説明

複数の固定床または移動床帯域および内蔵型熱交換器を有する反応装置

【課題】存在する触媒量の割には容積が大きく、その一方で熱交換器を内蔵させるための内部容積が大きい、小型反応装置を提供する。
【解決手段】本発明は、高度に吸熱または発熱反応を行うための軸方向に流れるタイプの段状帯域を有する反応装置に関する。反応装置は、上部帯域Zaおよび下部帯域Zbの間の触媒床内に狭小部を含み、これにより、気相および/または液相で吸熱または発熱反応、特には、ディーゼルフラクションを製造するためのC2−C12フラクションのオリゴマー化を行うための反応装置内に熱交換器が収容されることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱効率が大きい少なくとも一つの触媒反応、一般には、放熱(いわゆる発熱反応)または時として吸熱(いわゆる吸熱反応)が内部で実施される反応装置に関する。
【0002】
本発明は、また、オレフィン系原料油のオリゴマー化方法(すなわち主として2〜6個のモノマーまたはベース分子に制限される重合または付加)に関する。特に、本発明は、オレフィンを、原料油に存在する他の化合物、例えば、オレフィン、硫黄含有化合物、窒素含有化合物、芳香族分子に付加する反応に関し、前記付加反応は、該当する化合物の分子量を増やすことを目的とする。
【0003】
より詳細には、本発明は、2〜12個の炭素原子、好適には3〜7個の炭素原子、さらに好適には4〜6個の炭素原子を含むオレフィン系炭化水素フラクションからのオリゴマー化反応に関し、このオリゴマー化反応により、ガソリンフラクション、ディーゼルフラクション、または潤滑油フラクション、より特定的には、ディーゼルフラクションの炭化水素類を製造することが可能である。
【0004】
本発明は、垂直に積み重ねられた複数の反応帯域を有し、該複数の反応帯域が反応帯域の間の触媒通路の狭小部にある少なくとも一つの熱交換帯域により分離された反応装置に関する。
【背景技術】
【0005】
従来技術では、粒床(granular bed)を用いる触媒反応装置で化学反応を、特に、石油または炭化水素フラクションを精製するために実施することが知られている。一般に、0.5〜5mmの特徴的な寸法を有する触媒粒子が用いられる。これらの触媒粒子は、それらの流動性を良くするために実質的に球状の形状であることが多い。しかし、触媒粒子は、例えば押し出し成形により製造される場合には、別の形状をとることがある。本発明の反応装置で利用される触媒の特徴寸法(例えば直径)は、全て、直径0.5〜5mm、好適には1〜4mmである。
【0006】
一般に、触媒の不活性化、例えば、オリゴマー化によるディーゼルフラクションの製造に使用されるゼオライトを含む触媒の不活性化は早い。従って、選択率および収量に関して反応装置の性能を維持するために、触媒を定期的に交換することが必要である。
【0007】
このために、次のような二つの技術が通常使用されている。
【0008】
「固定床」の技術では、触媒が消耗したとみなされたら、サイクルの終わりに反応装置に含まれる触媒全体を交換する。典型的には、そこで操作を中断し、反応装置を空にしてから、新しい触媒および/または再生触媒を反応装置に再充填する。
【0009】
触媒の移動(連続または半連続)および再生(連続または半連続)による触媒反応には、「移動床」技術という別の技術が用いられ、固定床と同様に反応装置に含まれる触媒粒子の積み重ねから構成されるが、しかし、前記粒子は、重力の作用で反応装置の頂部から底部に(非常にゆっくりした平均速度で連続または不連続で)置き換えられる。反応装置の底部から消耗した少量の触媒を連続または不連続で取り出し、同量の新しい触媒および/または再生した触媒を反応装置の頂部に導入する。例えば、4時間または8時間ごとに適切な量の触媒を取り出して再投入することにより、触媒の総合的な活性を一定にする。消耗して取り出される触媒は典型的には再生されてから再循環させられるが、但し、場合によっては少量の触媒が除去されて新しい触媒に代えられる。
【0010】
本発明の反応装置は、固定床および移動床の態様で利用されてよいが、後者の態様が好適な態様である。
【0011】
さらに、著しい吸熱反応または著しい発熱反応の場合、所望の限度内に反応装置の入口と出口との温度差を保持し、および/または、2以上の直列する反応装置間で反応流体の温度を設定しなおすように、反応装置の内部または外部で、反応流体による熱交換手段(炉または熱交換器)が用いられる場合がある。
【0012】
