説明

記憶制御装置及び画像形成装置

【課題】第1の記憶手段の動作状態が異常である場合に、入力されたデータを第1の記憶手段に代えて第2の記憶手段に記憶させるタイミングを、そのデータの重要度に応じて制御する。
【解決手段】CPUは、記憶部の動作状態に異常があると判定した場合、自装置の処理の履歴における処理の頻度に基づいて、入力されたデータをRAMの代替記憶領域に記憶させる処理の期間である代替期間を決定し、データに対して特定される各々の重要度について、決定された代替期間においてその重要度以上の重要度のデータを代替記憶領域に記憶させる処理を許可する代替許可期間を設定する。そして、記憶部の動作状態に異常があると判定した後に、新たなデータが入力されると、データの入力されたタイミングがそのデータの重要度に対応する代替許可期間内である場合には、入力されたデータをRAMの代替記憶領域に記憶させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶制御装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記憶装置の故障に備えて、記憶装置に記憶されているデータの複製を予め生成し、保存しておく技術が知られている。例えば、特許文献1には、画像処理装置の記憶装置の故障診断を行い、記憶装置が故障する可能性がある場合には、その記憶装置に記憶されている画像データを空き容量のある他の画像処理装置に送信して記憶させる技術が開示されている。また、特許文献2には、データベースのデータに重要度ランクを付与し、重要度ランクの高いデータについてはバックアップ処理の時間間隔を短くし、重要度ランクの低いデータについてはバックアップ処理の時間間隔を長くする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−303985号公報
【特許文献2】特開2005−149285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、第1の記憶手段の動作状態に異常がある場合に、入力されたデータを第1の記憶手段に代えて第2の記憶手段に記憶させるタイミングをそのデータの重要度に応じて制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る記憶制御装置は、入力されたデータを記憶する第1の記憶手段と、前記第1の記憶手段の動作状態に異常があると判定された場合に、入力されたデータを記憶する第2の記憶手段と、入力されたデータの重要度を特定する重要度特定手段と、前記第1の記憶手段の動作状態を検出する動作状態検出手段と、前記動作状態検出手段によって検出された動作状態に異常があると判定した場合に、自装置の処理の履歴における処理の頻度を特定し、特定した当該処理の頻度に基づいて、入力されたデータを前記第2の記憶手段に記憶させる処理の処理期間を決定する処理期間決定手段と、前記重要度特定手段によって特定される各々の重要度について、前記処理期間決定手段によって決定された処理期間において当該重要度以上の重要度のデータを前記第2の記憶手段に記憶させる処理を許可する許可期間を設定する許可期間設定手段と、前記動作状態検出手段によって検出された動作状態に異常があると判定された後に、新たなデータが入力されると、前記重要度特定手段によって特定された当該データの重要度に基づき、前記許可期間設定手段によって設定された許可期間において当該データを前記第2の記憶手段に記憶させる処理が許可される許可期間を特定し、当該データの入力されたタイミングが、特定した当該許可期間内である場合には、当該データを前記第2の記憶手段に記憶させる記憶制御手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る記憶制御装置は、請求項1に記載の構成において、前記記憶制御手段は、前記データの入力されたタイミングが、前記特定した許可期間外である場合には、当該データを前記第1の記憶手段に記憶させ、さらに、前記許可期間設定手段によって設定された各々の許可期間に、前記第1の記憶手段に記憶されている当該許可期間に対応する重要度のデータを前記第2の記憶手段に記憶させることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る記憶制御装置は、請求項1又は2に記載の構成において、前記許可期間設定手段は、重要度の高いデータを前記第2の記憶手段に記憶させる処理を許可する許可期間の開始時刻を、重要度の低いデータを前記第2の記憶手段に記憶させる処理を許可する許可期間の開始時刻よりも早い時刻に設定することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る記憶