説明

複合板

【課題】 本発明は、折り曲げ加工性及び軽量性に優れた複合板を提供する。
【解決手段】 本発明の複合板は、熱可塑性樹脂発泡シートの両面に接着剤を介して金属シートが積層一体化されてなる複合板であって、上記熱可塑性樹脂発泡シートの厚みが1〜5mm、上記熱可塑性樹脂発泡シートの密度が0.02〜0.1g/cm3、上記金属シートの厚みが0.1〜0.5mm、上記複合板の全体厚みが1.1〜5.5mm、上記複合板の全体坪量が1〜3.3kg/m2及び上記複合板の最大曲げ荷重が15〜65Nであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り曲げ加工性及び軽量性に優れた複合板に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂発泡シートと金属シートとを積層一体化してなる複合板は、合成樹脂板に比較して極めて高い機械的強度及び弾性率を有しつつ、金属シートと比較して軽量性及び加工性に優れていることから広く用いられている。上記複合板は、金属板単体に比較して深絞り加工などが難しいために曲げ加工などの用途に用いられることがある。
【0003】
このような複合板としては、特許文献1に、複数の棒状発泡体を束ねた構造を有するポリオレフィン系樹脂発泡体シートの少なくとも片面にアルミニウム板を貼合した複合板であって、前記複合板は建築基準法第2条第9号に規定される不燃性能試験の発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ所定条件を満たし、かつ前記複合板の曲げ弾性率が200MPa以上である複合板が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記複合板を構成しているポリオレフィン系樹脂発泡シートは、複数の棒状発泡体を束ねた構造を有しており、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの表面は凸円弧状の曲面を連続的に連ねた波形状となっており、ポリオレフィン系樹脂発泡シートとアルミニウム板との接触面積が少なく、ポリオレフィン系樹脂発泡シートとアルミニウム板との貼合が不十分であり、複合板を折り曲げ加工すると、ポリオレフィン系樹脂発泡シートとアルミニウム板とが剥離するといった問題点を生じる。
【0005】
更に、上記複合体のポリオレフィン系樹脂発泡シートは、複数の棒状発泡体を束ねて形成されているので、棒状発泡体の長さ方向を折り曲げ線として折り曲げ加工した場合には棒状発泡体間において亀裂を生じやすいという問題点を生じ、所望形状に折り曲げ加工することができないという問題点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−238557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、何れの方向においても折り曲げ加工性に優れていると共に優れた軽量性を有している複合板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の複合板は、熱可塑性樹脂発泡シートの両面に接着剤を介して金属シートが積層一体化されてなる複合板であって、上記熱可塑性樹脂発泡シートの厚みが1〜5mm、上記熱可塑性樹脂発泡シートの密度が0.02〜0.1g/cm3、上記金属シートの厚みが0.1〜0.5mm、上記複合板の全体厚みが1.1〜5.5mm、上記複合板の全体坪量が1〜3.3kg/m2及び上記複合板の最大曲げ荷重が15〜65Nであることを特徴とする。
【0009】
熱可塑性樹脂発泡シートを構成している熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂などが挙げられ、折り曲げ加工時に亀裂が生じにくく、折り曲げ加工性に優れていることから、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂が好ましい。
【0010】
上記変性ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、特に限定されず、下記化1で表されるポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂との混合物、上記ポリフェニレンエーテルにスチレン系モノマーをグラフト共重合してなる変性ポリフェニレンエーテル、この変性ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂との混合物、下記化2で表されるフェノール系モノマーとスチレン系モノマーとを銅(II) のアミン錯体などの触媒存在下で酸化重合させて得られるブロック共重合体、このブロック共重合体とポリスチレン系樹脂との混合物などが挙げられる。なお、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂は単独で用いられても併用されてもよい。
【0011】
【化1】


(R1 、R2 は炭素数が1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示し、nは重合度を示す。)
【0012】
上記化1で表されるポリフェニレンエーテルとしては、例えば、ポリ(2、6−ジメチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2、6−ジエチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2、6−ジクロロフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2、6−ジブロモフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−クロロ−6−メチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−イソプロピルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2、6−ジ−n−プロピルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−ブロモ−6−メチルフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−クロロ−6−ブロモフェニレン−1、4−エーテル)、ポリ(2−クロロ−6−エチルフェニレン−1、4−エーテル)などが挙げられ、これらは単独で用いられても併用されてもよく、又、上記重合度nは、通常、10〜5000のものが用いられる。
