説明

複合材料及びその製造方法

【課題】 炭素材及び金属材の好ましい特性を発揮することができる複合材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 丸棒状の金属材1が円板状の中間材2に固相接合されると共に、丸棒状の炭素材3が中間材2に固相接合されている。金属材1は、例えばアルミニウム材又は銅材である。また、中間材2は、例えばニッケル材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温材料等に好適な複合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
黒鉛や炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット)等の炭素材の高温特性は優れている。一方、アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、アルミニウム及びアルミニウム合金を総称してアルミニウムということがある)材や銅又は銅合金(以下、銅及び銅合金を総称して銅ということがある)材には、延性が優れているという長所がある。このため、これらを一体化することができれば、種々の用途に用いることができる可能性がある。
【0003】
しかしながら、現状では、高温で使用可能としながらこれらを一体化する技術が確立されていない。例えば、有機溶剤を用いた接合やろう付けによれば一体化することは可能であるが、高温で使用することができない。また、有機溶剤を用いた場合には、導電性を確保することもできなくなってしまう。
【0004】
また、非特許文献1には、黒鉛材とニッケル材とを固相接合する技術が開示されているが、アルミニウム材や銅材と炭素材とを固相結合することはできない。
【0005】
【非特許文献1】2000年8月20日発行 第597頁〜第603頁、日本金属学会誌
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、炭素材及び金属材の好ましい特性を発揮することができる複合材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0008】
本発明に係る複合材料は、炭素材と、前記炭素材に固相接合され、ニッケルを含有する中間材と、前記中間材に固相接合され、前記炭素材との間で前記中間材を挟む金属材と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る第1の複合材料の製造方法は、ニッケルを含有する中間材と炭素材とを接触させると共に、前記中間材と金属材とを接触させる工程と、前記中間材、炭素材及び金属材をこれらが互いに接触した状態のまま加熱することにより、前記炭素材と前記中間材とを固相接合すると共に、前記金属材と前記中間材とを固相接合する工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る第2の複合材料の製造方法は、炭素材と、ニッケルを含有する中間材とを固相接合する工程と、金属材と前記中間材とを固相接合する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属材が炭素材に直接接合されるのではなく、炭素材に固相接合された中間材に固相接合されるため、高温でも使用することができる。このため、炭素材及び金属材の両方の好ましい特性を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る複合材料を示す図である。
【0013】
本実施形態に係る複合材料においては、丸棒状の金属材1が円板状の中間材2に固相接合(例えば拡散接合)されると共に、丸棒状の炭素材3が中間材2に固相接合されている。金属材1は、例えばアルミニウム材又は銅材である。また、中間材2は、例えばニッケル材である。
【0014】
次に、本実施形態に係る複合材料を製造する方法について説明する。ここでは、金属材1として銅材を用いる場合について説明した後、金属材1としてアルミニウム材を用いる場合について説明する。
【0015】
金属材1として銅材を用いる場合、金属材1と中間材2との固相接合、及び炭素材3と中間材2との固相接合を同時に行い、その後室温まで冷却する。これらの接合の際には、例えば、高周波誘導加熱装置内の誘導コイルの中央に負荷装置を装着し、丸棒状の金属材1と丸棒状の炭素材3との間に、中間材2として純ニッケルからなる円板状のニッケルシートを挟んだ試料を負荷装置に固定する。そして、負荷装置により、例えば13MPaの一定圧力を印加しながら、例えば4.0×10-3Pa以下の真空中で誘導加熱を行う。なお、ニッケルシートの厚さは、例えば0.5mm〜1.0mmとする。また、接合温度は、750℃以上、金属材1(銅材)の融点未満とする。純銅の融点は1083℃である。
【0016】
また、金属材1としてアルミニウム材を用いる場合には、一括した接合を行うのではなく、炭素材3と中間材2との固相接合を行った後に、金属材1と中間材2との固相接合を行う。なお、炭素材3と中間材2との固相接合の温度は、750℃以上、中間材2の融点未満とする。また、金属材1と中間材2との固相接合の温度は、金属材1(アルミニウム材)の融点未満とする。純ニッケルの融点は1453℃であり、純アルミニウムの融点は660℃である。
【0017】
このような処理を行うことにより、延性及び高温特性等が優れた複合材料を得ることができる。なお、金属材1として銅材を用いる場合に、アルミニウム材を用いる場合と同様に、炭素材3と中間材2との固相接合を行った後に、金属材1と中間材2との固相接合を行うようにしてもよい。
【0018】
ここで、本願発明者が実際に製造した複合材料の特性について説明する。
【0019】
(第1の試験)
第1の試験では、金属材1として純銅の丸棒を用い、中間材2として円板状の純ニッケルシートを用い、炭素材3として黒鉛の丸棒を用いた。そして、接合温度を1073K(800℃)とし、保持時間を変化させて一括した接合を行った。その後、四点曲げ試験により、得られた複合材料の曲げ強度を測定した。この結果を図2に示す。なお、図2中の▲はニッケルシートの厚さを1.0mmとしたときの結果を示し、○はニッケルシートの厚さを0.5mmとしたときの結果を示す。
