説明

解凍方法および解凍装置

【課題】 解凍区域内の突発的圧力上昇を防止して、解凍中の温度管理を適切に行うことを目的としている。
【解決手段】 解凍区域2内へ給蒸弁12を通して給蒸する給蒸手段3と、前記解凍区域2内を減圧する減圧手段4と、前記解凍区域2内の温度または圧力を検出する検出手段7と、前記検出手段7による検出値が設定値となるように前記給蒸手段3および前記減圧手段4を制御する制御手段8とを備え、前記制御手段8は、前記給蒸弁12の零に近い開度を所定時間継続するか、前記解凍区域2内の圧力が前記設定圧力+△Pを所定時間継続すると、前記解凍区域2内を強制排気することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、解凍区域内の低圧蒸気により被解凍物の解凍を行う,所謂真空蒸気解凍方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この真空蒸気解凍は、大気圧より低い低圧の飽和蒸気で満たされた容器内に被解凍物を入れると被解凍物の表面に蒸気が凝縮し、その際に発生する大量の凝縮潜熱を被解凍物に与えて、被解凍物を解凍する解凍方法であり、特許文献1などにて公知である。
【0003】
この出願の発明者らは、研究開発の過程で、この種真空蒸気解凍方法においては、解凍運転中、被解凍物からの蒸発などにより解凍槽(解凍区域)圧力が上昇したり、何らかの原因で解凍区域内の圧力が上昇すると、解凍圧力を維持できなくなり、解凍品質を低下させるという課題を見いだした。
【0004】
【特許文献1】特公昭46−36174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、解凍区域内の突発的圧力上昇を防止して、解凍中の温度管理を適切に行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、給蒸弁を通して蒸気を解凍区域内へ供給し、低圧蒸気により設定圧力で被解凍物の解凍を行う解凍方法であって、前記給蒸弁が零に近い開度を所定時間継続するか、前記解凍区域内の圧力が前記設定圧力+△Pを所定時間継続すると、前記解凍区域内を強制排気することを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、解凍区域内へ給蒸弁を通して給蒸する給蒸手段と、前記解凍区域内を減圧する減圧手段と、前記解凍区域内の温度または圧力を検出する検出手段と、前記検出手段による検出値が設定値となるように前記給蒸手段および前記減圧手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記給蒸弁が零に近い開度を所定時間継続するか、前記解凍区域内の圧力が前記設定圧力+△Pを所定時間継続すると、前記解凍区域内を強制排気することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、被解凍物からの蒸発などにより解凍区域内圧力が上昇したり、何らかの原因で解凍区域内の圧力が上昇してもその圧力上昇を抑えることができ、解凍中の温度管理を適切に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施の形態)
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この実施の形態は、解凍区域内の低圧飽和蒸気により被解凍物の解凍を行う解凍装置において実施される。この解凍装置は、業務用だけでなく家庭用の解凍装置を含む。
【0010】
まず、実施の形態の概要について説明する。この実施の形態は、給蒸弁を通して蒸気を
解凍区域内へ供給し、低圧蒸気により設定圧力で被解凍物の解凍を行う解凍方法において、前記給蒸弁が零に近い開度を所定時間継続するか、前記解凍区域内の圧力が前記設定圧力+△Pを所定時間継続すると、前記解凍区域内を強制排気することを特徴とする解凍方法であり、つぎの解凍装置によって実現される。
【0011】
