複数の調和的共振を有するバルク波を有する共振構造体における交差結合フィルタ要素
本発明は、高調波モードHBARを用いた基礎実体波フィルタであって、電気音響波によって適切に結合されるトランスデューサ(8)及び基板(12)からそれぞれなる2つのHBAR共振子(20、22)を含む、基礎実体波フィルタに関する。第一振動子(20)、第二振動子(22)及びエバネッセント波によって結合するための要素(28)は、対向するように配置されると共に同一の基準電極(10)により同一の剪断又は縦の振動モードを有する波によって圧電トランスデューサ(8)と結合した同一の一体型音響基板(12)を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さらに複雑なフィルタを形成することを目的としたHBAR(調和的バルク音波共振子)タイプの基礎フィルタ、及びその生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの同一の電気音響的バルク波共振子であって、その共振子のそれぞれが2つの電極同士の間にはさまれた電気音響トランスデューサによって構成されている2つの同一の電気音響的バルク波共振子を結合したフィルタを狭い中間ゾーンを用いて構成する原理が公知である。トランスデューサの中間ゾーンは、そこに2つの共振子によって放射される場のエバネッセント波の重なりを生じるのに十分な狭さであり、それによって、2つの共振子の共振作用同士の間に結合状態が生じる。このような結合状態は、モードが結合されたときに徐々に大きくなるスペクトルゾーンにおいてフィルタ構造体の入力場所と出力場所との間のデータの伝達を可能にする。すなわち、2つの共振子同士の間の中間分離ゾーンは狭い。
【0003】
この原理は、このような結合を引き起こすために、従来のバルク波共振子を使用する、すなわち典型的には水晶である単結晶材料または圧電セラミック材料のプレートの基本モードを使用する、1〜30MHzの周波数範囲で作動する周波数フィルタのために開発されてきた。
【0004】
しかし、このような観点で見ると、プレートはますます薄くなり、数十μm〜数μmの厚さを有し、従って工業生産技術にあまり適さない脆弱な構造体になるため、より高い周波数に向かう動向は複雑化する。
【0005】
この原理は窒化アルミニウム(AlN)の薄膜フィルタに関しても実現されているが、層自体の厚さが深刻な課題となる。2つの共振子同士の間のエネルギーの効果的な結合を許容する横モードの存在を非常に小さな程度でしか許容しないからである。“Simulation,conception et realisation de filtre a ondes de volume dans des couches piezoelectriques”(圧電層におけるバルク波フィルタのシミュレーション、設計及び生産)(2005年、A.ReinhartによるUniversite de Franche−Comte,Besancon,Franceの学位論文)と題された文書は、表面波に使用されるインターデジタルトランスデューサへ返す強制結合を促進することによらなければ、この種のフィルタの生産を想定することは実用的に不可能であることを示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
技術的課題は、共に結合されると共に20GHzまでの高い周波数で作動可能である2つのHBARタイプの共振子によって、基礎フィルタ内部に発生した波の横モードによって提供される結合作用の強さを増大することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、
予め決められた作動周波数で作動することを目的とし、HBARタイプの第一共振子及び第二共振子と、エバネッセント波の重なりを用いて結合するための要素とを備える、HBARタイプの基礎フィルタであって、
前記第一共振子及び前記第二共振子が、溝によってそれぞれに分離された第一電気励起電極及び第二電気励起電極と、同一の基準電極と、同一のモノブロックの圧電トランスデューサとを備え、
前記結合要素が、前記第一共振子と第二共振子との間に配置された前記トランスデューサの中間ゾーンを備え、
前記圧電トランスデューサが、第一材料内部の縦モードまたは横モードのみによる波の電気音響的結合が5%よりも大きくなるように、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φにより方向付けられると共に1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXl)/θによって定義された第一切削角θ1により切削された第一材料の第一厚さの層によって構成される、
基礎フィルタにおいて、
前記第一共振子、前記第二共振子及び前記結合要素が、同一のモノブロックの音響基板を備え、該音響基板が、前記基準電極を介して同一の縦または横振動モードを有する波によって前記圧電トランスデューサに対面して配置されると共に前記圧電トランスデューサに結合される、
基礎フィルタに関する。
【0008】
特殊な実施形態によれば、HBARタイプの基礎フィルタは、1つ又は複数の以下の特徴を備える。
− 前記音響基板が、少なくとも5.1012の作動周波数音響質の積係数を有し、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロに等しくなるように方向付けられ、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXl)/θによって定義された第二切削角θ2により切削され、かつ振動モードに対応する少なくとも1つの偏波方向VPB1(ここで、「VP」は
【数1】
を意味するものとし、本出願に係る明細書及び特許請求の範囲においても同じことを意味するものとする。)を有する、第二材料の第二厚みの層によって構成され、かつ、
前記トランスデューサと前記基板との相対的な配置が、前記トランスデューサの前記振動モードの偏波方向と前記第二切削角θに対応する前記基板の前記少なくとも1つの振動モードの偏波方向とが整列するようになっている。
− 前記トランスデューサの前記厚さに対する前記音響基板の前記厚さの比が1以上である。
− 1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロに等しい。
− 1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロではない。
− 前記波の前記同一の振動モードが縦モードである。
− 前記波の前記同一の振動モードが横モードである。
− 前記トランスデューサの前記材料が、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)及びニオブ酸カリウムによって構成される材料群に含まれる。
− 前記トランスデューサの前記材料が好ましくは、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)及びタンタル酸リチウム(LiTaO3)によって構成される材料群に含まれる。
− 前記音響基板の前記材料が、水晶、ニオブ酸カリウム、オルトリン酸ガリウム(GaPO4)、テトラホウ酸リチウム(LiB4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、ランガテイト及びランガナイトによって構成される材料群に含まれる。
− 前記音響基板の前記材料が水晶である。
− 前記共通基準電極が熱圧縮可能な金属によって構成される。
− 前記共通基準電極が金、銅またはインジウムによって構成される。
− 前記共通基準電極が、前記トランスデューサの周りに延びかつ電気励起電極と同じ高さ位置に端部をそれぞれ有する2つの接続要素によって横方向に延びる。
【0009】
本発明はさらに、
HBARタイプの基礎フィルタの製造方法であって、
第一材料内部の縦モードまたは横モードのみによる波の電気音響的結合作用が5%よりも大きくなるように、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロに等しいまたはゼロではないように方向付けられると共に1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXl)/θによって定義された第一切削角θ1により切削された第一材料の第一厚さの層によって構成された圧電トランスデューサを提供するステップと、
少なくとも5.1012の作動周波数音響質の積係数を有し、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロに等しいように方向付けられ、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXl)/θによって定義された第二切削角θ2により切削され、かつ前記縦モード及び横モードから振動モードに対応する少なくとも1つの偏波方向を有する、第二材料の第二厚みの層によって構成される音響基板を提供するステップと、
前記基板の1つの面及び前記トランスデューサの第一面を熱圧縮可能な金属によって金属被覆するステップと、
前記トランスデューサ及び前記音響基板を組み立てて、これらを、前記トランスデューサの前記振動モードの偏波方向と前記第二切削角θ2に対応する前記基板(12、212)の前記少なくとも1つの振動モードの偏波方向とが整列するように互いに配置するステップと、
前記ステップで金属被覆された前記基板及び前記トランスデューサの面を圧縮することによって接着するステップと、
を含む、基礎フィルタの製造方法において、
前記トランスデューサの第二面上において互いに離間される第一電気励起電極及び第二電気励起電極を金属被覆して、前記トランスデューサ、前記共通基準電極及び前記音響基板によって形成される組立体の中間結合ゾーンによって互いに離間される2つのHBAR共振子を形成するステップ
を含む、基礎フィルタの製造方法にも関する。
【0010】
特殊な実施形態によれば、HBARタイプの基礎フィルタの製造方法は、1つ又は複数の以下の特徴を含む。
− 第一電気励起電極及び第二電気励起電極を金属被覆する前記ステップが、前記トランスデューサの前記第二面上で一体型電極を金属被覆するステップを含み、その後に、互いに離間した前記第一電極及び前記第二電極を形成するために、予め定められた幅を有する溝を前記一体型電極に切削するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る、HBARタイプの基礎フィルタの第一実施形態の斜視図である。
【図2】線II−IIによる、図1の基礎フィルタの断面図である。
【図3】圧電トランスデューサを形成する結晶の第一切削角θ1の図である。
【図4】切削角θ1によるニオブ酸リチウムの結晶のバルク波の位相速度の展開図であり、この結晶配列のグループは一般に「単回転を用いた切削(coupes a simple rotation)」と呼ばれる。
【図5】角度θ1によるニオブ酸リチウムの同じ波の結合係数の展開図である。
【図6】トランスデューサのプレートに関連付けられた、第一実施形態に関する偏波の平面図である。
【図7】音響基板を形成する結晶の第二切削角θ2の図である。
【図8】音響基板のプレートに関連付けられた、第一実施形態に関する偏波の平面図である。
【図9】第一実施形態によるフィルタの広帯域伝達関数のグラフである。
【図10】図9のグラフの或るゾーンの拡大図である。
【図11】横波の結合に関連する、本発明に係る、HBARタイプの基礎フィルタの第二実施形態の斜視図である。
【図12】線XII−XIIに沿って見た図11の基礎フィルタの断面図である。
【図13】トランスデューサのプレートに関連付けられた、第二実施形態に関する偏波の平面図である。
【図14】音響基板のプレートに関連付けられた、第二実施形態に関する偏波の平面図である。
【図15】1.24GHzの領域における、第二実施形態によるフィルタの広帯域伝達係数のグラフである。
【図16】図15のグラフの或るゾーンの拡大図である。
【図17】図1、図2、図11及び図12に示された基礎フィルタの生産を実行するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、添付図面を参照しながら、純粋に例として示される下記の2つの実施形態の記載を読むことからより良好に理解される。
【0013】
図1及び2は、本発明に係る、HBARタイプの基礎フィルタ2の第一実施形態を示す。
【0014】
