説明

触手検出装置および車両制御システム

【課題】構成部品点数の増加や構成部品取り付けの作業工数の増加を抑制することで、コストを低減できる触手検出装置および車両制御システムを提供する。
【解決手段】ドアハンドル3に人体2が触れていると、人体2、ドアハンドル3を含む分布定数回路の信号経路が所定の周波数で共振するように前記信号経路の信号経路長をあらかじめ調整しておく。そして、前記所定の周波数の高周波信号を前記信号経路に供給したときの共振現象を利用して、ドアハンドル3に人が触れている状態を間接的に識別し、従来のようなドアハンドルに人が触れているか否かを検出する触手検出センサを設ける必要をなくす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば自動車のドアロックの施錠、解錠、エンジンの始動を含む各種操作に用いて好適な触手検出装置および車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子キーを携帯するだけで、自動車のドアロックの施錠、解錠、エンジンの始動を可能にする車両制御システムとしては、スマートエントリーシステムと呼ばれる機能が実現されている。
このスマートエントリーシステムでは、低周波数帯域(Low Frequency帯)の電波にのせて自動車本体から送信される暗号化のための信号を運転者の携帯する電子キーが受信する。
そして、電子キーでは受信した前記暗号化のための信号をもとに暗号化演算を行い、得られた暗号化演算結果をUHF(Ultra High Frequency)帯の電波にのせて前記自動車に送信する双方向通信を行い、これにより自動車のドアロック機構の施錠、解錠制御、エンジンの始動制御などといった特徴的な機能を実現する。
【0003】
図6は、従来のスマートエントリーシステムの構成を示す機能ブロック図である。この
スマートエントリーシステムは、運転者105が携帯する電子キー101と、自動車のドア103のドアハンドル104に運転者105が触れた状態を検出する触手検出センサ102と、低周波数帯域の電波にのせて自動車本体から電子キー101へ暗号化のための信号を送信する自動車本体に設けられたLF送信アンテナ106と、電子キー101から送り返された暗号化演算結果を受信するための自動車本体に設けられたUHF受信アンテナ107と、各部の制御を行う制御部108とを備えている。
触手検出センサ102、LF送信アンテナ106、UHF受信アンテナ107および制御部108は自動車本体に取り付けられている。
【0004】
この従来のスマートエントリーシステムでは、触手検出センサ102は、運転者105がドアハンドル104に触れることによる静電容量の変化、電界の変化を電気的に検出することでドアハンドル104に運転者105が触れた状態を検出する。
制御部108は、運転者105がドアハンドル104に触れた状態を触手検出センサ102により検出すると、LF送信アンテナ106から低周波数帯域の電波にのせて電子キー101へ暗号化のための信号を送信する。
電子キー101では、受信した暗号化のための信号をもとに暗号化演算を行い、得られた暗号化演算結果をUHF帯の電波にのせて送信する。
自動車本体に取り付けられている制御部108では、UHF受信アンテナ107により前記暗号化演算結果を受信すると、受信した暗号化演算結果をもとに電子キー101に対し認証を行い、ドアロック機構の施錠、解錠制御、エンジンの始動制御などを行う。
【0005】
このような電子キーを用いた車両制御システムとして、携帯機と車載器間でLF−UHF通信を行う構成とし、オートロック距離を遠距離または近距離にユーザが指定可能なオートロック距離スイッチを設けたスマートエントリーシステムが提案されている(特許文献1参照)。
このシステムでは、オートロック距離スイッチにより近距離が指定されている場合、前記車載器から前記携帯機へのLF通信が成立しなくなったことに基づいてオートロック機能を実行し、遠距離が指定されている場合には、前記携帯機から前記車載器へのUHF通信が成立しなくなったことに基づいてオートロック機能を実行する。
【特許文献1】特開2003−269023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って従来の車両制御システムでは、触手検出センサ102、LF送信アンテナ106およびUHF受信アンテナ107を含む構成部品をドアや車両本体に配置する必要がある。
