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複合絶縁樹脂及びそれを用いた絶縁スペーサ並びにガス絶縁機器
説明

複合絶縁樹脂及びそれを用いた絶縁スペーサ並びにガス絶縁機器

【課題】
少ないフィラー添加量で線膨張係数を従来並みか若しくはより低い値に抑制し、結果として複合絶縁樹脂の誘電率を抑制して放電劣化を抑制すること。
【解決手段】
本発明は、上記課題を解決するために、大小の粒子径を持ち、かつ、該小粒子径が長径と短径から成る無機フィラーを含有する複合絶縁樹脂であって、前記小粒子径の無機フィラーの短径が、100nm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合絶縁樹脂及びそれを用いた絶縁スペーサ並びにガス絶縁機器に係り、特に、大小の粒子径を持つ無機フィラーを含有するものに好適な複合絶縁樹脂及びそれを用いた絶縁スペーサ並びにガス絶縁機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂化合物は、アルミ、銅などの金属材料よりも線膨張係数が大きい。このために、主として炭素系有機化合物からなる樹脂化合物と金属面を接触もしくは接着させると、温度の上昇若しくは下降によって、樹脂及び金属が異なる割合で膨張若しくは収縮し、熱応力が発生する。熱応力が樹脂の強度限界を超えた時点で、樹脂-金属界面の剥離や、樹脂内部へのクラック破壊が生じる。
【0003】
このような不具合を抑制する目的で、多くの電気機器用樹脂では、線膨張係数の低い無機化合物を中心としたフィラーを充填し、金属に線膨張係数を近づけることで、上述したような破壊や剥離を解消している。
【0004】
このように、無機フィラーを混合した樹脂化合物のことを、以下、複合絶縁樹脂と呼ぶことにする。
【0005】
ところで、遮断器用の電気絶縁用複合絶縁樹脂としては、そのフィラーとしてアルミナが好んで使われる。その理由は、線膨張係数抑制用として一般的な複合絶縁樹脂に用いられるシリカが、耐食性に劣るためである。
【0006】
特に、SFガス遮断器においては、電気的なスイッチングの際に発生するアークにより、SFガスの分解と水蒸気との反応によりフッ化水素(HF)が発生する(HO+SFの反応によりHFガスが発生する)。このHFガスは、シリカを腐食し、機器の劣化を起こすことになる。
【0007】
一方、アルミナは、このような劣化現象に耐え得るが、比誘電率(以下εと表記)がシリカ4.0程度に対して、アルミナ8.0程度であり、また、ベースとなる樹脂は、品種により差はあるものの概ね2.0−5.0程度なので、アルミナを導入した複合絶縁樹脂では比誘電率が上昇する。
【0008】
この比誘電率の上昇は、絶縁用ガス、複合絶縁樹脂、導体の接近している箇所、特に、スペーサの絶縁樹脂部においては電界上昇を引き起こし、機器の絶縁破壊や劣化に結び付く。
【0009】
機器の小型化が進むにつれ、上述した電界もさらに高くなるため、新たな複合絶縁樹脂の開発と適用が急務である。新たな複合絶縁樹脂とは、即ち、線膨張係数を従来並みか若しくはより低い値に抑制しつつεを低下させた複合絶縁樹脂である。
【0010】
従来、低誘電率の複合絶縁樹脂としては、特許文献1及び2に記載されたものがある。即ち、特許文献1には、ナノ粒子と一緒にマイクロ粒子が分散されている硬化物でモールドされているスイッチギアについて記載されている。一方、特許文献2には、熱硬化性樹脂組成物中に無機充填剤と粒径100nm以下の小粒子からなる絶縁材用樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−093956号公報
【特許文献2】特開2007−258015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1には、ナノ粒子を添加することについての記載はあるものの、その大きさ組成、性状、表面状態については述べられていない。また、樹脂と金属界面の接着性向上に主として注目し、線膨張係数を改善することについては述べられていない。
【0013】
また、特許文献2に記載されているのは、主として複合絶縁樹脂の熱伝導性の向上を目的とし、フィラーとして大粒子については球状の粒子を用い、更に100nm以下の小粒子を加えるものであり、線膨張係数を改善することについては述べられていない。