制御装置は、請求項1から3のいずれか1項に記載の構成において、前記処理期間決定手段は、前記自装置の処理の履歴においてデータが入力された頻度を特定し、特定した当該頻度で前記第2の記憶手段にデータが記憶されるときに、当該第2の記憶手段の記憶容量が当該データの記憶に費やされるまでにかかる時間を算出し、前記第1の記憶手段の動作状態に異常があると判定した時点から、算出した当該時間が経過するまでの期間を前記処理期間として決定することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る記憶制御装置は、請求項1から3のいずれか1項に記載の構成において、指定された時刻を表す時刻情報を取得する時刻情報取得手段を備え、前記処理期間決定手段は、前記時刻情報取得手段によって取得された時刻情報の表す時刻までに前記処理期間が終了するように、当該処理期間の開始時刻を設定することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6に係る記憶制御装置は、請求項1から5のいずれか1項に記載の構成において、前記第2の記憶手段において単位時間当たりに記憶されるデータの容量が閾値よりも大きくなると、当該第2の記憶手段の状況を外部装置に通知する通知手段を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項7に係る画像形成装置は、入力された画像データを取得する画像データ取得手段と、前記画像データ取得手段によって取得された画像データを前記第1の記憶手段又は前記第2の記憶手段に記憶させる請求項1〜6のいずれか1項に記載の記憶制御装置と、前記記憶制御装置の前記第1の記憶手段又は前記第2の記憶手段に記憶されている画像データに応じた画像を記録材に形成する画像形成手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1,2,7に係る発明によれば、第1の記憶手段の動作状態に異常がある場合に、入力されたデータを第1の記憶手段に代えて第2の記憶手段に記憶させるタイミングをそのデータの重要度に応じて制御することができる。
請求項3に係る発明によれば、初めは重要度の高いデータを第2の記憶手段に記憶させ、段階的に重要度の低いデータも第2の記憶手段に記憶させていくことができる。
請求項4に係る発明によれば、入力されたデータを第2の記憶手段に記憶させる処理の期間を、自装置の処理の履歴におけるデータが入力された頻度と、第2の記憶手段の記憶容量に応じて決めることができる。
請求項5に係る発明によれば、入力されたデータを第2の記憶手段に記憶させる処理の終了時刻を指定することができる。
請求項6に係る発明によれば、第2の記憶手段に単位時間当たりに記憶されるデータの容量が閾値よりも大きくなったことを外部装置側で把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るリモート保守システムの構成を示す図である。
【図2】前記リモート保守システムの画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】データの種別と重要度との対応関係の一例を示す図である。
【図4】前記画像形成装置の期間決定処理を示すフロー図である。
【図5】代替期間の決定原理を説明する図である。
【図6】重要データを代替記憶領域に記憶させる処理の一例を説明する図である。
【図7】前記画像形成装置のデータ記憶処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[構成]
図1は、本実施形態に係るリモート保守システム1の構成を示す図である。同図に示すように、リモート保守システム1は、画像形成装置10と、リモート保守装置30とを備えている。画像形成装置10とリモート保守装置30とは、インターネットなどの通信回線Nを介して互いに接続されている。リモート保守装置30は、画像形成装置10の保守作業を行う保守作業者によって操作される装置である。このリモート保守装置30は、外部装置の一例である。保守作業者は、リモート保守装置30を操作することにより、遠隔から画像形成装置10の動作状況を確認したり、保守作業を行ったりする。
【0015】
(画像形成装置の構成)
次に、画像形成装置10の構成について説明する。この画像形成装置10は、プリンター機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能などの複数の機能を有している。図2は、画像形成装置10の構成を示すブロック図である。同図に示すように、画像形成装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、記憶部14と、モジュール制御部15と、通信制御部16と、ファクシミリ部17と、画像読取部18と、画像形成部19と、表示操作部20と、通信部21と、電源制御部22と、電源スイッチ23とを備えている。CPU11は、ROM12又はRAM13に記憶されているプログラムを実行して、各種の処理を行う。ROM12は、画像形成装置10の起動に必要なプログラムやデータを記憶している。
