説明

触媒及びその製造法、水性ガスシフト反応用触媒及び水性ガスの製造方法並びに排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化方法。

【課題】 高温域で使用される従来の触媒と比較してより幅広い温度域で効率良く水性ガスシフト反応及び排ガス浄化を行える触媒、製法及び一酸化炭素や、その他排ガスを浄化する方法を提供する。
【解決手段】 カルシウム及びアルミニウムを主成分とし、必要により、前記アルミニウムに対して0.001〜10mol%の鉄を含有する複合酸化物からなる触媒であって、該触媒にAu,Ag,Cu,Pt,Pd,Ni,Ir,Rh,Co,Os,Ruの中から選ばれた1種または2種以上の金属元素を前記触媒に対して重量比で0.001〜10wt%担持しており、該触媒の500℃での酸素貯蔵放出能が20〜200μmol/gであり、BET比表面積値が20m/g以上である触媒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い酸素貯蔵放出能を有する触媒であって、水性ガスシフト反応及び排ガス浄化に好適に用いることができる触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水性ガスシフト反応(CO+HO→CO+H)は、従来より、コークス、天然ガスなどの炭化水素及び水蒸気から得られる水性ガスに含まれるCOとHOの比率を変える、あるいはHの製造等のため、化学工業プロセスにおいて利用されている大変重要な反応である。
【0003】
また、近年注目を浴びている燃料電池の燃料となる水素を、都市ガス等を改質して得る場合、副生したCOが燃料電池電極を被毒して発電効率が低下するため、この副生したCOを低減させる反応として注目を集めている。こうした水性ガスシフト反応の触媒は、一般に、低温においては銅−亜鉛系や白金/アルミナ系が、高温においては、鉄−クロム系が使用される。
【0004】
しかし、銅−亜鉛系触媒は、耐熱性に乏しく、高温では使用できない上に短時間で失活してしまう問題点がある。白金/アルミナ系触媒は耐熱性は高いが高い活性を発現させるためには白金の担持量を多くする必要があるため触媒自体が高価になってしまう問題点がある。鉄−クロム系触媒は耐熱性は高いが活性が低いという問題点がある。
【0005】
また、環境意識の向上から排ガス浄化触媒においても更なる特性の改善が求められている。自動車用エンジン等の内燃機関からの排気ガスは、白金、ロジウム、パラジウム等の触媒成分が担持された三元触媒等によって浄化されている。
【0006】
適度な酸素貯蔵放出能(Oxygen Strage Capacity:以下、「OSC」という。)を有する酸化物混合体が強く要求されている。
【0007】
触媒としてさらに高活性のものが得られれば、一定条件下の化学工業プロセスのみならず、変動条件下における種々の利用が期待され、燃料電池に使用される燃料の改質、即ち、電極触媒の触媒毒となるCOを燃料電池に有用な燃料の水素に転化させる利用が期待される。
【0008】
一方、排気ガス浄化用触媒は、活性は高いがコストが高いため、より安価で高い排気ガス浄化性能を有する触媒が要請されている。
【0009】
本発明の酸素貯蔵放出が可能な少なくともアルカリ土類金属及びアルミニウムからなる酸化物混合体は、アルカリ土類金属アルミネートを主成分として含んでおり、本発明の水性ガスシフト及び排ガス浄化用触媒としては、Ca12Al1433(以下、「C12A7」とする。)およびSr12Al1433主成分とするものが知られており、酸素ラジカルを持ち強い酸化力を有することが記載されている(特許文献1〜2、非特許文献1)。
【0010】
また、酸素ラジカルによって排ガス中に含まれる炭素微粒子が効率よく除去できることが記載されている(特許文献3)。
【0011】
【特許文献1】特開2003−128415号公報
【特許文献2】特開2003−238149号公報
【特許文献3】特開2003−190787号公報
【非特許文献1】細野秀雄 外3名、「ナノポーラス結晶12CaO・7Al2O3を舞台とした活性酸素のエンジニアリングとその応用」、セラミックス、2002年、第37巻、第12号、p.968―971
