複合透明導電体およびその形成方法
金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブに基づく一次導電性媒体と、異なる種類のナノ構造または連続導電性薄膜に基づく二次導電性媒体とを備える複合透明導電体が記載される。また、複数の金属ナノワイヤまたは複数の金属ナノチューブを含む一次導電性媒体と、一次導電性媒体に連結される二次導電性媒体であって、連続導電性薄膜である二次導電性媒体とを備える機器が記載される。さらに、第1の電極と、第1の電極および第2の電極の間の垂直距離がセルギャップを規定する第2の電極とを備え、第1の電極は一次導電性媒体および二次導電性媒体を含む複合透明導電体であり、一次導電性媒体はセルギャップと類似のメッシュサイズを有する金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブを含み、二次導電性媒体はセルギャップの約1/5から1/100までのメッシュサイズを有する連続導電性薄膜またはナノ構造の導電性網である、液晶ディスプレイセルが記載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本開示は、導電性ナノ構造に基づく複合透明導電体と、それを形成するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電体は、光透過性導電性薄膜を指す。透明導電体は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル、エレクトロルミネセント素子、および薄膜太陽電池等のフラットパネルディスプレイにおける透明電極として、帯電防止層として、ならびに電磁波遮蔽層として広く使用されている。
【0003】
従来の透明導電体には、インジウムスズ酸化物(ITO)等の真空蒸着金属酸化物が含まれる。しかしながら、金属酸化物膜は、高導電率を達成するために、真空チャンバ、上昇蒸着温度、および/または高い焼きなまし温度を必要とすることから、加工に費用が掛かる。また、金属酸化物膜は、屈曲等の微量の物理的応力を受ける場合であっても、脆弱で破損し易い。
【0004】
また、導電性高分子も、光透過性電導体として使用されてきた。しかしながら、導電性高分子は、概して、金属化学物皮膜よりも低い導電率値および高い光吸収性を有し(特に可視波長で)、化学的および長期的安定性の不足を被る。
【0005】
導電性ナノ構造は、そのサブミクロン寸法により光透過性導電性膜を形成することが可能である。同時係属および共有の特許文献1、特許文献2、および特許文献3は、金属ナノワイヤ等の網状異方性導電性ナノ構造によって形成される透明導電体について説明している。ITO膜と同様に、ナノ構造ベースの透明導電体は、フラットパネルディスプレイおよびタッチスクリーン等のエレクトロクロミックディスプレイにおける薄膜トランジスタに連結可能である電極として特に有用である。加えて、ナノ構造ベースの透明導電体は、色フィルタおよび偏光子における塗膜として、偏光子として、およびその他のものとしても適切である。上記同時係属出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0006】
高品質のディスプレイシステムに対する需要増加を満たすために、費用効率が高く、かつ高性能であるナノ構造ベースの透明導電体を提供する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第11/504,822号明細書
【特許文献2】米国特許出願第11/871,767号明細書
【特許文献3】米国特許出願第11/871,721号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
複合透明導電体およびその用途について説明する。
【0009】
一実施形態は、複数の金属ナノワイヤまたは複数の金属ナノチューブを含む一次導電性媒体と、一次導電性媒体に連結される二次導電性媒体であって、第2の種類のナノ構造または連続導電性薄膜を含む二次導電性媒体とを備える複合透明導電体について説明する。
【0010】
別の実施形態は、複数の金属ナノワイヤまたは複数の金属ナノチューブを含む一次導電性媒体と、一次導電性媒体に連結される二次導電性媒体であって、連続導電性薄膜である二次導電性媒体とを備える機器について説明する。
【0011】
さらなる実施形態は、第1の電極と、第2の電極であって、第1の電極および前記第2の電極の間の垂直距離はセルギャップを規定する第2の電極とを備え、第1の電極は、一次導電性媒体および二次導電性媒体を含む複合透明導電体であり、一次導電性媒体は、セルギャップと類似のメッシュサイズを有する金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブを含み、二次導電性媒体は、セルギャップの約1/5から1/100までのメッシュサイズを有する連続導電性薄膜またはナノ構造の導電性網である、液晶ディスプレイセルについて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面において、同一の参照番号は、類似の要素または作用を示す。図面における要素のサイズおよび相対位置は、必ずしも一定の縮尺で描かれてはいない。例えば、種々の要素の形状および角度は一定の縮尺で描かれず、これらの要素のいくつかは、図面の視認性を改善するために、任意により拡大および配置されている。さらに、描かれる要素の特定の形状は、特定の要素の実際の形状に関するいかなる情報も伝えることを意図せず、単に、図面を認識し易いように選択されただけである。
【図1】図1は、電気的パーコレーションレベルを上回る、金属ナノワイヤの膜を示す。
【図2A】図2Aは、電気的パーコレーションレベルを下回る、金属ナノワイヤの膜を示す。
【図2B】図2Bは、電気的パーコレーションレベルを下回り、かつ連続導電性薄膜と組み合わせられる金属ナノワイヤを備える複合透明導電体を示す。
【図2C】図2Cは、電気的パーコレーションレベルを下回り、かつ第2の種類の異方性ナノ構造から形成される導電性膜と組み合わせられる金属ナノワイヤを備える複合透明導電体を示す。
【図3A】図3Aは、隣接する金属ナノワイヤ間で局在化される非均一電場を示す。
【図3B】図3Bは、連続導電性薄膜の存在下の均一電場を示す。
【図4A】図4A−4Cは、金属ナノワイヤおよびカーボンナノチューブに基づく複合透明導電体の実施形態を示す。
【図4B】図4A−4Cは、金属ナノワイヤおよびカーボンナノチューブに基づく複合透明導電体の実施形態を示す。
【図4C】図4A−4Cは、金属ナノワイヤおよびカーボンナノチューブに基づく複合透明導電体の実施形態を示す。
【図5】図5は、その寸法が異なる2つの異なる種類の金属ナノワイヤを有する複合透明導電体を示す。
【図6A】図6A−6Bは、金属ナノワイヤおよび金属酸化物膜に基づく複合透明導電体の実施形態を示す。
【図6B】図6A−6Bは、金属ナノワイヤおよび金属酸化物膜に基づく複合透明導電体の実施形態を示す。
【図6C】図6Cは、1対の並列抵抗器を図式的に示す。
【図7A】図7A−7Bは、金属ナノワイヤおよび導電性ポリマー膜に基づく複合透明導電体の実施形態を示す。
【図7B】図7A−7Bは、金属ナノワイヤおよび導電性ポリマー膜に基づく複合透明導電体の実施形態を示す。
【図8】図8は、2つの透明電極間に配置される液晶材料を図式的に示す。
【図9】図9は、複合透明導電体を組み込む機器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概して、複合透明導電体は、少なくとも2つの種類の透明導電性媒体から形成される導電性膜である。より具体的には、複合透明導電体は、一次導電性媒体としての金属異方性ナノ構造(本明細書で上述した)と、一次導電性媒体に連結される二次導電性媒体とを含む。典型的には、二次導電性媒体は、第2の種類の導電性ナノ構造の導電性網、または導電性ポリマーもしくは金属酸化物から形成される連続導電性薄膜である。
【0014】
複合透明導電体の電気的特性および光学的特性は、構成導電性媒体の幾何学的形状、導電率、光学的特性、分布、および荷重レベル等の要因によって判断される。
【0015】
特定の実施形態では、複合透明導電体は、個別の導電性膜の層状構造である。他の実施形態では、複合透明導電体は、2つ以上の種類の導電性媒体(例えば、2つ以上の種類の導電性ナノ構造)が完全に統合される凝集構造である。構造構成にかかわらず、複合透明導電体は、構成導電性媒体の単なる相加的効果を上回る特性を、このような構成導電性媒体の賢明な選択によって呈することが可能である。
【0016】
(導電性ナノ構造)
特定の実施形態では、複合透明導電体は、少なくとも2つの種類のナノ構造を備え、そのうちの1つは、金属異方性ナノ構造を対象とする。本明細書において使用する際、「ナノ構造」または「導電性ナノ構造」は、概して、ナノサイズの構造を指し、その少なくとも1つの寸法は、500nm未満、より好ましくは、250nm、100nm、50nm、または25nm未満である。
【0017】
ナノ構造は、任意の形状または幾何学的形状を有することが可能である。特定の実施形態では、ナノ構造は、等方的形状(すなわち、アスペクト比=1)である。典型的な等方性ナノ構造には、ナノ粒子が含まれる。好適な実施形態では、ナノ構造は、等方的形状(すなわち、アスペクト比≠1)である。本明細書において使用する際、アスペクト比は、ナノ構造の長さおよび幅(または直径)の比率を指す。典型的には、異方性ナノ構造は、その長さに沿って長手方向軸を有する。例示的な異方性ナノ構造には、本明細書に定義するように、ナノワイヤおよびナノチューブが含まれる。
【0018】
ナノ構造は、中実または中空であることが可能である。中実ナノ構造には、例えば、ナノ粒子およびナノワイヤが含まれる。「ナノワイヤ」は、本明細書に定義するように、中実異方性ナノ構造を指す。典型的には、各ナノワイヤは、10を上回る、好ましくは50を上回る、より好ましくは100を上回るアスペクト比(長さ:直径)を有する。典型的には、ナノワイヤは、500nmを上回る、または1μmを上回る、または10μmを上回る長さを有する。
【0019】
中空ナノ構造には、例えば、ナノチューブが含まれる。「ナノチューブ」は、本明細書に定義するように、中空異方性ナノ構造を指す。典型的には、ナノチューブは、10を上回る、好ましくは50を上回る、より好ましくは100を上回るアスペクト比(長さ:直径)を有する。典型的には、ナノワイヤは、500nmを上回る、または1μmを上回る、または10μmを上回る長さを有する。
【0020】
ナノ構造は、任意の導電性材料から形成可能である。最も典型的には、導電性材料は、金属である。金属材料は、元素金属(例えば、遷移金属)または金属化合物(例えば、金属酸化物)であることが可能である。また、金属材料は、2つ以上の種類の金属を含む金属合金または2種の金属からなる材料であることが可能である。適切な金属には、銀、金、胴、ニッケル、金めっき銀、白金、およびパラジウムが含まれるが、これらに限定されない。また、導電性材料は、炭素または黒鉛(炭素の同素体)等の非金属であることも可能である。
【0021】
上述のように、金属異方性ナノ構造は、複合透明導電体における一次導電性媒体として使用される。好適な種類の異方性金属ナノ構造には、金属ナノワイヤが含まれる。金属ナノワイヤは、金属、金属合金、めっき金属、または金属酸化物から形成されるナノワイヤである。適切な金属ナノワイヤには、銀ナノワイヤ、金ナノワイヤ、銅ナノワイヤ、ニッケルナノワイヤ、金めっき銀ナノワイヤ、白金ナノワイヤ、およびパラジウムナノワイヤが含まれるが、これらに限定されない。同時係属および共有の米国出願第11/766,552号、第11/504,822号、第11/871,767号、および第11/871,721号は、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)を調製する方法と、金属ナノワイヤに基づく透明導電体を形成およびパターン化する方法とについて説明しており、その説明は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0022】
一次導電性媒体に使用される別の好適な種類の異方性金属ナノ構造には、金属ナノチューブが含まれる。2008年2月26日に出願された同時係属および共有の米国特許出願第61/031,643号は、金属ナノチューブ(例えば、金ナノチューブ)を調製する方法と、金属ナノチューブに基づく透明導電体の形成およびパターン化の方法とについて説明しており、その説明は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0023】
本明細書においてより詳細に論じるように、ナノワイヤおよびナノチューブ等の金属異方性ナノ構造は、異なる種類の導電性ナノ構造により形成される二次導電性媒体と組み合わせ可能である。二次導電性媒体は、カーボンナノチューブ、一次導電性媒体を形成する金属ナノワイヤ(または、ナノチューブ)とは異なる金属ナノワイヤ(または、ナノチューブ)、導電性ナノ粒子、およびその同等物を含むが、これらに限定されないナノ構造のうちのいずれかであることが可能である。
【0024】
特定の具体的な実施形態では、二次導電性媒体を形成する導電性ナノ構造は、カーボンナノチューブである。カーボンナノチューブも、導電性異方性ナノ構造である。より具体的には、「カーボンナノチューブ」は、巻き上げ状グラフェンシートの円筒または管を指す。各グラフェンシートは、sp2混成炭素原子を含む。カーボンナノチューブは、単層構造もしくは多層構造またはその混合のいずれかの形状をとることが可能である。単層カーボンナノチューブ(SWNT)は、単一の巻き上げ状グラフェンシートから形成される。多層カーボンナノチューブ(MWNT)は、相互に入れ子式である2つ以上の同軸上に配置されるSWNTである。SWNTおよびMWNTの両方は、金属特徴および導電性特徴を示すことで知られている。
【0025】
典型的には、カーボンナノチューブは、高アスペクト比を有する剛性構造である。SWNTおよびMWNTの長さは、通常1μmを十分上回り、直径は、約1nm(SWNTの場合)から約50nm(MWNTの場合)までの範囲である。典型的には、カーボンナノチューブのアスペクト比は、約10−100,000の範囲である。より典型的には、アスペクト比は、約1,000−10,000の範囲である。SWNTは、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)より市販されている。
【0026】
カーボンナノチューブは、任意により、凝集防止のために表面処理され得る。例えば、より良好に水媒体へ分散するように、親水性官能基が表面に組み込まれ得る。表面処理に関する種々の方法については、Peng H.らのSidewall Carboxylic Acid Functionalization of Single−Walled Carbon Nanotubes、J.Am.Chem.Soc.125、15174−15182、2003、およびLiu J.らのFullerene Pipes、Science、280、1253−1256、1998に説明されている。
【0027】
さらなる実施形態では、導電性ナノ構造は、銀、金、銅、およびニッケルナノ粒子等の金属ナノ粒子、ならびにインジウムスズ酸化物およびドープ酸化亜鉛ナノ粒子等の金属酸化物ナノ粒子を含む導電性ナノ粒子である。非金属導電性ナノ粒子には、カーボンブラック、グラフェンシート、およびその同等物が含まれる。これらの導電性ナノ粒子は、当技術分野において周知である。
【0028】
導電性ナノ構造は、連続的な物理的接触により、ならびに一方のナノ構造から別のナノ構造へ移行する電荷により、電気伝導度を達成することが可能である。
【0029】
(一次導電性媒体)
金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブは、一次導電性媒体を形成する。適切な金属ナノワイヤは、金属、金属合金、めっき金属、または金属酸化物から形成されるナノワイヤである。適切な金属ナノワイヤには、銀ナノワイヤ、金ナノワイヤ、銅ナノワイヤ、ニッケルナノワイヤ、金めっき銀ナノワイヤ、白金ナノワイヤ、およびパラジウムナノワイヤが含まれるが、これらに限定されない。適切な金属ナノチューブには、金ナノチューブおよび同時係属米国仮出願第61/031,643号に説明されるものが含まれる。
【0030】
種々の実施形態では、金属ナノワイヤは、約5−100μmの長さを有し、5−100nmの直径(または、断面)を有する。特定の実施形態では、金属ナノワイヤは、約5−30μmの長さを有し、20−80nmの直径を有する。好適な実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)は、約20μmの長さを有し、50nmの直径を有する。
【0031】
適切な金属ナノチューブは、金属ナノワイヤについて説明した寸法と類似の寸法を有する。ナノチューブでは、直径は、ナノチューブの外径を指す。
【0032】
ナノ構造は、パーコレーション過程によって導電性網を形成する。パーコレーション導電率は、導電性経路が相互接続ナノ構造によって形成される場合に確立可能である。電気的パーコレーション閾値を達成し、かつ導電性になるためには、十分なナノ構造が存在しなければならない。ゆえに、電気的パーコレーション閾値は、ナノ構造の荷重密度または濃度に関連する臨界値であり、臨界値を上回ると長距離導電率が達成可能である。典型的には、荷重密度は、面積当たりのナノ構造の数を指し、「数/μm2」によって表すことが可能である。
【0033】
同時係属米国特許出願第11/504,822号に説明するように、ナノ構造のアスペクト比(長さ:直径)が高くなると、パーコレーション導電率の達成に必要なナノ構造は少なくなる。ナノワイヤ等の異方性ナノ構造では、電気的パーコレーション閾値または荷重密度は、ナノワイヤの長さの2乗に反比例する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる同時係属および共有の出願第11/871,053号は、ナノワイヤのサイズ/形状と、パーコレーション閾値における表面荷重密度との理論的関係ならびに経験的関係について詳述している。
【0034】
図1は、電気的パーコレーション閾値を上回ってナノワイヤ20により形成される導電性網10を図式的に示す。導電性経路は、ナノワイヤを相互接続すること(例えば、網の一方の端部から他方の端部まで、接続するナノワイヤを通って追跡可能であること)によって形成される。ゆえに、電流は、ナノワイヤ網10を横断して伝導可能である。
【0035】
本明細書において使用する際、「導電性網」または「網」は、電気的パーコレーション閾値を上回る導電性ナノ構造によって形成される相互接続網を指す。典型的には、導電性網の表面抵抗率(または、「シート抵抗」)は、108オーム/スクエア(「Ω/□」とも呼ばれる)未満である。好ましくは、表面抵抗率は、104Ω/□、3,000Ω/□、1,000Ω/□、または100Ω/□未満である。典型的には、金属ナノワイヤにより形成される導電性網の表面抵抗率は、10Ω/□から1000Ω/□、100Ω/□から750Ω/□、50Ω/□から200Ω/□、100Ω/□から500Ω/□、または100Ω/□から250Ω/□、10Ω/□から200Ω/□、10Ω/□から50Ω/□、または1Ω/□から10Ω/□の範囲である。
【0036】
また、図1に示すように、網状ナノワイヤは、ワイヤ間空間30を画定する。パーコレーション閾値を上回る際、ワイヤ間空間のサイズ(「メッシュサイズ」とも呼ばれる)は、網の導電率に相関する。典型的には、メッシュサイズが小さいことは、ナノワイヤが密に分散すること意味し、これは高い導電率に相当する。
【0037】