【0014】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、少ないフィラー添加量で線膨張係数を従来並みか若しくはより低い値に抑制し、結果として複合樹脂の誘電率を抑制して放電劣化を抑制することのできる複合絶縁樹脂及びそれを用いた絶縁スペーサ並びにガス絶縁機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の複合絶縁樹脂は、上記目的を達成するために、大小の粒子径を持ち、かつ、該小粒子径が長径と短径から成る無機フィラーを含有する複合絶縁樹脂であって、前記小粒子径の無機フィラーの短径が100nm以下であることを特徴とする。
【0016】
これにより、線膨張係数を抑制することが可能である。つまり、線膨張係数が抑制される機構についてはまだ不明な点が多いが、小粒子径の無機フィラーの短径が100nm以下の非常に微細な粒子を用いることで、樹脂と無機フィラーの接触表面積が増大して、熱膨張に対する抗力が働くことが予測され、また樹脂中に微細構造が形成される場合には、更に熱膨張に対する抗力が著しくなる。
【0017】
また、本発明の複合絶縁樹脂は、上記に加え、小粒子径の無機フィラーがアルミナもしくはその表面を疎水化処理したアルミナであることを特徴とする。
【0018】
絶縁材として用いられる樹脂には極性の強いもの、例えばエポキシ樹脂などがある一方、極性の低いもの、例えば架橋ポリエチレン樹脂がある。一般的に無機粒子の表面には、OH基などをはじめとした極性基が露出していることが多い。このため、極性を持つエポキシ樹脂などには、混合条件にもよるが無機小径粒子は一様に混合される。
【0019】
一方、この極性基、例えばOH基をOCH基、CH基、その他アルキル、アルコキシ基に置換することで、表面を疎水化することが可能である。疎水化された小粒子は樹脂との相溶性が一般的に低く、疎水性相互作用によって集合体を形成し易い傾向にある。しかし、強力なせん断力場で温度条件を適正化することにより、凝集体による微細な組織を形成することができる。
【0020】
これにより、線膨張係数を添加量に比して大きく下げることが可能となる他、複合樹脂の耐クラック性を向上させることが可能となる。
【0021】
また、本発明の複合絶縁樹脂は、上記に加え、前記小粒子径の無機フィラーの短径が100nm以下の粒子の含有量は、全体の10vol%以下であることを特徴とする。
【0022】
無機フィラーの短径が100nm以下の径の小さな粒子は、成形前の樹脂混合物の粘度を上げやすく、成形時のハンドリング性を維持するためには最大でも10vol%以下の添加が望ましい。できれば、2−3vol%が更に好ましい。また、無理に10vol%以上の添加を実施しても、得られる効果が低下する場合さえ存在するため望ましくない。
【0023】
また、本発明の複合絶縁樹脂は、上記に加え、前記小粒子径の無機フィラーの短径が100nm超の粒子の含有量が全体の35vol%以下であることを特徴とする。
【0024】
一般的には、ガス遮断器等の高電圧機器向けとしてのフィラーは、全複合樹脂量に対して35vol%-50vol%程度として用いられることが多い。このままでは、特にアルミナを使用した場合にεが従来と同じように高くなってしまう。
【0025】
通常、線膨張係数は、含まれる素材の体積比率に対して加成性を持っているため、ほぼフィラーを入れた分量だけ、線膨張係数が増大することになるが、本発明者等の新たな知見によれば、小粒子径の無機フィラーの短径が100nm以下の微細な小粒子を添加することにより、添加した体積分よりもさらに線膨張係数を低くすることが可能である。
【0026】
上述した小粒子は、大量に添加することが難しい上、添加しても効果が見られなくなることがあるので、小粒子と大粒子を合わせて35vol%以下の添加量とすることが好ましい。線膨張率抑制効果の大きな小粒子を添加する場合には、合わせた添加量が20vol%以下でも構わない。
【0027】
また、本発明の複合絶縁樹脂は、上記に加え、前記小粒子の粒径が50nm以下であることを特徴とする。
【0028】
本発明者等の独自の検討によれば、特に、小さい粒子において線膨張率の低下効果が大きく、小粒子短径が100nm程度で体積分以上の線膨張率抑制効果はほぼ見られなくなる。また、小粒子短径が100nm前後の大きさの粒子では沈降が発生する場合もある。従って、粒子径は小さければ小さいほどよいが、コストや製法などの面から小粒子短径が50nm程度を目標とすることが良い。