基礎フィルタ2は、
− 並列に配置されかつ厚さe1を有するアルミニウムから構成された、電気励起のための第一上部電極4及び第二上部電極6と、
− 単結晶形態の、この例においてはニオブ酸リチウム(LiNbO3)である第一材料によって構成されると共に第一厚さt1を有するモノブロックの圧電トランスデューサ8と、
− 電極4、6に共通の基準電極を形成すると共にこの例においては埋め込まれた金から構成された平行六面体の形態でありかつ厚さe2を有する一体型対電極10と、
− 単結晶形態の、この例においてはニオブ酸リチウム(LiNbO3)である第二材料によって構成されると共に第二厚さt2を有するモノブロックの音響基板12と、
を備える連続積層を具備する。
【0015】
また、フィルタ2は、それぞれ第一上部電極4及び第二上部電極6の側において対電極10に接続された第一接続要素14及び第二接続要素16を備える。
【0016】
図1において、すべての層4、6、8、10、12は、同じ長さlを有し、幅W1、W2、W、W、Wをそれぞれ有する。長さlは、幅W1、W2、W及び様々な層の厚さe1、t1、e2、t2のどれよりも実質的に大きい。
【0017】
図1を単純化するために、対電極10は圧電トランスデューサ6と同じ表面積を持つように図示される。
【0018】
第一電極4及び第二電極6の全体は、埋込み対電極の表面積よりも小さい表面積を有する。
【0019】
第一電極4及び第二電極6は、幅W1及びW2と比べて非常に小さい幅WCを有する溝18によって、それぞれ第一電極4及び第二電極6の幅W1及びW2の方向に分離される。
【0020】
溝18の幅WCは、トランスデューサ8の厚さt1と比べてもなお小さい。
【0021】
第一上部電極4及び第二上部電極6の表面はそれぞれ、対電極10と対面しかつこれに平行に配置され、表面の対面するゾーンは最大となるように、縁部ができる限り平行に配置される。
【0022】
このように、波の励起は、平面−平面と呼ばれる構成であって、第一共振子20及び第二共振子22の構成にそれぞれ対応すると想定される。このために、波は、圧電トランスデューサ8における波の伝搬のために、図2の矢印24によって示された方向に、トランスデューサ8の対面する表面に溶着された非常に薄い電極4、10及び非常に薄い電極6、10によってそれぞれ励起される。
【0023】
第一共振子20は、第一電極4と、垂直に下に位置した層の同じセクションのゾーンとを備え、この例では音響基板12の対応する層を含む。
【0024】
第二共振子22は、第二電極6と、垂直に下に位置した層の同じセクションのゾーンとを備え、これはこの例にでは音響基板12の対応する層を含む。
【0025】
このようにして、第一共振子20及び第二共振子22の波は、フィルタ2の中間ゾーン26において横方向のエバネッセント波によって結合される。中間ゾーンは、図の破線でおおよそ区切られており、2つの共振子20,22を分離し、2つの共振子20、22同士の間の結合要素28を形成する。
【0026】
結合要素28は、溝18のすぐ下の中間ゾーン26に位置したトランスデューサ8の部分と、溝18の垂直に下の中間ゾーン26に位置する他の層の同じセクション部分とを備え、対応する音響基板12の層を含む。
【0027】
このように、音響基板12を加えることによって、結合要素28を介して2つの共振子20、22同士の間の結合ゾーンの範囲が増大する。
【0028】
この例において、圧電トランスデューサ8は、ベクトルVPAlongで表された、2つの共振子16、18の厚さe1、t1、e2及びt2に沿った方向の偏波によって励起された縦振動モードを有する。
【0029】
この例において、音響基板12は縦振動モードVPBlongを有する。
【0030】
図1において、トランスデューサ8の縦モードに対応する励起の偏波ベクトルVPAlongは、音響基板12のVPBlongによって示された縦偏波ベクトルと整列する。
【0031】
トランスデューサ8と基板12との間に配置される対電極10は、2つの共振子20、22を備えるフィルタの構造のための接着部としても作用する。
【0032】
トランスデューサ8を構成するニオブ酸リチウム(LiNbO3)の層は、ウェファーを形成する粗い単結晶材料から第一切削角θ1に従って切削されたプレートである。
【0033】
音響基板12を構成するニオブ酸リチウムの層は、粗い単結晶材料のウェファーから第二切削角θ2に従って切削されたプレートである。
【0034】
この例において、第一接続要素14は、第一上部電極4の側で延びる対電極10の連続体である。第一接続要素は、対電極10の長さに等しい幅を有しかつ同じ厚さを有する帯状体30の形をとり、トランスデューサ8の第一下部縁部34の周りに延びかつ電極4の側に位置するトランスデューサ8の側部36に押圧された第一部分32と、トランスデューサ8の第一上部縁部40の周りに延びかつ電極4から窪んでいると共に基板12の反対側に位置するトランスデューサ8の露出表面42に部分的に押圧された第二部分38とを備える。従って、第一接続要素14は第一上部電極4と同じ高さ位置に位置した端部を有する。
【0035】
この例において、第二接続要素16は、第二上部電極6の側で延びる対電極10の連続体である。第二接続要素は、対電極10の長さに等しい幅及び同じ厚さを有する帯状体44の形をとり、トランスデューサ8の第二下部縁部48の周りに延びかつ電極6の側に位置したトランスデューサ8の側部50に押圧された第一部分46と、トランスデューサ8の第二上部縁部54の周りに延びかつ電極6から窪んでいるトランスデューサ8の露出表面56に押圧された第二部分52とを備える。従って、第二接続要素16は、第二上部電極6と同じ高さ位置に位置した端部を有する。
【0036】
基礎フィルタ2は、第一電気四極子として電気回路に挿入されることができる。このうち、2つの入力は電極4及び第一接続要素14によって形成され、2つの出力は電極6及び第二接続要素16によって形成され、接続要素14、16は同じ電位である。
【0037】
第二電気四極子が、入力6、16及び出力4、14として、第一電気四極子に対して逆の伝達機能を有すると考えることもできる。
【0038】
図3によれば、トランスデューサ8のプレートは、ウェファーの材料から第一切削角θ1により切削される。ウェファーの材料は図示しないが、その結晶軸X1、Y1、Z1によって示されている。結晶軸Z1はウェファーの縦軸であり、結晶軸X1、Y1は単結晶が生成されるときに予め定められる。
【0039】
角度θ1は、この例においては、IEEE規格Std−176(1949年改定)において結晶軸X1回りの単回転を用いた切削の角度θ1であるものとして定義された角度である。切削はIEEE規格において(Y1Xl1)/θ1で示され、Xl1は図3の図によれば厚さt1及び長さl1を有する下部直線縁部に整列する軸である。
【0040】
切削されたプレート8に関する基準は、3つの軸X’1、Y’1、Z’1によって図示されており、軸X’1は軸X1と整列する。2つの軸Y’1、Z’1は、軸X1、Y1をそれぞれ軸X1回りに角度θ1だけ回転させることによって得られる。
【0041】
図4は、トランスデューサ8がニオブ酸リチウムによって構成される場合の、トランスデューサ8の結晶軸X11回りの単回転を用いた切削に関する縦波及び横波の位相速度の展開を示す。
【0042】
線62は、角度で表された第一切削角θ1による電極4、6、10の平面に対して直角の軸に沿ってトランスデューサ8において伝搬する横波の位相速度を表す。
【0043】
線64は、角度で表された第一切削角θ1による長さlを有する軸に沿ってトランスデューサ8において伝搬する、km/秒で表された縦波の位相速度を表す。
【0044】
図5は、トランスデューサがニオブ酸リチウムによって構成される場合の、トランスデューサ8の結晶軸X1回りの単回転を用いた切削に関する縦波及び横波の結合を表す。
【0045】
線66は、角度で表された第一切削角θ1による横波に関して、音響エネルギーに変換された電気エネルギーのパーセンテージとして表された結合係数K2Tの展開を表す。
【0046】
線68は、角度で表された第一切削角θ1による縦波に関して、音響エネルギーに変換された電気エネルギーのパーセンテージとして表された結合係数K2Tの展開を表す。
【0047】
図5において、線66、68は角度ゾーン70を有し、この角度ゾーンでは、横波が圧電気によって実用上結合されず、その結果、横波が電気的に励起されないことが明らかである。縦波の励起は特に、20〜30%であるK2Tによって表される電気機械的結合作用によって効果的である。
【0048】
角度ゾーン70は、36度である角度θ1の辺りを中心とし、10°の範囲を有する。
【0049】
図1に示されるトランスデューサの切削角θ1は、約36°を中心に図5のゾーン70の中から選択される。
【0050】
図6に示される平面軸X’1、Y’1によるトランスデューサ8のプレートの平面図について考慮すると、圧電気によって励起された振動モードが、図8において垂直、すなわち平面(X1、Z’1)に対して直角に示される軸Y’1に沿ったスカラー偏波を有することが明白であるが、その空間依存性は、励起平面による空間座標の関数によって説明される。偏波ベクトルVPAlongは軸Y’1と同一直線上にある。
【0051】
図7によれば、音響基板プレート12は、図示しないものの水晶又は石英の結晶軸X2、Y2、Z2によって示されるウェファーの粗い単結晶から第二切削角θ2により切削される。軸Z2は結晶石の成長時に現れる光軸Cである。
【0052】
この例において、角度θ2も、IEEE規格Std−176(1949年改定)において結晶軸X2回りに単回転を用いた切削の角度θ2であるものとして定義される角度である。切削は、IEEE規格Std−176において(Y2、X12)/θ2と指定されており、Xl2は図3によれば厚さt2及び長さl2の下部直線縁部と整列する軸である。
【0053】
切削された音響基板プレート12に関する基準は、3つの軸X’2、Y’2、Z’2によって表され、軸X’2は軸X2と整列する。2つの軸Y’2、Z’2は軸Y2、Z2をそれぞれ軸X2回りに角度θ2だけ回転させることによって得られる。
【0054】
図8に示される平面軸X’2、Y’2による音響基板プレート12の平面図であって、図6においてトランスデューサ8に関して提供される平面図と同様の平面図について考慮すると、作動周波数音響質(qualite acoustique frequence de travail)の積係数(un produit coefficient)が少なくとも5.1012である切削を有する音響基板12において利用するのが望ましい縦振動モードの偏波を説明することができる。
【0055】
ニオブ酸リチウムによって構成された音響基板12の縦振動モードも、スカラー偏波を有し、軸Y’2に沿って確立されて、励起平面によるプレートに関連付けられた局所座標に依存する。IEEE規格(1949年改定)(圧電気に関するIEEE規格Std176−1949,Proc. of the IRE,37巻,1378−1395頁,1949年)により(YXl/θ)と指定された単回転を用いたニオブ酸リチウムから構成されたトランスデューサプレート8の場合、トランスデューサ8と音響基板12との結晶軸の整列が有利に選択された場合、選択された縦波だけが結合される。音響伝搬基板12、この例にではニオブ酸リチウムにおいて励起することが望ましい音波の結合を可能にするために、トランスデューサ及び音響基板の材料を組み立てる際、これらの偏波を考慮する必要がある。
【0056】
この例において、偏波VPAlongがVPBlongで表される音響基板12における横モードの偏波と同一になるようにトランスデューサ8の軸Z’1を音響基板12の軸Z’2と整列させることによって、音響結合効果が得られる。
【0057】
図1に示される第一実施形態に従って構成されたフィルタ2の感度は、縦モードの強い結合のスペクトルゾーンに対応する様々な周波数帯域に関する伝達係数による測定によって特徴付けられてきた。
【0058】
図9は、トランスデューサの、この例においては100MHzである基本モードの5次の倍音の領域、すなわち500MHzの領域における典型的な広帯域スペクトル感度を示す。櫛形104を形成する複数のフィルタ関数102が図示されていて、約10MHzだけ互いに離間される。フィルタセルとも呼ばれる基礎フィルタ2のための帯域外遮断はこの例においては25dBである。
【0059】
この例においては、測定された基礎フィルタの挿入損失は10dBであるが、試験されるフィルタが50オームのインピーダンスと整合しないことを考慮すると、この挿入損失を減少させることができる。