【0013】
【化2】


(R3 、R4 は炭素数が1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示す。)
【0014】
上記化2で表されるフェノール系モノマーとしては、例えば、2、6−ジメチルフェノール、2、6−ジエチルフェニノール、2、6−ジクロロフェノール、2、6−ジブロモフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2−クロロ−6−メチルフェノール、2−メチル−6−イソプロピルフェノール、2、6−ジ−n−プロピルフェノール、2−ブロモ−6−メチルフェノール、2−クロロ−6−ブロモフェノール、2−クロロ−6−エチルフェノールなどが挙げられ、これらは単独で用いられても併用されてもよい。
【0015】
そして、上記ポリフェニレンエーテル、上記変性ポリフェニレンエーテル又は上記ブロック共重合体に混合されるポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレンとこれと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体、ハイインパクトポリスチレンなどが挙げられ、ポリスチレンが好ましい。又、ポリスチレン系樹脂は、単独で用いられても併用されてもよい。
【0016】
なお、上記ビニルモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブチルアクリレートなどが挙げられる。又、ハイインパクトポリスチレンとしては、ポリスチレンや、上記スチレンとこれと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体に、スチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などのゴム成分を1〜20重量%添加してなるものが挙げられる。
【0017】
又、ポリフェニレンエーテルにグラフト共重合され或いはフェノール系モノマーとブロック共重合するスチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン;α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどのアルキル化スチレン;モノクロロスチレン、ジクロロスチレンなどのハロゲン化スチレンなどが挙げられる。
【0018】
そして、上記変性ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、フェニレンエーテル成分が10〜60重量%で且つスチレン成分が40〜90重量%である変性ポリフェニレンエーテル系樹脂が好ましく、フェニレンエーテル成分が20〜50重量%で且つスチレン成分が50〜80重量%である変性ポリフェニレンエーテル系樹脂がより好ましい。
【0019】
又、上記ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレンなどのスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体などが挙げられ、スチレンを50重量%以上含有するポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。
【0020】
又、上記ポリスチレン系樹脂としては、上記スチレン系モノマーを主成分とする、上記スチレン系モノマーとこのスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体であってもよく、このようなビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性モノマーなどが挙げられる。
【0021】
そして、熱可塑性樹脂発泡シートの厚みは、薄いと、複合板を折り曲げ加工した際に熱可塑性樹脂発泡シートの変形が不十分となって複合板の折り曲げ加工性が低下し、折り曲げ加工時に、熱可塑性樹脂発泡シートと金属シートとが剥離を生じる虞れがあり、厚いと、複合板の折り曲げ加工時に、複合板に発生する歪みが大きくなりすぎて熱可塑性樹脂発泡シートに亀裂が生じ又は金属シートが熱可塑性樹脂発泡シートから剥離するので、1〜5mmに限定され、1.5〜4.5mmが好ましい。なお、熱可塑性樹脂発泡シートの厚みは、熱可塑性樹脂発泡シートの任意の10点についてダイヤルシックネスゲージを用いて厚みを測定し、これらの厚みの相加平均値とする。なお、ダイヤルシックネスゲージは、例えば、ミツトヨ社から商品名「シックネスゲージ547−301」にて市販されている。
【0022】
又、熱可塑性樹脂発泡シートの密度は、低いと、熱可塑性樹脂発泡シートの強度が低下して複合板全体の強度も低下し、高いと、複合板を折り曲げ加工を行った場合に熱可塑性樹脂発泡シートに亀裂を生じ或いは熱可塑性樹脂発泡シートと金属シートとの間に剥離を生じるので、0.02〜0.1g/cm3に限定され、0.03〜0.08g/cm3が好ましい。なお、熱可塑性樹脂発泡シートの密度は、熱可塑性樹脂発泡シートの重量を熱可塑性樹脂発泡シートの見掛けの体積で除して得られた値をいう。
【0023】
熱可塑性樹脂発泡シートの厚み及び密度は、後述する熱可塑性樹脂に対する発泡剤の量の調整、押出発泡時の樹脂温度の調整、気泡核剤の量の調整、ダイ吐出部における熱可塑性樹脂の剪断速度の調整などによって制御することができる。
【0024】
又、熱可塑性樹脂発泡シートの曲げ弾性率の最大値と最小値の比(最大値/最小値)は、小さくても大きくても、複合板の折り曲げ加工性に異方性が生じてしまい、複合板の所望形状への折り曲げ加工が困難となることがあるので、1〜1.5が好ましく、1〜1.4がより好ましく、1〜1.3が特に好ましい。
【0025】
なお、熱可塑性樹脂発泡シートの曲げ弾性率の最大値と最小値の比(最大値/最小値)は下記の要領で測定された値をいう。熱可塑性樹脂発泡シートから縦80mm、横25mmの平面長方形状の試験片を10枚切り出す。この際、試験片の縦方向が順次、時計回りに時計回りに18°づつずれた状態となるように試験片を切り出す。