また、メッシュサイズは、表面荷重レベルの指標として使用可能である。例えば、所定の長さを有するナノワイヤでは、表面荷重が低くなると、メッシュサイズが大きくなる。メッシュサイズが、特定の閾値を上回ると、ナノワイヤは、離隔し過ぎてパーコレーションが不可能になり、ワイヤ間空間は、効率的に絶縁体になる。図2Aは、ナノワイヤ20が完全な網の形成に不十分な密度にある膜12を示す。ワイヤ間空間30は、絶縁になる。明らかに異なるように、図1の密度に比べてナノワイヤの密度が低いことにより、メッシュサイズは拡大し、ナノワイヤ間の導電率は崩壊している。
【0038】
(充填材としての二次導電性媒体)
複合透明導電体では、金属ナノワイヤが、電気的パーコレーション閾値未満の荷重レベルにある場合であっても、二次導電性媒体の存在下で導電率を達成することが可能である。一次導電性媒体の金属ナノワイヤは、種々の実施形態では、パーコレーションまたは非パーコレーションであるが、第2の導電性媒体の存在は、複合透明導電体において、予想外の特性および相乗特性を提供する。
【0039】
特定の実施形態では、二次導電性媒体は、一次導電性媒体を形成する金属ナノワイヤとは異なる材料、寸法、幾何学的形状、または構造のナノ構造を含む。例えば、二次導電性媒体には、異なる寸法または材料のカーボンナノチューブ、金属ナノチューブ、ナノ粒子、および金属ナノワイヤが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0040】
他の実施形態では、二次導電性媒体は、連続導電性薄膜であることが可能である。本明細書において使用する際、「連続導電性」は、薄層を横断する(例えば、表面または面内を横断する)不断かつ一様な導電性経路を指し、この場合、電気伝導率は、導電性媒体の連続的な物理的接触によって確立される。連続導電性薄膜の例として、スパッタまたは蒸着金属酸化物膜、導電性ポリマー膜、およびその同等物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
一側面では、第2の導電性媒体は、ナノワイヤ膜のワイヤ間空間を充填する役割を果たす。図2Bは、図2Aのナノワイヤ20に連続導電性薄膜40を添加する複合透明導電体34を示す。連続導電性薄膜は、絶縁空間30を充填し、メッシュサイズを効率的に削減する。
【0042】
図2Cは、複数の第2の種類の異方性ナノ構造48も存在する別の複合透明導電体44を示す。異方性ナノ構造48は、ナノワイヤ20よりもさらに高いアスペクト比を有するように示される。図示するように、ワイヤ間空間30は、より長いナノ構造48による効率的な導電率により、効率的に低減する。
【0043】
図2Bおよび図2Cに示すように、ナノワイヤおよび二次導電性媒体の組み合わせ効果によって、一次導電性媒体が必ずしも電気的パーコレーション閾値に達していなくても、導電率が確立される。
【0044】
さらなる側面において、ワイヤ間空間を充填する第2の導電性媒体の存在は、所定の透明導電体における電位分布を等化する役割も果たす。加えて、2つの電極が離間し、かつ電位が印加される場合、2つの電極の空間に電場が生成される。複合透明導電体を電極として用いることは、電場の均一性を強化する役割を果たす。図3Aは、上部導電性膜50および下部導電性膜54間の電場線を示す。導電性膜50および54の両方は、ナノワイヤのみをベースとする。上部導電性膜50は、上部基板50b上に分散されるナノワイヤ50a(断面図で示す)を備える。同様に、下部導電性膜54は、下部基板54b上に分散されるナノワイヤ54a(断面図で示す)を備える。電場(線58として図式的に示す)は、例として、ナノワイヤ50aから開始し、54aにおいて終了する。各電極におけるナノワイヤ間のワイヤ間空間(例えば、62および66)により、線58は、対向するワイヤ付近に集中する。図3Bは、二次導電性媒体、例えば、連続膜70および74が、ワイヤ間空間62および66をそれぞれ充填することを示す。結果として、線78により表される電場は、より均一に分散される。
【0045】
一次導電性媒体、つまり高導電性金属ナノワイヤは、典型的には、複合透明導電体における電流の大部分を担う。二次導電性媒体は、電流伝導には関与しないが、それでも金属ナノワイヤ間の空間を充填する導電性層を形成することが可能である。本説明において、二次導電性媒体は、108オーム/スクエア(「Ω/□」とも呼ばれる)未満の表面抵抗率(または、「シート抵抗」)を有する導電性層を形成する。好ましくは、表面抵抗率は、104Ω/□、3,000Ω/□、1,000Ω/□、または100Ω/□未満である。典型的には、連続導電性薄膜のシート抵抗は、10Ω/□から1000Ω/□、100Ω/□から750Ω/□、50Ω/□から200Ω/□、100Ω/□から500Ω/□、または100Ω/□から250Ω/□、10Ω/□から200Ω/□、10Ω/□から50Ω/□、または1Ω/□から10Ω/□の範囲である。
【0046】
種々の実施形態では、第2の導電性媒体により形成される導電性層は、任意により、本明細書に定義するように、透明である。さらに、二次導電性媒体の存在により、光散乱が全体的に低減し得る。金属ナノワイヤは、光散乱および反射により偏光解消を引き起こし得る反射構造である。偏光解消は、典型的には表示機器(例えば、フラットパネルディスプレイ)の光路に存在する透明導電体膜におけるコントラスト比の低減に寄与する主な要因の1つである。コントラスト比が低くなると、表示機器の画像品質に悪影響を及ぼす傾向にある。例えば、同時係属米国仮出願第61/031,643号を参照されたい。ナノワイヤのみから形成される透明導電体膜では、ナノワイヤの数の減少により、光散乱の低減がもたらされ得るが、導電率損失の犠牲を潜在的に伴う。本実施形態に従う複合膜により、第2の導電性媒体が提供する補足的導電率により、導電率の低下を必ずしも引き起こさずに、数の少ないナノワイヤを用いることによって反射率の低減が可能になる。
【0047】
さらに、適切な材料(例えば、低反応性または非反応性)のナノ構造、特定の寸法(例えば、ナノ構造の直径または断面が小さくなると、光散乱が低減する)、特定の幾何学的形状(例えば、同一の外径を有するナノワイヤよりも、ナノチューブは光散乱を低減させる)を選択することによって、最適化された光学的特性を有する複合透明導電体をカスタマイズすることが可能になる。
【0048】
典型的には、種々の実施形態では、第2の導電性媒体により形成される導電性層は、約100nmから200nmの厚さ、または50nmから100nmの厚さ、または150nmから200nmの厚さを有する。
【0049】
(複合透明導電体)
したがって、複合透明導電体は、一次導電性媒体としての金属ナノワイヤと、一次導電性媒体に連結される二次導電性媒体とを備える。本明細書において使用する際、「連結」は、2つの導電性媒体の間における近接関係を指し、物理的接触、電気接続等を含む。
【0050】
複合体において組み合わせられた導電性媒体は、個々の導電性媒体をまとめるよりも、予想外の特質または強化された特性を提供する。本明細書においてより詳細に説明するように、複合透明導電体の相乗的な改善には、複合透明導電体におけるより均等な電位、複合透明導電体によって形成される2つの電極間のより均一な電場、より高い導電率、より良好な耐久性、より高いコントラスト比等が含まれるが、これらに限定されない。加えて、二次導電性媒体の賢明な選択によりナノワイヤを組み合わせることによって、複合透明導電体の性能基準を妥協せずに、全体の加工費用を減少させることが可能である。
【0051】
以下の具体的な実施形態は、一次導電性媒体としての金属ナノワイヤと、種々の二次導電性媒体とに基づく複合透明導電体について説明する。
【0052】
(1.二次導電性媒体としてのカーボンナノチューブ膜)
別の実施形態では、複合透明導電体は、二次導電性媒体と組み合わせられる複数の金属ナノワイヤを備え、二次導電性媒体は、カーボンナノチューブ(CNT)から形成される連続導電性薄膜である。
【0053】
図4Aは、ナノワイヤ層144と、基板152上に形成される下部CNT層148とを含む複合透明導電体140を示す。CNTは、ナノワイヤ層の下に導電性膜を形成する。図4Bは、構成膜の逆の配置を有する複合透明導電体150を示し、ナノワイヤ層144は、CNT層148の下に存在する。図4Aおよび図4Bの両方において、構成膜は、連続的に蒸着可能である。代替として、ナノワイヤおよびCNTは、同時に共蒸着可能であり、完全に統合された導電性膜を形成する。図4Cは、導電性層164を有する複合透明導電体160を示し、ナノワイヤ168およびCNT172は、凝集構造を可能にするように、完全に統合される。
【0054】
図4A−図4Cに示す複合膜は、電流を伝導するための高導電性金属ナノワイヤの補完的特性に依存する長距離連結性と、導電性CNT膜の充填効果とを提供する。所定の荷重レベルにおいて、CNTは、金属ナノワイヤ(銀ナノワイヤでは約10.5g/cm3)に比べてかなり低い特定重量(約1.7−1.9g/cm3)を有することから、CNTは、金属ナノワイヤと比べて小さいメッシュサイズの導電性膜を形成することが可能である。したがって、CNT層を有する複合透明導電体は、電源への接続時に、電位の均一性も改善することが可能である。
【0055】
加えて、CNTは、黒色であり、極めて狭い寸法(すなわち、その直径または断面積は、典型的には2nm未満である)を有し、これは、光散乱の低減およびコントラスト比の改善には望ましい条件である。結果として、CNTおよび金属ナノワイヤに基づく組み合わせ型導電性媒体は、所定の導電率において全体的な反射率を低減させる。
【0056】
さらに、CNTおよびナノワイヤに基づく複合膜は、接触を介する際に特に適切である。本明細書において使用する際、「介する」は、典型的には誘電体層を通した2つの導電体の間の接続を指す。上述のように、CNTは、金属ナノワイヤよりもかなり低い特定重量を有することから、同一の重量の金属ナノワイヤよりも、単位面積当たりのCNTの荷重密度がかなり高くなる。これは、接触を介して有利に適用可能であり、限定面積(約5−10ミクロン)において高電流密度に対応することに関与する。CNTの密度が高くなると、追加の電流を効率的に伝導することが可能になり、金属ナノワイヤに対する潜在的破損を防止することが可能である。
【0057】
特定の実施形態では、第3の導電性媒体を複合透明導電体にさらに組み込むことが可能である。本明細書において使用する際、「第2の種類のナノ構造」および「第3の種類のナノ構造」は、具体的には、ナノ構造の材料、寸法、形状、または幾何学的形状等の少なくとも1つの側面において、相互に異なるナノ構造を指し、また、一次導電性媒体を形成する金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブとは異なる構造を指す。
【0058】
適切な第3の導電性媒体には、導電性ナノ粒子等の導電性ナノ構造、一次導電性媒体の金属ナノワイヤとは異なる材料、寸法、または幾何学的形状の導電性ナノ構造が含まれる。例えば、導電性ナノ粒子は、金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、およびそれらの組み合わせであることが可能である。導電性ナノ構造は、異なる金属のナノワイヤ、ナノチューブ、またはアスペクト比の高いまたは断面の小さいナノワイヤであることが可能である。複合透明導電体に分散される第3の種類の導電性ナノ構造は、CNTの充填効果を補足することが可能であり、また、複合透明導電体においてより均等な電位を提供することに寄与することが可能である。
【0059】
典型的には、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)およびCNT膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%(参照として空気を使用)の光透過性を有する。
【0060】
典型的には、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)およびCNT膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、1−108Ω/□の範囲のシート抵抗を有し、複合透明導電体の最終用途に依存する。より典型的には、シート抵抗は、10Ω/□から1000Ω/□、100Ω/□から750Ω/□、50Ω/□から200Ω/□、100Ω/□から500Ω/□、または100Ω/□から250Ω/□、10Ω/□から200Ω/□、10Ω/□から50Ω/□、または1Ω/□から10Ω/□の範囲である。
【0061】
好適な実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)およびCNT膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、85%より高い光透過性および1000Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)およびCNT膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、95%より高い光透過性および500Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)およびCNT膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、90%より高い光透過性および100Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)およびCNT膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、85%より高い光透過性および50Ω/□未満のシート抵抗を有する。
【0062】
(2.二次導電性媒体としての他の種類のナノ構造)
CNT以外のナノ構造も、第2の導電性媒体として適切である。特定の実施形態では、導電性ナノ構造は、一次導電性媒体を形成する金属ナノワイヤとは異なる材料または寸法の金属ナノワイヤである。例えば、低反射性金属から形成される、または低反射性酸化シースを有するナノワイヤを使用して、複合透明導電体の全体的な導電率を妥協せずに、光散乱を低減させることが可能である。さらに、一次導電性媒体の金属ナノワイヤに比べて直径(すなわち、断面積)が小さいナノワイヤも、光散乱を低減することが可能である。
【0063】
図5は、一次導電性媒体としての第1の種類のナノワイヤ174と、第2の種類のナノワイヤ188とを備える複合透明導電体170を示す。第2の種類のナノワイヤ188は、第1の種類のナノワイヤ174よりもかなり小さい直径を有する。結果として、二次導電性媒体は、ワイヤ間空間182を充填することによって、複合透明導電体の導電率を促進するだけでなく、その狭い寸法により、光錯乱に実質的に寄与しない。
【0064】
種々の他の実施形態では、第2の種類のナノ構造は、金属ナノチューブ、導電性ナノ粒子(カーボンブラックおよび金属または金属酸化物ナノ粒子等)、およびその同等物であることが可能である。
【0065】
(3.二次導電性媒体としての金属酸化物膜)
一実施形態では、複合透明導電体は、二次導電性媒体と組み合わせられる複数の金属ナノワイヤを備え、二次導電性媒体は、導電性金属酸化物膜である。インジウムスズ酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物は、当技術分野において周知である。スパッタITO膜は、従来的には、透明導電体を用いる機器に適用されていた。しかしながら、ITO膜は、その脆弱性および応力に対する低耐性により、その用途が限定されている。ITO膜にたとえ微小な割れ目があっても、導電率の急速な損失を引き起こし得る。
【0066】
金属ナノワイヤベースの膜およびITO膜を組み合わせることによって、相乗的利点を有する複合膜が可能になる。図6Aは、複合膜186が、基板110(例えば、ガラス)上にITO膜188と、ITO膜188の上に配置されるナノワイヤ膜192とを備え、ナノワイヤ膜192がナノワイヤ194を備えることを示す。
【0067】
一実施形態では、ナノワイヤ194の荷重密度は、電気的パーコレーション閾値を下回る。それにもかかわらず、表面伝導率は、ナノワイヤおよび下部ITO膜188の組み合わせによって、複合膜186において確立可能である。上述のように、ITO膜は、ナノワイヤ間の任意の絶縁間隙を充填することが可能である。
【0068】
図6Bは、ナノワイヤベースの膜およびITO膜の代替配置を有する複合膜196を示す。図示するように、ナノワイヤ膜192は、最初に基板110上に蒸着される。ITO膜188は、ナノワイヤ膜192の上にスパッタされる。図6Aと同様に、ナノワイヤ194は、必ずしもそれ自体で導電性網を形成するとは限らない。それにもかかわらず、面内導電率は、ナノワイヤおよび下部ITO膜188の組み合わせによって、複合膜196において確立可能である。
【0069】
図示するように、表面および面内導電率を含む複合膜における導電率は、構成膜のみ、すなわち、ナノワイヤベースの膜およびITO膜のいずれかの導電率よりも優れていることが可能である。有利には、構成膜は、相互に補完し、例えば、連続ITO膜の存在による単なる構成膜の単なる相加効果を上回る特性を相乗的に提供し、電圧源への接続時に、複合膜は、ナノワイヤだけに基づく透明導電体の電位よりも均一な電位を有する(図2Bも参照)。一方、ナノワイヤは、導電率の損失を引き起こさずに、複合膜において特定の程度の屈曲を可能にする。例えば、ナノワイヤは、ITO膜のバルク内の微小な割れ目を克服し、導電率を維持することが可能であるため、物理的応力を受ける際に複合膜における潜在的な不具合を防止する。
【0070】
加えて、ナノワイヤの高導電率により、複合膜の高導電率は、同一の厚さの純粋ITO膜の導電率に比べてかなり高いことが可能である。ゆえに、構成要素として純粋ITO膜よりも薄いITO膜であって、依然として、純粋で厚いITO膜と同一レベルの導電性を達成可能であるITOを有する複合膜を生成することが可能である。ITO膜の厚さを縮小することによって、加工費用が直接的に減少可能になり、また、ITO膜が破損する可能性が低くなる。
【0071】
さらに、図6Aおよび図6Bの構成膜は、2つの並列抵抗器に類似する配置にあるが、複合膜の抵抗率が、並列抵抗器について予測される抵抗率よりも低くなり得ることが認められる(実施例4も参照)。図6Cは、2つの並列抵抗器198(抵抗率R1)および199(抵抗率R2)を図式的に示す。既知のように、1組の並列抵抗器の全体抵抗率Rは、
R=(R1xR2)/(R1+R2)
である。
【0072】
実施例4は、250Ω/□の抵抗率を有するITO膜と、約250Ω/□の抵抗率を有するナノワイヤベースの膜とによって形成される複合膜の抵抗率を測定する。これらの2つの構成膜が、単に並列抵抗器であれば、全体抵抗率は、約125Ω/□になるであろう。しかしながら、複合膜の抵抗率は、約50−80Ω/□の範囲であることが観測され、これは、ITO膜(250Ω/□)およびナノワイヤ膜(250Ω/□)の並列抵抗器として予測された抵抗率よりもかなり低い。
【0073】
任意により、複合膜は、所定の導電率レベルにおいて、ナノワイヤベースの膜のみよりも低い反射性を有することが可能である。上述のように、ナノワイヤのみから形成される透明導電体膜では、ナノワイヤの数の減少により、透明導電体において光散乱の低減がもたらされ得るが、導電率損失の犠牲を潜在的に伴う。本実施形態に従う複合膜により、ITO膜が提供する補足的導電率により、導電率の低下を必ずしも引き起こさずに、数の少ないナノワイヤを用いることによって反射の低減が可能になる。
【0074】
図6Aおよび図6BのITO膜の代わりに、他の金属酸化物膜を使用することが可能である。例示的な金属酸化物膜には、ドープ酸化亜鉛膜、フッ素ドープ酸化スズ膜、アルミニウムドープ酸化亜鉛膜、Zn2SnO4、ZnSnO3、MgIn2O4、GalnO3、(Ga2ln)2O3、Zn2In2O5、ln4Sn3O12等が含まれる。Crawford, G.P.、Flexible Flat Panel Display(John Wiley and Sons,2005)。
【0075】