【0029】
当然であるが、製法により更に小さな粒子を低コストで入手できる場合には、小粒子短径が50nm以下の粒子を用いることが望ましい。
【0030】
また、本発明の複合絶縁樹脂は、上記した複合絶縁樹脂のベースとなる樹脂が、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、架橋ポリエチレン樹脂などの熱硬化性樹脂及びその混合物であることを特徴とする。
【0031】
これらの樹脂は、特殊な構造を持つもの以外については広く一般的に生産され、入手が容易で安価である。また、本発明においても、これらの安価な樹脂を使うことによるデメリットは全く生じない。従って、これら樹脂を用いることで、安価に線膨張係数の低い樹脂を形成することが可能である。また、同じ線膨張係数であってもεを低下させることが可能である。
【0032】
また、本発明の複合絶縁樹脂は、上記した複合絶縁樹脂のベースとなる樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂及びその混合物若しくはブロックコポリマーであることを特徴とする。
【0033】
熱可塑性樹脂は、一般的には耐熱性に劣るなどの問題があるが、成形の容易性や大量生産性に優れている。
【0034】
本発明においても、これらの熱可塑性樹脂を用いることで、熱可塑性樹脂特有の優れた性質を残しつつ、少ない粒子添加量で線膨張係数の低い樹脂を形成することが可能である。また、同じ線膨張係数であってもεを低下させることが可能である。
【0035】
また、本発明の複合絶縁樹脂は、上記した小粒子径の無機フェラーが、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化マグネシウム、フッ化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどの各種無機窒素化合物、シリコーンのいずれか若しくは組み合わせであることを特徴とする。
【0036】
これらの粒子には、それぞれ熱伝導率を高くするなど特有の効果を持っており、これらの特性を維持したまま線膨張係数を抑制し、結果としてεの小さな複合絶縁樹脂を使うことが可能となる。
【0037】
また、本発明の絶縁スペーサは、絶縁性ガスが充填された容器内に配設された導体を絶縁支持するものであって、上記構成の複合絶縁樹脂から成ることを特徴とし、更に、本発明のガス絶縁機器は、絶縁性ガスが充填された容器内に配設された導体を絶縁支持する絶縁スペーサが、上記構成の絶縁スペーサであり、しかも、前記ガス絶縁機器は、前記絶縁性ガスとしてSFガスが充填されたSFガス遮断器であることを特徴とする。
【0038】
SFガスは消弧性に優れた絶縁ガスであり、現在においても一般に使用されるガス遮断器用の絶縁気体では最も優れたものである。
【0039】
但し、地球温暖化係数がCOの約27000倍に及ぶという弱点を持っているが、全CO排出量に対して高電圧機器向けに用いられるSFガスの量はわずかであり、また廃棄時に回収を積極的に実施することにより、温暖化への影響を回避することが可能である。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、少ないフィラー添加量で線膨張係数を従来並みか若しくはより低い値に抑制でき、結果として複合絶縁樹脂の誘電率を抑制して放電劣化を抑制することができる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の複合絶縁樹脂が適用されるガス絶縁機器を示す断面図である。
【図2】本発明の複合絶縁樹脂におけるアルミナ(22nm及び通常のマイクロサイズアルミナ)、シリカ粒子(疎水化)の添加量と標準的なビスフェノールA骨格を持った線膨張係数の関係を示す特性図である。
【図3】本発明の複合絶縁樹脂における5vol%の22nmサイズのアルミナナノフィラーを添加したサンプルに対し、マイクロサイズの通常アルミナフィラー添加量を増やしていった場合の線膨張係数減少率を示す図である。
【図4】本発明の複合絶縁樹脂におけるIV族の酸化物ナノフィラー(粒子径12nm)のビスフェノールA系エポキシ樹脂に対する添加量と線膨張係数の関係を示す特性図である。