この解凍装置は、解凍区域内へ給蒸弁を通して給蒸する給蒸手段と、前記解凍区域内を減圧する減圧手段と、前記解凍区域内の温度または圧力を検出する検出手段と、前記検出手段による検出値が設定値となるように前記給蒸手段および前記減圧手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記給蒸弁が零に近い開度を所定時間継続するか、前記解凍区域内の圧力が前記設定圧力+△Pを所定時間継続すると、前記解凍区域内を強制排気することを特徴とする。
【0012】
この解凍装置によれば、給蒸弁を通して蒸気を解凍区域内へ供給し、低圧蒸気により設定圧力で被解凍物の解凍を行う。そして、この解凍運転中において、前記給蒸弁が零に近い開度を所定時間継続する(第一条件を満たす)と前記減圧手段を作動させて、前記解凍区域内を減圧することにより強制排気運転を行う。また、第一条件を満たさない場合でも、前記解凍区域内の圧力が前記設定圧力+△Pを所定時間継続する(第二条件)と同様に強制排気運転を行う。こうして、前記解凍区域内圧力が異常に上昇することが防止され、結果として前記解凍区域内温度を適切に管理して、解凍品質を向上することができる。前記第一条件は、解凍の遅れを防止するために設けている。前記△Pを小さくすることで、前記第一条件を省略することも考えられるが、そうすると強制排気運転が頻繁に行われることになる。しかしながら、前記第一条件と前記第二条件とのいずれかを満たしたとき強制排気運転を行うようにすることで、係る問題を回避できる。
【0013】
ここにおいて、低圧蒸気とは、大気圧以下の圧力の蒸気を意味するが、解凍に用いる蒸気の圧力は、約6hPa〜40hPa程度とすることができる。また、前記解凍区域内の温度は、前記解凍区域内に飽和蒸気が満たされている状態において、前記解凍区域内の圧力と所定の対応関係を有していて、前記解凍室内の圧力によって制御可能である。よって、この発明では、前記解凍区域内の温度は、前記解凍区域内の圧力と等価であり、前記解凍区域内の温度制御は圧力制御と均等である。前記減圧手段の作動は、前記減圧手段の駆動または運転と称することができる。
【0014】
つぎに、前記装置の実施の形態の構成要素について説明する。まず、被解凍物は、真空包装したものおよび真空包装していないものを含む。また前記解凍区域は、被解凍物の解凍に用いられる区域であり、被解凍物を収容し出し入れ可能な室,部屋、容器,槽を意味し、解凍領域または解凍空間と称することもできる。
【0015】
前記給蒸手段は、前記解凍区域へその外部から蒸気を供給する手段であり、蒸気生成装置などを含む。この蒸気生成装置は、好ましくは、清浄蒸気を生成するリボイラとする。また、この給蒸手段は、好ましくは、開度を調整可能で供給蒸気量を調整可能な弁(比例弁)を含んで構成される。この比例弁を用いることにより、単なる開閉弁を用いた場合と比較して、前記解凍区域内への給蒸量をより細やかに制御でき、前記解凍区域内の温度制御を細やかに、かつ正確に制御することができる。
【0016】
前記減圧手段は、ON−OFF作動のものおよび減圧速度の調整可能なものを含む。この減圧速度の調整は、真空ポンプにおいては、回転数を調整することにより実現でき、蒸気を凝縮する熱交換器においては、冷却水量や冷却水温度を調整することにより実現できる。
【0017】
この減圧手段は、好ましくは、蒸気エゼクタと熱交換器と真空ポンプとを組み合わせた
ものとする。この組み合わせによる減圧手段の間欠作動などの減圧速度の調整により、前記減圧手段を連続作動させるものと比較して、前記真空ポンプの使用電力量を低減できるとともに、前記蒸気エゼクタに使用される蒸気使用量を削減でき、前記熱交換器に使用される冷却水量を減少できる。また、前記真空ポンプを水封式真空ポンプとした場合は、封水の使用量を減少できる。さらに前記の組み合わせによる減圧手段とすることにより、前記解凍区域内の温度を容易に低く制御できる。
【0018】
また、前記減圧手段は、水エゼクタを含むものとすることができる。この水エゼクタを用いて、これを間欠作動などの減圧速度を調整して作動させる場合は、水エゼクタへ水を供給するための循環ポンプの運転に要する電力量を減少できるとともに、前記循環ポンプの運転に伴う騒音量を低減できる。
【0019】
前記検出手段は、前記解凍区域内を圧力により設定値に制御する場合は圧力検出器を用い、前記解凍区域内を温度により解凍設定値に制御する場合は温度検出器を用いることができる。以下の説明では、圧力による制御を行うものとして説明する。
【0020】