典型的には、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および金属酸化物膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%(参照として空気を使用)の光透過性を有する。
【0076】
典型的には、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および金属酸化物膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、1−108Ω/□の範囲のシート抵抗を有し、複合透明導電体の最終用途に依存する。より典型的には、シート抵抗は、10Ω/□から1000Ω/□、100Ω/□から750Ω/□、50Ω/□から200Ω/□、100Ω/□から500Ω/□、または100Ω/□から250Ω/□、10Ω/□から200Ω/□、10Ω/□から50Ω/□、または1Ω/□から10Ω/□の範囲である。
【0077】
好適な実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および金属酸化物膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、85%より高い光透過性および1000Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および金属酸化物膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、95%より高い光透過性および500Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および金属酸化物膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、90%より高い光透過性および100Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および金属酸化物膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、85%より高い光透過性および50Ω/□未満のシート抵抗を有する。
【0078】
(4.二次導電性媒体としての導電性ポリマー膜)
別の実施形態では、複合透明導電体は、二次導電性媒体と組み合わせられる複数の金属ナノワイヤを備え、二次導電性媒体は、連続ポリマー膜である。
【0079】
特定のポリマーは、連続的に重複する軌道の共役骨格における電子非局在化により導電性である。例えば、単一および2重の炭素−炭素結合の交互から形成されるポリマーは、電子が占有可能である重複p軌道の連続経路を提供することが可能である。
【0080】
共通の種類の有機導電性ポリマーには、ポリ(アセチレン)、ポリ(ピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(アニリン)、ポリ(フルオレン)、ポリ(3−アルキルチオフェン)、PEDOTとしても既知であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリテトラチアフルバレン、ポリナフタレン、ポリパラフェニレン、ポリ(パラフェニレンスルフィド)、およびポリ(パラフェニレンビニレン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
導電性ポリマー膜単独では、典型的には導電性ではなく、または表示機器における透明導電体として機能するには十分物理的に強固ではないが、導電性ポリマー膜は、金属ナノワイヤと組み合わせまたはドープして、複合透明導電体を形成することが可能である。複合透明導電体は、主要な電流伝導媒体としての金属ナノワイヤと、電場を均一にするためのフィルタとしての導電性ポリマー膜とに依存することが可能である。加えて、金属ナノワイヤは、導電性ポリマー膜の機械的特性を補強および強化することも可能である。
【0082】
任意により、導電性ポリマー膜は、複合膜の吸収特性も調整することが可能である。
【0083】
図7Aは、複合膜200が、基板110(例えば、ガラス)上に導電性ポリマー膜204と、導電性ポリマー膜204の上に配置されるナノワイヤ膜220とを備えることを示す。
【0084】
図7Bは、ナノワイヤベースの膜および導電性ポリマー膜の代替配置を有する複合膜230を示す。図示するように、ナノワイヤ膜220は、最初に基板110上に蒸着される。導電性ポリマー膜104は、ナノワイヤ膜220の上面の上に蒸着される。図6Aと同様に、ナノワイヤ224は、必ずしもそれ自体で導電性網を形成するとは限らない。それにもかかわらず、面内導電率は、ナノワイヤおよび下部導電性ポリマー膜204の組み合わせによって、複合膜230において確立可能である。
【0085】
代替実施形態では、最初に金属ナノワイヤを基板上に蒸着して、導電性網を形成する。導電性ポリマー膜は、電極として金属ナノワイヤ網を使用して原位置で形成可能である。原位置で形成可能である適切な導電性ポリマーの例として、ポリピロールが挙げられる。より具体的には、ナノワイヤベースの導電性網を電極(すなわち、陽極)として使用して、ピロール単量体は、電気化学的に重合することが可能であり、導電性網上に塗膜を形成することが可能である。また、導電性ポリマー膜は、当技術分野において既知の方法の存在下で化学的に形成可能である。結果として生じる複合透明導電体は、導電性ポリマー膜に埋め込まれるナノワイヤを特徴とする。
【0086】
典型的には、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および導電性ポリマー膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%(参照として空気を使用)の光透過性を有する。
【0087】
典型的には、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および導電性ポリマー膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、1−108Ω/□の範囲のシート抵抗を有し、複合透明導電体の最終用途に依存する。より典型的には、シート抵抗は、10Ω/□から1000Ω/□、100Ω/□から750Ω/□、50Ω/□から200Ω/□、100Ω/□から500Ω/□、または100Ω/□から250Ω/□、10Ω/□から200Ω/□、10Ω/□から50Ω/□、または1Ω/□から10Ω/□の範囲である。
【0088】
好適な実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および導電性ポリマー膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、85%より高い光透過性および1000Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)導電性ポリマー膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、95%より高い光透過性および500Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および導電性ポリマー膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、90%より高い光透過性および100Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および導電性ポリマー膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、85%より高い光透過性および50Ω/□未満のシート抵抗を有する。
【0089】
(電気的特性および光学的特性)
本明細書において論じるように、複合透明導電体において組み合わせられた導電性媒体は、個々の導電性媒体をまとめるよりも、予想外の特質または強化された特性を提供する。複合透明導電体のこれらの相乗的な改善には、より一様な電位(電源への接続時)、より高い導電率、より良好な耐久性、より高いコントラスト比等が含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
典型的には、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および二次導電性媒体の組み合わせに基づく複合透明導電体は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%(参照として空気を使用)の光透過性を有する。ヘーズは、光散乱の指標である。これは、入射光から分離し、かつ透過中に散乱した光の量の割合を指す(すなわち、透過ヘーズ)。主に媒体の特性である光透過性とは違って、ヘーズは、しばしば製造に関し、典型的には、表面粗さおよび埋め込み粒子または媒体中の成分不均質によって引き起こされる。種々の実施形態では、透明導電体のヘーズは、10%以下、8%以下、5%以下、3%以下、または1%以下である。
【0091】
典型的には、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および二次導電性媒体の組み合わせに基づく複合透明導電体は、1−108Ω/□の範囲のシート抵抗を有し、複合透明導電体の最終用途に依存する。より典型的には、シート抵抗は、10Ω/□から1000Ω/□、100Ω/□から750Ω/□、50Ω/□から200Ω/□、100Ω/□から500Ω/□、または100Ω/□から250Ω/□、10Ω/□から200Ω/□、10Ω/□から50Ω/□、または1Ω/□から10Ω/□の範囲である。
【0092】
好適な実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および二次導電性媒体の組み合わせに基づく複合透明導電体は、85%より高い光透過性および1000Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および二次導電性媒体の組み合わせに基づく複合透明導電体は、95%より高い光透過性および500Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および二次導電性媒体の組み合わせに基づく複合透明導電体は、90%より高い光透過性および100Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および二次導電性媒体の組み合わせに基づく複合透明導電体は、85%より高い光透過性および50Ω/□未満のシート抵抗を有する。
【0093】
本明細書に説明する複合透明導電体は、フラットパネルディスプレイにおいて電極として適切である電気的特性および光学的特性を有することが可能である。フラットパネルディスプレイにおける透明電極のシート抵抗の典型的な範囲は、約10−100Ω/□であり、層の透過性は、87%より高い(参照としてガラスを使用する場合)か、または95%より高い(参照として空気を使用する場合)。
【0094】
さらに、電極として使用する場合、複合透明導電体は、液晶ディスプレイ(LCD)において特に有利である一様な電場を提供する。図8は、LCD設定250を図式的に示し、本設定において、画素電極254および対電極260は、約3−5μm離隔し、これは「セルギャップ」とも呼ばれる。液晶セル270は、2つの電極の間に配置される。簡潔に言うと、LCDは、セルに閉じ込められる液晶分子が、2つの電極間に生成された印加電場に応答して、その構造を変化させる際に動作する。
【0095】
ナノワイヤのみから形成される透明導電体電極を使用する場合、所望のレベルの導電率および光透過性において、ナノワイヤ間の空間は、液晶セルキャップ(すなわち、「セルギャップ」)に相当し得る。したがって、セルにおける全ての液晶分子が、同一の電場(大きさおよび方向の両方)によって駆動されるわけではなく、それによって、セルの光学的特性における不要な不均一性がもたらされる可能性がある。
【0096】
しかしながら、電極として複合透明導電体を用いることによって、ナノワイヤ間の空間が効率的に低減または排除される。典型的には、ナノワイヤ間のメッシュサイズは、液晶セルギャップの1/5未満であるべきである。より典型的には、メッシュサイズは、セルギャップの1/10または1/100未満であるべきである。二次導電性媒体の存在によって、一様な電極場が液晶セルにおいて印加可能になり、液晶分子の一様配向がもたらされるため、均質な光学的応答がもたらされる。
【0097】
図示するように、LCDセルにおける電極が、ナノワイヤのみを備える場合、セルギャップの1/5−1/100のメッシュサイズを可能にする表面荷重レベルは、高ヘーズおよび低コントラスト比を含む不十分な光学的特性をもたらす。しかしながら、複合透明導電体を電極として使用すると、一次導電性媒体の金属ナノワイヤ(または、金属ナノチューブ)は、セルギャップと類似するメッシュサイズを維持し、一方、二次導電性媒体は、セルギャップの約1/5−1/100にメッシュサイズを低減するか、または連続導電性薄膜の場合、メッシュサイズを排除する。結果として生じるLCDセルは、電極の光学的特性が改善するため、改善されたセル性能を有する。
【0098】
したがって、一実施形態は、第1の電極と、第2の電極であって、第1の電極および第2の電極間の垂直距離は、セルギャップを規定する第2の電極とを液晶セルに提供し、第1の電極は、一次導電性媒体および二次導電性媒体を含む複合透明導電体であり、一次導電性媒体は、セルギャップと類似のメッシュサイズを有する金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブを含み、二次導電性媒体は、連続導電性薄膜またはセルギャップの約1/5から1/100のメッシュサイズを有するナノ構造の導電性網である。
【0099】
典型的には、セルギャップは、約3−5μmである。特定の実施形態では、ナノ構造の導電性網は、セルギャップの約1/5から1/10、またはセルギャップの約1/10から1/100のメッシュサイズを有する。
【0100】
上述の複合透明導電体のいずれかは、液晶セルの第1の電極として使用可能である。例えば、種々の実施形態では、一次導電性媒体は、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)または金属ナノチューブ(例えば、金ナノチューブ)であることが可能である。好適な実施形態では、金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブは、20−80nmの直径(ナノチューブでは外径)を有し、5−30μmの長さを有する。
【0101】
二次導電性媒体は、カーボンナノチューブ、一次導電性媒体の金属ナノワイヤとは異なる金属ナノワイヤ、または一次導電性媒体の金属ナノチューブとは異なる金属ナノチューブの導電性網を含み得る。
【0102】
代替として、二次導電性媒体は、金属酸化物膜(例えば、ITO膜)または導電性ポリマー膜(例えば、PEDOT膜)等の連続導電性薄膜であることが可能である。
【0103】
さらなる実施形態では、本明細書において説明するように、第2の電極も複合透明導電体であることが可能である。
【0104】
特定の実施形態では、第1の電極は、80−95%の光透過性を有する。
【0105】
上述のように、複合透明導電体は、典型的には金属ナノワイヤと関連する不要なレベルの散乱を低減するように設計可能である。二次導電性媒体は、電流を伝導するため、所定の導電率を達成するのに必要なナノワイヤの数が少なくなる。加えて、本明細書に説明する二次導電性媒体は、典型的には非反射性、低反射性、または散乱断面が小さいナノ構造を備え、結果として、存在するナノワイヤの数が少なくなるため、全体の散乱は減少する。
【0106】
(追加の層)
さらなる実施形態では、オーバーコートの不活性層が、複合透明導電体を安定化および保護するために蒸着可能である。また、オーバーコートは、防幻特性および防反射特性等の好ましい光学的特性も提供することが可能であり、ナノ粒子の反射率をさらに低減させる役割を果たす。
【0107】
したがって、オーバーコートは、ハードコート、反射防止層、保護膜、障壁層、およびその同等物のうちの1つ以上であることが可能であり、その全てについて、同時係属出願第11/871,767号および第11/504,822号において広範囲に説明される。
【0108】
適切なハードコートの例として、ポリアクリル酸、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリシラン、シリコーン、ポリ(シリコアクリル)等の合成ポリマーが挙げられる。適切な防幻材料は、当技術分野において周知であり、シロキサン、ポリスチレン/PMMA混合物、ラッカー(例えば、酢酸ブチル/ニトロセルロース/ろう/アルキド樹脂)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリウレタン、ニトロセルロース、およびアクリレートが含まれるがこれらに限定されず、その全ては、コロイド状シリカまたはヒュームドシリカ等の光拡散材料を含み得る。保護膜の例として、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート(TAC)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン、ポリオレフィン、またはその同等物が挙げられるが、これらに限定されず、特に、PET、PC、PMMA、またはTACが好ましい。
【0109】
(パターン化)
本明細書に説明する複合透明導電体は、その最終用途に応じてパターン化可能である。当技術分野における任意の既知の方法ならびに共有および同時係属の米国特許出願第11/504,822号、同第11/871,767号において説明するパターン化方法は、複合透明導電体のパターン化に使用可能である。
【0110】
(複合透明導電体の用途)
本明細書に説明する複合透明導電体は、金属酸化物膜(例えば、ITO)を現在利用する全ての機器を含む多種多様の機器における透明電極、偏光子、色フィルタ等の機能性膜として使用可能である。図7は、ハウジング258において複合透明導電体254を含む機器250を図式的に示す。複合透明導電体は、一次導電性媒体(すなわち、複数の金属ナノワイヤ)および第2の導電性媒体(すなわち、連続導電性薄膜)の上述の構成または組み合わせのうちのいずれかであることが可能である。
【0111】
適切な機器の例として、LCD等のフラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)、カラーフラットパネルディスプレイ用の色フィルタ上の塗膜、タッチスクリーン、電磁干渉、電磁遮蔽、機能性ガラス(例えば、エレクトロクロミック窓用)、ELランプおよび太陽電池を含む光電子機器、ならびにその同等物が挙げられる。加えて、本明細書における透明導電体は、フレキシブルディスプレイおよびタッチスクリーン等の可塑性機器に使用可能である。同時係属出願第11/871,767号を参照されたい。
【実施例】
【0112】
(実施例1)
(銀ナノワイヤの合成)
ポリビニルピロリドン(PVP)の存在下でエチレングリコール中に溶解された硝酸銀の還元によって、銀ナノワイヤを合成した。本方法は、例えば、Y.Sun、B.Gates、B.MayersおよびY.Xia、「Crystalline silver nanowires by soft solution processing」、Nanolett、(2002)、2(2)165−168に説明されている。一様な銀ナノワイヤは、遠心分離または他の既知の方法によって選択的に分離可能である。
【0113】
代替として、適切なイオン添加剤(例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド)を上記反応混合物に添加することによって、一様な銀ナノワイヤを直接合成することが可能である。このように産生された銀ナノワイヤをサイズ選択の分離ステップを行なわずに、直接使用することが可能である。本合成は、本出願の譲受人であるCambrios Technologies Corporation名義の米国仮出願第60/815,627号においてより詳細に説明され、本出願は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0114】