【図5】本発明の複合絶縁樹脂における表面に処理をしない粒子及びOH基をメチル基に置換し、表面は疎水化されている粒子を分散させたエポキシ樹脂の透過型SEM写真を示す図である。
【図6】本発明の複合絶縁樹脂における3vol%シリカ粒子の小粒子短径と線膨張係数との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の複合絶縁樹脂について説明する。尚、実施例を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例1】
【0043】
図1乃至3に基づいて、本発明の実施例1であるガス絶縁機器(例えば、SFガス遮断器)用の複合絶縁樹脂について説明する。
【0044】
図1は、ガス絶縁機器における絶縁スペーサ付近の概略を示したものである。
【0045】
該図に示す如く、ガス絶縁機器の絶縁スペーサ20付近の構造は、絶縁性ガスであるSFガスが充填されたケーシング(容器)30内に配設された導体10を絶縁支持する複合樹脂製の絶縁スペーサ20が、ケーシング30に絶縁支持されて概略構成されている。そして、導体10が100kVの電位を持ち、ケーシング30はアースされている。
【0046】
また、図1においては、破線で囲んだ部分が特に電界が高くなりやすい部位であり、複合絶縁樹脂の限界を超えて電界が高くなると、複合絶縁樹脂製の絶縁スペーサ20が最悪の場合、絶縁破壊に至る。
【0047】
通常、複合絶縁樹脂製の絶縁スペーサ20には、多くの場合、添加剤としてアルミナが使用されている。これは、充填ガスとしてSFガスを用いているため、侵入した水蒸気が放電現象などにより反応を起こし、特に、シリカに対する腐食性の高いHFガスが発生するため、通常の線膨張係数抑制材として使われるシリカが使えないためである。
【0048】
アルミナは誘電率が8程度であり、シリカよりも高い上、その線膨張係数を導体10の線膨張係数に近づけるために、体積にして本実施例では40%程度、製品によっては、それを超える量を添加している。
【0049】
このため、複合絶縁樹脂の比誘電率εは、添加材としてアルミナを使わない場合に比べて高くなるが、コストと耐食性を両立する問題からアルミナが一般的に使われている。複合絶縁樹脂のεが高くなると、周囲はεが約1.0のSFガスで囲まれているため、破線で囲んだ部分の電界が高くなる。これにより、ここを起点とした放電やそれに伴う破壊が起こりやすくなる。
【0050】
以上のような理由により複合絶縁樹脂の低ε化が望まれている。
【0051】
図2は、アルミナ(22nmアルミナ粒子及び通常の(マイクロサイズ)アルミナ)、シリカ粒子(12nm疎水化シリカ粒子)の添加量と標準的なビスフェノールA骨格を持った線膨張係数の関係を示したものである。
【0052】
図2から分かるように、通常の(マイクロサイズ)アルミナを添加した場合には、ほぼ加成則にのっとって線膨張係数が減少していく。このため、所望の線膨張係数を達成するには、時には40-50vol%にも及ぶマイクロサイズのフィラーを添加する必要が生じる。
【0053】
ところが、一方で22nmアルミナフィラーを添加した場合には、わずか5vol%の添加で20%程度の線膨張係数削減効果が期待できることが分かる。
【0054】
しかし、更に5vol%を超えて10vol%まで添加量を増やすと、硬化前の樹脂粘度が極めて高くなり取り扱いが不便になるため、テストサンプルを作成したのみで、物性実験を実施しなかった。
【0055】
図3は、5vol%の22nmサイズのアルミナフィラーを添加したサンプルに対し、マイクロサイズの通常のアルミナフィラー添加量を増やしていった場合の線膨張係数減少率を示したものである。
【0056】
通常、40vol%程度の高い添加率でアルミナを導入しない限り得られない線膨張係数(線膨張係数約50%)に、低い通常の(マイクロサイズ)アルミナフィラー添加量で到達している。このため、同じ線膨張係数を得るにも22nmサイズのアルミナフィラー5vol%と通常の(マイクロサイズ)アルミナフィラー20%、計25vol%のフィラーを添加するだけで十分低い線膨張係数となるので、εを抑制することが可能となる。
【0057】
