説明

親水性重合体の製造方法

【課題】従来技術と比較して、セメント混和剤における各種の性能をより一層改善しうる手段を提供する。
【解決手段】本発明の親水性重合体の製造方法は、化学式1で表される不飽和酸系化合物と、化学式2で表されるポリエーテル化合物とを反応器中で反応させて親水性重合体を得る反応工程を含む。そして、上記反応工程に加えて、熟成工程、冷却工程、中和工程、および加水工程からなる群から選択される少なくとも1つの追加工程をさらに含み、当該追加工程を反応器の後段に配置された、反応器とは異なる追加装置において行なう点に特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
親水性重合体を含むセメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等に広く用いられており、セメント組成物から土木・建築構造物等を構築するために欠かすことのできないものとなっている。このようなセメント混和剤は減水剤等として用いられ、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を有することになる。このような減水剤としては、従来のナフタレン系等の減水剤に比べて高い減水性能を発揮するポリカルボン酸系減水剤が提案され、最近では高性能AE減水剤として多くの使用実績がある。
【0003】
かようなセメント混和剤として用いられる親水性重合体を製造する手法として、例えば、一部または全部が中和されていてもよい(メタ)アクリル酸などの不飽和酸系化合物を、ポリオキシエチレン鎖などのポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和化合物と共重合させる手法が知られている(例えば、特許文献1および2を参照)。ここで、エチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸とポリアルキレングリコールまたはそのモノアルキルエーテルとのエステル化物が用いられる(特許文献1)。また、イソプレノールや(メタ)アリルアルコールなどの不飽和二重結合含有アルコールへのアルキレンオキサイド付加物が、上記エチレン性不飽和化合物として用いられることもある(特許文献2)。
【0004】
このように、セメント混和剤として用いるための親水性重合体を製造する手法は数多く提案されている。上述した特許文献に記載の手法ではいずれも、原料化合物を反応器中で反応させた後(反応工程)、反応器中においてさらに熟成を行ない(熟成工程)、反応系を冷却し(冷却工程)、水酸化ナトリウム水溶液などを用いて重合体中の酸基を中和し(中和工程)、必要に応じてさらに水を添加して(加水工程)、親水性重合体(水溶液)を得ている。
【0005】
なお、上述の手法により得られた重合体を用いたセメント混和剤に求められる性能としては、水/セメント比が小さくても高い減水性能を発揮すること、スランプ保持性能が高いこと、強度・耐久性に優れること、などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−18456号公報
【特許文献2】特開2010−6701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献に記載の技術のような従来の技術では、セメント混和剤に求められる上記の各種性能について、依然として改善の余地が存在する。
【0008】
そこで本発明は、従来技術と比較して、セメント混和剤における各種の性能をより一層改善しうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した従来技術における課題に鑑み、本発明者らは鋭意研究を行なった。その結果、セメント混和剤に用いられる親水性重合体を製造する際に、反応工程よりも後の工程の少なくとも一部を反応器とは異なる装置において行なうと、得られた重合体がセメント混和剤として優れた性能を発揮することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
このようにして完成された本発明の親水性重合体の製造方法は、下記化学式1:
【0011】
【化1】

【0012】
式中、
、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CHCOOH基であり(この際、pは、0〜2の整数である)、
Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基または有機アミン基である、
で表される不飽和酸系化合物と、下記化学式2:
【0013】
【化2】

【0014】
式中、
は、炭素原子数2〜8のアルケニル基であり、
Oは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基であり、
nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜500の数であり、
は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基である、
で表されるポリエーテル化合物とを反応器中で反応させて親水性重合体を得る反応工程を含む。そして、上記反応工程に加えて、熟成工程、冷却工程、中和工程、および加水工程からなる群から選択される少なくとも1つの追加工程をさらに含み、当該追加工程を反応器の後段に配置された、反応器とは異なる追加装置において行なう点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来技術と比較して、セメント混和剤における各種の性能をより一層改善しうる手段が提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の製造方法を実施するのに好適な反応装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態の製造方法を実施するのに好適な反応装置の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を説明する。以下ではまず、親水性重合体を製造するための工程について順を追って説明する。その後、本発明の特徴的な構成について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
[反応工程]
本発明の親水性重合体の製造方法では、化学式1で表される不飽和酸系化合物と、化学式2で表されるポリエーテル化合物とを反応器中で反応させて親水性重合体を得る反応工程を含む。
【0019】
詳細には、上記不飽和酸系化合物は、下記化学式1:
【0020】
【化3】

【0021】
で表される。
【0022】
化学式1において、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CHCOOH基である。また、R〜Rの少なくとも1つが−(CHCOOH基である場合、当該基におけるpは、0〜2の整数である。このpは、重合における反応性の観点からはより好ましくは0または1の整数である。なお、RおよびRの双方が同時に−(CHCOOH基となることはない。また、Rが−(CHCOOH基である場合、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、−(CHCOOH基となることはない。さらに、化学式1において、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基または有機アミン基を表す。Mが金属原子である場合、当該金属原子は、一価、二価、および三価のいずれであってもよく、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の一価金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の二価金属原子;アルミニウム、鉄等の三価金属原子が好適である。なかでも、Mは、一価金属原子または二価金属原子であることが好ましい。また、アンモニウム基は、「−NH」で表される官能基である。そして、有機アミン基としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン;エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等のポリアミン等の有機アミン由来の残基が挙げられる。
【0023】
およびRが水素原子である場合には、化学式1で表される不飽和酸系化合物は、アクリル酸(Rが水素原子の場合)やメタクリル酸(Rがメチル基の場合)となる。また、RまたはRがカルボキシ基であり、Rが水素原子である場合には、化学式1で表される不飽和酸系化合物は、マレイン酸やフマル酸となる。さらに、Rがカルボキシ基であり、RがCHCOOH基である場合には、化学式1で表される不飽和酸系化合物は、イタコン酸となる。
【0024】
化学式1で表される不飽和酸系化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸アンモニウム;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、およびこれらの金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩などが挙げられる。これらの2種以上が併用されてもよい。なかでも、不飽和酸系化合物としては、(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。これらの化合物は、市販されている化合物を用いてもよいし、自ら合成することにより準備してもよい。
【0025】
また、上記ポリエーテル化合物は、下記化学式2:
【0026】
【化4】

【0027】
で表される。
【0028】
化学式2において、Rは、炭素原子数2〜8のアルケニル基である。ここで、「アルケニル基」とは、アルケンの任意の炭素原子から一個の水素原子を除去した、一般式C2n−1で表される一価の基を意味する。かようなアルケニル基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリル基、イソプレニル基(CH=C(CH)−CHCH−基)、プロペニル基、イソプロペニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、1−プロペニル基、2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基などが挙げられる。
【0029】
化学式2において、ROは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基である。かようなオキシアルキレン基を構成する「R」としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基、フェニルエチレン基、テトラメチレン基、または1,2−ジメチルエチレン基が挙げられる。すなわち、化学式2において「RO」は、上記の官能基を含むオキシアルキレン基(例えば、オキシエチレン基)である。なかでも、重合における反応性の観点からは、Rはエチレン基またはメチルエチレン基であることが好ましく、エチレン基であることが最も好ましい。また、場合によっては、(RO)で表される繰り返し単位中に2以上の異なるRO構造が存在していてもよい。ただし、ポリオキシアルキレン鎖の製造の容易性や構造の制御のし易さを考慮すると、(RO)で表される繰り返し構造は、同一のAO構造の繰り返しであることが好ましい。なお、2以上の異なるRO構造が存在する場合、これらの異なるRO構造は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態で存在していてもよい。
【0030】
化学式2において、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。このnは、1〜500の数であり、好ましくは2〜450であり、より好ましくは3〜400であり、さらに好ましくは4〜400であり、特に好ましくは6〜350であり、最も好ましくは6〜300である。オキシアルキレン基の平均付加モル数nが上述した下限値以上であれば、得られる重合体の親水性が確保され、分散性能が向上しうるため、好ましい。また、オキシアルキレン基の平均付加モル数nが上述した上限値以下であれば、反応工程における反応性が十分に確保されうるため、好ましい。なお、「平均付加モル数」とは、ポリエーテル化合物1モル中において付加しているオキシアルキレン基のモル数の平均値を意味する。
