説明

触媒再生可能な有機塩素化合物の連続無害化処理装置及び連続無害化処理システム

【課題】有機塩素化合物の分解に用いられ分解能が低下した触媒を、触媒充填装置から取り出すことなく、かつ簡単な操作で再利用可能にする、有機塩素化合物の連続無害化処理装置及連続無害化処理システムを提供する。
【解決手段】有機塩素化合物、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液を入れた第1の槽と、アルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を入れた第2の槽と、触媒を充填した触媒充填装置と液溜りをその内部に備え並列に設置された複数の触媒槽と、触媒槽上部に設置されたマイクロ波装置と、第1の槽と触媒槽との間をそれぞれ循環する第1の循環系統と、各触媒槽内の触媒充填装置と液溜りの間を循環する第2の循環系統と、を有する有機塩素化合物の連続無害化処理装置、ならびに、それを用いた、有機塩素化合物の分解処理と触媒の再生処理を並行して行うことができる連続無害化処理システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒再生可能な有機塩素化合物の連続無害化処理装置及び連続無害化処理システムに関する。詳細には、有機塩素化合物の分解に用いられ分解能が低下した貴金属担持触媒を、触媒槽から取り出すことなく再利用可能にすることで、連続した有機塩素化合物の無害化処理を可能とした、有機塩素化合物の連続無害化処理装置及び連続無害化処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種有機塩素化合物のなかでも、ポリ塩化ビフェニル(以下PCBと略称することがある。)は人体を含む生体に極めて有害であることから、1973年に特定化学物質に指定され、その製造、輸入、使用が禁止されている。しかし、その後適切な廃棄方法が決まらないまま数万トンのPCBが未処理の状態で放置されている。PCBは、高温分解では強毒性のダイオキシン類である塩素化ジベンゾ−p−ダイオキシン(PCDD)とジベンゾフラン(PCDF)が副生するため、PCBを安全に分解することは難しいことに鑑み、PCBの安全かつ効率的な分解処理方法が望まれている。
【0003】
このような背景から、PCB等の有機塩素化合物を、比較的低温の穏やかな条件下で脱塩素化して分解する方法が、数多く提案されている。その中でも、低温かつ短時間でPCB等を分解できる方法として、PCB又は低濃度のPCBを含有する絶縁油に、水素供与体とアルカリ化合物を添加し、パラジウムを活性炭に担持させた触媒存在下にマイクロ波を照射することにより、PCBを効率的に分解する方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
こうした方法によりPCBの分解を実施した場合、PCBの分解反応を重ねるにつれ触媒は劣化し活性が低下してくる。貴金属担持触媒は高価なため、PCBの分解処理コストを下げるためには、活性が低下した触媒を再生して再利用することが不可欠であるため、触媒を再生する各種の方法が提案されている。
【0005】
特許文献3には、PCBのみを絶縁油として使用した高濃度PCBの分解処理に用いられた活性低下触媒を再生する方法として、イソプロピルアルコールで洗浄し、次いで炭化水素系溶剤、引き続いて親水性有機溶剤で洗浄し、更に水で洗浄した後、乾燥する方法が開示されている。
【0006】
特許文献4では、PCB含有絶縁油中に含まれるPCB(すなわち低濃度PCB)の脱塩素化処理に用いられ活性が低下した触媒を、有機溶剤で洗浄し、次いで、水で洗浄した後、還元剤で処理することで、触媒を再生する方法が開示されている。洗浄に用いられる有機溶剤としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、アセトン等のケトン、酢酸エチル等のエステル、ヘキサンやトルエン等の炭化水素が例示され、還元剤としては水素、ヒドラジン、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム等が例示されている。実施例では、アセトンで洗浄した後、水で洗浄して風乾した後、アセトンを添加して200℃で抽出処理、更に亜臨界水で200℃で抽出処理を行ってから乾燥し、水素/窒素の混合ガスあるいはヒドラジンを添加して還元処理する方法が記載されている。
【0007】
特許文献5では、PCB含有絶縁油中に含まれるPCBの脱塩素化処理に用いられ活性が低下した触媒を、水又は有機溶剤で洗浄し、脱離した塩素と反応に用いたアルカリから生成する塩を除去することにより、触媒を再生する方法が開示されている。洗浄に用いられる有機溶剤としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、アセトン等のケトン、酢酸エチル等のエステル、ヘキサンやトルエン等の炭化水素が例示されており、実施例には、アセトンあるいはエタノールで洗浄し、次いで水で洗浄した後、アセトンを加えて脱水、次いで乾燥して触媒を再生する事例が記載されている。
【0008】
しかしながら、特許文献3〜5に開示された方法のように、触媒の再生処理に水を使用した場合、触媒を再利用するためには水を除去することが必須であり、洗浄工程の他に乾燥工程が必要となる。そのため、触媒を装置から取り出さずに再生しようとする場合は、触媒の洗浄と乾燥という操作条件の異なる工程を効率的に実施し、触媒を効果的に再生することは困難であり、現実的な方法は、触媒を装置から取り出し、別途洗浄する方法となる。
【0009】
ところが、触媒を装置から取り出して再生する場合には、一旦PCBの分解反応を中断することとなり、分解処理の作業効率の低下を招くのみならず、劣化触媒にはPCB等が付着しているため、触媒の取り出しは管理レベルの作業になるという問題がある。さらに、触媒を装置から出し入れする際に触媒の粒が崩れ、触媒寿命を縮める恐れもある。
【0010】
無害化処理で使用した貴金属触媒を、触媒製造業者の所有する再生設備に供給し、この再生設備で焼結再生し、再生された触媒を無害化処理装置に供給することも提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかし、貴金属触媒を再生設備で焼結再生したのでは、処理コストの増大を招くこととなる。また、触媒を装置から取り出す場合の前記問題点、すなわち管理レベルの作業になることや、触媒寿命を縮める恐れがあるという問題点も有している。
【0011】
一方で、触媒を取り出すことなく再生することで、有機塩素化合物を連続無害化処理する技術も開示されている(例えば、特許文献7参照)。特許文献7の方法は、有機塩素化合物を含有する油に水素供与体及びアルカリ化合物を混合して得られた被処理液を、柱状変圧器等の容器から抜出し、触媒カラムに連続的に流通させた後、前記容器に循環させることにより有機塩素化合物を分解し、一方、劣化した触媒は、溶剤タンクより溶剤を触媒カラムに連続的に流通させ、触媒を溶剤で洗浄することにより再生するものであり、触媒の再生を行っている間の被処理液の分解処理は、併設した別の触媒カラムを用いて実施することにより、有機塩素化合物の分解処理と触媒の再生を同時に行うことができるシステムとなる。
【0012】
特許文献7のシステムでは、有機塩素化合物の分解処理において、被処理液は柱状変圧器等の容器と触媒カラム間を循環する。したがって、分解処理の進行にともなって生成する分解生成物の混入により、容器内の被処理液の組成は経時とともに変化するため、一定の条件下で分解処理を継続するのは困難であり、かつ、常に一定量の処理液が存在するため、分解処理の途中でアルカリ金属水酸化物の水素供与体溶液を追加添加する等の余地に乏しく、分解処理の状況に応じて柔軟な対応をとることが難しい。さらに、特許文献7のシステムでは、劣化触媒の再生は、溶剤による洗浄であり、多量の溶剤を必要とするため、大容量の溶剤タンクあるいは溶剤回収タンクを設置する必要があり、装置全体をコンパクト化するのが困難である。また、有機塩素化合物を含む絶縁油を処理する場合には、絶縁油の経時劣化物や酸化防止剤等の絶縁油添加物ならびにそれらの分解物等が含まれているため、溶剤洗浄だけでは十分に除去できず触媒を効果的に再生できないことがあるといった課題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3678740号公報