【0020】
図2に示すように、20分以上の保持時間において、十分な曲げ強度を得ることができた。なお、保持時間を20分以上とした場合、破断は炭素材3で発生し、中間材2と金属材1との間では破断が生じなかった。また、図2に示すように、黒鉛単体のものと比較すると、若干曲げ強度が低下した。この低下は、ニッケルシートが厚いほど小さかった。
【0021】
また、中間材2について、ビッカース硬さ試験(荷重:0.49N)を行い、また、炭素濃度を拡散式により計算で求めた。試料としては、ニッケルシートの厚さを1.0mmとし、保持時間を20分としたものを用いた。これらの結果を図3に示す。
【0022】
図3に示すように、炭素材3の界面から約100μmの深さまでの領域では、硬さが素地よりも高くなっていた。そして、炭素濃度の変化の傾向も同様であった。これは、炭素材3中から炭素が中間材2内に拡散し、固溶強化が生じたためであると考えられる。
【0023】
また、接合温度から室温まで冷却する際に生じる熱応力の測定も行った。ここでは、炭素材3の表面に生じる最大残留熱応力を測定した。この結果を図4に示す。図4中の■は実測値を示し、◆は有限要素法により求めた計算値を示している。
【0024】
図4に示すように、実測値及び計算値のいずれにおいても、ニッケルシートが厚いほど熱応力が小さくなった。但し、実測値は計算値よりも小さかった。これは、弾性的に生じた熱応力がそのまま残留しているのではなく、その後に応力緩和が生じているためであると考えられる。
【0025】
(第2の試験)
第2の試験では、金属材1として純アルミニウムの丸棒を用い、中間材2として円板状の純ニッケルシートを用い、炭素材3として黒鉛の丸棒を用いた。そして、接合温度を1073K(800℃)とし、保持時間を変化させて中間材2と炭素材3とを固相接合した後、接合温度を723K(450℃)とし、保持時間を3k秒までとして中間材2と金属材1とを固相接合した。その後、四点曲げ試験により、得られた複合材料の曲げ強度を測定した。この結果を図5に示す。
【0026】
図5に示すように、1.2k秒(20分)以上の保持時間において、十分な曲げ強度を得ることができた。また、0.9k秒(15分)以上の保持時間において、破断が生じた部位は、第1の試験と同様に炭素材3であった。この結果より、0.9k秒(15分)以上の保持時間での、黒鉛単体と比較したときの曲げ強度の低下は、複合材料に生じる熱応力の作用によるものであると考えられる。
【0027】
また、図6に示すように、中間材2の厚さを1mm、2mm、3mmと変化させた場合に生じる熱応力を有限要素法で解析したところ、炭素材3と中間材2との界面については、炭素材3側に引張熱応力が作用し、中間材2側に圧縮熱応力作用するという解析結果が得られた。また、中間材2と金属材1との界面については、中間材2側に引張熱応力が作用し、金属材1側に圧縮熱応力が作用するという解析結果が得られた。また、中間材2が厚くなるほど炭素材3側に生じる最大引張熱応力が減少するという解析結果も得られた。このことから、中間材2には熱応力を緩和する作用があるといえる。
【0028】
なお、上述の実施形態及び試験では、複合材料の形状を丸棒状としているが、板状等の他の形状としてもよい。また、炭素材2として、黒鉛の他にC/Cコンポジット等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る複合材料を示す図である。
【図2】第1の試験での曲げ強度の測定結果を示すグラフである。
【図3】ビッカース硬さ試験の結果及び炭素濃度の計算結果を示すグラフである。
【図4】第1の試験での最大熱応力の測定結果及び計算結果を示すグラフである。
【図5】第2の試験での曲げ強度の測定結果を示すグラフである。
【図6】第2の試験での熱応力の解析結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0030】
1:金属材
2:中間材
3:炭素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材と、
前記炭素材に固相接合され、ニッケルを含有する中間材と、
前記中間材に固相接合され、前記炭素材との間で前記中間材を挟む金属材と、
を有することを特徴とする複合材料。
【請求項2】
前記金属材は、銅又は銅合金材であることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記金属材は、アルミニウム又はアルミニウム合金材であることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
ニッケルを含有する中間材と炭素材とを接触させると共に、前記中間材と金属材とを接触させる工程と、
前記中間材、炭素材及び金属材をこれらが互いに接触した状態のまま加熱することにより、前記炭素材と前記中間材とを固相接合すると共に、前記金属材と前記中間材とを固相接合する工程と、
を有することを特徴とする複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記金属材として、銅又は銅合金材を用いることを特徴とする請求項4に記載の複合材料の製造方法。
【請求項6】
炭素材と、ニッケルを含有する中間材とを固相接合する工程と、
金属材と前記中間材とを固相接合する工程と、
を有することを特徴とする複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記金属材として、アルミニウム又はアルミニウム合金材を用いることを特徴とする請求項6に記載の複合材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−320951(P2006−320951A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148445(P2005−148445)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(504258527)国立大学法人 鹿児島大学 (284)
【Fターム(参考)】