【0031】
化学式2において、Rは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基である。ここで、炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜30のアルキル基(脂肪族アルキル基または脂環族アルキル基)、炭素原子数6〜30のフェニル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基、(アルキル)フェニル基で置換されたフェニル基、ナフチル基等のベンゼン環を有する芳香族基等が挙げられる。Rにおいては、炭化水素基の炭素原子数が増大するに従って疎水性が大きくなり、分散性が低下するため、Rが炭化水素基の場合の炭素原子数としては、1〜22が好ましく、1〜18がより好ましく、1〜12がさらに好ましく、1〜4が特に好ましい。
【0032】
(第1の形態)
化学式2で表されるポリエーテル化合物として、例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール(RおよびRがともに水素原子である化合物)またはその一方の末端が炭素原子数1〜30の炭化水素基により置換されたもの(Rが水素原子であり、Rが炭化水素基である化合物)と(メタ)アクリル酸などの不飽和酸系化合物とのエステル化物(ポリアルキレングリコールエステル系化合物)が挙げられる。かようなエステル化物については、従来公知の知見を参照することにより、合成が可能である。
【0033】
本発明の反応工程においてかようなポリアルキレングリコールエステル系化合物(単量体)を原料として用い、重合開始剤の存在下で、上述した不飽和酸系化合物(単量体)と反応させると、ポリアルキレングリコールエステル系化合物(単量体)および不飽和酸系化合物(単量体)がそれぞれ有する不飽和二重結合のラジカル重合が進行し、これらの共重合体が得られる(後述する製造例1〜3および実施例1〜4を参照)。この共重合体に対して後述する追加工程を施すことで、本発明の目的物である親水性重合体を得ることができる。
【0034】
上述した原料化合物(単量体)の使用量について特に制限はないが、好ましい形態として、上述した2つの原料化合物(単量体)の全量100重量%に対して、ポリアルキレングリコールエステル系化合物(単量体)および不飽和酸系化合物(単量体)をそれぞれ1質量%以上含むとよい。また、ポリアルキレングリコールエステル系化合物(単量体)の含有量は、好ましくは5重量%以上であり、より好ましくは10重量%以上であり、さらに好ましくは20重量%以上であり、特に好ましくは40重量%以上である。かような形態とすることで、得られる共重合体をセメント混和剤として用いた際の分散性能に優れる。また、重合反応をスムーズに進行させるという観点からは、ポリアルキレングリコールエステル系化合物(単量体)由来の繰り返し単位は、得られる共重合体の全繰り返し単位の50モル%以下であることが好ましい。さらに、セメント混和剤としての使用時の分散性能を向上させるという観点からは、不飽和酸系化合物(単量体)が(メタ)アクリル酸(塩)を必須に含有することが好ましい。
【0035】
なお、第1の形態の反応工程では、上述した2つの原料化合物(単量体)に加えて、これらと共重合可能な他の単量体をさらに共重合させてもよい。なお、他の単量体の使用量は、原料化合物(単量体)の全量100重量%に対して、好ましくは0〜70重量%であり、より好ましくは0〜50重量%であり、さらに好ましくは0〜30重量%であり、特に好ましくは0〜10重量%である。他の単量体としては、上述したポリアルキレングリコールエステル系化合物(単量体)および不飽和酸系化合物(単量体)と共重合可能な化合物であれば特に制限されず、下記の化合物の1種または2種以上が用いられうる。
【0036】
マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;炭素原子数1〜30のアルコールに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加物類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類。
【0037】
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類。
【0038】
(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、等のビニルエーテルあるいはアリルエーテル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体。
【0039】
第1の形態の反応工程における反応を進行させるには、重合開始剤を用いて上述した原料(ポリアルキレングリコールエステル系化合物(単量体)、不飽和酸系化合物(単量体))、および必要に応じて他の単量体を共重合させればよい。共重合は、溶液重合や塊状重合等の公知の方法で行うことができる。溶液重合は回分式でも連続式でも行うことができ、その際に使用される溶媒としては特に限定されず、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族または脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられるが、原料化合物および得られる共重合体の溶解性から、水および炭素原子数1〜4の低級アルコールからなる群から選択される少なくとも1種を溶媒として用いることが好ましく、その中でも水を溶媒に用いるのが、脱溶剤工程を省略できる点でさらに好ましい。
【0040】
反応工程において水溶液重合を行なう場合には、ラジカル重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤等が使用され、この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。中でも、過酸化水素とL−アスコルビン酸(塩)等の促進剤との組み合わせが好ましい。これらのラジカル重合開始剤や促進剤はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、水溶液重合を行なう際の重合温度は特に制限されないが、例えば、25〜99℃であり、好ましくは50〜95℃であり、より好ましくは60〜92℃であり、さらに好ましくは65〜90℃である。なお、「重合温度」とは、反応系における反応溶液の温度を意味する。
【0041】
また、低級アルコール、芳香族もしくは脂肪族炭化水素、エステル化合物、または、ケトン化合物を溶媒とする溶液重合を行う場合には、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ナトリウムパーオキサイド等のパーオキサイド;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等がラジカル重合開始剤として用いられる。この際アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤、または、ラジカル重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。なお、溶液重合を行なう際の重合温度は特に制限されないが、例えば、25〜99℃であり、好ましくは40〜90℃であり、より好ましくは45〜85℃であり、さらに好ましくは50〜80℃である。
【0042】
さらに塊状重合を行う場合には、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ナトリウムパーオキサイド等のパーオキサイド;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を用い、50〜200℃の温度で行なわれる。
【0043】
各原料の反応器への投入方法は特に限定されず、全量を反応器に初期に一括投入する方法、全量を反応器に分割もしくは連続投入する方法、一部を反応器に初期に投入し、残りを反応器に分割もしくは連続投入する方法のいずれでもよい。具体的には、不飽和酸系化合物(単量体)とポリアルキレングリコールエステル系化合物(単量体)の全部を反応容器に連続投入する方法、不飽和酸系化合物(単量体)の一部を反応容器に初期に投入し、不飽和酸系化合物(単量体)の残りとポリアルキレングリコールエステル系化合物(単量体)の全部を反応容器に連続投入する方法、あるいは、不飽和酸系化合物(単量体)の一部とポリアルキレングリコールエステル系化合物(単量体)の一部を反応容器に初期に投
入し、不飽和酸系化合物(単量体)の残りとポリアルキレングリコールエステル系化合物(単量体)の残りをそれぞれ反応容器に交互に数回に分けて分割投入する方法等が挙げられる。さらに、反応途中で各単量体の反応容器への投入速度を連続的または段階的に変えることにより各単量体の単位時間当りの投入重量比を連続的または段階的に変化させて、共重合体中の繰り返し単位の構成比率が異なる共重合体の混合物を重合反応中に合成するようにしてもよい。なお、ラジカル重合開始剤は反応容器に初めから仕込んでもよいし、反応器へ滴下してもよいし、目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
【0044】
得られる共重合体の分子量を調整する目的で、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては特に限定されず、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロパノール等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物及びその塩;等が挙げられる。これらは1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。さらに、得られる共重合体の分子量を調整する目的には、「他の単量体」として(メタ)アリルスルホン酸(塩)類等の連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。
【0045】
(第2の形態)
さらには、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、イソプレンアルコール(イソプレノール;3−メチル−3−ブテン−1−オール)、3−メチル−3−ブテン−2−オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを1〜500モル付加して得られる不飽和アルコールのアルキレンオキサイド付加物(ポリアルキレングリコールエーテル系化合物)もまた、化学式2で表されるポリエーテル化合物として用いられうる。かようなアルキレンオキサイド付加物についても、従来公知の知見を参照することにより、合成が可能である。
【0046】
本発明の反応工程においてかようなポリアルキレングリコールエーテル系化合物(単量体)を原料として用い、重合開始剤の存在下で、上述した不飽和酸系化合物(単量体)と反応させると、ポリアルキレングリコールエーテル系化合物(単量体)および不飽和酸系化合物(単量体)がそれぞれ有する不飽和二重結合のラジカル重合が進行し、これらの共重合体が得られる(後述する実施例5〜13を参照)。この共重合体に対して後述する追加工程を施すことで、本発明の目的物である親水性重合体を得ることができる。
【0047】
なお、第2の形態における反応の詳細としては、上述した第1の形態における反応の詳細が同様に用いられうるため、ここでは説明を省略する。
【0048】
(両形態共通)
反応工程において得られる親水性重合体の重量平均分子量について特に制限はないが、一例として、好ましくは3,000〜1,000,000であり、より好ましくは5,000〜500,000であり、さらに好ましくは10,000〜100,000である。かような範囲内の値であれば、反応の制御や重合物が取り扱いやすく、分散剤として十分な性能を発揮することができるという利点がある。
【0049】
[追加工程]