【0016】
RAM13は、CPU11がプログラムを実行する際のワークエリアとして使用される。また、RAM13は、記憶部14の動作状態に異常があるときに、記憶部14に代えてデータが記憶される代替記憶領域31を有している。つまり、RAM13の代替記憶領域31は、記憶部14の動作状態に異常がある場合に、記憶部14に代えてデータを記憶する第2の記憶手段の一例である。この代替記憶領域31の記憶容量は、予め決められていてもよいし、利用者の操作によって指定されてもよい。記憶部14は、例えばハードディスクであり、画像形成装置10の各機能などを実行するときに用いられる処理データや、画像形成装置10の処理の履歴を表す履歴情報などを記憶する。この履歴情報には、処理の種別、処理が実行された日時、処理に用いられるデータの種別や容量などの情報などが含まれている。また、処理データは、通信制御部16、ファクシミリ部17又は画像読取部18によって入力されるようになっている。つまり、記憶部14は、入力されたデータを記憶する第1の記憶手段の一例である。
【0017】
モジュール制御部15は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路であり、ファクシミリ部17、画像読取部18、画像形成部19及び表示操作部20を制御して、複数の機能を並列で実行させる。通信制御部16は、通信部21を制御して、上述したリモート保守装置30との通信を確立して、データの送受信を行う。ファクリミリ部17は、図示せぬ電話網などを介して接続された図示せぬ通信装置との通信を確立して、データの送受信を行う。画像読取部18は、例えばスキャナ装置であり、原稿の画像を読み取って画像データを生成する。画像形成部19は、例えば電子写真方式で画像を形成するプリンター装置であり、記憶部14又はRAM13に記憶されている画像データに応じた画像を用紙に形成し出力する。この画像形成部19は、画像形成手段の一例である。表示操作部20は、例えばタッチパネルであり、CPU11の制御に応じた画像を表示するとともに、操作者の操作に応じた操作信号をCPU11に入力する。通信部21は、図1に示した通信回線Nが接続されるネットワークインタフェースである。電源制御部22は、画像形成装置10の各部への電力供給を制御する。電源スイッチ23は、画像形成装置10の電源をオン又はオフにするためのスイッチである。
【0018】
画像形成装置10に入力されるデータには、そのデータの種別に応じて重要度が付与される。図3は、データの種別と重要度との対応関係Kの一例を示す図である。なお、図の例では、最も高い重要度を「A」とし、最も低い重要度を「E」としている。この対応関係Kにおいては、ファクシミリ部17によって受信されたデータの種別を示すデータ種別「ファックス」及び「受信」と、重要度「A」とが対応付けられている。これは、ファクシミリ機能によって通信装置から送られてきたデータは、仮に消滅してしまった場合に再度取得することが難しいため、利用者にとって最も重要度が高いデータであると考えられるためである。なお、以下の説明では、重要度が「A」,「B」又は「C」のデータを「重要データ」という。
【0019】
[動作]
次に、本実施形態に係るリモート保守システム1の動作について説明する。画像形成装置10では、記憶部14の動作状態を監視し、記憶部14の動作状態に異常がある場合には、入力されたデータのうち重要データをRAM13の代替記憶領域31に記憶させる処理の期間を決定する期間決定処理が行われる。図4は、この期間決定処理を示すフロー図である。画像形成装置10のCPU11は、予め決められた時間間隔で記憶部14の動作状態を検出し、検出した動作状態に基づいて、記憶部14に故障の予兆があるか否かを判定する(ステップS11)。つまり、CPU11は、記憶部14の動作状態を検出する動作状態検出手段の一例である。記憶部14の動作状態の検出には、例えば記憶部14によって生成されるS.M.A.R.T.(Self-Monitoring Analysis and Reporting Technology)情報が用いられる。このS.M.A.R.T.情報には、記憶部14のロードアンロード回数、代替セクタ数、通電時間などが含まれている。記憶部14に故障の予兆がない場合(ステップS11:NO)、CPU11は、記憶部14に異常がないことを通信制御部16によってリモート保守装置30に通知する(ステップS12)。一方、記憶部14に故障の予兆がある場合(ステップS11:YES)、CPU11は、記憶部14に異常があることを通信制御部16によってリモート保守装置30に通知する(ステップS13)。画像形成装置10の記憶部14に異常があることがリモート保守装置30に通知されると、保守作業員は、例えば修復作業を行うために画像形成装置10が設置されている場所へと向かう。続いて、CPU11は、故障の予兆を検出した検出時刻を特定し(ステップS14)、故障予兆フラグをオンにする(ステップS15)。この故障予兆フラグは、RAM13に記憶されていてもよいし、記憶部14に記憶されていてもよい。