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記特許文献1〜3及び非特許文献1記載の技術は、高温で焼成することによって触媒を得ているために比表面積が小さく、活性点が少ないことが推察される。
【0013】
そこで、本発明は、酸素貯蔵放出能が高い触媒を得ることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0015】
本発明者らは、鋭意検討を重ねたところ、特定の酸化物を使用することにより前記課題を解消できるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、カルシウム及びアルミニウムを主成分とし、前記アルミニウムに対して0.001〜10mol%の鉄を含有する複合酸化物からなる触媒であって、該触媒の500℃での酸素貯蔵放出能が20〜200μmol/gであり、BET比表面積値が20m/g以上であることを特徴とする触媒である(本発明1)。
【0017】
また、本発明は、カルシウム及びアルミニウムを主成分とする複合酸化物からなる触媒であり、該触媒にAu,Ag,Cu,Pt,Pd,Ni,Ir,Rh,Co,Os,Ruの中から選ばれた1種または2種以上の金属元素を前記触媒に対して重量比で0.001〜10wt%担持しており、該触媒の500℃での酸素貯蔵放出能が20〜200μmol/gであり、BET比表面積値が20m/g以上であることを特徴とする触媒である(本発明2)。
【0018】
また、本発明は、カルシウム及びアルミニウムを主成分とし、前記アルミニウムに対して0.001〜10mol%の鉄を含有する複合酸化物からなる触媒であって該触媒にAu,Ag,Cu,Pt,Pd,Ni,Ir,Rh,Co,Os,Ruの中から選ばれた1種または2種以上の金属元素を前記触媒に対して重量比で0.001〜10wt%担持しており、該触媒の500℃での酸素貯蔵放出能が20〜200μmol/gであり、BET比表面積値が20m/g以上であることを特徴とする触媒である(本発明3)。
【0019】
また、本発明は、本発明1乃至3のいずれかの触媒を構成するカルシウムとアルミニウムとの割合がモル比で0.1〜0.9の範囲であることを特徴とする触媒である(本発明4)。
【0020】
また、本発明は、アルカリ性水溶液と、カルシウム塩原料、アルミニウム塩原料及び鉄塩原料とを混合し、pH値が7.0〜14.0の範囲にて300℃以下の温度範囲で熟成して層状複水酸化物粒子を得て、濾別、水洗した後、400〜1000℃の温度範囲で焼成することを特徴とする本発明1又は4の触媒の製造法である(本発明5)。
【0021】
また、本発明は、アルカリ性水溶液と、カルシウム塩原料及びアルミニウム塩原料とを混合し、pH値が7.0〜14.0の範囲にて300℃以下の温度範囲で熟成して層状複水酸化物粒子を得て、濾別、水洗した後、400〜1000℃の温度範囲で焼成し、次いで、Au,Ag,Cu,Pt,Pd,Ni,Ir,Rh,Co,Os,Ruから選ばれる少なくとも一種の元素を担持し、次いで、加熱することを特徴とする本発明2又は4の触媒の製造法である(本発明6)。
【0022】
また、本発明は、アルカリ性水溶液と、カルシウム塩原料、アルミニウム塩原料及びAu,Ag,Cu,Pt,Pd,Ni,Ir,Rh,Co,Os,Ruから選ばれる少なくとも一種の元素の原料塩とを混合し、pH値が7.0〜14.0の範囲にて300℃以下の温度範囲で熟成して層状複水酸化物粒子を得て、濾別、水洗した後、400〜1000℃の温度範囲で焼成し、次いで、加熱することを特徴とする本発明2又は4の触媒の製造法である(本発明7)。
【0023】
また、本発明は、本発明1乃至4のいずれかの触媒からなる水性ガスシフト反応用触媒である(本発明8)。
【0024】
また、本発明は、本発明8の水性ガスシフト反応用触媒、水及び一酸化炭素を、50〜800℃の温度範囲で反応させることによって、水素と二酸化炭素とを製造することを特徴とする水性ガスの製造方法である(本発明9)。
【0025】
また、本発明は、本発明1乃至4のいずれかの触媒からなる排ガス浄化用触媒である(本発明10)。
