説明

複数の外歯が設けられたリングプレートを当該外歯が位置合わせされた状態に積み重ねるための作業装置

【課題】複数の外歯が設けられたリングプレートを、外歯が位置合わせされた状態に積み重ねるとき、かかる外歯の位置ずれを調整するための作業が煩雑になること。
【解決手段】プレート20を回転可能に貫通する柱状部12と、プレート20を順次積み重ねた状態に載置可能なテーブル1と、進退可能なベース2とを設け、このベース2は、プレート20に向かって突出する2つのアーム部材3と、このアーム部材3が開くように当該アーム部材3をベース2に連結する連結手段4と、アーム部材3が開くときにアーム部材3を初期位置に復帰させるための付勢力を発生するアーム復帰手段5とを備え、2つのアーム部材3の先端がベース2の接近によってプレート20と接触可能であって、当該アーム部材3の相互間の間隔は、一方のアーム部材が外歯21に対して向き合うと同時に、他方のアーム部材が当該プレート20の歯底22に対して向き合う位置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動変速機ケース内に湿式クラッチ又は湿式ブレーキを組み付ける際に、複数の外歯が設けられたリングプレートを、当該外歯が位置合わせされた状態に積み重ねるための作業装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述した従来の作業装置としては、1つのリングプレートの外歯に対して、プッシャと呼ばれる爪状の部材を繰り返し当てることで、外歯の位置合わせを行ったのち、他のリングプレートに積み重ねるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−266893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、こうした従来の作業装置は、リングプレートを積み重ねる度に、外歯の位置合わせを行う必要があるため、作業が煩雑になり、結果として、装置が複雑化してしまうと共に、作業時間についても改善の余地がある。
【0004】
本発明の解決すべき課題は、従来の作業装置では、複数の外歯が設けられたリングプレートを、当該外歯が位置合わせされた状態に積み重ねるとき、かかる外歯の位置ずれを調整するための作業が煩雑になることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複数の外歯が設けられたリングプレートを、当該外歯が位置合わせされた状態に積み重ねるための作業装置であって、
前記リングプレートを回転可能に貫通する柱状部を有し、当該リングプレートを順次積み重ねた状態に載置可能なテーブルと、このテーブルに積み重ねられたリングプレートに対して、進退可能なベースとを設け、
このベースは、リングプレートに向かって突出すると共にその積み重ね方向に延在する2つのアーム部材と、このアーム部材が互いに隔離して開くように当該アーム部材をベースに連結する連結手段と、アーム部材が隔離して開くときに当該アーム部材を初期位置に復帰させるための付勢力を発生するアーム復帰手段とを備え、
2つのアーム部材の先端はベースの接近によってリングプレートと接触可能であって、当該アーム部材の相互間の間隔は、一方のアーム部材が外歯に対して当接した時に、他方のアーム部材が当該リングプレートの歯底に対して向き合う位置としたことを特徴とするものである。
【0006】
本発明の連結手段としては、ピンやヒンジ部材が挙げられる。また、アーム復帰手段としては、捩りばね(例えば、捩りコイルばね)が挙げられる。更に、ベースを駆動させる手段としては、エアシリンダが挙げられる。
【0007】
また、本発明に従えば、ベースをリングプレートに接近させるとき、2つのアーム部材の先端がリングプレートを柱状部と共に押圧しないように、当該ベースの移動を停止させることが好ましい。
【0008】
更に、本発明に従えば、柱状部とリングプレートの開口部との間には、クリアランスを形成し、柱状部とリングプレートとの間に遊びを持たせることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、柱状部にリングプレートを順次通すだけの簡単な作業で、予めリングプレートを積み重ねておくことができる。
【0010】
また、本発明によれば、2つのアーム部材の先端はベースの接近によってリングプレートと接触可能であって、アーム部材の相互間の間隔が、一方のアーム部材が外歯に対して当接する時に、他方のアーム部材が当該リングプレートの歯底に対して向き合う位置とする。