【特許文献2】特許第3678738号公報
【特許文献3】特開2008−272584号公報
【特許文献4】特開2007−111661号公報
【特許文献5】特開2005−270837号公報
【特許文献6】特開2003−230638号公報
【特許文献7】特開2005−253884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、有機塩素化合物の分解処理を状況に応じてフレキシブルに実施することができ、かつ、有機塩素化合物の分解能が低下した触媒を、触媒充填装置から取り出すことなく、また大量の有機溶剤を用いる必要もなく、再利用可能にする、有機塩素化合物の連続無害化処理装置及連続無害化処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、劣化した触媒にアルカリ金属水酸化物とイソプロピルアルコールの溶液を加熱下に接触させることで、少量のイソプロピルアルコールの使用で効果的に再生できること、そして、触媒充填装置と液溜りを有する触媒槽が複数台並列に設置され、各触媒槽と有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油に金属水酸化物及びイソプロピルアルコールを混合した混合液の貯槽の間を循環する第1の循環系統と、各触媒槽内の触媒充填装置と液溜りの間を循環する第2の循環系統、を有する装置を用いて、有機塩素化合物の分解と劣化した触媒の再生を並行して実施することで、大容量の溶剤貯槽を必要としないコンパクトな装置で、触媒を取り出すことなく再生し、連続して効率的に有機塩素化合物を分解処理できることを見出し、本発明に到達した。
【0016】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液を入れた第1の槽と、
アルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を入れた第2の槽と、
貴金属を担体に担持させた触媒を充填した触媒充填装置と液溜りをその内部に備え、並列に設置された複数の触媒槽と、
前記触媒槽上部に設置されたマイクロ波装置と、
前記第1の槽と前記触媒槽との間をそれぞれ循環する第1の循環系統と、
前記の各触媒槽内の触媒充填装置と液溜りの間を循環する第2の循環系統と、
を有することを特徴とする触媒再生可能な有機塩素化合物の連続無害化処理装置。
(2)前記第1の循環系統が、第1の槽から各触媒槽の触媒充填装置に液が供給され、触媒充填装置から液溜りに溢流した液が、液溜りから第1の槽に循環するものである前記(1)に記載の連続無害化処理装置。
(3)前記第1の循環系統が、液の排出ラインを有し、かつ、該液の排出ラインと第1の槽に戻るラインを切替える切替えバルブを有している前記(1)または(2)に記載の連続無害化処理装置。
(4)前記第2の槽のアルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を、各触媒槽の触媒充填装置に供給するラインを有している前記(1)〜(3)のいずれかに記載の連続無害化処理装置。
(5)前記各触媒槽の触媒充填装置が、液の排出口を有している前記(1)〜(4)のいずれかに記載の連続無害化処理装置。
(6)さらに、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含有する絶縁油を貯留する容器を有し、該容器と前記各触媒槽との間を、前記第1の槽を介して循環する第3の循環系統を有している前記(1)〜(5)のいずれかに記載の連続無害化処理装置。
(7)前記容器が、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含有する絶縁油を使用した柱上変圧器、大型変圧器あるいは油絶縁ケーブルの油槽である前記(6)に記載の連続無害化処理装置。
(8)有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液を入れた第1の槽と、
アルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を入れた第2の槽と、
貴金属を担体に担持させた触媒を充填した触媒充填装置と液溜りをその内部に備え、並列に設置された複数の触媒槽と、
前記触媒槽上部に設置されたマイクロ波装置と、
前記第1の槽と前記触媒槽との間をそれぞれ循環する第1の循環系統と、
前記の各触媒槽内の触媒充填装置と液溜りの間を循環する第2の循環系統と、
を有し、
各触媒槽において、第1の槽の混合液を触媒充填装置に流通して第1の循環系統により循環させ触媒と接触させて有機塩素化合物を分解する分解処理と、
第2の槽のイソプロピルアルコール溶液を触媒槽の触媒充填装置に供給し第2の循環系統により循環させ触媒と接触させて分解処理で劣化した触媒を再生する再生処理と
を、繰り返し行うことができ、
一の触媒槽において前記分解処理を行っている間、別の触媒槽において前記再生処理を行うことにより、有機塩素化合物を連続して分解することを特徴とする触媒再生可能な有機塩素化合物の連続無害化処理システム。
(9)前記第1の槽の混合液中の有機塩素化合物を分解するに際し、第1の循環系統により、第1の槽の有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液の一部を触媒槽に導入した後、第1の循環系統を停止し、前記第2の循環系統のみを作動させて有機塩素化合物の分解処理を行い、分解処理後の液をシステム外に排出した後、再び第1の循環系統により第1の槽の混合液を触媒槽に導入し、第2の循環系統のみを作動させて有機塩素化合物の分解処理を行う前記(8)に記載の連続無害化処理システム。
(10)前記分解処理を行った後、触媒槽に滞留する分解処理後の液を第1の槽に回収した後、前記触媒槽に第2の槽からイソプロピルアルコール溶液を流通して触媒を再生する再生処理を行い、次いで触媒再生処理後の液をシステム外に排出した後、第1の槽の混合液を触媒槽に流通し、有機塩素化合物の分解処理を行う前記(8)または(9)に記載の連続無害化処理システム。
(11)前記分解処理を行った後、触媒槽に滞留する分解処理後の液をシステム外に排出した後、前記触媒槽に第2の槽からイソプロピルアルコール溶液を流通して触媒を再生する再生処理を行い、次いで触媒再生処理後の液を第1の槽に回収するとともに、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油を第1の槽に供給して混合した後、該混合液を触媒槽に流通して有機塩素化合物の分解処理を行う前記(8)または(9)に記載の連続無害化処理システム。
(12)さらに、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含有する絶縁油を貯留する容器を有し、該容器と前記各触媒槽との間を、前記第1の槽を介して循環する第3の循環系統により循環させ、容器内を洗浄するとともに、触媒と接触させて有機塩素化合物を分解する分解処理を行う前記(8)〜(11)のいずれかに記載の連続無害化処理システム。
(13)前記分解処理及び再生処理をマイクロ波加熱下で行い、分解処理と再生処理の加熱温度を同じ設定温度で行う前記(8)〜(12)のいずれかに記載の連続無害化処理システム。
【発明の効果】
【0017】