【0060】
図10は、周波数501.1MHzを中心とすると共に図9に示されたフィルタ伝達関数102の増大を示し、モジュラスの線を実線で、位相の線を破線の形で示す。
【0061】
この増大は、非常に明白に、フィルタのスペクトル感度を形成する2つの分離した極を示す。このことは、フィルタが、音響振動が2つの共振子20、22において同位相である対称モードと音響振動が2つの共振子20、22において逆位相である反対称モードとである振動モード同士を結合することによって作動することを証明する。
【0062】
図11及び12は、本発明に係るHBARタイプの基礎フィルタ202の第二実施形態を示す。
【0063】
フィルタの幾何学的な外部構造は第一実施形態のフィルタの構造と同じである。図1、2と図10、11とにおいて同じ要素は同じ参照番号を有する。
【0064】
フィルタ202のトランスデューサ208及び音響基板212のみが、図1のフィルタ2のトランスデューサ8及び音響基板12と異なる。
【0065】
モノブロック圧電トランスデューサ208は単結晶形態のニオブ酸リチウム(LiNbO3)から構成される。
【0066】
モノブロック音響基板212は単結晶形態の水晶によって構成される。
【0067】
この例において、波の励起は、それぞれ第一共振子220及び第二共振子222の構成であって、平面/平面と呼ばれる構成に対応すると想定される。このために、波は、圧電トランスデューサ208における波の伝搬のために、図11による矢印24で示される方向に、圧電トランスデューサ208の対向する表面に溶着されたそれぞれ非常に薄い電極4、10及び電極6、10によって励起される。
【0068】
第一共振子220は、第一電極4と、垂直に下に位置した同じセクションの層のゾーンとを備え、この例では、音響基板212の対応する層を含む。
【0069】
第二共振子222は、第二電極6と、垂直に下に位置した同じセクションの層のゾーンとを備え、この例では、音響基板212の対応する層を含む。
【0070】
このようにして、第一共振子220及び第二共振子222の波は、フィルタ2の中間ゾーン226において横方向のエバネッセント波によって結合される。中間ゾーンは2つの共振子220、222を離間し、2つの共振子同士の間の結合要素228を形成する。
【0071】
結合要素228は、溝18のすぐ下の中間ゾーン226に位置したトランスデューサ208の部分と、溝18の垂直に下の中間ゾーン226に位置した他の層の同じセクション部分とを備え、対応する音響基板12の層を含む。
【0072】
このように、音響基板212を加えることによって、結合要素228を介して2つの共振子220、222同士の間の結合ゾーンの範囲が増大する。
【0073】
圧電トランスデューサ208は、ベクトルVPAcisで表された、共振子の長さに沿った方向の偏波により励起される横モードを有する。
【0074】
音響基板212は、低速と呼ばれる第一モード及び高速と呼ばれる第二モードである2つの横モードを有する。
【0075】
いわゆる高速横波といわゆる低速横波は、直交偏波の横波として定義され、いわゆる高速横波はいわゆる低速横波よりも速い位相速度を有する。
【0076】
図11において、トランスデューサ208の横モードに対応する励起の偏波ベクトルVPAcisは、音響基板の低速横モードに対応する示された偏波ベクトルVPBcis1と整列する。
【0077】
高速横モードの励起に対応する偏波ベクトルは、図1においてVPB2cisによって表され、VPB2cisは、VPB1cisに対して直交すると共に基板212の延長平面に含まれる。
【0078】
トランスデューサ208と基板212との間に配置される対電極10はさらに、共振子2の構造を接着する役割も果たす。
【0079】
トランスデューサ208を構成するニオブ酸リチウム(LiNbO3)の層は、ウェファーを形成する粗い単結晶材料から第一切削角θ1により切削されたプレートである。切削角θ1は図3において説明されるのと同じものを参照して定義される。
【0080】
音響基板212を構成する水晶の層は、粗い単結晶の水晶のウェファーから第二切削角θ2により切削されたプレートである。切削角θ2は図7において説明されるのと同じものを参照して定義される。
【0081】
ニオブ酸リチウムの単回転を用いた切削に適用可能な図5から、線66、68が角度ゾーン272を有することが明らかである。この角度ゾーンにおいて、縦波は実用上、圧電気によって結合されず、その結果、電気的に励起されない。横波の励起は特に、50〜60%であるK2Tによって表される電気機械的結合作用によって効果的である。
【0082】
角度ゾーンは163度である角θ1の辺りを中心とし、10°の大きさを有する。
【0083】
図10に示されるトランスデューサ208の切削角θ1が163°になるように図5のゾーン272内で選択される。
【0084】
単回転を用いてニオブ酸リチウムを切削すると、高速横波に対応するモードのみが、圧電気による電気機械的結合作用を有する。図13に示されるトランスデューサ208のプレートの平面図を平面軸X’1、Y’1により考慮すると、圧電気によって励起される横モードが、図13において端部から示される軸Z’1に沿ったスカラー偏波、すなわち平面(X’1、Y’1)に対して直角のスカラー偏波を有するが、その空間依存性は励起平面による空間座標の関数によって説明されることが明らかである。偏波ベクトルVPAcisは軸Z’1と同一直線上にある。
【0085】
図13のトランスデューサ208に関して示される平面図と同様の、図14において示される軸X’2、Y’2による水晶プレート212の平面図を考慮すると、水晶に利用することが望ましい横モードの偏波を説明することができる。たとえば、水晶は、一次の温度による感度が符号を変えることなくゼロに近い切削作用を有する。水晶の剪断作用もスカラーであるが軸X’2に沿って生じ、励起平面によりプレートに関連する局所座標に依存する。規格表記1949年改定IEEE(圧電気に関するIEEE規格Std176−1949,Proc. of the IRE,37巻,1378−1395頁,1949)により(YXl/θ)で指定される単回転のニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムのプレートの場合、選択された横波は、互いに直交する偏波を有し、トランスデューサ208と音響基板212との結晶軸の整列が有利に選択された場合にのみ結合される。伝搬のための、この例では水晶である音響基板212で励起することが望ましい音波の結合を可能にするために、トランスデューサ208及び音響基板212の材料を組み立てる際に、これらの偏波を考慮する必要がある。
【0086】
この例において、音響結合作用の効果は、偏波VPAcisがVPB1cisで表される音響基板212における剪断モードの偏波と同一となって、対応する波の位相速度の熱シフトを補償できるように、トランスデューサ208の軸Z’1を音響基板212の軸X’2と整列させることによって、または同等のやり方でトランスデューサ208の軸X’1を音響基板212の軸Z’2と整列させることによって得られる。
【0087】
水晶の場合、−24°の切削角θ2の領域において、低速及び高速である2つの横モードがその偏波を変更させる。2つのモードは直交のままであるが、高速剪断モードは、−24°〜−90°の角度θ2の切削の場合、低速剪断モードに代わる。
【0088】
その結果、図11の図が−24°未満の切削角θ2に対応し、ベクトルVPB1cisの偏波が軸X2の低速剪断に対応することになる。
【0089】
切削角度θ2が−24°よりも大きい場合、図11の偏波ベクトルVPB1cis及びVPB2cisは置き換えられ、トランスデューサのプレート、すなわちトランスデューサの励起波の偏波ベクトルVPAcisを90°だけ回転させて、一定の剪断モードで作用することが望ましい場合に、ベクトルVPAcisを低速剪断の偏波ベクトルVPB1cisと整列させると有利である。
【0090】
実用的には、温度に関してフィルタ202の伝達関数を安定化させるのが望ましい場合、切削角θ2は角度ゾーン内で選択される。このゾーンにおいて、低速剪断波の一次の周波数の第一温度係数はゼロに近く、徐々にゼロに近づく。角度ゾーンは約+35°を中心とし、22°の範囲を有するので、一次の周波数の第一温度係数CTFB1が絶対値で20ppm.K−1未満であることを保証する。
【0091】
このように、角度θ1である図11のトランスデューサ208の第一切削角は、図5のゾーン272において選択され、音響基板212の第二切削角θ2は約+35°になるように選択される。
【0092】
図15は、トランスデューサの基本モードの5次の倍音の領域における、すなわち1.24GHzの領域における典型的な広帯域スペクトル感度を示す。櫛形を形成する複数のフィルタ関数が図示されていて、約3MHzだけ互いから離間される。フィルタセルとも呼ばれる基礎フィルタのための帯域外遮断は16dBである。
【0093】
この例においては、測定された基礎フィルタの挿入損失は10dBであるが、試験されるフィルタが50オームのインピーダンスと整合しないことを考慮すると、この挿入損失を減少させることができる。
【0094】
図16は、周波数1.2337GHzを中心とする図15に示されたフィルタ伝達関数の増大を示し、モジュラスの線を実線で、位相の線を破線の形で示す。
【0095】
この増大は、非常に明白に、フィルタのスペクトル感度を形成する2つの分離した極を示す。このことは、フィルタが、音響振動が2つの共振子220、222において同位相である対称モードと音響振動が2つの共振子220、222において逆位相である反対称モードとである振動モード同士を結合することによって作動することを証明する。
【0096】
図17は、図11に示される共振子202の生産方法300のフローチャートである。
【0097】
第一のステップ302においては、圧電トランスデューサ208が提供される。圧電トランスデューサは、横波の電気音響的結合が5%よりも大きくなるように、IEEE規格Std−176(1949年改定)の用語(nomeclature)(YXw)/φによって定義された角度φがゼロとなるように方向付けられた第一材料の第一厚さの層によって構成されると共にIEEE規格Std−176(1949年改定)の用語(YXl)/θによって定義された第一切削角θ1により切削される。
【0098】
トランスデューサの材料208は、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)及びニオブ酸カリウムから構成される材料群から選択される。
【0099】
ニオブ酸リチウム(LiNbO3)及びタンタル酸リチウム(LiTaO3)から材料が選択されることが好ましい。かなりの厚さの単結晶の生産工程を管理しやすいからである。
【0100】
ニオブ酸リチウム及びタンタル酸リチウムを、規格に従って500μm及び350μmの厚さを有する直径約101.6mm(4”)のウェファーとして生産できる。
【0101】
第二ステップ304において、音響基板212が提供される。音響基板は、少なくとも5.1012の作動周波数音響質の積係数を有し、IEEE規格Std−176(1949年改定)の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロとなるように方向付けられ、IEEE規格Std−176(1949年改定)の用語(YXl)/θによって定義された第二切削角θ2により切削され、かつ振動モードに対応する少なくとも1つの偏波方向VPB1を有する第二材料の第二厚さの層によって構成される。
【0102】
音響基板の材料は、水晶及び典型的な同形の代用品たとえばGeO2及びTeO2、同様に同形の構造であるオルトリン酸ガリウム(GaPO4)、ニオブ酸カリウム、テトラホウ酸リチウム(LiB4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、ランガテイト、ランガナイト並びにその様々な変形によって構成される材料グループに含まれる。
【0103】
音響基板の材料は、水晶が好ましい。なぜなら、水晶は温度に関して優れた安定性を有し、結晶学の分野で周知であるからである。
【0104】
次のステップ306において、トランスデューサ208の1つの面及び音響基板212の1つの面は、この2つの面を接着させて、それによって対電極を形成するために、100〜200nmの厚さで熱圧縮可能または冷圧縮可能な金属たとえば金、銅またはインジウムによって金属被覆される。実用上、従来は、典型的なものとしてクロムまたはチタンの係合層が、対電極を形成する層の全体厚さの10%の高さにわたって対電極を形成する層に含まれる。