【0020】
続いて、CPU11は、記憶部14に記憶されている履歴情報に基づいて重要データが入力された頻度を特定し、特定した頻度に応じて、入力された重要データを記憶部14に代えてRAM13の代替記憶領域31に記憶させる処理の処理期間となる代替期間を決定する(ステップS16)。つまり、CPU11は、記憶部14の動作状態に異常があると判定した場合に、自装置の処理の履歴においてデータが入力された頻度を特定し、特定した頻度に応じて、入力されたデータをRAM13の代替記憶領域31に記憶させる処理の処理期間を決定する期間決定手段の一例である。図5は、代替期間の決定原理を説明する図である。図中のデータ保全重視直線Pによって形成される面積Spと、図中のパフォーマンス重視直線Qによって形成される面積Sqとは、いずれもRAM13の代替記憶領域31の記憶容量を示しており、同じ大きさである。例えば、画像形成装置10において重要データが頻繁に入力される場合には、図中のデータ保全重視直線Pの示す時間を代替期間の開始時刻T0から終了時刻Teまでの時間とする。この場合、代替期間の時間は短くなる。一方、画像形成装置10において重要データが頻繁に入力されない場合には、図中のパフォーマンス重視直線Qの示す時間を代替期間の開始時刻T0から終了時刻Teまでの時間とする。この場合、代替期間の時間は長くなる。
【0021】
具体的に説明すると、CPU11は、記憶部14に記憶されている履歴情報を解析して、重要度「C」以上のデータを記憶部14に記憶させる処理が実行された日時を特定する。上述したように、この利用情報には、処理の種別、処理が行われた日時、処理に用いられたデータ種別などが含まれている。よって、履歴情報を解析すれば、重要度「C」以上のデータを記憶部14に記憶させる処理が実行された日時を特定することができる。続いて、CPU11は、特定した処理の中から単位時間に実行されたものを選択し、選択した処理にて用いられたデータの総容量を算出する。これにより、記憶部14において単位時間当たりに記憶された重要データの容量が算出される。各々の重要データの容量は概ね一定であるから、算出された重要データの容量は、重要データが入力された頻度に応じた値になる。続いて、CPU11は、算出した重要データの容量を単位時間当たりに費やされる記憶容量として、RAM31の代替記憶領域31の記憶容量が費やされるまでにかかる時間を算出する。つまり、CPU11は、自装置の処理の履歴においてデータが入力された頻度を特定し、特定した頻度でRAM13の代替記憶領域31にデータが記憶されるときに、代替記憶領域31の記憶容量がそのデータの記憶に費やされるまでにかかる時間を算出する。例えば、代替記憶領域31の記憶容量が100MBであり、記憶部14において1時間当りに記憶された重要データの総容量が5MBである場合には、100MB÷5MB=20時間が算出される。続いて、CPU11は、上述したステップS14にて特定された検出時刻を開始時刻T0とし、開始時刻T0から算出した時間だけ経過した時刻を終了時刻Teとしたときに、開始時刻T0から終了時刻Teまでの期間を代替期間として決定する。つまり、CPU11は、記憶部14の動作状態に異常があると判定した時点から、算出した時間が経過するまでの期間を処理期間として決定する。
【0022】
続いて、CPU11は、重要データの重要度「A」,「B」,「C」について、その重要度以上の重要度のデータをRAM13の代替記憶領域31に記憶させる処理を許可する代替許可期間の開始時刻を設定する(ステップS17)。具体的に説明すると、CPU11は、図6に示すように、開始時刻T0から終了時刻Teまでの代替期間を代替許可期間ta,tb,tcの3つに等分する。そして、CPU11は、重要度「A」のデータを代替記憶領域31に記憶させる処理を許可する期間を代替許可期間taとし、重要度「A」及び「B」のデータを代替記憶領域31に記憶させる処理を許可する期間を代替許可期間tbとし、重要度「A」,「B」及び「C」のデータを代替記憶領域31に記憶させる処理を許可する期間を代替許可期間tcとする。