そのため、これら各構成部品点数の増加や、各構成部品取り付けの作業工数が増加することによるコストアップが避けられないという課題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、構成部品点数の増加や構成部品取り付けの作業工数の増加を抑制することで、コストを低減できる触手検出装置および車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる触手検出装置は、車両の一部に設けられた電極部と、高周波信号を発生させる高周波信号供給部と、前記電極部と前記高周波信号供給部との間を接続し、前記電極部に人体が触れているかいないかに応じて前記高周波信号供給部から供給された前記高周波信号の周波数における共振状態が変化する信号伝送路と、前記信号伝送路の共振状態を検出し検出信号を出力する共振検出部と、前記高周波信号が送信信号により変調された被変調波を生成する変調部と、前記共振検出部が出力する前記検出信号をもとに前記信号伝送路の共振状態を判定し、前記判定結果をもとに前記信号伝送路を経由する通信先へ送信する前記送信信号を前記変調部へ出力し前記高周波信号が前記送信信号により変調された被変調波を生成させ、前記被変調波を前記電極部を含む信号伝送路へ出力する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる車両制御システムは、車両の一部に設けられた電極部と、高周波信号を発生させる高周波信号供給部と、前記電極部と前記高周波信号供給部との間を接続し、前記電極部に人体が触れているかいないかに応じて前記高周波信号供給部から供給された前記高周波信号の周波数における共振状態が変化する信号伝送路と、前記信号伝送路の共振状態を検出し検出信号を出力する共振検出部と、前記高周波信号が送信信号により変調された被変調波を生成する変調部と、前記共振検出部が出力する前記検出信号をもとに前記信号伝送路の共振状態を判定し、前記判定結果をもとに前記信号伝送路を経由する通信先へ送信する前記送信信号を前記変調部へ出力し前記高周波信号が前記送信信号により変調された被変調波を生成させ、前記被変調波を前記電極部を含む信号伝送路へ出力する送信制御部と、前記通信先から、前記信号伝送路とは異なる通信経路で車両制御信号を受信する受信装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高周波信号が供給された状態で、電極部に人体が触れているかいないかに応じて信号伝送路の共振状態が変化するように前記信号伝送路を調整し、前記信号伝送路の共振状態を判定し、前記判定結果をもとに前記高周波信号が送信信号により変調された被変調波を前記電極部を含む信号伝送路へ出力するように構成したので、前記電極部に人体が触れていると前記信号伝送路を共振している状態に調整でき、前記信号伝送路の共振状態の判定結果をもとに前記電極部に人体が触れているかいないかを検出できるため、前記電極部に人体が触れているかいないかを検出する触手検出センサが不要となり、構成部品点数の増加や構成部品取り付けの作業工数の増加が抑制でき、コストを低減できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の実施の形態である触手検出装置を適用した車両制御システムの構成を示すブロック図である。
この車両制御システムは、たとえば運転者が携帯する電子キー通信装置1と、自動車本体の一部であるドアのドアハンドル(電極部)3、搬送波発振部(高周波信号供給部)4、送信信号処理部5、変調部6、共振検出部7、切り替え部8、UHF受信アンテナ(受信装置)9、局部発信器(受信装置)10、周波数変換部(受信装置)11、信号処理部(受信装置)12および制御部(送信制御部)13を備えている。
【0011】
電子キー通信装置1は、携帯している運転者がドアハンドル3に触れていると、ドアハンドル3を介して運転者の人体2を信号経路とする人体通信により、自動車本体に設けられた制御部13から送信された送信信号や暗号化演算情報を受信する機能、前記受信した暗号化演算情報をもとに暗号化演算を行う機能、前記暗号化演算の結果を前記人体通信とは異なる信号経路の無線通信によるUHF波にのせて送り返す機能を含む各種機能を備えている。