親水性重合体の製造方法では、上述した反応工程後に、さらに他の工程(追加工程)が行われる。例えば、反応系(反応液)をさらに加熱して重合反応を完結させるための熟成工程、反応系(反応液)の温度を下げるための冷却工程、反応系(反応液)の酸性側pHをアルカリ性側にシフトさせるための中和工程、および反応系(反応液)の溶質濃度を調整する目的で水を添加する加水工程などが、反応工程の後に行われうる。本発明の製造方法は、これらの追加工程の少なくとも1つの工程を、反応器の後段に配置された、反応器とは異なる装置(追加装置)において行なう点に特徴を有する。よって、本発明の技術的範囲は、上述した原料を用いた反応(重合反応)により得られた反応系(反応液)に対して、いかなる処理を行なうものであっても、当該処理が反応器の後段に配置された反応器以外の装置で行なわれるものである限り、すべての実施形態を包含するものである。
【0050】
図1は、本発明の一実施形態の製造方法を実施するのに好適な反応装置の一例を示す概略図である。図1に示す反応装置は、重合反応器としての重合釜101と、中和・希釈槽201とを有する。重合釜101は、上述した重合工程に用いられる。また、中和・希釈層201は、後述する冷却工程、中和工程および加水工程に用いられる。
【0051】
重合釜101には、撹拌機111が設置されている。この撹拌機111は、重合工程において、重合釜101内の温度および濃度の偏在化を防止し、重合反応が均等になされるように、重合釜101内の溶液を撹拌するための撹拌手段として機能する。
【0052】
重合釜101本体の側面(さらには底面)外周部には、外部ジャケット113が周設されている。この外部ジャケット113は、重合工程において、重合釜101内の反応液の温度を調整するための温度調整手段として機能する。
【0053】
なお、重合釜101には、重合工程に必要な温度、圧力、流量などの測定装置、制御装置などが適宜設けられていることが好ましい。
【0054】
さらに、図1に示す実施形態では、上述した装置構成に加えて、さらに、重合釜101に外部循環冷却装置が備えられている。具体的には、まず、重合釜101の下部(詳細には、重合釜内の液面よりも下部)に、外部循環経路115が連結されている。この外部循環経路115は、重合反応中に重合釜101内の反応液を外部循環するための循環手段として機能する。また、外部循環経路115上には、該経路内を流れる反応液を冷却するための除熱装置117が設けられている。これらの外部循環経路115および除熱装置117は一体となって外部循環冷却装置を構成し、重合反応中に反応液を冷却するための冷却手段として機能する。
【0055】
さらに、重合釜101内部に重合用組成物の各成分を供給することができるように、重合用組成物の各成分の貯蔵部(図示せず)からの各供給経路の先端ノズル部が重合釜101内の反応液の液面よりも上方空間部に位置するように設けられている。ただし、先端ノズル部121は反応液の液中に位置してもよい。図1では、便宜上、ただ1つの供給経路119およびその先端ノズル部121のみが図示されているが、実際には、それぞれの成分を個別に添加できるように、重合に用いる各成分(例えば、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤など)のそれぞれに対応した(全体では複数の)供給経路119および先端ノズル部121が設置されている。また、上記各供給経路や外部循環経路上には、必要に応じて、各種ポンプやバルブが適宜設けられていてもよい。
【0056】
反応装置が反応液の外部循環経路および当該外部循環経路を循環する反応液を除熱するための除熱装置を有することにより、重合熱の効率的な除熱が可能となる。かような形態によれば、コンデンサを用いた溶剤の潜熱を利用する除熱や、ジャケットを用いて外部から冷却する場合と比較して、マイルドな条件で重合反応を行なうことが可能となる。また、厳密な温度制御も可能となる。このため、反応装置は反応液の外部循環経路および当該外部循環経路を循環する反応液を除熱するための除熱装置を有することが特に好ましい。
【0057】
上述したように、図1に示す実施形態の反応装置では、得られた重合体を中和するための中和工程のほか、さらに冷却工程および加水工程が行なわれる中和・希釈槽201が設けられている。この中和・希釈槽201には、重合釜101の下部底面に接続された反応液抜き出し経路123の他端が接続されている。また、この中和・希釈槽201には、中和剤を貯蔵するための中和剤タンク211に接続された供給経路213の他端も接続されている。反応液抜き出し経路123や供給経路213上にも、必要に応じて、各種ポンプやバルブが適宜設置されうる。反応液抜き出し経路123は、重合釜101で製造された重合体を中和・希釈槽201へと移送するための移送手段として機能する。
【0058】
図1に示す実施形態の反応装置では、中和・希釈槽201本体の側面(さらには底面)外周部にもまた、重合釜101と同様に、外部ジャケット113が周設されている。中和槽201に周設された外部ジャケット113は、冷却工程において、中和・希釈槽201内へ移送された反応液の温度を調整するための温度調整手段として機能する。さらに、中和・希釈槽201にも、重合釜101と同様に、攪拌手段としての攪拌機(図示せず)が設けられている。また、供給経路213の先端ノズル部(図示せず)が、中和槽201内の反応液の液面よりも上方空間部に位置するように設けられている。
【0059】
図1に示す実施形態の反応装置では、冷却工程、中和工程、加水工程を行なうための装置として槽型の装置(中和・希釈槽201)が用いられている。ただし、場合によっては、管型の混合器が冷却・中和・加水装置として用いられてもよい。かような形態としては、例えば、図2に示すように、中和・希釈槽201に代えてラインミキサー203が重合釜101の後段に配置される形態が例示される。ラインミキサーは、管路撹拌器とも称され、管の内部において2つ以上の流体を高速で混合することができる機能を有するものである。場合によっては、ラインミキサーには撹拌機等の混合促進手段が内蔵されていてもよいなど、その具体的な形態は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。図2に示す形態では、ラインミキサー203本体の上流部位に、中和剤タンク211から中和剤を供給するための供給経路213の端部が接続されている。また、図2に示すラインミキサー203には、熱交換設備が備えられていてもよい。
【0060】
なお、上述の反応装置の説明では重合釜101が冷却手段として外部循環冷却装置(外部循環経路115および除熱装置117)を備える形態を例に挙げたが、この外部循環冷却装置に代えて、重合釜101は内部コイル冷却装置を冷却手段として備えていてもよい。ただし、内部コイルを利用すると、重合釜101の内部においてゲル状物が副生する可能性がある。よって、かような観点からは、内部コイル冷却装置を用いずに重合釜の温度を調整する形態がより好ましい。
【0061】
続いて、図1および図2に示す装置を用いて、上記の追加工程を行なう具体的な手法について説明する。なお、図1および図2に示す装置によってこれらの追加工程を行なうためには、重合釜101の内容物(反応液)を中和・希釈槽201へと移送する工程が必要である。移送工程の具体的な形態について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。反応工程において製造された重合体(水溶液)を、重合釜101から中和・希釈槽201へと移送することができるのであれば、いかなる形態であってもよい。移送には、移送手段としての反応液抜き出し経路123が用いられる。移送された重合体(水溶液)は、中和・希釈槽201において、後述する中和工程等の追加工程に供される。
【0062】
[熟成工程]
熟成工程は、反応系(反応液)をさらに加熱して重合反応を完結させるための工程である。この工程を図1や図2に示す中和・希釈槽201で行なってもよい。かような場合には、上述した反応工程の終了後、まず、反応系(反応液)を重合釜101から中和・希釈槽201へと移送する。そして、中和・希釈槽201の外周に周設された外部ジャケット113を用いて、反応系(反応液)を所定の時間、所望の温度に加熱すればよい。
【0063】
熟成時間は、通常1〜120分間であり、好ましくは5〜60分間であり、より好ましくは10〜30分間である。熟成時間が1分間以上であれば、熟成が十分になされ、原料化合物の残存やこれに伴う不純物の生成・性能低下などが防止されうる。一方、熟成時間が120分間以内であれば、重合体溶液の着色の虞が低減されうる。そのほか、重合完結後に徒に熟成時間を延長することは不経済である。
【0064】
また、熟成中は、上述した反応温度が適用される。したがって、ここでの温度も一定温度(好ましくは滴下終了時点での温度)で保持してもよいし、熟成中に経時的に温度を変化させてもよい。したがって、重合時間とは、総滴下時間+熟成時間をいい、最初の滴定開始時点から熟成終了時点までに要した時間を意味することとなる。
【0065】
[冷却工程]
冷却工程は、反応系(反応液)の温度を下げるための工程である。図1や図2に示す装置における中和・希釈槽201で冷却工程を行なうには、中和・希釈槽201の外周に周設された外部ジャケット113を用いて、反応系(反応液)を所望の温度まで冷却すればよい。冷却後の重合体の温度は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうるが、一例として、冷却後の重合体の温度は、好ましくは20〜99℃であり、より好ましくは30〜90℃であり、さらに好ましくは40〜80℃である。かような範囲内の値であれば、重合体を取り扱いやすいという利点がある。
【0066】
[中和工程]
中和工程は、反応系(反応液)の酸性側pHをアルカリ性側にシフトさせるための工程である。
【0067】
中和工程では、移送工程で移送された重合体を、中和・希釈槽201において中和する。具体的には、図1や図2に示す中和剤タンク211に貯蔵された中和剤を、供給経路213を介して中和・希釈槽201へと供給し、重合体と中和反応させればよい。上述した反応工程では、重合反応は、酸性条件下(好ましくは重合中の反応溶液の25℃でのpHが1〜6であり、重合中の中和度が1〜25モル%である)で行われるのが通常である。よって、本工程では、中和槽201へと移送された重合体(水溶液)に適当なアルカリ成分を適宜添加することによって、得られる親水性重合体の中和度(最終pH)を所定の範囲に設定する。
【0068】
重合体の最終pHは、その使用用途によって異なるため特に制限されず、極めて広範囲に設定可能である。例えば、得られた親水性重合体をセメント混和剤として利用するような場合では、最終pHは、好ましくは3〜12であり、より好ましくは4〜10であり、さらに好ましくは5〜8である。かような範囲内の値とすることで、重合体の安定性が優れ、製造設備に腐食を与えないという利点が得られる。
【0069】
中和工程で用いられうるアルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カ
リウムなどのアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのア
ルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、
トリエタノールアミンなどの有機アミン類で代表されるようなものが挙げられる。上記ア
ルカリ成分は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
中和剤の供給形態は、特に制限されないが、局所的に急激に大量の中和熱が発生するのを防止する観点からは、適当な溶媒に溶解して中和剤溶液の形態で供給することが好ましい。ただし、中和剤のみの形態(すなわち、無溶媒の形態)で供給してもよい。中和剤溶液として用いる場合の溶液濃度は、使用目的に応じて適宜決定され、特に制限されない。
【0071】
中和剤の供給方法もまた、特に限定されないが、中和反応器内に中和剤の供給経路を通じて供給、好ましくは先端ノズル部より連続的に滴下する方法が好ましい。また、中和剤成分が2種以上の場合には、別々の供給経路を通じてそれぞれの中和剤成分を供給するのが好ましい。ただし、別々の供給経路を途中で合流させ、各中和剤成分を混合して反応器内に供給するようにしてもよいし、供給元の貯蔵タンク内で予め各中和剤成分を混合して1つの供給経路を通じて供給するようにしてもよい。中和剤の供給速度は使用目的に応じて適宜決定され、特に制限されない。
【0072】
中和剤を供給して反応液の中和度の調整を行う間、反応器内の反応液の温度は、適宜最適な反応液温度を決定すればよく、特に制限されない。反応液の温度を決定する際には、発生する中和熱の除熱が充分になされ、反応液の大量の蒸発や反応液への気泡の混入を回避できるように決定すればよい。
【0073】
[加水工程]
加水工程は、中和工程前または後の反応系(反応液)の溶質濃度を調整する目的で水を添加する工程である。