【0011】
これにより、ベースを接近させて、一方のアーム部材がリングプレートの外歯の側面と接触すると、リングプレートを外向きに逃がすように回転させる。これに次いで、リングプレートの歯底に位置する他方のアーム部材が当該歯底に接触すると、当該歯底に沿ってリングプレートの回転方向と反対に移動したのち、リングプレートの回転に伴い接近してきた当該アーム部材に直近の外歯と接触する。
【0012】
これに対し、ベースを接近させて、一方のアーム部材がリングプレートの外歯の先端と接触するときは、当該アーム部材が外歯の先端に留まってリングプレートを外向きに逃がすように回転させる以外に、外歯の先端を乗り越えてしまう可能性もあるが、外歯の先端を乗り越えてしまった場合であっても、リングプレートの歯底に位置する他方のアーム部材が当該歯底に接触したのち、当該歯底に沿って移動することで当該アーム部材に直近の外歯と接触する。
【0013】
この場合、他方のアーム部材がリングプレートの外歯の側面と接触することで、リングプレートを外向きに逃がすように回転させるのに次いで、外歯を乗り越えた一方のアーム部材がリングプレートの回転に伴い接近してきた当該アーム部材に直近の前記外歯と異なる外歯と接触する。
【0014】
即ち、2つのアーム部材の間隔が、一方のアーム部材が外歯に接触するのに追従して他方のアーム部材が当該リングプレートの歯底に位置する寸法に設定されていることで、一方のアーム部材が外歯の側面に当たってリングプレートを回転させたのち、他方のアーム部材が他の外歯の側面に当たることで、積み重ねられたリングプレートの外歯が位置合わせされてない状態であっても、2つのアーム部材を接触させるだけで位置合わせることができる。そして、この現象が積み重ねられたリングプレートのそれぞれについて生じることから、結果として、テーブル上に単に積み重ねられたリングプレートの外歯は互いに位置合わせされた状態になる。
【0015】
従って、本発明によれば、複数の外歯が設けられたリングプレートを、当該外歯が位置合わせされた状態に積み重ねるとき、かかる外歯の位置ずれを2つのアーム部材を接触させるだけの簡単な作業で調整することができる。
【0016】
また、本発明によれば、複数の外歯が設けられたリングプレートを、当該外歯が位置合わせされた状態に積み重ねるための作業が単純化することで、装置の簡素化と共に作業時間の短縮を図ることができる。
【0017】
しかも、2つのアーム部材はそれぞれ、ベースに対して外向きに開くようにベースに連結されているので、アーム部材をリングプレートの歯底に押し当てても、当該アーム部材は、リングプレートの歯底を構成する曲面形状に沿って外歯に逃げることができる。このため、リングプレートの外歯や歯底にアーム部材を押し当てた痕跡(打痕)が残り難い。このため、外観形状に起因した不良品の発生率を低く抑えることができ、生産性にも優れる。
【0018】
加えて、アーム部材には、初期位置に復帰させるための付勢力が加えられていることから、各リングプレート間の外歯の位置ずれを調整した後、積み重ねられたリングプレートからベースを遠離させると、アーム部材は初期位置に復帰する。即ち、アーム部材を復帰させるための操作が必要ないため、複数の外歯が設けられたリングプレートを、当該外歯が位置合わせされた状態に積み重ねるための作業が連続的に行われる場合に有効である。
【0019】
また、本発明に従えば、2つのアーム部材の間隔は、リングプレートの歯たけや歯底等の外歯を規定する寸法に応じて様々に設定できる。
【0020】
また、本発明において、ベースをリングプレートに接近させるとき、2つのアーム部材の先端がリングプレートを前記柱状部と共に押圧しないように、当該ベースの移動を停止させれば、アーム部材を押し当てた痕跡(打痕)が更に残り難い。即ち、外観形状に起因した不良品の発生率が更に低く抑えられることから、生産性を更に向上させることができる。
【0021】
更に、本発明において、柱状部とリングプレートの開口部との間にクリアランスを形成することで、柱状部とリングプレートとの間に遊びを持たせれば、アーム部材がリングプレートの外歯に引っ掛かる等して干渉した場合も、リングプレートを逃がすことで、かかる干渉を解除できるので、各リングプレート間の外歯の位相ずれを確実に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明である作業装置を詳細に説明する。
【0023】