請求項1及び請求項8に係る有機塩素化合物の連続無害化処理装置及び処理システムによれば、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油にアルカリ金属水酸化物とイソプロピルアルコールを混合した混合液を、触媒槽に流通させて循環し有機塩素化合物の分解処理を行いながら、同時に別の触媒槽では、劣化した触媒を触媒充填装置から取り出すことなく、アルカリ金属水酸化物とイソプロピルアルコールの溶液を流通させ循環して再生処理を行うことができるので、有機塩素化合物の分解を連続して実施することができる。しかも、触媒を繰り返し使用できるため経済性に優れる。
また、劣化した触媒を触媒充填装置に入れたままの状態で再生できるため、触媒を取り出して処理する場合に生じる、PCBが付着した触媒の取り扱いが管理レベルの作業になるという問題点を回避することができると共に、劣化した触媒の出し入れによって触媒が崩壊する恐れがないため触媒寿命が長くなるという利点も有する。
【0018】
請求項2、3及び請求項9に係る発明によれば、2系統の循環系統を使用することができるので、有機塩素化合物の分解処理を効率的に実施することができる。すなわち、有機塩素化合物を含む絶縁油にアルカリ金属水酸化物とイソプロピルアルコールを混合した混合液を、その貯槽である第1の槽と触媒槽間を循環させる第1の循環系統のみを用いて分解処理を行ってもよいし、触媒槽内の触媒充填装置と液溜り間を循環させる第2の循環系統による分解処理を組み合わせることもできる。
第2の循環系統を組み合せることで、例えば、第2の循環系統では、第1の循環系統に比較すると循環する混合液が少量となり、単位時間あたりの有機塩素化合物の濃度変化が大きくなるので触媒活性の低下が判定し易くなるという利点、あるいは、第2の循環系統で分解処理が終了した混合液をシステム外に回収することで、第1の槽内の混合液量が減少するので、分解処理の途中でアルカリ金属水酸化物やイソプロピルアルコールを第1の槽内に追加することが可能となり、有機塩素化合物の分解処理条件を柔軟に変更できるという利点がある。
また、処理すべき混合液の量が少なく、第1の循環系統を満たすだけの量に到達しない場合でも、第2の循環系統で処理することが可能となる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、活性が低下した触媒の再生は、アルカリ金属水酸化物のイソプロピルアルコール溶液を触媒槽に流通、循環させながら、マイクロ波加熱することにより行うことができる。触媒の再生は、イソプロピルアルコールの洗浄効果と水素供与体としての還元作用が組み合わさって発揮されるため、触媒再生に使用するイソプロピルアルコールは少量でよく、大容量の貯槽を必要としないので、装置全体をコンパクトにすることができる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、触媒再生時に、触媒充填装置内に必要最小限の被処理液を残存させることで再生処理効率を高めることができ、また、触媒が気相中に露出して乾燥し付着した阻害物質がより強固に吸着して、触媒の再生が困難になることを防ぐとともに、触媒表面が露出した場合のマイクロ波加熱による発火等の危険を回避することもできる。
請求項6、7に係る発明によれば、柱状変圧器や大型変圧器、油絶縁ケーブルの油槽等の有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含油する絶縁油を使用した機器を容器として用いて第1の槽と接続し、第1の槽を経由して、該容器と各触媒槽を循環させる第3の循環系統を形成することで、該容器中に含有される有機塩素化合物を分解処理することができる。この第3の循環系統を用いることにより、該容器中をイソプロピルアルコールが流通するので、該容器である柱状変圧器や大型変圧器あるいは油絶縁ケーブルの油槽等の機壁や内部の部材に付着した有機塩素化合物が抽出除去されるとともに、この抽出された有機塩素化合物が触媒槽を流通することで分解処理される。
【0021】
請求項10に係る発明によれば、触媒槽を循環する有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油中の有機塩素化合物が十分に分解されず所定の処理基準値まで低下しない状況で、触媒の活性低下が認められた場合に、触媒の再生処理を好適に実施することができる。すなわち、有機塩素化合物の分解処理を停止した時点で触媒槽中に滞留する、所定の処理基準値より高い濃度の有機塩素化合物を含有する分解処理液は、第1の槽に回収するので、触媒の再生が終了後、第1の槽に回収した分解処理液を触媒槽に流通することで再び分解処理に供することができる。
なお、触媒再生処理において、触媒再生開始時には比較的高濃度の有機塩素化合物が含有されており、触媒が再生されるにつれてこれらの有機塩素化合物が分解される結果、再生処理液中には比較的高濃度の分解生成物が含まれるので、触媒再生処理後の処理液はシステム外に排出するのがよい。
また、触媒再生後に再び分解処理を開始する際には、第1の槽にアルカリ金属水酸化物および/またはイソプロピルアルコールを添加してもよい。
【0022】
請求項11に係る発明によれば、触媒槽を循環する有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油中の有機塩素化合物が所定の処理基準値以下まで分解されている状況で、活性が低下した触媒の再生処理を好適に実施することができる。すなわち、有機塩素化合物の分解処理を停止した時点で触媒槽中に滞留する、有機塩素化合物濃度が所定の処理基準値以下の分解処理液はシステム外に排出し、第2の槽よりイソプロピルアルコール溶液を供給して触媒の再生処理を行った後、再生処理後の処理液を第1の槽に回収し、第1の槽に有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油をあらたに供給して、回収した処理液と混合した後、該混合液を触媒槽に流通させて、有機塩素化合物の分解処理を再開することができる。この場合には、触媒再生処理後に処理液中に含まれる有機塩素化合物の分解物は少量であるため、処理液中に残存するアルカリ金属水酸化物とイソプロピルアルコールを、有機塩素化合物の分解処理に有効に活用することができる。
【0023】
請求項12に係る発明によれば、請求項6、7に記載した効果と同様の効果を奏する。
【0024】
請求項13に係る発明によれば、有機塩素化合物の分解処理と触媒再生のどちらの処理においても、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールという同じ化合物を用いて、かつ同じ温度設定で処理ができるので、触媒の再生が終了後は、特段の処理を要することなく引き続いて有機塩素化合物の分解処理を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の循環系統ならびに第2の循環系統を有する連続無害化処理装置及び処理システムの構成例を示す概略図である。
【図2】本発明の第1から第3の循環系統を有する連続無害化処理装置及び処理システムの構成例を示す概略図である。
【図3】触媒槽の構成例を示す概略図である。
【図4】本発明の3系統の循環系統を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1及び図2に、本発明の連続無害化処理装置及び処理システムの構成例を示す。
本発明において、有機塩素化合物としては、PCB、ダイオキシン類、トリクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族塩素化合物及びそれらの2種以上の混合物からなる有機塩素化合物が挙げられ、有機塩素化合物を含む絶縁油としては、柱上変圧器、大型変圧器、油絶縁ケーブルの油槽、安定器等に充填又は保存されているもので、微量の有機塩素化合物を含む絶縁油が挙げられる。
【0027】