また、前記制御手段は、前記検出手段から検出信号を入力して、予め記憶している処理手順により前記給蒸手段および前記減圧手段を制御する。この処理手順は、前記検出手段による検出値が設定値となるように前記給蒸手段および前記減圧手段を制御する解凍工程の制御をベース(基本)として、前記方法の実施の形態に記載した強制排気運転の制御手順を含むものである。この強制排気運転の処理手順は、前記給蒸弁が零に近い開度を所定時間継続するという第一条件と、前記解凍区域内の圧力が前記設定圧力+△Pを所定時間継続するという第二条件とのいずれか一方を満たすと前記減圧手段を所定時間作動させて、前記解凍区域内を強制排気するように構成されている。前記給蒸弁の零に近い開度とは、前記給蒸弁の通常の平均開度よりかなり低い値を意味している。たとえば、前記給蒸弁の解凍運転における通常の平均開度が10%とした場合、好ましくは弁開度を1%未満とするが、弁開度を数%未満とすることができる。
【0021】
この処理手順の制御において、好ましくは、前記設定圧力は予め設定したものとするが、使用者が任意に設定可能とすることができる。また、前記△Pおよび所定時間は、予め実験により定めることができるが、使用者により調整可能とすることができる。さらに、前記減圧手段の作動は、好ましくは、間欠作動とする。
【0022】
また、前記処理手順は、前記解凍区域内の温度または圧力が最初に設定値に到達するまでの間において、給蒸を行いながら連続的に減圧する空気排除工程を含むように構成することができる。
【実施例】
【0023】
以下、この発明の解凍方法の実施1を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、同実施例の制御手順(処理手順)の概要を示すフローチャート図であり、図2は、同実施例の解凍方法を実施した解凍装置の一実施例の概略構成図であり、図3は、解凍装置の実施例による解凍を説明するタイムチャート図である。図3において、圧力特性曲線の下方において、実線にて示す部分は、機器の作動を示している。
【0024】
まず、前記解凍装置を図2に基づき説明する。この解凍装置は、業務用解凍装置に適用されるものである。この解凍装置は、被解凍物1を収容する解凍区域としての解凍室2と、前記解凍室2内へ蒸気を供給する蒸気供給(給蒸)手段3と、前記解凍室2内を吸引排気し低圧に保持する減圧手段4と、減圧された前記解凍室2に外気を導入することにより復圧する復圧手段5と、被解凍物1を載置し前記解凍室2に対して出し入れ自在の台車(運搬車)6と、前記解凍室2内圧力を検出する圧力検出器7と、前記圧力検出器7の信号
を入力して、メモリに記憶した処理手順に基づき前記解凍室2内の低圧蒸気による被解物1の解凍を制御する制御器8とを主要部として備えている。
【0025】
被解凍物1は、真空(パック)包装した肉類などであり、真空包装していないものも含まれる。前記解凍室2は、被解凍物1を出し入れするための扉(図示省略)を備えている。
【0026】
前記給蒸手段3は、一端を前記解凍室2に接続し、清浄蒸気を前記解凍室2内へ供給するための第一給蒸路9を含んで構成され、この第一給蒸路9に、軟水器10,この軟水器10から供給される軟水を用いて清浄蒸気を生成する蒸気発生源としてのリボイラ11,蒸気の供給を制御する第一給蒸弁12,前記第一給蒸路9の先端に設けられ前記解凍室2内へ蒸気を噴出するためのノズル13を備えている。前記第一給蒸弁12は、開度を調整することにより給蒸量を調節可能な比例弁を用いる。
【0027】
前記リボイラ11は、ステンレス製とされ、軟水器10を用いるとともに無薬注としている。このリボイラ11の加熱源は通常蒸気を生成する蒸気ボイラ(図示省略)とされる。
【0028】
前記減圧手段4は、前記解凍室2内を減圧する減圧路14を含んで構成されている。そして、この減圧路14に蒸気エゼクタ15,熱交換器16,前記解凍室2方向への流れを阻止する逆止弁17,水封式の真空ポンプ18を備えている。前記蒸気エゼクタ15には、前記蒸気ボイラからの蒸気を供給する第二給蒸路19が接続され、この第二給蒸路19に第二給蒸弁20を備える。前記熱交換器16には、冷却水供給路21が接続され、この冷却水供給路21に給水弁22を備える。
【0029】