特許文献1には、水素化処理反応を実施するための多段移動床反応装置が記載されている。他の特許(特に特許文献2)が対象とするシステムは、反応装置の各段から連続または半連続で触媒が添加および抜き出されることを可能とする。原料油は、段から段へと流れる。その反対に、一つの段の触媒は次の段には流れない。このようなシステムがオリゴマー化反応を実施するためにも用いられ得ることが分かっている。しかし、記載されたシステムは、各反応区間内で温度特性を有効に管理することができない。
【0013】
特許文献3には、ゼオライトおよび固定床での筒状タイプの反応装置あるいはオリゴマー化反応を実施するために使用されてよい任意の他の反応装置を用いたオリゴマー化方法が記載されている。この特許には、反応装置から連続または半連続で触媒を添加および抜き出し得る方法が記載されている。ところが、反応の発熱管理の問題には取り組んでいない。
【0014】
特許文献4には、長鎖のパラフィンの脱水素化反応で主に使用される内部熱交換器を備えた、厚みの薄い床の多段反応装置が記載されている。このシステムは、各反応区間内の温度を正確に制御できる。しかしながら、厚みの薄い床に適合されているので、多量の触媒の使用には適していない。ここでは、反応装置への触媒の充填率が非常に低い。
【0015】
従って、積層型反応装置または多段反応装置を開示した上記の特許出願の数々には、ユーザに対して多量の触媒を使用できると同時に結合された熱手段を利用できるようにする手段が記載されていない。
【特許文献1】米国特許出願公開2002/0011428号明細書
【特許文献2】米国特許第5076908号明細書
【特許文献3】国際公開第02/04575号パンフレット
【特許文献4】欧州特許第1236506号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、発熱または吸熱が著しい反応、特にオリゴマー化反応を実施する際に関連する問題を最適に解決できる反応装置およびこの反応装置を用いた炭化水素類の化学変換方法について記載する。本発明は、存在する触媒量の割には容積が大きく、その一方で熱交換器を内蔵させるための内部容積が大きい、小型反応装置を実施可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、特に、オレフィン系原料油(20〜100重量%のオレフィン類を含む場合が多い)におけるオレフィンのオリゴマー化発熱反応の特定事例で示される。しかしながら、本発明の適用分野は、もっと広く、大きな触媒容積および熱制御が典型的には必要不可欠な気相および/または液相の発熱反応または吸熱反応全体、特に、オレフィンを、原料油中に存在する他の化合物、例えばオレフィン、硫黄含有化合物、窒素含有化合物、芳香族分子に付加する反応に関し、前記付加反応は、この化合物の分子量を増やすことを目的とする。
【0018】
特に、本発明による反応装置は、2〜12個の炭素原子、好適には3〜7個の炭素原子、さらに好適には4〜6個の炭素原子を含むオレフィン系炭化水素フラクションのオリゴマー化反応の実施に特に適しており、該オリゴマー化反応によりガソリンフラクション、ディーゼルフラクション、または潤滑油フラクションの系列の炭化水素類、特に典型的には160〜370℃、特定的には200〜365℃の蒸留範囲を有するディーゼルフラクションの炭化水素類が得られる。
【0019】
この化学反応に対して、様々な反応帯域間で触媒の活性度に大きな格差がないようにすることが望ましい。それらが変換損失を生じさせるからである。
【0020】
さらに、オリゴマー化反応は発熱性が高い。温度があまり高すぎると、オリゴマー化された化合物の分解が起こりやすくなるので望ましくない。
【0021】
また、幾つかの反応帯域で温度が低すぎると、ディーゼルフラクションの組成において十分に重質の化合物への所望の変換が制限される。そのため、様々な反応帯域で温度を正確に制御することが望ましい。特に、触媒反応帯域内の温度を、該帯域における触媒の活性に応じて調整することが重要である。
【0022】
こうした様々な理由から、複数の連続する、好ましくは大きな触媒容積を有する反応帯域を用い、2つの連続帯域間の反応流体の温度を調整するための熱交換手段を設置することが望ましい。
【0023】
上記の技術的な問題を解決するために、本発明は、実質的または大きい触媒容積、および触媒通路のための狭小部において内蔵された熱交換手段を有する反応装置を提案する。好適な変形では、本発明の反応装置は、移動床の態様を可能とする手段を含む。
【0024】
場合によっては、反応装置は、典型的には各反応帯域への入口に、新しい触媒または再生触媒を添加し、これを、上流反応帯域からの(部分的に)消耗された触媒の少なくとも一部と混合する手段を含んでよい。
【0025】
本発明は、また、この反応装置における化学反応の実施方法、特にオレフィン系原料油のオリゴマー化方法を提案する。
【0026】