【0074】
加水工程では、中和・希釈槽201に水を供給して、反応系(反応液)と混合することでこれを希釈する。これが達成されるのであればその具体的な形態について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、図示しないが、中和剤と同様に水タンクから供給経路を介して中和・希釈槽201へ水を供給すればよい。場合によっては、希釈用の水の量も考慮して中和剤を予め薄めに調製しておき、これを中和・希釈槽201に供給してもよい。この場合には、中和工程と加水工程とが同時に行なわれることになる。
【0075】
加水工程において添加する水の量について特に制限はなく、最終的に得られる重合体水溶液の所望の濃度を考慮して、適宜決定すればよい。
【0076】
本発明の製造方法においては、上述した追加工程(熟成工程、冷却工程、中和工程、および加水工程)のうち、少なくとも1つが必須に行なわれる。そして、行なわれる追加工程のうち少なくとも1つが、中和・希釈槽201のような反応器(重合釜101)とは異なる工程で行なわれればよい。なかでも、中和・希釈槽201のような追加装置において、冷却工程が行なわれることが、1つの好ましい実施形態である。他の好ましい実施形態としては、中和工程が中和・希釈槽201のような追加装置において行なわれる。また、さらに他の実施形態では、追加装置において、冷却工程、中和工程、および加水工程が行なわれる。
【0077】
なお、図1および図2に示す形態においては、追加装置としての中和・希釈槽201が1つだけ重合釜101の後段に配置されているが、場合によっては、複数の追加装置が用いられてもよい。かような形態としては、例えば、追加工程のそれぞれに対応した追加装置が用いられうる。具体的には、熟成工程用の追加装置、冷却工程用の追加装置、中和工程用の追加装置、加水工程用の追加装置がこの順に、重合釜101の後段に直列に配置される形態が例示される。なお、場合によっては、これらのいくつかが結合されてもよい。例えば、中和工程用と加水工程用の追加装置を結合させて、これらの工程については1つの追加装置において行なうこととしてもよい。このように、追加工程に対応した追加装置を用いることとすれば、各工程・各装置における操作は回分式であっても、実質的には連続的に親水性重合体を製造しているように装置系全体を構成することが可能となり、系全体の生産性を向上させることも可能となるため、好ましい。
【0078】
本発明者らの検討によれば、本発明のような構成とすることで、得られる親水性重合体をセメント混和剤として用いたときに、各種性能に優れることが判明した。上述したように、従来技術においては、冷却や中和、加水などの工程を反応器(重合釜)において連続して行なうのが一般的であった。これは、別途の装置を必要としないなどの経済的な理由もあるが、何よりも、別途の装置を設けたところでさして得られる重合体のセメント混和剤としての性能に大差はないであろうという予測が当業者においてなされていたことの証左である。かような当業者間における常識に反して、あえて経済的コストを犠牲にしてでも別途の装置を設け、そこで追加工程を行なうことでセメント混和剤としての性能に優れる親水性重合体の製造を可能にした本願発明は、従来の技術に比して進歩性を有するものである。
【0079】
[親水性重合体の用途]
本発明の製造方法により製造される親水性重合体は、セメント混和剤として用いられうる。
【0080】
本発明のセメント混和剤は、本発明の製造方法により製造される親水性重合体を必須成分として含むものであるが、上述した製造方法により得られた水溶液の形態でそのままセメント混和剤の主成分として使用してもよいし、乾燥させて粉体化して使用してもよい。
【0081】
本発明のセメント混和剤は、各種水硬性材料、すなわちセメントや石膏等のセメント組成物やそれ以外の水硬性材料に用いることができる。このような水硬性材料と水と本発明のセメント混和剤とを含有し、さらに必要に応じて細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)を含む水硬性組成物の具体例としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等が挙げられる。
【0082】
上記水硬性組成物の中では、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物が最も一般的であり、該セメント組成物は、本発明のセメント混和剤、セメント及び水を必須成分として含んでなる。このようなセメント組成物は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0083】
上記セメント組成物において使用されるセメントとしては、特に限定はない。例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)等が挙げられ、さらに、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加してもよい。又、骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が使用可能である。
【0084】
上記セメント組成物においては、その1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比には特に制限はなく、単位水量100〜185kg/m、使用セメント量250〜800kg/m、水/セメント比(重量比)=0.1〜0.7、好ましくは単位水量120〜175kg/m、使用セメント量270〜800kg/m、水/セメント比(重量比)=0.2〜0.65が推奨され、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量が多く水/セメント比が小さい高強度コンクリート、水/セメント比(重量比)が0.3以下の低−水/セメント比領域にある超高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。上記セメント組成物における本発明のセメント混和剤の配合割合については、特に限定はないが、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、固形分換算で、親水性重合体がセメント重量の0.01〜5.0%、好ましくは0.02〜2.0%、より好ましくは0.05〜1.0%となる比率の量を添加すればよい。この添加により、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記配合割合が0.01%未満では、性能的に充分とはならない虞があり、逆に5.0%を超える多量を使用しても、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となる。
【0085】
上記セメント組成物は、ポンプ圧送性にも優れ、施工時の作業性を著しく改善し、高い流動性を有していることから、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり、さらに、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0086】
上記セメント組成物は、例えば、以下に記載するようなセメント分散剤を含有することができる。リグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;特開平1−113419号公報に記載のようなアミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系;特開平7−267705号公報に記載のような(a)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系化合物と(メタ)アクリル酸系化合物との共重合体および/またはその塩と、(b)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物と無水マレイン酸との共重合体および/もしくはその加水分解物、並びに/または、その塩と、(c)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物と、ポリアルキレングリコール系化合物のマレイン酸エステルとの共重合体及び/又はその塩とを含むセメント分散剤;特許第2508113号明細書に記載のようなA成分として、(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステルと(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体、B成分として、特定のポリエチレングリコールポリプロピレングリコール系化合物、C成分として、特定の界面活性剤からなるコンクリート混和剤。
【0087】
特開平1−226757号公報に記載のような(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、および、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体;特公平5−36377号公報に記載のような(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)もしくはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、並びに、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体;特開平4−149056号公報に記載のようなポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとマレイン酸(塩)との共重合体;特開平5−170501号公報に記載のような(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)、アルカンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、および、分子中にアミド基を有するα,β−不飽和単量体からなる共重合体;特開平5−43288号公報に記載のようなアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、もしくは、その加水分解物、または、その塩;特公昭58−38380号公報に記載のようなポリエチレングリコールモノアリルエーテル、マレイン酸、および、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体、もしくは、その塩、または、そのエステル。
【0088】
特公昭59−18338号公報に記載のようなポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、および、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体;特開昭62−119147号公報に記載のようなスルホン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび必要によりこれと共重合可能な単量体からなる共重合体、または、その塩;特開平6−271347号公報に記載のようなアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と、末端にアルケニル基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物;特開平6−298555号公報に記載のようなアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と、末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物。これらセメント分散剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
上記セメント分散剤を用いる場合には、本発明のセメント混和剤としての親水性重合体と上記セメント分散剤との比率、すなわち固形分換算での重量割合(重量%)としては、親水性重合体と上記セメント分散剤との性能バランスによって最適な比率は異なるが、1/99〜99/1が好ましく、5/95〜95/5がより好ましく、10/90〜90/10が最も好ましい。
【0090】
また、上記セメント組成物は、以下の(1)〜(20)に例示するような他の公知のセメント添加剤(材)を含有することができる。