以下の例において、70nmから80nmまでの幅および約8μm−25μmの長さを有する銀ナノワイヤを使用した。典型的には、より良好な光学的特性(高透過性および低ヘーズ)は、高アスペクト比ワイヤ(すなわち、より長くかつ細い)により達成可能である。
【0115】
(実施例2)
(複合透明導電体の調製)
金属ナノワイヤは、基板あるいはITO膜および導電性ポリマー膜等の連続導電性薄膜上に蒸着する前に、インク組成物に調合されることが可能である。
【0116】
ITO膜は、基板上に直接スパッタ可能であり、その後、ナノワイヤ層が蒸着される。代替として、最初にナノワイヤ層を基板上に蒸着し、その後、ナノワイヤ層上に直接ITO膜をスパッタすることが可能である。
【0117】
二次導電性媒体がカーボンナノチューブを含む場合、カーボンナノチューブは、共蒸着のために、金属ナノワイヤと共に同一のインク組成物に調合されることが可能である。代替として、カーボンナノチューブは、金属ナノワイヤの蒸着の前または後に、連続蒸着のために、別々のインク組成物に調合されることが可能である。
【0118】
典型的には、インク組成物は、ナノ構造の分散および/または基板上のナノ構造の固定化を促進する薬剤を含む。これらの薬剤には、界面活性剤、粘度調整剤、およびその同等物が含まれる。インク組成物の調合に関する詳細な説明は、同時係属米国特許出願第11/504,822号に記載されており、本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0119】
金属ナノワイヤを蒸着するための典型的なインク組成物には、0.0025重量%から0.1重量%の界面活性剤(例えば、Zonyl(登録商標)FSO−100では、好適な範囲は0.0025重量%から0.05重量%まで)、0.02重量%から4重量%までの粘度調整剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはHPMCでは、好適な範囲は0.02重量%から0.5重量%まで)、94.5重量%から99.0重量%までの溶媒、および0.05重量%から1.4重量%までの金属ナノワイヤが含まれる。適切な界面活性剤の代表的な例として、Zonyl(登録商標)FSN、Zonyl(登録商標)FSO、Zonyl(登録商標)FSH、トリトン(x100、x114、x45)、ダイノール(604、607)、n−ドデシルb−D−マルトシド、およびノベックが挙げられる。適切な粘度調整剤の例として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。適切な溶媒の例として、水およびイソプロパノールが挙げられる。
【0120】
インク組成物は、基板上に形成される最終導電性膜の荷重密度の指標であるナノワイヤの所望の濃度に基づいて調製可能である。
【0121】
基板は、その上にナノワイヤが蒸着される任意の材料であることが可能である。基板は、剛性または可塑性であることが可能である。好ましくは、基板は、光学的に透明であり、すなわち、材料の光透過性は、可視領域(400nm−700nm)において少なくとも80%である。
【0122】
剛性基板の例として、ガラス、ポリカーボネート、アクリル、およびその同等物が挙げられる。具体的には、無アルカリガラス(例えば、ホウケイ酸塩)、低アルカリガラス、およびゼロ膨脹ガラス−セラミック等の特殊ガラスを使用することが可能である。特殊ガラスは、特に、液晶ディスプレイ(LCD)を含む薄型パネルディスプレイシステムに適切である。
【0123】
可塑性基板の例として、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルナフタレート、およびポリカーボネート)、ポリオレフィン(例えば、直鎖、分岐、および環状ポリオレフィン)、ポリビニル(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、ポリアクリル、およびその同等物)、セルロースエステル塩基(例えば、セルローストリアセテート、酢酸セルロース)、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン、ポリイミド、シリコーン、および他の従来のポリマー膜が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
インク組成物は、例えば、同時係属米国特許出願第11/504,822号に説明する方法に従って、基板上に蒸着可能である。
【0125】
具体的な例として、銀ナノワイヤの水分散液、すなわち、インク組成物を最初に調製した。銀ナノワイヤの幅は、約35nmから45nmであり、長さは、約10μmであった。インク組成物は、0.2重量%の銀ナノワイヤ、0.4重量%のHPMC、および0.025重量%のトリトンx100を含む。次いで、60秒間500rpmの速度で、ガラス上にインクをスピンコートし、その後、90秒間50℃でポストベーキングし、90秒間180℃でポストベーキングした。塗膜の抵抗率は、約20オーム/スクエアであり、透過性は96%(参照としてガラスを使用)、ヘーズは3.3%であった。
【0126】
当業者が理解するように、他の蒸着技法を用いることが可能である。例えば、狭いチャネルにより測定される沈降流動、ダイ流動、傾斜上の流動、スリットコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、ビーズコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、およびその同等物が挙げられる。また、印刷手法を使用して、パターン化を含むまたは含まずに、インク組成物を基板上に直接印刷することが可能である。例えば、インクジェット、フレキソ印刷、およびスクリーン印刷を用いることが可能である。
【0127】
流体の粘度およびせん断挙動ならびにナノワイヤ間の相互作用が、蒸着されたナノワイヤの分布および相互接続に影響を及ぼし得ることをさらに理解されたい。
【0128】
(実施例3)
(透明導電体の光学的特性および電気的特性の評価)
本明細書に説明する方法に従い調製される複合透明導電体を評価して、その光学的特性および電気的特性を確立した。
【0129】
ASTM D1003における方法論に従って、光透過性データを入手した。BYK Gardner社のHaze−gard Plusを使用して、ヘーズを測定した。Fluke 175 True RMS Multimeterまたは非接触式抵抗計、Delcom社のmodel 717B導電率モニタを使用して、表面抵抗率を測定した。より典型的な機器は、抵抗を測定するための4端子プローブシステムである(例えば、Keithley Instruments社による)。
【0130】
また、ナノワイヤの相互接続性および基板の面積範囲は、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡で観測可能である。
【0131】
(実施例4)
(複合透明導電体の抵抗率の評価)
最初に、ITO膜をガラス基板上にスパッタした。ITO膜は、約250Ω/□であった。銀ナノワイヤ膜をITO膜上に塗膜した。銀ナノワイヤ膜は、シート抵抗が約300−500Ω/□である導電性膜を産生したインク組成物をベースとしていた。
【0132】
複合透明導電体を単に1対の並列抵抗器として扱うのであれば、シート抵抗は、約135−170Ω/□の予測値を有するであろう。しかしながら、結果として生じる複合膜は、50−80Ω/□の範囲のシート抵抗を示し、これは、予測値よりも約100%大きい導電性を有した。したがって、組み合わせ型導電性媒体は、個々の導電性媒体の単なる相加効果よりも優れた導電率を呈した。
【0133】
本明細書で参照されるおよび/または出願データシートに列挙される上記米国特許、米国特許出願公表、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許公報の全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0134】
本発明の具体的な実施形態について例証目的のために本明細書において説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく種々の修正を加えてもよいことを、上記説明から理解されたい。したがって、本発明は、添付の請求項によって限定される場合を除き限定されない。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本開示は、導電性ナノ構造に基づく複合透明導電体と、それを形成するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電体は、光透過性導電性薄膜を指す。透明導電体は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル、エレクトロルミネセント素子、および薄膜太陽電池等のフラットパネルディスプレイにおける透明電極として、帯電防止層として、ならびに電磁波遮蔽層として広く使用されている。
【0003】
従来の透明導電体には、インジウムスズ酸化物(ITO)等の真空蒸着金属酸化物が含まれる。しかしながら、金属酸化物膜は、高導電率を達成するために、真空チャンバ、上昇蒸着温度、および/または高い焼きなまし温度を必要とすることから、加工に費用が掛かる。また、金属酸化物膜は、屈曲等の微量の物理的応力を受ける場合であっても、脆弱で破損し易い。
【0004】
また、導電性高分子も、光透過性電導体として使用されてきた。しかしながら、導電性高分子は、概して、金属化学物皮膜よりも低い導電率値および高い光吸収性を有し(特に可視波長で)、化学的および長期的安定性の不足を被る。
【0005】
導電性ナノ構造は、そのサブミクロン寸法により光透過性導電性膜を形成することが可能である。同時係属および共有の特許文献1、特許文献2、および特許文献3は、金属ナノワイヤ等の網状異方性導電性ナノ構造によって形成される透明導電体について説明している。ITO膜と同様に、ナノ構造ベースの透明導電体は、フラットパネルディスプレイおよびタッチスクリーン等のエレクトロクロミックディスプレイにおける薄膜トランジスタに連結可能である電極として特に有用である。加えて、ナノ構造ベースの透明導電体は、色フィルタおよび偏光子における塗膜として、偏光子として、およびその他のものとしても適切である。上記同時係属出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0006】
高品質のディスプレイシステムに対する需要増加を満たすために、費用効率が高く、かつ高性能であるナノ構造ベースの透明導電体を提供する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第11/504,822号明細書
【特許文献2】米国特許出願第11/871,767号明細書
【特許文献3】米国特許出願第11/871,721号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
複合透明導電体およびその用途について説明する。
【0009】
一実施形態は、複数の金属ナノワイヤまたは複数の金属ナノチューブを含む一次導電性媒体と、一次導電性媒体に連結される二次導電性媒体であって、第2の種類のナノ構造または連続導電性薄膜を含む二次導電性媒体とを備える複合透明導電体について説明する。
【0010】
別の実施形態は、複数の金属ナノワイヤまたは複数の金属ナノチューブを含む一次導電性媒体と、一次導電性媒体に連結される二次導電性媒体であって、連続導電性薄膜である二次導電性媒体とを備える機器について説明する。
【0011】
さらなる実施形態は、第1の電極と、第2の電極であって、第1の電極および前記第2の電極の間の垂直距離はセルギャップを規定する第2の電極とを備え、第1の電極は、一次導電性媒体および二次導電性媒体を含む複合透明導電体であり、一次導電性媒体は、セルギャップと類似のメッシュサイズを有する金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブを含み、二次導電性媒体は、セルギャップの約1/5から1/100までのメッシュサイズを有する連続導電性薄膜またはナノ構造の導電性網である、液晶ディスプレイセルについて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面において、同一の参照番号は、類似の要素または作用を示す。図面における要素のサイズおよび相対位置は、必ずしも一定の縮尺で描かれてはいない。例えば、種々の要素の形状および角度は一定の縮尺で描かれず、これらの要素のいくつかは、図面の視認性を改善するために、任意により拡大および配置されている。さらに、描かれる要素の特定の形状は、特定の要素の実際の形状に関するいかなる情報も伝えることを意図せず、単に、図面を認識し易いように選択されただけである。
【図1】図1は、電気的パーコレーションレベルを上回る、金属ナノワイヤの膜を示す。
【図2A】図2Aは、電気的パーコレーションレベルを下回る、金属ナノワイヤの膜を示す。
【図2B】図2Bは、電気的パーコレーションレベルを下回り、かつ連続導電性薄膜と組み合わせられる金属ナノワイヤを備える複合透明導電体を示す。
【図2C】図2Cは、電気的パーコレーションレベルを下回り、かつ第2の種類の異方性ナノ構造から形成される導電性膜と組み合わせられる金属ナノワイヤを備える複合透明導電体を示す。
【図3A】図3Aは、隣接する金属ナノワイヤ間で局在化される非均一電場を示す。
【図3B】図3Bは、連続導電性薄膜の存在下の均一電場を示す。
【図4A】図4A−4Cは、金属ナノワイヤおよびカーボンナノチューブに基づく複合透明導電体の実施形態を示す。
【図4B】図4A−4Cは、金属ナノワイヤおよびカーボンナノチューブに基づく複合透明導電体の実施形態を示す。
【図4C】図4A−4Cは、金属ナノワイヤおよびカーボンナノチューブに基づく複合透明導電体の実施形態を示す。
【図5】図5は、その寸法が異なる2つの異なる種類の金属ナノワイヤを有する複合透明導電体を示す。
【図6A】図6A−6Bは、金属ナノワイヤおよび金属酸化物膜に基づく複合透明導電体の実施形態を示す。
【図6B】図6A−6Bは、金属ナノワイヤおよび金属酸化物膜に基づく複合透明導電体の実施形態を示す。
【図6C】図6Cは、1対の並列抵抗器を図式的に示す。
【図7A】図7A−7Bは、金属ナノワイヤおよび導電性ポリマー膜に基づく複合透明導電体の実施形態を示す。
【図7B】図7A−7Bは、金属ナノワイヤおよび導電性ポリマー膜に基づく複合透明導電体の実施形態を示す。
【図8】図8は、2つの透明電極間に配置される液晶材料を図式的に示す。
【図9】図9は、複合透明導電体を組み込む機器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概して、複合透明導電体は、少なくとも2つの種類の透明導電性媒体から形成される導電性膜である。より具体的には、複合透明導電体は、一次導電性媒体としての金属異方性ナノ構造(本明細書で上述した)と、一次導電性媒体に連結される二次導電性媒体とを含む。典型的には、二次導電性媒体は、第2の種類の導電性ナノ構造の導電性網、または導電性ポリマーもしくは金属酸化物から形成される連続導電性薄膜である。
【0014】
複合透明導電体の電気的特性および光学的特性は、構成導電性媒体の幾何学的形状、導電率、光学的特性、分布、および荷重レベル等の要因によって判断される。
【0015】
特定の実施形態では、複合透明導電体は、個別の導電性膜の層状構造である。他の実施形態では、複合透明導電体は、2つ以上の種類の導電性媒体(例えば、2つ以上の種類の導電性ナノ構造)が完全に統合される凝集構造である。構造構成にかかわらず、複合透明導電体は、構成導電性媒体の単なる相加的効果を上回る特性を、このような構成導電性媒体の賢明な選択によって呈することが可能である。
【0016】
(導電性ナノ構造)
特定の実施形態では、複合透明導電体は、少なくとも2つの種類のナノ構造を備え、そのうちの1つは、金属異方性ナノ構造を対象とする。本明細書において使用する際、「ナノ構造」または「導電性ナノ構造」は、概して、ナノサイズの構造を指し、その少なくとも1つの寸法は、500nm未満、より好ましくは、250nm、100nm、50nm、または25nm未満である。
【0017】
ナノ構造は、任意の形状または幾何学的形状を有することが可能である。特定の実施形態では、ナノ構造は、等方的形状(すなわち、アスペクト比=1)である。典型的な等方性ナノ構造には、ナノ粒子が含まれる。好適な実施形態では、ナノ構造は、等方的形状(すなわち、アスペクト比≠1)である。本明細書において使用する際、アスペクト比は、ナノ構造の長さおよび幅(または直径)の比率を指す。典型的には、異方性ナノ構造は、その長さに沿って長手方向軸を有する。例示的な異方性ナノ構造には、本明細書に定義するように、ナノワイヤおよびナノチューブが含まれる。
【0018】
ナノ構造は、中実または中空であることが可能である。中実ナノ構造には、例えば、ナノ粒子およびナノワイヤが含まれる。「ナノワイヤ」は、本明細書に定義するように、中実異方性ナノ構造を指す。典型的には、各ナノワイヤは、10を上回る、好ましくは50を上回る、より好ましくは100を上回るアスペクト比(長さ:直径)を有する。典型的には、ナノワイヤは、500nmを上回る、または1μmを上回る、または10μmを上回る長さを有する。
【0019】
中空ナノ構造には、例えば、ナノチューブが含まれる。「ナノチューブ」は、本明細書に定義するように、中空異方性ナノ構造を指す。典型的には、ナノチューブは、10を上回る、好ましくは50を上回る、より好ましくは100を上回るアスペクト比(長さ:直径)を有する。典型的には、ナノワイヤは、500nmを上回る、または1μmを上回る、または10μmを上回る長さを有する。
【0020】
ナノ構造は、任意の導電性材料から形成可能である。最も典型的には、導電性材料は、金属である。金属材料は、元素金属(例えば、遷移金属)または金属化合物(例えば、金属酸化物)であることが可能である。また、金属材料は、2つ以上の種類の金属を含む金属合金または2種の金属からなる材料であることが可能である。適切な金属には、銀、金、胴、ニッケル、金めっき銀、白金、およびパラジウムが含まれるが、これらに限定されない。また、導電性材料は、炭素または黒鉛(炭素の同素体)等の非金属であることも可能である。
【0021】
上述のように、金属異方性ナノ構造は、複合透明導電体における一次導電性媒体として使用される。好適な種類の異方性金属ナノ構造には、金属ナノワイヤが含まれる。金属ナノワイヤは、金属、金属合金、めっき金属、または金属酸化物から形成されるナノワイヤである。適切な金属ナノワイヤには、銀ナノワイヤ、金ナノワイヤ、銅ナノワイヤ、ニッケルナノワイヤ、金めっき銀ナノワイヤ、白金ナノワイヤ、およびパラジウムナノワイヤが含まれるが、これらに限定されない。同時係属および共有の米国出願第11/766,552号、第11/504,822号、第11/871,767号、および第11/871,721号は、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)を調製する方法と、金属ナノワイヤに基づく透明導電体を形成およびパターン化する方法とについて説明しており、その説明は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0022】
一次導電性媒体に使用される別の好適な種類の異方性金属ナノ構造には、金属ナノチューブが含まれる。2008年2月26日に出願された同時係属および共有の米国特許出願第61/031,643号は、金属ナノチューブ(例えば、金ナノチューブ)を調製する方法と、金属ナノチューブに基づく透明導電体の形成およびパターン化の方法とについて説明しており、その説明は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0023】