つまり、CPU11は、各々の重要度について、上述にて決定された代替期間においてその重要度以上の重要度のデータをRAM13の代替記憶領域31に記憶させる処理を許可する許可期間を設定する許可期間設定手段の一例である。そして、CPU11は、重要度「A」に対応する代替許可期間taを開始する時刻を開始時刻T0とし、重要度「B」に対応する代替許可期間tbを開始する時刻を開始時刻T1とし、重要度「C」に対応する代替許可期間tcを開始する時刻を開始時刻T2とする。つまり、CPU11は、重要度が高いデータをRAM13の代替記憶領域31に記憶させる処理を許可する許可期間の開始時刻を、重要度が低いデータをRAM13の代替記憶領域31に記憶させる処理を許可する許可期間の開始時刻よりも早い時刻に設定する。
【0023】
このようにして、故障予兆フラグがオンになった後に、新たな処理データが入力されると、その処理データを記憶部14又はRAM13の代替記憶領域31に記憶させるデータ記憶処理が行われる。図7は、このデータ記憶処理を示すフロー図である。ここでは、ファクシミリ部17によって新たな画像データが受信された場合を想定する。この場合、CPU11は、ファクシミリ部17によって受信された画像データを取得する。つまり、CPU11は、入力された画像データを取得する画像データ取得手段の一例である。続いて、CPU11は、取得した画像データの重要度を特定する(ステップS21)。つまり、CPU11は、入力されたデータの重要度を特定する重要度特定手段の一例である。この例では、図3に示した対応関係Kにおいて、データ種別「ファックス」及び「受信」と、重要度「A」とが対応付けられているため、画像データの重要度として重要度「A」が特定される。続いて、CPU11は、特定した重要度に基づいて、取得した画像データが重要データであるか否かを判定する(ステップS22)。画像データの重要度が「D」以下である場合、CPU11は、取得した画像データが重要データではないと判定する(ステップS22:NO)。この場合、CPU11は、取得した画像データを記憶部14に記憶させて(ステップS23)、このデータ記憶処理を終了する。
【0024】
一方、この例では、画像データの重要度が「A」であるため、CPU11は、取得した画像データが重要データであると判定する(ステップS22:YES)。この場合、CPU11は、上述したステップS21にて特定された重要度に基づいて、取得した画像データをRAM13の代替記憶領域31に記憶させる処理が許可される代替許可期間を特定する。この例では、取得した画像データの重要度が「A」であるため、代替許可期間taが特定される。続いて、CPU11は、現在の時刻を取得し、取得した現在の時刻が代替許可期間taに含まれているか否かを判定する(ステップS24)。例えば、現在の時刻が代替許可期間taに含まれていない場合(ステップS24:NO)、CPU11は、上述したステップS23に進み、取得した画像データを記憶部14に記憶させて、このデータ記憶処理を終了する。一方、現在の時刻が代替許可期間taに含まれている場合(ステップS24:YES)、CPU11は、RAM13の代替記憶領域31に十分な空き容量があるか否かを判定する(ステップS25)。RAM13の代替記憶領域31に十分な空き容量がない場合(ステップS25:NO)、CPU11は、RAM13の空き容量不足により、重要データをRAM13の代替記憶領域31に記憶させないまま、データ記憶処理を異常終了する旨を表すメッセージを表示操作部20に表示させる。また、この場合、CPU11は、データ記憶処理を異常終了することを、通信制御部16によってリモート保守装置30に通知する(ステップS26)。一方、RAM13の代替記憶領域31に十分な空き容量がある場合(ステップS25:YES)、CPU11は、取得した画像データをRAM13の代替記憶領域31に記憶させて(ステップS27)、このデータ記憶処理を終了する。つまり、CPU11は、記憶部14の動作状態に異常があると判定した後に、新たなデータが入力されると、そのデータの重要度に基づいて、そのデータをRAM13の代替記憶領域31に記憶させる処理が許可される許可期間を特定し、そのデータの入力されたタイミングが、特定した許可期間外である場合には、入力されたデータを記憶部14に記憶させ、特定した許可期間内である場合には、入力されたデータを代替記憶領域31に記憶させる記憶制御手段の一例である。
【0025】