【0026】
次に、各試験片の曲げ弾性率を曲げ速度が2mm/分、支点間距離が64mmの条件下にてJIS K7171に準拠して測定し、得られた応力−歪み曲線から試験片の曲げ弾性率を算出し、測定された曲げ弾性率のうち、最大の曲げ強度と最小の曲げ強度を抽出し、最大の曲げ強度を最小の曲げ強度で除することによって、熱可塑性樹脂発泡シートの曲げ弾性率の最大値と最小値の比(最大値/最小値)を算出することができる。
【0027】
なお、上記試験片の曲げ弾性率の測定は、例えば、オリエンティック社から商品名「UCT−10T」にて市販されているテンシロン万能試験機を用い、測定治具として、先端が5Rの加圧楔形と2Rの支持台を用いて行うことができる。
【0028】
熱可塑性樹脂発泡シートの平均気泡径は、小さいと、熱可塑性樹脂発泡シートの強度が低下し又は熱可塑性樹脂発泡シートの表面に細かな縞が発生してしまう可能性があり、大きいと、熱可塑性樹脂発泡シートが割れやすくなることがあるので、150〜600μmが好ましく、200〜500μmがより好ましい。
【0029】
熱可塑性樹脂発泡シートの平均気泡径は、ASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定された値をいう。具体的には、熱可塑性樹脂発泡シートをMD方向(押出方向)及びTD方向(押出方向に直交する方向)に沿って切断し、それぞれの切断面の中央部を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−3000N)で拡大して撮影する。
【0030】
次に、撮影した画像をA4用紙上に印刷し、画像上に長さ60mmの直線を一本、描く。なお、MD方向に切断した切断面についてはMD方向に平行に、TD方向に切断した切断面についてはTD方向に平行に、VD方向(厚み方向)はMD方向及びTD方向に対して直交する方向に直線を描く。この時、60mmの直線上に気泡が10〜20個程度となる様に、上記の電子顕微鏡での拡大倍率を調整した。
【0031】
上記直線上に存在する気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出し、この平均弦長を各方向(MD方向、TD方向及びVD方向)の平均気泡径とした。
平均弦長 t=60/(気泡数×写真の倍率)
【0032】
なお、直線を描くにあたっては、できるだけ直線が気泡に点接触することなく貫通した状態となるようにする。又、一部の気泡が直線に点接触してしまう場合には、この気泡も気泡数に含め、更に、直線の両端部が気泡を貫通することなく、気泡内に位置した状態となる場合には、直線の両端部が位置している気泡も気泡数に含める。
そして、得られたMD方向の気泡径(DMD)、TD方向の気泡径(DTD)とVD方向の気泡径(DVD)の相加平均値を熱可塑性樹脂発泡シートの平均気泡径とする。
平均気泡径(mm)=(DMD+DTD+DVD)/3
【0033】
熱可塑性樹脂発泡シートの50%圧縮強度は、小さいと、複合板の機械的強度が低下することがあり、大きいと、複合板を折り曲げ加工する際に熱可塑性樹脂発泡シートに亀裂を生じ或いは熱可塑性樹脂発泡シートから金属シートが剥離することがあるので、150〜400kPaが好ましく、200〜350kPaがより好ましい。
【0034】
なお、熱可塑性樹脂発泡シートの50%圧縮強度は、以下の要領で測定された値をいう。熱可塑性樹脂発泡シートから縦50mm、横50mmの平面正方形の試験片を5枚切り出す。次に、各試験片の圧縮強度を試験速度1mm/分の条件下にてJIS K 6767に準拠して測定し、試験片の元厚みに対して50%となったときの初回の圧縮強度を50%圧縮強度とした。上記試験片の熱可塑性樹脂発泡シートの圧縮強度の測定は、例えば、オリエンティック社からの商品名「UCT−10T」にて市販されているテンシロン万能試験機を用いて行うことが出来る。
【0035】
熱可塑性樹脂発泡シートには、その物性を損なわない範囲内において、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線防止剤、滑剤、離型剤、染料、顔料、帯電防止剤、充填材などの添加剤が含有されていてもよい。
【0036】
次に、熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法について説明する。熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法としては、特に限定されず、例えば、(1)熱可塑性樹脂を押出機に供給して揮発性発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機の先端に取り付けた金型から押出発泡させて熱可塑性樹脂発泡シートを製造する方法、(2)熱可塑性樹脂発泡シート及び化学発泡剤を押出機に供給して溶融混練して押出機の先端に取り付けた金型から押出発泡させて熱可塑性樹脂発泡シートを製造する方法、(3)発泡性熱可塑性樹脂粒子を金型内に充填した後、発泡性熱可塑性樹脂粒子を加熱して発泡させ、発泡性熱可塑性樹脂粒子を発泡させて得られる発泡粒子同士を熱融着一体化して熱可塑性樹脂発泡成形体を製造し、この熱可塑性樹脂成形体から熱可塑性樹脂発泡シートを切り出す方法などが挙げられ、得られる熱可塑性樹脂発泡シートの機械的強度に優れていることから、上記(1)(2)の方法が好ましい。
【0037】
押出機としては、特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機、複数の押出機を接続してなるタンデム型押出機などが挙げられ、発泡剤を熱可塑性樹脂中に均一に混合させることができると共に、熱可塑性樹脂発泡シートを所定温度に容易に冷却、維持することができて押出発泡を安定的に行うことができるので、タンデム型押出機が好ましい。又、押出機と金型との間にギアポンプなどを必要に応じて介在させてもよい。
【0038】
上記(1)及び(2)の製造方法において、押出機の先端に取り付けられた金型としては、特に限定されず、例えば、サーキュラダイ、Tダイなどが挙げられ、機械的強度に優れた熱可塑性樹脂発泡シートを製造することができることから、サーキュラダイが好ましい。金型がTダイである場合には、金型からシート状に押出発泡させることによって熱可塑性樹脂発泡シートを製造することができる。金型がサーキュラダイである場合には、金型から円筒状に押出発泡させて筒状発泡体を製造し、この筒状発泡体を拡径させた後に冷却マンドレルに供給して冷却した上で筒状発泡体をその押出方向に連続的に内外周面間に亘って切断し展開することによって熱可塑性樹脂発泡シートを製造することができる。
