説明

試料作製装置

【課題】イオンビームの照射により断面を露出させた試料を作製するため試料をイオンビームに対する所定位置に保持する試料作製装置において、イオンビームによる試料の加工中にイオンビームを遮断する遮蔽板のイオンビームに接近する方向への移動を防止し、良好な断面が現れた試料を作製する。
【解決手段】基端側を支持され先端側が自由端である第1の支持部材2と、第1の支持部材2の先端側に基端側を支持され先端側が第1の支持部材2の基端側に向けた自由端である第2の支持部材9と、第2の支持部材9に支持された遮蔽板10と、第2の支持部材9に取り付けられた加熱ヒーター13を備え、第2の支持部材9は加熱ヒーター13により加熱せられて前記第1の支持部材の基端側方向に膨張する構造となされ、遮蔽板10の第1の支持部材2の先端側に向かう一側縁をイオンビームBの照射位置として保持し、遮蔽板10によりイオンビームBが遮蔽される位置に設置された試料101の遮蔽板10の一側縁より露出した箇所への加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査電子顕微鏡や透過電子顕微鏡などで観察される試料を作製するための試料作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、走査電子顕微鏡(SEM)や透過電子顕微鏡(TEM)で観察される試料を作製する装置として、例えば、特許文献1の特開2005−037164公報に記載されているように、試料作製装置が提案されている。
【0003】
この試料作製装置は、図4に示すように、イオンビーム発生装置より発せられたイオンビームBを試料101に照射させてエッチングを行い、この試料101をSEMまたはTEMによる観察に適した形状に加工する装置である。この試料作製装置においては、直線状の側縁部(エッジ部)を有する遮蔽板102が試料101上に配置され、この遮蔽板102の側縁部の横を通過したイオンビームBによって、試料101が加工されるように構成されている。試料101には、遮蔽板102の直線状の側縁部に沿って、平坦な断面が形成される。
【0004】
このような試料作製装置を用いて作製された試料101は、SEMまたはTEMにセットされ、イオンエッチングによって現れた断面に電子線が照射され、観察が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−037164公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述の試料作製装置においては、遮蔽板102は、基端側を支持され先端側が自由端となされた支持部材103によって支持されている。そして、イオンビームBは、この遮蔽板102の支持部材103の先端側に向かう一側縁に照射され、この一側縁に沿って、試料101を加工する。
【0007】
このとき、この試料作製装置において、支持部材103は、イオンビームBの照射によって加熱され、熱膨張を生ずる。支持部材103が熱膨張すると、遮蔽板102は、図4中矢印aで示すように、イオンビームBが照射されている一側縁側、すなわち、イオンビームBに接近する側に徐々に移動されることとなる。
【0008】
遮蔽板102が、イオンビームBが照射されている一側縁側に徐々に移動すると、遮蔽板102の一側縁部がイオンビームB中に進入していくことになり、試料101において、遮蔽板102によって覆われる領域が徐々に拡大することとなる。イオンビームBによって加工されている試料101において、遮蔽板102によって覆われる領域が徐々に拡大すると、新たな箇所がイオンビームBによって加工されなくなり、良好な断面が現れなくなり、良好な試料が作製できなくなる。
【0009】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであり、その目的は、イオンビームの照射により断面を露出させた試料を作製するため試料をイオンビームに対する所定位置に保持する試料作製装置において、イオンビームによる試料の加工中において、イオンビームを遮断する遮蔽板がイオンビームに接近する方向に移動することが防止され、イオンビームによる加工が良好に行われるようにして、良好な断面が現れた試料が作製できるようになされた試料作製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決し上記目的を達成するため、
請求項1に記載の発明は、イオンビームの照射により断面を露出させた試料を作製するため、試料をイオンビームに対する所定位置に保持する試料作製装置であって、基端側を支持され、先端側が自由端となされた第1の支持部材と、前記第1の支持部材の先端側に基端側を支持され、先端側を前記第1の支持部材の基端側に向けた自由端としている第2の支持部材と、前記第2の支持部材に取り付けられ、前記第2の支持部材を加熱する加熱手段と、前記第2の支持部材に支持された遮蔽板とを備え、