次に、上述した図6を参照して、重要データをRAM13の代替記憶領域31に記憶させる処理について具体的に説明する。なお、ここでは、開始時刻T0において、記憶部14には重要データが記憶されていないものとする。図中の縦軸は、RAM13の代替記憶領域31において、重要データが記憶されている記憶領域の記憶容量(以下、「メモリ使用容量」という)を示している。このメモリ使用容量は、記憶部14に記憶されている履歴情報において単位時間当たりに記憶部14に記憶されたデータのうち重要度「A」,「B」,「C」のデータの占める割合に応じて、メモリ使用容量Ea,Eb,Ecに分けられている。また、図中の直線Iaは、開始時刻T0から終了時刻Teまでの代替期間に入力されることが予測される重要度「A」のデータの容量に応じたメモリ使用容量を示している。同様に、図中の直線Iabは、開始時刻T0から終了時刻Teまでの代替期間に入力されることが予測される重要度「A」及び「B」のデータの容量に応じたメモリ使用容量を示しており、直線Iabcは、この代替期間に入力されることが予測される重要度「A」,「B」及び「C」のデータの容量に応じたメモリ使用容量を示している。また、直線Ibは、開始時刻T0から終了時刻Teまでの代替期間に入力されることが予測される重要度「B」のデータの容量に応じたメモリ使用容量を示しており、直線Icは、この代替期間に入力されることが予測される重要度「C」のデータの容量に応じたメモリ使用容量を示している。
【0026】
上述したように、代替許可期間taでは、入力されたデータのうち重要度「A」のデータだけがRAM13の代替記憶領域31に記憶される。記憶部14の履歴情報と同じ頻度で重要度「A」のデータが入力されたとすると、RAM13の代替記憶領域31におけるメモリ使用容量は、図中の直線Iaの示す値となる。続いて、開始時刻T1になると、CPU11は、記憶部14に記憶されている重要度「B」のデータをRAM13の代替記憶領域31に記憶させる。つまり、CPU11は、設定された各々の開始時刻になると、記憶部14に記憶されているデータにおいてその開始時刻に対応する重要度のデータをRAM13の代替記憶領域31に記憶させる。記憶部14の履歴情報と同じ頻度で重要度「B」のデータが入力されたとすると、開始時刻T1には図中のメモリ使用容量RbだけRAM13の代替記憶領域31のメモリ使用容量が増える。続いて、代替許可期間tbでは、入力されたデータのうち重要度「A」及び「B」のデータがRAM13の代替記憶領域31に記憶される。記憶部14の履歴情報と同じ頻度で重要度「A」及び「B」のデータが入力されたとすると、RAM13の代替記憶領域31におけるメモリ使用容量は、図中の直線Iabの示す値となる。続いて、開始時刻T2になると、CPU11は、記憶部14に記憶されている重要度「C」のデータをRAM13の代替記憶領域31に記憶させる。記憶部14の履歴情報と同じ頻度で重要度「C」のデータが入力されたとすると、開始時刻T2には図中のメモリ使用容量RcだけRAM13の代替記憶領域31のメモリ使用容量が増える。続いて、代替許可期間tcでは、入力されたデータのうち重要度「A」,「B」及び「C」のデータがRAM13の代替記憶領域31に記憶される。記憶部14の履歴情報と同じ頻度で重要度「A」,「B」,「C」のデータが入力されたとすると、RAM13の代替記憶領域31におけるメモリ使用容量は、図中の直線Iabcの示す値となる。
【0027】
[変形例]
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の各変形例を適宜組み合わせてもよい。
(変形例1)
上述した実施形態では、重要データが入力された頻度に応じて代替期間を決定していたが、代替期間を決定する方法はこれに限らない。例えば、CPU11は、記憶部14に記憶されている履歴情報に基づいて、表示操作部20の操作頻度を特定し、特定した操作頻度に応じて代替期間を決定してもよい。この場合、CPU11は、表示操作部20の操作頻度が高いときには代替期間を短くし、操作頻度が低いときには代替期間を長くする。画像形成装置10における処理の頻度は、操作頻度に応じた値になる。つまり、代替期間は、画像形成装置10における処理の頻度に応じて決定されればよい。
【0028】
(変形例2)
上述した実施形態では、代替期間を3等分して代替許可期間ta,tb,tcを設定していたが、代替許可期間を設定する方法はこれに限らない。例えば、CPU11は、重要度の高いデータをRAM13の代替記憶領域31に記憶させる処理を許可する代替許可期間を、重要度の低いデータをRAM13の代替記憶領域31に記憶させる処理を許可する代替許可期間よりも長くしてもよい。あるいは、CPU11は、重要度の低いデータをRAM13の代替記憶領域31に記憶させる処理を許可する代替許可期間を、重要度の高いデータをRAM13の代替記憶領域31に記憶させる処理を許可する代替許可期間よりも長くしてもよい。
【0029】
(変形例3)