【0039】
サーキュラダイの開口部における内ダイの直径と、冷却マンドレルの押出機側の直径との比(ブローアップ比)は、小さいと、得られる熱可塑性樹脂発泡シートの表面に筋が形成されることがあり、大きいと、冷却マンドレルと筒状発泡体との間に加わる摩擦抵抗が大きくなり、筒状発泡体が切断する虞れがあるので、2〜4が好ましい。
【0040】
又、揮発性発泡剤としては、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ヘキサンのような脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエンのような芳香族炭化水素類、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテルのようなエーテル類、塩化メチル、フレオン(登録商標)のようなハロゲン化炭化水素類、空気、窒素、二酸化炭素などの不活性ガスが挙げられる。化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ヘキサメチレンテトラミン、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸との混合物などが挙げられる。なお、発泡剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0041】
押出機に圧入する発泡剤の量は、少ないと、熱可塑性樹脂発泡シートの厚みが薄くなったり、熱可塑性樹脂発泡シートの二次発泡倍率が適正な値とならなかったり、或いは、押出機からの吐出圧力が高くなり過ぎて押出発泡ができないことがあり、多いと、熱可塑性樹脂発泡シートの表面に波打ち現象が発生して複合板の外観が低下し、或いは、熱可塑性樹脂発泡シートの連続気泡率が高くなり、熱可塑性樹脂発泡シートの二次発泡倍率が適正な値とならないことがあるので、熱可塑性樹脂100重量部に対して2〜7.5重量部が好ましく、3〜6.5重量部がより好ましい。
【0042】
なお、押出機には、熱可塑性樹脂発泡シートの気泡径の調整又は熱可塑性樹脂の発泡性を調整するために必要に応じて気泡核剤を供給してもよい。気泡核剤としては、例えば、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。気泡核剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。気泡核剤は、ポリスチレン系樹脂又は変性ポリフェニレンエーテル系樹脂などでマスターバッチ化してもよい。
【0043】
押出機に供給する気泡核剤の量は、少ないと、熱可塑性樹脂発泡シートの気泡が粗大化して熱可塑性樹脂発泡シートの表面が荒れてしまったり、熱可塑性樹脂発泡シートの発泡倍率が低下したり、或いは、熱可塑性樹脂発泡シートを得ることができないことがあり、多いと、熱可塑性樹脂発泡シート中に凝集物が発生し、或いは、熱可塑性樹脂発泡シートの表面に波打ち現象が生じることがあるので、熱可塑性樹脂発泡100重量部に対して0.35〜1.2重量部が好ましく、0.45〜0.8重量部がより好ましい。
【0044】
熱可塑性樹脂として変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を用いる場合、押出機から変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を押出発泡させる際の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂の温度は、低いと、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートに割れが発生し或いは押出機の吐出圧力が上がり過ぎて押出発泡ができなくなることがあり、高いと、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂の溶融粘度を発泡に適した粘度にすることができずに破泡を生じ、或いは、得られる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートの連続気泡率が高くなり、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートの二次発泡倍率が適正な値とならないことがあるので、170〜200℃が好ましく、175〜195℃がより好ましい。
【0045】
上記発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法としては、特に限定されず、例えば、(1)熱可塑性樹脂を押出機に供給して溶融混練し、押出機の先端に取り付けた金型からストランド状に押出し、ストランド状の成形体を所定間隔毎に切断して熱可塑性樹脂粒子を製造し、この熱可塑性樹脂粒子に上記揮発性発泡剤を含浸させて発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造する方法、(2)熱可塑性樹脂を押出機に供給して上記揮発性発泡剤又は上記化学発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機の先端に取り付けた金型からストランド状に押出発泡させた直後に所定間隔毎に切断して熱可塑性樹脂発泡粒子を製造する方法などが挙げられる。
【0046】
そして、熱可塑性樹脂発泡シートの両面には接着剤を介して金属シートが積層一体化されている。
【0047】
接着剤としては、特に限定されないが、ホットメルト接着剤が好ましい。このようなホットメルト接着剤としては、熱可塑性樹脂発泡シートと金属シートとを一体化することができればよく、例えば、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤、ポリエステル系ホットメルト接着剤が挙げられ、湿度に対する耐久性に優れているので、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤が好ましい。なお、ホットメルト接着剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0048】
