説明

複合粉末皮膜の形成方法及びその物品

【課題】製造効率を向上し、基材もしくは粉末被覆層の高い硬化温度への曝露による欠陥を抑制することのできる複合粉末被膜を提供する。
【解決手段】複合粉末皮膜14,16,18の形成方法は、粉末被覆組成物の多重層を基材12上に堆積し、この際隣接層を異なる粉末被覆組成物から形成し、粉末被覆組成物の多重層を一回の熱硬化工程で硬化する工程を含む。多重層を用いて、発電装置を水性腐食、粒子エロージョン、スラリーエロージョン、フレッチング、ファウリングから保護することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粉末皮膜の形成方法及びその物品に関する。
【背景技術】
【0002】
発電システムにおいては、基材を水性腐食、粒子エロージョン、スラリーエロージョン、擦過(フレッチング)、汚染(ファウリング)などから保護するために、粉末皮膜の多重層(即ち、複合皮膜)を使用できる。多重層は、通例、所望の特性のすべてを達成することが求められる。多重層を形成するには、各層を硬化してから、つぎの被覆層を適用する。これは時間がかかり、また高い硬化温度に繰り返し露呈されるので、基材か初期被覆層いずれかに有害であり、この結果基材か皮膜いずれかが有用な特性を喪失する、例えば耐食性、密着性、延性などが低減するおそれがある。発電システムにおいて、これらの皮膜は機能的な効果を持っているので、層の一体性が性能にとって重要である。
【0003】
発電システムに用いられる複合粉末皮膜にとっては、硬化時間が短く、かつ全体的高温曝露時間が短いことが望ましい。この目的に鑑みて、複合粉末皮膜を製造する効率のよい方法が求められている。
【特許文献1】米国特許第6184279号明細書
【特許文献2】米国特許第6034166号明細書
【特許文献3】米国特許第5962574号明細書
【特許文献4】米国特許第5505990号明細書
【特許文献5】米国特許第4375498号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第20060150902号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第20060292323号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第20050271900号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第20050287354号明細書
【特許文献10】国際公開第2006/012010号パンフレット
【特許文献11】国際公開第2007/067247号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の実施形態は、製造効率を向上し、基材もしくは粉末被覆層の高い硬化温度への曝露による欠陥を抑制することのできる複合粉末皮膜が必要とされていることに対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1実施形態では、複合粉末皮膜の形成方法は、粉末被覆組成物の多重層を基材上に堆積し、この際隣接層を異なる粉末被覆組成物から形成し、粉末被覆組成物の多重層を一回の熱硬化工程で硬化する工程を含む。多重層を用いて、発電装置を水性腐食、粒子エロージョン、スラリーエロージョン、擦過(フレッチング)、汚染(ファウリング)などから保護することができる。
【0006】
別の実施形態では、粉末皮膜(コーティング)が2以上の複合粉末皮膜を含み、各皮膜が一回の熱硬化工程で硬化され、また隣接する粉末被覆層が異なる組成物からなる。つまり、基材上に粉末皮膜を形成する方法は、粉末被覆組成物の多重層を含む第1スタックを基材上に堆積し、この際隣接層を異なる粉末被覆組成物から形成し、第1スタックを一回の熱硬化工程で硬化し、粉末被覆組成物の多重層を含む追加スタック1つ以上を第1スタック上に堆積し、この際隣接層を異なる粉末被覆組成物から形成し、追加スタックを硬化する工程を含む。
【0007】
本発明の粉末被覆方法の他の特徴及び利点は、以下の図面及び詳細な説明から明らかになる。このような追加の特徴や利点も、本明細書内に含まれ、本発明の要旨の範囲内に入り、特許請求の範囲により保護される。
【0008】