本発明の反応装置は、実質的に垂直な軸に沿って細長い形状である反応装置であって、複数の垂直に積み重ねられた触媒反応帯域を同一殻壁内に含み、これらの帯域の各々において連続する反応流体の軸方向の移動に適合され、前記反応流体の導入手段(100)および排出手段(101)と、新しい触媒または再生触媒を反応装置の頂部に供給する手段(102)と、消耗した触媒を反応装置の下部から排出する手段(105)とを含む反応装置であって、粒状触媒により充填され、高さの一部より上で殻壁の断面と実質的に同一の断面を有する上部反応帯域Za(3a)を含み、この帯域Za(3a)は狭小帯域を介して反応帯域Zb(3b)に直接的に接続され、この帯域Zb(3b)は同じく粒状触媒により充填され、高さの一部より上で殻壁の断面と実質的に同一の断面を有し、上部反応帯域Zaの真下に配置され、これらの反応帯域ZaおよびZbは、反応流出物の通路および前記狭小帯域を介した帯域Zaから帯域Zbへの触媒通路により直接的に接続された二つの連続する反応帯域であり、帯域Zaは、その上部で、前記新しい触媒または再生触媒の供給手段(102)に直接または間接的に接続され、帯域Zbは、その下部で、前記消耗した触媒の排出手段(105)に直接または間接的に接続されており、反応装置は、狭小帯域においてこの狭小帯域と反応装置の殻壁との間に配置された、帯域ZaおよびZb間を移動する反応流体を加熱または冷却する熱交換器(8)をさらに含むものである。
【0027】
上記本発明の反応装置において、帯域Zaは、その下部に、実質的に円錐形の収束部を含み、該収束部は、反応流体の通過用の穴を含み、かつ、反応装置の直径よりも小さい直径のチャネル(2b)に接続され、該チャネルは、狭小帯域の少なくとも一部を画定することが好ましい。
【0028】
上記本発明の反応装置において、前記チャネル(2b)の直径は、狭小帯域の位置における反応装置の直径の1〜50%であることが好ましい。
【0029】
また、本発明は、上記いずれか1つに記載の反応装置における炭化水素系原料油の化学変換方法である。
【0030】
上記本発明の方法は、2〜12個の炭素原子を有するオレフィン系原料油をオリゴマー化する方法であることが好ましい。
【0031】
上記本発明の方法において、圧力が0.1〜10MPa、温度が40〜600℃、時間当たりの空間速度HSVが0.01〜100h−1であり、触媒が各反応帯域内において1〜200cm/時の速度で移動することが好ましい。
【0032】
上記本発明の方法において、各反応帯域内の温度変化を2〜50℃の1以上の値に制限するように操作条件すなわち温度、圧力、HSVが選択されることが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、複数の連続する、好ましくは大きな触媒容積を有する反応帯域を用い、触媒通路のための狭小部において内蔵された熱交換手段を設置し、この熱交換手段により、2つの連続帯域間の反応流体の温度を調整するので、小型であるが触媒容積を大きくとることができ、また、複数の反応帯域間で触媒の活性度に大きな格差がないようにする等の温度制御を行うことできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明は、発明の範囲を制限するわけではないが本発明の様々な実施形態を示す図1、2を参照すれば、いっそう理解されるであろう。
【0035】
図1は、本発明の基本構成を示す。
【0036】
一般的な形態として、本発明は、実質的に垂直な軸に沿って細長い形状をとる反応装置に関し、この反応装置は、複数の垂直に積み重ねられた触媒反応帯域を同一の殻壁(shell)内に含み、これらの帯域の各々で連続する反応流体の軸方向移動に適合され、前記反応流体の導入手段(100)および排出手段(101)と、新しい触媒または再生触媒を反応装置の頂部に供給する手段(102)と、消耗した触媒を反応装置の下部から排出する手段(105)とを含み、該反応装置は、特に、
粒状触媒により充填され、高さの一部より上で殻壁の断面とほぼ同じ断面(水平面)を有する上部反応帯域Za(3a)を含み、この帯域は、狭小帯域を介して反応帯域Zb(3b)に直接的に接続され、この反応帯域Zb(3b)は、同じく粒状触媒が充填され、高さの一部より上で殻壁の断面とほぼ同じ断面を有するとともに上部反応帯域Zaの真下に配置され、上記反応帯域ZaおよびZbは、反応流出物の通路と、帯域Zaから前記狭小帯域を介して帯域Zbに至る触媒通路とにより直接的に接続された二つの連続する反応帯域であり、帯域Zaは、その上部で、前記新しい触媒または再生触媒の供給手段(102)に直接または間接的に接続され、帯域Zbは、その下部で、前記消耗した触媒の排出手段(105)に直接または間接的に接続されており、該反応装置は、狭小帯域においてこの狭小帯域と反応装置の殻壁との間に配置された、帯域ZaおよびZb間を移動する反応流体を加熱または冷却する熱交換器(8)をさらに含む。