画像形成装置10からリモート保守装置30に通知される情報は、上述した実施形態で説明したものに限らない。例えば、CPU11は、上述したステップS12又はステップS13において、記憶部14に記憶されているS.M.A.R.T.情報を通信制御部16によってリモート保守装置30に送信してもよい。また、CPU11は、代替許可期間ta,tb,tcが終了した時に、各代替許可期間が終了した旨を通信制御部16によってリモート保守装置30に通知してもよい。さらに、CPU11は、代替期間中にRAM13において単位時間当たりのメモリ使用容量が閾値よりも大きくなると、RAM13の状況を通信制御部16によってリモート保守装置30に通知してもよい。つまり、CPU11は、RAM13の代替記憶領域31において単位時間当たりに記憶されるデータの容量が閾値よりも大きくなると、RAM13の状況をリモート保守装置30に通知する通知手段の一例である。
なお、保守作業員によって画像形成装置10の修復作業が完了した場合、CPU11は、リモート保守装置30に異常状態の通知を行う機能をオフにしてもよい。
【0030】
(変形例4)
上述した実施形態において、保守作業者がリモート保守装置30を操作することにより終了時刻Teを指定できるようにしてもよい。この場合、リモート保守装置30は、保守作業者の操作によって指定された終了時刻を示す終了時刻情報を画像形成装置10に送信する。リモート保守装置30から終了時刻情報が送信されてくると、画像形成装置10のCPU11は、通信制御部16によってこの終了時刻情報を受信する。つまり、CPU11は、指定された時刻を表す時刻情報を取得する時刻情報取得手段の一例である。そして、CPU11は、受信した終了時刻情報に応じて終了時刻Teを設定し、設定した終了時刻Teに代替期間が終了するように、バックアップ開始時刻T0,T1,T2を設定する。つまり、CPU11は、上述にて取得された時刻情報の表す時刻までに、代替期間がするように、代替期間の開始時刻を設定する。
【0031】
(変形例5)
上述した実施形態において、CPU11は、終了時刻Teにテストデータを記憶部14に記憶させる処理を行い、テストデータが正常に記憶された場合には、RAM13の代替記憶領域31に記憶されているデータを記憶部14に戻してもよい。なお、テストデータを記憶部14に記憶させる処理が行われるタイミングは、終了時刻Teに限らず、記憶部14に故障の予兆があると判定した後であればいつでもよい。
【0032】
(変形例6)
上述した実施形態において、利用者によって電源スイッチ23が操作されて、画像形成装置10の電源をオフにする指示がなされた場合には、電力制御部22がRAM13への電力供給を引き続き行うか、又は、電源制御部22が表示操作部20への電力供給だけを停止し、その他の部位への電力供給を引き続き行うようにしてもよい。
【0033】
(変形例7)
上述した実施形態では、記憶部14の動作状態に異常がある場合には、記憶部14に代えてRAM13にデータを記憶させていたが、記憶部14の動作状態に異常がある場合のデータの記憶先はこれに限らない。例えば、画像形成装置10が画像読取部18によって生成された画像データを一時蓄積するためのページメモリを備えている場合には、記憶部14の動作状態に異常がある場合のデータの記憶先としてこのページメモリが用いられてもよい。また、画像形成装置10がバックアップ電池を内蔵したSRAM(Static Random Access Memory)を備えている場合には、記憶部14の動作状態に異常がある場合のデータの記憶先としてこのSRAMが用いられてもよい。
【0034】
(変形例8)
上述した実施形態では、画像形成装置10がCPU11,記憶部14及びRAM13を備えている構成を例に挙げて説明したが、このCPU11,記憶部14及びRAM13が記憶制御装置として単体で構成されてもよい。また、この記憶制御装置がコンピュータ装置などの他の装置に設けられていてもよい。
【0035】
(変形例9)
上述した実施形態において、CPU11にて行なわれる処理は、CPU11と他のハードウェアとの協働によって行われてもよいし、CPU11に代えて1又は複数のハードウェアが行ってもよい。また、CPU11によって行われる処理は、単一のプログラムによって実現されてもよいし、複数のプログラムによって実現されてもよい。また、CPU11によって実行される各プログラムは、磁気テープや磁気ディスクなどの磁気記録媒体、光ディスクなどの光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの、コンピュータ装置が読み取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムを、インターネットのような通信回線経由でダウンロードさせることも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…リモート保守システム、10…画像形成装置、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…記憶部、15…モジュール制御部、16…通信制御部、17…ファクシミリ部、18…画像読取部、19…画像形成部、20…表示操作部、21…通信部、22…電源制御部、23…電源スイッチ、30…リモート保守装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたデータを記憶する第1の記憶手段と、