【0012】
図4は、電子キー通信装置1の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、電子キー通信装置1は、人体通信用の受信アンテナ31、増幅器32、送信信号復調器33、変調器41、搬送波発振部42、増幅器43、UHF送信アンテナ44、制御部51および操作部61を備えている。
受信アンテナ31は人体通信用の受信アンテナであり、電界または微弱電流によりドアハンドル3に触れている運転者の人体2を経由して自動車本体から送られてくる高周波信号を受信するアンテナである。
この受信アンテナ31は、運転者が携帯しているだけで、分布定数回路を構成する運転者の人体2と高周波的に結合し、ドアハンドル3に触れている運転者の人体2を経由して自動車本体から送られてくる高周波信号を受信することができる。
【0013】
増幅器32は、受信アンテナ31により受信した高周波信号を増幅する回路である。
送信信号復調器33は、増幅器32で増幅した高周波信号の周波数変換、自動車本体に設けられた制御部13から送信されてきた送信信号や暗号化演算情報の抽出などの復調処理を行う回路である。
【0014】
制御部51はマイクロコンピュータにより構成され、暗号化演算部52を備えている。
暗号化演算部52は、自動車本体から送られてきた前記暗号化演算情報をもとに暗号化演算を行う機能を備えている。
この暗号化演算結果は制御部51から変調器41へ出力される。
操作部61は、ドアロックの施錠、解錠や、エンジンの始動などを遠隔操作するための操作ボタンを含むキー入力部を備えている。
制御部51では、前記キー入力部において入力操作された操作情報を、I/Oポートを介して取り込み、前記入力操作に応じたドアロックの施錠、解錠や、エンジンの始動などの対応する機能を識別し、識別した機能に応じた送信情報を暗号化演算部52により暗号化し、暗号化情報として出力する。
変調器41は、搬送波発振部42で生成した搬送波を前記送信情報により所定の変調方式で変調し被変調波を生成し、さらに前記被変調波をUHF帯へ周波数変換するなどの変調処理を行う回路である。
増幅器43は、前記周波数変換された被変調波を増幅する回路である。
UHF送信アンテナ44は、増幅器43により増幅された前記被変調波をUHF帯の電波信号として自動車本体へ送信する。
【0015】
図1に示すように、ドアハンドル3は、ドアを開閉する際に人体2と接触する人が把持する取手であり金属製である。
一般にアンテナから指定の周波数帯の電波を放射する場合、整合を良好にして反射をなくし効率よくアンテナから電波が放射されるようするためにアンテナを含めた回路が所定の周波数に共振するようにアンテナ長、伝送路のキャパシタやインダクタンスを含む回路定数を調整する。
このドアハンドル3を含む高周波回路についても、ドアハンドル3に人が触れている状態でドアハンドル3へ所定の周波数の高周波信号を供給したときに、ドアハンドル3と人体2を含む高周波信号経路の回路特性が、前記所定の周波数で共振し、人体2を含む高周波信号経路を介して信号が効率よく伝搬するように信号源を含む伝送路長、伝送路のキャパシタやインダクタンスなどの回路定数が調整されている。
つまり、ドアハンドル3と人体2を含む高周波信号経路と前記所定の周波数の高周波信号源との間の整合が確立するように調整されている。
すなわち、ドアハンドル3に人体2が触れた状態になると、ドアハンドル3と人体2を含む高周波信号経路の回路特性が、前記所定の周波数で共振し、人体2を含む高周波信号経路を介して信号が効率よく伝搬するようになっている。
【0016】
搬送波発振部4は、前記所定の周波数の搬送波を生成し出力する回路である。
この搬送波の周波数は、ドアハンドル3を含む高周波信号経路に供給される高周波信号の周波数、波長λと経路長とにより規定されるドアハンドル3に人体2が触れている共振している状態における共振周波数fと一致するように設定されている。
送信信号処理部5は、制御部13から出力された送信信号に対し、増幅や変調部6の変調方式に応じた信号処理を行う回路である。
変調部6は、搬送波発振部4で発振出力させた搬送波を前記送信信号により所定の変調方式で変調処理し被変調波として出力する回路である。
【0017】
共振検出部7は、搬送波発振部4で発振出力させた所定周波数fの搬送波をドアハンドル3へ供給したときのドアハンドル3を含む高周波信号経路が、共振している状態にあるか否かを検出する回路である。
