2を二軸混合装置の管の中に入れる。材料4を加える。その樹脂混合物を120℃に加熱して撹拌を材料4が完全に溶解するまで行う。温度を70℃に下げて、その樹脂混合物に材料3を加える。材料3は前記樹脂混合物に分散または溶解する。Toho Tenax(日本)の弾性率が中程度の強化用炭素繊維IMS 12kを用いて、強化用繊維面積重量が1平方メートル当たり190グラムの一方向布を製造する。前記樹脂混合物を面積重量が1平方メートル当たり51グラムのフィルムにする。2枚のフィルムを前記強化用繊維と一緒にすることでプレプレグ材料を生じさせる。
【0080】
下記の積み重ね順[+45/90/−45/0/0/+45/0/−45/0/0]を用いて前記プレプレグ材料をパネル状にレイアップした後、オートクレーブに入れて硬化させた。硬化中に温度を2℃/分の上昇速度で180℃にした。180℃で2時間の滞留時間後に前記パネルを約3℃/分の冷却速度で冷却して室温にした。この硬化サイクル中
に6.5バールの圧力を前記パネルにかけた。図5に示す如き寸法に従って前記パネルから試片を切り取った。
【0081】
前記試片に試験を100kNのロードセルが組み込まれているZwick試験機を用いて受けさせた。弾性不安定性の問題を回避する目的で前記試片の各末端部をクランプ留めした。0.8mm/分の一定クロスヘッド速度を用いて前記試片に負荷をかけた。
【0082】
試験終了時にOHC値を下記の式:
OHCst=(Max Load)/(Gross Area)
[式中、
OHCst=OHC強度
Load=最大負荷
Gross Area=試片の幅と試片の厚みを掛けることで得た面積]
に従って得た。
【0083】
試験の結果は下記であった:
OHC=470MPa
【実施例2】
【0084】
樹脂混合物の調製を表2に記述する材料を用いて実施する:
【0085】
【表3】

【0086】
実施例1に記述した方法と同じ調製方法を用いた。混合装置の管から排出させる前の樹脂混合物に材料5を入れて分散させた。次に、その樹脂混合物を1平方メートル当たり51グラムのフィルムにした。次に、2枚のフィルムと前記強化用繊維を一緒にすることでプレプレグ材料を得た。プレプレグを生じさせる段階の間、前記粒子に炭素繊維を通す濾過をある程度または完全に受けさせることで前記粒子をプレプレグ材料の表面に集中させた。試片の調製、機械加工および試験を実施例1に記述した手順に従って実施した。
【0087】
試験の結果は下記であった:
OHC=499MPa
【0088】
CAIを測定する目的で、落重衝撃試験機を用いて試片に25Jの衝撃を与える。衝撃装置の鼻部の直径は16±0.5mmで半球の半径は8±0.25mmであった。このCAI試験を200kNのロードセルが組み込まれているZwick試験機を用いて実施した。妥当ではない失敗が起こる危険性を軽減する目的で、試片のエンドローディング(e
nd loading)を可能にする抗座屈ジグを用いた。0.5mm/分の一定クロスヘッド速度を用いて試片に負荷をかけた。
【0089】
試験の結果は下記であった:
CAI=259MPa
【0090】
前記結果で明らかなように、前記系は衝撃後に高い圧縮強度を示した。
【実施例3】
【0091】
樹脂混合物の調製を表3に記述する材料を用いて実施する:
【0092】
【表4】

【0093】
実施例2に記述した方法と同じ調製方法を用いたが、DP5045の代わりにPEKK粒子を用いた。試片の調製、機械加工および試験を実施例1に記述した手順に従って実施した。
【0094】
試験の結果は下記であった:
OHC=508MPa
【実施例4】
【0095】
実施例2および実施例3で得た材料を下記の表示(表4)に従って用いた:
【0096】
【表5】

【0097】
下記の積み重ね順[+45/90/−45/0/0/+45/0/−45/0/0]を用いてプレプレグ材料をレイアップすることでパネルにした。このレイアップでは下記のプレプレグ材料層配向を用いた(表5):
【0098】
【表6】

【0099】
実施例1で用いた手順と同じ手順を用いて試片の硬化、機械加工および試験を実施した。
結果:
OHC=555MPa
【実施例5】
【0100】
樹脂混合物の調製を表6に記述する材料を用いて実施する:
【0101】
【表7】