以上のように、本実施例によれば、低いアルミナフィラー添加量で同等の線膨張係数を実現できるため、複合絶縁樹脂のεを抑制し、放電による劣化破壊を抑制することが可能となる。
【0058】
図4に、12nmIV族系酸化物粒子及び12nm疎水化IV族酸化物粒子のビスフェノールA系エポキシ樹脂に対する添加量と線膨張係数の関係を示す。
【0059】
実験にあたっては、二種類のナノフィラーを用いた。一つは、特に表面に処理をしない粒子(以下、粒子Aという)であり、これは赤外分光光度計では、OH基の存在を示唆するピークが見られた。もう一つは、このOH基をメチル基に置換したものであり、表面は疎水化されている(以下、粒子Bという)。
【0060】
図4から明らかなように、表面を疎水化処理した粒子Bを添加した方(12nm疎水化IV族酸化物粒子)が低い線膨張率抑制係数をもつことが判明した。また、破壊靭性値(図示せず)を濃度2vol%にて比較したところ、無添加樹脂に比較して粒子A添加の場合(12nmIV族系酸化物粒子)には10%程度、粒子Bを添加した場合には20%程度の向上が見られた。
【0061】
このことは、樹脂内に、粒子Bを添加することで何らかの強度及び膨張を抑制する構造が形成されたことを示唆している。
【0062】
エポキシ樹脂は、樹脂中に多数のOH基、C=O基を含むため、極性が高く、親水性物質を良く分散させる。その一方で、疎水性物質は分散しにくい傾向にあり、分散したとしても通常は凝集体を形成して沈降を起こす。
【0063】
ところが、非常に高いせん断力をかけた上、12nmという微細な粒子を用いることで、沈降速度を1日あたり数nm以内に収めることができる。この状態のまま硬化させることで、複合絶縁樹脂内に内部構造が形成されるものと思われる。
【0064】
このことを、透過型SEM写真により確認した。図5は、粒子A及び粒子Bを分散させたエポキシ樹脂の透過型SEM写真を示す。
【0065】
該図に示す如く、粒子A(図5左側)の場合には、比較的均一に粒子分散が起きていることが分かる。一方、粒子B(図5の右側)の場合には、網目状の構造体が生成していることが分かる。この構造体は、一種の凝集物とも呼べるものではあるが、粒子径が小さいために沈降を起こすことなく樹脂中に存在し、硬化後もそのまま網目状の構造が維持されたままとなる。これを実現するためには、粒子径をできるだけ小さくする必要がある。
【0066】
図6は、3vol%シリカ粒子の小粒子短径と線膨張係数との関係を示すものである。
【0067】
該図から、小粒子短径が100nm程度以下から線膨張係数が低下し効果が表れはじめるが、顕著な効果を得るには、小粒子短径を50nm以下とする必要があることが分かる。この小粒子短径は、小さければ小さいほど効果があるが、下限値は、0.8nm程度である。
【0068】
以上のように、本実施例によれば、粒子の表面を疎水化処理することで、より線膨張率の抑制効率を向上させることが可能である。また、好ましくは小粒子短径を50nm以下としたナノフィラーを用いることで大きな効果が期待できる。
【0069】
尚、上述したナノフィラーは、主にアルミナ及びシリカについてである。その理由として、両者は比較的安価であり、商用遮断器にも適用し易いためである。
【0070】
コストをかけても構わないのであれば、チタニア、酸化マグネシウム、フッ化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ジルコニア、ハフニアなどの各種無機酸化物、若しくは無機窒化物、シリコーンのいずれか、若しくはそれらの組み合わせであっても同様に線膨張率の抑制効果と各種フィラーの特徴に基づいた特性を同時に得ることができる。例として、フッ化アルミニウムを用いた場合では、熱伝導率を向上させることも同時に可能である。
【0071】
また、上記では、主に熱硬化性樹脂のうち特にエポキシ樹脂について述べてきたが、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、架橋ポリエチレン樹脂などの熱硬化性樹脂及びその混合物であっても同様の効果を奏する。また、同様にポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂及びその混合物若しくはブロックコポリマーであっても同様の効果を奏する。
【0072】