図1は、自動変速機ケース内にドラムブレーキを組み付ける際に、外歯21が設けられたドリブンプレート(リングプレート)20を、ドライブプレート30と交互に積み重ねるための本発明の一形態である作業装置を模式的に示す斜視図である。また、図2は、積み重ねられたドリブンプレート20の外歯21が位置合わせされる前の状態と共に、同形態の作業装置を模式的に示す要部斜視図である。
【0024】
図1において、符号1は、ドリブンプレート20とドライブプレート30とを交互に載置可能なテーブルである。テーブル1は、既存の手段(例えば、モータ及び直動機構)を用いることで、矢印d1の方向に沿って適宜位置決めされながら進退させることができる。
【0025】
テーブル1の上面には、テーブル1の進退方向d1の両側を切り欠くことで、その相互間に一段高い平坦面11aと、この平坦面11aを挟む切り欠き面11bとが形成されている。これにより、本形態の平坦面11aは、実質的に、ドリブンプレート20及びドライブプレート30を積み重ねた状態に載せ置くことができる載置面として機能する。
【0026】
また、平坦面11aからは、円筒形の柱状部12が一体に起立する。柱状部12の外径は、ドリブンプレート20の開口部Aを形作る内径寸法やドライブプレート30の開口部Bにおける最内径寸法よりも小さく設定されている。このため、ドリブンプレート20の開口部Aやドライブプレート30の開口部Bに柱状部12を貫通させれば、テーブル1上に、ドリブンプレート20及びドライブプレート30を積み重ねることができる。
【0027】
また、符号100aは、テーブル1上にドリブンプレート20を供給する手段(以下、「第一プレート供給手段」という)である。第一プレート供給手段100aは、予め複数のドリブンプレート20を積み重ねて格納しておくストッカ101aと、このストッカ101aの下端開口をスライドして開閉可能なスライド体102aとを有する。スライド体102aの上面には、ドリブンプレート20を載せ置く凹部が形成されている。また、ストッカ101aの前方には、昇降可能なシャフト状のストッパ103sを備えるストッパ装置103aが設けられている。
【0028】
また、符号100bは、テーブル1上にドライブプレート30を供給する手段(以下、「第二プレート供給手段」という)である。第二プレート供給手段100bも、予め複数のドライブプレート30を積み重ねて格納しておくストッカ101bと、このストッカ101bの下端に形成した開口を開閉するスライド体102bとを有する。スライド体102bの上面にも、ドライブプレート30を載せ置く凹部が形成されている。
【0029】
また、ストッカ101bの前方にも、昇降可能なシャフト状のストッパ103sを備えるストッパ装置103bが設けられている。これにより、テーブル1を第一プレート供給手段100bの手前まで移動して一時停止させた後、ストッカ101bからスライド体102bをテーブル1上に押し出すと、ストッカ101bに示すように、ドリブンプレート20を柱状部12の真下まで送り出される。なお、かかる構成は、第一プレート供給手段100aも同様である。
【0030】
ストッパ装置103aからストッパ103sを降下させた後、スライド体102aを引き戻すことで、スライド体102aからドリブンプレート20を落下させる。これにより、ドリブンプレート20を柱状部12に通してテーブル1上に載せ置くことができる。ドライブプレート30も、テーブル1を第二プレート供給手段100bの手前まで移動して一時停止させることで、テーブル1上に載せ置くことができる。
【0031】
即ち、第一プレート供給手段100a及び第二プレート供給手段100bを所望する数だけ交互に配置して、テーブル1と共に順次稼働させれば、テーブル1上に自動的に所望数のドリブンプレート20とドライブプレート30とを交互に積み重ねることができる。
【0032】
符号2は、テーブル1に積み重ねられた複数のドリブンプレート20及びドライブプレート30に対して接近及び遠離可能なベースである。
【0033】
本形態では、ベース2を進退させる手段として、図示のようなエアシリンダ120を用いている。符号121は、エアシリンダ120のピストンロッドであり、このピストンロッド121がベース2に繋がる。これにより、ベース2は、空気圧をもって、積み重ねられた複数のドリブンプレート20及びドライブプレート30に対して接近及び遠離することができる。
【0034】
本形態の如く、ベース2を進退させる手段として、エアシリンダ等の空気圧式のものを利用すれば、エネルギー資源が消費されるのを抑制するのに有効であるが、ベース2を進退させる手段は、これに限定されるものではなく、油圧式のものやモータ駆動式のもの等、様々な変更が可能である。
【0035】