本明細書においてより詳細に論じるように、ナノワイヤおよびナノチューブ等の金属異方性ナノ構造は、異なる種類の導電性ナノ構造により形成される二次導電性媒体と組み合わせ可能である。二次導電性媒体は、カーボンナノチューブ、一次導電性媒体を形成する金属ナノワイヤ(または、ナノチューブ)とは異なる金属ナノワイヤ(または、ナノチューブ)、導電性ナノ粒子、およびその同等物を含むが、これらに限定されないナノ構造のうちのいずれかであることが可能である。
【0024】
特定の具体的な実施形態では、二次導電性媒体を形成する導電性ナノ構造は、カーボンナノチューブである。カーボンナノチューブも、導電性異方性ナノ構造である。より具体的には、「カーボンナノチューブ」は、巻き上げ状グラフェンシートの円筒または管を指す。各グラフェンシートは、sp2混成炭素原子を含む。カーボンナノチューブは、単層構造もしくは多層構造またはその混合のいずれかの形状をとることが可能である。単層カーボンナノチューブ(SWNT)は、単一の巻き上げ状グラフェンシートから形成される。多層カーボンナノチューブ(MWNT)は、相互に入れ子式である2つ以上の同軸上に配置されるSWNTである。SWNTおよびMWNTの両方は、金属特徴および導電性特徴を示すことで知られている。
【0025】
典型的には、カーボンナノチューブは、高アスペクト比を有する剛性構造である。SWNTおよびMWNTの長さは、通常1μmを十分上回り、直径は、約1nm(SWNTの場合)から約50nm(MWNTの場合)までの範囲である。典型的には、カーボンナノチューブのアスペクト比は、約10−100,000の範囲である。より典型的には、アスペクト比は、約1,000−10,000の範囲である。SWNTは、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)より市販されている。
【0026】
カーボンナノチューブは、任意により、凝集防止のために表面処理され得る。例えば、より良好に水媒体へ分散するように、親水性官能基が表面に組み込まれ得る。表面処理に関する種々の方法については、Peng H.らのSidewall Carboxylic Acid Functionalization of Single−Walled Carbon Nanotubes、J.Am.Chem.Soc.125、15174−15182、2003、およびLiu J.らのFullerene Pipes、Science、280、1253−1256、1998に説明されている。
【0027】
さらなる実施形態では、導電性ナノ構造は、銀、金、銅、およびニッケルナノ粒子等の金属ナノ粒子、ならびにインジウムスズ酸化物およびドープ酸化亜鉛ナノ粒子等の金属酸化物ナノ粒子を含む導電性ナノ粒子である。非金属導電性ナノ粒子には、カーボンブラック、グラフェンシート、およびその同等物が含まれる。これらの導電性ナノ粒子は、当技術分野において周知である。
【0028】
導電性ナノ構造は、連続的な物理的接触により、ならびに一方のナノ構造から別のナノ構造へ移行する電荷により、電気伝導度を達成することが可能である。
【0029】
(一次導電性媒体)
金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブは、一次導電性媒体を形成する。適切な金属ナノワイヤは、金属、金属合金、めっき金属、または金属酸化物から形成されるナノワイヤである。適切な金属ナノワイヤには、銀ナノワイヤ、金ナノワイヤ、銅ナノワイヤ、ニッケルナノワイヤ、金めっき銀ナノワイヤ、白金ナノワイヤ、およびパラジウムナノワイヤが含まれるが、これらに限定されない。適切な金属ナノチューブには、金ナノチューブおよび同時係属米国仮出願第61/031,643号に説明されるものが含まれる。
【0030】
種々の実施形態では、金属ナノワイヤは、約5−100μmの長さを有し、5−100nmの直径(または、断面)を有する。特定の実施形態では、金属ナノワイヤは、約5−30μmの長さを有し、20−80nmの直径を有する。好適な実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)は、約20μmの長さを有し、50nmの直径を有する。
【0031】
適切な金属ナノチューブは、金属ナノワイヤについて説明した寸法と類似の寸法を有する。ナノチューブでは、直径は、ナノチューブの外径を指す。
【0032】
ナノ構造は、パーコレーション過程によって導電性網を形成する。パーコレーション導電率は、導電性経路が相互接続ナノ構造によって形成される場合に確立可能である。電気的パーコレーション閾値を達成し、かつ導電性になるためには、十分なナノ構造が存在しなければならない。ゆえに、電気的パーコレーション閾値は、ナノ構造の荷重密度または濃度に関連する臨界値であり、臨界値を上回ると長距離導電率が達成可能である。典型的には、荷重密度は、面積当たりのナノ構造の数を指し、「数/μm2」によって表すことが可能である。
【0033】
同時係属米国特許出願第11/504,822号に説明するように、ナノ構造のアスペクト比(長さ:直径)が高くなると、パーコレーション導電率の達成に必要なナノ構造は少なくなる。ナノワイヤ等の異方性ナノ構造では、電気的パーコレーション閾値または荷重密度は、ナノワイヤの長さの2乗に反比例する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる同時係属および共有の出願第11/871,053号は、ナノワイヤのサイズ/形状と、パーコレーション閾値における表面荷重密度との理論的関係ならびに経験的関係について詳述している。
【0034】
図1は、電気的パーコレーション閾値を上回ってナノワイヤ20により形成される導電性網10を図式的に示す。導電性経路は、ナノワイヤを相互接続すること(例えば、網の一方の端部から他方の端部まで、接続するナノワイヤを通って追跡可能であること)によって形成される。ゆえに、電流は、ナノワイヤ網10を横断して伝導可能である。
【0035】
本明細書において使用する際、「導電性網」または「網」は、電気的パーコレーション閾値を上回る導電性ナノ構造によって形成される相互接続網を指す。典型的には、導電性網の表面抵抗率(または、「シート抵抗」)は、108オーム/スクエア(「Ω/□」とも呼ばれる)未満である。好ましくは、表面抵抗率は、104Ω/□、3,000Ω/□、1,000Ω/□、または100Ω/□未満である。典型的には、金属ナノワイヤにより形成される導電性網の表面抵抗率は、10Ω/□から1000Ω/□、100Ω/□から750Ω/□、50Ω/□から200Ω/□、100Ω/□から500Ω/□、または100Ω/□から250Ω/□、10Ω/□から200Ω/□、10Ω/□から50Ω/□、または1Ω/□から10Ω/□の範囲である。
【0036】
また、図1に示すように、網状ナノワイヤは、ワイヤ間空間30を画定する。パーコレーション閾値を上回る際、ワイヤ間空間のサイズ(「メッシュサイズ」とも呼ばれる)は、網の導電率に相関する。典型的には、メッシュサイズが小さいことは、ナノワイヤが密に分散すること意味し、これは高い導電率に相当する。
【0037】
また、メッシュサイズは、表面荷重レベルの指標として使用可能である。例えば、所定の長さを有するナノワイヤでは、表面荷重が低くなると、メッシュサイズが大きくなる。メッシュサイズが、特定の閾値を上回ると、ナノワイヤは、離隔し過ぎてパーコレーションが不可能になり、ワイヤ間空間は、効率的に絶縁体になる。図2Aは、ナノワイヤ20が完全な網の形成に不十分な密度にある膜12を示す。ワイヤ間空間30は、絶縁になる。明らかに異なるように、図1の密度に比べてナノワイヤの密度が低いことにより、メッシュサイズは拡大し、ナノワイヤ間の導電率は崩壊している。
【0038】
(充填材としての二次導電性媒体)
複合透明導電体では、金属ナノワイヤが、電気的パーコレーション閾値未満の荷重レベルにある場合であっても、二次導電性媒体の存在下で導電率を達成することが可能である。一次導電性媒体の金属ナノワイヤは、種々の実施形態では、パーコレーションまたは非パーコレーションであるが、第2の導電性媒体の存在は、複合透明導電体において、予想外の特性および相乗特性を提供する。
【0039】
特定の実施形態では、二次導電性媒体は、一次導電性媒体を形成する金属ナノワイヤとは異なる材料、寸法、幾何学的形状、または構造のナノ構造を含む。例えば、二次導電性媒体には、異なる寸法または材料のカーボンナノチューブ、金属ナノチューブ、ナノ粒子、および金属ナノワイヤが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0040】
他の実施形態では、二次導電性媒体は、連続導電性薄膜であることが可能である。本明細書において使用する際、「連続導電性」は、薄層を横断する(例えば、表面または面内を横断する)不断かつ一様な導電性経路を指し、この場合、電気伝導率は、導電性媒体の連続的な物理的接触によって確立される。連続導電性薄膜の例として、スパッタまたは蒸着金属酸化物膜、導電性ポリマー膜、およびその同等物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
一側面では、第2の導電性媒体は、ナノワイヤ膜のワイヤ間空間を充填する役割を果たす。図2Bは、図2Aのナノワイヤ20に連続導電性薄膜40を添加する複合透明導電体34を示す。連続導電性薄膜は、絶縁空間30を充填し、メッシュサイズを効率的に削減する。
【0042】
図2Cは、複数の第2の種類の異方性ナノ構造48も存在する別の複合透明導電体44を示す。異方性ナノ構造48は、ナノワイヤ20よりもさらに高いアスペクト比を有するように示される。図示するように、ワイヤ間空間30は、より長いナノ構造48による効率的な導電率により、効率的に低減する。
【0043】
図2Bおよび図2Cに示すように、ナノワイヤおよび二次導電性媒体の組み合わせ効果によって、一次導電性媒体が必ずしも電気的パーコレーション閾値に達していなくても、導電率が確立される。
【0044】
さらなる側面において、ワイヤ間空間を充填する第2の導電性媒体の存在は、所定の透明導電体における電位分布を等化する役割も果たす。加えて、2つの電極が離間し、かつ電位が印加される場合、2つの電極の空間に電場が生成される。複合透明導電体を電極として用いることは、電場の均一性を強化する役割を果たす。図3Aは、上部導電性膜50および下部導電性膜54間の電場線を示す。導電性膜50および54の両方は、ナノワイヤのみをベースとする。上部導電性膜50は、上部基板50b上に分散されるナノワイヤ50a(断面図で示す)を備える。同様に、下部導電性膜54は、下部基板54b上に分散されるナノワイヤ54a(断面図で示す)を備える。電場(線58として図式的に示す)は、例として、ナノワイヤ50aから開始し、54aにおいて終了する。各電極におけるナノワイヤ間のワイヤ間空間(例えば、62および66)により、線58は、対向するワイヤ付近に集中する。図3Bは、二次導電性媒体、例えば、連続膜70および74が、ワイヤ間空間62および66をそれぞれ充填することを示す。結果として、線78により表される電場は、より均一に分散される。
【0045】
一次導電性媒体、つまり高導電性金属ナノワイヤは、典型的には、複合透明導電体における電流の大部分を担う。二次導電性媒体は、電流伝導には関与しないが、それでも金属ナノワイヤ間の空間を充填する導電性層を形成することが可能である。本説明において、二次導電性媒体は、108オーム/スクエア(「Ω/□」とも呼ばれる)未満の表面抵抗率(または、「シート抵抗」)を有する導電性層を形成する。好ましくは、表面抵抗率は、104Ω/□、3,000Ω/□、1,000Ω/□、または100Ω/□未満である。典型的には、連続導電性薄膜のシート抵抗は、10Ω/□から1000Ω/□、100Ω/□から750Ω/□、50Ω/□から200Ω/□、100Ω/□から500Ω/□、または100Ω/□から250Ω/□、10Ω/□から200Ω/□、10Ω/□から50Ω/□、または1Ω/□から10Ω/□の範囲である。
【0046】
種々の実施形態では、第2の導電性媒体により形成される導電性層は、任意により、本明細書に定義するように、透明である。さらに、二次導電性媒体の存在により、光散乱が全体的に低減し得る。金属ナノワイヤは、光散乱および反射により偏光解消を引き起こし得る反射構造である。偏光解消は、典型的には表示機器(例えば、フラットパネルディスプレイ)の光路に存在する透明導電体膜におけるコントラスト比の低減に寄与する主な要因の1つである。コントラスト比が低くなると、表示機器の画像品質に悪影響を及ぼす傾向にある。例えば、同時係属米国仮出願第61/031,643号を参照されたい。ナノワイヤのみから形成される透明導電体膜では、ナノワイヤの数の減少により、光散乱の低減がもたらされ得るが、導電率損失の犠牲を潜在的に伴う。本実施形態に従う複合膜により、第2の導電性媒体が提供する補足的導電率により、導電率の低下を必ずしも引き起こさずに、数の少ないナノワイヤを用いることによって反射率の低減が可能になる。
【0047】
さらに、適切な材料(例えば、低反応性または非反応性)のナノ構造、特定の寸法(例えば、ナノ構造の直径または断面が小さくなると、光散乱が低減する)、特定の幾何学的形状(例えば、同一の外径を有するナノワイヤよりも、ナノチューブは光散乱を低減させる)を選択することによって、最適化された光学的特性を有する複合透明導電体をカスタマイズすることが可能になる。
【0048】
典型的には、種々の実施形態では、第2の導電性媒体により形成される導電性層は、約100nmから200nmの厚さ、または50nmから100nmの厚さ、または150nmから200nmの厚さを有する。
【0049】
(複合透明導電体)
したがって、複合透明導電体は、一次導電性媒体としての金属ナノワイヤと、一次導電性媒体に連結される二次導電性媒体とを備える。本明細書において使用する際、「連結」は、2つの導電性媒体の間における近接関係を指し、物理的接触、電気接続等を含む。
【0050】
複合体において組み合わせられた導電性媒体は、個々の導電性媒体をまとめるよりも、予想外の特質または強化された特性を提供する。本明細書においてより詳細に説明するように、複合透明導電体の相乗的な改善には、複合透明導電体におけるより均等な電位、複合透明導電体によって形成される2つの電極間のより均一な電場、より高い導電率、より良好な耐久性、より高いコントラスト比等が含まれるが、これらに限定されない。加えて、二次導電性媒体の賢明な選択によりナノワイヤを組み合わせることによって、複合透明導電体の性能基準を妥協せずに、全体の加工費用を減少させることが可能である。
【0051】
以下の具体的な実施形態は、一次導電性媒体としての金属ナノワイヤと、種々の二次導電性媒体とに基づく複合透明導電体について説明する。
【0052】
(1.二次導電性媒体としてのカーボンナノチューブ膜)
別の実施形態では、複合透明導電体は、二次導電性媒体と組み合わせられる複数の金属ナノワイヤを備え、二次導電性媒体は、カーボンナノチューブ(CNT)から形成される連続導電性薄膜である。
【0053】
図4Aは、ナノワイヤ層144と、基板152上に形成される下部CNT層148とを含む複合透明導電体140を示す。CNTは、ナノワイヤ層の下に導電性膜を形成する。図4Bは、構成膜の逆の配置を有する複合透明導電体150を示し、ナノワイヤ層144は、CNT層148の下に存在する。図4Aおよび図4Bの両方において、構成膜は、連続的に蒸着可能である。代替として、ナノワイヤおよびCNTは、同時に共蒸着可能であり、完全に統合された導電性膜を形成する。図4Cは、導電性層164を有する複合透明導電体160を示し、ナノワイヤ168およびCNT172は、凝集構造を可能にするように、完全に統合される。
【0054】
図4A−図4Cに示す複合膜は、電流を伝導するための高導電性金属ナノワイヤの補完的特性に依存する長距離連結性と、導電性CNT膜の充填効果とを提供する。所定の荷重レベルにおいて、CNTは、金属ナノワイヤ(銀ナノワイヤでは約10.5g/cm3)に比べてかなり低い特定重量(約1.7−1.9g/cm3)を有することから、CNTは、金属ナノワイヤと比べて小さいメッシュサイズの導電性膜を形成することが可能である。したがって、CNT層を有する複合透明導電体は、電源への接続時に、電位の均一性も改善することが可能である。
【0055】
加えて、CNTは、黒色であり、極めて狭い寸法(すなわち、その直径または断面積は、典型的には2nm未満である)を有し、これは、光散乱の低減およびコントラスト比の改善には望ましい条件である。結果として、CNTおよび金属ナノワイヤに基づく組み合わせ型導電性媒体は、所定の導電率において全体的な反射率を低減させる。
【0056】
さらに、CNTおよびナノワイヤに基づく複合膜は、接触を介する際に特に適切である。本明細書において使用する際、「介する」は、典型的には誘電体層を通した2つの導電体の間の接続を指す。上述のように、CNTは、金属ナノワイヤよりもかなり低い特定重量を有することから、同一の重量の金属ナノワイヤよりも、単位面積当たりのCNTの荷重密度がかなり高くなる。これは、接触を介して有利に適用可能であり、限定面積(約5−10ミクロン)において高電流密度に対応することに関与する。CNTの密度が高くなると、追加の電流を効率的に伝導することが可能になり、金属ナノワイヤに対する潜在的破損を防止することが可能である。
【0057】
特定の実施形態では、第3の導電性媒体を複合透明導電体にさらに組み込むことが可能である。本明細書において使用する際、「第2の種類のナノ構造」および「第3の種類のナノ構造」は、具体的には、ナノ構造の材料、寸法、形状、または幾何学的形状等の少なくとも1つの側面において、相互に異なるナノ構造を指し、また、一次導電性媒体を形成する金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブとは異なる構造を指す。
【0058】
適切な第3の導電性媒体には、導電性ナノ粒子等の導電性ナノ構造、一次導電性媒体の金属ナノワイヤとは異なる材料、寸法、または幾何学的形状の導電性ナノ構造が含まれる。例えば、導電性ナノ粒子は、金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、およびそれらの組み合わせであることが可能である。導電性ナノ構造は、異なる金属のナノワイヤ、ナノチューブ、またはアスペクト比の高いまたは断面の小さいナノワイヤであることが可能である。複合透明導電体に分散される第3の種類の導電性ナノ構造は、CNTの充填効果を補足することが可能であり、また、複合透明導電体においてより均等な電位を提供することに寄与することが可能である。
【0059】
典型的には、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)およびCNT膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%(参照として空気を使用)の光透過性を有する。
【0060】
典型的には、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)およびCNT膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、1−108Ω/□の範囲のシート抵抗を有し、複合透明導電体の最終用途に依存する。より典型的には、シート抵抗は、10Ω/□から1000Ω/□、100Ω/□から750Ω/□、50Ω/□から200Ω/□、100Ω/□から500Ω/□、または100Ω/□から250Ω/□、10Ω/□から200Ω/□、10Ω/□から50Ω/□、または1Ω/□から10Ω/□の範囲である。
【0061】
