説明

角線導体折曲治具

【課題】角線導体の折曲部分の幅が一対の側面の方向に広くなることを抑制し、角線導体に矯正加工等を行うことを不要にすることができる角線導体折曲治具を提供すること。
【解決手段】角線導体折曲治具1は、第1ガイド面21を設けた第1治具部2と、第2ガイド面51を設けた第2治具部5とを有している。第1治具部2には、角線導体8の内側面に対面する内側折曲凸部3と、角線導体8の外側面に対面する外側対向凸部4とが設けてある。第2治具部5は、折曲起点を形成する角部31を中心に第1治具部2に対して相対的に回動可能である。第2治具部5には、角線導体8の外側面に対面する外側折曲凸部6が設けてある。折曲を行う過程においては、第1ガイド面21が角線導体8の折曲部分の一側面を拘束し、第2ガイド面51が角線導体8の折曲部分の他側面を拘束する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属導体層の表面に絶縁被膜層を形成してなる断面略四角形状の角線導体を折り曲げる際に用いる角線導体折曲治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、3相回転電機のステータにおいては、周方向を一巡する波巻形状に形成した3相のコイルを、ステータコアにおける複数のスロットに分布巻き状態で配置することが行われている。波巻形状のコイルは、直線状の導体から折曲用の治具を用いて略90°に折り曲げて形成している。
例えば、図9に示すごとく、折曲起点を形成する軸部911を設けた一方の治具部91と、この一方の治具部91に対して上記軸部911を中心に回動する他方の治具部92とから構成した折曲用治具9を用いる。また、他方の治具部92には、軸部911に対向する側に折曲面921を形成している。そして、一方の治具部91と他方の治具部92とに跨って直線状の角線導体8を配置し、図10に示すごとく、一方の治具部91に対して他方の治具部92を軸部911を中心に回動させるとき、折曲面921によって角線導体8をガイドして、軸部911を中心に略90°折り曲げている。
また、電線を略90°に折り曲げる電線ベンダーとしては、例えば、特許文献1、2に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−73758号公報
【特許文献2】特開2006−130550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の折曲用治具9を用いて角線導体8を折り曲げると、図10に示すごとく、折曲内側部分981は、圧縮荷重を受けることによって一対の側面983の幅が広くなる一方、折曲外側部分982は、引張荷重を受けることによって一対の側面983の幅が狭くなる。そして、角線導体8の折曲部分980は台形形状の断面に形成される。そのため、特に、折曲を行った角線導体8によって、ステータコアの軸方向外側で整列して配置するコイルエンド部(コイルの一部)を形成する際には、一対の側面983の幅が広くなった部分である折曲内側部分981が、他の角線導体8と干渉してコイルエンド部が大型化してしまうおそれがある。また、角線導体8をステータコアにおけるスロットに配置する際には、折曲内側部分981が、ステータコアにおけるスロットの縁部に干渉するおそれがあり、折曲内側部分981に矯正加工等を行い、折曲内側部分981の幅を小さくする必要があった。
なお、特許文献1、2の電線ベンダーにおいては、断面略円形状の丸線を折り曲げることを前提としているが、角線を折り曲げる際には上記と同様の問題が発生する。
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、角線導体の折曲部分の幅が一対の側面の方向に広くなることを抑制し、角線導体に矯正加工等を行うことを不要にすることができる角線導体折曲治具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属導体層の表面に絶縁被膜層を形成してなる断面略四角形状の角線導体を折り曲げる際に用いる治具であって、
