説明

観察装置および観察方法

【課題】被観察物に応じた好適な検出が可能な観察を実現する。
【解決手段】入射した光を第1の参照光と第1の測定光とに分岐する第1の分岐手段3と、被観察物に対して第1の測定光を斜入射照明する第1の照明光学系と、斜入射照明された被観察物からの透過光と第1の参照光とを合成する第1の合成手段4と、第1の参照光と被観察物からの透過光との第1の干渉光を検出する第1の検出手段16とを備えた透過型観察装置と、入射した光を第2の参照光と第2の測定光とに分岐する第2の分岐手段4と、被観察物に第2の測定光を照明する第2の照明光学系と、第2の参照光と被観察物からの反射光とを合成する第2の合成手段4と、第2の参照光と被観察物からの反射光との第2の干渉光を検出する第2の検出手段16とを備えた反射型観察装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察装置および観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非破壊断層計測技術の1つに光コヒーレンストモグラフィー(OCT)がある(非特許文献1等を参照)。OCTは、波長幅の広い光をプローブとして用いることにより、被観察物の屈折率分布、分光情報、偏光情報等を計測することができる。そして、被観察物の3次元構造を、非染色・非侵襲で観察することができることが挙げられる。よって、OCTは、生体内細胞などに好適である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】E.A. Swanson, J.A. Izatt, M.R. Michael, D. Huang, C.P. Lin, J.S. Shuman, C.A. Puliafito, J.G. Fujimoto, 18 (21) 1864-1866, Optics Letters (1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、培養細胞や細胞内器官などにおいて、OCTを用い、非染色・非侵襲で被観察物の3次元構造を観察したいという要求もある。しかし、上述した培養細胞や細胞内器官などの被観察物は、サイズや形状が様々であり、また、OCT装置の分解能や特徴によっては、3次元構造をむらなく検出することができない場合が多い。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被観察物に応じた好適な検出が可能な観察装置および観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の観察装置の一態様は、入射した光を第1の参照光と第1の測定光とに分岐する第1の分岐手段と、被観察物に対して前記第1の測定光を斜入射照明する第1の照明光学系と、斜入射照明された前記被観察物からの透過光を観察する第1の観察光学系と、前記第1の測定光を基準とする前記第1の参照光を形成する第1の参照光学系と、前記第1の参照光と前記被観察物からの透過光とを合成する第1の合成手段と、前記第1の参照光と前記被観察物からの透過光との第1の干渉光を検出する第1の検出手段と、前記観察光学系の光軸方向に沿った前記被観察物の位置情報を取得する第1の位置情報取得手段とを備えた透過型観察装置と、入射した光を第2の参照光と第2の測定光とに分岐する第2の分岐手段と、前記被観察物に前記第2の測定光を照明する第2の照明光学系と、照明された前記被観察物からの反射光を観察する第2の観察光学系と、前記第2の測定光を基準とする前記第2の参照光を形成する第2の参照光学系と、前記第2の参照光と前記被観察物からの反射光とを合成する第2の合成手段と、前記第2の参照光と前記被観察物からの反射光との第2の干渉光を検出する第2の検出手段と、前記観察光学系の光軸方向に沿った前記被観察物の位置情報を取得する第2の位置情報取得手段とを備えた反射型観察装置とを備えるものである。
【0007】
なお、透過型観察装置と反射型観察装置とを切り替える切替手段とを備えても良い。
【0008】
また、前記第1の検出手段と前記第2の検出手段とが同一であっても良い。
【0009】
また、前記第1の照明光学系は、前記被観察物に対して斜入射する斜入射手段を備えても良い。
【0010】
また、前記第1の照明光学系、前記第2の照明光学系、前記第1の観察光学系、前記第2の観察光学系の少なくとも一つの光軸に直交した方向に前記第1の測定光または前記第2の測定光を走査する走査手段を備えても良い。