前記第2の支持部材は、前記加熱手段により加熱せられて前記第1の支持部材の基端側方向に膨張する構造となされており、前記遮蔽板の前記第1の支持部材の先端側に向かう一側縁を前記イオンビームの照射位置として該遮蔽板を保持し、この遮蔽板により前記イオンビームが遮蔽される位置に設置された前記試料の該遮蔽板の一側縁より露出した箇所への前記イオンビームによる加工を行わせることを特徴とする。
【0011】
また請求項2に記載の発明は、前記第2の支持部材は、前記第1の支持部材の先端側に断熱支持されていることを特徴とする。
【0012】
また請求項3に記載の発明は、イオンビームの照射により断面を露出させた試料を作製するため、試料をイオンビームに対する所定位置に保持する試料作製装置であって、基端側を支持され、先端側が自由端となされた第1の支持部材と、前記第1の支持部材の先端側に基端側を支持され、先端側を前記第1の支持部材の基端側に向けた自由端としている第2の支持部材と、前記第2の支持部材に支持された遮蔽板とを備え、
前記第2の支持部材は、前記第1の支持部材の先端側に断熱支持される構造となされており、前記遮蔽板の前記第1の支持部材の先端側に向かう一側縁を前記イオンビームの照射位置として該遮蔽板を保持し、この遮蔽板により前記イオンビームが遮蔽される位置に設置された前記試料の該遮蔽板の一側縁より露出した箇所への前記イオンビームによる加工を行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
(1)請求項1に記載の発明によれば、第1の支持部材の先端側に基端側を支持され先端側を第1の支持部材の基端側に向けた自由端としている第2の支持部材は、加熱手段により加熱せられて前記第1の支持部材の基端側方向に膨張する構造となされており、遮蔽板の第1の支持部材の先端側に向かう一側縁をイオンビームの照射位置として該遮蔽板を保持し、この遮蔽板によりイオンビームが遮蔽される位置に設置された試料の該遮蔽板の一側縁より露出した箇所へのイオンビームによる加工を行わせる。
【0014】
そのため、この試料作製装置においては、イオンビームの照射によって加熱された遮蔽板からの熱伝導により第2の支持部材が加熱され、さらに第2の支持部材からの熱伝導により第1の支持部材が加熱され、熱膨張を生ずると、第2の支持部材が加熱手段によりさらに加熱せられて第1の支持部材の基端側方向により大きく膨張する。よって、遮蔽板を第1の支持部材の基端側に向かう他側縁の方向、すなわち、イオンビームから離れる方向に移動されるか、または、いずれの方向にも移動されないようにすることができる。
【0015】
(2)請求項2に記載の発明によれば、第2の支持部材は、前記第1の支持部材の先端側に断熱支持されているので、加熱手段により第2の支持部材をさらに加熱したとき、第1の支持部材に第2の支持部材からの熱を伝わり難くすることができる。そのため、加熱手段によりさらに加熱せられた第2の支持部材は、第1の支持部材の基端側方向により大きく膨張する。よって、遮蔽板をより効率的に第1の支持部材の基端側に向かう他側縁の方向、すなわち、イオンビームから離れる方向に移動されるか、または、いずれの方向にも移動されないようにすることができる。
【0016】
(3)請求項3に記載の発明によれば、第1の支持部材の先端側に基端側を支持され先端側を第1の支持部材の基端側に向けた自由端としている第2の支持部材は、前記第1の支持部材の先端側に断熱支持される構造となされており、前記遮蔽板の前記第1の支持部材の先端側に向かう一側縁を前記イオンビームの照射位置として該遮蔽板を保持し、この遮蔽板により前記イオンビームが遮蔽される位置に設置された前記試料の該遮蔽板の一側縁より露出した箇所への前記イオンビームによる加工を行わせるようになされている。
【0017】
そのため、この試料作製装置においては、イオンビームの照射によって加熱された遮蔽板からの熱伝導により第2の支持部材が加熱され、熱膨張を生ずる。このとき、第2の支持部材は第1の支持部材の先端側に断熱支持されているので、第1の支持部材に第2の支持部材からの熱を伝わり難くすることができる。したがって、第1の支持部材の熱膨張を極めて僅かに抑えることができる。よって、遮蔽板を第1の支持部材の基端側に向かう他側縁の方向、すなわち、イオンビームから離れる方向に移動されるか、または、いずれの方向にも移動されないようにすることができる。
【0018】
したがって、本発明に係わる試料作製装置においては、イオンビームによる試料の加工中において、イオンビームを遮断する遮蔽板のイオンビームに接近する方向への移動が防止され、新たな箇所がイオンビームによって加工され、良好な断面が現れた試料が作製できる。
【0019】
すなわち、本発明は、イオンビームの照射により断面を露出させた試料を作製するため試料をイオンビームに対する所定位置に保持する試料作製装置において、イオンビームによる試料の加工中において、イオンビームを遮断する遮蔽板がイオンビームに接近する方向に移動することが防止され、イオンビームによる加工が良好に行われるようにして、良好な断面が現れた試料が作製できるようになされた試料作製装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る試料作製装置の構成例を示す平面図である。