【0105】
トランスデューサ208と音響基板212との間の音響接続を保証するのに十分な塑性特性及び機械的な頑丈さを考慮すると、金は特にこのタイプの接着に有利な材料である。
【0106】
組立てステップ308において、トランスデューサ208及び音響基板212は、トランスデューサ208の剪断モードの偏波方向VPAと第二切削角度θ2に対応する基板212の少なくとも1つの剪断モードの偏波方向VPB1とが整列するように配置される。
【0107】
次のステップ310において、使用される金属に応じて温度を上げてまたは上げないで、圧縮によって接着作用が実行される。
【0108】
金が使用される場合、加熱段階が免除され、接着を確実にするために、対面する表面の質及び金属材料の延性を利用して、長時間続くプレス作用が実施される。
【0109】
このように、直径約76.2mm(3インチ)のウェファーに対して3000ニュートンの圧力を印加する16時間にわたり温度を30℃に維持する必要があるものの、ニオブ酸リチウム/水晶の複数の複合パネルを、このようにして欠陥なく生産することができる。
【0110】
ステップ312において、共振子のパネルが研磨される。
【0111】
ステップ314において、互いから離間された第一電気励起電極4及び第二電気励起電極6は続いて、2つのHBAR共振子220、222を形成するように、基板212の反対側のトランスデューサ208の一面に金属被覆される。これらの2つの共振子は、トランスデューサ208、共通基準電極10及び音響基板212によって形成される組立体を結合するための中間ゾーン226によって互いに離間される。
【0112】
2つの分離した電極4、6を別個に金属被覆し、または事前に主要金属被覆電極を彫刻することによって、2つの分離した電極4、6を得ることができる。
【0113】
特に、優れた効果が温度の安定性に関して得られることが可能である、広範囲な第二切削角θ2の値により、この方法は簡易に実施できる。
【0114】
さらに、この方法を用いて得られる共振子は、20GHzまでの周波数で作動する。共振子は軽量であり、ほとんどスペースをとらず、高度な一体化を提供する。
【0115】
このような共振子を、たとえば、ホモダイン発振器または高遮断型フィルタのセルに組み込むことができる。
【0116】
当然、他の用途も想定できる。
【0117】
変形実施形態において、ステップ302、304、308は同様のステップと置き換えられ、置き換えられたステップにおいて、トランスデューサ8及び音響基板12の切削角並びにトランスデューサ8及び音響基板12の相対的な配置は、縦振動モードを有する波による結合作用が選択されるようになる。
【0118】
変形実施形態において、圧電トランスデューサ8、208は、IEEE規格Std−176(1949年改定)の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロではないように方向付けられると共にIEEE規格Std−176(1949年改定)の用語(YXl)/θによって定義される第一切削角θ1により切削された第一材料の第一厚さの層によって構成され、その結果、材料内部の縦モードまたは横モードのみによる波の電気音響的結合作用が5%よりも大きい。
【0119】
二重回転を含む切削の変形においては、トランスデューサのモードの励起レベルは、特権モードと他の可能な2つのモードとの間の振幅の比率が10以上であるという意味で、他の2つの可能なモードに比べて優れている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、さらに複雑なフィルタを形成することを目的としたHBAR(調和的バルク音波共振子)タイプの基礎フィルタ、及びその生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの同一の電気音響的バルク波共振子であって、その共振子のそれぞれが2つの電極同士の間にはさまれた電気音響トランスデューサによって構成されている2つの同一の電気音響的バルク波共振子を結合したフィルタを狭い中間ゾーンを用いて構成する原理が公知である。トランスデューサの中間ゾーンは、そこに2つの共振子によって放射される場のエバネッセント波の重なりを生じるのに十分な狭さであり、それによって、2つの共振子の共振作用同士の間に結合状態が生じる。このような結合状態は、モードが結合されたときに徐々に大きくなるスペクトルゾーンにおいてフィルタ構造体の入力場所と出力場所との間のデータの伝達を可能にする。すなわち、2つの共振子同士の間の中間分離ゾーンは狭い。
【0003】
この原理は、このような結合を引き起こすために、従来のバルク波共振子を使用する、すなわち典型的には水晶である単結晶材料または圧電セラミック材料のプレートの基本モードを使用する、1〜30MHzの周波数範囲で作動する周波数フィルタのために開発されてきた。
【0004】
しかし、このような観点で見ると、プレートはますます薄くなり、数十μm〜数μmの厚さを有し、従って工業生産技術にあまり適さない脆弱な構造体になるため、より高い周波数に向かう動向は複雑化する。
【0005】
この原理は窒化アルミニウム(AlN)の薄膜フィルタに関しても実現されているが、層自体の厚さが深刻な課題となる。2つの共振子同士の間のエネルギーの効果的な結合を許容する横モードの存在を非常に小さな程度でしか許容しないからである。“Simulation,conception et realisation de filtre a ondes de volume dans des couches piezoelectriques”(圧電層におけるバルク波フィルタのシミュレーション、設計及び生産)(2005年、A.ReinhartによるUniversite de Franche−Comte,Besancon,Franceの学位論文)と題された文書は、表面波に使用されるインターデジタルトランスデューサへ返す強制結合を促進することによらなければ、この種のフィルタの生産を想定することは実用的に不可能であることを示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
技術的課題は、共に結合されると共に20GHzまでの高い周波数で作動可能である2つのHBARタイプの共振子によって、基礎フィルタ内部に発生した波の横モードによって提供される結合作用の強さを増大することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、
予め決められた作動周波数で作動することを目的とし、HBARタイプの第一共振子及び第二共振子と、エバネッセント波の重なりを用いて結合するための要素とを備える、HBARタイプの基礎フィルタであって、
前記第一共振子及び前記第二共振子が、溝によってそれぞれに分離された第一電気励起電極及び第二電気励起電極と、同一の基準電極と、同一のモノブロックの圧電トランスデューサとを備え、
前記結合要素が、前記第一共振子と第二共振子との間に配置された前記トランスデューサの中間ゾーンを備え、
前記圧電トランスデューサが、第一材料内部の縦モードまたは横モードのみによる波の電気音響的結合が5%よりも大きくなるように、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φにより方向付けられると共に1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXl)/θによって定義された第一切削角θ1により切削された第一材料の第一厚さの層によって構成される、
基礎フィルタにおいて、
前記第一共振子、前記第二共振子及び前記結合要素が、同一のモノブロックの音響基板を備え、該音響基板が、前記基準電極を介して同一の縦または横振動モードを有する波によって前記圧電トランスデューサに対面して配置されると共に前記圧電トランスデューサに結合される、
基礎フィルタに関する。
【0008】
特殊な実施形態によれば、HBARタイプの基礎フィルタは、1つ又は複数の以下の特徴を備える。
− 前記音響基板が、少なくとも5.1012の作動周波数音響質の積係数を有し、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロに等しくなるように方向付けられ、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXl)/θによって定義された第二切削角θ2により切削され、かつ振動モードに対応する少なくとも1つの偏波方向VPB1(ここで、「VP」は
【数1】
を意味するものとし、本出願に係る明細書及び特許請求の範囲においても同じことを意味するものとする。)を有する、第二材料の第二厚みの層によって構成され、かつ、
前記トランスデューサと前記基板との相対的な配置が、前記トランスデューサの前記振動モードの偏波方向と前記第二切削角θに対応する前記基板の前記少なくとも1つの振動モードの偏波方向とが整列するようになっている。
− 前記トランスデューサの前記厚さに対する前記音響基板の前記厚さの比が1以上である。
− 1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロに等しい。
− 1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロではない。
− 前記波の前記同一の振動モードが縦モードである。
− 前記波の前記同一の振動モードが横モードである。
− 前記トランスデューサの前記材料が、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)及びニオブ酸カリウムによって構成される材料群に含まれる。
− 前記トランスデューサの前記材料が好ましくは、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)及びタンタル酸リチウム(LiTaO3)によって構成される材料群に含まれる。
− 前記音響基板の前記材料が、水晶、ニオブ酸カリウム、オルトリン酸ガリウム(GaPO4)、テトラホウ酸リチウム(LiB4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、ランガテイト及びランガナイトによって構成される材料群に含まれる。
− 前記音響基板の前記材料が水晶である。
− 前記共通基準電極が熱圧縮可能な金属によって構成される。
− 前記共通基準電極が金、銅またはインジウムによって構成される。
− 前記共通基準電極が、前記トランスデューサの周りに延びかつ電気励起電極と同じ高さ位置に端部をそれぞれ有する2つの接続要素によって横方向に延びる。
【0009】
本発明はさらに、
HBARタイプの基礎フィルタの製造方法であって、
第一材料内部の縦モードまたは横モードのみによる波の電気音響的結合作用が5%よりも大きくなるように、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロに等しいまたはゼロではないように方向付けられると共に1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXl)/θによって定義された第一切削角θ1により切削された第一材料の第一厚さの層によって構成された圧電トランスデューサを提供するステップと、
少なくとも5.1012の作動周波数音響質の積係数を有し、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロに等しいように方向付けられ、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXl)/θによって定義された第二切削角θ2により切削され、かつ前記縦モード及び横モードから振動モードに対応する少なくとも1つの偏波方向を有する、第二材料の第二厚みの層によって構成される音響基板を提供するステップと、
前記基板の1つの面及び前記トランスデューサの第一面を熱圧縮可能な金属によって金属被覆するステップと、
前記トランスデューサ及び前記音響基板を組み立てて、これらを、前記トランスデューサの前記振動モードの偏波方向と前記第二切削角θ2に対応する前記基板(12、212)の前記少なくとも1つの振動モードの偏波方向とが整列するように互いに配置するステップと、