【0037】
帯域ZaおよびZbは、その高さの一部より上にある反応装置の殻壁の断面とほぼ同じ断面に粒状の触媒により充填されるので、触媒容積が大きい。しかし、触媒が通過することができ、その帯域において反応装置に内蔵される熱交換器を収容する狭小帯域が存在する。それは典型的には環状である。
【0038】
好適には、帯域Zaは、その下部において、実質的に円錐形の収束部を含み、この収束部は、反応流体の通過用の穴を含み、反応装置の直径よりも小さい直径のチャネル(2b)に接続される。このチャネルは、狭小帯域の少なくとも一部を画定し、触媒はこのチャネル内(固定床では各サイクルの終わりに、移動床では連続または半連続式に)を流動することができる。チャネル(2b)の直径は、狭小帯域の位置における反応装置の直径の典型的には1〜50%、好適には1〜30%、さらに好適には2〜20%である。
【0039】
この結果、狭小帯域と殻壁との間のスペースが大きくなり、このスペースは、有利には、熱交換器(8)を設置するために用いられる。従来技術に比べて、これは、2つの利点を有する。1つは、大容量の触媒に結び付けられる(反応帯域は、反応流体が主に反応装置の垂直軸にほぼ平行に流れる軸方向の反応装置のタイプの反応帯域との関係で、反応装置と同じ直径を有する)こと、他の点は、狭小部により内蔵型熱交換器を収容することができることである。典型的には、熱交換器(8)は、狭小部の触媒通路の周囲に配置される。
【0040】
本発明は、固定床の反応装置にも移動床の反応装置にも関与し得るが、移動床を選択することが好ましい。固定床の反応装置の場合、再生触媒および/または新しい触媒により反応帯域全体を完全に充填し、(固定床での)動作サイクルの終わりに、交換が必要になる程度まで触媒が消耗したら、反応装置の触媒は完全に空にされる。
【0041】
本発明によると、二つの帯域ZaおよびZbは連続反応帯域であり、これは、これらの帯域の一方の帯域(Za)からの排出物が他方の帯域(Zb)に供給されるのでありさらに別の帯域を通過することがないことを意味する。
【0042】
移動床として用いられ得る本発明の変形によれば、図1に示された反応装置は、収集手段に接続された、上部反応帯域Zaからの消耗した触媒の一部を抜き出して排出する手段(104)を含む。これにより、再生触媒および/または新しい触媒を導入する前に、消耗した触媒の一部を除去できる(例えば10〜70%、通常には15〜50%)。
【0043】
このようにして、一般には、帯域Zbに入る触媒の総量を著しく増やすことなく、さらには、帯域Zaおよび帯域Zbを移動する触媒の流量を一定に保ちながら、帯域Zbに供給される混合された触媒の平均的な活性が高められる。新しい触媒および/または再生触媒の流量全体が一定であるので、本発明は、ある程度まで様々な反応帯域間の触媒活性のバランスをとることができる。
【0044】
こうした再生触媒および/または新しい触媒の補給量は、反応装置の頂部で帯域Zaに供給される触媒または帯域Zbに供給される触媒の、例えば10〜70%、通常には15〜50%としてもよい。
【0045】
典型的には、二つの連続する反応帯域ZaおよびZbは、加熱または冷却用の熱交換器(8)を通過する移動反応流体の回路を介して接続され、この回路は、典型的には、二つの連続する反応性帯域ZaおよびZbの間に配置される中間帯域において、主として狭小帯域の周囲でのこの狭小帯域と反応装置の殻壁との間に配置される。
【0046】
場合によっては、図2に示される変形では、中間帯域は、1以上の付加的な反応流体(106)を導入し、この1以上の流体を、連続する反応帯域ZaとZbとの間を移動する反応流体と混合する手段(10)を含む。特には、新たな化学反応物を添加して、上流帯域で行われた反応に続く反応、例えば、芳香族分子または芳香族分子混合物のアルキル化反応を行うこと、および/または、水素を多く含む再循環ガス(50%超、通常は70%超モラー(molar)のH)を導入して存在する水素量を増やすことが有用な場合がある。こうしたガスはまた、流出物が下流反応帯域に入る前に流出物に対して熱作用、加熱作用またはより頻繁な冷却作用を有し得る。
【0047】
本発明の反応装置と、本出願に記載されたその全ての変形とは、特に、化学的な炭化水素の変換方法、特には、2〜12個の炭素原子を含むオレフィン系原料油のオリゴマー化方法の絡みで使用されてよく、該1以上の方法は、本発明のさらなる局面を構成する。
【0048】