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の多糖類のアルキル化またはヒドロキシアルキル化誘導体の一部または全部の水酸基の水素原子が、炭素数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基又はそれらの塩を部分構造として有するイオン性親水性置換基で置換されてなる多糖誘導体;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1,3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマーおよびその第4級化合物等。
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
(3)オキシカルボン酸もしくはその塩、糖および糖アルコールからなる群から選ばれる1種以上の硬化遅延剤:珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩またはホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和あるいは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステルまたはその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステルまたはその塩、タンパク質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有しても良い、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
(20)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
【0091】
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。これら公知のセメント添加剤(材)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
上記セメント組成物において、セメント及び水以外の成分についての特に好適な実施形態としては、次の(1)〜(4)が挙げられる。
【0093】
(1)(i)本発明のセメント混和剤、および、(ii)オキシアルキレン系消泡剤の2成分を必須とする組み合わせ。なお、(ii)のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、(i)のセメント混和剤中の共重合体(A)に対して0.001〜10重量%の範囲が好ましい。
【0094】
(2)(i)本発明のセメント混和剤、および、(ii)材料分離低減剤の2成分を必須とする組み合わせ。材料分離低減剤としては、非イオン性セルロースエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物等が使用可能である。なお、(i)のセメント混和剤中の親水性重合体と(ii)の材料分離低減剤との配合重量比としては、10/90〜99.99/0.01が好ましく、50/50〜99.9/0.1がより好ましい。この組み合わせのセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適である。
【0095】
(3)(i)本発明のセメント混和剤、及び、(ii)分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤の2成分を必須とする組み合わせ。スルホン酸系分散剤としては、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系の分散剤等が使用可能である。なお、(i)のセメント混和剤中の親水性重合体と(ii)の分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤との配合重量比としては、5/95〜95/5が好ましく、10/90〜90/10がより好ましい。
【0096】
(4)(i)本発明のセメント混和剤、および、(ii)リグニンスルホン酸塩の2成分を必須とする組み合わせ。なお、(i)のセメント混和剤中の親水性重合体と(ii)のリグニンスルホン酸塩との配合重量比としては、5/95〜95/5が好ましく、10/90〜90/10がより好ましい。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみには限定されない。また、特記しない限り、「%」は重量%を意味し、「部」は重量部を意味する。
【0098】
[測定条件]
下記の例において、製造された重合体の重量平均分子量、並びに各種生成物の生成量は、以下の条件・方法で測定した。
【0099】
<重量平均分子量測定条件>
機種;株式会社島津製作所製 LC Solution
検出器;Shodex製 RI−101
溶離液;種類 アセトニトリル/水=40/60体積% pH6.0
流量 0.8mL/min
カラム:種類 東ソー株式会社製
TSK-GEL GUARD COLUMN+G40000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
6.0×40mm(GUARD COLUMN)、その他 7.8×300mm
検量線;ポリエチレングリコール基準
<3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを付加した不飽和アルコールの定量条件>
機種;株式会社島津製作所製 LC Solution
検出器;株式会社島津製作所製 RID−10A
溶離液;種類 0.1体積%リン酸水溶液/アセトニトリル=50/50(体積%)
カラム:種類 東ソー株式会社製
ODS80Ts+ODS120T
各 4.6×250mm
検量線;外部標準法
<アクリル酸、メタクリル酸およびメトキシポリエチレングリコールメタクリレートの定量条件>
機種;株式会社島津製作所製 LC Solution
検出器;株式会社島津製作所製 SPD−10AVvp
溶離液;種類 0.1体積%リン酸水溶液/アセトニトリル=50/50(体積%)
カラム:種類 東ソー株式会社製
ODS80Ts+ODS120T
各 4.6×250mm
検量線;外部標準法
<製造例1>
温度計、攪拌機、生成水分離器および還流冷却管を備えたステンレス製反応容器にメトキシポリ(n=23)エチレングリコール10000部、フェノチアジン5部、メタクリル酸3300部、パラトルエンスルホン酸一水和物400部、およびシクロヘキサン650部を仕込み、エステル化反応中、生成水分離器および還流冷却管からなる循環系から反応容器に戻される経路上に流量計を設けて、還流される溶剤の流量を計測し、溶剤循環速度が5サイクル/時間となるように、反応容器に取り付けられたジャケット温度を135℃に設定し、必要に応じて適宜微調節しながら、反応温度120℃でエステル化反応を行った。約20時間でエステル化率が99%に達したのを確認後、60℃に降温後、49%水酸化ナトリウム水溶液200部と蒸留水3000部を加えてパラトルエンスルホン酸を中和したのち昇温し、シクロヘキサンを水との共沸で留去した。シクロヘキサン留去後、調整用の蒸留水およびメタクリル酸を添加して、単量体成分を80%含むエステル化物水溶液を得た。なお、当該エステル化物水溶液に含まれるエステル化物とメタクリル酸との重量比は79.1:20.9(エステル化物:メタクリル酸)であった。
【0100】
<製造例2>
温度計、攪拌機、生成水分離器および還流冷却管を備えたステンレス製反応容器にメトキシポリ(n=23)エチレングリコール10000部、フェノチアジン5部、メタクリル酸3000部、パラトルエンスルホン酸一水和物400部、およびシクロヘキサン650部を仕込み、エステル化反応中、生成水分離器および還流冷却管からなる循環系から反応容器に戻される経路上に流量計を設けて、還流される溶剤の流量を計測し、溶剤循環速度が5サイクル/時間となるように、反応容器に取り付けられたジャケット温度を135℃に設定し、必要に応じて適宜微調節しながら、反応温度120℃でエステル化反応を行った。約20時間でエステル化率が99%に達したのを確認後、60℃に降温後、49%水酸化ナトリウム水溶液200部と蒸留水3000部を加えてパラトルエンスルホン酸を中和したのち昇温し、シクロヘキサンを水との共沸で留去した。シクロヘキサン留去後、調整用の蒸留水およびメタクリル酸を添加して、単量体成分を80%含むエステル化物水溶液を得た。なお、当該エステル化物水溶液に含まれるエステル化物とメタクリル酸との重量比は80.0:19.2(エステル化物:メタクリル酸)であった。
【0101】
<製造例3>
温度計、攪拌機、生成水分離器および還流冷却管を備えたステンレス製反応容器にメトキシポリ(n=23)エチレングリコール10000部、フェノチアジン5部、メタクリル酸2700部、パラトルエンスルホン酸一水和物400部、およびシクロヘキサン650部を仕込み、エステル化反応中、生成水分離器および還流冷却管からなる循環系から反応容器に戻される経路上に流量計を設けて、還流される溶剤の流量を計測し、溶剤循環速度が5サイクル/時間となるように、反応容器に取り付けられたジャケット温度を135℃に設定し、必要に応じて適宜微調節しながら、反応温度120℃でエステル化反応を行った。約24時間でエステル化率が99%に達したのを確認後、60℃に降温後、49%水酸化ナトリウム水溶液200部と蒸留水3000部を加えてパラトルエンスルホン酸を中和したのち昇温し、シクロヘキサンを水との共沸で留去した。シクロヘキサン留去後、調整用の蒸留水およびメタクリル酸を添加して、単量体成分を80%含むエステル化物水溶液を得た。なお、当該エステル化物水溶液に含まれるエステル化物とメタクリル酸との重量比は82.5:17.5(エステル化物:メタクリル酸)であった。
【0102】
<実施例1>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水6250部を仕込み、85℃に昇温した。次に、上記反応器内に、製造例1で得られた80%エステル化物水溶液10000部に3−メルカプトプロピオン酸75部を溶解させた溶液を4時間かけてフィードすると同時に、10%過硫酸アンモニウム水溶液1000部を5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて85℃に温度を維持して重合反応を完結させた。重合終了後の反応液を中和・希釈槽に移送後、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液1250部と蒸留水3000部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量19,500の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(1)を得た。また、最終生成物中のメタクリル酸とメトキシポリエチレングリコールメタクリレートの残存量を液体クロマトグラフィー(LC)により測定し、重合率を求めたところ、該メタクリル酸の重合率は、99.6%、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートの重合率は99.6%であった。ゲルの生成量は0.1%であった。
【0103】
<実施例2>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水6250部を仕込み、85℃に昇温した。次に、上記反応器内に、製造例2で得られた80%エステル化物水溶液10000部に3−メルカプトプロピオン酸75部を溶解させた溶液を4時間かけてフィードすると同時に、10%過硫酸アンモニウム水溶液1000部を5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて85℃に温度を維持して重合反応を完結させた。重合終了後の反応液を中和・希釈槽に移送後、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液1250部と蒸留水3000部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量20,500の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(2)を得た。また、最終生成物中のメタクリル酸とメトキシポリエチレングリコールメタクリレートの残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該メタクリル酸の重合率は、99.4%、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートの重合率は99.5%であった。ゲルの生成量は0.1%未満であった。