前記ステップで金属被覆された前記基板及び前記トランスデューサの面を圧縮することによって接着するステップと、
を含む、基礎フィルタの製造方法において、
前記トランスデューサの第二面上において互いに離間される第一電気励起電極及び第二電気励起電極を金属被覆して、前記トランスデューサ、前記共通基準電極及び前記音響基板によって形成される組立体の中間結合ゾーンによって互いに離間される2つのHBAR共振子を形成するステップ
を含む、基礎フィルタの製造方法にも関する。
【0010】
特殊な実施形態によれば、HBARタイプの基礎フィルタの製造方法は、1つ又は複数の以下の特徴を含む。
− 第一電気励起電極及び第二電気励起電極を金属被覆する前記ステップが、前記トランスデューサの前記第二面上で一体型電極を金属被覆するステップを含み、その後に、互いに離間した前記第一電極及び前記第二電極を形成するために、予め定められた幅を有する溝を前記一体型電極に切削するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る、HBARタイプの基礎フィルタの第一実施形態の斜視図である。
【図2】線II−IIによる、図1の基礎フィルタの断面図である。
【図3】圧電トランスデューサを形成する結晶の第一切削角θ1の図である。
【図4】切削角θ1によるニオブ酸リチウムの結晶のバルク波の位相速度の展開図であり、この結晶配列のグループは一般に「単回転を用いた切削(coupes a simple rotation)」と呼ばれる。
【図5】角度θ1によるニオブ酸リチウムの同じ波の結合係数の展開図である。
【図6】トランスデューサのプレートに関連付けられた、第一実施形態に関する偏波の平面図である。
【図7】音響基板を形成する結晶の第二切削角θ2の図である。
【図8】音響基板のプレートに関連付けられた、第一実施形態に関する偏波の平面図である。
【図9】第一実施形態によるフィルタの広帯域伝達関数のグラフである。
【図10】図9のグラフの或るゾーンの拡大図である。
【図11】横波の結合に関連する、本発明に係る、HBARタイプの基礎フィルタの第二実施形態の斜視図である。
【図12】線XII−XIIに沿って見た図11の基礎フィルタの断面図である。
【図13】トランスデューサのプレートに関連付けられた、第二実施形態に関する偏波の平面図である。
【図14】音響基板のプレートに関連付けられた、第二実施形態に関する偏波の平面図である。
【図15】1.24GHzの領域における、第二実施形態によるフィルタの広帯域伝達係数のグラフである。
【図16】図15のグラフの或るゾーンの拡大図である。
【図17】図1、図2、図11及び図12に示された基礎フィルタの生産を実行するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、添付図面を参照しながら、純粋に例として示される下記の2つの実施形態の記載を読むことからより良好に理解される。
【0013】
図1及び2は、本発明に係る、HBARタイプの基礎フィルタ2の第一実施形態を示す。
【0014】
基礎フィルタ2は、
− 並列に配置されかつ厚さe1を有するアルミニウムから構成された、電気励起のための第一上部電極4及び第二上部電極6と、
− 単結晶形態の、この例においてはニオブ酸リチウム(LiNbO3)である第一材料によって構成されると共に第一厚さt1を有するモノブロックの圧電トランスデューサ8と、
− 電極4、6に共通の基準電極を形成すると共にこの例においては埋め込まれた金から構成された平行六面体の形態でありかつ厚さe2を有する一体型対電極10と、
− 単結晶形態の、この例においてはニオブ酸リチウム(LiNbO3)である第二材料によって構成されると共に第二厚さt2を有するモノブロックの音響基板12と、
を備える連続積層を具備する。
【0015】
また、フィルタ2は、それぞれ第一上部電極4及び第二上部電極6の側において対電極10に接続された第一接続要素14及び第二接続要素16を備える。
【0016】
図1において、すべての層4、6、8、10、12は、同じ長さlを有し、幅W1、W2、W、W、Wをそれぞれ有する。長さlは、幅W1、W2、W及び様々な層の厚さe1、t1、e2、t2のどれよりも実質的に大きい。
【0017】
図1を単純化するために、対電極10は圧電トランスデューサ6と同じ表面積を持つように図示される。
【0018】
第一電極4及び第二電極6の全体は、埋込み対電極の表面積よりも小さい表面積を有する。
【0019】
第一電極4及び第二電極6は、幅W1及びW2と比べて非常に小さい幅WCを有する溝18によって、それぞれ第一電極4及び第二電極6の幅W1及びW2の方向に分離される。
【0020】
溝18の幅WCは、トランスデューサ8の厚さt1と比べてもなお小さい。
【0021】
第一上部電極4及び第二上部電極6の表面はそれぞれ、対電極10と対面しかつこれに平行に配置され、表面の対面するゾーンは最大となるように、縁部ができる限り平行に配置される。
【0022】
このように、波の励起は、平面−平面と呼ばれる構成であって、第一共振子20及び第二共振子22の構成にそれぞれ対応すると想定される。このために、波は、圧電トランスデューサ8における波の伝搬のために、図2の矢印24によって示された方向に、トランスデューサ8の対面する表面に溶着された非常に薄い電極4、10及び非常に薄い電極6、10によってそれぞれ励起される。
【0023】
第一共振子20は、第一電極4と、垂直に下に位置した層の同じセクションのゾーンとを備え、この例では音響基板12の対応する層を含む。
【0024】
第二共振子22は、第二電極6と、垂直に下に位置した層の同じセクションのゾーンとを備え、これはこの例にでは音響基板12の対応する層を含む。
【0025】
このようにして、第一共振子20及び第二共振子22の波は、フィルタ2の中間ゾーン26において横方向のエバネッセント波によって結合される。中間ゾーンは、図の破線でおおよそ区切られており、2つの共振子20,22を分離し、2つの共振子20、22同士の間の結合要素28を形成する。
【0026】
結合要素28は、溝18のすぐ下の中間ゾーン26に位置したトランスデューサ8の部分と、溝18の垂直に下の中間ゾーン26に位置する他の層の同じセクション部分とを備え、対応する音響基板12の層を含む。
【0027】
このように、音響基板12を加えることによって、結合要素28を介して2つの共振子20、22同士の間の結合ゾーンの範囲が増大する。
【0028】
この例において、圧電トランスデューサ8は、ベクトルVPAlongで表された、2つの共振子16、18の厚さe1、t1、e2及びt2に沿った方向の偏波によって励起された縦振動モードを有する。
【0029】
この例において、音響基板12は縦振動モードVPBlongを有する。
【0030】
図1において、トランスデューサ8の縦モードに対応する励起の偏波ベクトルVPAlongは、音響基板12のVPBlongによって示された縦偏波ベクトルと整列する。
【0031】
トランスデューサ8と基板12との間に配置される対電極10は、2つの共振子20、22を備えるフィルタの構造のための接着部としても作用する。
【0032】
トランスデューサ8を構成するニオブ酸リチウム(LiNbO3)の層は、ウェファーを形成する粗い単結晶材料から第一切削角θ1に従って切削されたプレートである。
【0033】
音響基板12を構成するニオブ酸リチウムの層は、粗い単結晶材料のウェファーから第二切削角θ2に従って切削されたプレートである。
【0034】
この例において、第一接続要素14は、第一上部電極4の側で延びる対電極10の連続体である。第一接続要素は、対電極10の長さに等しい幅を有しかつ同じ厚さを有する帯状体30の形をとり、トランスデューサ8の第一下部縁部34の周りに延びかつ電極4の側に位置するトランスデューサ8の側部36に押圧された第一部分32と、トランスデューサ8の第一上部縁部40の周りに延びかつ電極4から窪んでいると共に基板12の反対側に位置するトランスデューサ8の露出表面42に部分的に押圧された第二部分38とを備える。従って、第一接続要素14は第一上部電極4と同じ高さ位置に位置した端部を有する。
【0035】
この例において、第二接続要素16は、第二上部電極6の側で延びる対電極10の連続体である。第二接続要素は、対電極10の長さに等しい幅及び同じ厚さを有する帯状体44の形をとり、トランスデューサ8の第二下部縁部48の周りに延びかつ電極6の側に位置したトランスデューサ8の側部50に押圧された第一部分46と、トランスデューサ8の第二上部縁部54の周りに延びかつ電極6から窪んでいるトランスデューサ8の露出表面56に押圧された第二部分52とを備える。従って、第二接続要素16は、第二上部電極6と同じ高さ位置に位置した端部を有する。
【0036】
基礎フィルタ2は、第一電気四極子として電気回路に挿入されることができる。このうち、2つの入力は電極4及び第一接続要素14によって形成され、2つの出力は電極6及び第二接続要素16によって形成され、接続要素14、16は同じ電位である。
【0037】
第二電気四極子が、入力6、16及び出力4、14として、第一電気四極子に対して逆の伝達機能を有すると考えることもできる。
【0038】
図3によれば、トランスデューサ8のプレートは、ウェファーの材料から第一切削角θ1により切削される。ウェファーの材料は図示しないが、その結晶軸X1、Y1、Z1によって示されている。結晶軸Z1はウェファーの縦軸であり、結晶軸X1、Y1は単結晶が生成されるときに予め定められる。
【0039】
角度θ1は、この例においては、IEEE規格Std−176(1949年改定)において結晶軸X1回りの単回転を用いた切削の角度θ1であるものとして定義された角度である。切削はIEEE規格において(Y1Xl1)/θ1で示され、Xl1は図3の図によれば厚さt1及び長さl1を有する下部直線縁部に整列する軸である。
【0040】
切削されたプレート8に関する基準は、3つの軸X’1、Y’1、Z’1によって図示されており、軸X’1は軸X1と整列する。2つの軸Y’1、Z’1は、軸X1、Y1をそれぞれ軸X1回りに角度θ1だけ回転させることによって得られる。
【0041】
図4は、トランスデューサ8がニオブ酸リチウムによって構成される場合の、トランスデューサ8の結晶軸X11回りの単回転を用いた切削に関する縦波及び横波の位相速度の展開を示す。
【0042】
線62は、角度で表された第一切削角θ1による電極4、6、10の平面に対して直角の軸に沿ってトランスデューサ8において伝搬する横波の位相速度を表す。
【0043】
線64は、角度で表された第一切削角θ1による長さlを有する軸に沿ってトランスデューサ8において伝搬する、km/秒で表された縦波の位相速度を表す。
【0044】
図5は、トランスデューサがニオブ酸リチウムによって構成される場合の、トランスデューサ8の結晶軸X1回りの単回転を用いた切削に関する縦波及び横波の結合を表す。
【0045】
線66は、角度で表された第一切削角θ1による横波に関して、音響エネルギーに変換された電気エネルギーのパーセンテージとして表された結合係数K2Tの展開を表す。
【0046】
線68は、角度で表された第一切削角θ1による縦波に関して、音響エネルギーに変換された電気エネルギーのパーセンテージとして表された結合係数K2Tの展開を表す。
【0047】
図5において、線66、68は角度ゾーン70を有し、この角度ゾーンでは、横波が圧電気によって実用上結合されず、その結果、横波が電気的に励起されないことが明らかである。縦波の励起は特に、20〜30%であるK2Tによって表される電気機械的結合作用によって効果的である。
【0048】
角度ゾーン70は、36度である角度θ1の辺りを中心とし、10°の範囲を有する。
【0049】
図1に示されるトランスデューサの切削角θ1は、約36°を中心に図5のゾーン70の中から選択される。
【0050】
図6に示される平面軸X’1、Y’1によるトランスデューサ8のプレートの平面図について考慮すると、圧電気によって励起された振動モードが、図8において垂直、すなわち平面(X1、Z’1)に対して直角に示される軸Y’1に沿ったスカラー偏波を有することが明白であるが、その空間依存性は、励起平面による空間座標の関数によって説明される。偏波ベクトルVPAlongは軸Y’1と同一直線上にある。
【0051】
図7によれば、音響基板プレート12は、図示しないものの水晶又は石英の結晶軸X2、Y2、Z2によって示されるウェファーの粗い単結晶から第二切削角θ2により切削される。軸Z2は結晶石の成長時に現れる光軸Cである。
【0052】