前記復圧手段5は、一端を前記解凍室2に接続した外気導入路23を含んで構成されている。そして、この外気導入路23に、外気導入の制御用の復圧弁24と,除菌用のフィルタ25とを備える。前記復圧弁24は、開度を調整することにより導入空気量を調整可能なモータバルブなどの比例弁を用いる。
【0030】
前記解凍室2は、解凍モードなどの各種設定を行うとともに、運転状態を表示する表示器26をその前面の扉などに備えるとともに、上面など解凍装置設置場所から離れた位置に、解凍終了の報知などを行う回転ランプなどの報知器27を備えている。
【0031】
前記台車6は、被解凍物1を載置する複数段の棚28,28,…を設けている。
【0032】
前記制御器8は、前記圧力検出器7からの信号を入力し、所定の処理手順(プログラム)に従い、前記第一給蒸弁12,前記真空ポンプ18,前記第二給蒸弁20,前記給水弁22,前記復圧弁24,前記表示器26および前記報知器27などを制御するように構成されている。
【0033】
この実施例においては、前記処理手順は、前記圧力検出器7による検出値が設定値となるように前記給蒸手段3および前記減圧手段4を制御する解凍工程の制御をベースとして、強制排気運転の処理手順を含むものである。この強制排気運転の処理手順は、前記給蒸弁12の開度零が所定時間t1(一例として約10分間)継続するという第一条件と、前記解凍区域2内の圧力が後記第一設定圧力P1+△P,または後記第二設定圧力P2+△Pを所定時間t2(<t1で、一例として約2分間)継続するという第二条件とのいずれか一方を満たすと前記減圧手段4を所定時間t3(一例として、5分間)作動させて、前記解凍質2内を強制排気するように構成されている。前記強制排気運転の処理手順の要部を図1に示す。
【0034】
前記解凍運転は、図3に示すように、解凍初期において前記解凍室2内の設定圧力を第一解凍設定圧力(以下、第一設定圧力という。)P1として解凍する第一解凍工程Aと、第一解凍工程Aに続いて行われ前記解凍室2内の設定圧力を第一設定圧力P1から段階的に高くして解凍する移行工程Bと、この移行工程Bに続いて行われ前記解凍室2内を前記第一設定圧力P1よりも高い第二解凍設定圧力(以下、第二設定圧力という。)P2として解凍する第二解凍工程Cを含む解凍運転である。結局、前記第一設定圧力P1は、前記第二設定圧力P2より低く、前記移行工程Bにおいては、設定圧力をP1からP2へ段階的に高く制御する。
【0035】
ここで、解凍初期とは、被解凍物の芯部の融解前を意味し、被解凍物1の芯部の融解前とは、被解凍物の芯温(芯部の温度)が融解点近傍となる前を意味する。ここで、被解凍物1の芯部の融解点は、被解凍物の種類によって異なるが、約−3〜−0.5℃程度である。
【0036】
前記第二解凍工程Cの第二設定圧力P2は、解凍設定値または解凍温度ともいうことができる。また、この第二設定圧力P2は、従来の解凍方法においても設定されている値であり、制御目標とする解凍後期における前記解凍室2内の設定温度である。したがって、被解凍物1の温度は長時間をかければ最終的には第二設定圧力P2相当の温度に達するが、解凍終了時点において被解凍物全体の温度が前記第二設定圧力P2相当の温度となっていることを要しないものとする。
【0037】
ここで、上記構成の解凍装置の動作を図1〜図3に基づいて説明する。図2を参照して、前記台車6を前記解凍室2から引き出した状態で、被解凍物1を載置し、その後前記台車6を前記解凍室2内へ収容し、前記解凍室2を密閉する。
【0038】
<解凍運転前操作>
まず、解凍時間の設定を行う。解凍時間は、前記第一解凍工程A,前記移行工程B、および前記第二解凍工程Cの合計時間である第一解凍時間T11であり、これらの解凍時間T11は、ユーザーが被解凍物1の種類や量に基づき、設定する。
【0039】
そして、各解凍モードに関する解凍温度の設定を行う。解凍温度とは、前記第二設定圧力P2であり、ユーザーは、温度により設定するが、前記制御器8は、これを圧力に換算して第二設定圧力P2として記憶する。前記第一解凍工程Aの第一設定圧力P1および前記移行工程Bの段階的設定圧力は、予め設定した値とするが、設定値を変更できるように構成することができる。この解凍温度の設定を確定すると、解凍運転を実行する。
【0040】
<解凍運転の基本動作>