【0011】
また、前記第1の検出手段または前記第2の検出手段の少なくとも一つは、前記第1の干渉光または前記第2の干渉光を分光して検出するスペクトル検出器であっても良い。
【0012】
また、前記第1の参照光中または前記第1の測定光中に配置された1/2波長板または1/4波長板と、前記第1の分岐手段に所定の偏光の光を入射するための第1の偏光素子と、前記所定の偏光に基づいて決定する偏光方向を含む前記第1の干渉光の一部を透過する第2の偏光素子と、前記第1の偏光素子が透過させる偏光方向と前記第2の偏光素子が透過させる偏光方向とを同時に変化させる第1の制御手段とを備えても良い。
【0013】
また、前記第2の参照光中または前記第2の測定光中に配置された1/2波長板または1/4波長板と、前記第2の分岐手段に所定の偏光の光を入射するための第3の偏光素子と、前記所定の偏光に基づいて決定する偏光方向を含む前記第2の干渉光の一部を透過する第4の偏光素子と、前記第3の偏光素子が透過させる偏光方向と前記第4の偏光素子が透過させる偏光方向とを同時に変化させる第2の制御手段とを備えても良い。
【0014】
また、前記第2の偏光素子と前記第4の偏光素子とが同位置であっても良い。
【0015】
本発明の観察方法の一態様は、入射した光を第1の参照光と第1の測定光とに分岐し、被観察物に対して前記第1の測定光を斜入射照明し、斜入射照明された前記被観察物からの透過光を観察し、前記第1の測定光を基準とする前記第1の参照光を形成し、前記第1の参照光と前記被観察物からの透過光とを合成した干渉光を検出し、前記観察光学系の光軸方向に沿った前記被観察物の位置情報を取得する透過型観察方法と、入射した光を第2の参照光と第2の測定光とに分岐し、記被観察物に前記第2の測定光を照明し、照明された前記被観察物からの反射光を観察し、前記第2の測定光を基準とする前期第2の参照光を形成し、前記第2の参照光と前記被観察物からの反射光とを合成した干渉光を検出し、前記観察光学系の光軸方向に沿った前記被観察物の位置情報を取得する反射型観察方法とを有し、前記透過型観察方法と前記反射型観察方法とを切り替えて観察することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被観察物に応じた好適な検出が可能な観察装置および観察方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態のOCT装置の構成図である。
【図2】第1実施形態のOCT装置における輪帯マスク22について説明する図である。
【図3】第1実施形態のOCT装置における光路を説明する図である。
【図4】第1実施形態のOCT装置におけるアパーチャー13について説明する図である。
【図5】第2実施形態のOCT装置の構成図である。
【図6】第2実施形態のOCT装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施形態のOCT装置を説明する。
【0019】
図1は、第1実施形態のOCT装置の構成図である。図1に示すとおりOCT装置には、光源1、コリメートレンズ2、ビームスプリッタ3および4、ビームエキスパンダ21、全反射ミラー7および8、輪帯マスク22、対物レンズ9および10、サンプル11、サンプルステージ12、アパーチャー13、分散補正用光学部材14、シリンドリカルレンズ15、スペクトル検出器16、制御装置17、演算装置18等が配置される。制御装置17は、光源1、対物レンズ9、サンプルステージ12、スペクトル検出器16、輪帯マスク22の各部を制御するとともに、スペクトル検出器16により取得したスペクトル信号を演算装置18に送出する。
【0020】
サンプル11には、例えば、不図示の容器等に被観察物である培養細胞などが培養されている。なお、上述した容器としては、シャーレ、フラスコ、ウェルプレート、マイクロプレートなど、様々なものが使用できる。また、容器の代わりにスライドガラスを使用することもできる。
【0021】
また、サンプル11は、サンプルステージ12上に設置される。サンプルステージ12は、対物レンズ9および10の光軸方向に垂直な面(xy面)内に移動可能であり、OCT装置による検出時にxy方向への走査を行う(詳細は後述する)。
【0022】