添付の図面を参照することで、本発明の多くの観点がよく理解できるはずである。図面中の部品は縮尺通りではなく、本発明の原理を明瞭に示すために部分的な強調を施してある。さらに、図面中の同一符号はすべての図において対応する部品を指す。
【0009】
本発明の特徴についての以下の詳細な説明及び実施例を参照することで、本発明を一層容易に理解できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、粉末被覆層の数より少ない数の硬化工程で、複合粉末皮膜を形成する方法を提供する。複合粉末皮膜(コーティング)は、少なくとも2つの粉末被覆層を含み、隣接層が異なる粉末被覆組成物からなり、これらの層を一回の熱硬化工程で硬化した、多層粉末皮膜を指す。本発明によれば、上記方法により製造した複合粉末皮膜を有する物品、特に金属基材、例えばタービンエンジン用ロータのブレードを含む、発電システム用物品も開示される。
【0011】
有利なことに、本発明の被覆方法は、硬化工程の数を低減し、しかもなお物品を水性腐食、粒子エロージョン、スラリーエロージョン、フレッチング、ファウリングなどから保護することができる。多重粉末被覆層を一回の硬化工程で硬化することにより、製造効率が向上する。その上、基材及び第1被覆層が(損傷を与える可能性のある)高い硬化温度に曝露される総合曝露時間が短い。
【0012】
適当な基材は、平坦シート、粗い表面もしくは非平坦表面を有する材料、ワイヤ、パーフォレーションのある材料など、どのような形状でもよい。粉末被覆組成物を、エッジやパーフォレーションの内面を含む、基材の全面もしくは選択表面に堆積する。基材は硬化条件と両立する材料ならどのような材料から構成することもできる。ここでは発電システム用の金属基材を特に考慮しているが、本発明の方法は、例えばガラス、セラミック、プラスチック、木材、紙、板紙、段ボール、布、プラスチックフィルムなどの非金属基材を含む他の基材に粉末皮膜を適用するのにも有用である。
【0013】
金属基材は、磁性及び非磁性金属基材を含む。金属基材の例には、アルミニウム及びアルミニウム合金、銅及び銅合金、マグネシウム及びマグネシウム合金、ニッケル及びニッケル合金、鉄及び鉄合金、例えば種々の鋼合金、錫及び錫合金、チタン及びチタン合金、タングステン及びタングステン合金、亜鉛及び亜鉛合金、及び上記金属基材の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。
【0014】
金属基材をまず、アルミナグリットなど種々の媒体でグリットブラスティングして、表面を粗面化し、粉末層の密着性を高める。グリットブラスティングに用いる空気の供給流れは、水、オイルなどの汚染物を含有せず、また予熱することができる。
【0015】
複合粉末皮膜を形成する方法は、さらに、基材と第1粉末被覆層との間に接着層又はプライマ層を設層して、第1粉末被覆層の基材への密着性を高める工程を含むことができる。接着層は、別の硬化工程を必要とするか、液体として適用する場合には、粉末被覆層とはみなさない。
【0016】
任意の接着層は、未硬化状態の樹脂又は他の液体もしくは半液体材料を含有することができる。しかし、接着層としてより適切な材料は、未硬化状態のエポキシ樹脂及びフェノール樹脂、そして種々のモノマーである。接着層は加熱で硬化するものが望ましいが、必ずしも加熱で硬化しない材料とすることもできる。基材の所定表面を樹脂層で覆った状態で、表面層の樹脂を溶剤で処理して接着層を形成することも可能である。
【0017】
多数の粉末被覆層を順次、当業界で周知の粉末被覆法により堆積(設層、成膜)する。周知の粉末被覆法には、特に、流動床法、静電流動床法、フロッキング法、成形法、磁気ブラシ法、霧箱塗装法、静電吹付法(コロナ帯電及び摩擦帯電ガン両方での)、及びフレーム溶射法(高速酸素燃料HVOF、熱溶射など)がある。
【0018】
複合粉末皮膜の層はどのような温度でも堆積できるが、代表的には周囲温度で堆積する。電圧、流動化空気流、又は微細化空気流の調節は、粉末被覆組成物及び堆積法に応じて変化する。粉末被覆層は、硬化前の厚さが約10〜約250μm(0.4〜10ミル)、特に約70〜約130μm(3〜5ミル)である。複合粉末皮膜中の隣接する層は異なる組成物からなる。発電システムに用いる基材の場合、組成物は、タービンエンジン用ロータのブレードにとって問題とされている水性腐食、粒子エロージョン、スラリーエロージョン、フレッチング及びファウリングを抑制するのに有効であるものを選ぶ。