解凍運転の基本動作を図3に基づいて説明する。工程は、前記空気排除工程E→前記第一解凍工程A→前記移行工程B→前記第二解凍工程C→低圧保持工程F→復圧工程Gの順に実行される。図3の例では、前記第二設定圧力P2を約12.3hPa(10℃)に設定し、前記第一設定圧力P1を約8.7hPa(5℃)に設定している。
【0041】
(空気排除工程E)
解凍予備工程である前記空気排除工程Eは、連続的に減圧しながら給蒸する工程を含んでいる。前記復圧弁24を閉じた状態で、前記減圧手段4を連続作動し、連続減圧を行う。すなわち、前記真空ポンプ18を作動し、設定圧力まで減圧後、前記第二給蒸弁20を開いて前記蒸気エゼクタ15を作動する。前記給水弁22は、前記真空ポンプ18および前記蒸気エゼクタ15の作動と連動して開く。
【0042】
この減圧手段4の連続作動により、前記解凍室2内圧力は、急激に低下する。そして、前記解凍室2内圧力が設定圧力P5に到達すると、前記第一給蒸弁9を全開して前記解凍室2内へ蒸気の供給を開始する。前記制御器8は、この給蒸において前記解凍室2内圧力が第一設定圧力P1となるように前記給蒸手段3を制御する。こうして、前記空気排除工程Eでは、最初は前記減圧手段4のみの排気を行い、その後減圧させながら給蒸することによる排気を行うことにより、前記解凍室2内の空気排除が行われる。
【0043】
(第一解凍工程A)
前記空気排除工程Eに続いて行われる第一解凍工程Aでは、前記制御器8は、前記給蒸手段3を前記検出圧力Pに応じて開度を調整して連続作動させながら、前記減圧手段4の間欠作動と連続作動とを組み合わせて行うことにより、前記圧力検出器7により検出される前記解凍室2内の圧力Pが第一設定圧力P1となるように制御する。
【0044】
すなわち、前記減圧手段4は、ベースモードでは間欠的に作動される。そして、前記減圧手段4の作動と停止が繰り返して行われる。この前記減圧手段4の作動とは、前記第二給蒸弁20を開いて前記蒸気エゼクタ15を作動させ、前記給水弁22を開いて前記熱交換器16による冷却を作動させ、前記真空ポンプ18を作動することであり、前記減圧手段4の停止とは作動と逆の動作をさせることを意味する。この間欠作動は、前記制御器8のタイマーにより制御される。この減圧手段4の間欠作動と連続作動とは、前記移行工程Bおよび第二解凍工程Cにおいても行われる。
【0045】
(移行工程B)
図3を参照して、前記第一解凍工程Aがタイマー制御により設定時間T11行われて終了すると、前記移行工程Bが開始される。この移行工程Bでは、設定圧力が図示のように段階的に上昇し、前記検出圧力Pが段階的に変化する設定圧力となるように、前記給蒸手段3および前記減圧手段4を制御する。この移行工程Bもタイマー制御により設定時間T12実行される。
【0046】
この移行工程Bにおいては、前記解凍室2内の温度が段階的に上昇する。これに伴い被解凍物1の表面温度も徐々に上昇するので、被解凍物1の表面が高温に晒される時間が短くなり、被解凍物1からのドリップの流出を抑えることができる。
【0047】
(第二解凍工程C)
移行工程Bが終了すると、第二解凍工程Cが開始される。この第二解凍工程Cでは、前記検出圧力Pが前記第二設定圧力P2となるように、前記給蒸手段3および前記減圧手段4を制御する。この第二解凍工程Cもタイマー制御により設定時間T13だけ実行される。
【0048】
こうして、前記第一解凍工程A,前記移行工程Bおよび第二解凍工程Cは、前記解凍時間T14だけ実行される。
【0049】
(解凍工程終了)
そして、前記解凍時間T14が経過すると、前記報知器27を点灯して、解凍工程の終了を報知する。解凍終了後、低圧保持工程Fが実行される。
【0050】
(低圧保持工程F)
この低圧保持工程Fは、まず前記解凍室2内圧力を前記第三設定圧力P4に保持するように、前記減圧手段4を間欠的に作動,停止する。この間欠作動は、タイマー制御ではなく、圧力を設定値に制御する圧力制御による。この低圧保持に伴う真空冷却効果により、被解凍物1を解凍温度よりも低い温度にて保持し、含浸工程などの次工程に備えることが
できる。この低圧保持工程Fは、時間T15だけ実行され、終了すると復圧工程へ移行する。
【0051】
(復圧工程G)