光源1は、時間コヒーレントの短い光を同時に出射する白色光源であり、例えば、スーパールミネッセンスダイオード(SLD)、チタンサファイアレーザ、白色LEDなどが適用される。
【0023】
光源1から射出した照明光L0は、コリメートレンズ2により所定のビーム径にコリメートされ、ビームスプリッタ3へ入射する。ビームスプリッタ3へ入射した照明光L0は、分散補正用光学部材14の側へ向かう参照光Lrと、サンプル11の側へ向かう測定光Lmとに分岐される。
【0024】
参照光Lrは、分散補正用光学部材14、全反射ミラー8を介してビームスプリッタ4へ入射する。
【0025】
ここで、分散補正用光学部材14は、主にOCT装置における干渉計のバランスを保つための素子である。ここでいう干渉計のバランスとは、干渉計の、試料アームおよび参照アームの波長分散のバランスを指す。このバランスは、対物レンズなどの光学材料、および、サンプルに含まれる媒質(培養液など)に起因して崩れることがある。
【0026】
そこで、分散補正用光学部材14は、対物レンズなどの光学材料に起因するバランスの崩れを補正するための部材と、サンプルに含まれる媒質に起因するバランスの崩れを補正するための部材とを備える。上述した光学材料に起因するバランスの崩れを補正するための部材は、試料アームに配置される各光学部材に応じた補正量を有する。また、上述した媒質に起因するバランスの崩れを補正するための部材は、媒質の種類や量などに応じて補正量が可変な部材であることが好ましい。一例としては、光学材料に起因するバランスの崩れを補正するための部材としては、ガラスブロックなどが用いられる。また、媒質に起因するバランスの崩れを補正するための部材としては、AOPDF(Acousto-Optic programmable dispersive filter)や挿入変化可能なプリズム対などが用いられる。また、補正量や補正内容を計算処理によって補正可能な場合は、分散補正用光学部材14を演算処理で代用しても良い。
【0027】
参照光Lrは、このような分散補正用光学部材14によって、試料アームとバランスの取れた分散を持つように調整される。なお、分散補正用光学部材14を経た参照光Lrを、以下では参照光Lr’と称する。
【0028】
一方、測定光Lmは、ビームエキスパンダ21へ入射して、所定のビーム径にコリメートされる。なお、光源1から射出された光のビーム径が十分に広い場合には、ビームエキスパンダ21を用いなくても良い。そして、全反射ミラー7を経た測定光Lmは、輪帯マスク22に導光される。測定光Lmは、輪帯マスク22によって環状に形成され、環状に形成された測定光Lm’は、対物レンズ9によってサンプル11に照射される。なお、この環状の照明は、サンプル11に対して測定光を斜入射する(詳細は後述する)。
【0029】
ここで、輪帯マスク22とは、対物レンズ9の瞳位置(サンプル11と反対側の瞳位置)に配置され、ビームスプリッタ3から導光され、ビームエキスパンダ21によりビーム径が変換された測定光Lmの一部を遮光する。なお、サンプル11に対して幅を持つ光束を斜入射可能に形成する素子であれば、他の部材を用いて良い。例えば、凸型のアキシコンレンズと凹型のアキシコンレンズとを組み合わせたズームレンズなどを用いても良い。輪帯マスク22は、図2に示すように、環状の開口を有するマスクであり、その輪帯直径はdである。開口の帯幅と、輪帯マスク22から対物レンズ9の瞳位置までの距離との兼ね合いにより、対物レンズ9の瞳位置に帯幅ρの輪帯パターンが形成される。このとき、焦点深度について次式の関係が成り立つ。
【0030】
焦点深度=2ρf/D〜ρ/NA ・・・(式1)
式1において、fは対物レンズ9の焦点距離を示し、NAは対物レンズの有効NAを示す。さらに、輪帯マスク22は、制御装置17による制御に応じて、輪帯直径D、および、開口の帯の幅ρを変更可能である(詳細は後述する)。
【0031】
輪帯マスク22により環状に形成された測定光(以下、測定光Lm’と称する)は、対物レンズ9に導光される。
【0032】
測定光Lm’は、対物レンズ9により集光され、サンプル11の深部の1点(集光点)に向かって照射される。なお、サンプル11と対物レンズ9とのz方向の相対位置は、対物レンズ11の焦点面がサンプル11中の被観察物(培養細胞など)の存在領域に掛かるよう予め調整されている。
【0033】