ここで、図3(a),(b)はそれぞれ、ベース2を拡大して示す平面図及びその斜視図である。
【0036】
図3において、符号3は、積み重ねられたドリブンプレート20及びドライブプレート30に向かって突出するアーム部材である。アーム部材3は、ベース2の側面に固定されるアーム固定部31と、このアーム固定部31を介してベース2に対して外向きに開くように当該アーム固定部31に連結されたアーム本体32とからなる。
【0037】
アーム本体32は、図2や図3(b)に示すように、ドリブンプレート20及びドライブプレート30の積み重ね方向(以下、「プレート中心軸」という)Oに延在する板状をなしている。
【0038】
また、アーム本体32をベース2に対して外向きに開くように構成するにあたって、本形態では、アーム固定部31の前方に凸部31pを形成すると共に、アーム本体32の後方に、当該凸部31pが合わさる凹部32nを形成し、連結手段4としてのヒンジピンを用いて、アーム固定部31に対してアーム本体32を揺動可能に連結する構成を採用している。但し、かかる連結手段4としては、ヒンジピンに替えて、ヒンジ部材を採用してもよい。
【0039】
符号5は、外向きに開いたアーム部材3を初期位置に復帰させるためのアーム復帰手段である。本形態では、アーム復帰手段5として捩りコイルばねを用いている。
【0040】
アーム復帰手段5の一端51は、アーム固定部31の外面に延在し、このアーム固定部31に固定されている。また、アーム復帰手段5の他端52は、アーム本体32の外面に延在し、このアーム本体32に固定されている。これにより、アーム復帰手段5は、アーム部材3が外向きに開くときに当該アーム部材3を初期位置に復帰させるための付勢力を発生する。なお、アーム復帰手段5には、トーションバーを採用することもできる。
【0041】
本発明の特徴は、2つのアーム部材3の先端eがベース2の接近によってドリブンプレート20と接触可能であって、当該アーム部材3の相互間の間隔Lは、一方のアーム部材3Lが外歯21に対して当接した時に、他方のアーム部材3Rが当該ドリブンプレート20の歯底22に対して向き合う位置としたところにある。
【0042】
このため、本発明に従う装置を動作させることによって、ドリブンプレート20を位置合わせするにあたっては、図4及び図5に示す2つのパターンが存在する。
【0043】
ここで、図4(a),(b)は、2つのアーム部材3のうち、一方のアーム部材3Lの先端eが外歯21Lの側面21Lsと接触することで、外歯21の位置合わせが行われる第一のパターンを模式的に示す平面図である。なお、図面上は、積み重ねられたドリブンプレート20のうちの1つだけを例示的に示している。また、以下の説明において、外歯21及び歯底22の相対関係を明らかにすべく、図面左側のアーム部材3、外歯21、外歯21の側面21S及び歯底22の一部を例示的に符号3L、21L及び21SLで示すと共に、図面右側のアーム部材3、外歯21、外歯21の側面21S及び歯底22の一部を例示的に符号3R、21R及び21SRで示す。
【0044】
第一のパターンでは、2つのアーム部材3は、図4(a)に示すように、先端eの相互間の間隔Lが、一方のアーム部材3Lが外歯21Lに接触すると同時に、他方のアーム部材3Rが当該ドリブンプレート20の歯底22Lに位置する寸法に設定されている。
【0045】
更に、柱状部12とドリブンプレート20の開口部Aとの間には、図4に示すように、クリアランスCが形成されている。即ち、ドリブンプレート20は、柱状部12との間に遊びを持たせた状態でテーブル1上に積み重ねられている。
【0046】
図4(a)のように、2つのアーム部材3L及び3Rの間隔Lを、一方のアーム部材3Lが外歯21Lに接触するのに追従して他方のアーム部材3Rが当該ドリブンプレート20の歯底面22Lに位置する寸法に設定しているので、例えば、ベース2を接近させて、一方のアーム部材3Lがドリブンプレート20の外歯21Lの側面21SLと接触すると、このアーム部材3Lは、連結手段4を基点に外向きに開きながら、矢印r1に示すように、ドリブンプレート20をプレート中心軸Oの周りに(同図では、時計回りに)回転させる。
【0047】
これに伴い、ドリブンプレート20の歯底22Rに連なる外歯21Rも、矢印r1に示すように、回転するため、外歯21Rは、アーム部材3Rの先端eを潜り抜けるが、当該アーム部材3Rの先端eは、図4(b)に示すように、ドリブンプレート20の回転に伴い新たに接近してきた歯底22R’に接触して、ドリブンプレート20を矢印r2に示すように(同図では、反時計回りに)回転させるように、連結手段4を基点に外向きに開きながら外歯21R’の側面21SR’と接触する。