好適な実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)およびCNT膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、85%より高い光透過性および1000Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)およびCNT膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、95%より高い光透過性および500Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)およびCNT膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、90%より高い光透過性および100Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)およびCNT膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、85%より高い光透過性および50Ω/□未満のシート抵抗を有する。
【0062】
(2.二次導電性媒体としての他の種類のナノ構造)
CNT以外のナノ構造も、第2の導電性媒体として適切である。特定の実施形態では、導電性ナノ構造は、一次導電性媒体を形成する金属ナノワイヤとは異なる材料または寸法の金属ナノワイヤである。例えば、低反射性金属から形成される、または低反射性酸化シースを有するナノワイヤを使用して、複合透明導電体の全体的な導電率を妥協せずに、光散乱を低減させることが可能である。さらに、一次導電性媒体の金属ナノワイヤに比べて直径(すなわち、断面積)が小さいナノワイヤも、光散乱を低減することが可能である。
【0063】
図5は、一次導電性媒体としての第1の種類のナノワイヤ174と、第2の種類のナノワイヤ188とを備える複合透明導電体170を示す。第2の種類のナノワイヤ188は、第1の種類のナノワイヤ174よりもかなり小さい直径を有する。結果として、二次導電性媒体は、ワイヤ間空間182を充填することによって、複合透明導電体の導電率を促進するだけでなく、その狭い寸法により、光錯乱に実質的に寄与しない。
【0064】
種々の他の実施形態では、第2の種類のナノ構造は、金属ナノチューブ、導電性ナノ粒子(カーボンブラックおよび金属または金属酸化物ナノ粒子等)、およびその同等物であることが可能である。
【0065】
(3.二次導電性媒体としての金属酸化物膜)
一実施形態では、複合透明導電体は、二次導電性媒体と組み合わせられる複数の金属ナノワイヤを備え、二次導電性媒体は、導電性金属酸化物膜である。インジウムスズ酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物は、当技術分野において周知である。スパッタITO膜は、従来的には、透明導電体を用いる機器に適用されていた。しかしながら、ITO膜は、その脆弱性および応力に対する低耐性により、その用途が限定されている。ITO膜にたとえ微小な割れ目があっても、導電率の急速な損失を引き起こし得る。
【0066】
金属ナノワイヤベースの膜およびITO膜を組み合わせることによって、相乗的利点を有する複合膜が可能になる。図6Aは、複合膜186が、基板110(例えば、ガラス)上にITO膜188と、ITO膜188の上に配置されるナノワイヤ膜192とを備え、ナノワイヤ膜192がナノワイヤ194を備えることを示す。
【0067】
一実施形態では、ナノワイヤ194の荷重密度は、電気的パーコレーション閾値を下回る。それにもかかわらず、表面伝導率は、ナノワイヤおよび下部ITO膜188の組み合わせによって、複合膜186において確立可能である。上述のように、ITO膜は、ナノワイヤ間の任意の絶縁間隙を充填することが可能である。
【0068】
図6Bは、ナノワイヤベースの膜およびITO膜の代替配置を有する複合膜196を示す。図示するように、ナノワイヤ膜192は、最初に基板110上に蒸着される。ITO膜188は、ナノワイヤ膜192の上にスパッタされる。図6Aと同様に、ナノワイヤ194は、必ずしもそれ自体で導電性網を形成するとは限らない。それにもかかわらず、面内導電率は、ナノワイヤおよび下部ITO膜188の組み合わせによって、複合膜196において確立可能である。
【0069】
図示するように、表面および面内導電率を含む複合膜における導電率は、構成膜のみ、すなわち、ナノワイヤベースの膜およびITO膜のいずれかの導電率よりも優れていることが可能である。有利には、構成膜は、相互に補完し、例えば、連続ITO膜の存在による単なる構成膜の単なる相加効果を上回る特性を相乗的に提供し、電圧源への接続時に、複合膜は、ナノワイヤだけに基づく透明導電体の電位よりも均一な電位を有する(図2Bも参照)。一方、ナノワイヤは、導電率の損失を引き起こさずに、複合膜において特定の程度の屈曲を可能にする。例えば、ナノワイヤは、ITO膜のバルク内の微小な割れ目を克服し、導電率を維持することが可能であるため、物理的応力を受ける際に複合膜における潜在的な不具合を防止する。
【0070】
加えて、ナノワイヤの高導電率により、複合膜の高導電率は、同一の厚さの純粋ITO膜の導電率に比べてかなり高いことが可能である。ゆえに、構成要素として純粋ITO膜よりも薄いITO膜であって、依然として、純粋で厚いITO膜と同一レベルの導電性を達成可能であるITOを有する複合膜を生成することが可能である。ITO膜の厚さを縮小することによって、加工費用が直接的に減少可能になり、また、ITO膜が破損する可能性が低くなる。
【0071】
さらに、図6Aおよび図6Bの構成膜は、2つの並列抵抗器に類似する配置にあるが、複合膜の抵抗率が、並列抵抗器について予測される抵抗率よりも低くなり得ることが認められる(実施例4も参照)。図6Cは、2つの並列抵抗器198(抵抗率R1)および199(抵抗率R2)を図式的に示す。既知のように、1組の並列抵抗器の全体抵抗率Rは、
R=(R1xR2)/(R1+R2)
である。
【0072】
実施例4は、250Ω/□の抵抗率を有するITO膜と、約250Ω/□の抵抗率を有するナノワイヤベースの膜とによって形成される複合膜の抵抗率を測定する。これらの2つの構成膜が、単に並列抵抗器であれば、全体抵抗率は、約125Ω/□になるであろう。しかしながら、複合膜の抵抗率は、約50−80Ω/□の範囲であることが観測され、これは、ITO膜(250Ω/□)およびナノワイヤ膜(250Ω/□)の並列抵抗器として予測された抵抗率よりもかなり低い。
【0073】
任意により、複合膜は、所定の導電率レベルにおいて、ナノワイヤベースの膜のみよりも低い反射性を有することが可能である。上述のように、ナノワイヤのみから形成される透明導電体膜では、ナノワイヤの数の減少により、透明導電体において光散乱の低減がもたらされ得るが、導電率損失の犠牲を潜在的に伴う。本実施形態に従う複合膜により、ITO膜が提供する補足的導電率により、導電率の低下を必ずしも引き起こさずに、数の少ないナノワイヤを用いることによって反射の低減が可能になる。
【0074】
図6Aおよび図6BのITO膜の代わりに、他の金属酸化物膜を使用することが可能である。例示的な金属酸化物膜には、ドープ酸化亜鉛膜、フッ素ドープ酸化スズ膜、アルミニウムドープ酸化亜鉛膜、Zn2SnO4、ZnSnO3、MgIn2O4、GalnO3、(Ga2ln)2O3、Zn2In2O5、ln4Sn3O12等が含まれる。Crawford, G.P.、Flexible Flat Panel Display(John Wiley and Sons,2005)。
【0075】
典型的には、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および金属酸化物膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%(参照として空気を使用)の光透過性を有する。
【0076】
典型的には、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および金属酸化物膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、1−108Ω/□の範囲のシート抵抗を有し、複合透明導電体の最終用途に依存する。より典型的には、シート抵抗は、10Ω/□から1000Ω/□、100Ω/□から750Ω/□、50Ω/□から200Ω/□、100Ω/□から500Ω/□、または100Ω/□から250Ω/□、10Ω/□から200Ω/□、10Ω/□から50Ω/□、または1Ω/□から10Ω/□の範囲である。
【0077】
好適な実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および金属酸化物膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、85%より高い光透過性および1000Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および金属酸化物膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、95%より高い光透過性および500Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および金属酸化物膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、90%より高い光透過性および100Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および金属酸化物膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、85%より高い光透過性および50Ω/□未満のシート抵抗を有する。
【0078】
(4.二次導電性媒体としての導電性ポリマー膜)
別の実施形態では、複合透明導電体は、二次導電性媒体と組み合わせられる複数の金属ナノワイヤを備え、二次導電性媒体は、連続ポリマー膜である。
【0079】
特定のポリマーは、連続的に重複する軌道の共役骨格における電子非局在化により導電性である。例えば、単一および2重の炭素−炭素結合の交互から形成されるポリマーは、電子が占有可能である重複p軌道の連続経路を提供することが可能である。
【0080】
共通の種類の有機導電性ポリマーには、ポリ(アセチレン)、ポリ(ピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(アニリン)、ポリ(フルオレン)、ポリ(3−アルキルチオフェン)、PEDOTとしても既知であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリテトラチアフルバレン、ポリナフタレン、ポリパラフェニレン、ポリ(パラフェニレンスルフィド)、およびポリ(パラフェニレンビニレン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
導電性ポリマー膜単独では、典型的には導電性ではなく、または表示機器における透明導電体として機能するには十分物理的に強固ではないが、導電性ポリマー膜は、金属ナノワイヤと組み合わせまたはドープして、複合透明導電体を形成することが可能である。複合透明導電体は、主要な電流伝導媒体としての金属ナノワイヤと、電場を均一にするためのフィルタとしての導電性ポリマー膜とに依存することが可能である。加えて、金属ナノワイヤは、導電性ポリマー膜の機械的特性を補強および強化することも可能である。
【0082】
任意により、導電性ポリマー膜は、複合膜の吸収特性も調整することが可能である。
【0083】
図7Aは、複合膜200が、基板110(例えば、ガラス)上に導電性ポリマー膜204と、導電性ポリマー膜204の上に配置されるナノワイヤ膜220とを備えることを示す。
【0084】
図7Bは、ナノワイヤベースの膜および導電性ポリマー膜の代替配置を有する複合膜230を示す。図示するように、ナノワイヤ膜220は、最初に基板110上に蒸着される。導電性ポリマー膜104は、ナノワイヤ膜220の上面の上に蒸着される。図6Aと同様に、ナノワイヤ224は、必ずしもそれ自体で導電性網を形成するとは限らない。それにもかかわらず、面内導電率は、ナノワイヤおよび下部導電性ポリマー膜204の組み合わせによって、複合膜230において確立可能である。
【0085】
代替実施形態では、最初に金属ナノワイヤを基板上に蒸着して、導電性網を形成する。導電性ポリマー膜は、電極として金属ナノワイヤ網を使用して原位置で形成可能である。原位置で形成可能である適切な導電性ポリマーの例として、ポリピロールが挙げられる。より具体的には、ナノワイヤベースの導電性網を電極(すなわち、陽極)として使用して、ピロール単量体は、電気化学的に重合することが可能であり、導電性網上に塗膜を形成することが可能である。また、導電性ポリマー膜は、当技術分野において既知の方法の存在下で化学的に形成可能である。結果として生じる複合透明導電体は、導電性ポリマー膜に埋め込まれるナノワイヤを特徴とする。
【0086】
典型的には、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および導電性ポリマー膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%(参照として空気を使用)の光透過性を有する。
【0087】
典型的には、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および導電性ポリマー膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、1−108Ω/□の範囲のシート抵抗を有し、複合透明導電体の最終用途に依存する。より典型的には、シート抵抗は、10Ω/□から1000Ω/□、100Ω/□から750Ω/□、50Ω/□から200Ω/□、100Ω/□から500Ω/□、または100Ω/□から250Ω/□、10Ω/□から200Ω/□、10Ω/□から50Ω/□、または1Ω/□から10Ω/□の範囲である。
【0088】
好適な実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および導電性ポリマー膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、85%より高い光透過性および1000Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)導電性ポリマー膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、95%より高い光透過性および500Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および導電性ポリマー膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、90%より高い光透過性および100Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および導電性ポリマー膜の組み合わせに基づく複合透明導電体は、85%より高い光透過性および50Ω/□未満のシート抵抗を有する。
【0089】
(電気的特性および光学的特性)
本明細書において論じるように、複合透明導電体において組み合わせられた導電性媒体は、個々の導電性媒体をまとめるよりも、予想外の特質または強化された特性を提供する。複合透明導電体のこれらの相乗的な改善には、より一様な電位(電源への接続時)、より高い導電率、より良好な耐久性、より高いコントラスト比等が含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
典型的には、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および二次導電性媒体の組み合わせに基づく複合透明導電体は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%(参照として空気を使用)の光透過性を有する。ヘーズは、光散乱の指標である。これは、入射光から分離し、かつ透過中に散乱した光の量の割合を指す(すなわち、透過ヘーズ)。主に媒体の特性である光透過性とは違って、ヘーズは、しばしば製造に関し、典型的には、表面粗さおよび埋め込み粒子または媒体中の成分不均質によって引き起こされる。種々の実施形態では、透明導電体のヘーズは、10%以下、8%以下、5%以下、3%以下、または1%以下である。
【0091】
典型的には、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および二次導電性媒体の組み合わせに基づく複合透明導電体は、1−108Ω/□の範囲のシート抵抗を有し、複合透明導電体の最終用途に依存する。より典型的には、シート抵抗は、10Ω/□から1000Ω/□、100Ω/□から750Ω/□、50Ω/□から200Ω/□、100Ω/□から500Ω/□、または100Ω/□から250Ω/□、10Ω/□から200Ω/□、10Ω/□から50Ω/□、または1Ω/□から10Ω/□の範囲である。
【0092】
好適な実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および二次導電性媒体の組み合わせに基づく複合透明導電体は、85%より高い光透過性および1000Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および二次導電性媒体の組み合わせに基づく複合透明導電体は、95%より高い光透過性および500Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および二次導電性媒体の組み合わせに基づく複合透明導電体は、90%より高い光透過性および100Ω/□未満のシート抵抗を有する。他の実施形態では、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)および二次導電性媒体の組み合わせに基づく複合透明導電体は、85%より高い光透過性および50Ω/□未満のシート抵抗を有する。
【0093】
本明細書に説明する複合透明導電体は、フラットパネルディスプレイにおいて電極として適切である電気的特性および光学的特性を有することが可能である。フラットパネルディスプレイにおける透明電極のシート抵抗の典型的な範囲は、約10−100Ω/□であり、層の透過性は、87%より高い(参照としてガラスを使用する場合)か、または95%より高い(参照として空気を使用する場合)。
【0094】
さらに、電極として使用する場合、複合透明導電体は、液晶ディスプレイ(LCD)において特に有利である一様な電場を提供する。図8は、LCD設定250を図式的に示し、本設定において、画素電極254および対電極260は、約3−5μm離隔し、これは「セルギャップ」とも呼ばれる。液晶セル270は、2つの電極の間に配置される。簡潔に言うと、LCDは、セルに閉じ込められる液晶分子が、2つの電極間に生成された印加電場に応答して、その構造を変化させる際に動作する。
【0095】
ナノワイヤのみから形成される透明導電体電極を使用する場合、所望のレベルの導電率および光透過性において、ナノワイヤ間の空間は、液晶セルキャップ(すなわち、「セルギャップ」)に相当し得る。したがって、セルにおける全ての液晶分子が、同一の電場(大きさおよび方向の両方)によって駆動されるわけではなく、それによって、セルの光学的特性における不要な不均一性がもたらされる可能性がある。
【0096】
しかしながら、電極として複合透明導電体を用いることによって、ナノワイヤ間の空間が効率的に低減または排除される。典型的には、ナノワイヤ間のメッシュサイズは、液晶セルギャップの1/5未満であるべきである。より典型的には、メッシュサイズは、セルギャップの1/10または1/100未満であるべきである。二次導電性媒体の存在によって、一様な電極場が液晶セルにおいて印加可能になり、液晶分子の一様配向がもたらされるため、均質な光学的応答がもたらされる。