サンプル11のうち測定光Lm’の照射領域(以下、「照射スポット」と称す。)では、様々な角度の回折光が発生する可能性がある。それらの回折光のうち、集光点へ向かった測定光Lm’と同じ方向へ進行する光は、アパーチャー13を介して対物レンズ10によって捉えられる。
【0034】
なお、対物レンズ10の仕様は、上述した対物レンズ9の仕様と同じであり、対物レンズ10の配置先は、サンプル11を挟み対物レンズ9に対向する位置である。また、対物レンズ10の焦点面は対物レンズ9の焦点面に一致し、かつ対物レンズ10の焦点は対物レンズ9の焦点に一致している。
【0035】
さらに、対物レンズ9は、制御装置17による制御または対物レンズ9が設置されたレボルバ等を配置することで開口数NAが可変となる。
【0036】
以下、照射スポットから対物レンズ10の側へ向かった透過光のうち、対物レンズ10によって捉えられた光を「測定光Lm”」と称す。この測定光Lm”は、対物レンズ10を通過した後、ビームスプリッタ4へ入射する。
【0037】
ここで、光源1から射出した照明光L0から、ビームスプリッタ4へ入射する測定光Lm”までの詳細を、図3を用いて説明する。
【0038】
図3は、光源1から射出した照明光L0から、ビームスプリッタ4へ入射する測定光Lm”までの光路図である。図3に示すように、光源1から射出した照明光L0は、コリメートレンズ2により所定のビーム径にコリメートされる。そして、測定光Lmは、ビームエキスパンダ21によって所定のビーム径に変換される。さらに、全反射ミラー7を経た測定光Lmは、輪帯マスク22に導光される。測定光Lmは、輪帯マスク22によって環状に形成され、環状に形成された測定光Lm’は、対物レンズ9によってサンプル11に照射される。このとき、測定光Lm’は、サンプル11に対して斜入射される。サンプル11においては、サンプル11の被観察物の内容に応じて、回折光が生じる。この回折光のうち、サンプル11を透過する成分を、対物レンズ10によりとらえる。ただし、この際に、アパーチャー13は、透過光の一部(0次の回折光成分)を遮断する。アパーチャー13は、図3に示すように、サンプル12と対物レンズ10との間に配置され、サンプル12を透過した測定光のうち、サンプル12による散乱成分を主に取り出すための絞りである。
【0039】
図4に、アパーチャー13近傍の拡大図を示す。図4に示すように、アパーチャー13は、所定の口径を有し、サンプル11を透過した回折光のうち、中央近傍の回折光(図3中斜線部分)のみを透過し、それ以外の光を遮断する。
【0040】
そして、ビームスプリッタ4に入射した測定光Lm”は、参照アーム側からビームスプリッタ4へ入射した参照光Lr’と光路を合成され、シリンドリカルレンズ15の側へ向かう。なお、合成された参照光Lr’と測定光Lm”とを纏めて「合成光」または「干渉光」と称す。シリンドリカルレンズ15の側へ向かった干渉光は、シリンドリカルレンズ15によってスペクトル検出器16の入射スリットに導光される。
【0041】
スペクトル検出器16には、図1に示すように、干渉光の集光点にスリット開口を配したスリット板16aと、スリット板16aを通過した干渉光を平行光に変換するコリメートミラー16bと、平行光となった干渉光を複数の波長成分に分離する反射型回折格子16cと、それらの波長成分を互いにずれた位置へ集光させる集光ミラー16dと、互いにずれた位置に集光する各波長成分の強度を個別に検出するラインセンサ16eとが備えられる。この構成により、スペクトル検出器16は、干渉光の波長成分毎の強度信号(すなわちスペクトル信号)を生成する。このスペクトル信号は、制御装置17へ送出される。
【0042】
ここで、前述したサンプルステージ12は、制御装置17の制御により、サンプル11をxy方向へ変位させることができる。よって、サンプルステージ12が駆動されると、サンプル11上の照射スポットがxy方向に移動する。
【0043】
よって、制御装置17は、サンプルステージ12を駆動することにより照射スポットでサンプル11上をxy方向にかけて二次元走査し、照射スポットが各xy位置にあるときにラインセンサ16eを駆動してスペクトル信号を取り込むことにより、各xy位置のスペクトル信号を取得する。これらのスペクトル信号は、演算装置18へ送出される。
【0044】
演算装置18は、各xy位置のスペクトル信号を個別にフーリエ変換することにより、各xy位置のz方向の構造情報を取得する。これによって、xyz方向の三次元画像情報が既知となる(詳細は後述する)。演算装置18は、既知となったサンプル11における構造情報を不図示のモニタに表示する。