ドアハンドル3に人体2が触れた状態で所定周波数fの搬送波が供給されると、高周波信号源からのドアハンドル3と人体2を含む高周波信号経路は共振した状態となり、また、搬送波発振部4の高周波信号源との間の整合が確立する状態となる。
一方、ドアハンドル3に人体2が触れていない状態では、所定周波数fの搬送波が供給されてもドアハンドル3を含む高周波信号経路は共振した状態とはならず、搬送波発振部4の高周波信号源との間の整合は確立しない。
共振検出部7は共振している状態を検出すると共振検出信号を出力する。
この結果、共振検出部7が共振している状態を検出できれば、ドアハンドル3に人体2が触れた状態と判定でき、共振している状態を検出できなければ、ドアハンドル3に人体2が触れていない状態と判定できることになる。
【0018】
図2は、共振検出部7における共振状態の検出原理を示す説明図である。
図2において実線で示す共振特性は、ドアハンドル3に人体が触れているときの人体とドアハンドル3を含む高周波的に分布定数回路を構成する信号経路の共振曲線である。
このときの共振周波数がfとなるように高周波信号の給電点からの人体とドアハンドル3を含む信号経路長が設定されている。
図2において破線で示す共振特性は、ドアハンドル3に人体が触れていないときの共振曲線であり、このときの共振周波数はfとなる。
従って、ドアハンドル3に人体が触れていない状態で所定周波数fの搬送波が供給されると、定在波比VSWRは破線で示す共振特性のP点の値となり、共振状態とはならない。
一方、ドアハンドル3に人体が触れた状態で所定周波数fの搬送波が供給されると、定在波比VSWRは実線で示す共振特性のP点の値“1”となり、共振状態となる。
従って、所定周波数fの搬送波を供給した状態で定在波比VSWRを測定することで共振状態であるか否か、ドアハンドル3に人が触れている状態であるか否かを判定することができる。
【0019】
図1に示すように、切り替え部8は、制御部13から出力される制御信号をもとに、ドアハンドル3へ供給される信号の経路を切り替える切り替えスイッチを備えている。
この替えスイッチにより、切り替え部8は、ドアハンドル3へ供給される信号を、共振検出部7を経由した搬送波発振部4で発振出力させた所定周波数fの搬送波、または変調部6を経由した前記搬送波が送信信号により所定の変調方式で変調されてなる被変調波のいずれかに切り替える。
この切り替えスイッチは、信号経路を切り替える前記制御信号が供給される制御端子を備えている。そして、この切り替えスイッチは、たとえば前記制御信号がオンとなっているときには信号経路を共振検出部7を経由する信号経路に切り替え、前記制御信号がオフとなっているときには変調部6を経由する信号経路に切り替える。
【0020】
UHF受信アンテナ9は、電子キー通信装置1のUHF送信アンテナ44から送信されたUHF帯の電波を無線周波数の電気信号として受信する。
局部発振器10は、周波数変換のための局部発振出力を生成する。
周波数変換部11は、UHF受信アンテナ9で受信した、電子キー通信装置1から送信された前記暗号化情報が含まれる前記無線周波数の電気信号の周波数を、局部発振器10により生成された局部発振出力により中間周波信号へ周波数変換し出力する回路である。
信号処理部12は、前記中間周波信号へ周波数変換された前記暗号化情報が含まれる信号の振幅制限や周波数選別などの信号処理を行い、電子キー通信装置1から送信された前記暗号化情報を復調し抽出し、制御部13へ出力する回路である。
制御部13は、この電子キー通信装置が適用されるドアロック制御システムの中枢部分であり、各部の制御を行うマイクロコンピュータにより構成されている。
そして、制御部13は暗号化演算部14を備えており、切り替え部8の切り替え制御処理、共振検出部7から出力される共振検出信号をもとに行う共振状態の判定処理、搬送波発振部4の制御処理、暗号化情報の読み出し処理、認証処理を含む各種処理を実行し、ドアロックの施錠、解錠の制御やエンジンの始動制御を行う。
暗号化演算部14は、暗号化されて電子キー通信装置1から送られてきた認証信号や電子キーデータを含む各種暗号化情報に対する暗号の解読、電子キー通信装置1へ送られる応答要求信号、認証許可信号および受信応答信号を含む各種送信信号の暗号化を行う。
【0021】
次に動作について説明する。