ポリオレフィン系ホットメルト接着剤としては、例えば、クラボウ社から商品名「X−2300」にて市販されている接着剤などが挙げられる。ポリエステル系ホットメルト接着剤としては、例えば、東亞合成社から商品名「PES−111EE」にて市販されている接着剤などが挙げられる。
【0049】
ホットメルト接着剤の厚みは、薄いと、熱可塑性樹脂発泡シートと金属シートとの一体化が不充分となることがあるので、10μm以上が好ましく、厚すぎても、熱可塑性樹脂発泡シートと金属シートとの接着力の向上が期待できず、複合板の軽量性が低下し又は複合板の発熱量が高くなり、複合板が建築基準法第2条第9号に規定される不燃性能試験により定義される不燃性規格に合格しないことがあるので、20〜50μmがより好ましい。
【0050】
又、上記金属シートとしては、特に限定されず、例えば、アルミニウムシート、ステンレスシート、鉄シート、鋼シート、チタニウムシートなどが挙げられ、軽量性及び機械的強度の双方に優れているので、アルミニウムシートが好ましい。なお、アルミニウムシートには、アルミニウムを50重量%以上含有しているアルミニウム合金シートも含まれる。金属シートの厚みは、薄いと、複合板の機械的強度が低下することがあり、厚いと、複合板の折り曲げ加工性が低下するので、0.1〜0.5mmに限定され、0.2〜0.5mmが好ましい。
【0051】
そして、複合板の製造方法としては、特に限定されず、例えば、(1)熱可塑性樹脂発泡シートの両面にホットメルト接着剤を介して金属シートを積層して積層シートを製造し、好ましくは積層シートの製造と同時に、この積層シートを加熱してホットメルト接着剤を溶融させ、必要に応じて積層シートにその厚み方向に圧縮力を加えて、しかる後、積層シートを冷却することによって、熱可塑性樹脂発泡シートと金属シートとをホットメルト接着剤を介して一体化させて複合板を製造する方法、(2)熱可塑性樹脂発泡シートの一面にホットメルト接着剤を介して金属シートを積層して積層シートを製造し、好ましくは積層シートの製造と同時に、この積層シートを加熱してホットメルト接着剤を溶融させ、必要に応じて積層シートにその厚み方向に圧縮力を加えて、熱可塑性樹脂発泡シートの一面に金属シートをホットメルト接着剤を介して一体化させた後、熱可塑性樹脂発泡シートの他面にホットメルト接着剤を介して金属シートを積層して積層シートを製造し、好ましくは積層シートの製造と同時に、この積層シートを加熱してホットメルト接着剤を溶融させ、必要に応じて積層シートにその厚み方向に圧縮力を加えて、熱可塑性樹脂発泡シートの他面に金属シートをホットメルト接着剤を介して一体化させて複合板を製造する方法などが挙げられる。なお、熱可塑性樹脂発泡シート及び金属シートは、ロール状に巻回した状態から連続的に巻き出し、或いは、所望形状に予め切断してあってもよい。
【0052】
熱可塑性樹脂発泡シートの両面にホットメルト接着剤を介して金属シートを積層して積層シートを製造する要領としては、例えば、(1)熱可塑性樹脂発泡シートの両面にホットメルト接着剤を積層一体化させておき、このホットメルト接着剤上に金属シートを積層させて積層シートを製造する方法、(2)金属シートの片面にホットメルト接着剤を積層一体化しておき、熱可塑性樹脂発泡シートの両面に金属シートをホットメルト接着剤が熱可塑性樹脂発泡シートに対向した状態となるように積層して積層シートを製造する方法などが挙げられる。なお、熱可塑性樹脂発泡シート及び金属シートは、その後の製造工程において支障をきたさない程度において、予め加熱されていてもよい。
【0053】
熱可塑性樹脂発泡シートの両面にホットメルト接着剤を積層一体化する方法としては、特に限定されず、例えば、(1)熱可塑性樹脂発泡シートとホットメルト接着剤とを共押出する方法、(2)熱可塑性樹脂発泡シートの両面にホットメルト接着剤を押出ラミネートする方法、(3)押出発泡した直後の熱可塑性樹脂発泡シート上にホットメルト接着剤からなるフィルムを積層一体化する方法、(4)熱可塑性樹脂発泡シートの両面にホットメルト接着剤からなるフィルムを積層して加熱圧着させる方法などが挙げられる。
【0054】
金属シートの片面にホットメルト接着剤を積層一体化する方法としては、特に限定されず、例えば、(1)溶媒に溶かしたホットメルト接着剤を金属シートに塗布した後に溶剤を蒸発、除去する方法、(2)金属シートの片面にホットメルト接着剤からなるフィルムを加熱圧着させる方法などが挙げられる。
【0055】
又、積層シートを加熱しながら積層シートにその厚み方向に圧縮力を加える方法としては、特に限定されず、例えば、所定温度に加熱された一対のロール又は一対の加圧板間に積層シートを供給し、一対のロール又は一対の加圧板によって積層シートを加熱しながら厚み方向に圧縮する方法が挙げられる。なお、熱可塑性樹脂発泡シートが変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートである場合、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートの加熱温度は、低いと、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートと金属シートとの一体化が不充分となることがあり、高いと、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートに収縮が生じる虞れがあるので、100〜180℃が好ましく、110〜170℃がより好ましい。
【0056】
複合板の全体厚みは、薄いと、複合板の取扱性が低下し、厚いと、複合板に折り曲げ加工を施した場合に熱可塑性樹脂発泡シートと金属シートとが剥離するので、1.1〜5.5mmに限定され、2.0〜5.5mmが好ましい。なお、複合板の厚みは、複合板の任意の10点についてダイヤルシックネスゲージを用いて厚みを測定し、これらの厚みの相加平均値とする。なお、ダイヤルシックネスゲージは、例えば、ミツトヨ社から商品名「シックネスゲージ547−301」にて市販されている。
【0057】
複合板の全体坪量は、低いと、複合板の機械的強度が低下し、高いと、複合板の軽量性が低下して、複合板の施工性、運搬性、取扱い性などが低下することがあるので、1〜3.3kg/m2が好ましく、1.2〜3kg/m2以下がより好ましい。
【0058】