【0048】
これにより、ドリブンプレート20が柱状部12に対してその外歯21Rを位置合わせしない状態で通してあっても、当該外歯21Rは、2つのアーム部材3L及び3Rによって、常に一定の位相に位置合わせされることになる。
【0049】
これに対し、図5(a),(b)は、2つのアーム部材3のうち、一方のアーム部材3Lの先端eが外歯21Lの先端21ELと接触することで、外歯21の位置合わせが行われる第二のパターンを模式的に示す平面図である。なお、本図面上も、積み重ねられたドリブンプレート20のうちの1つだけを例示的に示している。
【0050】
この場合、ベース2を接近させて、一方のアーム部材3Lがドリブンプレート20の外歯21Lの先端21ELと接触するときは、当該アーム部材3Lが連結手段4を基点に外向きに開きつつドリブンプレート20を矢印r1に示す方向(同図では、時計回り)に逃げながら、外歯21Lの先端21ELを乗り越え、アーム部材3Lが逃げる間のベース2の接近によって、ドリブンプレート20の歯底22Rに位置する他方のアーム部材3Rが当該歯底22Rに接触しつつ、ドリブンプレート20が矢印r2に示すように(同図では、反時計回りに)回転するように、当該歯底22Rに沿って連結手段4を基点に開きながら移動する。このため、アーム部材3Rの先端eは、当該アーム部材3Rに直近の外歯21Rの側面21SRと接触することになり、ドリブンプレート20を矢印r2方向に回転させる。
【0051】
これに伴い、外歯21Lを乗り越えた一方のアーム部材3Lの先端eは、図5(b)に示すように、ドリブンプレート20の回転に伴い新たに接近してきた外歯21L'の側面21SL'と接触する。
【0052】
これにより、ドリブンプレート20が柱状部12に対してその外歯21Rを位置合わせしない状態で通してあっても、当該外歯21Rは、2つのアーム部材3L及び3Rによって、常に一定の位相に位置合わせされることになる。
【0053】
即ち、2つのアーム部材3L及び3Rの間隔Lが、一方のアーム部材3Lが外歯21Lに接触するのに追従して他方のアーム部材3Rが当該ドリブンプレート20の歯底22Lに位置する寸法に設定されていることで、一方のアーム部材3が外歯21の側面21Sに当たってドリブンプレート20を回転させたのち、他方のアーム部材3が他の外歯21の側面21Sに当たることで、積み重ねられたドリブンプレート20の外歯21が位置合わせされてない状態であっても、2つのアーム部材3L及び3Rを接触させるだけで位置合わせることができる。そして、この現象が積み重ねられたドリブンプレート20のそれぞれについて生じることから、結果として、テーブル1上に単に積み重ねられたドリブンプレート20の外歯21は互いに位置合わせされた状態になる。
【0054】
なお、第一のパターン及び第二のパターンでは共に、例えば、エアシリンダ120のストロークを調整することにより、ベース2がドリブンプレート20に接近するとき、2つのアーム部材3L又は3Rの先端eがドリブンプレート20を柱状部12と共に押圧しないように、当該ベース2の移動を停止させることが好ましい。この場合、アーム部材3L又は3Rを押し当てた痕跡(打痕)が残り難い。即ち、外観形状に起因した不良品の発生率が更に低く抑えられることから、生産性を更に向上させることができる。
【0055】
また、第一のパターン及び第二のパターンでは共に、2つのアーム部材3L及び3Rがドリブンプレート20に接触して外歯21を位置合わせしたときは、その開き角θが約θ1=120度になっている。
【0056】
図6(a),(b)はそれぞれ、外歯21が位置合わせされた状態に積み重ねたドリブンプレート20及びドライブプレート30を更に移送するための移送装置130を模式的に示す斜視図及び、その要部を拡大して模式的に示す斜視図である。
【0057】
移送装置130は、縦軸方向d4に沿って昇降可能であって横軸方向d6に沿って水平移動可能な本体131を有し、本体131には、外歯21が位置合わせされた状態に積み重ねたドリブンプレート20及びドライブプレート30(以下、「積層円筒体BL」という)を挟み込むための2つの挟持部材132が設けられている。
【0058】
2つの挟持部材132は、互いに協働して、矢印d5に示す方向に積層円筒体BLを締めることができる。このため、挟持部材132にはそれぞれ、図5(b)に示すように、積層円筒体BLの突条Lp(外歯21が位置合わせされることで形成された突条)に引っ掛かって積層円筒体BLの回転を抑える爪部材133と、積層円筒体BLの下端とテーブル1の切り欠き面11bとの間に形成された隙間に入り込んで、積層円筒体BLを、その下側から支持する支持部材134とが設けられている。