【0026】
また、本発明は、本発明10の排ガス浄化用触媒と排ガスを、150℃〜1000℃の温度範囲で接触させ、排ガスを浄化する方法である(本発明11)。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る触媒は、酸素貯蔵放出能が高いので、水性ガスシフト反応及び排ガス浄化をより効率よく行えるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0029】
本発明に係る触媒の500℃の酸素貯蔵放出能(OSC)は20〜200μmol/gである。酸素貯蔵放出能が20μmol/g未満の場合には、酸素貯蔵放出能が低いため触媒として機能が十分ではない。好ましくは40〜200μmol/gである。
【0030】
本発明に係る触媒のBET比表面積値は20m/g以上である。比表面積が増大すると活性点の数が増加し、より高い活性が得られる。好ましくは25m/g以上であり、より好ましくは30m/g以上である。上限は150m/g程度である。さらに貴金属を担持した場合には、比表面積が増大すると担持した金属が高分散しやすくなり、より高い触媒活性が得られる。
【0031】
本発明に係る触媒は、カルシウム及びアルミニウムからなる複合酸化物からなる。カルシウムとアルミニウムとのモル比(Ca/Al)は0.1〜0.9の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.9の範囲である。カルシウムとアルミニウムの比率が小さくなるほど焼成時に細孔を持ちやすいアルミニウムの比率が増加し、比表面積は高くなる傾向にあるが、カルシウムとアルミニウムの比率が前記範囲を超えると、カルシウムの効果が減少してしまう。
【0032】
本発明に係る触媒の構成相は、カルシウムアルミネートを主成分とすることが好ましく、水性ガスシフト用触媒及び排ガス浄化用触媒として用いる場合は、C12A7を主成分とするものが好ましい。
【0033】
また、本発明に係る触媒は、構成元素のアルミニウムを鉄で置換してもよく、単に、鉄を担持した触媒よりも鉄が高分散しやすいため、より高い活性が得られる。鉄の置換量はアルミニウムに対して0.001〜10mol%が好ましく、より好ましくは0.1〜5mol%である。
【0034】
さらに、本発明に係る触媒は、Au,Ag,Cu,Pt,Pd,Ni,Ir,Rh,Co,Os,Ruの中から選ばれた1種または2種以上の金属元素を触媒に対する重量比で0.001〜10wt%担持することが好ましい。また、金属成分の存在形態は、特に限定されるものではない。
【0035】
次に、本発明に係る触媒の製造法について述べる。
【0036】
本発明においては、アルカリ性水溶液と、カルシウム塩及びアルミニウム塩原料とを混合し、pH値が7.0〜14.0の範囲、300℃以下の温度範囲で熟成して層状複水酸化物粒子(ハイドロタルサイト粒子)を得て、濾別、水洗した後、400〜1000℃の温度範囲で焼成する。
【0037】
本発明におけるアルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液及び水酸化カリウム水溶液等が好ましい。
【0038】
本発明におけるカルシウム塩としては、硫酸塩、塩化物、硝酸塩などの各種金属塩を用いることができる。
【0039】
本発明におけるアルミニウム塩原料としては水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム塩原料、塩化アルミニウム塩原料及び硝酸アルミニウム塩原料などであり、前記アルミニウム塩原料を溶解した水溶液を使用することができる。
【0040】
カルシウム塩とアルミニウム塩原料との混合割合は、カルシウムとアルミニウムとのモル比が0.1〜0.9の範囲になる割合であり、より好ましくは0.3〜0.9である。
【0041】
本発明における熟成反応中のpH値は7.0〜14であり、好ましくは10〜13である。pH値が7.0未満の場合、板面径が大きく、適度な厚みを有した層状複水酸化物粒子が得られない。
【0042】
本発明における熟成反応中の温度は300℃以下であり、好ましくは20〜105℃である。300℃を越える場合は、超高圧に耐え得る装置が必要となるため好ましくない。