図3は、車両制御システムにおける自動車本体に設けられた制御部13の動作を示すフローチャートである。
図5は、たとえば自動車の運転者が携帯する電子キー通信装置1の制御部51の動作を示すフローチャートである。
以下、これら図3および図5に示すフローチャートを参照して車両制御システムの動作を説明する。
先ず、自動車本体に設けられた制御部13は、切り替え部8を制御して信号経路切替制御を行う(ステップS1)。このため、制御部13は、制御信号を一定の周期で切り替え部8へ出力している。
この制御信号がオンになると切り替え部8は信号経路を共振検出部7を経由する信号経路に切り替え、次に搬送波制御を行う(ステップS2)。
この搬送波制御では、搬送波発振部4において所定周波数fの搬送波を発振させ、この搬送波を共振検出部7および変調部6に供給する。
切り替え部8により信号経路は共振検出部7を経由する信号経路に切り替えられているため、所定周波数fの搬送波は共振検出部7と切り替え部8とを経由してドアハンドル3へ供給される。
このとき、ドアハンドル3に人体2が触れていると、ドアハンドル3の先には高周波的に分布定数回路が人体2を含む信号経路として形成されることから、所定周波数fの搬送波が供給されているドアハンドル3を含む信号経路は共振している状態となる。
したがって、図2に示す定在波比VSWRは“1”となり、共振検出部7は共振している状態を検出し共振検出信号を出力する。
【0022】
制御部13は、制御部13は、共振検出部7から出力された共振検出信号を検出すると、所定周波数fの搬送波が供給されているドアハンドル3を含む信号経路が共振している状態であると判定し(ステップS3)、続いて信号経路切替制御を行う(ステップS4)。
この信号経路切替制御では、それまで出力していた制御信号をオンからオフへ切り替える。この結果、切り替え部8により信号経路が変調部6を経由する信号経路へ切り替えられる。
【0023】
次に、この状態で制御部13は送信信号制御を行う(ステップS5)。
この送信信号制御では、制御部13は、ドアハンドル3に触れている運転者の人体2が携帯する電子キー通信装置1に対し応答要求信号を出力する。
この応答要求信号は、暗号化演算部14において暗号化され送信信号処理部5を経由して変調部6へ出力される。
変調部6では、搬送波発振部4において発振している搬送波を前記暗号化された応答要求信号により変調し被変調波を生成する。そして、この被変調波を切り替え部8を経由してドアハンドル3へ供給する。
このときドアハンドル3には人体2が触れている状態であることから、ドアハンドル3の先には高周波的に分布定数回路が人体2を含む信号経路として形成されている。そのため、ドアハンドル3を含む信号経路は共振している状態にあり、定在波比VSWRは“1”で前記暗号化情報が効率よくドアハンドル3の先の人体2を含む信号経路へ伝播する。
【0024】
一方、電子キー通信装置1では、自動車本体の制御部13から送信された応答要求信号の受信判定を行なっている(ステップS21)。
すなわち電子キー通信装置1は、受信アンテナ31によりドアハンドル3に触れている人体2と高周波的に結合しており、人体通信用の受信アンテナ31にて制御部13から送信された前記暗号化された応答要求信号により変調された被搬送波を受信する。
この被搬送波は高周波の微弱電流あるいは電界を媒介として受信アンテナ31により受信される。
そして、電子キー通信装置1では増幅器32により増幅処理を行い、送信信号復調器33において周波数変換を含む復調処理を行なって前記暗号化されている応答要求信号を抽出し制御部51へ出力する。
制御部51では、送られてきた前記暗号化されている応答要求信号を受信すると、暗号化演算部52により暗号解読を行い、電子キー通信装置1固有のたとえば内部メモリにあらかじめ設定されている応答要求に対する認証用コードとの一致判定を行い、一致すると認証した旨を示す認証信号を出力する(ステップS22)。
この認証信号は、たとえば暗号化演算部52で暗号化した後、制御部51から送信情報として変調器41へ出力される。
変調器41では、搬送波発振部42で発振させた搬送波を前記認証信号により変調し被変調波を生成し、UHF帯の無線周波数への周波数変換を行うなどの変調処理を行う。
そして、増幅器43で増幅した後、送信アンテナ44を介して自動車本体へUHF帯の電波にのせて前記認証信号の返信を行う。
【0025】