【0104】
<実施例3>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水6250部を仕込み、85℃に昇温した。次に、上記反応器内に、製造例3で得られた80%エステル化物水溶液10000部に3−メルカプトプロピオン酸75部を溶解させた溶液を4時間かけてフィードすると同時に、10%過硫酸アンモニウム水溶液1000部を5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて85℃に温度を維持して重合反応を完結させた。重合終了後の反応液を中和・希釈槽に移送後、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液1250部と蒸留水3000部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量21,500の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(3)を得た。また、最終生成物中のメタクリル酸とメトキシポリエチレングリコールメタクリレートの残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該メタクリル酸の重合率は、99.6%、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートの重合率は99.7%であった。ゲルの生成量は0.1%未満であった。
【0105】
<実施例4>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水6250部を仕込み、85℃に昇温した。次に、上記反応器内に、製造例1で得られた80%エステル化物水溶液10000部に3−メルカプトプロピオン酸75部を溶解させた溶液を4時間かけてフィードすると同時に、10%過硫酸アンモニウム水溶液1000部を5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて85℃に温度を維持して重合反応を完結させ、ラインミキサーと熱交換設備をもちいて、温度を50℃に降温しながら49%水酸化ナトリウム水溶液1250部と蒸留水3000部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量19,400の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(4)を得た。また、最終生成物中のメタクリル酸とメトキシポリエチレングリコールメタクリレートの残存量を液体クロマトグラフィー(LC)により測定し、重合率を求めたところ、該メタクリル酸の重合率は、99.5%、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートの重合率は99.6%であった。ゲルの生成量は0.1%未満であった。
【0106】
<比較例1>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水5000部を仕込み、85℃に昇温した。次に、上記反応器内に、製造例1で得られた80%エステル化物水溶液8000部に3−メルカプトプロピオン酸60部を溶解させた溶液を4時間かけてフィードすると同時に、10%過硫酸アンモニウム水溶液800部を5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて85℃に温度を維持して重合反応を完結させ、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液1000部と蒸留水2400部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量20,000の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(14)を得た。また、最終生成物中のメタクリル酸とメトキシポリエチレングリコールメタクリレートの残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該メタクリル酸の重合率は、99.5%、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートの重合率は99.3%であった。ゲルの生成量は0.2%であった。
【0107】
<比較例2>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水5000部を仕込み、85℃に昇温した。次に、上記反応器内に、製造例2で得られた80%エステル化物水溶液8000部に3−メルカプトプロピオン酸60部を溶解させた溶液を4時間かけてフィードすると同時に、10%過硫酸アンモニウム水溶液800部を5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて85℃に温度を維持して重合反応を完結させ、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液1000部と蒸留水2400部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量20,700の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(15)を得た。また、最終生成物中のメタクリル酸とメトキシポリエチレングリコールメタクリレートの残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該メタクリル酸の重合率は、99.4%、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートの重合率は99.4%であった。ゲルの生成量は0.1%であった。
【0108】
<比較例3>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水5000部を仕込み、85℃に昇温した。次に、上記反応器内に、製造例3で得られた80%エステル化物水溶液8000部に3−メルカプトプロピオン酸60部を溶解させた溶液を4時間かけてフィードすると同時に、10%過硫酸アンモニウム水溶液800部を5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて85℃に温度を維持して重合反応を完結させ、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液1000部と蒸留水2400部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量21,900の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(16)を得た。また、最終生成物中のメタクリル酸とメトキシポリエチレングリコールメタクリレートの残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該メタクリル酸の重合率は、99.3%、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートの重合率は99.5%であった。ゲルの生成量は0.1%であった。
【0109】
<実施例5>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水4800部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール8000部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30%過酸化水素水溶液40部を添加し、アクリル酸1216部を3時間、4%−3−メルカプトプロピオン酸水溶液900部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液400部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、中和・希釈槽へ移送後、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液800部と蒸留水4800部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量34,000の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(5)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、93.2%、アクリル酸の重合率は98.8%であった。ゲルの生成量は0.2%であった。
【0110】
<実施例6>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水4800部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール8000部、アクリル酸16部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30% 過酸化水素水溶液40部を添加し、アクリル酸1200部を3時間、4% 3−メルカプトプロピオン酸水溶液920部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液400部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、中和・希釈槽へ移送後、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液800部と蒸留水4800部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量34,000の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(6)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、93.1%、アクリル酸の重合率は98.8%であった。ゲルの生成量は0.2%であった。
【0111】
<実施例7>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水4800部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール8000部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30% 過酸化水素水溶液40部を添加し、アクリル酸1116部を3時間、4% 3−メルカプトプロピオン酸水溶液920部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液400部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、中和・希釈槽へ移送後、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液800部と蒸留水4800部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量34,300の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(7)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、93.0%、アクリル酸の重合率は99.0%であった。ゲルの生成量は0.2%であった。
【0112】