【0019】
硬化工程前に、少なくとも2つの粉末被覆層を堆積する。これらの粉末被覆層は、特定の温度で所定の時間に硬化することができ、或いは温度、時間、圧力などの硬化条件を硬化プロセス中に変動させる「硬化プロファイル」を通過することができる。硬化温度及び時間の最適範囲は、当業界で既知の組成物についての方法を用いて求めるか、適当数の異なる硬化条件から選抜することにより求めることができる。
【0020】
粉末被覆組成物を調製するには、バインダ、樹脂、顔料、充填材、他の添加剤などを含む種々の成分を配合し、これらの成分を、例えば加熱・混練により加工し、配合素材を押し出す。この後素材を冷却し、小片もしくは小塊に粗粉砕し、ついで微粉砕して粉末とする。その後、粉末を基材上に堆積し被覆基材を得ることができる。本発明の方法に使用できる粉末粒子、その組成及び製造についての説明が、例えばComplete Guide to Powder Coatings (Issue 1-November 1999) of Akzo Nobelに見られる。
【0021】
粉末粒子は、粒径が約5〜150μm、さらに約5〜100μm、特に約5〜75μmの範囲にあり、これにより、硬化後にピンホールなどの欠陥が少ないか極めて少ない被覆層が得られる。粉末被覆層は通常、厚さが25〜100μm(約1〜4ミル)で、基材保護に適当である。大きい粒子ではもっと厚い層を設層して、確実に最小限度の被覆を実現する。比較的小さい粒径(50μm未満)が均一な皮膜を形成するのに一層望ましい。
【0022】
粉末被覆組成物は、フィルム形成性樹脂、具体的には硬化性熱可塑性ポリマー及び熱硬化性ポリマーを含有する。ここで用いる用語「フィルム形成性」は、組成物中に存在する溶剤又はキャリヤを除去するか、周囲温度もしくは高温で硬化すると、表面上に連続フィルムを形成することができる樹脂を指す。
【0023】
フィルム形成性樹脂の例には、少なくとも1種の反応性官能基を有するポリマーと、ポリマーの官能基と反応性の官能基を有する硬化剤との反応から形成された樹脂がある。ここで用いる用語「ポリマー」は、オリゴマーを包含するもので、ホモポリマー及びコポリマー両方を含む。ポリマーは、例えば、アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリビニル、セルロース、アクリレート、ケイ素系ポリマー、これらのコポリマー及び混合物とすることができ、またエポキシ、カルボン酸、ヒドロキシル、イソシアネート、アミド、カルバメート、カルボキシレート基などの官能基を含有することができる。
【0024】
アクリルポリマーには、アクリル酸もしくはメタクリル酸、又はアクリル酸もしくはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(例えばヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート)と、1種以上の他の重合可能なエチレン系不飽和モノマー、例えばアクリル酸のアルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート)又はビニル芳香族化合物(例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン)とのコポリマーがある。反応物質の比や反応条件は、側鎖にヒドロキシル又はカルボン酸官能価を有するアクリルポリマーとなるように選択する。
【0025】
粉末被覆組成物は、遊離ヒドロキシル及び/又はカルボキシル末端基を含有するものを含めて、ポリエステルポリマーもしくはオリゴマーを含有することもできる。このようなポリマーは、既知の方法で、多価アルコールとポリカルボン酸との縮合により製造する。適当な多価アルコールには、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン及びペンタエリスルトールがある。
【0026】
ポリカルボン酸の例には、アジピン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸がある。上述したポリカルボン酸のほかに、これらの酸の官能性等価物、例えば無水物、又はこれらの酸の低級アルキルエステル(例えばメチルエステル)も使用できる。また、少量のモノカルボン酸、例えばステアリン酸を使用できる。