【0059】
移送装置130は、テーブル1で積層円筒体BLが形作られた後、2つの挟持部材132を積層円筒体BLの最外径よりも開いた状態で、この積層円筒体BLに向かって降下し、支持部材134が積層円筒体BLの下端とテーブル1の切り欠き面11bとの間の隙間に入り込める位置で停止する。
【0060】
移送装置130の下降を停止させた後は、2つの挟持部材132を方向d5に向かって移動させることで、突条Lpを構成するドリブンプレート20の外歯21の位相をずらすことなく、積層円筒体BLの下端を支持する。
【0061】
積層円筒体BLを保持した後は、移送装置130を再度、矢印d4に沿って上昇させる。移送装置130がベルトコンベア110よりも高い位置に達すると、その上昇を停止させる。移送装置130の上昇を停止させた後は、積層円筒体BLがベルトコンベア110上に位置するまで移送装置130を矢印d6に沿って平行に移動させる。積層円筒体BLがベルトコンベア110上に位置すると、移送装置130の水平移動を停止させた後、挟持部材132を方向d5と逆向きに開くことで、積層円筒体BLをベルトコンベア110に降ろす。その後、ベルトコンベア110を稼働させれば、複数の突条Lpが形作られた積層円筒体BLのまま、この積層円筒体BLを所定の作業位置まで送り出すことができる。
【0062】
本発明によれば、柱状部12にドリブンプレート20を順次通すだけの簡単な作業で、予めドリブンプレート20をドライブプレート30と交互に積み重ねておくことができる。
【0063】
また、本発明によれば、2つのアーム部材3L及び3Rの先端eはベース2の接近によってドリブンプレート20と接触可能であって、その相互間の間隔Lが、一方のアーム部材3Lが外歯21に対して当接する時に、他方のアーム部材3Lが当該ドリブンプレート20の歯底22に対して向き合う位置とすることで、一方のアーム部材3が外歯21の側面21Sに当たってドリブンプレート20を回転させたのち、他方のアーム部材3が他の外歯21の側面21Sに当たることで、積み重ねられたドリブンプレート20の外歯21が位置合わせされてない状態であっても、2つのアーム部材3L及び3Rを接触させるだけで位置合わせることができる。そして、この現象が積み重ねられたドリブンプレート20のそれぞれについて生じることから、結果として、テーブル1上に単に積み重ねられたドリブンプレート20の外歯21は互いに位置合わせされた状態になる。
【0064】
従って、本発明によれば、複数の外歯21が設けられたドリブンプレート20を、当該外歯21が位置合わせされた状態に積み重ねるとき、かかる外歯21の位置ずれを2つのアーム部材3L及び3Rを接触させるだけの簡単な作業で調整することができる。
【0065】
また、本発明によれば、ドリブンプレート20を、当該外歯21が位置合わせされた状態に積み重ねるための作業が単純化することで、装置の簡素化と共に作業時間の短縮を図ることができる。
【0066】
しかも、2つのアーム部材3L及び3Rはそれぞれ、ベース2に対して外向きに開くようにベース2に連結されているので、アーム部材3L及び3Rをドリブンプレート20の歯底22に押し当てても、当該アーム部材3L又は3Rは、ドリブンプレート20の歯底22を構成する曲面形状に沿って外歯21に逃げることができる。このため、ドリブンプレート20の外歯21や歯底22にアーム部材3L又は3Rを押し当てた痕跡(打痕)が残り難い。このため、外観形状に起因した不良品の発生率を低く抑えることができ、生産性にも優れる。
【0067】
加えて、アーム部材3L又は3Rには、初期位置に復帰させるための付勢力が加えられていることから、各ドリブンプレート20間の外歯21の位置ずれを調整した後、積み重ねられたドリブンプレート20からベース2を遠離させると、アーム部材3L又は3Rは初期位置に復帰する。即ち、アーム部材3L及び3Rを復帰させるための操作が必要ないため、複数の外歯21が設けられたドリブンプレート20を、当該外歯21が位置合わせされた状態に積み重ねるための作業が連続的に行われる場合に有効である。
【0068】
更に、本形態のように、柱状部12とドリブンプレート20の開口部Aとの間にクリアランスCを形成することで、柱状部12とドリブンプレート20との間に遊びを持たせれば、アーム部材3L又は3Rがドリブンプレート20の外歯21に引っ掛かる等して干渉した場合も、ドリブンプレート20を逃がすことで、かかる干渉を解除できるので、各ドリブンプレート20間の外歯21の位相ずれを確実に調整することができる。