【0043】
本発明における層状複水酸化物粒子の組成は、カルシウムとアルミニウムとのモル比が0.1〜0.9の範囲である。
【0044】
なお、本発明においては、所定のカルシウムとアルミニウムとのモル比を有する触媒を得るために、前記製造法において、過剰量のアルミニウムを用いることによって、所定の組成の層状複水酸化物粒子とアルミニウム化合物(アルミナ、ベーマイトなど)を混合させた後、加熱焼成する方法、又は、層状複水酸化物粒子を製造した後、アルミニウム化合物(アルミナ、ベーマイトなど)を添加、混合し、加熱処理する方法などを用いてもよい。
【0045】
また、得られた層状複水酸化物粒子を水洗することによって物質中のカルシウムを溶かし、カルシウムとアルミニウムの組成を変化させてもよく、より均一にカルシウムとアルミニウムが混合した状態になる。
【0046】
本発明における焼成温度が400℃未満の場合には、高い酸素貯蔵放出能を有する触媒が合成できず、1000℃より高い温度では、比表面積が小さくなり、触媒性能が低下するので好ましくない。好ましくは600〜800℃の範囲である。
【0047】
本発明における焼成のときの雰囲気は、大気中が好ましい。
【0048】
なお、本発明においては、前記焼成の後、50〜800℃の温度範囲で還元処理を行ってもよい。
【0049】
本発明に係る鉄を含有する触媒は、前記製造法において、カルシウム塩及びアルミニウム塩原料とともに鉄塩原料を添加・混合すればよい。
【0050】
鉄塩原料としては、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄塩原料化第一鉄塩原料化第二鉄などである。鉄塩原料の添加割合は、アルミニウムに対して0.001〜10mol%である。
【0051】
本発明に係るAu,Ag,Cu,Pt,Pd,Ni,Ir,Rh,Co,Os,Ruを担持した触媒は、前記製造法において加熱処理後の触媒に対して通常の方法で担持させればよく、例えば、硝酸ニッケル水溶液に該触媒を浸し、乾燥させてもよい。また、この後、加熱還元処理を行っても良い。
【0052】
また、本発明においては、カルシウム塩及びアルミニウム塩原料、必要により鉄塩原料と、Au,Ag,Cu,Pt,Pd,Ni,Ir,Rh,Co,Os,Ruから選ばれる少なくとも一種の元素の塩原料とを、アルカリ性水溶液と混合することによって、Au,Ag,Cu,Pt,Pd,Ni,Ir,Rh,Co,Os,Ruから選ばれる少なくとも一種の元素を含有させてもよく、Ag,Cu,Pt,Pd,Ni,Ir,Rh,Co,Os,Ruから選ばれる少なくとも一種の元素をより高分散の状態で担持することができる。
【0053】
次に、本発明に係る触媒を用いた水性ガスの製造法について述べる。
【0054】
本発明に係る触媒の存在下で、水及び一酸化炭素を50℃〜800℃の温度範囲で反応させることで、水素と二酸化炭素が得られる。触媒の存在割合は水と一酸化炭素を合わせたガス空間速度で100/h以上が好ましい。
【0055】
次に、本発明に係る触媒を用いた排ガスの浄化方法について述べる。
【0056】
本発明に係る触媒を、150℃〜1000℃の温度範囲でHC、CO等を含む排ガスと接触させて排ガスを浄化することができる。触媒の存在割合は全ガス空間速度で100/h以上が好ましい。
【0057】
<作用>
本発明において、最も重要な点は、カルシウム及びアルミニウムの複合酸化物を主成分とする触媒は、高い酸素貯蔵放出能を有する点である。
【0058】
本発明においては、あらかじめ、カルシウムとアルミニウムとからなる層状複水酸化物を製造した後、加熱焼成してカルシウム及びアルミニウムからなる複合酸化物を主成分とする触媒としているので、構成元素がより均一に分散しており、焼成温度を低くしても、高い酸素貯蔵放出能を有するカルシウム及びアルミニウムからなる複合酸化物を得ることができ、且つ、層状複水酸化物に由来して高い比表面積を有する触媒を得ることができ、結果、活性点をより多くすることができる。従って、より高い活性を持つ触媒が得られる。
【0059】