【0027】
ヒドロキシル含有ポリエステルオリゴマーは、ヘキサヒドロフタル酸無水物などのジカルボン酸の無水物とネオペンチルグリコールなどのジオールとをモル比1:2で反応させることにより製造することができる。
【0028】
空気乾燥性を高めたい場合には、適当な乾性油脂肪酸を使用でき、その例には、アマニ油、大豆油、タル油、脱水ヒマシ油、又はキリ油からの誘導物がある。
【0029】
粉末被覆組成物は、末端イソシアネート基(NCO−終端)又は末端ヒドロキシル基(OH−終端)を含有するポリウレタンポリマーを含有することもできる。NCO−終端又はOH−終端ポリウレタンには、ポリマー状ポリオールなどのポリオールとポリイソシアネートとを反応させて製造したポリウレタンがある。粉末被覆組成物は、さらに、ポリマー状ポリアミンなどのポリアミンとポリイソシアネートとを反応させて製造した、末端イソシアネート又は第一級もしくは第二級アミン基を含有するポリウレアを含有することができる。所望の末端基を得るように、ヒドロキシル/イソシアネート又はアミン/イソシアネート当量比を調節し、反応条件を選択する。
【0030】
粉末被覆組成物は、ケイ素系ポリマーを含有することもできる。ここで用いる用語「ケイ素系ポリマー」は、主鎖中に1つ以上の−SiO−単位を有するポリマーを意味する。このようなケイ素系ポリマーには、ハイブリッドポリマー、例えば主鎖中に1つ以上の−SiO−単位を有する有機ポリマーブロックを含有するポリマーが含まれる。
【0031】
粉末被覆組成物は、硬化剤、例えばポリイソシアネート、ブロックトイソシアネート、無水物、エポキシド、ポリエポキシド、多酸、ポリオール、ポリアミン、アミン樹脂、フェノール類、及びこれらの組合せを含有することもできる。粉末被覆組成物は、硬化剤を他の成分と混合した1パック組成物として処方することができる。1パック組成物は、処方したままで保存安定性とすることができる。或いは、このような粉末被覆組成物を2パック組成物として処方することもでき、この場合、例えば上述したようなポリイソシアネート硬化剤を予め調製された他の組成物成分の混和物に適用の直前に添加することができる。予め調製された混和物は、硬化剤、例えば上述したようなアミノ樹脂及び/又はブロックトイソシアネート化合物を含有することができる。硬化工程では、代表的には、複合粉末皮膜を約20℃〜約370℃(約68〜約700°F)の温度に約5〜約60分間加熱、さらに特定すると約182℃〜約227℃(約360〜約440°F)の温度に約20〜約40分間加熱する。代表的には、基材を保護するのに2層又は3層で十分である。
【0032】
1実施形態では、フィルム形成性樹脂が一般に粉末被覆組成物中に、粉末被覆組成物の全重量に基づく重量%表示で、約30重量%超え、特に約40重量%超え及び約90重量%未満の量存在する。例えば、樹脂の量は粉末被覆組成物の30〜90重量%の範囲とすることができる。硬化剤を使用する場合、硬化剤は一般に、粉末被覆組成物の全重量に基づいて70重量%以下、代表的には10〜70重量%の量存在する。
【0033】
粉末被覆組成物は、任意の添加剤、例えば表面皮膜を処方する技術でよく知られた添加剤を含有することもできる。このような任意の添加剤には、例えば、界面活性剤、流れ調節剤、チキソトロープ剤、充填材、ガス発生防止剤、有機補助溶剤、触媒、酸化防止剤、光安定剤、顔料、紫外線吸収剤、及びこれらの組合せがある。任意の成分は、粉末被覆組成物の全重量に基づいて0.01重量%のような少量から20.0重量%のような多量までの量存在することができる。通常、任意成分の合計量は粉末被覆組成物の全重量に基づいて0.01〜25重量%の範囲である。
【0034】
したがって、1実施形態では、複合粉末皮膜の形成方法は、粉末被覆組成物の多重層を基材上に堆積し、この際隣接層を異なる粉末被覆組成物から形成し、粉末被覆組成物の多重層を一回の熱硬化工程で硬化する工程を含む。図1Aに、基材12及びその上に堆積した多重粉末被覆層14,16,18を有する物品を10で総称して示す。層14,16,18を順次基材12上に堆積し、ついで一回の熱硬化工程を行って、図1Bに示すように、未硬化層14,16,18に対応する硬化層14’,16’,18’を形成する。隣接する粉末被覆層は異なる組成を有する。つまり、粉末被覆層18と16は異なる組成を有し、粉末被覆層16と14は異なる組成を有する。粉末被覆層18と14は同じ組成でも異なる組成でもよい。例示より多いか少ない数の粉末被覆層をこのように堆積し、硬化することができる。