【0045】
制御装置17は、上述したOCT装置の対物レンズ9を保持するレボルバおよび輪帯マスク22を、サンプル11に応じて、連動して制御することにより、OCTにおけるz分解能を制御する。このような制御は、サンプル11に含まれる被観察物のサイズや形状に応じて、最適な分解能で検出を行うためである。
【0046】
本実施形態でのz分解能は、コヒーレンス長だけでなく、対物レンズ9の開口数NAににも依存する。深さ方向(z方向)に距離L1だけ離れて位置する2つの構造が、干渉計測を行うと(1−cosθ)倍に縮まって計測されることが知られている。
【0047】
他方、通常の反射型の構成のOCTにおいて、z方向の距離がL1だけ離れて存在する構造の光路長差は、2*L1となることが知られている。そのため、上述した透過型、かつ、斜入射による照明場合のz分解能は、通常の反射型の構成のOCTにおけるz分解能の2/(1−cosθ)倍となる。
【0048】
また、対物レンズ9の開口数NAは次式で表すことができる。
【0049】
NA=sinθ=d/2f ・・・(式2)
式2において、dは、対物レンズ9の有効瞳系を示し、fは、対物レンズ9の焦点距離を示す。
【0050】
上記式2により、対物レンズ9の開口数NAは対物レンズの有効瞳系dおよび焦点距離fに依存することがわかる。また、式1より、対物レンズ9の開口数NAを制御することができれば、焦点深度も制御することがわかる。焦点深度とz分解能はトレードオフの関係のため、焦点深度を浅くすれば、z分解能を高くすることができる。
ここで、開口数NAは対物レンズ9に固有の値である。そのため、対物レンズ9自体の有効瞳径dおよび焦点距離fも固有の値である。有効瞳径を変えるには、上限をdとして有効瞳径を絞りなどで小さく絞ることが考えられる。有効瞳径を大きくするほどz分解能を高くすることができる。焦点深度を深くとり、対物レンズ9の有効瞳径dをフルに生かすためには、同程度の直径を持つ絞りを用いればよい。
【0051】
また、式1より輪帯マスク22によって形成される輪体の帯幅もz分解能に寄与することがわかる。帯幅ρが狭いほど焦点深度が浅くz分解能が高くなる。そのため、輪帯マスク22が瞳上に形成する輪帯の外直径の上限をdとして輪帯の大きさを可変にすることでz分解能を制御することができる。
【0052】
さらに、被観察物のサイズや形状に応じて、最適な分解能で検出を行うためには、被観察物に応じて、対物レンズ9の有効瞳系dと輪帯マスク22の輪帯直径Dとを最適化すれば良い。なお、この制御によって、対物レンズ9の焦点深度も最適化することが可能である。
【0053】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態のOCT装置を説明する。
【0054】
図5は、第2実施形態のOCT装置の構成図である。図5において図1に示した要素と同じものには同一の符号を付した。図5に示すとおり本実施形態のOCT装置は、第1実施形態で説明した透過型のOCT装置と反射型のOCT装置との両方の構成を併せ持つOCT装置である。
【0055】
図5に示すとおり本実施形態のOCT装置には、図1に示した各構成に加えて、フリッパーミラー51、全反射ミラー52および53、分散補正用光学部材54、平面ミラー(参照ミラー)55が配置される。
【0056】
フリッパーミラー51は、コリメートレンズ2とビームスプリッタ3との間に配置され、コリメートレンズ2を透過した照明光L0を、ビームスプリッタ3と、全反射ミラー52とのいずれかに導光する。全反射ミラー52および53は、フリッパーミラー51により導光された照明光L0を、ビームスプリッタ4に導光する。
【0057】
分散補正用光学部材54は、反射型のOCT用の分散補正用光学部材であり、その構成は、第1実施形態で説明した分散補正用光学部材14と同様である。また、平面ミラー(参照ミラー)55は、反射型のOCT時に用いられるミラーであり、第2実施形態で説明した参照ミラー41と同様のミラーである。なお、分散補正用光学部材54および参照ミラー55は、光路に対して挿脱可能である(詳細は後述する)。
【0058】