<実施例8>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水4800部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール8000部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30% 過酸化水素水溶液40部を添加し、アクリル酸1016部を3時間、4%-3−メルカプトプロピオン酸水溶液920部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液400部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、中和・希釈槽へ移送後、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液800部と蒸留水4800部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量34,100の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(8)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、93.0%、アクリル酸の重合率は99.1%であった。ゲルの生成量は0.1%であった。
【0113】
<実施例9>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水4800部、2−メチル−2−プロペン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール8000部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30% 過酸化水素水溶液40部を添加し、アクリル酸1216部を3時間、4% 3−メルカプトプロピオン酸水溶液920部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液400部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、中和・希釈槽へ移送後、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液800部と蒸留水4800部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量32,900の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(9)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、93.3%、アクリル酸の重合率は99.2%であった。ゲルの生成量は0.1%であった。
【0114】
<実施例10>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水4800部、2−メチル−2−プロペン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール8000部、アクリル酸16部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30% 過酸化水素水溶液40部を添加し、アクリル酸1200部を3時間、4% 3−メルカプトプロピオン酸水溶液920部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液400部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、中和・希釈槽へ移送後、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液800部と蒸留水4800部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量32,700の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(10)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、93.5%、アクリル酸の重合率は99.0%であった。ゲルの生成量は0.1%であった。
【0115】
<実施例11>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水4000部、2−プロペン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール8000部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30% 過酸化水素水溶液40部を添加し、アクリル酸1216部を3時間、4% 3−メルカプトプロピオン酸水溶液920部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液400部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、中和・希釈槽へ移送後、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液800部と蒸留水4800部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量31,900の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(11)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、94.0%、アクリル酸の重合率は98.9%であった。ゲルの生成量は0.1%であった。
【0116】
<実施例12>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水4800部、2−プロペン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール8000部、アクリル酸16部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30% 過酸化水素水溶液40部を添加し、アクリル酸1200部を3時間、4% 3−メルカプトプロピオン酸水溶液920部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液400部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、中和・希釈槽へ移送後、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液800部と蒸留水4800部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量31,800の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(12)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量を液体クロマトグラフィー(LC)により測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、93.7%、アクリル酸の重合率は98.8%であった。ゲルの生成量は0.1%であった。
【0117】
<実施例13>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水4000部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール8000部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30% 過酸化水素水溶液40部を添加し、アクリル酸1216部を3時間、4% 3−メルカプトプロピオン酸水溶液920部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液400部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、ラインミキサーと熱交換設備をもちいて、温度を50℃に降温しながら49%水酸化ナトリウム水溶液800部と蒸留水4800部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量34,200の重合体水溶液からなるセメント混和剤用共重合体(13)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、93.1%、アクリル酸の重合率は98.9%であった。ゲルの生成量は0.2%であった。
【0118】
<比較例4>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水3600部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール6000部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30% 過酸化水素水溶液30部を添加し、アクリル酸912部を3時間、4% 3−メルカプトプロピオン酸水溶690部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液300部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液600部と蒸留水3600部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量33,500の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(17)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、92.4%、アクリル酸の重合率は98.6%であった。ゲルの生成量は0.3%であった。
【0119】
<比較例5>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水3600部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール6000部、アクリル酸12部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30% 過酸化水素水溶液30部を添加し、アクリル酸900部を3時間、4% 3−メルカプトプロピオン酸水溶690部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液300部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液600部と蒸留水3600部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量33,200の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(18)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、92.2%、アクリル酸の重合率は98.7%であった。ゲルの生成量は0.3%であった。
【0120】
<比較例6>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水3600部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール6000部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30% 過酸化水素水溶液30部を添加し、アクリル酸837部を3時間、4% 3−メルカプトプロピオン酸水溶690部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液300部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液600部と蒸留水3600部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量34,200の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(19)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、92.6%、アクリル酸の重合率は98.8%であった。ゲルの生成量は0.3%であった。
【0121】