このような方法、特にオリゴマー化方法の一般条件は次の通りである。圧力0.1〜10MPa、好適には0.3〜7MPa、温度40〜600℃、好適には60〜400℃、時間当たりの空間速度(hourly space velocity:HSV)0.01〜100h−1、好適には0.4〜30h−1であり、触媒は、各反応帯域内において、速度1〜200cm/時、好適には2〜100cm/時の(平均)速度で移動する。
【0049】
本発明は、操作条件すなわち温度、圧力、HSVを選択して、2〜50℃の1以上の値に各反応帯域内の温度変化を制限するような方法に特に適している。熱交換器(8)は、典型的には2〜50℃、好適には10〜50℃まで反応流体を冷却(または吸熱方法では加熱)してよい。
【0050】
(図面に関する詳細な説明)
次に、再び図1を参照する。図示された反応装置では、触媒が、下に流れながら反応帯域全体を通過し、原料油(反応流体)が同様に、しかし触媒と逆向きに反応帯域全体を通過する。図示された反応帯域は、軸方向反応装置タイプである。しかしながら、反応流体が触媒と同じ向きに流れる構成、すなわち上から下に流れる構成もまた、完全に本発明の範囲で可能である。さらに、反応帯域は、放射状の反応装置タイプであってもよい。しかしながら、軸方向の反応装置構成が好ましい。
【0051】
新しい触媒および/または再生触媒は、一般には主に、ライン(102)から反応装置の頂部に、次いでライン(2a)に供給される。この触媒は、上部反応帯域である帯域Za(3a)内に連続してまたは不連続にゆっくりと流れる。この帯域の底部で、触媒は収集帯域(4a)で収集されてから、チャンバ(5)に流れる。部分的に消耗したこの触媒の一部は、ライン(104)から抜き出され、典型的には再生される。チャンバ(5)は、触媒等の粒状物の採取を容易にする手段(図示せず)、例えば引抜ねじ(extracting screw)、空気輸送容器(pneumatic transport)、または流動床、あるいは当業者が既知の任意の他の手段を備えてもよい。水平線に対して少なくとも60°傾斜したライン(104)、場合によっては、触媒の排出を容易にするために触媒のエアレーション(aeration)ガス(例えば窒素)の注入を使用することも可能である。
【0052】
チャンバ(5)に存在する触媒の取り出されない部分は、混合チャンバ(7)に流れ、さらなる部分である、バルブ(6)を介してライン(103)から導入される新しい触媒および/または再生触媒と混合される。末端部を含めて水平線に対して少なくとも60°傾斜したライン(103)、場合によっては、新しい触媒および/または再生触媒の導入を容易にするために触媒のエアレーションガス(例えば窒素)の注入を使用することが可能である。
【0053】
混合チャンバ(7)は、新しい触媒/再生触媒と部分的に消耗した触媒とを混合しやすくする手段(図示せず)を備えてよい。特に、帯域(7)で触媒を攪拌するために回転ホルダまたは帯域(7)に配置されて外部モータにより作動される攪拌ファンブレードを使用してよい。流動床または任意の他の公知の粒状物混合システムが使用されてよい。
【0054】
このように形成される触媒混合物の触媒活性は、帯域Zaからの消耗した触媒の活性よりも大きくなる。この混合物は、狭小通路となっているチャネル(2b)を通ってから、(反応帯域の観点から)帯域Zaの真下にある帯域Zb(3b)に供給される。
【0055】
帯域Zb(3b)からの消耗した触媒は、抜き出しライン(4b)内を移動し、次いで、バルブ(9)のあるライン(105)を経て反応装置から排出される。その後、触媒は、移動床に関する当業者が公知の技術に従って、液体または気体の搬送流体(例えば窒素)による粒子搬送システムを介して再生帯域(図示せず)に送られる。特に、ライン(105)の位置またはバルブ(9)の下で、消耗した触媒を受けるためのドラムを使用することが可能であり、このドラムは、第一の触媒エアレーション流体と第二の搬送流体とを一般的に用いる空気輸送により触媒を順次排出する前に、所定量の触媒を保管することができるものである。
【0056】
粒状物を導入、抽出、混合、または輸送を可能にする様々な技術は、当業者がよく知っている包括的な技術であり、本発明の部分を形成しない。
【0057】
触媒の再生帯域(図示せず)は、エルトリエータまたは、種々の触媒の輸送操作中に形成される微粒子を分離するための任意の他の手段を装備してよい。再生触媒は(特に炭素系堆積物の制御された酸化の後)、一般に、新しい触媒を補給しながらライン(102)および(103)から再循環させられる。ループからの触媒(しばしば消耗した触媒)の一部は一般的には排出され、使用される触媒の総量を一定に保ちながら新しい触媒の補給を可能にする。
【0058】