上記角線導体の一側面に対面する第1ガイド面を設けた第1治具部と、上記角線導体の他側面に対面する第2ガイド面を設けた第2治具部とを有し、該第2治具部と上記第1治具部とを組み合わせた状態で、上記第1ガイド面と上記第2ガイド面との間に、当該第1治具部と当該第2治具部とが摺動可能な状態で上記角線導体を挟み込む折曲用スペースを形成してなり、
上記角線導体の折曲を行う際に、上記第1ガイド面が上記角線導体の折曲部分の一側面を拘束し、上記第2ガイド面が上記角線導体の折曲部分の他側面を拘束するよう構成したことを特徴とする角線導体折曲治具にある(請求項1)。
【0007】
本発明の角線導体折曲治具は、角線導体の折曲を行う過程において、角線導体における一対の側面を拘束することによって、折曲後の角線導体における一対の側面の幅が広くなることを効果的に抑制することができるものである。
本発明の角線導体折曲治具を用いて角線導体を折り曲げる際には、第1治具部における第1ガイド面と第2治具部における第2ガイド面との間に、直線状の角線導体を配置する。そして、第1治具部に対して第2治具部を相対的に摺動させて角線導体を折り曲げる。このとき、本発明の角線導体折曲治具においては、折曲を行う過程において、第1治具部における第1ガイド面が角線導体の折曲部分の一側面を拘束し、第2治具部における第2ガイド面が角線導体の折曲部分の他側面を拘束する。これにより、角線導体における折曲内側部分は、圧縮荷重を受けながらも、一対の側面の方向(一側面と他側面の方向)には幅が広くなることが抑制される。なお、角線導体の折曲部分の幅は、上記折曲用スペースの範囲内では広くなる。
【0008】
それ故、本発明の角線導体折曲治具によれば、角線導体の折曲部分の幅が一対の側面の方向に広くなることを抑制し、角線導体に矯正加工等を行うことを不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例における、第2治具部が原位置にある角線導体折曲治具を分解した状態で示す斜視図。
【図2】実施例における、第2治具部が原位置にある角線導体折曲治具の内部状態を示す平面説明図。
【図3】実施例における、第2治具部が原位置にある角線導体折曲治具を分解した状態で示す斜視図。
【図4】実施例における、第2治具部が原位置にある角線導体折曲治具の内部状態を示す平面説明図。
【図5】実施例における、第1治具部の第1ガイド面と第2治具部の第2ガイド面との間に配置した角線導体を拡大して示す断面図。
【図6】実施例における、角線導体の折曲部分を拡大して示す断面図。
【図7】実施例における、角線導体を用いたステータを示す斜視図。
【図8】実施例における、ステータコアに対して角線導体を用いた3相のコイルを挿入配置する状態を示す断面説明図。
【図9】従来例における、角線導体を折り曲げる前の折曲用治具を示す斜視図。
【図10】従来例における、角線導体を折り曲げた後の折曲用治具を示す斜視図。
【図11】従来例における、角線導体の折曲部分を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述した本発明の角線導体折曲治具における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記第1治具部には、上記折曲用スペースの幅の範囲内で上記第1ガイド面から突出して上記角線導体の内側面に対面する内側折曲凸部と、上記折曲用スペースの幅の範囲内で上記第1ガイド面から突出して上記角線導体の外側面に対面する外側対向凸部とが設けてあり、上記内側折曲凸部における角部は、上記角線導体を折り曲げる際の折曲起点を形成しており、上記第2治具部は、上記折曲起点を中心に上記第1治具部に対して相対的に回動可能であり、上記第2治具部には、上記折曲用スペースの幅の範囲内で上記第2ガイド面から突出して上記角線導体の外側面に対面する外側折曲凸部が設けてあり、該外側折曲凸部は、上記第1治具部に対して上記第2治具部を相対的に回動させるときに、上記角線導体の外側面に対面して、該角線導体を折り曲げるよう構成してあることが好ましい(請求項2)。
【0011】