更に、上述した実施例では、極性を持つ樹脂に疎水性のナノフィラーを導入することで大きな線膨張率抑制効果が得られることを説明したが、逆に疎水性の樹脂、例えば架橋ポリエチレンなどに親水性のナノフィラー、例えば表面未処理の無機粒子を用いても同様に線膨張係数抑制効果の増大効果を奏することは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
10…導体、20…絶縁スペーサ、30…ケーシング、50…充填ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大小の粒子径を持ち、かつ、該小粒子径が長径と短径から成る無機フィラーを含有する複合絶縁樹脂であって、
前記小粒子径の無機フィラーの短径が、100nm以下であることを特徴とする複合絶縁樹脂。
【請求項2】
請求項1に記載の複合絶縁樹脂において、
前記小粒子径の無機フィラーは、アルミナ若しくはその表面を疎水化処理したアルミナであることを特徴とする複合絶縁樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合絶縁樹脂において、
前記小粒子径の無機フィラーの短径が100nm以下の粒子の含有量は、全体の10vol%以下であることを特徴とする複合絶縁樹脂。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合絶縁樹脂において、
前記小粒子径の無機フィラーの短径が100nm超の粒子の含有量は、全体の35vol%以下であることを特徴とする複合絶縁樹脂。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の複合絶縁樹脂において、
前記小粒子径の無機フィラーの短径が、50nm以下であることを特徴とする複合絶縁樹脂。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合絶縁樹脂において、
前記複合絶縁樹脂のベースとなる樹脂が、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、架橋ポリエチレン樹脂などの熱硬化性樹脂及びその混合物であることを特徴とする複合絶縁樹脂。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合絶縁樹脂において、
前記複合絶縁樹脂のベースとなる樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂及びその混合物若しくはブロックコポリマーであることを特徴とする複合絶縁樹脂。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合絶縁樹脂において、
前記小粒子径の無機フィラーは、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化マグネシウム、フッ化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ジルコニア、ハフニアなどの各種無機酸化物若しくは無機窒化物、シリコーンのいずれか若しくは組み合わせであることを特徴とする複合絶縁樹脂。
【請求項9】
絶縁性ガスが充填された容器内に配設された導体を絶縁支持する絶縁スペーサにおいて、
前記絶縁スペーサは、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の複合絶縁樹脂から成ることを特徴とする絶縁スペーサ。
【請求項10】
絶縁性ガスが充填された容器内に配設された導体を絶縁支持する絶縁スペーサが、前記容器に絶縁支持されているガス絶縁機器において、
前記絶縁スペーサは、請求項9に記載の絶縁スペーサであることを特徴とするガス絶縁機器。
【請求項11】
請求項10に記載のガス絶縁機器において、
前記ガス絶縁機器は、前記絶縁性ガスとしてSFガスが充填されたSFガス遮断器であることを特徴とするガス絶縁機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−99183(P2013−99183A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241930(P2011−241930)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】