【0097】
図示するように、LCDセルにおける電極が、ナノワイヤのみを備える場合、セルギャップの1/5−1/100のメッシュサイズを可能にする表面荷重レベルは、高ヘーズおよび低コントラスト比を含む不十分な光学的特性をもたらす。しかしながら、複合透明導電体を電極として使用すると、一次導電性媒体の金属ナノワイヤ(または、金属ナノチューブ)は、セルギャップと類似するメッシュサイズを維持し、一方、二次導電性媒体は、セルギャップの約1/5−1/100にメッシュサイズを低減するか、または連続導電性薄膜の場合、メッシュサイズを排除する。結果として生じるLCDセルは、電極の光学的特性が改善するため、改善されたセル性能を有する。
【0098】
したがって、一実施形態は、第1の電極と、第2の電極であって、第1の電極および第2の電極間の垂直距離は、セルギャップを規定する第2の電極とを液晶セルに提供し、第1の電極は、一次導電性媒体および二次導電性媒体を含む複合透明導電体であり、一次導電性媒体は、セルギャップと類似のメッシュサイズを有する金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブを含み、二次導電性媒体は、連続導電性薄膜またはセルギャップの約1/5から1/100のメッシュサイズを有するナノ構造の導電性網である。
【0099】
典型的には、セルギャップは、約3−5μmである。特定の実施形態では、ナノ構造の導電性網は、セルギャップの約1/5から1/10、またはセルギャップの約1/10から1/100のメッシュサイズを有する。
【0100】
上述の複合透明導電体のいずれかは、液晶セルの第1の電極として使用可能である。例えば、種々の実施形態では、一次導電性媒体は、金属ナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ)または金属ナノチューブ(例えば、金ナノチューブ)であることが可能である。好適な実施形態では、金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブは、20−80nmの直径(ナノチューブでは外径)を有し、5−30μmの長さを有する。
【0101】
二次導電性媒体は、カーボンナノチューブ、一次導電性媒体の金属ナノワイヤとは異なる金属ナノワイヤ、または一次導電性媒体の金属ナノチューブとは異なる金属ナノチューブの導電性網を含み得る。
【0102】
代替として、二次導電性媒体は、金属酸化物膜(例えば、ITO膜)または導電性ポリマー膜(例えば、PEDOT膜)等の連続導電性薄膜であることが可能である。
【0103】
さらなる実施形態では、本明細書において説明するように、第2の電極も複合透明導電体であることが可能である。
【0104】
特定の実施形態では、第1の電極は、80−95%の光透過性を有する。
【0105】
上述のように、複合透明導電体は、典型的には金属ナノワイヤと関連する不要なレベルの散乱を低減するように設計可能である。二次導電性媒体は、電流を伝導するため、所定の導電率を達成するのに必要なナノワイヤの数が少なくなる。加えて、本明細書に説明する二次導電性媒体は、典型的には非反射性、低反射性、または散乱断面が小さいナノ構造を備え、結果として、存在するナノワイヤの数が少なくなるため、全体の散乱は減少する。
【0106】
(追加の層)
さらなる実施形態では、オーバーコートの不活性層が、複合透明導電体を安定化および保護するために蒸着可能である。また、オーバーコートは、防幻特性および防反射特性等の好ましい光学的特性も提供することが可能であり、ナノ粒子の反射率をさらに低減させる役割を果たす。
【0107】
したがって、オーバーコートは、ハードコート、反射防止層、保護膜、障壁層、およびその同等物のうちの1つ以上であることが可能であり、その全てについて、同時係属出願第11/871,767号および第11/504,822号において広範囲に説明される。
【0108】
適切なハードコートの例として、ポリアクリル酸、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリシラン、シリコーン、ポリ(シリコアクリル)等の合成ポリマーが挙げられる。適切な防幻材料は、当技術分野において周知であり、シロキサン、ポリスチレン/PMMA混合物、ラッカー(例えば、酢酸ブチル/ニトロセルロース/ろう/アルキド樹脂)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリウレタン、ニトロセルロース、およびアクリレートが含まれるがこれらに限定されず、その全ては、コロイド状シリカまたはヒュームドシリカ等の光拡散材料を含み得る。保護膜の例として、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート(TAC)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン、ポリオレフィン、またはその同等物が挙げられるが、これらに限定されず、特に、PET、PC、PMMA、またはTACが好ましい。
【0109】
(パターン化)
本明細書に説明する複合透明導電体は、その最終用途に応じてパターン化可能である。当技術分野における任意の既知の方法ならびに共有および同時係属の米国特許出願第11/504,822号、同第11/871,767号において説明するパターン化方法は、複合透明導電体のパターン化に使用可能である。
【0110】
(複合透明導電体の用途)
本明細書に説明する複合透明導電体は、金属酸化物膜(例えば、ITO)を現在利用する全ての機器を含む多種多様の機器における透明電極、偏光子、色フィルタ等の機能性膜として使用可能である。図7は、ハウジング258において複合透明導電体254を含む機器250を図式的に示す。複合透明導電体は、一次導電性媒体(すなわち、複数の金属ナノワイヤ)および第2の導電性媒体(すなわち、連続導電性薄膜)の上述の構成または組み合わせのうちのいずれかであることが可能である。
【0111】
適切な機器の例として、LCD等のフラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)、カラーフラットパネルディスプレイ用の色フィルタ上の塗膜、タッチスクリーン、電磁干渉、電磁遮蔽、機能性ガラス(例えば、エレクトロクロミック窓用)、ELランプおよび太陽電池を含む光電子機器、ならびにその同等物が挙げられる。加えて、本明細書における透明導電体は、フレキシブルディスプレイおよびタッチスクリーン等の可塑性機器に使用可能である。同時係属出願第11/871,767号を参照されたい。
【実施例】
【0112】
(実施例1)
(銀ナノワイヤの合成)
ポリビニルピロリドン(PVP)の存在下でエチレングリコール中に溶解された硝酸銀の還元によって、銀ナノワイヤを合成した。本方法は、例えば、Y.Sun、B.Gates、B.MayersおよびY.Xia、「Crystalline silver nanowires by soft solution processing」、Nanolett、(2002)、2(2)165−168に説明されている。一様な銀ナノワイヤは、遠心分離または他の既知の方法によって選択的に分離可能である。
【0113】
代替として、適切なイオン添加剤(例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド)を上記反応混合物に添加することによって、一様な銀ナノワイヤを直接合成することが可能である。このように産生された銀ナノワイヤをサイズ選択の分離ステップを行なわずに、直接使用することが可能である。本合成は、本出願の譲受人であるCambrios Technologies Corporation名義の米国仮出願第60/815,627号においてより詳細に説明され、本出願は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0114】
以下の例において、70nmから80nmまでの幅および約8μm−25μmの長さを有する銀ナノワイヤを使用した。典型的には、より良好な光学的特性(高透過性および低ヘーズ)は、高アスペクト比ワイヤ(すなわち、より長くかつ細い)により達成可能である。
【0115】
(実施例2)
(複合透明導電体の調製)
金属ナノワイヤは、基板あるいはITO膜および導電性ポリマー膜等の連続導電性薄膜上に蒸着する前に、インク組成物に調合されることが可能である。
【0116】
ITO膜は、基板上に直接スパッタ可能であり、その後、ナノワイヤ層が蒸着される。代替として、最初にナノワイヤ層を基板上に蒸着し、その後、ナノワイヤ層上に直接ITO膜をスパッタすることが可能である。
【0117】
二次導電性媒体がカーボンナノチューブを含む場合、カーボンナノチューブは、共蒸着のために、金属ナノワイヤと共に同一のインク組成物に調合されることが可能である。代替として、カーボンナノチューブは、金属ナノワイヤの蒸着の前または後に、連続蒸着のために、別々のインク組成物に調合されることが可能である。
【0118】
典型的には、インク組成物は、ナノ構造の分散および/または基板上のナノ構造の固定化を促進する薬剤を含む。これらの薬剤には、界面活性剤、粘度調整剤、およびその同等物が含まれる。インク組成物の調合に関する詳細な説明は、同時係属米国特許出願第11/504,822号に記載されており、本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0119】
金属ナノワイヤを蒸着するための典型的なインク組成物には、0.0025重量%から0.1重量%の界面活性剤(例えば、Zonyl(登録商標)FSO−100では、好適な範囲は0.0025重量%から0.05重量%まで)、0.02重量%から4重量%までの粘度調整剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはHPMCでは、好適な範囲は0.02重量%から0.5重量%まで)、94.5重量%から99.0重量%までの溶媒、および0.05重量%から1.4重量%までの金属ナノワイヤが含まれる。適切な界面活性剤の代表的な例として、Zonyl(登録商標)FSN、Zonyl(登録商標)FSO、Zonyl(登録商標)FSH、トリトン(x100、x114、x45)、ダイノール(604、607)、n−ドデシルb−D−マルトシド、およびノベックが挙げられる。適切な粘度調整剤の例として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、キサンタンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。適切な溶媒の例として、水およびイソプロパノールが挙げられる。
【0120】
インク組成物は、基板上に形成される最終導電性膜の荷重密度の指標であるナノワイヤの所望の濃度に基づいて調製可能である。
【0121】
基板は、その上にナノワイヤが蒸着される任意の材料であることが可能である。基板は、剛性または可塑性であることが可能である。好ましくは、基板は、光学的に透明であり、すなわち、材料の光透過性は、可視領域(400nm−700nm)において少なくとも80%である。
【0122】
剛性基板の例として、ガラス、ポリカーボネート、アクリル、およびその同等物が挙げられる。具体的には、無アルカリガラス(例えば、ホウケイ酸塩)、低アルカリガラス、およびゼロ膨脹ガラス−セラミック等の特殊ガラスを使用することが可能である。特殊ガラスは、特に、液晶ディスプレイ(LCD)を含む薄型パネルディスプレイシステムに適切である。
【0123】
可塑性基板の例として、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルナフタレート、およびポリカーボネート)、ポリオレフィン(例えば、直鎖、分岐、および環状ポリオレフィン)、ポリビニル(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、ポリアクリル、およびその同等物)、セルロースエステル塩基(例えば、セルローストリアセテート、酢酸セルロース)、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン、ポリイミド、シリコーン、および他の従来のポリマー膜が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
インク組成物は、例えば、同時係属米国特許出願第11/504,822号に説明する方法に従って、基板上に蒸着可能である。
【0125】
具体的な例として、銀ナノワイヤの水分散液、すなわち、インク組成物を最初に調製した。銀ナノワイヤの幅は、約35nmから45nmであり、長さは、約10μmであった。インク組成物は、0.2重量%の銀ナノワイヤ、0.4重量%のHPMC、および0.025重量%のトリトンx100を含む。次いで、60秒間500rpmの速度で、ガラス上にインクをスピンコートし、その後、90秒間50℃でポストベーキングし、90秒間180℃でポストベーキングした。塗膜の抵抗率は、約20オーム/スクエアであり、透過性は96%(参照としてガラスを使用)、ヘーズは3.3%であった。
【0126】
当業者が理解するように、他の蒸着技法を用いることが可能である。例えば、狭いチャネルにより測定される沈降流動、ダイ流動、傾斜上の流動、スリットコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、ビーズコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、およびその同等物が挙げられる。また、印刷手法を使用して、パターン化を含むまたは含まずに、インク組成物を基板上に直接印刷することが可能である。例えば、インクジェット、フレキソ印刷、およびスクリーン印刷を用いることが可能である。
【0127】
流体の粘度およびせん断挙動ならびにナノワイヤ間の相互作用が、蒸着されたナノワイヤの分布および相互接続に影響を及ぼし得ることをさらに理解されたい。
【0128】
(実施例3)
(透明導電体の光学的特性および電気的特性の評価)
本明細書に説明する方法に従い調製される複合透明導電体を評価して、その光学的特性および電気的特性を確立した。
【0129】
ASTM D1003における方法論に従って、光透過性データを入手した。BYK Gardner社のHaze−gard Plusを使用して、ヘーズを測定した。Fluke 175 True RMS Multimeterまたは非接触式抵抗計、Delcom社のmodel 717B導電率モニタを使用して、表面抵抗率を測定した。より典型的な機器は、抵抗を測定するための4端子プローブシステムである(例えば、Keithley Instruments社による)。
【0130】
また、ナノワイヤの相互接続性および基板の面積範囲は、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡で観測可能である。
【0131】
(実施例4)
(複合透明導電体の抵抗率の評価)
最初に、ITO膜をガラス基板上にスパッタした。ITO膜は、約250Ω/□であった。銀ナノワイヤ膜をITO膜上に塗膜した。銀ナノワイヤ膜は、シート抵抗が約300−500Ω/□である導電性膜を産生したインク組成物をベースとしていた。
【0132】
複合透明導電体を単に1対の並列抵抗器として扱うのであれば、シート抵抗は、約135−170Ω/□の予測値を有するであろう。しかしながら、結果として生じる複合膜は、50−80Ω/□の範囲のシート抵抗を示し、これは、予測値よりも約100%大きい導電性を有した。したがって、組み合わせ型導電性媒体は、個々の導電性媒体の単なる相加効果よりも優れた導電率を呈した。
【0133】
本明細書で参照されるおよび/または出願データシートに列挙される上記米国特許、米国特許出願公表、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許公報の全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0134】
本発明の具体的な実施形態について例証目的のために本明細書において説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく種々の修正を加えてもよいことを、上記説明から理解されたい。したがって、本発明は、添付の請求項によって限定される場合を除き限定されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属ナノワイヤまたは複数の金属ナノチューブを含む一次導電性媒体と、
該一次導電性媒体に連結される二次導電性媒体であって、第2の種類のナノ構造または連続導電性薄膜を含む、二次導電性媒体と
を備える、複合透明導電体。
【請求項2】
前記一次導電性媒体は、前記二次導電性媒体の上面の上に配置される、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項3】
前記一次導電性媒体は、前記二次導電性媒体の下に存在する、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項4】
前記一次導電性媒体および前記二次導電性媒体は、一体化される、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項5】
前記一次導電性媒体および前記二次導電性媒体は、電気的に連結される、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項6】
85%より高い光透過性と、1000Ω/□未満のシート抵抗とを有する、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項7】
前記金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤである、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項8】
前記二次導電性媒体は、前記第2の種類のナノ構造の導電性網を含む、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項9】
前記第2の種類のナノ構造の前記導電性網は、カーボンナノチューブを含む、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項10】
前記金属ナノワイヤは、カーボンナノチューブの前記導電性網の上面の上に配置される、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項11】
カーボンナノチューブの前記導電性網は、前記金属ナノワイヤの層の上に配置される、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブおよび前記金属ナノワイヤは、単一の導電性網において一体化される、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項13】
第3の種類の導電性ナノ構造をさらに備える、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項14】
前記第3の種類の導電性ナノ構造は、金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、金属ナノワイヤ、カーボンブラック、またはそれらの組み合わせである、請求項13に記載の複合透明導電体。
【請求項15】
前記金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤである、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項16】
85%より高い光透過性と、1000Ω/□未満のシート抵抗とを有する、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項17】