この例において、角度θ2も、IEEE規格Std−176(1949年改定)において結晶軸X2回りに単回転を用いた切削の角度θ2であるものとして定義される角度である。切削は、IEEE規格Std−176において(Y2、X12)/θ2と指定されており、Xl2は図3によれば厚さt2及び長さl2の下部直線縁部と整列する軸である。
【0053】
切削された音響基板プレート12に関する基準は、3つの軸X’2、Y’2、Z’2によって表され、軸X’2は軸X2と整列する。2つの軸Y’2、Z’2は軸Y2、Z2をそれぞれ軸X2回りに角度θ2だけ回転させることによって得られる。
【0054】
図8に示される平面軸X’2、Y’2による音響基板プレート12の平面図であって、図6においてトランスデューサ8に関して提供される平面図と同様の平面図について考慮すると、作動周波数音響質(qualite acoustique frequence de travail)の積係数(un produit coefficient)が少なくとも5.1012である切削を有する音響基板12において利用するのが望ましい縦振動モードの偏波を説明することができる。
【0055】
ニオブ酸リチウムによって構成された音響基板12の縦振動モードも、スカラー偏波を有し、軸Y’2に沿って確立されて、励起平面によるプレートに関連付けられた局所座標に依存する。IEEE規格(1949年改定)(圧電気に関するIEEE規格Std176−1949,Proc. of the IRE,37巻,1378−1395頁,1949年)により(YXl/θ)と指定された単回転を用いたニオブ酸リチウムから構成されたトランスデューサプレート8の場合、トランスデューサ8と音響基板12との結晶軸の整列が有利に選択された場合、選択された縦波だけが結合される。音響伝搬基板12、この例にではニオブ酸リチウムにおいて励起することが望ましい音波の結合を可能にするために、トランスデューサ及び音響基板の材料を組み立てる際、これらの偏波を考慮する必要がある。
【0056】
この例において、偏波VPAlongがVPBlongで表される音響基板12における横モードの偏波と同一になるようにトランスデューサ8の軸Z’1を音響基板12の軸Z’2と整列させることによって、音響結合効果が得られる。
【0057】
図1に示される第一実施形態に従って構成されたフィルタ2の感度は、縦モードの強い結合のスペクトルゾーンに対応する様々な周波数帯域に関する伝達係数による測定によって特徴付けられてきた。
【0058】
図9は、トランスデューサの、この例においては100MHzである基本モードの5次の倍音の領域、すなわち500MHzの領域における典型的な広帯域スペクトル感度を示す。櫛形104を形成する複数のフィルタ関数102が図示されていて、約10MHzだけ互いに離間される。フィルタセルとも呼ばれる基礎フィルタ2のための帯域外遮断はこの例においては25dBである。
【0059】
この例においては、測定された基礎フィルタの挿入損失は10dBであるが、試験されるフィルタが50オームのインピーダンスと整合しないことを考慮すると、この挿入損失を減少させることができる。
【0060】
図10は、周波数501.1MHzを中心とすると共に図9に示されたフィルタ伝達関数102の増大を示し、モジュラスの線を実線で、位相の線を破線の形で示す。
【0061】
この増大は、非常に明白に、フィルタのスペクトル感度を形成する2つの分離した極を示す。このことは、フィルタが、音響振動が2つの共振子20、22において同位相である対称モードと音響振動が2つの共振子20、22において逆位相である反対称モードとである振動モード同士を結合することによって作動することを証明する。
【0062】
図11及び12は、本発明に係るHBARタイプの基礎フィルタ202の第二実施形態を示す。
【0063】
フィルタの幾何学的な外部構造は第一実施形態のフィルタの構造と同じである。図1、2と図10、11とにおいて同じ要素は同じ参照番号を有する。
【0064】
フィルタ202のトランスデューサ208及び音響基板212のみが、図1のフィルタ2のトランスデューサ8及び音響基板12と異なる。
【0065】
モノブロック圧電トランスデューサ208は単結晶形態のニオブ酸リチウム(LiNbO3)から構成される。
【0066】
モノブロック音響基板212は単結晶形態の水晶によって構成される。
【0067】
この例において、波の励起は、それぞれ第一共振子220及び第二共振子222の構成であって、平面/平面と呼ばれる構成に対応すると想定される。このために、波は、圧電トランスデューサ208における波の伝搬のために、図11による矢印24で示される方向に、圧電トランスデューサ208の対向する表面に溶着されたそれぞれ非常に薄い電極4、10及び電極6、10によって励起される。
【0068】
第一共振子220は、第一電極4と、垂直に下に位置した同じセクションの層のゾーンとを備え、この例では、音響基板212の対応する層を含む。
【0069】
第二共振子222は、第二電極6と、垂直に下に位置した同じセクションの層のゾーンとを備え、この例では、音響基板212の対応する層を含む。
【0070】
このようにして、第一共振子220及び第二共振子222の波は、フィルタ2の中間ゾーン226において横方向のエバネッセント波によって結合される。中間ゾーンは2つの共振子220、222を離間し、2つの共振子同士の間の結合要素228を形成する。
【0071】
結合要素228は、溝18のすぐ下の中間ゾーン226に位置したトランスデューサ208の部分と、溝18の垂直に下の中間ゾーン226に位置した他の層の同じセクション部分とを備え、対応する音響基板12の層を含む。
【0072】
このように、音響基板212を加えることによって、結合要素228を介して2つの共振子220、222同士の間の結合ゾーンの範囲が増大する。
【0073】
圧電トランスデューサ208は、ベクトルVPAcisで表された、共振子の長さに沿った方向の偏波により励起される横モードを有する。
【0074】
音響基板212は、低速と呼ばれる第一モード及び高速と呼ばれる第二モードである2つの横モードを有する。
【0075】
いわゆる高速横波といわゆる低速横波は、直交偏波の横波として定義され、いわゆる高速横波はいわゆる低速横波よりも速い位相速度を有する。
【0076】
図11において、トランスデューサ208の横モードに対応する励起の偏波ベクトルVPAcisは、音響基板の低速横モードに対応する示された偏波ベクトルVPBcis1と整列する。
【0077】
高速横モードの励起に対応する偏波ベクトルは、図1においてVPB2cisによって表され、VPB2cisは、VPB1cisに対して直交すると共に基板212の延長平面に含まれる。
【0078】
トランスデューサ208と基板212との間に配置される対電極10はさらに、共振子2の構造を接着する役割も果たす。
【0079】
トランスデューサ208を構成するニオブ酸リチウム(LiNbO3)の層は、ウェファーを形成する粗い単結晶材料から第一切削角θ1により切削されたプレートである。切削角θ1は図3において説明されるのと同じものを参照して定義される。
【0080】
音響基板212を構成する水晶の層は、粗い単結晶の水晶のウェファーから第二切削角θ2により切削されたプレートである。切削角θ2は図7において説明されるのと同じものを参照して定義される。
【0081】
ニオブ酸リチウムの単回転を用いた切削に適用可能な図5から、線66、68が角度ゾーン272を有することが明らかである。この角度ゾーンにおいて、縦波は実用上、圧電気によって結合されず、その結果、電気的に励起されない。横波の励起は特に、50〜60%であるK2Tによって表される電気機械的結合作用によって効果的である。
【0082】
角度ゾーンは163度である角θ1の辺りを中心とし、10°の大きさを有する。
【0083】
図10に示されるトランスデューサ208の切削角θ1が163°になるように図5のゾーン272内で選択される。
【0084】
単回転を用いてニオブ酸リチウムを切削すると、高速横波に対応するモードのみが、圧電気による電気機械的結合作用を有する。図13に示されるトランスデューサ208のプレートの平面図を平面軸X’1、Y’1により考慮すると、圧電気によって励起される横モードが、図13において端部から示される軸Z’1に沿ったスカラー偏波、すなわち平面(X’1、Y’1)に対して直角のスカラー偏波を有するが、その空間依存性は励起平面による空間座標の関数によって説明されることが明らかである。偏波ベクトルVPAcisは軸Z’1と同一直線上にある。
【0085】
図13のトランスデューサ208に関して示される平面図と同様の、図14において示される軸X’2、Y’2による水晶プレート212の平面図を考慮すると、水晶に利用することが望ましい横モードの偏波を説明することができる。たとえば、水晶は、一次の温度による感度が符号を変えることなくゼロに近い切削作用を有する。水晶の剪断作用もスカラーであるが軸X’2に沿って生じ、励起平面によりプレートに関連する局所座標に依存する。規格表記1949年改定IEEE(圧電気に関するIEEE規格Std176−1949,Proc. of the IRE,37巻,1378−1395頁,1949)により(YXl/θ)で指定される単回転のニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムのプレートの場合、選択された横波は、互いに直交する偏波を有し、トランスデューサ208と音響基板212との結晶軸の整列が有利に選択された場合にのみ結合される。伝搬のための、この例では水晶である音響基板212で励起することが望ましい音波の結合を可能にするために、トランスデューサ208及び音響基板212の材料を組み立てる際に、これらの偏波を考慮する必要がある。
【0086】
この例において、音響結合作用の効果は、偏波VPAcisがVPB1cisで表される音響基板212における剪断モードの偏波と同一となって、対応する波の位相速度の熱シフトを補償できるように、トランスデューサ208の軸Z’1を音響基板212の軸X’2と整列させることによって、または同等のやり方でトランスデューサ208の軸X’1を音響基板212の軸Z’2と整列させることによって得られる。
【0087】
水晶の場合、−24°の切削角θ2の領域において、低速及び高速である2つの横モードがその偏波を変更させる。2つのモードは直交のままであるが、高速剪断モードは、−24°〜−90°の角度θ2の切削の場合、低速剪断モードに代わる。
【0088】
その結果、図11の図が−24°未満の切削角θ2に対応し、ベクトルVPB1cisの偏波が軸X2の低速剪断に対応することになる。
【0089】
切削角度θ2が−24°よりも大きい場合、図11の偏波ベクトルVPB1cis及びVPB2cisは置き換えられ、トランスデューサのプレート、すなわちトランスデューサの励起波の偏波ベクトルVPAcisを90°だけ回転させて、一定の剪断モードで作用することが望ましい場合に、ベクトルVPAcisを低速剪断の偏波ベクトルVPB1cisと整列させると有利である。
【0090】
実用的には、温度に関してフィルタ202の伝達関数を安定化させるのが望ましい場合、切削角θ2は角度ゾーン内で選択される。このゾーンにおいて、低速剪断波の一次の周波数の第一温度係数はゼロに近く、徐々にゼロに近づく。角度ゾーンは約+35°を中心とし、22°の範囲を有するので、一次の周波数の第一温度係数CTFB1が絶対値で20ppm.K−1未満であることを保証する。
【0091】
このように、角度θ1である図11のトランスデューサ208の第一切削角は、図5のゾーン272において選択され、音響基板212の第二切削角θ2は約+35°になるように選択される。
【0092】
図15は、トランスデューサの基本モードの5次の倍音の領域における、すなわち1.24GHzの領域における典型的な広帯域スペクトル感度を示す。櫛形を形成する複数のフィルタ関数が図示されていて、約3MHzだけ互いから離間される。フィルタセルとも呼ばれる基礎フィルタのための帯域外遮断は16dBである。
【0093】
この例においては、測定された基礎フィルタの挿入損失は10dBであるが、試験されるフィルタが50オームのインピーダンスと整合しないことを考慮すると、この挿入損失を減少させることができる。
【0094】
図16は、周波数1.2337GHzを中心とする図15に示されたフィルタ伝達関数の増大を示し、モジュラスの線を実線で、位相の線を破線の形で示す。
【0095】