図1に示す有機塩素化合物の連続無害化処理装置は、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液を入れる第1の槽1と、アルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を入れる第2の槽11と、並列に設置されている3基の触媒槽2、3、4と、マイクロ波装置8、9、10とを備え、各触媒槽の内部には、貴金属を担体に担持させた触媒を充填した触媒充填装置5、6、7が配置され、これらの触媒充填装置の下部は液溜りとなっている。
そして、前記第1の槽の混合液を、前記触媒充填装置及び液溜りを経由して前記第1の槽に循環させる第1の循環系統(ライン20、21及びポンプ12、13)と、前記第2の槽のイソプロピルアルコール溶液を前記触媒充填装置に供給するライン22及びポンプ14と、各触媒槽の液溜りの液を触媒充填装置に循環する第2の循環系統(ラインL1、L2及びポンプP1;ラインL3、L4及びポンプP2;ラインL5、L6及びポンプP3)と、を有するものである。
【0028】
例えば、触媒槽2を例として、液の流れを説明すると以下の通りである。第1の循環系統は、第1の槽1の混合液がポンプ12により送り出され、触媒充填装置5に、バルブ31a、32aを介してラインL2より導入され、触媒槽2の液溜りから、バルブ36a、35aを介してライン21に接続し循環する。また、第2の循環系統は、触媒槽2の液溜りの液が、ポンプP1により、ラインL1とL2を通じて触媒充填装置5に導入され循環する。また、第2の槽11のアルカリ金属水酸化物を溶解したイソプロピルアルコール溶液は、ポンプ14によりライン22から、バルブ34aを介して、ラインL2を通じて触媒充填装置5に導入される。
【0029】
また、第1の循環系統と各触媒槽の液溜りからの液の排出は、バルブ35aと36aを操作することで切り替えられる。バルブ36aを開け、バルブ35aをT字形に接続することで第1の循環系統になり、バルブ36aを開け、バルブ35aをト字形に接続することで液が排出される。そして、第2の循環系統が用いられる場合には、バルブ36aが閉じられることになる。
【0030】
図2に示す有機塩素化合物の連続無害化処理装置は、図1に示す連続無害化処理装置と同様、第1の槽1と、第2の槽11と、並列に設置されている3基の触媒槽2、3、4と、マイクロ波装置8、9、10と、前記第1の槽の混合液を前記触媒充填装置及び液溜りを経由して前記第1の槽に循環させる第1の循環系統(ライン20、21及びポンプ12、13)と、前記第2の槽のアルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を前記触媒充填装置に供給するライン22及びポンプ14と、触媒槽の液溜りの液を触媒充填装置に循環する第2の循環系統(ラインL1、L2及びポンプP1;ラインL3、L4及びポンプP2;ラインL5、L6及びポンプP3)と、を有し、さらに有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油を貯留する容器15と、該容器15内の有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油が、前記第1の槽を経由して、前記各触媒槽と循環する第3の循環系統(ライン23、24及びポンプ16、17)を有するものである。
【0031】
図2に示した装置の第3の循環系統において、ライン23は、第1の循環系統のライン21と接続しており、各触媒槽と第1の槽を接続するライン21の途中に設けられたバルブ(37a、37b、37c)によって、第3の循環系統と第1の循環系統が切替えられるようになっている。
【0032】
本発明において、有機塩素化合物の分解処理及び触媒再生処理に用いられる触媒槽は、触媒充填装置と液溜りを備えた装置であって、液溜りの液を触媒充填装置に循環させる第2の循環系統を有するものである。本発明で用いられる触媒槽の一例を図3に示す。
【0033】
図3は、図1及び図2に示した各触媒槽の詳細図である。触媒槽2を例に詳細を説明する。触媒槽2はその上部に触媒充填装置5を収容し、その下部が液溜りとなっている。バルブ31aを介してライン20とラインL2が接続し、前記の第1の槽1の混合液が、触媒充填装置5に供給される。一方、バルブ34aを介して、ライン22とラインL2が接続し、前記の第2の槽11のアルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液が、触媒充填装置5に供給される。
【0034】
触媒充填装置5に供給された第1の槽の混合液あるいは第2の槽のイソプロピルアルコール溶液は、触媒層の中を流通し、流通した液は触媒カートリッジaの底部に開けられた流通孔(図示していない)を通じて流出し、触媒充填装置5に設けられた溢流口bより溢れ出て、触媒槽の液溜りに溜る。触媒充填装置に供給された混合液あるいはイソプロピルアルコール溶液は、触媒カートリッジa内の触媒層中を流通する際に、マイクロ波装置8から照射されるマイクロ波により加熱されるが、図示しない温度コントローラー等を用いてマイクロ波の照射時間や強度を電気的に制御することで、液温を所定の温度に制御することができる。図中、cは温度センサである。触媒カートリッジa中にはセラミックやテフロン(登録商標)等のマイクロ波を透過する耐熱性材料で形成された棒状の構造体dが配置され、この構造体はマイクロ波を触媒層の奥まで伝達する役割を果たしている。液溜りに溢れ出た液は、液溜りで冷却コイルeにより冷却される。
【0035】
液溜りで冷却された液は、排出口fより排出され、第1の槽1に戻ることで循環する第1の循環系統による循環と、液溜りからラインL1、L2及びポンプP1により触媒充填装置5に戻り循環する第2の循環系統による循環、ならびに容器15に戻ることで循環する第3の循環系統による循環に供される。
【0036】
第1の循環系統と第2の循環系統の切替えは、バルブ31a、33a及び図1のバルブ36aを操作することにより行われる。すなわち、バルブ31aと36aを開け、バルブ33aを閉じることで第1の循環系統による循環が行われ、逆にバルブ31aと36aを閉じ、バルブ33aを開けることで第2の循環系統による循環が行われる。
【0037】
第1の循環系統と第3の循環系統の切替えは、図2に示したバルブ37aをT字形に接続することで第1の循環系統が閉じられて第3の循環系統となり、逆にバルブ37aをト字形に接続することで第3の循環系統が閉じられて第1の循環系統となることで行われる。なおこの時、触媒槽3あるいは4と接続するバルブ37b、37cはT字形に接続されるとともに、バルブ36b、バルブ36cは閉じられた状態となっている。
【0038】
<第1及び第2の循環系統による連続無害化処理システム>
本発明における基本的な無害化処理システムでは、有機塩素化合物の分解処理には第1の循環系統あるいは第2の循環系統を使用し、活性が低下した触媒の再生処理には第2の循環系統を使用する。
【0039】
前記の有機塩素化合物の連続無害化処理システムにおいては、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液を入れる第1の槽1と、アルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を入れる第2の槽11と、貴金属を担体に担持させた触媒を充填した触媒充填装置5、6、7を備え触媒充填装置の下部が液溜りになっている触媒槽2、3、4が並列に設置され、前記第1の槽の混合液を、前記触媒槽を経由して第1の槽に循環させる第1の循環系統と、前記の各触媒槽2、3、4において、各触媒充填装置5、6、7と液溜りの間を循環する第2の循環系統と、を有する、本発明の連続無害化処理装置を用いる。
【0040】