また、本発明に係る鉄を含有する触媒は、鉄もまたカルシウムやアルミニウムと同じように高分散しているため、より高い活性が得られる。
【0060】
また、本発明に係るAu,Ag,Cu,Pt,Pd,Ni,Ir,Rh,Co,Os,Ruを担持した触媒は、より高い活性を有するものである。これら元素を担持する場合、特に低温域での触媒活性を高めるのに有用である。本発明に係る触媒が高い酸素貯蔵放出能を有するとともに、高い比表面積を有するので、前記Au等の金属が高分散しやすく、十分な反応が進行するためと推定している。
【0061】
また、本発明に係る触媒は、前述した通り高い活性を有するので、HCやCO等の酸化反応や排ガス浄化に対しても高い活性を示す。
【実施例】
【0062】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0063】
触媒の酸素貯蔵放出能は、パルス式反応装置により、500℃にてパルス一回当たり0.5ccの2%CO/Arガスを用いて、パルス法によって測定し、還元によって消失した酸素量を測定し、引き続き、500℃にて20%O/Nガスを用いて、パルス法によって測定し、酸化によって増加した酸素量を測定した。前記測定を連続して2回行い、消失した酸素量及び増加した酸素量の各酸素量について測定値を平均して、酸化還元時に移動した酸素量としてOSCを算出した。
【0064】
触媒を構成するカルシウム、アルミニウム、鉄、Au,Ag,Cu,Pt,Pd,Ni,Ir,Rh,Co,Os,Ruの含有量は、該触媒を酸で溶解し、「プラズマ発光分光分析装置 SPS4000(セイコー電子工業(株))」で測定して求めた。
【0065】
BET比表面積値は、窒素によるBET法により測定した。
【0066】
相の同定は、X線回折測定で行った。X線回折装置は「X線回折装置RINT−2500(理学電機(株)製)」(管球:Cu、管電圧:40kV、管電流:300mA、ゴニオメーター:広角ゴニオメーター、サンプリング幅:0.020°、走査速度:2°/min、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.50mm)を使用した。
【0067】
<実施例1>
苛性ソーダ水溶液(濃度18.55mol/l)500mlを40℃に加熱して撹拌しておき、塩化アルミニウム六水和物 65.01g及び塩化カルシウム二水和物33.92gを水500mlに溶解した水溶液を添加し、40℃に保持したまま4時間熟成した。得られた沈殿物を濾過、洗浄して、結晶構造を同定したところ、Ca−Al系のハイドロタルサイトであった。次いで、700℃で焼成した。
得られた粉末をジニトロジアンミン白金硝酸水溶液に浸漬して、Ptを担持し、600℃で2時間焼成した後、600℃で水素還元を行った。白金の担持量は触媒全体に対し0.5wt%であった。構成相はC12A7であった。
【0068】
<実施例2>
カルシウムとアルミニウムの比率を0.49に変化させた以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0069】
<実施例3>
塩化カルシウム二水和物、塩化アルミニウム六水和物とともに第二塩化鉄を用いて実施例1と同様に合成した。鉄/(アルミニウム+鉄)比は0.02であり、白金の担持量は触媒全体に対し0.5wt%であった。構成相はC12A7であった。
【0070】
<実施例4>
塩化カルシウム二水和物、塩化アルミニウム六水和物とともに第二塩化鉄を用いて実施例1と同様に合成した。鉄/(アルミニウム+鉄)比は0.04であり、白金の担持量は触媒全体に対し0.5wt%であった。構成相はC12A7であった。
【0071】
<実施例5>
Ptの担持量を3wt%とした以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0072】
<実施例6>
Ptの担持量を5wt%とした以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0073】
<実施例7>
Ptの変わりにPdを用いた以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0074】
<実施例8>