反応流体、例えばC4−C6のオレフィン系炭化水素類の原料油(主に4〜6個の炭素原子を含む)は、ライン(100)から供給チャンバ(1)に供給され、触媒により充填された初期反応帯域Zb(3b)を通過し、次いで、触媒を含まない中間帯域(22)を通過し、その後、触媒により充填された最終反応帯域Za(3a)に戻ってから、チャンバ(23)に入り、ライン(101)から排出される。有利には、上部反応帯域Zaおよび下部反応帯域Zbは、反応流体の通過を可能にするための穿孔グリッド(図では破線で示す)を備えている。これらのグリッドは、触媒の流れを容易にするために下部で角度60°以上傾斜させられてよい。熱流体を循環させる熱交換器(8)は、反応装置内部の中間帯域(22)(中間帯域自体が反応装置内部に配置される)に配置されて、帯域ZbとZaの間を通る反応流体との熱交換を行う。有利には、この熱交換器は、触媒が通過する狭小部となっているチャネル(2b)に配置される。反応装置内部のこの位置にスペースが空くためである。
【0059】
熱交換器は、一般に、管の内部を移動する加熱または冷却用の熱流体を用い、管全体が、例えば、中間帯域(22)で反応流体の中に浸される1以上のロッドを形成する。しかしながら、熱交換器は、当業者に知られる任意のタイプであってよく、例えばプレート式またはフィンチューブ式熱交換器、あるいは露出管、直線管、反応装置の垂直軸(典型的には狭小帯域の垂直軸)周りに巻かれた巻き線管を備える熱交換器としてよい。本発明は、こうした熱交換器の特定のタイプに制限されるものではない。
【0060】
加熱用または冷却用の熱流体として、水蒸気、空気、水、水素、または水素を多く含む再循環ガス、窒素、溶融塩、芳香族オイル、原料油自体など、様々な加圧流体が用いられてよい。
【0061】
図2は、図1の反応装置と同じ要素を含む本発明による別の反応装置を示す。この反応装置は、反応体および/または水素を補給するために、付加的な反応流体を供給するライン(106)をさらに含む。この流体は、帯域Zbからの反応流体と均質に混合しやすくするための分配ラック(10)を介して中間帯域(22)に分配される。混合は、中間帯域(22)に触媒がないことによっても促進される。
【0062】
従来技術の反応装置を超える本発明の反応装置の利点は、次の通りである。
【0063】
−性能(変換、選択度、収量)が明らかに改善される。
【0064】
−用いられた手段、特に利用される熱交換手段の簡易性および小型性により設備の信頼性がずっと高まる。
【0065】
−小型性のために、反応装置のコストおよびその設置コストが低減される。
【0066】
図1の反応装置の典型的な動作は次の通りである。再生触媒、あるいは場合によっては新しい触媒の流量は、各反応帯域で所定の活性レベルを保持するように決定される。例えば、反応帯域の出口における反応流体の1つの特性に応じて、こうした触媒の補給量を決定できる。この特徴は、温度、組成、変換、あるいはオンラインで測定され得る任意の他の物理化学特性であってよい。オンラインで測定可能な1以上のこれらのパラメータと触媒活性との相関関係は、実施される反応、触媒のタイプ、および触媒の移動速度に依存する。簡単な手段は、特に、帯域Zbにおける変換、またはこの帯域での反応流体の温度変化(ΔT)、あるいはこの帯域からの出口での温度を、再生触媒および/または新しい触媒の補給量への作用によりモニタリングすることである。すなわち、温度変化ΔTの測定値が所定値(典型的には、原料油の初期の組成によって決まる)より低い場合、あるいはこの帯域からの出口での温度値が不十分な反応に相当する場合、再生触媒および/または新しい触媒補給のこの帯域への流量を増やし、また逆に、この帯域における変換(ΔTまたは出口温度から導かれる)が大きすぎる場合、補給量を減らす。同時に、追加された補給量と同量の消耗された触媒は、帯域Zb中の触媒の全体流量を一定に維持するように、混合前に排出されてよい。
【0067】
従って、補給触媒の流量は完全に自動化されてよい。あるいは、温度および/またはΔTに応じて、オペレータによって一定の時間(例えば一日に1〜2回)、補給量を調整されてもよい。
【0068】
熱交換器(8)における反応流体の加熱または冷却(ΔT)は、熱交換器(8)内を移動する熱流体の流量または温度により特に制御されてよい。
【0069】
図2の反応装置も同様に動作する。この反応装置では、ライン(106)から供給される試薬および/または水素の補給が用いられる。こうした補給は、典型的には、制御された流量温度による。
【0070】
本発明の反応装置内を移動する触媒は、様々なタイプであってよい。オリゴマー化反応装置の場合、オリゴマー化を可能にする任意のタイプの酸触媒が用いられてよく、例えば、非晶質シリカ−アルミナタイプの触媒または固体リン酸タイプの触媒またはイオン交換タイプの樹脂または形態選択性を有する触媒例えば、ゼオライト系触媒(MFI、FER、EUO、TON、LTL、MOR、MTT、MEL、MWW、MTW構造型を有するゼオライト系触媒またはNU−86、NU−87、NU−88、IM−5ゼオライト等)である。