複合板の最大曲げ荷重は、低いと、複合板の実使用時における強度が低下し、使用時に複合板が凹んだり或いは曲がったりし、高いと、複合板の折り曲げ加工性が低下するので、15〜65Nに限定され、20〜65Nが好ましい。なお、複合板の最大曲げ荷重は、金属シートの厚み、熱可塑性樹脂発泡シートの坪量又は厚みを調整することによって制御することができる。
【0059】
複合板の曲げ弾性率の最大値と最小値の比(最大値/最小値)は、大きいと、複合板の折り曲げ加工性に異方性が生じてしまい、複合板の所望形状への折り曲げ加工が困難となることがあるので、1.5以下が好ましく、1〜1.4がより好ましい。なお、複合板の曲げ弾性率の最大値と最小値の比(最大値/最小値)は、熱可塑性樹脂発泡シートの製造時における熱可塑性樹脂発泡シートの引取速度又はブローアップ比を調整することによって制御することができる。
【0060】
複合板の最大曲げ荷重及び曲げ弾性率の最大値と最小値の比(最大値/最小値)は下記の要領で測定された値をいう。熱可塑性樹脂発泡シートから縦80mm、横25mmの平面長方形状の試験片を10枚切り出す。この際、試験片の縦方向が順次、時計回りに18°づつずれた状態となるように試験片を切り出す。
【0061】
次に、各試験片の曲げ荷重及び曲げ弾性率を曲げ速度が2mm/分、支点間距離が64mmの条件下にてJIS K7171に準拠して測定し、得られた応力−歪み曲線から試験片の曲げ荷重及び曲げ弾性率を算出する。
【0062】
そして、測定された曲げ荷重のうち、最大の値を複合板の最大曲げ荷重とする。又、測定された曲げ強度のうち、最大の曲げ強度と最小の曲げ強度を抽出し、最大の曲げ強度を最小の曲げ強度で除することによって、複合板の曲げ弾性率の最大値と最小値の比(最大値/最小値)を算出することができる。
【0063】
なお、上記試験片の曲げ荷重及び曲げ弾性率の測定は、例えば、オリエンティック社から商品名「UCT−10T」にて市販されているテンシロン万能試験機を用い、測定治具として、先端が5Rの加圧楔形と2Rの支持台を用いて行うことができる。
【0064】
熱可塑性樹脂発泡シートは、それ単独では発熱量が低いものではないが、熱可塑性樹脂発泡シートの両面に接着剤を介して金属シートを積層一体化することによって、理由は明確に解明されていないが、熱可塑性樹脂発泡シートの坪量を極端に低くすることなく、複合板全体の発熱量を小さくすることができ、複合板は優れた機械的強度、折り曲げ加工性及び不燃性を有している。
【0065】
又、熱可塑性樹脂発泡シートが変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートである場合、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートの坪量は210g/m2以下が好ましく、70〜210g/m2がより好ましい。これは、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートの坪量を好ましくは210g/m2以下とすることによって、複合板の機械的強度を優れたものに維持しつつ、複合板における下記発熱性試験にて輻射熱照射開始から20分を経過するまでの間に測定される総発熱量を7.2MJ/m2以下とし、複合板を建築基準法第2条第9号に規定される不燃性とすることができる。
【0066】
ここで、上述した発熱量及び総発熱量とは下記の要領で測定された値をいう。建築基準法第2条第9号に規定される不燃性能試験には不燃性試験と発熱性試験があり、本発明においては不燃性能試験の発熱性試験に基づいて「不燃性」の評価を行っている。
【0067】
上記発熱性試験は、指定性能評価機関が業務方法書に定めた発熱性試験方法(ISO5660 発熱性能試験方法に準拠したもの)に準拠して行われる。具体的には、対象となる複合板から一辺が約100mmの平面正方形状に切り出した平板を試験体とし、この試験体の加熱面に輻射電気ヒーターで50kW/m2の輻射熱を与え、試験体から発生したガスに点火プラグにより空気中で着火し燃焼させ、燃焼排気ガス中の酸素濃度から酸素消費法に基づいて発熱量を測定する。そして、輻射熱照射開始から20分が経過するまでの間に測定された総発熱量が8MJ/m2以下である場合、複合板は「不燃性」を有すると判断される。なお、建築基準法第2条第9号に規定される「不燃性」とは、上述のように、上記総発熱量が8MJ/m2以下である場合をいうが、本発明では、建築基準法第2条第9号よりも厳しい条件を用いており、「不燃性」とは上記総発熱量が7.2MJ/m2以下である場合とする。なお、試験体の両面のそれぞれを加熱面として上述の測定を行い、輻射熱照射開始から20分が経過するまでの間に測定された総発熱量のうちの多い方の総発熱量を採用する。
【発明の効果】
【0068】
本発明の複合板は、上述の如き構成を有しているので、優れた折り曲げ加工性を有しており、何れの方向に折り曲げても、熱可塑性樹脂発泡シートが円滑に変形しながら、複合板の折り曲げ方向に追従し、その結果、熱可塑性樹脂発泡シートと金属シートとが剥離するようなことはなく、所望形状に美麗に折り曲げ加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】複合板の折り曲げ加工性を測定する要領を示した模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本実施例に何ら限定されるものでない。
【0071】
(実施例1)
第一段目の押出機の先端部に第二段目の押出機が接続してなるタンデム型の押出機を用意した。そして、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂との混合物(ジーイープラスチックス社製 商品名「NORYL NLV025−111」、ポリフェニレンエーテル量:70重量%、ポリスチレン系樹脂量:30重量%)57.1重量%及びポリスチレン(東洋スチレン社製 商品名「HRM−26」)42.9重量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(フェニレンエーテル成分:40重量%、スチレン成分:60重量%)100重量部と粉末タルク0.55重量部を第一段目の押出機に供給し溶融混錬した後、第一段目の押出機中に発泡剤として液化ブタン4.5重量部を圧入して変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を溶融混練した。
【0072】