なお、図5においては、制御装置17および演算装置18の図示、および、制御系の矢印の図示を省略した。制御装置17は、光源1、対物レンズ9、サンプルステージ12、スペクトル検出器16、輪帯マスク22の各部を制御するとともに、フリッパーミラー51、分散補正用光学部材54、参照ミラー55の各部を連動して制御する。また、制御装置17は、第1実施形態と同様に、スペクトル検出器16により取得したスペクトル信号を演算装置18に送出する。
【0059】
ここで、透過型のOCT装置と反射型のOCT装置との特徴の違いについて説明する。図6Aは、透過型のOCT装置により、被観察物(細胞C)を観察する際の例であり、図6Bは、反射型のOCT装置により、被観察物(細胞C)を観察する際の例である。図6Aに示すように、透過型のOCT装置は、側壁(図6A中の点線で囲った部分)の観察に適している。一方、反射型のOCT装置は、水平面方向(図6B中の点線で囲った部分)の観察に適している。
【0060】
そこで、本実施形態のOCT装置は、透過型のOCT装置と反射型のOCT装置との両方の構成を併せ持つことにより、より被観察物に好適な検出を行う。
【0061】
まず、透過型のOCTについて説明する。制御装置17は、図6中のA1の枠内の各部を用いて透過型のOCTを実行する。制御装置17は、フリッパーミラー51をOFFにすることにより、コリメートレンズ2を透過した照明光L0を、ビームスプリッタ3に導光する。このとき、制御装置17は、分散補正用光学部材54および参照ミラー55を、光路から離脱した状態にする。ビームスプリッタ3に導光された照明光L0は、第1実施形態で説明したように、各部を経過し、スペクトル検出器16に到達する。各部における処理は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0062】
次に、反射型のOCTについて説明する。制御装置17は、図6中のA2の枠内の各部を用いて反射型のOCTを実行する。制御装置17は、フリッパーミラー51をONにすることにより、コリメートレンズ2を透過した照明光L0を、全反射ミラー52に導光する。このとき、制御装置17は、分散補正用光学部材54および参照ミラー55を、光路に挿入した状態にする。
【0063】
全反射ミラー52に導光された照明光L0は、全反射ミラー53を介してビームスプリッタ4に導光される。そして、光路に挿入された参照ミラー55の側へ向かう参照光Lrと、サンプル11の側へ向かう測定光Lmとに分岐される。
【0064】
参照光Lrは、分散補正用光学部材54を介して参照ミラー55へ正面から入射すると、参照ミラー55を反射して光路を折り返し、分散補正用光学部材54を介して再びビームスプリッタ4へ戻る。
【0065】
一方、測定光Lmは、(透過型のOCTの場合と反対側から)対物レンズ10へ入射すると、対物レンズ10の集光作用を受け、サンプル11の深部の1点(集光点)に向かって集光する。なお、サンプル11と対物レンズ10とのz方向の相対位置は、対物レンズ10の焦点面がサンプル11中の被観察物(培養細胞など)の存在領域に掛かるよう予め調整されている。また、このとき、制御装置17は、アパーチャー13を開放状態にする。
【0066】
サンプル11の照射スポットにおける反射光のうち、集光点へ向かった測定光Lmの光路を逆向きに辿る光は、対物レンズ10によって捉えられる。そして、対物レンズ10によって捉えられた測定光Lm’は、測定光Lmの光路を逆向きに辿り、ビームスプリッタ4へ入射する。
【0067】
ビームスプリッタ4へ入射した測定光Lm’は、ビームスプリッタ4へ戻った参照光Lr’と光路を合成させ、シリンドリカルレンズ15の側へ向かう。なお、ここで、参照光の単独光路の光路長(参照アームの光路長)と、測定光の単独光路の光路長(測定アームの光路長)とは、分散補正用光学部材54の作用により一致している。
【0068】
そして、シリンドリカルレンズ15の側へ向かった干渉光は、シリンドリカルレンズ15によってスペクトル検出器16の入射スリットに導光される。スペクトル検出器16の構成および作用は、第1実施形態と同様である。
【0069】