【0071】
これらのゼオライト系酸性触媒は、その状態で、または改変後に用いられてよく、前記改変は、好適には触媒の酸性度に影響を及ぼすものである。用語「酸性度(acidity)」は、酸性部位の力および酸性部位の濃度の両方を示す。
【0072】
こうした改変は、例えば蒸発処理または酸性処理による脱アルミナ処理の場合、ゼオライトの骨格に影響を及ぼし得、例えば、改変が水蒸気処理または酸処理により脱アルミニウム化に関するか、および/または、例えば(i)アルカリタイプのカチオンとのプロトン交換によって、(ii)不活性相をゼオライトの表面上に担持させることによって、改変がゼオライトの表面に影響を及ぼす場合である。
【0073】
好適な操作条件は、固体酸触媒によるオレフィン類のオリゴマー化に対して標準で使用されている以下の条件である。
【0074】
−温度:100〜300℃
−圧力:0.1〜7MPa
−HSV(反応帯域に含まれる触媒体積に対する原料油流量体積の比として表される時間当たりの空間速度):0.01〜100h−1
【0075】
本発明の反応装置は、オレフィンのオリゴマー化反応に特に適しているが、より一般的には、各反応帯域で温度特性の微調整が必要な気相および/または液相で展開される任意のタイプの発熱反応または吸熱反応である、オレフィンを、原料油に存在する別の化合物、例えば、硫黄含有化合物、窒素含有化合物、芳香族分子に付加する反応に使用されてよく、前記付加反応は、前記化合物の分子量を増加させることを目的とし、特には、チオフェン化合物のオレフィンによるアルキル化およびオレフィンメタセシスである。本発明の反応装置は、4または5個の炭素原子を含むオレフィン類等の軽質オレフィン類の骨格異性化のために用いられてもよい。
【0076】
発熱反応の場合、冷却熱流体(冷却剤)は、適正条件下、特に、反応流体と冷却媒体との間の平均温度差を少なくとも5℃、好ましくは少なくとも10℃に維持することによって熱交換を実施し得る任意の流体であってよい。
【0077】
本発明は、特定の冷却流体または加熱流体には関連しない。
【実施例】
【0078】
この実施例は、図1に示したような、本発明による反応装置における床を用いた不飽和C3フラクションのオリゴマー化反応に関する。
【0079】
反応装置は、連続する二つの反応帯域Zb(初期帯域(3b))およびZa(最終帯域(3a))を含み、これらの帯域は、熱交換器(8)を構成する水冷システムを含む中間帯域により分離されている。
【0080】
原料油および触媒は、向流モード移動した。
【0081】
ここでは、Si/Alモル比57の脱アルミニウム化されたモルデナイト型ゼオライトタイプの触媒が、プロペンのオリゴマー化反応について、アルミナバインダによりビーズ状に成形した後に試験された。使用された触媒は、3mm直径の球状ビーズ状に成形された。
【0082】
この試験に用いられた原料油は、スチームクラッキングにより得られた原料油であり、プロペン94重量%、プロパン6重量%を含んでいた。
【0083】
生成されるオリゴマー化物中のディーゼルフラクションの形成を最適化するように諸条件が選択された。
【0084】
操作条件は次の通りである。
【0085】
反応装置の入口における原料油の温度 210℃
圧力 5.5MPa
HSV 0.7h−1
触媒容積当たりの原料油の容積流量(HSV)は、2つの反応帯域における触媒の総質量に応じて計算された。二つの反応帯域における変換を安定保持するように、新しい触媒および再生触媒が補給された。
【0086】
上部反応帯域からの消耗触媒の20%が抜き出され、同量の再生触媒により置換され、下部反応帯域における触媒の活性を増した。
【0087】
第二の反応帯域への入口における反応温度が210℃になるように、冷却液の温度が調整された。使用された冷却流体は水であり25℃で導入された。
【0088】
得られた結果を表1に示す。
【表1】

【0089】
特にC3−C6のオレフィン系原料油のオリゴマー化反応に対して本発明の反応装置を使用すると、次のような複数の主要な利点が得られる。
【0090】
−反応装置は、小型であるが触媒容積が大きく、熱交換器が内蔵される。反応装置のコストならびにその設置コストが比較的低い。
【0091】
−変形では、新しい触媒または再生触媒を帯域Zbで補給することにより、少なくとも部分的に反応帯域間で触媒活性のバランスをとることができるので、ディーゼルフラクションの収率に好都合である。
【0092】
−変形では、触媒の一部の連続再生システムにより、触媒を交換するために装置を停止させる必要なく動作を行える。