【図2】本発明に係る試料作製装置の構成例を示す側面図である。
【図3】本発明に係る試料作製装置の要部を示す側面図である。
【図4】従来の試料作製装置の構成を示す側面図である。
【図5】本発明に係る他の試料作製装置の要部を示す側面図である。
【図6】本発明に係る他の試料作製装置の要部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。但し、この例示によって本発明の技術範囲が制限されるものでは無い。各図において、同一または類似の動作を行うものには共通の符号を付し、詳しい説明の重複を避ける。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る試料作製装置200の構成例を示す平面図である。
【0023】
本発明に係る試料作製装置200は、図1に示すように、イオンビームBの照射により断面を露出させた試料101を作製するため、この試料101をイオンビームBに対する所定位置に保持するための装置である。
【0024】
試料作製装置200は、図示しない真空チャンバ内に収納されて使用される。真空チャンバの上部には、イオン銃(イオンビーム照射手段)が取り付けられている。このイオン銃としては、ガスイオン銃を用いることができ、例えば、Arガスを放電によりイオン化させてArイオンを放出させるガスイオン銃を用いることができる。このイオン銃からは、イオンビームBが放出される。
【0025】
そして、試料作製装置200は、図1に示すように、基端側を基台1により支持され、先端側が自由端となされた一対の第1の支持部材2,2を有している。これら第1の支持部材2,2は、基端側が一体化されており、先端側を互いに平行として構成されている。これら第1の支持部材2,2は、基台1上において、2軸方向に移動操作可能に支持されている。
【0026】
図2は、試料作製装置200の構成例を示す側面図である。
【0027】
すなわち、第1の支持部材2,2は、図2に示すように、基端側を第1のリニアベアリング7を介して、スライダ板5に支持されている。このスライダ板5は、第1のリニアベアリング7に直交する第2のリニアベアリング8を介して、基台1により支持されている。そして、第1の支持部材2,2の基端側には、基台1上に設けられた調整ピニオンギヤ3が噛合したラック部4が設けられている。調整ピニオンギヤ3が回転操作されることにより、第1の支持部材2,2は、図1中矢印Yで示す第1の支持部材2,2の側方に移動操作される。
【0028】
また、スライダ板5には、基台1に螺合された調整ネジ6の先端部が当接している。調整ネジ6が回転操作されることにより、第1の支持部材2は、スライダ板5とともに、図2中矢印Xで示す第1の支持部材2の進退方向に移動操作される。なお、スライダ板5は、図示しない付勢部材により、調整ネジ6の先端部側に付勢されており、調整ネジ6の先端部から離間することが防止されている。
【0029】
そして、試料作製装置200は、第1の支持部材2の先端側に基端側を支持された一対の第2の支持部材9,9を有している。これら第2の支持部材9,9は、それぞれの先端側を第1の支持部材2,2の基端側に向けた自由端としている。
【0030】
第2の支持部材9,9には、これら第2の支持部材9,9間に差し渡されるようにして、遮蔽板10が取り付けられている。この遮蔽板10は、第2の支持部材9,9によって、
イオンビームBの照射方向に対してほぼ直交する方向となされて支持されている。これら第2の支持部材9,9は、遮蔽板10の第1の支持部材2,2の先端側に向かう一側縁(エッジ部)10aを、イオンビームBの照射位置として、遮蔽板10を保持する。この遮蔽板10とイオンビームBとの相対位置は、第1の支持部材2,2を基台1上において2軸方向に移動操作することによって調整される。
【0031】
そして、遮蔽板10によりイオンビームBが遮蔽される位置には、試料101が設置される。この試料101は、支持台11上に載置されて、上面部を遮蔽板10によって覆われた状態に設置される。試料101には、遮蔽板10の一側縁10aより露出した箇所に、イオンビームBが照射され、このイオンビームBによる加工が行われる。
【0032】
図3は、試料作製装置200の要部を示す側面図である。
【0033】
なお、遮蔽板10は、図3に示すように、第2の支持部材9,9に取り付けられた板バネ12,12により、第2の支持部材9,9に固定される。また、遮蔽板10の一側縁10aは、下方側がイオンビームB側に進入する方向のテーパ面となされており、このテーパ面の角度θは、イオンビームBの進行方向(鉛直方向)に対して6°程度となっている。
【0034】
試料作製装置200において、第2の支持部材9,9には、加熱ヒーター13が取り付けられている。13aは加熱ヒーター13を加熱するためのヒーター電源である。
【0035】