前記第2の種類のナノ構造の前記導電性網は、金属ナノチューブを含む、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項18】
前記金属ナノチューブは、金ナノチューブである、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項19】
前記第2の種類のナノ構造の前記導電性網は、ナノ粒子を含む、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項20】
前記ナノ粒子は、金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、グラフェンシート、またはそれらの組み合わせである、請求項19に記載の複合透明導電体。
【請求項21】
前記連続導電性薄膜は、金属酸化物膜である、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項22】
前記金属ナノワイヤは、前記金属酸化物膜の上に配置される、請求項21に記載の複合透明導電体。
【請求項23】
前記金属酸化物膜は、前記金属ナノワイヤの層の上に配置される、請求項21に記載の複合透明導電体。
【請求項24】
前記金属酸化物膜は、インジウムスズ酸化物(ITO)膜であり、前記金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤである、請求項21に記載の複合透明導電体。
【請求項25】
85%より高い光透過性と、1000Ω/□未満のシート抵抗とを有する、請求項21に記載の複合透明導電体。
【請求項26】
前記一次導電性媒体および前記金属酸化物膜は、電気的に連結される、請求項21に記載の複合透明導電体。
【請求項27】
前記連続導電性薄膜は、導電性ポリマー膜である、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項28】
前記導電性ポリマー膜は、ポリ(アセチレン)、ポリ(ピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(アニリン)、ポリ(フルオレン)、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリテトラチアフルバレン、ポリナフタレン、ポリパラフェニレン、ポリ(パラフェニレンスルフィド)、またはポリ(パラフェニレンビニレン)である、請求項27に記載の複合透明導電体。
【請求項29】
前記金属ナノワイヤは、前記導電性ポリマー膜の上に配置される、請求項27に記載の複合透明導電体。
【請求項30】
前記導電性ポリマー膜は、前記金属ナノワイヤの層の上に配置される、請求項27に記載の複合透明導電体。
【請求項31】
前記金属ナノワイヤは、前記導電性ポリマー膜の中に埋め込まれる、請求項27に記載の複合透明導電体。
【請求項32】
85%より高い光透過性と、1000Ω/□未満のシート抵抗とを有する、請求項27に記載の複合透明導電体。
【請求項33】
複数の金属ナノワイヤまたは複数の金属ナノチューブを含む一次導電性媒体と、
該一次導電性媒体に連結される二次導電性媒体であって、連続導電性薄膜である二次導電性媒体と
を備える、機器。
【請求項34】
前記金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤである、請求項33に記載の機器。
【請求項35】
前記連続導電性薄膜は、金属酸化物膜である、請求項33に記載の機器。
【請求項36】
連続導電性薄膜には、カーボンナノチューブが含まれる、請求項33に記載の機器。
【請求項37】
連続導電性薄膜は、導電性ポリマー膜である、請求項33に記載の機器。
【請求項38】
前記複合透明導電体は、第1の透明電極を形成する、請求項33に記載の機器。
【請求項39】
前記第1の透明電極に対向する第2の透明電極を形成する第2の複合透明導電体をさらに備える、請求項38に記載の機器。
【請求項40】
85%より高い光透過性と、1000Ω/□未満のシート抵抗とを有する、請求項33に記載の機器。
【請求項41】
フラットパネルディスプレイ、タッチスクリーン、電磁遮蔽、電磁干渉機器、エレクトロルミネセント素子、または太陽電池である、請求項33に記載の機器。
【請求項42】
第1の電極と、
第2の電極であって、該第1の電極および該第2の電極の間の垂直距離は、セルギャップを規定する、第2の電極と
を備え、該第1の電極は、一次導電性媒体および二次導電性媒体を含む複合透明導電体であり、該一次導電性媒体は、該セルギャップと類似のメッシュサイズを有する金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブを含み、該二次導電性媒体は、連続導電性薄膜または該セルギャップの約1/5から1/100までのメッシュサイズを有するナノ構造の導電性網である、液晶ディスプレイセル。
【請求項43】
前記ナノ構造の導電性網は、前記セルギャップの約1/5から1/10までのメッシュサイズを有する、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項44】
前記ナノ構造の導電性網は、前記セルギャップの約1/10から1/100までのメッシュサイズを有する、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項45】
前記ナノ構造の導電性網は、カーボンナノチューブである、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項46】
前記ナノ構造の導電性網は、前記一次導電性媒体の前記金属ナノワイヤとは異なる金属ナノワイヤである、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項47】
前記ナノ構造の導電性網は、前記一次導電性媒体の前記金属ナノチューブとは異なる金属ナノチューブである、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項48】
前記二次導電性媒体は、金属酸化物膜である、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項49】
前記二次導電性媒体は、導電性ポリマー膜である、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項50】
前記一次導電性媒体には、銀ナノワイヤが含まれる、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項51】
前記一次導電性媒体には、金ナノチューブが含まれる、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項52】
前記セルギャップは、約3−5μmの間である、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項53】
前記第2の電極は、複合透明導電体である、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項54】
前記第1の電極は、80−95%の光透過性を有する、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項55】
前記第1の電極は、直径が20−80nmであり、長さが5−30μmである金属ナノワイヤを備える、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項1】
複数の金属ナノワイヤまたは複数の金属ナノチューブを含む一次導電性媒体と、
該一次導電性媒体に連結される二次導電性媒体であって、第2の種類のナノ構造または連続導電性薄膜を含む、二次導電性媒体と
を備える、複合透明導電体。
【請求項2】
前記一次導電性媒体は、前記二次導電性媒体の上面の上に配置される、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項3】
前記一次導電性媒体は、前記二次導電性媒体の下に存在する、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項4】
前記一次導電性媒体および前記二次導電性媒体は、一体化される、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項5】
前記一次導電性媒体および前記二次導電性媒体は、電気的に連結される、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項6】
85%より高い光透過性と、1000Ω/□未満のシート抵抗とを有する、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項7】
前記金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤである、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項8】
前記二次導電性媒体は、前記第2の種類のナノ構造の導電性網を含む、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項9】
前記第2の種類のナノ構造の前記導電性網は、カーボンナノチューブを含む、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項10】
前記金属ナノワイヤは、カーボンナノチューブの前記導電性網の上面の上に配置される、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項11】
カーボンナノチューブの前記導電性網は、前記金属ナノワイヤの層の上に配置される、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブおよび前記金属ナノワイヤは、単一の導電性網において一体化される、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項13】
第3の種類の導電性ナノ構造をさらに備える、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項14】
前記第3の種類の導電性ナノ構造は、金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、金属ナノワイヤ、カーボンブラック、またはそれらの組み合わせである、請求項13に記載の複合透明導電体。
【請求項15】
前記金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤである、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項16】
85%より高い光透過性と、1000Ω/□未満のシート抵抗とを有する、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項17】
前記第2の種類のナノ構造の前記導電性網は、金属ナノチューブを含む、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項18】
前記金属ナノチューブは、金ナノチューブである、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項19】
前記第2の種類のナノ構造の前記導電性網は、ナノ粒子を含む、請求項8に記載の複合透明導電体。
【請求項20】
前記ナノ粒子は、金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、グラフェンシート、またはそれらの組み合わせである、請求項19に記載の複合透明導電体。
【請求項21】
前記連続導電性薄膜は、金属酸化物膜である、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項22】
前記金属ナノワイヤは、前記金属酸化物膜の上に配置される、請求項21に記載の複合透明導電体。
【請求項23】
前記金属酸化物膜は、前記金属ナノワイヤの層の上に配置される、請求項21に記載の複合透明導電体。
【請求項24】
前記金属酸化物膜は、インジウムスズ酸化物(ITO)膜であり、前記金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤである、請求項21に記載の複合透明導電体。
【請求項25】
85%より高い光透過性と、1000Ω/□未満のシート抵抗とを有する、請求項21に記載の複合透明導電体。
【請求項26】
前記一次導電性媒体および前記金属酸化物膜は、電気的に連結される、請求項21に記載の複合透明導電体。
【請求項27】
前記連続導電性薄膜は、導電性ポリマー膜である、請求項1に記載の複合透明導電体。
【請求項28】
前記導電性ポリマー膜は、ポリ(アセチレン)、ポリ(ピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(アニリン)、ポリ(フルオレン)、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリテトラチアフルバレン、ポリナフタレン、ポリパラフェニレン、ポリ(パラフェニレンスルフィド)、またはポリ(パラフェニレンビニレン)である、請求項27に記載の複合透明導電体。
【請求項29】
前記金属ナノワイヤは、前記導電性ポリマー膜の上に配置される、請求項27に記載の複合透明導電体。
【請求項30】
前記導電性ポリマー膜は、前記金属ナノワイヤの層の上に配置される、請求項27に記載の複合透明導電体。
【請求項31】
前記金属ナノワイヤは、前記導電性ポリマー膜の中に埋め込まれる、請求項27に記載の複合透明導電体。
【請求項32】
85%より高い光透過性と、1000Ω/□未満のシート抵抗とを有する、請求項27に記載の複合透明導電体。
【請求項33】
複数の金属ナノワイヤまたは複数の金属ナノチューブを含む一次導電性媒体と、
該一次導電性媒体に連結される二次導電性媒体であって、連続導電性薄膜である二次導電性媒体と
を備える、機器。
【請求項34】
前記金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤである、請求項33に記載の機器。
【請求項35】
前記連続導電性薄膜は、金属酸化物膜である、請求項33に記載の機器。
【請求項36】
連続導電性薄膜には、カーボンナノチューブが含まれる、請求項33に記載の機器。
【請求項37】
連続導電性薄膜は、導電性ポリマー膜である、請求項33に記載の機器。
【請求項38】
前記複合透明導電体は、第1の透明電極を形成する、請求項33に記載の機器。
【請求項39】
前記第1の透明電極に対向する第2の透明電極を形成する第2の複合透明導電体をさらに備える、請求項38に記載の機器。
【請求項40】
85%より高い光透過性と、1000Ω/□未満のシート抵抗とを有する、請求項33に記載の機器。
【請求項41】
フラットパネルディスプレイ、タッチスクリーン、電磁遮蔽、電磁干渉機器、エレクトロルミネセント素子、または太陽電池である、請求項33に記載の機器。
【請求項42】
第1の電極と、
第2の電極であって、該第1の電極および該第2の電極の間の垂直距離は、セルギャップを規定する、第2の電極と
を備え、該第1の電極は、一次導電性媒体および二次導電性媒体を含む複合透明導電体であり、該一次導電性媒体は、該セルギャップと類似のメッシュサイズを有する金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブを含み、該二次導電性媒体は、連続導電性薄膜または該セルギャップの約1/5から1/100までのメッシュサイズを有するナノ構造の導電性網である、液晶ディスプレイセル。
【請求項43】
前記ナノ構造の導電性網は、前記セルギャップの約1/5から1/10までのメッシュサイズを有する、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項44】
前記ナノ構造の導電性網は、前記セルギャップの約1/10から1/100までのメッシュサイズを有する、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項45】
前記ナノ構造の導電性網は、カーボンナノチューブである、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項46】
前記ナノ構造の導電性網は、前記一次導電性媒体の前記金属ナノワイヤとは異なる金属ナノワイヤである、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項47】
前記ナノ構造の導電性網は、前記一次導電性媒体の前記金属ナノチューブとは異なる金属ナノチューブである、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項48】
前記二次導電性媒体は、金属酸化物膜である、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項49】
前記二次導電性媒体は、導電性ポリマー膜である、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項50】
前記一次導電性媒体には、銀ナノワイヤが含まれる、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項51】
前記一次導電性媒体には、金ナノチューブが含まれる、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項52】
前記セルギャップは、約3−5μmの間である、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項53】
前記第2の電極は、複合透明導電体である、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項54】
前記第1の電極は、80−95%の光透過性を有する、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【請求項55】
前記第1の電極は、直径が20−80nmであり、長さが5−30μmである金属ナノワイヤを備える、請求項42に記載の液晶ディスプレイセル。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A−3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A−3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2010−525526(P2010−525526A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504302(P2010−504302)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/060937
【国際公開番号】WO2008/131304
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(508041046)カンブリオス テクノロジーズ コーポレイション (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/060937
【国際公開番号】WO2008/131304
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(508041046)カンブリオス テクノロジーズ コーポレイション (6)
【Fターム(参考)】
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