制御装置17は、第1実施形態で説明した原理に従って、上述したOCT装置の対物レンズ9、輪帯マスク22、フリッパーミラー51、分散補正用光学部材54、参照ミラー55等の各部を、サンプル11に応じて、連動して制御することにより、OCTにおけるz分解能を制御する。このような制御により、サンプル11に含まれる被観察物に対して、様々な方向からの測定光を照射することが可能になり、三次元構造をむらなく捉えることが可能になる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、透過型と反射型の両方で干渉光の強度を検出可能なOCT装置において、検出手段による検出の内容に応じて、対物レンズの開口数の制御と、透過型と反射型の切り換え制御とを行う。したがって、より細やかに被観察物に応じた検出を可能とすることができる。特に、本実施形態によれば、透過型と反射型とを適宜切り換えてOCTを行うことにより、被観察物の全方位的な情報を得ることが期待できる。
【0071】
[第2実施形態の補足]
なお、第2実施形態のOCT装置において、反射型OCT次に対物レンズとして機能する対物レンズ10を、対物レンズ9と同様に、開口数NAが可変な対物レンズとすることにより、反射型OCTにおいてもz分解能を可変な構成としても良い。また、z分解能が可変な反射型OCT装置の構成と、分解能が不変の、通常の透過型OCT装置の構成との両方を併せ持つOCT装置も、本発明の具体的態様として有効である。
【0072】
[実施形態の変形例]
上述した第1実施形態および第2実施形態のOCT装置は、サンプルステージ12を移動することにより、サンプル11の側を変位させる方法(ステージスキャン型)を採用したが、照射スポットの側を変位させる方法(ビームスキャン型)を採用してもよい。また、2つの方法を選択的に利用しても良いし、組み合わせて利用しても良い。
【0073】
また、上述した各実施形態のOCT装置は、光源(白色光源)を使用して白色の干渉光を分光検出する方法(フーリエドメイン型)を採用したが、光源波長を走査して各波長の干渉光を時分割で検出する方法(波長スキャン型)を採用してもよい。
【0074】
因みに、フーリエドメイン型を採用した場合は、分光検出を行う必要が無いので、スペクトル検出器18の代わりに撮像素子を使用することで、サンプル11上のxy方向各位置の干渉光強度を一括に検出してもよい。
【0075】
また、上述した各実施形態のOCT装置は、光源(白色光源)を使用して干渉光を分光検出する方法(フーリエドメイン型)を採用したが、光源(白色光源)を使用し、かつ、測定光と参照光との光路長差を走査して白色の干渉光を走査位置毎に検出する方法(タイムドメイン型)を採用してもよい。
【0076】
因みに、タイムドメイン型を採用した場合は、分光検出を行う必要が無いので、スペクトル検出器18の代わりに撮像素子を使用することで、サンプル11上のxy方向各位置の干渉光強度を一括に検出してもよい。
【0077】
また、上述した各実施形態のOCT装置において、偏光成分を利用しても良い。例えば、検出手段へ向かう参照光の偏光方向と、被観察物へ向かう測定光の偏光方向との間に差異を設け、検出手段へ向かう測定光から、検出手段へ向かう参照光とは偏光方向の異なる成分を除去することにより、偏光成分を利用した検出を行うことができる。
【符号の説明】
【0078】
1…光源、3,4ビームスプリッタ、9,10…対物レンズ、11…サンプル、13…アパーチャー、14,54…分散補正用光学部材、16…スペクトル検出器、17…制御装置、18…演算装置、22…輪帯マスク、42…光スキャナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光を第1の参照光と第1の測定光とに分岐する第1の分岐手段と、
被観察物に対して前記第1の測定光を斜入射照明する第1の照明光学系と、
斜入射照明された前記被観察物からの透過光を観察する第1の観察光学系と、
前記第1の測定光を基準とする前記第1の参照光を形成する第1の参照光学系と、
前記第1の参照光と前記被観察物からの透過光とを合成する第1の合成手段と、
前記第1の参照光と前記被観察物からの透過光との第1の干渉光を検出する第1の検出手段と、
前記観察光学系の光軸方向に沿った前記被観察物の位置情報を取得する第1の位置情報取得手段とを備えた透過型観察装置と、
入射した光を第2の参照光と第2の測定光とに分岐する第2の分岐手段と、
前記被観察物に前記第2の測定光を照明する第2の照明光学系と、
照明された前記被観察物からの反射光を観察する第2の観察光学系と、
前記第2の測定光を基準とする前記第2の参照光を形成する第2の参照光学系と、
前記第2の参照光と前記被観察物からの反射光とを合成する第2の合成手段と、
前記第2の参照光と前記被観察物からの反射光との第2の干渉光を検出する第2の検出手段と、