この場合には、第1治具部における第1ガイド面と第2治具部における第2ガイド面との間に直線状の角線導体を配置したとき、第1治具部における内側折曲凸部は、直線状の角線導体の一側面に対面し、第1治具部における外側対向凸部及び第2治具部における外側折曲凸部は、直線状の角線導体の他側面に対面する。そして、第1治具部に対して第2治具部を相対的に回動させると、外側対向凸部によって荷重を受けながら、内側折曲凸部における角部を折曲起点として、外側折曲凸部が角線導体を折り曲げることができる。
【0012】
また、上記第2治具部は、上記内側折曲凸部における第1壁面と上記外側対向凸部における対向壁面及び上記外側折曲凸部における折曲壁面とが対向して、これらの間に導体配置隙間を形成する原位置と、上記第1壁面と上記対向壁面とが対向したままで、上記内側折曲凸部において上記第1壁面に対して所定の角度で隣接する第2壁面と上記折曲壁面とが対向して、上記角線導体を折り曲げた状態を形成する折曲位置とに、上記第1治具部に対して相対的に回動可能であることが好ましい(請求項3)。
この場合には、第1治具部に対して第2治具部を原位置から折曲位置に相対的に回動させることにより、角線導体を常に決まった角度に折り曲げることができる。
【0013】
また、上記内側折曲凸部は、上記第1治具部の上記第1ガイド面に対して着脱可能であることが好ましい(請求項4)。
角線導体の折曲内側部分の曲率半径は、内側折曲凸部における角部の曲率半径(R形状)によって決定される。そのため、内側折曲凸部を、第1治具部に対して取り替えることによって、角線導体の折曲を行う際の折曲内側部分の曲率半径を簡単に変更することができる。
【0014】
また、上記角線導体は、回転電機のステータに用いるマグネットワイヤであることが好ましい(請求項5)。
この場合には、折曲内側部分の幅が一対の側面の方向に広くなることが防止された角線導体を、マグネットワイヤとして、回転電機のステータに用いることにより、角線導体を、折曲部分に矯正加工等を行うことなくステータコアのスロットに配置することができる。
【実施例】
【0015】
以下に、本発明の角線導体折曲治具にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の角線導体折曲治具1は、図1に示すごとく、銅材料等からなる金属導体層の表面に樹脂等からなる絶縁被膜層を形成してなる断面略四角形状の角線導体8を折り曲げる際に用いるものである。
角線導体折曲治具1は、図2に示すごとく、角線導体8の一側面801に対面する第1ガイド面21を設けた第1治具部2と、角線導体8の他側面802に対面する第2ガイド面51を設けた第2治具部5とを有している。第2治具部5と第1治具部2とを組み合わせた状態においては、第1ガイド面21と第2ガイド面51との間には、図5、図6に示すごとく、第1治具部2と第2治具部5とが摺動可能な状態で角線導体8を挟み込む折曲用スペースSが形成されている。
【0016】
図1、図2に示すごとく、第1治具部2には、折曲用スペースSの幅の範囲内で第1ガイド面21から突出して角線導体8の内側面803に対面する内側折曲凸部3と、折曲用スペースSの幅の範囲内で第1ガイド面21から突出して角線導体8の外側面804に対面する外側対向凸部4とが設けてある。また、内側折曲凸部3における角部31は、角線導体8を折り曲げる際の折曲起点を形成する曲面形状に形成してある。
【0017】
第2治具部5は、折曲起点を形成する角部31を中心に第1治具部2に対して相対的に回動可能である。第2治具部5には、折曲用スペースSの幅の範囲内で第2ガイド面51から突出して角線導体8の外側面804に対面する外側折曲凸部6が設けてある。この外側折曲凸部6は、第1治具部2に対して第2治具部5を相対的に回動させるときに、角線導体8の外側面804に対面して、角線導体8を折り曲げるよう構成してある。
本例の角線導体折曲治具1は、図6に示すごとく、折曲を行う全過程において、第1ガイド面21が角線導体8の折曲部分の一側面801を拘束し、第2ガイド面51が角線導体8の折曲部分の他側面802を拘束するよう構成してある。
【0018】
以下に、本例の角線導体折曲治具1につき、図1〜図8を参照して詳説する。