Ptの変わりにRuを用いた以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0075】
<実施例9>
Ptの変わりにRhを用いた以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0076】
<実施例10>
Ptの変わりにCuを用いた以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0077】
<実施例11>
Ptの変わりにAuを用いた以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0078】
<実施例12>
Ptの変わりにNiを用いた以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0079】
<実施例13>
塩化カルシウム二水和物、塩化アルミニウム六水和物とともに第二塩化鉄を用いて実施例1と同様に合成した。鉄/(アルミニウム+鉄)比は0.02であり、白金の担持量は触媒全体に対し0wt%であった。構成相はC12A7であった。
【0080】
<実施例14>
鉄/(アルミニウム+鉄)比を0.04とした以外は、前記実施例13と同様にして製造した。
【0081】
<比較例1>
水酸化アルミニウム 42.12g及び炭酸カルシウム48.00gに純水を50ml加えてボールミルで粉砕し、乾燥させ、1350℃で焼成した。これにジニトロジアンミン白金硝酸水溶液を用いて、含浸法によりPtを担持し、600℃で2時間焼成した後、600℃で水素還元を行った。白金の担持量は0.5wt%とした。
【0082】
<比較例2>
比較例1と同様に合成し、Ptの担持量を3wt%とした。
【0083】
<比較例3>
γ−Alにジニトロジアンミン白金硝酸水溶液を用いて、含浸法によりPtを担持し、600℃で焼成した後、600℃で水素還元を行った。白金の担持量は0.5wt%とした。
【0084】
<比較例4>
実施例1と同様に合成し、カルシウムとアルミニウムの比率を0.05とした。
【0085】
<比較例5>
実施例1と同様に合成し、カルシウムとアルミニウムの比率を2.00とした。
【0086】
<比較例6>
比較例1と同様に合成し、カルシウムとアルミニウムの比率を0.69とした。
【0087】
<比較例7>
実施例1と同様に合成し、Ptの担持量を12wt%とした。
【0088】
<比較例8>
実施例14と同様に合成し、カルシウムとアルミニウムの比率を1.07とし、鉄/(アルミニウム+鉄)比は0.2とした。
【0089】
<比較例9>
γ−Alを700℃で焼成した後、600℃で水素還元を行った。
【0090】
<比較例10>
実施例13と同様に合成し、カルシウムとアルミニウムの比率を0.91とした。700℃で焼成し、鉄を含浸法により鉄を担持し、600℃で水素還元を行った。鉄の担持量を、鉄/(アルミニウム+鉄)比で0.05とした。
【0091】
<CO転化率の測定>
実施例1〜12、比較例1〜7
得られた各触媒を、0.5から1mmに整粒した。
触媒の成形体を電気炉で加熱し、500℃でCOが33体積%、水蒸気が67体積%のガスを空間速度(GHSV)が100000h−1で流通させた。このときの出口ガス組成をガスクロマトグラフで測定した。
各触媒の諸特性及びCO転化率を表1に示す。
【0092】
実施例13〜14、比較例8〜10
触媒の成形体を電気炉で加熱し、500℃でCOが33体積%、水蒸気が67体積%のガスを空間速度(GHSV)が20000h−1で流通させた。このときの出口ガス組成をガスクロマトグラフで測定した。
各触媒の諸特性及びCO転化率を表2に示す。
【0093】
なお、CO転化率が100%にならないのは、反応平衡に依存するからである。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
表1より、本発明に係る触媒は、高い比表面積を有するともに、酸素貯蔵放出能も高く、高い活性を示すものである。
【0097】