各触媒槽2、3、4においては、第1の槽の混合液を触媒充填装置5、6、7に流通し触媒と接触させて有機塩素化合物を分解する分解処理と、第2の槽のイソプロピルアルコール溶液を触媒充填装置2、3、4に流通し触媒と接触させて分解処理で劣化した触媒を再生する再生処理と、を繰り返し行うことができる。こうすることで、触媒充填装置に充填された触媒が、有機塩素化合物の分解処理で劣化した際に、劣化触媒を触媒充填装置から取り出すことなく再生することができ、再生後は引き続いて分解処理に供することが可能になる。
【0041】
そして、複数の触媒槽を用いることで、一の触媒槽において分解処理を行っている間、別の触媒槽において再生処理を行う並行処理が可能となり、有機塩素化合物の分解処理を連続して効率的に実施することができる。具体的には、例えば、図1に示す触媒槽2で分解処理を行い触媒活性が低下してきた時点で、劣化触媒を再生する再生処理を行う。触媒槽2で再生処理を行っている間は、触媒槽3で有機塩素化合物の分解処理を行う。触媒槽3で分解処理を行っている間に触媒槽2の劣化触媒が再生されるため、次に触媒槽2で再生触媒を用いて分解処理を行い、その間、触媒槽3では劣化触媒を再生する再生処理を行う。このように、2系統の循環系統を随時切り替えるだけで、連続して有機塩素化合物の無害化処理を行うことが可能になる。触媒槽4は非常用として利用することができる。
【0042】
本発明の連続無害化処理システムにおいては、有機塩素化合物の分解処理は、主に第1の循環系統を用いて実施し、有機塩素化合物の濃度が所定の処理基準値をクリアするまで分解処理を行い、分解処理が終了後の混合液は、システム外に排出して回収する。触媒が十分な活性を維持している場合には、引き続いて、第1の槽に新たに混合液を調製して、第1の循環系統により分解処理に供することができる。
【0043】
そして、本発明の連続無害化処理システムでの有機塩素化合物の分解処理においては、有機塩素化合物の分解処理に第2の循環系統を組み合せることで、触媒の活性低下を効率よく判定することができる。循環する混合液の量は、第1の循環系統に比べて、第2の循環系統では少なくなるので、単位時間当たりに触媒中を循環する回数を増大させられる結果、GC−MS等の公知の分析装置を用いて有機塩素化合物の濃度変化を測定することで、触媒活性が低下したことを短時間で認識することができるからである。したがって、有機塩素化合物の分解処理の終盤やあるいは分解処理を繰り返したことで、触媒活性の低下が想定される場合には、第1の循環系統を停止し、触媒槽内の混合液のみを用いた第2の循環系統による分解処理に切り替えることにより、触媒の活性低下を判定することが容易になる。
【0044】
さらに、第2の循環系統を組み合せることで、触媒の活性が低下していない場合でも、第2の循環系統で分解処理を終了した混合液をシステム外に排出することで、第1の槽中の混合液の量を減らすことができるので、アルカリ金属水酸化物やイソプロピルアルコールを第1の槽に追加添加することができ、分解条件を状況にあわせて適宜変更することが可能になる。あるいは、分解処理に供する混合液の量が少量のため、第1の循環系統を満たす量に達しない場合でも、第2の循環系統により分解反応を実施することができる。
【0045】
[第1の槽の液調製]
第1の槽1としては、混合槽、または、有機塩素化合物あるいは有機塩素化合物を含む絶縁油を貯留する柱上変圧器容器などを用いる。
【0046】
有機塩素化合物を分解する際には、第1の槽に、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールを入れ、混合液を調製する。アルカリ金属水酸化物は、有機塩素化合物から脱離した塩素を捕捉するために添加されるが、中でも、脱塩素化効率が高く、低コストで入手可能で、ハンドリング性が良く、イソプロピルアルコールへの溶解性に優れている点より、NaOH又はKOHが好ましく用いられる。アルカリ金属水酸化物は単独で用いても良いし2種以上を併用しても良い。またイソプロピルアルコールは、水素供与体として添加され、安全性、コスト、有機塩素化合物の分解効率、反応制御の容易性の点で優れている。
【0047】
混合液中における、アルカリ金属水酸化物とイソプロピルアルコールの量比は、アルカリ金属水酸化物をイソプロピルアルコールに対して0.1〜20%(wt/vol)使用するのが好ましく、より好ましくは0.1〜10%(wt/vol)である。アルカリ金属水酸化物が少なすぎると分解反応が進行しなくなり、一方、多すぎるとアルカリ金属水酸化物が溶解しきれなくなる。
【0048】
また、イソプロピルアルコールは、有機塩素化合物のみからなる絶縁油の場合には、有機塩素化合物濃度が3%(vol/vol)以下になるよう使用することが好ましく、有機塩素化合物を含む絶縁油の場合には、該絶縁油に対して5〜200%(vol/vol)使用することが好ましい。5%未満では絶縁油の粘度が高くなり、分解反応が進まなくなる。一方、200%を超える場合でも反応は十分進行するが不経済となる。
【0049】
[分解処理]
分解処理時に用いられる貴金属を担体に担持させた触媒は、特に限定されるものではなく、有機塩素化合物の脱塩素化反応を促進し得るものであれば良い。触媒における貴金属の担持量は、触媒全量に対する割合で1〜20質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。担持させる貴金属としては、パラジウム、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム及び白金が挙げられるが、脱塩素化効率の高さを考慮すると、パラジウム、ルテニウム、白金が好ましく、特にパラジウムが好ましい。
【0050】
担体としては、一般的に貴金属触媒の担体として用いられるものであれば良い。具体的には、一般的に吸着剤として使用されている活性炭等の炭素;シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の樹脂;金属酸化物又は複合金属酸化物;等の耐アルカリ性に優れる担体が挙げられる。これらの担体の中でも、マイクロ波の吸収性が高いことから炭素、樹脂が好ましく、炭素が特に好ましい。
【0051】
金属を炭素担体に担持させた触媒の具体例としては、例えば、Pd/C(パラジウム担持炭素化合物)、Ru/C(ルテニウム担持炭素化合物)、Pt/C(白金担持炭素化合物)などが挙げられる。
【0052】
上記の触媒は、粒状のものでもハニカム状のものでも良い。触媒粒子径は75μm〜5mmが好ましく、5mmを超える場合はハンドリングが悪くなり、75μm未満の場合はカラム等に充填させた際に詰りやすくなる。より好ましくは150μm〜3mmである。
【0053】
有機塩素化合物の分解処理は、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油にアルカリ金属水酸化物とイソプロピルアルコールを混合した混合液を、第1の貯槽から触媒槽までの間を、前記第1または第2の循環系統により循環し、触媒充填装置を流通する際に触媒ならびに流通液を加熱することにより実施される。
【0054】
加熱温度は、30〜60℃の範囲が好ましい。加熱温度が高い程、有機塩素化合物の分解は促進されるが、一方で、加熱温度高くなる程、ダイオキシン類が生成し易くなる。
【0055】
加熱方法としては、マイクロ波照射による加熱が好ましい。マイクロ波を用いることにより、触媒を効果的に加熱することができ、また加熱装置をコンパクトにすることができる。マイクロ波の出力は、電気的に制御しながら10W〜20kWの範囲とすることが望ましく、マイクロ波の周波数は0.5〜10GHzが望ましい。マイクロ波の照射は、触媒槽の液溜りの混合液の冷却状況に応じて、電気的に制御しながら連続的又は間欠的に行い、触媒充填装置を流通する混合液の温度を所定の範囲に制御するのが良い。
【0056】
本発明の連続無害化処理システムにおいては、有機塩素化合物の分解に使用されて活性が低下した触媒は、触媒充填装置から取り出すことなく第2の循環系統を用いて再生される。この再生処理は次のようにして実施される。
【0057】
[第2の槽の液調製]