図1に示すごとく、本例の第2治具部5は、円盤形状に形成されており、第1治具部2は、ベース部22に対して、円盤形状の第2治具部5を収容する収容壁部23を立設してなり、収容壁部23の内周側には、第2治具部5の外周面53を摺動させる摺動内周面231が形成されている。また、摺動内周面231に対する内周側には、第1ガイド面21から段差状に突出し、第2治具部5における第2ガイド面51を摺動させる段差面24が形成してある。第1治具部2は、収容壁部23に対して蓋部25を取り付けることによって形成される。
なお、図1、図3においては、角線導体折曲治具1の内部を示すため、分解した状態で示す。図3においては、蓋部25を省略して示す。
【0019】
図5に示すごとく、第2治具部5を第1治具部2における摺動内周面231に収容した状態においては、第1治具部2における第1ガイド面21と第2治具部5における第2ガイド面51とは互いに平行に配置される。
図1に示すごとく、角線導体折曲治具1は、第1治具部2における収容壁部23内に第2治具部5を収容すると共に、段差面24と蓋部25の表面との間に、第2治具部5を挟持し、収容壁部23に対して蓋部25を取り付けて構成されている。
【0020】
第1ガイド面21からの内側折曲凸部3及び外側対向凸部4の突出高さ(形成高さ)は、第1ガイド面21から段差面24までの突出高さよりも、クリアランスの形成分低くなっている(例えば、0.05〜0.2mm低くすることができる。)。
図5に示すごとく、第1ガイド面21と第2ガイド面51との間の折曲用スペースSは、第1ガイド面21からの内側折曲凸部3の突出高さと、第1治具部2と第2治具部5とを組み付けた際のクリアランス(段差面24と蓋部25との間に第2治具部5を挟み込んだときのクリアランス)とを合わせた幅として形成されている。
なお、第1治具部2を上記円盤形状に形成し、第2治具部5を、上記ベース部22、収容壁部23及び蓋部25から構成することもできる。
【0021】
図1に示すごとく、本例の内側折曲凸部3及び外側対向凸部4は、第1治具部2の第1ガイド面21に対して着脱可能である。また、本例の外側折曲凸部6は、第2治具部5の第2ガイド面51に対して着脱可能である。
図2に示すごとく、内側折曲凸部3は、折曲起点を形成する角部31を構成する互いに略垂直な壁面である第1壁面32と第2壁面33とを有している。第1壁面32及び第2壁面33は、いずれも平坦な面に形成してある。また、本例の外側対向凸部4は、内側折曲凸部3における第1壁面32と平行な対向壁面41を有している。また、本例の外側折曲凸部6は、角線導体8を配置する状態(後述する原位置501)において、内側折曲凸部3における第1壁面32と平行な折曲壁面61を有している。対向壁面41及び折曲壁面61は、いずれも平坦な面に形成してある。
【0022】
本例の角線導体折曲治具1は、角部31の曲率半径(R形状)の異なる内側折曲凸部3を複数準備し、適宜取り替えることにより、折曲加工する角線導体8(特に角線導体8の折曲内側部分81)を種々の曲率半径(曲げR)に折り曲げることができる。
また、複数種類の外側対向凸部4及び外側折曲凸部61を準備し、適宜取り替えることにより、内側折曲凸部3の第1壁面32と外側対向凸部4の対向壁面41との間の導体配置隙間Cを適宜変更することができる。これにより、種々の太さ(幅)の角線導体8の折曲を行うことができる。
【0023】
図1に示すごとく、第1治具部2の外周面及び第2治具部5の外周面には、それぞれ作業者が回動操作するためのハンドル234が設けてある。第1治具部2には、第2治具部5のハンドル52の干渉を避けるための切欠部232が形成されている。また、第1治具部2には、角線導体8を挿通配置するための挿通配置穴233も形成されている。図3に示すごとく、角線導体8は、切欠部232内を利用して、第2治具部5のハンドル52の回動方向と同じ方向に折り曲げられる。
なお、本例の第1治具部2においては、第2治具部5に対して外側折曲凸部6を着脱可能に取り付けるためのボルトの干渉を避けるため、このボルトの移動範囲に対応した逃がし穴221が形成してある。
【0024】