また、本発明に係る触媒は、HCやCO等の酸化反応や排ガス浄化に対しても高い活性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のカルシウム及びアルミニウム等からなる触媒は酸素貯蔵放出能が高いので、従来のものと比べ水性ガスシフト反応及び排ガス浄化をより効率よく行えるという優れた効果を奏する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム及びアルミニウムを主成分とし、前記アルミニウムに対して0.001〜10mol%の鉄を含有する複合酸化物からなる触媒であって、該触媒の500℃での酸素貯蔵放出能が20〜200μmol/gであり、BET比表面積値が20m/g以上であることを特徴とする触媒。
【請求項2】
カルシウム及びアルミニウムを主成分とする複合酸化物からなる触媒であり、該触媒にAu,Ag,Cu,Pt,Pd,Ni,Ir,Rh,Co,Os,Ruの中から選ばれた1種または2種以上の金属元素を前記触媒に対して重量比で0.001〜10wt%担持しており、該触媒の500℃での酸素貯蔵放出能が20〜200μmol/gであり、BET比表面積値が20m/g以上であることを特徴とする触媒。
【請求項3】
カルシウム及びアルミニウムを主成分とし、前記アルミニウムに対して0.001〜10mol%の鉄を含有する複合酸化物からなる触媒であって該触媒にAu,Ag,Cu,Pt,Pd,Ni,Ir,Rh,Co,Os,Ruの中から選ばれた1種または2種以上の金属元素を前記触媒に対して重量比で0.001〜10wt%担持しており、該触媒の500℃での酸素貯蔵放出能が20〜200μmol/gであり、BET比表面積値が20m/g以上であることを特徴とする触媒。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の触媒を構成するカルシウムとアルミニウムとの割合がモル比で0.1〜0.9の範囲であることを特徴とする触媒。
【請求項5】
アルカリ性水溶液と、カルシウム塩原料、アルミニウム塩原料及び鉄塩原料とを混合し、pH値が7.0〜14.0の範囲にて300℃以下の温度範囲で熟成して層状複水酸化物粒子を得て、濾別、水洗した後、400〜1000℃の温度範囲で焼成することを特徴とする請求項1又は4に記載の触媒の製造法。
【請求項6】
アルカリ性水溶液と、カルシウム塩原料及びアルミニウム塩原料とを混合し、pH値が7.0〜14.0の範囲にて300℃以下の温度範囲で熟成して層状複水酸化物粒子を得て、濾別、水洗した後、400〜1000℃の温度範囲で焼成し、次いで、Au,Ag,Cu,Pt,Pd,Ni,Ir,Rh,Co,Os,Ruから選ばれる少なくとも一種の元素を担持し、次いで、加熱することを特徴とする請求項2又は4記載の触媒の製造法。
【請求項7】
アルカリ性水溶液と、カルシウム塩原料、アルミニウム塩原料及びAu,Ag,Cu,Pt,Pd,Ni,Ir,Rh,Co,Os,Ruから選ばれる少なくとも一種の元素の原料塩とを混合し、pH値が7.0〜14.0の範囲にて300℃以下の温度範囲で熟成して層状複水酸化物粒子を得て、濾別、水洗した後、400〜1000℃の温度範囲で焼成し、次いで、加熱することを特徴とする請求項2又は4記載の触媒の製造法。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれかに記載の触媒からなる水性ガスシフト反応用触媒。
【請求項9】
請求項8記載の水性ガスシフト反応用触媒、水及び一酸化炭素を、50〜800℃の温度範囲で反応させることによって、水素と二酸化炭素とを製造することを特徴とする水性ガスの製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれかに記載の触媒からなる排ガス浄化用触媒。
【請求項11】
請求項10記載の排ガス浄化用触媒と排ガスとを、150℃〜1000℃の温度範囲で接触させ、排ガスを浄化する方法。

【公開番号】特開2006−122793(P2006−122793A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313320(P2004−313320)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】