前記第1の記憶手段の動作状態に異常があると判定された場合に、入力されたデータを記憶する第2の記憶手段と、
入力されたデータの重要度を特定する重要度特定手段と、
前記第1の記憶手段の動作状態を検出する動作状態検出手段と、
前記動作状態検出手段によって検出された動作状態に異常があると判定した場合に、自装置の処理の履歴における処理の頻度を特定し、特定した当該処理の頻度に基づいて、入力されたデータを前記第2の記憶手段に記憶させる処理の処理期間を決定する処理期間決定手段と、
前記重要度特定手段によって特定される各々の重要度について、前記処理期間決定手段によって決定された処理期間において当該重要度以上の重要度のデータを前記第2の記憶手段に記憶させる処理を許可する許可期間を設定する許可期間設定手段と、
前記動作状態検出手段によって検出された動作状態に異常があると判定された後に、新たなデータが入力されると、前記重要度特定手段によって特定された当該データの重要度に基づき、前記許可期間設定手段によって設定された許可期間において当該データを前記第2の記憶手段に記憶させる処理が許可される許可期間を特定し、当該データの入力されたタイミングが、特定した当該許可期間内である場合には、当該データを前記第2の記憶手段に記憶させる記憶制御手段と
を備えることを特徴とする記憶制御装置。
【請求項2】
前記記憶制御手段は、前記データの入力されたタイミングが、前記特定した許可期間外である場合には、当該データを前記第1の記憶手段に記憶させ、さらに、前記許可期間設定手段によって設定された各々の許可期間に、前記第1の記憶手段に記憶されている当該許可期間に対応する重要度のデータを前記第2の記憶手段に記憶させる
ことを特徴とする請求項1に記載の記憶制御装置。
【請求項3】
前記許可期間設定手段は、重要度の高いデータを前記第2の記憶手段に記憶させる処理を許可する許可期間の開始時刻を、重要度の低いデータを前記第2の記憶手段に記憶させる処理を許可する許可期間の開始時刻よりも早い時刻に設定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の記憶制御装置。
【請求項4】
前記処理期間決定手段は、前記自装置の処理の履歴においてデータが入力された頻度を特定し、特定した当該頻度で前記第2の記憶手段にデータが記憶されるときに、当該第2の記憶手段の記憶容量が当該データの記憶に費やされるまでにかかる時間を算出し、前記第1の記憶手段の動作状態に異常があると判定した時点から、算出した当該時間が経過するまでの期間を前記処理期間として決定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記憶制御装置。
【請求項5】
指定された時刻を表す時刻情報を取得する時刻情報取得手段を備え、
前記処理期間決定手段は、前記時刻情報取得手段によって取得された時刻情報の表す時刻までに前記処理期間が終了するように、当該処理期間の開始時刻を設定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記憶制御装置。
【請求項6】
前記第2の記憶手段において単位時間当たりに記憶されるデータの容量が閾値よりも大きくなると、当該第2の記憶手段の状況を外部装置に通知する通知手段を備える
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の記憶制御装置。
【請求項7】
入力された画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データ取得手段によって取得された画像データを前記第1の記憶手段又は前記第2の記憶手段に記憶させる請求項1〜6のいずれか1項に記載の記憶制御装置と、
前記記憶制御装置の前記第1の記憶手段又は前記第2の記憶手段に記憶されている画像データに応じた画像を記録材に形成する画像形成手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−226464(P2010−226464A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72079(P2009−72079)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】