【0102】
材料1および2を二軸混合装置の管の中に入れる。材料4を加える。その樹脂混合物を120℃に加熱して撹拌を材料4が完全に溶解するまで行う。温度を70℃に下げて、その樹脂混合物に材料3を加える。材料3は前記樹脂混合物に分散または溶解する。Toho Tenax(日本)の弾性率が中程度の強化用炭素繊維IMS 12kを用いて、強化用繊維面積重量が1平方メートル当たり190グラムの一方向布を製造する。前記樹脂混合物を面積重量が1平方メートル当たり51グラムのフィルムにする。2枚のフィルムを前記強化用繊維と一緒にすることでプレプレグ材料を生じさせる。
【0103】
下記の積み重ね順[+45/90/−45/0/0/+45/0/−45/0/0]を用いて前記プレプレグ材料をパネル状にレイアップした後、オートクレーブに入れて硬化させた。硬化中に温度を2℃/分の上昇速度で180℃にした。180℃で2時間の滞留時間後に前記パネルを約3℃/分の冷却速度で冷却して室温にした。この硬化サイクル中に6.5バールの圧力を前記パネルにかけた。図5に示す如き寸法に従って前記パネルから試片を切り取った。
【0104】
前記試片に試験を100kNのロードセルが組み込まれているZwick試験機を用いて受けさせた。弾性不安定性の問題を回避する目的で前記試片の各末端部をクランプ留めした。0.8mm/分の一定クロスヘッド速度を用いて前記試片に負荷をかけた。
【0105】
試験終了時にOHC値を下記の式:
OHCst=(Max Load)/(Gross Area)
[式中、
OHCst=OHC強度
Load=最大負荷
Gross Area=試片の幅と試片の厚みを掛けることで得た面積]
に従って得た。
【0106】
試験の結果は下記であった:
OHC=430MPa
【実施例6】
【0107】
樹脂混合物の調製を表7に記述する材料を用いて実施する:
【0108】
【表8】

【0109】
実施例5に記述した方法と同じ調製方法を用いた。混合装置の管から排出させる前の樹脂混合物に材料5を入れて分散させた。次に、その樹脂混合物を1平方メートル当たり51グラムのフィルムにした。次に、2枚のフィルムと前記強化用繊維を一緒にすることでプレプレグ材料を得た。プレプレグを生じさせる段階の間、前記粒子に炭素繊維を通す濾過をある程度または完全に受けさせることで前記粒子をプレプレグ材料の表面に集中させた。試片の調製、機械加工および試験を実施例1に記述した手順に従って実施した。
【0110】
試験の結果は下記であった:
OHC=432MPa
【実施例7】
【0111】
樹脂混合物の調製を表8に記述する材料を用いて実施する:
【0112】
【表9】

【0113】
実施例6に記述した方法と同じ調製方法を用いたが、DP5045の代わりにPEKK粒子を用いた。試片の調製、機械加工および試験を実施例5に記述した手順に従って実施した。
【0114】
試験の結果は下記であった:
OHC=433MPa
【実施例8】
【0115】
実施例6および実施例7で得た材料を下記の表示(表9)に従って用いた:
【0116】
【表10】

【0117】
下記の積み重ね順[+45/90/−45/0/0/+45/0/−45/0/0]を用いてプレプレグ材料をレイアップすることでパネルにした。このレイアップでは下記のプレプレグ材料層配向を用いた(表10):
【0118】
【表11】

【0119】
実施例5で用いた手順と同じ手順を用いて試片の硬化、機械加工および試験を実施した。
結果:
OHC=438MPa
【比較実施例1】
【0120】
実施例1で得た結果と実施例2で得た結果の比較を表11に示す。この表から明らかなように、DP5045を用いるとOHC性能の改善がもたらされたが、これは文献(Eric N.Gilbert、Brian S.Hayes、James C.Seferis、Composites:Part A 34(2003)245−252)に広範に報告されているようにその用いた粒子が層間剥離を抑制する能力を有することによるものである。また、高いCAI性能が達成可能であることもそのような機構によるものである。
【0121】
【表12】

【比較実施例2】
【0122】
実施例1で得た結果と実施例3で得た結果の比較を表12に示す。この表が示すように、PEKKを用いるとOHC性能の改善がもたらされたが、これは、その粒子がキンクバンドおよび層間剥離伝播を防止する能力を有することによるものである。
【0123】
【表13】