しかる後、第一段目の押出機の先端に接続した第二段目の押出機に溶融状態の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を連続的に供給して樹脂温度が180℃となるように調整した上で、第二段目の押出機の先端に取り付けたサーキュラダイから円筒状に押出発泡させて円筒状発泡体を製造し、この円筒状発泡体を徐々に拡径させた上でマンドレルに供給して冷却した後、円筒状発泡体をその任意の箇所にて内外面間に亘って押出方向に連続的に切断、展開することによって長尺状の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートを製造し、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートをロール状に巻き取った。なお、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートの製造時の吐出量は135kg/時間で引取速度は12m/分であった。又、サーキュラダイのリップ部における内ダイの直径と、冷却マンドレルの押出機側の直径との比(ブローアップ比)は3.4であった。
【0073】
得られた変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートは、その厚みが2.6mm、坪量が130g/m2であった。
【0074】
ロール状に巻回した変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートを巻き出しながら、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートの両面全面に誘電加熱ロールを用いて加熱温度150℃、ライン速度8m/分の条件下にて厚み30μmのポリオレフィン系ホットメルト接着剤フィルム(クラボウ社製 商品名「クランベターX−2300」)を連続的に積層一体化した後、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートをロール状に巻き取った。
【0075】
次に、両面にポリオレフィン系ホットメルト接着剤フィルムを積層一体化した変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートを巻き出し、この変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートの両面全面にポリオレフィン系ホットメルト接着剤フィルムを介して厚みが0.2mmのアルミニウムシートを連続的に積層して積層シートとすると同時に、この積層シートを130℃に加熱した一対の加熱圧着ロール間に連続的に供給し、積層シートを一対の加熱圧着ロールによって表面温度が全面的に110℃となるように加熱してポリオレフィン系ホットメルト接着剤を溶融させると共に積層シートにその厚み方向に圧縮力を加えた後、積層シートをその表面温度が34℃となるまで冷却することによって、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートの両面にアルミニウムシートをポリオレフィン系ホットメルト接着剤を介して連続的に積層一体化して長尺状の厚みが3.1mmの複合板を得た。なお、複合板の引取速度は3m/分であった。複合板には波うちは発生しておらず、複合板の表面を指先で押圧しても、複合板の表面に凹みは生じなかった。
【0076】
(実施例2)
アルミニウムシートの厚みを0.5mmとし、積層シートを145℃に加熱した一対の加熱圧着ロール間に連続的に供給し、積層シートを一対の加熱圧着ロールによって表面温度が全面的に125℃となるように加熱したこと以外は実施例1と同様にして長尺状の厚みが5.1mmの複合板を得た。複合板には波うちは発生しておらず、複合板の表面を指先で押圧しても、複合板の表面に凹みは生じなかった。
【0077】
(実施例3)
積層シートを145℃に加熱した一対の加熱圧着ロール間に連続的に供給し、積層シートを一対の加熱圧着ロールによって表面温度が全面的に125℃となるように加熱したこと以外は実施例1と同様にして長尺状の厚みが4.4mmの複合板を得た。複合板には波うちは発生しておらず、複合板の表面を指先で押圧しても、複合板の表面に凹みは生じなかった。
【0078】
(実施例4)
第一段目の押出機中に圧入した液化ブタンの量を2.5重量部としたこと以外は実施例1と同様にして長尺状の厚みが2.1mmの複合板を得た。複合板には波うちは発生しておらず、複合板の表面を指先で押圧しても、複合板の表面に凹みは生じなかった。
【0079】
(実施例5)
ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂との混合物(ジーイープラスチックス社製 商品名「NORYL NLV025−111」、ポリフェニレンエーテル量:70重量%、ポリスチレン系樹脂量:30重量%)14.3重量%及びポリスチレン(東洋スチレン社製 商品名「HRM−26」)85.7重量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(フェニレンエーテル成分:10重量%、スチレン成分:90重量%)100重量部と粉末タルク0.55重量部を第一段目の押出機に供給したこと、第一段目の押出機中に圧入した液化ブタンの量を3重量部としたこと以外は実施例1と同様にして厚みが2.8mmの複合板を得た。
【0080】
(実施例6)
ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂との混合物(ジーイープラスチックス社製 商品名「NORYL NLV025−111」、ポリフェニレンエーテル量:70重量%、ポリスチレン系樹脂量:30重量%)85重量%及びポリスチレン(東洋スチレン社製 商品名「HRM−26」)15重量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(フェニレンエーテル成分:59.5重量%、スチレン成分:40.5重量%)100重量部と粉末タルク0.55重量部を第一段目の押出機に供給したこと、第一段目の押出機中に圧入した液化ブタンの量を5重量部としたこと以外は実施例1と同様にして厚みが3.3mmの複合板を得た。
【0081】
(比較例1)