第2の槽にはアルカリ金属水酸化物を溶解したイソプロピルアルコール溶液を入れる。アルカリ金属水酸化物は、イソプロピルアルコールに溶解して用いられるが、予めアルカリ金属水酸化物をイソプロピルアルコールに溶解した溶液を調製しておき、それを第2の槽に投入しても良いし、アルカリ金属水酸化物とイソプロピルアルコールを別々に第2の槽に投入して第2の槽中で攪拌し溶解させても良い。
【0058】
前記溶液中のアルカリ金属水酸化物の量は、イソプロピルアルコールに対し、0.1〜0.3w/v%、好ましくは0.15〜0.2w/v%である。アルカリ金属水酸化物の使用量が少ないとイソプロピルアルコールから水素が発生しにくくなるために触媒の再生効率が低下するため好ましくなく、一方使用量が多すぎても、触媒再生効率は最早向上せず不経済となるため好ましくない。
【0059】
イソプロピルアルコールに溶解させるアルカリ金属水酸化物としては、NaOH又はKOHが好ましく用いられる。アルカリ金属水酸化物を有機塩素化合物の分解処理時と同一のものにすれば、触媒再生後、特段の処理を必要とせずに有機塩素化合物の分解処理を開始することができ、また、有機塩素化合物の分解で生成する副生塩の回収操作が容易になる。
【0060】
触媒の再生に使用するイソプロピルアルコール溶液の量は、再生処理時に触媒充填装置に残存させた被処理液と均一に混合でき、かつ第2の循環系統により触媒充填装置と液溜り間を循環するのに支障がない量であればよく、通常、触媒1kg当たり1〜6Lである。少なすぎると触媒の洗浄効果が不十分となる。一方、多すぎても、触媒の再生効率は最早向上せず不経済となる。
【0061】
[再生処理]
触媒の再生処理を、例えば、触媒槽2を例として説明すると、有機塩素化合物の分解処理を停止した後、触媒充填装置5の下部に設置した排出口gから、触媒充填装置内に残る分解処理後の液(以下、被処理液と称する。)を触媒が気相中に暴露されないぎりぎりまで排出し、次いで液溜りの被処理液を排出する。アルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を入れた前記第2の槽11より、所定量のイソプロピルアルコール溶液をポンプ14によりライン22を通じてラインL2に供給して触媒充填装置5に導入する。触媒充填装置5から溢流して液溜りに溜まった液を、第2の循環系統により触媒充填装置5に流通して循環させ、該触媒充填装置に残存させた被処理液と第2の槽から供給したイソプロピルアルコール溶液を均一に混合する。混合が終了後、第2の循環系統により混合した液を循環させながら触媒充填装置へのマイクロ波の照射を開始して加熱し、触媒再生を行う。
【0062】
触媒再生処理においては、触媒充填装置内に被処理液を残すことで、被処理液中に残存する有機塩素化合物を、触媒の再生状況を把握するための指標として利用することができる。すなわち、マイクロ波照射後の前記混合液中の有機塩素化合物の濃度変化を追跡し、有機塩素化合物の分解処理における所定の基準値を用い、混合液中の有機塩素化合物濃度が、当該基準値以下まで低下した時点で触媒の再生が終了したものと判断する。
【0063】
また、触媒再生時に、触媒充填装置内に被処理液を残存させることで、触媒が気相中に露出して乾燥し付着した阻害物質がより強固に吸着して、触媒の再生が困難になることを防ぐとともに、触媒表面が露出した場合のマイクロ波加熱による発火等の危険を回避することもできる。
【0064】
本発明の触媒再生処理においては、アルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を使用することで、活性が低下した触媒が効果的に再生される。その詳細な理由は不明であるが、次のように推定される。
【0065】
多種類のPCBを分解処理した経験上、PCBそのものを絶縁油として使用した高濃度PCBに比べ、絶縁油中にPCBが含有されている低濃度PCBの方が、分解し難いことが判っている。このことから、絶縁油中の添加剤(酸化防止剤など)や経時による絶縁油の酸化劣化物が触媒反応を強く阻害することが示唆される。
【0066】
そこで、イソプロピルアルコールは、触媒表面に付着した未変性の絶縁油や有機塩素化合物の分解により生成する無機塩等を溶解して除去すると同時に、アルカリ金属水酸化物を併用することでイソプロピルアルコールが水素供与体として機能し、絶縁油の酸化劣化物等を還元分解して触媒表面から脱着し易くする作用を発揮し、これらの相乗効果により触媒の再生が効果的に行われるものと推定される。
【0067】
触媒の再生処理における加熱温度は、30〜60℃の範囲が好ましい。加熱温度が高い程、水素発生量が増加するため触媒の再生効率は向上するが、一方で、加熱温度高くなる程、残存する有機塩素化合物からダイオキシン類が副生し易くなる。
【0068】
触媒再生処理時の加熱温度は、前記の有機塩素化合物の分解処理時の加熱温度と同じである必要はないが、分解処理と触媒の再生処理を操作条件を変更することなく円滑に実施できる点より、再生処理と分解処理の加熱温度を同一の温度に設定するのが好ましい。
【0069】
再生処理時の加熱方法としては、分解処理時の加熱の場合と同様、マイクロ波照射による加熱が好ましい。マイクロ波を用いることにより、触媒を効果的に加熱することができ、同一の加熱装置を用いることで装置もコンパクトにできる。マイクロ波の照射条件は、分解処理の場合と同様であり、マイクロ波の出力は、電気的に制御しながら10W〜20kWの範囲とすることが望ましく、マイクロ波の周波数は0.5〜10GHzが望ましい。マイクロ波の照射は、触媒槽の液溜りの混合液の冷却状況に応じて、電気的に制御しながら連続的又は間欠的に行い、触媒充填装置を流通する混合液の温度を所定の範囲に制御するのが良い。
【0070】
[再生触媒を用いた分解処理]
再生終了後の触媒は、引き続いて有機塩素化合物の分解処理に供される。触媒の再生処理とそれに引き続く有機塩素化合物の分解処理は、具体的には以下の様にして実施することができる。
【0071】
(分解処理例1)
触媒槽を循環する有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油中の有機塩素化合物が十分に分解されず、所定の処理基準値まで低下しない状況で、触媒の活性低下が認められた場合には、有機塩素化合物の分解処理を停止した後、触媒充填装置内に残る分解処理後の液を、触媒が気相中に暴露されないぎりぎりまで排出し、次いで液溜りに溜まった分解処理後の液を第1の槽に回収する。触媒再生処理は、第2の槽よりイソプロピルアルコール溶液を触媒槽に導入し、第2の循環系統により循環させることで行い、触媒再生処理終了後、触媒槽中に滞留する液をシステム外に排出する。次いで、第1の槽に回収した被処理液を触媒槽に流通させ、有機塩素化合物の分解を行う。この場合、触媒再生時には比較的高濃度の有機塩素化合物が含有されており、触媒が再生されるにつれてこれらの有機塩素化合物が分解される結果、比較的高濃度の分解生成物が再生処理液中に含まれるので、触媒再生処理後の処理液はシステム外に排出するのがよい。
【0072】
なお、触媒再生後の分解処理の再開時に、第1の槽にアルカリ金属水酸化物および/またはイソプロピルアルコールを適宜追加してもよい。
【0073】
(分解処理例2)
触媒槽を循環する有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油中の有機塩素化合物が所定の処理基準値以下まで分解されている状況で、活性が低下した触媒の再生処理を行う場合には、有機塩素化合物の分解処理を停止した後、触媒充填装置内に残る分解処理後の液を触媒が気相中に暴露されないぎりぎりまで排出し、次いで液溜りに溜まった分解処理後の液をシステム外に排出する。触媒の再生処理は、前記のように第2の槽よりイソプロピルアルコール溶液を触媒槽に導入し、第2の循環系統により循環させることで行い、触媒再生処理終了後、触媒槽中に滞留する液を第1の槽に回収する。
【0074】