【比較実施例3】
【0124】
実施例1、実施例2、実施例3および実施例4で得た結果の比較を表13に示す。その結果から明らかなように、実施例4に記述した如きプレプレグ材料層配向を用いた時にOHCに関して最も良好な性能が達成された。これは、実施例4ではプレプレグ材料の選択およびプレプレグ材料の層配向をOHCが最大限になるように調整したことによるものである。
【0125】
【表14】

【比較実施例4】
【0126】
実施例5で得た結果と実施例6で得た結果の比較を表14に示す。この表から明らかなように、DP5045を用いるとOHC性能の改善がもたらされたが、これは、その用いた粒子が層間剥離を抑制する能力を有することによるものである。また、高いCAI性能が達成可能であることもそのような機構によるものである。
【0127】
【表15】

【比較実施例5】
【0128】
実施例1で得た結果と実施例3で得た結果の比較を表15に示す。この表が示すように、PEKKを用いるとOHC性能の改善がもたらされたが、これは、その粒子がキンクバンドおよび層間剥離伝播を防止する能力を有することによるものである。
【0129】
【表16】

【比較実施例6】
【0130】
実施例5、実施例6、実施例7および実施例8で得た結果の比較を表16に示す。その結果から明らかなように、実施例8に記述した如きプレプレグ材料層配向を用いた時にOHCに関して最も良好な性能が達成された。これは、実施例8ではプレプレグ材料の選択およびプレプレグ材料の層配向をOHCが最大限になるように調整したことによるものである。
【0131】
【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料であって、
(a)微小座屈およびキンクバンド形成に対して向上した抵抗を示す1番目のプレプレグ材料、および
(b)層間剥離に対して向上した抵抗を示す2番目のプレプレグ材料、
を含有して成る複合材料。
【請求項2】
前記1番目のプレプレグ材料が1番目の樹脂が染み込んでいる強化用繊維層を含有して成りかつ前記2番目のプレプレグ材料が前記1番目の樹脂とは異なる2番目の樹脂が染み込んでいる強化用繊維層を含有して成る複合材料。
【請求項3】
前記微小座屈およびキンクバンド形成に対する向上した抵抗が不溶またはある程度溶解する粒子を前記1番目のプレプレグ材料の中に組み込むことで達成されたものである請求項1または請求項2記載の複合材料。
【請求項4】
前記粒子が有機である請求項3記載の複合材料。
【請求項5】
前記粒子が無機である請求項3記載の複合材料。
【請求項6】
前記粒子が有機と無機粒子の混合物または有機/無機混成物である請求項3記載の複合材料。
【請求項7】
前記粒子が本質的に下記の重合体:ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアラミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、酢酸セルロースおよび酪酸セルロースおよびこれらの共重合体の中の1つを含有して成る請求項3−6のいずれか記載の複合材料。
【請求項8】
前記層間剥離に対する向上した抵抗が
(v)熱可塑性プラスチック成分を前記2番目のプレプレグ材料の中に組み込むこと、
(vi)不溶またはある程度溶解する粒子を前記2番目のプレプレグ材料の中に組み込むこと、
(vii)不溶またはある程度溶解する粒子を前記2番目のプレプレグ材料の層間に組み込むこと、および
(viii)1種以上の強化用インターリーフを前記2番目のプレプレグ材料の層間に組み込むこと、
の中の少なくとも1つで達成されたものである前請求項いずれか記載の複合材料。
【請求項9】
前記強化用インターリーフがそれぞれの組成が互いに異なる少なくとも2種類のインターリーフを含有して成る請求項8記載の複合材料。
【請求項10】
前記少なくとも1種のインターリーフが下記の成分:
・ 異なる2種類のプレプレグ材料の間の領域の中に樹脂が豊富な領域を作り出す熱硬化性樹脂フィルム、
・ 有機もしくは無機繊維およびこれらの組み合わせで出来ている不織布地、ベールもしくはフリース、
・ 有機もしくは無機材料およびこれらの組み合わせを含有して成るフィルムもしくは膜
、および
・ 有機もしくは無機材料およびこれらの組み合わせと強化用繊維として用いた繊維とは異なる繊維を包含する異成分から成る繊維、
の中の1つである請求項8または請求項9記載の複合材料。
【請求項11】
積層品として適用されていて前記1番目および2番目のプレプレグ材料がそれぞれ1番目および2番目の方向に配列しているプレプレグ材料を含有して成る前請求項のいずれか記載の複合材料。