この増大は、非常に明白に、フィルタのスペクトル感度を形成する2つの分離した極を示す。このことは、フィルタが、音響振動が2つの共振子220、222において同位相である対称モードと音響振動が2つの共振子220、222において逆位相である反対称モードとである振動モード同士を結合することによって作動することを証明する。
【0096】
図17は、図11に示される共振子202の生産方法300のフローチャートである。
【0097】
第一のステップ302においては、圧電トランスデューサ208が提供される。圧電トランスデューサは、横波の電気音響的結合が5%よりも大きくなるように、IEEE規格Std−176(1949年改定)の用語(nomeclature)(YXw)/φによって定義された角度φがゼロとなるように方向付けられた第一材料の第一厚さの層によって構成されると共にIEEE規格Std−176(1949年改定)の用語(YXl)/θによって定義された第一切削角θ1により切削される。
【0098】
トランスデューサの材料208は、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)及びニオブ酸カリウムから構成される材料群から選択される。
【0099】
ニオブ酸リチウム(LiNbO3)及びタンタル酸リチウム(LiTaO3)から材料が選択されることが好ましい。かなりの厚さの単結晶の生産工程を管理しやすいからである。
【0100】
ニオブ酸リチウム及びタンタル酸リチウムを、規格に従って500μm及び350μmの厚さを有する直径約101.6mm(4”)のウェファーとして生産できる。
【0101】
第二ステップ304において、音響基板212が提供される。音響基板は、少なくとも5.1012の作動周波数音響質の積係数を有し、IEEE規格Std−176(1949年改定)の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロとなるように方向付けられ、IEEE規格Std−176(1949年改定)の用語(YXl)/θによって定義された第二切削角θ2により切削され、かつ振動モードに対応する少なくとも1つの偏波方向VPB1を有する第二材料の第二厚さの層によって構成される。
【0102】
音響基板の材料は、水晶及び典型的な同形の代用品たとえばGeO2及びTeO2、同様に同形の構造であるオルトリン酸ガリウム(GaPO4)、ニオブ酸カリウム、テトラホウ酸リチウム(LiB4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、ランガテイト、ランガナイト並びにその様々な変形によって構成される材料グループに含まれる。
【0103】
音響基板の材料は、水晶が好ましい。なぜなら、水晶は温度に関して優れた安定性を有し、結晶学の分野で周知であるからである。
【0104】
次のステップ306において、トランスデューサ208の1つの面及び音響基板212の1つの面は、この2つの面を接着させて、それによって対電極を形成するために、100〜200nmの厚さで熱圧縮可能または冷圧縮可能な金属たとえば金、銅またはインジウムによって金属被覆される。実用上、従来は、典型的なものとしてクロムまたはチタンの係合層が、対電極を形成する層の全体厚さの10%の高さにわたって対電極を形成する層に含まれる。
【0105】
トランスデューサ208と音響基板212との間の音響接続を保証するのに十分な塑性特性及び機械的な頑丈さを考慮すると、金は特にこのタイプの接着に有利な材料である。
【0106】
組立てステップ308において、トランスデューサ208及び音響基板212は、トランスデューサ208の剪断モードの偏波方向VPAと第二切削角度θ2に対応する基板212の少なくとも1つの剪断モードの偏波方向VPB1とが整列するように配置される。
【0107】
次のステップ310において、使用される金属に応じて温度を上げてまたは上げないで、圧縮によって接着作用が実行される。
【0108】
金が使用される場合、加熱段階が免除され、接着を確実にするために、対面する表面の質及び金属材料の延性を利用して、長時間続くプレス作用が実施される。
【0109】
このように、直径約76.2mm(3インチ)のウェファーに対して3000ニュートンの圧力を印加する16時間にわたり温度を30℃に維持する必要があるものの、ニオブ酸リチウム/水晶の複数の複合パネルを、このようにして欠陥なく生産することができる。
【0110】
ステップ312において、共振子のパネルが研磨される。
【0111】
ステップ314において、互いから離間された第一電気励起電極4及び第二電気励起電極6は続いて、2つのHBAR共振子220、222を形成するように、基板212の反対側のトランスデューサ208の一面に金属被覆される。これらの2つの共振子は、トランスデューサ208、共通基準電極10及び音響基板212によって形成される組立体を結合するための中間ゾーン226によって互いに離間される。
【0112】
2つの分離した電極4、6を別個に金属被覆し、または事前に主要金属被覆電極を彫刻することによって、2つの分離した電極4、6を得ることができる。
【0113】
特に、優れた効果が温度の安定性に関して得られることが可能である、広範囲な第二切削角θ2の値により、この方法は簡易に実施できる。
【0114】
さらに、この方法を用いて得られる共振子は、20GHzまでの周波数で作動する。共振子は軽量であり、ほとんどスペースをとらず、高度な一体化を提供する。
【0115】
このような共振子を、たとえば、ホモダイン発振器または高遮断型フィルタのセルに組み込むことができる。
【0116】
当然、他の用途も想定できる。
【0117】
変形実施形態において、ステップ302、304、308は同様のステップと置き換えられ、置き換えられたステップにおいて、トランスデューサ8及び音響基板12の切削角並びにトランスデューサ8及び音響基板12の相対的な配置は、縦振動モードを有する波による結合作用が選択されるようになる。
【0118】
変形実施形態において、圧電トランスデューサ8、208は、IEEE規格Std−176(1949年改定)の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロではないように方向付けられると共にIEEE規格Std−176(1949年改定)の用語(YXl)/θによって定義される第一切削角θ1により切削された第一材料の第一厚さの層によって構成され、その結果、材料内部の縦モードまたは横モードのみによる波の電気音響的結合作用が5%よりも大きい。
【0119】
二重回転を含む切削の変形においては、トランスデューサのモードの励起レベルは、特権モードと他の可能な2つのモードとの間の振幅の比率が10以上であるという意味で、他の2つの可能なモードに比べて優れている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決められた作動周波数で作動することを目的とし、HBARタイプの第一共振子(20、220)及び第二共振子(22、222)と、エバネッセント波の重なりを用いて結合するための要素(28、228)とを備える、HBARタイプの基礎フィルタであって、
前記第一共振子(20、220)及び前記第二共振子(22、222)が、溝(18)によってそれぞれに分離された第一電気励起電極(4)及び第二電気励起電極(6)と、同一の基準電極(10)と、同一のモノブロックの圧電トランスデューサ(8、208)とを備え、
前記結合要素(28、208)が、前記第一共振子と第二共振子(20、22;220、222)との間に配置された前記トランスデューサ(8、208)の中間ゾーン(26、226)を備え、
前記圧電トランスデューサ(8、208)が、第一材料内部の縦モードまたは横モードのみによる波の電気音響的結合が5%よりも大きくなるように、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φにより方向付けられると共に1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXl)/θによって定義された第一切削角θ1により切削された第一材料の第一厚さの層によって構成される、
基礎フィルタにおいて、
前記第一共振子(20、220)、前記第二共振子(22、222)及び前記結合要素(28、228)が、同一のモノブロックの音響基板(12、212)を備え、該音響基板が、前記基準電極(10)を介して同一の縦または横振動モードを有する波によって前記圧電トランスデューサ(8、208)に対面して配置されると共に前記圧電トランスデューサに結合される、
基礎フィルタ。
【請求項2】
前記音響基板(12、212)が、少なくとも5.1012の作動周波数音響質の積係数を有し、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロに等しくなるように方向付けられ、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXl)/θによって定義された第二切削角θ2により切削され、かつ振動モードに対応する少なくとも1つの偏波方向VPB1を有する、第二材料の第二厚みの層によって構成され、かつ、
前記トランスデューサ(8、208)と前記基板(12、212)との相対的な配置が、前記トランスデューサ(8、208)の前記振動モードの偏波方向と前記第二切削角θに対応する前記基板(12、212)の前記少なくとも1つの振動モードの偏波方向とが整列するようになっている、
請求項1に記載の基礎フィルタ。
【請求項3】
前記トランスデューサ(8)の前記厚さに対する前記音響基板(12)の前記厚さの比が1以上である、
請求項2に記載の基礎フィルタ。
【請求項4】
1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロに等しい、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項5】
1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロではない、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項6】
前記波の前記同一の振動モードが縦モードである、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項7】
前記波の前記同一の振動モードが横モードである、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項8】
前記トランスデューサ(8、208)の前記材料が、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)及びニオブ酸カリウムによって構成される材料群に含まれる、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項9】
前記トランスデューサ(8、208)の前記材料が好ましくは、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)及びタンタル酸リチウム(LiTaO3)によって構成される材料群に含まれる、
請求項8に記載の基礎フィルタ。
【請求項10】
前記音響基板(12、212)の前記材料が、水晶、ニオブ酸カリウム、オルトリン酸ガリウム(GaPO4)、テトラホウ酸リチウム(LiB4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、ランガテイト及びランガナイトによって構成される材料群に含まれる、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項11】
前記音響基板(12、212)の前記材料が水晶である、
請求項10に記載の基礎フィルタ。
【請求項12】
前記共通基準電極(10)が熱圧縮可能な金属によって構成される、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項13】
前記共通基準電極(10)が金、銅またはインジウムによって構成される、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項14】
前記共通基準電極(10)が、前記トランスデューサ(8、208)の周りに延びかつ電気励起電極(4)及び(6)と同じ高さ位置に端部をそれぞれ有する2つの接続要素(14及び16)によって横方向に延びる、
請求項1〜13のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項15】