本例の第2治具部5は、図2に示すごとく、直線状の角線導体8を配置する導体配置隙間Cを形成する原位置501と、図4に示すごとく、この原位置501に対して略90°回動し、角線導体8を略90°折り曲げる折曲位置502とに回動可能である。図2に示すごとく、原位置501においては、内側折曲凸部3における第1壁面32と外側対向凸部4における対向壁面41とが対向すると共に、内側折曲凸部3における第1壁面32と外側折曲凸部6における折曲壁面61とが対向して、第1壁面32と対向壁面41及び折曲壁面61との間に導体配置隙間Cが形成される。図4に示すごとく、折曲位置502においては、内側折曲凸部3における第1壁面32と外側対向凸部4における対向壁面41とが対向したままで、内側折曲凸部3における第2壁面33と外側折曲凸部6における折曲壁面61とが対向して、角線導体8を折り曲げた状態を形成する。
【0025】
図7に示すごとく、本例の角線導体8は、3相回転電機のステータ7に用いるマグネットワイヤである。本例の角線導体折曲治具1によって折曲成形した角線導体8は、ステータコア71の周方向を一巡する波巻コイル72を構成し、3相の波巻コイル72としてステータコア71における複数のスロット711に分布して配置される。本例の3相のコイル72は、ステータコア71の軸方向端面の外方(スロット711の外部)に配置するコイルエンド部721が、ステータコア71の軸方向一方側L1においては径方向外周側に屈曲されている一方、ステータコア71の軸方向他方側L2においては径方向内周側に屈曲されている。
【0026】
そして、図8に示すごとく、ステータコア71を一方の治具75に配置し、3相のコイル72を保持治具76に配置して、ステータコア71の複数のスロット711に対しては、軸方向他方側L2のコイルエンド部721を先頭にして、スロット711の軸方向Lから挿入する。このとき、角線導体8における折曲内側部分81(折曲部分80の内周面803)の幅がほとんど広がっていないことにより、この部分がスロット711の縁部に干渉せず、円滑に上記挿入を行うことができる。
【0027】
次に、上記角線導体折曲治具1によって角線導体8を折り曲げる方法につき説明する。
作業者は、まず、図2に示すごとく、第1治具部2の内側折曲凸部3における第1壁面32と外側対向凸部4における対向壁面41との間に、直線状の角線導体8を配置する。次いで、第1治具部2における収容壁部23内に第2治具部5を配置し、第2治具部5における外側折曲凸部6を角線導体8に対面させ、第1壁面32と対向壁面41及び折曲壁面61との間に角線導体8を配置した導体配置隙間Cを形成する。そして、収容壁部23に対して蓋部25を取り付け、第1治具部2における第1ガイド面21と第2治具部5における第2ガイド面51との間に、角線導体8を配置した状態を形成する。
なお、角線導体8は、第1治具部2と第2治具部5とを組み合わせた状態の角線導体折曲治具1における切欠部232及び挿通配置穴233に対して挿通させて配置することもできる。
【0028】
次いで、作業者は、図4に示すごとく、第1治具部2におけるハンドル234と第2治具部5におけるハンドル52とを把持し、第1治具部2に対して第2治具部5を相対的に回動させる。このとき、外側折曲凸部6における折曲壁面61が角線導体8の外側面804に当接すると共に、内側折曲凸部3における角部31が角線導体8の内側面803に当接し、外側対向凸部4によって荷重を受けながら、角部31を折曲起点にして角線導体8が折り曲げられる。
【0029】
そして、本例の角線導体折曲治具1においては、折曲を行う全過程において、第1治具部2における第1ガイド面21が角線導体8の折曲部分の一側面801を拘束し、第2治具部5における第2ガイド面51が角線導体8の折曲部分の他側面802を拘束する。これにより、図6に示すごとく、角線導体8における折曲内側部分81(折曲部分80の内側面803)は、圧縮荷重を受けながらも、一対の側面の方向(一側面801と他側面802の方向)には幅が広くなることが抑制される。なお、角線導体8の折曲内側部分81の幅は、上記折曲用スペースSの範囲内では広くなる。
【0030】
そして、作業者が、第1治具部2に対して第2治具部5を折曲位置502まで相対的に回動させたときには、内側折曲凸部3における第1壁面32と外側対向凸部4における対向壁面41との間に、角線導体8が配置されたままで、内側折曲凸部3における第2壁面33と外側折曲凸部6における折曲壁面61との間に、角線導体8が配置されて、角線導体8が略90°に折り曲げられる。