前記観察光学系の光軸方向に沿った前記被観察物の位置情報を取得する第2の位置情報取得手段とを備えた反射型観察装置とを備える
ことを特徴とする観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載の観察装置において、
透過型観察装置と反射型観察装置とを切り替える切替手段とを備える
ことを特徴とする観察装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の観察装置において、
前記第1の検出手段と前記第2の検出手段とが同一である
ことを特徴とする観察装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3に記載の観察装置において、
前記第1の照明光学系は、前記被観察物に対して斜入射する斜入射手段を備える
ことを特徴とする観察装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の観察装置において、
前記第1の照明光学系、前記第2の照明光学系、前記第1の観察光学系、前記第2の観察光学系の少なくとも一つの光軸に直交した方向に前記第1の測定光または前記第2の測定光を走査する走査手段を備える
ことを特徴とする観察装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の観察装置において、
前記第1の検出手段または前記第2の検出手段の少なくとも一つは、
前記第1の干渉光または前記第2の干渉光を分光して検出するスペクトル検出器である
ことを特徴とする観察装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の観察装置において、
前記第1の参照光中または前記第1の測定光中に配置された1/2波長板または1/4波長板と、
前記第1の分岐手段に所定の偏光の光を入射するための第1の偏光素子と、
前記所定の偏光に基づいて決定する偏光方向を含む前記第1の干渉光の一部を透過する第2の偏光素子と、
前記第1の偏光素子が透過させる偏光方向と前記第2の偏光素子が透過させる偏光方向とを同時に変化させる第1の制御手段とを備える
ことを特徴とする観察装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の観察装置において、
前記第2の参照光中または前記第2の測定光中に配置された1/2波長板または1/4波長板と、
前記第2の分岐手段に所定の偏光の光を入射するための第3の偏光素子と、
前記所定の偏光に基づいて決定する偏光方向を含む前記第2の干渉光の一部を透過する第4の偏光素子と、
前記第3の偏光素子が透過させる偏光方向と前記第4の偏光素子が透過させる偏光方向とを同時に変化させる第2の制御手段とを備える
ことを特徴とする観察装置。
【請求項9】
請求項8に記載の観察装置において、
前記第2の偏光素子と前記第4の偏光素子とが同位置である
ことを特徴とする観察装置。
【請求項10】
入射した光を第1の参照光と第1の測定光とに分岐し、
被観察物に対して前記第1の測定光を斜入射照明し、
斜入射照明された前記被観察物からの透過光を観察し、
前記第1の測定光を基準とする前記第1の参照光を形成し、
前記第1の参照光と前記被観察物からの透過光とを合成した干渉光を検出し、
前記観察光学系の光軸方向に沿った前記被観察物の位置情報を取得する透過型観察方法と、
入射した光を第2の参照光と第2の測定光とに分岐し、
記被観察物に前記第2の測定光を照明し、
照明された前記被観察物からの反射光を観察し、
前記第2の測定光を基準とする前期第2の参照光を形成し、
前記第2の参照光と前記被観察物からの反射光とを合成した干渉光を検出し、
前記観察光学系の光軸方向に沿った前記被観察物の位置情報を取得する反射型観察方法とを有し、
前記透過型観察方法と前記反射型観察方法とを切り替えて観察することを特徴とする観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−202777(P2012−202777A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66700(P2011−66700)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】