【0069】
上述したところは、本発明の好適な形態を示したものであるが、特許請求の範囲内において、種々の変更を加えることができる。例えば、本形態の装置は、自動変速機ケースにドラムブレーキを設けるとして説明したが、ドラムクラッチを組み付けるのに際して用いてもよい。また、本発明は、湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキの組み付け作業に用いることに限らず、様々な用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】自動変速機ケース内にドラムブレーキを組み付ける際に、外歯が設けられたドリブンプレートを、ドライブプレートと交互に積み重ねるための本発明の一形態である作業装置を模式的に示す斜視図である。
【図2】積み重ねられたドリブンプレートの外歯が位置合わせされる前の状態と共に、同形態の作業装置を模式的に示す要部斜視図である。
【図3】(a),(b)はそれぞれ、同形態に係るベースを拡大して示す平面図及びその斜視図である。
【図4】(a),(b)はそれぞれ、同形態において、2つのアーム部材のうち、一方のアーム部材の先端が外歯の側面と接触することで、外歯の位置合わせが行われる第一のパターンを模式的に示す平面図である。
【図5】(a),(b)は、同形態において、2つのアーム部材のうち、一方のアーム部材の先端が外歯の先端と接触することで、外歯の位置合わせが行われる第二のパターンを模式的に示す平面図である。
【図6】(a),(b)はそれぞれ、同形態において、外歯が位置合わせされた状態に積み重ねたドリブンプレート及びドライブプレートを更に移送するための装置を模式的に示す斜視図及び、その要部を拡大して模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
1 テーブル
2 ベース
3 アーム部材
4 連結手段(ヒンジピン)
5 アーム復帰手段(捩りコイルばね)
11a 平坦面
11b 切り欠き面
20 ドリブンプレート(リングプレート)
21 外歯
22 歯底
30 ドライブプレート
31 アーム固定部
31p アーム固定部側凸部
32 アーム本体
32n アーム本体側凹部
130 移送装置
131 本体
132 挟持部材
133 爪部材
134 支持部材
A ドリブンプレート(リングプレート)開口部
B ドライブプレート開口部
L 積層円筒体
p 積層円筒体突条
n 積層円筒体側面
C クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外歯が設けられたリングプレートを、当該外歯が位置合わせされた状態に積み重ねるための作業装置であって、
前記リングプレートを回転可能に貫通する柱状部を有し、当該リングプレートを順次積み重ねた状態に載置可能なテーブルと、
このテーブルに積み重ねられたリングプレートに対して、進退可能なベースとを設け、
このベースは、前記リングプレートに向かって突出すると共にその積み重ね方向に延在する2つのアーム部材と、このアーム部材が互いに隔離して開くように当該アーム部材をベースに連結する連結手段と、アーム部材が隔離して開くときに当該アーム部材を初期位置に復帰させるための付勢力を発生するアーム復帰手段とを備え、
2つのアーム部材の先端は前記ベースの接近によって前記リングプレートと接触可能であって、当該アーム部材の相互間の間隔は、一方のアーム部材が外歯に対して当接した時に、他方のアーム部材が当該リングプレートの歯底に対して向き合う位置としたことを特徴とする、複数の外歯が設けられたリングプレートを当該外歯が位置合わせされた状態に積み重ねるための作業装置。
【請求項2】
請求項1において、ベースをリングプレートに接近させるとき、2つのアーム部材の先端がリングプレートを柱状部と共に押圧しないように、当該ベースの移動を停止させることを特徴とする、作業装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、柱状部とリングプレートの開口部との間にクリアランスを形成したことを特徴とする、作業装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−291900(P2009−291900A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149073(P2008−149073)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】