次いで、第1の槽に有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油を適量添加して混合した後、触媒槽に流通させ、有機塩素化合物の分解を行う。この場合には、触媒再生処理後に処理液中に含まれる有機塩素化合物の分解物は少量であるため、処理液中に残存するアルカリ金属水酸化物とイソプロピルアルコールを、有機塩素化合物の分解処理に有効に活用することができる。
【0075】
(分解処理例3)
活性が低下した触媒の再生処理において、第2の槽よりイソプロピルアルコール溶液を触媒槽に導入し、第2の循環系統により循環させることで触媒を再生した後、触媒槽中に滞留する液を第2の槽に回収することもできる。
【0076】
<第3の循環系統を利用した連続無害化処理システム>
本発明における、容器を接続した連続無害化システムでは、第1及び第2の循環系統のほか、第3の循環系統を使用して有機塩素化合物の洗浄ならびに分解処理を行うことができる。なお、この場合も、活性が低下した触媒の再生処理には第2の循環系統を使用する。
【0077】
この連続無害化処理システムにおいては、前記の第1の循環系統および第2の循環系統に加えて、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油を貯留する容器と、該容器と各触媒槽間を第1の槽を介して循環する第3の循環系統を有する、本発明の連続無害化処理装置を使用する。
【0078】
容器としては、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油を使用した柱状変圧器、大型変圧器あるいは油絶縁ケーブルの油槽等を用いることができ、第3の循環系統による有機塩素化合物の分解処理は、これらの容器中に残留した有機塩素化合物を洗浄し分解する場合に適用される。
【0079】
具体的には、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油が、抜き取られた後の前記容器を用いて、有機塩素化合物の分解処理終了後に第1の槽に滞留する混合液、或いは、第1の槽にアルカリ金属水酸化物とイソプロピルアルコールをあらたに添加して調製したイソプロピルアルコール溶液を、触媒槽に流通させた後、前記容器に戻し、第3の循環系統により循環させる。それにより、容器として用いた変圧器等の機壁や内部部材に付着する有機塩素化合物が抽出され、抽出された有機塩素化合物は触媒槽を流通することで分解処理される。
【0080】
本発明の連続無害化処理システムにおいては、有機塩素化合物の分解処理及び再生処理に、水素供与体としてイソプロピルアルコールを共通して用い、また同じアルカリ金属水酸化物を用い、さらには分解処理と再生処理を同一の温度設定で実施できるので、有機塩素化合物の分解処理により活性が低下した触媒は、分解処理後の被処理液の一部を排出するだけで、触媒を取り出すことなく直ちに再生処理することができ、触媒の再生後は、触媒槽内に残存する液を取り除く必要もなく、有機塩素化合物の分解処理を再開することができる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。なお、以下の実験には、図3に示す触媒槽を使用した。
【0082】
[実施例1]
(PCB分解試験)
実機で使用したPCB含有絶縁油を含む試験液10.73L、イソプロピルアルコール10.73L及びKOH107gを入れ攪拌して被処理液を調製した。調製後の被処理液中のPCB濃度は、DB5MSをキャピラリーカラムとする島津製作所製GC−MS(QP2010)で分析した結果、13.0ppmであった。触媒カートリッジにPd/C触媒(粒径0.425〜1.7mmの活性炭にパラジウムを5%担持)2kgを充填し、調製した被処理液を800ml/minの速度で触媒充填装置5に流通させながら、マイクロ波装置8よりマイクロ波を照射し、温度センサcで測定しながら、温度を60℃に維持した。被処理液中のPCB濃度の経時変化は、サンプリングバルブ38aからサンプルを採取し、前記のGC−MSを用いて分析した。被処理液の触媒充填装置5への流通と循環を開始後、PCB濃度が0.5ppmまで低下するのに47時間を要した。
【0083】
(触媒の再生処理)
上記のPCB分解試験を実施した後の触媒を用いて再生処理を実施した。まず、上記のPCBの分解試験終了後、触媒槽2の液溜りに残存する被処理液を排出口fより排出した。次いで触媒充填装置5中の被処理液を、触媒が気相中にむきだしにならない程度に抜き出した。このとき触媒充填装置内に残った液は、8Lであった。
KOH20gをイソプロピルアルコール5Lに溶解した溶液を調製し、触媒充填装置5に添加し、触媒充填装置の溢流口bから液溜りに溢流した液を触媒充填装置5に流通させながら30分間循環させ、触媒充填装置内に残った被処理液と、新たに添加したKOHのイソプロピルアルコール溶液を均一に混合した。この混合液中のPCB濃度は0.1ppmであった。
混合液を触媒充填装置に流通させながらマイクロ波の照射を開始し、温度を60℃に維持しながら、触媒の再生処理を行った。触媒の再生状況は、混合液中のPCB濃度の変化を、前記GC−MSで分析することで追跡した。
再生開始後、PCB濃度は徐々に増加し、6時間後0.4ppmまで上昇した後、減少し始め、再生開始後20時間でPCB濃度が0.3ppm未満まで低下した時点で、触媒の再生処理を終了した。
【0084】
(再生触媒によるPCB分解試験1回目)
上記の触媒の再生処理が終了した後、触媒充填装置5に実機で使用した絶縁油含有試験液(PCB濃度406ppm)0.25L、KOH9.9gをイソプロピルアルコール2Lに溶解した溶液を添加し、触媒充填装置5と液溜り間を30分間循環させ、触媒の再生処理後の装置内(触媒充填装置及び液溜り)に残存する液と均一に混合した。この混合液中のPCB濃度は6.6ppmであった。
混合液を触媒充填装置5に流通させながらマイクロ波の照射を開始し、温度を60℃に維持してPCBの分解反応を行ったところ、12時間でPCB濃度は0.4ppmに低下し、分解処理における処理基準をクリアしたので、混合液の流通とマイクロ波の照射を停止しPCBの分解反応を終了した。
【0085】
(再生触媒によるPCB分解試験2回目)
上記の再生触媒によるPCB分解試験1回目が終了後、実機で使用した絶縁油含有試験液(PCB濃度406ppm)0.25Lを触媒充填装置5に導入し、触媒充填装置と液溜り間を30分間循環させ、装置内(触媒充填装置及び液溜り)に残存する液と均一に混合した。この混合液中のPCB濃度は8.5ppmであった。
混合液を触媒充填装置5に流通させながらマイクロ波の照射を開始し、温度を60℃に維持してPCBの分解反応を行ったところ、20時間でPCB濃度は0.5ppmに低下し、分解処理における処理基準をクリアしたので、混合液の流通とマイクロ波の照射を停止し分解反応を終了した。
【0086】
(再生触媒によるPCB分解試験3回目)
上記の再生触媒によるPCB分解試験2回目が終了後、引き続いて、実機で使用した絶縁油含有試験液(PCB濃度406ppm)0.25Lを触媒充填装置5に導入し、再生触媒によるPCB分解試験2回目と同様にしてPCBの分解反応を実施した。分解開始時のPCB濃度は8.5ppmであったが、19時間でPCB濃度は0.3ppmに低下し、分解処理における処理基準をクリアした。
【0087】
(再生触媒によるPCB分解試験4回目)
上記の再生触媒によるPCB分解試験3回目が終了後、引き続いて、実機で使用した絶縁油含有試験液(PCB濃度406ppm)0.25Lを触媒充填装置5に導入し、再生触媒によるPCB分解試験2回目と同様にしてPCBの分解反応を実施した。
分解開始時のPCB濃度は7.5ppmであり、7時間でPCB濃度は0.3ppmに低下し、分解試験における処理基準をクリアした。
【0088】
(再生触媒によるPCB分解試験5回目)