【0031】
それ故、本例の角線導体折曲治具1によれば、角線導体8の折曲部分80の幅が一対の側面801、802の方向に広くなることを抑制し、角線導体8に矯正加工等を行うことを不要にすることができる。
なお、角線導体折曲治具1は、種々のアクチュエータの制御によって、第1治具部2に対して第2治具部5を相対的に回動させるよう構成することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 角線導体折曲治具
2 第1治具部
21 第1ガイド面
3 内側折曲凸部
31 角部
32 第1壁面
33 第2壁面
4 外側対向凸部
41 対向壁面
5 第2治具部
501 原位置
502 折曲位置
51 第2ガイド面
6 外側折曲凸部
61 折曲壁面
8 角線導体
80 折曲部分
81 折曲内側部分
801 一側面
802 他側面
803 内側面
804 外側面
S 折曲用スペース
C 導体配置隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属導体層の表面に絶縁被膜層を形成してなる断面略四角形状の角線導体を折り曲げる際に用いる治具であって、
上記角線導体の一側面に対面する第1ガイド面を設けた第1治具部と、上記角線導体の他側面に対面する第2ガイド面を設けた第2治具部とを有し、該第2治具部と上記第1治具部とを組み合わせた状態で、上記第1ガイド面と上記第2ガイド面との間に、当該第1治具部と当該第2治具部とが摺動可能な状態で上記角線導体を挟み込む折曲用スペースを形成してなり、
上記角線導体の折曲を行う際に、上記第1ガイド面が上記角線導体の折曲部分の一側面を拘束し、上記第2ガイド面が上記角線導体の折曲部分の他側面を拘束するよう構成したことを特徴とする角線導体折曲治具。
【請求項2】
請求項1において、上記第1治具部には、上記折曲用スペースの幅の範囲内で上記第1ガイド面から突出して上記角線導体の内側面に対面する内側折曲凸部と、上記折曲用スペースの幅の範囲内で上記第1ガイド面から突出して上記角線導体の外側面に対面する外側対向凸部とが設けてあり、上記内側折曲凸部における角部は、上記角線導体を折り曲げる際の折曲起点を形成しており、
上記第2治具部は、上記折曲起点を中心に上記第1治具部に対して相対的に回動可能であり、
上記第2治具部には、上記折曲用スペースの幅の範囲内で上記第2ガイド面から突出して上記角線導体の外側面に対面する外側折曲凸部が設けてあり、該外側折曲凸部は、上記第1治具部に対して上記第2治具部を相対的に回動させるときに、上記角線導体の外側面に対面して、該角線導体を折り曲げるよう構成してあることを特徴とする角線導体折曲治具。
【請求項3】
請求項2において、上記第2治具部は、上記内側折曲凸部における第1壁面と上記外側対向凸部における対向壁面及び上記外側折曲凸部における折曲壁面とが対向して、これらの間に導体配置隙間を形成する原位置と、上記第1壁面と上記対向壁面とが対向したままで、上記内側折曲凸部において上記第1壁面に対して所定の角度で隣接する第2壁面と上記折曲壁面とが対向して、上記角線導体を折り曲げた状態を形成する折曲位置とに、上記第1治具部に対して相対的に回動可能であることを特徴とする角線導体折曲治具。
【請求項4】
請求項2又は3において、上記内側折曲凸部は、上記第1治具部の上記第1ガイド面に対して着脱可能であることを特徴とする角線導体折曲治具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記角線導体は、回転電機のステータに用いるマグネットワイヤであることを特徴とする角線導体折曲治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−234400(P2010−234400A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84510(P2009−84510)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】