この復圧工程Gでは、徐圧が実行される。この場合の前記解凍室2内の圧力変化は、実線Xで示される。被解凍物1を肉とした場合、この復圧工程において、外気の代わりに酸素を前記解凍室2内へ導入するように構成することができる。これにより、肉の色を良くすることができる。
【0052】
<強制排気運転>
以上が、解凍運転の基本的動作であるが、この発明の特徴である強制排気運転について図1に基づき説明する。この強制排気運転は、前記第一解凍工程Aおよび前記第二解凍工程Cにおいて、行われる。
【0053】
まず、前記第一解凍工程Aにおける強制排気運転を説明する。処理ステップS1(以下、処理ステップSNをSNと称する。)において、制御器8は、前記給蒸弁12の開度が零の状態が前記設定時間t1だけ継続されたかどうかを判定する。S1での判断がNOの場合、S2へ移行して、前記圧力検出器7の検出値が前記第一設定圧力P1+△P以上の状態が前記設定時間t2だけ継続されたかどうかを判定する。判定がNOの場合、S1へ戻る。
【0054】
前記解凍槽1の漏れ(装置自体からの真空漏れ)や被解凍物1からの蒸発分(内部の空気の蒸発)などで、前記解凍槽2内の圧力が上昇すると、前記給蒸弁12は、開度零の状態となり、これが継続される。すると、S1において、YESが判断される,すなわち前記第一条件が満たされたと判断すると、S3へ移行して前記減圧手段4を前記所定時間t3だけ作動させる。これにより、前記解凍槽1内の圧力上昇が抑制され、前記解凍槽2内圧力が前記第一設定圧力P1に保持される。その結果、被解凍物1を高品質で解凍することができる。なお、前記解凍槽1内の圧力がP1以下で前記給蒸弁12の開度が全開に近い状態が節制時間以上継続すると前記表示器26などにて警報を出力する。
【0055】
つぎに、前記設定時間t1が経過しないうちに、突然漏れが発生するなどした場合は、前記解凍槽1内の圧力が前記第一設定圧力P1+△P以上となり、これが継続することになる。その結果、S2にて、YESが判定され、S3へ移行して前記減圧手段4の連続作動が実施され、同様の作用により、高品質の解凍が行われる。
【0056】
つぎに、前記第二解凍工程Cにおける強制排気運転について説明する。この強制排気運転は、前記解凍槽1内の設定圧力が前記第一設定圧力P1から前記第二設定圧力P2に変わるだけで、前記第一解凍工程Aと同様に行われるので説明を省略する。
【0057】
この発明は、前記実施例に限定されるものではなく、解凍運転自体の方法は、種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明の実施例の要部処理手順の概要を示すフローチャート図である。
【図2】同実施例の解凍方法を実施した解凍装置の概略説明図である。
【図3】同解凍装置による解凍運転を説明するタイムチャート図である。
【符号の説明】
【0059】
1 被解凍物
2 解凍室
3 給蒸手段
4 減圧手段
5 復圧手段
7 圧力検出器
8 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給蒸弁を通して蒸気を解凍区域内へ供給し、低圧蒸気により設定圧力で被解凍物の解凍を行う解凍方法であって、
前記給蒸弁が零に近い開度を所定時間継続するか、前記解凍区域内の圧力が前記設定圧力+△Pを所定時間継続すると、前記解凍区域内を強制排気することを特徴とする解凍方法。
【請求項2】
解凍区域内へ給蒸弁を通して給蒸する給蒸手段と、前記解凍区域内を減圧する減圧手段と、前記解凍区域内の温度または圧力を検出する検出手段と、前記検出手段による検出値が設定値となるように前記給蒸手段および前記減圧手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記給蒸弁が零に近い開度を所定時間継続するか、前記解凍区域内の圧力が前記設定圧力+△Pを所定時間継続すると、前記解凍区域内を強制排気することを特徴とする解凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−174914(P2007−174914A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374104(P2005−374104)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】