【請求項12】
0゜層中で用いられている前記1番目の樹脂が示す弾性率の方が他の層中で用いられている前記2番目の樹脂が示す弾性率よりも高い前請求項のいずれか記載の複合材料。
【請求項13】
前記1番目および/または2番目のプレプレグ材料が少なくとも2種類の異なる強化用繊維を含有して成る前請求項のいずれか記載の複合材料。
【請求項14】
前記1番目および2番目のプレプレグ材料の各々がそれぞれ他のプレプレグ材料中の強化用繊維とは異なる強化用繊維を含有して成る請求項13記載の複合材料。
【請求項15】
前記強化用繊維が有機もしくは無機材料から選択される請求項13または14記載の複合材料。
【請求項16】
前記強化用繊維が炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、他の化合物であるセラミックまたは金属から選択される請求項13−15のいずれか記載の複合材料。
【請求項17】
前記1番目および2番目のプレプレグ材料が少なくとも2種類の異なる硬化層厚を示すことを包含する前請求項のいずれか記載の複合材料。
【請求項18】
前記1番目および2番目のプレプレグ材料が少なくとも2種類の異なる強化用繊維面積重量を示すことを包含する前請求項のいずれか記載の複合材料。
【請求項19】
前請求項のいずれか記載の複合材料を製造する方法であって、ある道具にプレプレグ材料を付着させている間に粒子を前記プレプレグ材料に添加する方法。
【請求項20】
請求項8から10のいずれか記載の複合材料を製造する方法であって、手動もしくは自動方法を用いた道具にプレプレグ材料を付着させている間にインターリーフを前記プレプレグ材料に添加する方法。
【請求項21】
前請求項のいずれか記載の複合材料を製造する方法であって、前記1番目および2番目のプレプレグ材料を一緒に硬化させることを含んで成る方法。
【請求項22】
OHCが前記1番目のプレプレグ材料を単独で同じレイアップで含有して成るか或は前記2番目のプレプレグ材料を単独で同じレイアップで含有して成る複合材料が示すそれよりも高い請求項12記載の複合材料。
【請求項23】
FHCが前記1番目のプレプレグ材料を単独で同じレイアップで含有して成るか或は前記2番目のプレプレグ材料を単独で同じレイアップで含有して成る複合材料が示すそれよりも高い請求項12記載の複合材料。
【請求項24】
CAIが前記1番目のプレプレグ材料を単独で同じレイアップで含有して成るか或は前
記2番目のプレプレグ材料を単独で同じレイアップで含有して成る複合材料が示すそれよりも高い請求項12記載の複合材料。
【請求項25】
損傷抵抗が前記1番目のプレプレグ材料を単独で同じレイアップで含有して成る複合材料が示すそれよりも高い請求項12記載の複合材料。
【請求項26】
複合材料であって、
(a)不溶および/またはある程度溶解する粒子が中に組み込まれている1番目のプレプレグ材料、および
(b)(i)熱可塑性プラスチック成分が2番目のプレプレグ材料の中に組み込まれていること、
(ii)不溶またはある程度溶解する粒子が2番目のプレプレグ材料の中に組み込まれていること、
(iii)不溶またはある程度溶解する粒子が2番目のプレプレグ材料の層間に組み込まれていること、および
(iv)1種以上の強化用インターリーフが2番目のプレプレグ材料の層間に組み込まれていること、
の中の少なくとも1つで特徴づけられる2番目のプレプレグ材料、
を含有して成る複合材料。
【請求項27】
更に請求項2、3−7、9−18および25記載の特徴の中のいずれか1つ以上によっても特徴づけられる請求項26記載の複合材料。
【請求項28】
請求項26または請求項27記載の複合材料を製造する方法であって、前記1番目および2番目のプレプレグ材料を一緒に硬化させることを含んで成る方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公表番号】特表2010−537866(P2010−537866A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524109(P2010−524109)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/075001
【国際公開番号】WO2009/032809
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(594060532)サイテク・テクノロジー・コーポレーシヨン (36)
【Fターム(参考)】