【0035】
別の実施形態では、粉末皮膜は2以上の複合粉末皮膜を含むことができ、ここで各複合粉末皮膜が一回の熱硬化工程で硬化され、隣接する粉末被覆層が異なる組成物からなる。したがって、基材上に粉末皮膜を形成する方法は、粉末被覆組成物の多重層を含む第1スタックを基材上に堆積し、この際隣接層を異なる粉末被覆組成物から形成し、第1スタックを一回の熱硬化工程で硬化し、粉末被覆組成物の多重層を含む追加スタック1つ以上を第1スタック上に堆積し、この際隣接層を異なる粉末被覆組成物から形成し、前記追加スタックを硬化する工程を含む。この方法を図2A〜2Dに示す。図2Aで、物品30は基材32及びその上に堆積した未硬化の粉末被覆層34,36,38を含む。つぎにこれらの層を熱硬化して、図2Bに示す硬化層34’,36’,38’を形成する。つぎに、図2Cに示すように、追加の未硬化の粉末被覆層40,42,44を最外硬化層38’の上に堆積する。つぎに未硬化層40,42,44を熱硬化して、図2Dに示す硬化層40’,42’,44’を形成する。この場合、隣接する層は異なる粉末被覆組成物から形成する。
【0036】
別の実施形態では、被覆物品は本発明の方法により形成した複合粉末皮膜を有する。物品は、タービンエンジン用ロータのブレード、タービンエンジン用バケット、水処理装置、電気及び通信装置用のエンクロージャ、照明取付具;照明器具;ネットワークインターフェース装置ハウジング;変圧器ハウジング、被覆塗装物品、自動車、航空機、土木、建築、コンピュータ及び電子産業に用いる他の物品とすることができる。
【0037】
複合粉末皮膜を製造する方法はいずれも、代表的な多数回硬化サイクルで見られるような基材及び個々の被覆層を高温に長時間曝露する不都合がないという利点を持つ。したがって製品の一体性が向上する。本方法はまた、製造効率を上げ、製造サイクル時間を短縮し、コストを下げる。
【0038】
ここで用いる単数表現は、数量を限定するものではなく、記載要素が少なくとも1つ存在することを表す。同じ特性又は成分に関するすべての範囲の上下限点はそれぞれ独立に組合せ可能で、また表記した上下限点を含む。ここで使用する量、部、比及び%は、特記しない限り、すべて重量基準である。図面に示すすべての図で同じ参照符号は同じ又は対応する要素を示す。「上部」、「下部」、「外側」、「内側」などの用語は便宜上の用語であり、限定する用語ではない。ここで用いる用語「第1」、「第2」などは、順序、数量又は重要性を表すものではなく、ある要素を他の要素と区別するのに使用する。量に関連して用いる修飾語「約」は、表示値を含み、その文脈で規定される意味をもつ(例えば、特定の量の測定に伴う誤差を含む)。
【0039】
本明細書では、具体例を挙げて、最良の形態を含む本発明を開示するとともに、当業者が装置もしくはシステムを製造・使用し、また方法を実行することを含めて本発明を実施できるようにしている。本発明の要旨は、特許請求の範囲に規定された通りで、当業者が想起できる他の例を含むことができる。このような他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有するか、特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない均等な構造要素を含むならば、特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】基材上に複合粉末皮膜を形成する方法を説明する線図である。
【図2】基材上に2つの複合粉末皮膜を形成する方法を説明する線図である。
【符号の説明】
【0041】
10 物品
12 基材
14,16,18 粉末被覆層
14’,16’,18’ 硬化層
30 物品
32 基材
34,36,38 粉末被覆層
34’,36’,38’ 硬化層
40,42,44 粉末被覆層
40’,42’,44’ 硬化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末被覆組成物の多重層を基材上に堆積し、この際隣接層を異なる粉末被覆組成物から形成し、
粉末被覆組成物の多重層を一回の熱硬化工程で硬化する
工程を含む、複合粉末皮膜の形成方法。
【請求項2】