基礎フィルタの製造方法であって、
第一材料内部の縦モードまたは横モードのみによる波の電気音響的結合作用が5%よりも大きくなるように、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロに等しいまたはゼロではないように方向付けられると共に1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXl)/θによって定義された第一切削角θ1により切削された第一材料の第一厚さの層によって構成された圧電トランスデューサ(8、208)を提供するステップと、
少なくとも5.1012の作動周波数音響質の積係数を有し、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロに等しいように方向付けられ、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXl)/θによって定義された第二切削角θ2により切削され、かつ前記縦モード及び横モードから振動モードに対応する少なくとも1つの偏波方向を有する、第二材料の第二厚みの層によって構成される音響基板(12、212)を提供するステップと、
前記基板の1つの面及び前記トランスデューサの第一面を熱圧縮可能な金属によって金属被覆するステップと、
前記トランスデューサ(8、208)及び前記音響基板(12、212)を組み立てて、これらを、前記トランスデューサ(8、208)の前記振動モードの偏波方向と前記第二切削角θ2に対応する前記基板(12、212)の前記少なくとも1つの振動モードの偏波方向とが整列するように互いに配置するステップと、
前記ステップで金属被覆された前記基板(12、212)及び前記トランスデューサ(8、208)の面を圧縮することによって接着するステップと、
を含む、基礎フィルタの製造方法において、
前記トランスデューサ(8、208)の第二面上において互いに離間される第一電気励起電極(4)及び第二電気励起電極(6)を金属被覆して、前記トランスデューサ(8、208)、前記共通基準電極(10)及び前記音響基板(12、212)によって形成される組立体の中間結合ゾーン(26、226)によって互いに離間される2つのHBAR共振子(20、220;22、222)を形成するステップ
を含む、基礎フィルタの製造方法。
【請求項16】
第一電気励起電極(4)及び第二電気励起電極(6)を金属被覆する前記ステップが、前記トランスデューサの前記第二面上で一体型電極を金属被覆するステップを含み、その後に、互いに離間した前記第一電極及び前記第二電極を形成するために、予め定められた幅を有する溝を前記一体型電極に切削するステップを含む、
請求項15に記載の基礎フィルタの製造方法。
【請求項1】
予め決められた作動周波数で作動することを目的とし、HBARタイプの第一共振子(20、220)及び第二共振子(22、222)と、エバネッセント波の重なりを用いて結合するための要素(28、228)とを備える、HBARタイプの基礎フィルタであって、
前記第一共振子(20、220)及び前記第二共振子(22、222)が、溝(18)によってそれぞれに分離された第一電気励起電極(4)及び第二電気励起電極(6)と、同一の基準電極(10)と、同一のモノブロックの圧電トランスデューサ(8、208)とを備え、
前記結合要素(28、208)が、前記第一共振子と第二共振子(20、22;220、222)との間に配置された前記トランスデューサ(8、208)の中間ゾーン(26、226)を備え、
前記圧電トランスデューサ(8、208)が、第一材料内部の縦モードまたは横モードのみによる波の電気音響的結合が5%よりも大きくなるように、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φにより方向付けられると共に1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXl)/θによって定義された第一切削角θ1により切削された第一材料の第一厚さの層によって構成される、
基礎フィルタにおいて、
前記第一共振子(20、220)、前記第二共振子(22、222)及び前記結合要素(28、228)が、同一のモノブロックの音響基板(12、212)を備え、該音響基板が、前記基準電極(10)を介して同一の縦または横振動モードを有する波によって前記圧電トランスデューサ(8、208)に対面して配置されると共に前記圧電トランスデューサに結合される、
基礎フィルタ。
【請求項2】
前記音響基板(12、212)が、少なくとも5.1012の作動周波数音響質の積係数を有し、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロに等しくなるように方向付けられ、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXl)/θによって定義された第二切削角θ2により切削され、かつ振動モードに対応する少なくとも1つの偏波方向VPB1を有する、第二材料の第二厚みの層によって構成され、かつ、
前記トランスデューサ(8、208)と前記基板(12、212)との相対的な配置が、前記トランスデューサ(8、208)の前記振動モードの偏波方向と前記第二切削角θに対応する前記基板(12、212)の前記少なくとも1つの振動モードの偏波方向とが整列するようになっている、
請求項1に記載の基礎フィルタ。
【請求項3】
前記トランスデューサ(8)の前記厚さに対する前記音響基板(12)の前記厚さの比が1以上である、
請求項2に記載の基礎フィルタ。
【請求項4】
1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロに等しい、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項5】
1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロではない、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項6】
前記波の前記同一の振動モードが縦モードである、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項7】
前記波の前記同一の振動モードが横モードである、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項8】
前記トランスデューサ(8、208)の前記材料が、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)及びニオブ酸カリウムによって構成される材料群に含まれる、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項9】
前記トランスデューサ(8、208)の前記材料が好ましくは、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)及びタンタル酸リチウム(LiTaO3)によって構成される材料群に含まれる、
請求項8に記載の基礎フィルタ。
【請求項10】
前記音響基板(12、212)の前記材料が、水晶、ニオブ酸カリウム、オルトリン酸ガリウム(GaPO4)、テトラホウ酸リチウム(LiB4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、ランガテイト及びランガナイトによって構成される材料群に含まれる、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項11】
前記音響基板(12、212)の前記材料が水晶である、
請求項10に記載の基礎フィルタ。
【請求項12】
前記共通基準電極(10)が熱圧縮可能な金属によって構成される、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項13】
前記共通基準電極(10)が金、銅またはインジウムによって構成される、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項14】
前記共通基準電極(10)が、前記トランスデューサ(8、208)の周りに延びかつ電気励起電極(4)及び(6)と同じ高さ位置に端部をそれぞれ有する2つの接続要素(14及び16)によって横方向に延びる、
請求項1〜13のいずれか一項に記載の基礎フィルタ。
【請求項15】
基礎フィルタの製造方法であって、
第一材料内部の縦モードまたは横モードのみによる波の電気音響的結合作用が5%よりも大きくなるように、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロに等しいまたはゼロではないように方向付けられると共に1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXl)/θによって定義された第一切削角θ1により切削された第一材料の第一厚さの層によって構成された圧電トランスデューサ(8、208)を提供するステップと、
少なくとも5.1012の作動周波数音響質の積係数を有し、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXw)/φによって定義された角度φがゼロに等しいように方向付けられ、1949年改定IEEE規格Std−176の用語(YXl)/θによって定義された第二切削角θ2により切削され、かつ前記縦モード及び横モードから振動モードに対応する少なくとも1つの偏波方向を有する、第二材料の第二厚みの層によって構成される音響基板(12、212)を提供するステップと、
前記基板の1つの面及び前記トランスデューサの第一面を熱圧縮可能な金属によって金属被覆するステップと、
前記トランスデューサ(8、208)及び前記音響基板(12、212)を組み立てて、これらを、前記トランスデューサ(8、208)の前記振動モードの偏波方向と前記第二切削角θ2に対応する前記基板(12、212)の前記少なくとも1つの振動モードの偏波方向とが整列するように互いに配置するステップと、
前記ステップで金属被覆された前記基板(12、212)及び前記トランスデューサ(8、208)の面を圧縮することによって接着するステップと、
を含む、基礎フィルタの製造方法において、
前記トランスデューサ(8、208)の第二面上において互いに離間される第一電気励起電極(4)及び第二電気励起電極(6)を金属被覆して、前記トランスデューサ(8、208)、前記共通基準電極(10)及び前記音響基板(12、212)によって形成される組立体の中間結合ゾーン(26、226)によって互いに離間される2つのHBAR共振子(20、220;22、222)を形成するステップ
を含む、基礎フィルタの製造方法。
【請求項16】
第一電気励起電極(4)及び第二電気励起電極(6)を金属被覆する前記ステップが、前記トランスデューサの前記第二面上で一体型電極を金属被覆するステップを含み、その後に、互いに離間した前記第一電極及び前記第二電極を形成するために、予め定められた幅を有する溝を前記一体型電極に切削するステップを含む、
請求項15に記載の基礎フィルタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2012−507902(P2012−507902A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533803(P2011−533803)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052138
【国際公開番号】WO2010/052433
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【出願人】(509303947)ユニベルシテ ドゥ フランシュ−コンテ (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052138
【国際公開番号】WO2010/052433
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【出願人】(509303947)ユニベルシテ ドゥ フランシュ−コンテ (2)
【Fターム(参考)】
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