第一段目の押出機の先端部に第二段目の押出機が接続してなるタンデム型の押出機を用意した。そして、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂との混合物(ジーイープラスチックス社製 商品名「NORYL NLV025−111」、ポリフェニレンエーテル量:70重量%、ポリスチレン系樹脂量:30重量%)57.1重量%及びポリスチレン(東洋スチレン社製 商品名「HRM−26」)42.9重量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(フェニレンエーテル成分:40重量%、スチレン成分:60重量%)100重量部と粉末タルク0.55重量部を第一段目の押出機に供給し溶融混錬した後、第一段目の押出機中に発泡剤として液化ブタン4.5重量部を圧入して変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を溶融混練した。
【0082】
しかる後、第一段目の押出機の先端に接続した第二段目の押出機に溶融状態の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を連続的に供給して樹脂温度が180℃となるように調整した上で、第二段目の押出機の先端に取り付けた多孔ダイから直径が3mmの棒状発泡体を押出発泡すると共に棒状発泡体同士を熱融着一体化することによって厚みが2.8mmの変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートを製造した。この変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートを用いたこと以外は実施例1と同様にして厚みが3.2mmの複合板を得た。
【0083】
(比較例2)
アルミニウムシートの厚みを0.6mmとし、積層シートを145℃に加熱した一対の加熱圧着ロール間に連続的に供給し、積層シートを一対の加熱圧着ロールによって表面温度が全面的に125℃となるように加熱したこと以外は実施例1と同様にして長尺状の厚みが5.3mmの複合板を得た。
【0084】
(比較例3)
変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートの製造時の引取速度を6m/分とし、アルミニウムシートの厚みを0.5mmとしたこと以外は実施例1と同様にして長尺状の厚みが6.1mmの複合板を得た。
【0085】
得られた複合板について、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートの厚み、密度、曲げ弾性率の最大値と最小値の比(最大値/最小値)、平均気泡径及び50%圧縮強度を測定し、その結果を表1に示した。なお、表1において、曲げ弾性率の最大値と最小値の比(最大値/最小値)は「曲げ弾性率比」と表記した。
【0086】
又、得られた複合板について、全体厚み、全体坪量、最大曲げ荷重、曲げ弾性率の最大値と最小値の比(最大値/最小値)、折り曲げ加工性及び発熱性試験における総発熱量を測定し、その結果を表1に示した。なお、表1において、曲げ弾性率の最大値と最小値の比(最大値/最小値)は「曲げ弾性率比」と表記した。
【0087】
(折り曲げ加工性)
得られた複合板から縦25mm、横100mmの平面長方形状の試験片Aを10枚切り出した。図1に示したように、互いに直角に交差する平面B1、B2を有する載置部材Bの平面B1上に試験片Aを載置した。平面B1、B2が交差する角部はRが2mmであった。試験片Aは、横方向の半分が載置部材Bの平面B2から突出した状態となるように載置部材B上に載置した。なお、試験片Aにおいて、層構成は省略した。
【0088】
次に、載置部材Bの平面B1上にある試験片A部分を固定させた状態で、載置部材Bの平面B2から突出した試験片A部分を下方に向かって押圧して載置部材Bの平面B2に接触するまで折り曲げた。
【0089】
折り曲げた状態の各試験片Aを目視観察し、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートに亀裂が生じているか否か、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートとアルミニウムシートとの間に剥離が生じているか否かを確認した。
【0090】
上記亀裂又は剥離が生じている試験片が0〜2枚であった場合を「○」、上記亀裂又は剥離が生じている試験片が3枚以上であった場合を「×」として評価した。
【0091】
【表1】

【符号の説明】
【0092】
A 試験片
B 載置部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂発泡シートの両面に接着剤を介して金属シートが積層一体化されてなる複合板であって、上記熱可塑性樹脂発泡シートの厚みが1〜5mm、上記熱可塑性樹脂発泡シートの密度が0.02〜0.1g/cm3、上記金属シートの厚みが0.1〜0.5mm、上記複合板の全体厚みが1.1〜5.5mm、上記複合板の全体坪量が1〜3.3kg/m2及び上記複合板の最大曲げ荷重が15〜65Nであることを特徴とする複合板。
【請求項2】
熱可塑性樹脂発泡シートの曲げ弾性率の最大値と最小値の比(最大値/最小値)が1〜1.5であることを特徴とする請求項1に記載の複合板。
【請求項3】
複合板の曲げ弾性率の最大値と最小値の比(最大値/最小値)が1.5以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合板。
【請求項4】
熱可塑性樹脂発泡シートは、フェニレンエーテル成分が10〜60重量%、スチレン成分が40〜90重量%である変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の複合板。
【請求項5】
複合板の発熱性試験における総発熱量が7.2MJ/m2以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の複合板。

【図1】
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【公開番号】特開2012−206457(P2012−206457A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75326(P2011−75326)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】