前記基材が、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、鉄合金、鋼合金、錫、錫合金、チタン、チタン合金、タングステン、タングステン合金、亜鉛、亜鉛合金、及び上記金属基材の少なくとも1つを含む組合せからなる金属群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
基材がさらに、複合粉末皮膜の基材への密着性を高める接着層又はプライマ層を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
接着層がエポキシ樹脂又はフェノール樹脂を含有する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
粉末被覆組成物の多重層を堆積する工程を、流動床法、静電流動床法、フロッキング法、成形法、磁気ブラシ法、霧箱塗装法、静電吹付法、フレーム溶射法又はこれらの組合せで行う、請求項1記載の方法。
【請求項6】
各層の硬化前の厚さが約10〜約250μmである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
各層の硬化前の厚さが約70〜約130μmである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記粉末被覆組成物が約5〜約150μmのメジアン粒径を有する粒子を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記粉末被覆組成物が約5〜約100μmのメジアン粒径を有する粒子を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記粉末被覆組成物が約5〜約75μmのメジアン粒径を有する粒子を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記粉末被覆組成物が熱可塑性樹脂を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記粉末被覆組成物が熱硬化性樹脂を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記粉末被覆組成物が、アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリビニル、セルロース、アクリレート、ケイ素系ポリマー、これらのコポリマー及びこれらの組合せからなる群から選択されるポリマーを含有する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記粉末被覆組成物が、界面活性剤、流れ調節剤、チキソトロープ剤、充填材、ガス発生防止剤、有機補助溶剤、触媒、酸化防止剤、光安定剤、顔料、紫外線吸収剤、及びこれらの添加剤の少なくとも1つを含む組合せからなる群から選択される添加剤を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記硬化工程で、粉末被覆組成物の多重層を約20℃〜約370℃の温度に約5〜約60分間加熱する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記硬化工程で、粉末被覆組成物の多重層を約182℃〜約227℃の温度に約20〜約40分間加熱する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記基材がタービンエンジン用のロータのブレードである、請求項1記載の方法。
【請求項18】
粉末被覆組成物の多重層を含む第1スタックを基材上に堆積し、この際隣接層を異なる粉末被覆組成物から形成し、
第1スタックを一回の熱硬化工程で硬化し、
粉末被覆組成物の多重層を含む追加スタック1つ以上を第1スタック上に堆積し、この際隣接層を異なる粉末被覆組成物から形成し、
前記追加スタックを硬化する
工程を含む、基材上に粉末皮膜を形成する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−119460(P2009−119460A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291673(P2008−291673)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】