図3のフローチャートに戻り、制御部13では、ステップS5の処理を行なった後、電子キー通信装置1から返信されてくる前記認証信号の受信判定を行なっている(ステップS6)。
UHF受信アンテナ9により受信された前記認証信号は、暗号化されたUHF帯の被変調波として受信されるため、周波数変換部11において、局部発振器10から出力される局部発振信号により周波数変換され、復調処理により前記認証信号を抽出した後、制御部13へ出力される。
この認証信号に対しては、暗号化演算部14により暗号の解読が行われ、制御部13は解読された認証信号により電子キー通信装置1の認証を行う(ステップS7)。
制御部13では、電子キー通信装置1の認証を行うと、認証許可信号を電子キー通信装置1へ返信する(ステップS8)。
この認証許可信号においても、前記応答要求の送信において説明したように暗号化演算部14において暗号化され、ドアハンドル3を経由した人体通信により人体通信用の受信アンテナ31を介して電子キー通信装置1へ送信される。
【0026】
電子キー通信装置1では、ステップS22の処理を行なった後、自動車本体の制御部13から返信されてくる前記認証許可信号の受信判定を行なっており(ステップS23)、前記認証許可信号を受信すると電子キーデータを自動車本体の制御部13へ送信する(ステップS24)。
この電子キーデータは、ドアロックの施錠、解錠、エンジンの始動を遠隔制御するためのデータである。この電子キーデータは、暗号化演算部14において暗号化された後、送信アンテナ44を介してUHF帯の電波にのせて自動車本体へ送信される。
【0027】
自動車本体の制御部13では、ステップS8において認証許可信号を電子キー通信装置1へ送信した後、電子キー通信装置1から返信される電子キーデータの受信判定を行なっている(ステップS9)。
このためUHF受信アンテナ9を介して電子キー通信装置1から送られてきた電子キーデータを受信すると、電子キーデータを受信した旨の応答、電子キーデータの受信応答を電子キー通信装置1に対し行う(ステップS10)。
この電子キーデータの受信応答についても暗号化演算部14で暗号化され、ドアハンドル3を経由した人体通信により人体通信用の受信アンテナ31を介して電子キー通信装置1へ送信される。
また、UHF受信アンテナ9により受信した電子キー通信装置1から送られてきた電子キーデータは暗号化されており、UHF帯の被変調波として受信されるため、周波数変換部11において、局部発振器10から出力される局部発振信号により周波数変換され、信号処理部12において復調処理が行われ電子キーデータが抽出され、制御部13へ出力される。
制御部13では、暗号化されている電子キーデータに対し暗号化演算部14により暗号の解読を行い、解読した電子キーデータに応じてドアロックの施錠、解錠、エンジンの始動を制御する(ステップS11、ステップS12)。
【0028】
電子キー通信装置1では、ステップS24の電子キーデータの送信後、自動車本体の制御部13から返信される電子キーデータを受信した旨を示す電子キーデータの受信応答の受信判定を行う(ステップS25)。
このため自動車本体の制御部13から電子キーデータの受信応答が送られてこない場合、ステップS24に戻り、再度、送信アンテナ44を介して電子キーデータをUHF帯の電波にのせて自動車本体へ送信する。
【0029】
以上説明したように、この実施の形態によれば、ドアハンドル3に人体が触れていると、人体を含む分布定数回路の信号経路が所定の周波数で共振するように前記信号経路の信号経路長をあらかじめ調整しておき、前記所定の周波数の高周波信号を前記信号経路に供給したときの共振現象を利用して、ドアハンドル3に人が触れている状態を間接的に識別するように構成した。
したがって、従来のようなドアハンドルに人が触れているか否かを検出する触手検出センサを設ける必要がなくなり、触手検出センサとその取り付けに要する費用が不要となり、構成部品点数の増加や構成部品取り付けの作業工数の増加を抑制することで、コストを低減できる触手検出装置および車両制御システムを提供できる効果がある。
【0030】