上記の再生触媒によるPCB分解試験4回目が終了後、引き続いて、実機で使用した絶縁油含有試験液(PCB濃度406ppm)0.25Lを触媒充填装置5に導入し、再生触媒によるPCB分解試験2回目と同様にしてPCBの分解反応を実施した。
分解開始時のPCB濃度は7.95ppmであり、14時間でPCB濃度は0.4ppmに低下し、分解試験における処理基準をクリアした。
【0089】
以上の実施例に示すように、触媒を取り出すことなく触媒充填装置に入れたまま、KOH等のアルカリ金属水酸化物とイソプロピルアルコールの溶液を用いて加熱することにより再生処理を行った触媒を用いることで、PCBの分解試験を5回継続しても短時間でPCBが処理基準値以下にまで分解され、触媒が再生されたことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の連続無害化処理装置及び連続無害化処理システムによれば、PCB等の有機塩素化合物の分解反応に用いて活性が低下した触媒を、装置から取り出すことなく再生処理することができ、また再生処理において分解処理と同じ薬剤を用いるので、触媒再生終了後、引き続いて有機塩素化合物の分解反応を実施できるので、各種PCB及びダイオキシン類の分解処理コストを下げることができ、有機塩素化合物を含む絶縁油等を効率的かつ経済的に連続して処理することができる。よって、実用上の利用価値は極めて大きい。
【符号の説明】
【0091】
1:第1の槽
2、3、4:触媒槽
5、6、7:触媒充填装置
8、9、10:マイクロ波装置
11:第2の槽
12、13、14、16、17:ポンプ
15:容器
20、21、22、23、24:ライン
31a、b、c、32a、b、c、33a、b、c、34a、b、c、36a、b、c:開閉バルブ
35a、b、c、37a、b、c:切替えバルブ
38a:サンプリングバルブ
P1、P2、P3:ポンプ
L1、L2、L3、L4、L5、L6:ライン
a:触媒カートリッジ
b:溢流口
c:温度センサ
d:構造体
e:冷却コイル
f、g:排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液を入れた第1の槽と、
アルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を入れた第2の槽と、
貴金属を担体に担持させた触媒を充填した触媒充填装置と液溜りをその内部に備え、並列に設置された複数の触媒槽と、
前記触媒槽上部に設置されたマイクロ波装置と、
前記第1の槽と前記触媒槽との間をそれぞれ循環する第1の循環系統と、
前記の各触媒槽内の触媒充填装置と液溜りの間を循環する第2の循環系統と、
を有することを特徴とする触媒再生可能な有機塩素化合物の連続無害化処理装置。
【請求項2】
前記第1の循環系統が、第1の槽から各触媒槽の触媒充填装置に液が供給され、触媒充填装置から液溜りに溢流した液が、液溜りから第1の槽に循環するものである請求項1に記載の連続無害化処理装置。
【請求項3】
前記第1の循環系統が、液の排出ラインを有し、かつ、該液の排出ラインと第1の槽に戻るラインを切替える切替えバルブを有している請求項1または2に記載の連続無害化処理装置。
【請求項4】
前記第2の槽のアルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を、各触媒槽の触媒充填装置に供給するラインを有している請求項1〜3のいずれかに記載の連続無害化処理装置。
【請求項5】
前記各触媒槽の触媒充填装置が、液の排出口を有している請求項1〜4のいずれかに記載の連続無害化処理装置。
【請求項6】
さらに、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含有する絶縁油を貯留する容器を有し、該容器と前記各触媒槽との間を、前記第1の槽を介して循環する第3の循環系統を有している請求項1〜5のいずれかに記載の連続無害化処理装置。
【請求項7】
前記容器が、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含有する絶縁油を使用した柱上変圧器、大型変圧器あるいは油絶縁ケーブルの油槽である請求項6に記載の連続無害化処理装置。
【請求項8】
有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液を入れた第1の槽と、
アルカリ金属水酸化物を溶解させたイソプロピルアルコール溶液を入れた第2の槽と、
貴金属を担体に担持させた触媒を充填した触媒充填装置と液溜りをその内部に備え、並列に設置された複数の触媒槽と、
前記触媒槽上部に設置されたマイクロ波装置と、
前記第1の槽と前記触媒槽との間をそれぞれ循環する第1の循環系統と、
前記の各触媒槽内の触媒充填装置と液溜りの間を循環する第2の循環系統と、
を有し、
各触媒槽において、第1の槽の混合液を触媒充填装置に流通して第1の循環系統により循環させ触媒と接触させて有機塩素化合物を分解する分解処理と、
第2の槽のイソプロピルアルコール溶液を触媒槽の触媒充填装置に供給し第2の循環系統により循環させ触媒と接触させて分解処理で劣化した触媒を再生する再生処理と
を、繰り返し行うことができ、
一の触媒槽において前記分解処理を行っている間、別の触媒槽において前記再生処理を行うことにより、有機塩素化合物を連続して分解することを特徴とする触媒再生可能な有機塩素化合物の連続無害化処理システム。
【請求項9】
前記第1の槽の混合液中の有機塩素化合物を分解するに際し、第1の循環系統により、第1の槽の有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油、アルカリ金属水酸化物及びイソプロピルアルコールの混合液の一部を触媒槽に導入した後、第1の循環系統を停止し、前記第2の循環系統のみを作動させて有機塩素化合物の分解処理を行い、分解処理後の液をシステム外に排出した後、再び第1の循環系統により第1の槽の混合液を触媒槽に導入し、第2の循環系統のみを作動させて有機塩素化合物の分解処理を行う請求項8に記載の連続無害化処理システム。
【請求項10】
前記分解処理を行った後、触媒槽に滞留する分解処理後の液を第1の槽に回収した後、前記触媒槽に第2の槽からイソプロピルアルコール溶液を流通して触媒を再生する再生処理を行い、次いで触媒再生処理後の液をシステム外に排出した後、第1の槽の混合液を触媒槽に流通し、有機塩素化合物の分解処理を行う請求項8または9に記載の連続無害化処理システム。
【請求項11】
前記分解処理を行った後、触媒槽に滞留する分解処理後の液をシステム外に排出した後、前記触媒槽に第2の槽からイソプロピルアルコール溶液を流通して触媒を再生する再生処理を行い、次いで触媒再生処理後の液を第1の槽に回収するとともに、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含む絶縁油を第1の槽に供給して混合した後、該混合液を触媒槽に流通して有機塩素化合物の分解処理を行う請求項8または9に記載の連続無害化処理システム。
【請求項12】
さらに、有機塩素化合物もしくは有機塩素化合物を含有する絶縁油を貯留する容器を有し、該容器と前記各触媒槽との間を、前記第1の槽を介して循環する第3の循環系統により循環させ、容器内を洗浄するとともに、触媒と接触させて有機塩素化合物を分解する分解処理を行う請求項8〜11のいずれかに記載の連続無害化処理システム。
【請求項13】
前記分解処理及び再生処理をマイクロ波加熱下で行い、分解処理と再生処理の加熱温度を同じ設定温度で行う請求項8〜12のいずれかに記載の連続無害化処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−125795(P2011−125795A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287259(P2009−287259)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】