【0093】
−熱交換帯域が二つの反応帯域の間に配置されるので、二つの反応帯域における温度の均質性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明による反応装置の基本構成図である。
【図2】二つの反応帯域の間に付加的な反応流体を注入する手段を含む、本発明による反応装置の変形実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1 供給チャンバ
2a ライン
2b チャネル
3a 上部反応帯域Za
3b 下部反応帯域Zb
4a 収集帯域
4b 抜き出しライン
5 チャンバ
6 バルブ
7 混合チャンバ
8 熱交換器
9 バルブ
22 中間帯域
23 チャンバ
100 注入手段
101 排出手段
102 ライン(新しい触媒または再生触媒の供給手段)
103 ライン
104 ライン(流出物排出手段)
105 ライン(触媒排出手段)
106 ライン(反応流体導入手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に垂直な軸に沿って細長い形状である反応装置であって、複数の垂直に積み重ねられた触媒反応帯域を同一殻壁内に含み、これらの帯域の各々において連続する反応流体の軸方向の移動に適合され、前記反応流体の導入手段(100)および排出手段(101)と、新しい触媒または再生触媒を反応装置の頂部に供給する手段(102)と、消耗した触媒を反応装置の下部から排出する手段(105)とを含む反応装置であって、
粒状触媒により充填され、高さの一部より上で殻壁の断面と実質的に同一の断面を有する上部反応帯域Za(3a)を含み、この帯域Za(3a)は狭小帯域を介して反応帯域Zb(3b)に直接的に接続され、この帯域Zb(3b)は同じく粒状触媒により充填され、高さの一部より上で殻壁の断面と実質的に同一の断面を有し、上部反応帯域Zaの真下に配置され、これらの反応帯域ZaおよびZbは、反応流出物の通路および前記狭小帯域を介した帯域Zaから帯域Zbへの触媒通路により直接的に接続された二つの連続する反応帯域であり、帯域Zaは、その上部で、前記新しい触媒または再生触媒の供給手段(102)に直接または間接的に接続され、帯域Zbは、その下部で、前記消耗した触媒の排出手段(105)に直接または間接的に接続されており、反応装置は、狭小帯域においてこの狭小帯域と反応装置の殻壁との間に配置された、帯域ZaおよびZb間を移動する反応流体を加熱または冷却する熱交換器(8)をさらに含む反応装置。
【請求項2】
帯域Zaは、その下部に、実質的に円錐形の収束部を含み、該収束部は、反応流体の通過用の穴を含み、かつ、反応装置の直径よりも小さい直径のチャネル(2b)に接続され、該チャネルは、狭小帯域の少なくとも一部を画定する、請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記チャネル(2b)の直径は、狭小帯域の位置における反応装置の直径の1〜50%である、請求項2に記載の反応装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の反応装置における炭化水素系原料油の化学変換方法。
【請求項5】
2〜12個の炭素原子を有するオレフィン系原料油をオリゴマー化する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
圧力が0.1〜10MPa、温度が40〜600℃、時間当たりの空間速度HSVが0.01〜100h−1であり、触媒が各反応帯域内において1〜200cm/時の速度で移動する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各反応帯域内の温度変化を2〜50℃の1以上の値に制限するように操作条件すなわち温度、圧力、HSVが選択される、請求項4〜6のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−136882(P2006−136882A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324548(P2005−324548)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(591007826)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (261)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT FRANCAIS DU PETROL
【Fターム(参考)】