また、この実施の形態によれば、人体を利用した人体通信により電子キー通信装置1に対し通信を行うことが出来るため、電子キー通信装置に対し通信を行うためのLF送信アンテナなどの通信手段を設ける必要がなくなり、その分、構成部品点数の増加や構成部品取り付けの作業工数の増加を抑制でき、コストを低減できる触手検出装置および車両制御システムを提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態である触手検出装置を適用した車両制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】共振検出部における共振状態の検出原理を示す説明図である。
【図3】車両制御システムにおける自動車本体に設けられた制御部の動作を示すフローチャートである。
【図4】電子キー通信装置の構成を示すブロック図である。
【図5】自動車の運転者が携帯する電子キー通信装置の制御部の動作を示すフローチャートである。
【図6】従来のスマートエントリーシステムの構成を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0032】
1……電子キー通信装置、3……ドアハンドル(電極部)、4……搬送波発振部(高周波信号供給部)、6……変調部、7……共振検出部、9……UHF受信アンテナ(受信装置)、10……局部発信器(受信装置)、11……周波数変換部(受信装置)、12……信号処理部(受信装置)、13……制御部(送信制御部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の一部に設けられた電極部と、
高周波信号を発生させる高周波信号供給部と、
前記電極部と前記高周波信号供給部との間を接続し、前記電極部に人体が触れているかいないかに応じて前記高周波信号供給部から供給された前記高周波信号の周波数における共振状態が変化する信号伝送路と、
前記信号伝送路の共振状態を検出し検出信号を出力する共振検出部と、
前記高周波信号が送信信号により変調された被変調波を生成する変調部と、
前記共振検出部が出力する前記検出信号をもとに前記信号伝送路の共振状態を判定し、前記判定結果をもとに前記信号伝送路を経由する通信先へ送信する前記送信信号を前記変調部へ出力し前記高周波信号が前記送信信号により変調された被変調波を生成させ、前記被変調波を前記電極部を含む信号伝送路へ出力する制御部と、
を備えた触手検出装置。
【請求項2】
前記通信先から、前記信号伝送路とは異なる通信経路で信号を受信する受信装置を備えた請求項1記載の触手検出装置。
【請求項3】
前記信号伝送路は、前記電極部に人体が触れている状態で前記高周波信号が供給されると共振している状態となるように調整された信号伝送路である請求項1記載の触手検出装置。
【請求項4】
車両の一部に設けられた電極部と、
高周波信号を発生させる高周波信号供給部と、
前記電極部と前記高周波信号供給部との間を接続し、前記電極部に人体が触れているかいないかに応じて前記高周波信号供給部から供給された前記高周波信号の周波数における共振状態が変化する信号伝送路と、
前記信号伝送路の共振状態を検出し検出信号を出力する共振検出部と、
前記高周波信号が送信信号により変調された被変調波を生成する変調部と、
前記共振検出部が出力する前記検出信号をもとに前記信号伝送路の共振状態を判定し、前記判定結果をもとに前記信号伝送路を経由する通信先へ送信する前記送信信号を前記変調部へ出力し前記高周波信号が前記送信信号により変調された被変調波を生成させ、前記被変調波を前記電極部を含む信号伝送路へ出力する送信制御部と、
前記通信先から、前記信号伝送路とは異なる通信経路で車両制御信号を受信する受信装置と、
を備えた車両制御システム。
【請求項5】
前記通信先は、前記電極部に人体が触れたときの前記信号伝送路を経由して高周波的に結合する電子キー通信装置である請求項4記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記信号伝送路は、前記電極部に人体が触れている状態で前記高周波信号が供給されると共振している状態となるように調整された信号伝送路である請求項4記載の車両制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−116755(P2010−116755A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292300(P2008−292300)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】