<比較例7>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水3600部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール6000部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30% 過酸化水素水溶液30部を添加し、アクリル酸762部を3時間、4% 3−メルカプトプロピオン酸水溶690部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液300部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液600部と蒸留水3600部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量33,600の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(20)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、92.6%、アクリル酸の重合率は98.9%であった。ゲルの生成量は0.3%であった。
【0122】
<比較例8>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水3600部、2−メチル−2−プロペン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール6000部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30% 過酸化水素水溶液30部を添加し、アクリル酸912部を3時間、4% 3−メルカプトプロピオン酸水溶690部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液300部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液600部と蒸留水3600部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量32,600の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(21)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、93.2%、アクリル酸の重合率は98.8%であった。ゲルの生成量は0.2%であった。
【0123】
<比較例9>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水3600部、2−メチル−2−プロペン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール6000部、アクリル酸12部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30% 過酸化水素水溶液30部を添加し、アクリル酸900部を3時間、4% 3−メルカプトプロピオン酸水溶690部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液300部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液600部と蒸留水3600部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量33,000の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(22)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、92.4%、アクリル酸の重合率は98.6%であった。ゲルの生成量は0.2%であった。
【0124】
<比較例10>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水3600部、2−プロペン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール6000部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30% 過酸化水素水溶液30部を添加し、アクリル酸912部を3時間、4% 3−メルカプトプロピオン酸水溶690部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液300部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液600部と蒸留水3600部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量32,000の重合体水溶液からなる本発明のセメ和剤用共重合体(23)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、93.0%、アクリル酸の重合率は98.9%であった。ゲルの生成量は0.2%であった。
【0125】
<比較例11>
温度計、攪拌機、液フィード設備を備えたステンレス製反応容器に、蒸留水3600部、2−プロペン−1−オールにエチレンオキサイドを45モル付加した不飽和アルコール6000部、アクリル酸12部を仕込み、60℃に昇温したあと、そこへ30% 過酸化水素水溶液30部を添加し、アクリル酸900部を3時間、4% 3−メルカプトプロピオン酸水溶690部を3.5時間、2% L−アスコルビン酸水溶液300部を3.5時間かけてフィードした。その後、60分間引き続いて60℃に温度を維持して重合反応を完結させ、温度を50℃に降温し49%水酸化ナトリウム水溶液600部と蒸留水3600部でpH4〜7になるように中和・希釈し、重量平均分子量32,100の重合体水溶液からなる本発明のセメント混和剤用共重合体(24)を得た。また、不飽和アルコールとアクリル酸の残存量をLCにより測定し、重合率を求めたところ、該不飽和アルコールの重合率は、93.2%、アクリル酸の重合率は98.5%であった。ゲルの生成量は0.2%であった。
【0126】
[重合体の評価]
<副生ゲル量の測定>
実施例1〜13および比較例1〜11で得られた重合体について、以下の手法により、副生ゲル量を測定した。具体的には、まず、サンプル1000gを200メッシュのフィルターを通して、ゲルをろ別した。ろ別後、フィルターにろ別したゲル物を回収し、重量測定を行なった。この結果を下記の表2に示す。
【0127】
<コンクリート試験>
また、実施例1〜13および比較例1〜11で得られた重合体を用いて、コンクリート試験を実施し、評価を行った。試験に用いたコンクリートの調合単位量を表1に示す。セメントは太平洋セメント株式会社製の普通ポルトランドセメントを用いた。骨材としては、石(粗骨材)は青梅産硬質砕石を、砂(細骨材)は君津産中目砂と掛川産山砂を1:1の割合で混合したものを用いた。
【0128】
細骨材の品質はFM値=2.64,吸水率=1.7,比重=2.55であった。
【0129】
表1に示す調合単位量で、JIS A1150に準じ、セメント混和剤は練り水にあらかじめ混合し、50Lパン型ミキサーに30Lのコンクリート材料を投入し、120秒間練り混ぜた。なお、コンクリート組成物中の気泡がコンクリート組成物の流動性に及ぼす影響を避けるために、市販のオキシアルキレン系消泡剤を用いて、空気量が2.0±0.5体積%となるように調整した。ここで、水/セメント比(重量比)=0.35、s/a=0.46であった。s/aとは細骨材率[細骨材/(細骨材+粗骨材)](容積比)を表す。
【0130】
【表1】

【0131】
<フロー値の測定>
セメント混和剤の添加量はセメントに対して0.16重量%に固定し、初期(混練直後)、30分後、60分後に、JIS A 1101に準じて、スランプフロー値(mm)を測定した。この結果を下記の表2に示す。なお、表2に示す「保持率」の値は、時間経過に伴うフロー値の、初期のフロー値を100(%)としたときの百分率の値である。例えば、30分後の保持率は、((30分後のフロー値)/(初期のフロー値))×100(%)で算出される。初期流動性は初期のフロー値が大きいものほど良好であり、保持性は保持率が高いものほど良好であることを意味する。
【0132】
<圧縮強度の測定>
コンクリート試験で得られた生コンクリートを用い、JIS A1132に準じて圧縮強度用供試体を作成し、所定の材齢期間(1日、7日、または28日)、水中養生を行った後、JIS B7733の6.(試験機の等級)に規定する圧縮強度測定装置で圧縮強度を測定した。なお、強度を表す単位は(N/mm)である。
【0133】
<凝結時間の測定>
コンクリート試験で得られた生コンクリートを用い、JIS A1147に準じて市販の自動凝結時間測定装置を用いて凝結時間を測定した。表2に示す「始発」とは凝結が開始した時点を意味し、「終結」とは凝結が完了した時点を意味する。
【0134】
【表2】

【0135】
表2に示す結果から、本発明によれば、従来技術と比較して、セメント混和剤における各種の性能をより一層改善しうる手段が提供されうることがわかる。
【符号の説明】
【0136】
101 重合釜、
111 撹拌機、
113 外部ジャケット、
115 外部循環経路、
117 除熱装置、
119、213 供給経路、
121 先端ノズル部、
123 反応液抜き出し経路、
201 中和・希釈槽、
203 ラインミキサー、
211 中和剤タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1:
【化1】

式中、
、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CHCOOH基であり(この際、pは、0〜2の整数である)、
Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基または有機アミン基である、
で表される不飽和酸系化合物と、下記化学式2:
【化2】

式中、
は、炭素原子数2〜8のアルケニル基であり、
Oは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基であり、
nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜500の数であり、
は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基である、
で表されるポリエーテル化合物とを反応器中で反応させてセメント混和剤用親水性重合体を得る反応工程を含む、セメント混和剤用親水性重合体の製造方法であって、
前記反応工程に加えて、熟成工程、冷却工程、中和工程、および加水工程からなる群から選択される少なくとも1つの追加工程をさらに含み、当該追加工程を前記反応器の後段に配置された前記反応器とは異なる追加装置において行なうことを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
前記追加装置が、熱交換器を備えた処理槽、またはラインミキサーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記追加装置において、冷却工程を行なう、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記追加装置において、中和工程を行なう、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記追加装置において、冷却工程、中和工程、および加水工程を行なう、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記追加装置を2つ以上直列に配置し、2以上の前記追加工程をそれぞれ異なる追加装置において行なう、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法により得られるセメント混和剤用親水性重合体を含む、セメント混和剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−213537(P2011−213537A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82887(P2010−82887)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】