イオンビームBの照射によって第1及び第2の支持部材2,2、9,9が加熱され、熱膨張を生ずるが、第2の支持部材9,9に取り付けられた加熱ヒーター13によりさらに加熱される。そのため、第2の支持部材9,9は第1の支持部材2,2よりも大きく熱膨張する。よって、遮蔽板10は、図3中矢印Aで示すように、第1の支持部材2,2の基端側に向かう他側縁の方向、すなわち、イオンビームBから離れる方向に移動されるか、または、いずれの方向にも移動されないようにできる。
【0036】
(実施の形態2)
図5は、本発明に係る他の試料作製装置300の要部を示す側面図である。試料作製装置300において、第2の支持部材が、第1の支持部材の先端側に断熱支持されている以外は試料作製装置200と同じ構成となっている。
【0037】
試料作製装置300において、第2の支持部材9,9は第1の支持部材2,2に断熱部材14を挟んで支持固定されている。イオンビームBが照射されたとき、遮蔽板10はイオンのエネルギーにより加熱される。その熱が第2の支持部材9,9に伝わって第2の支持部材9,9の温度も上昇する。試料作製装置200の構造では、遮蔽板からの熱は第2の支持部材9,9を経由して第1の支持部材2,2にも伝わるが、試料作製装置300の構造では断熱部材14により熱伝導が遮断されるので、第1の支持部材2,2の熱膨張を極めて僅かに抑えることができる。そのため、第2の支持部材9,9に取り付けられている加熱ヒーター13による第2の支持部材9,9の加熱を少なくして効率よく第2の支持部材9,9を熱膨張させることが出来る。
【0038】
よって、遮蔽板10は、図5中矢印Aで示すように、第1の支持部材2,2の基端側に向かう他側縁の方向、すなわち、イオンビームBから離れる方向に移動されるか、または、いずれの方向にも移動されないようにできる。
【0039】
(実施の形態3)
図6は、本発明に係る他の試料作製装置400の要部を示す側面図である。試料作製装置400は、試料作製装置300から加熱ヒーター13及びヒーター電源13aを除いた構造と同じである。すなわち、第2の支持部材9,9は第1の支持部材2,2の先端側に断熱支持されているが、試料作製装置200及び300に備えられているような加熱ヒーターは構成されていない。
【0040】
イオンビームBが照射されたとき、遮蔽板10はイオンのエネルギーにより加熱される。その熱が第2の支持部材9,9に伝わって第2の支持部材9,9の温度も上昇する。試料作製装置200の構造では、第2の支持部材9,9の熱は第1の支持部材2,2にも伝わるが、試料作製装置400の構造では断熱部材14により熱伝導が遮断されるので、第1の支持部材2,2の熱膨張を極めて僅かに抑えることができる。そのため、第2の支持部材9,9を強制的に加熱する手段が無くても第2の支持部材9,9を第1の支持部材2,2よりも大きく熱膨張させることが可能である。
【0041】
よって、遮蔽板10は、図6中矢印Aで示すように、第1の支持部材2,2の基端側に向かう他側縁の方向、すなわち、イオンビームBから離れる方向に移動されるか、または、いずれの方向にも移動されないようにできる。
【0042】
以上述べたように、試料作製装置200、300及び400のいずれにおいても、イオンビームBによる試料101の加工中において、イオンビームBを遮断する遮蔽板10のイオンビームBに接近する方向への移動が防止され、試料101上の新たな箇所がイオンビームBによって加工され、良好な断面が現れた試料101が作製できる。
【0043】
そして、試料作製装置200、300及び400のいずれにおいても、図2中の矢印Cで示す方向、すなわち、イオンビームB側(第1の支持部材2,2の先端側)から試料101を臨む方向から、CCDカメラや顕微鏡等により、イオンビームBによる加工中の試料101を観察することができる。また、CCDカメラや顕微鏡等による観察は、イオンビームBによる試料101の加工中のみならず、試料101の加工に先立つ試料101の位置決めのために行うこともできる。
【0044】
以下に、試料101のイオンビームBによる加工に先立って行われる遮蔽板10の位置調節及び試料101の位置調節について説明する。
【0045】
始めに、CCDカメラ(光学顕微鏡)の位置調節を行う。まず、試料101にCCDカメラの位置調整用のイオンビームBの痕を付けるために、遮蔽板10を取り付けずに、試料101をイオンビームBの中心軸上に設置する。そして、加工室内を排気装置によって排気し、イオン銃からイオンビームBを放出させ、試料101上の任意の位置にイオンビームBを所定時間照射する。
【0046】
このイオンビームBの照射により、試料101はエッチングされ、試料101上には、イオンビーム痕が形成される。そして、CCDカメラを位置調整し、試料101上に形成されたイオンビーム痕がCCDカメラにより観察される状態とする。このようにしてCCDカメラを位置調整することにより、CCDカメラの光軸上とイオンビームBの中心軸とが、試料101上で交差する状態となされる。
【0047】
なお、このようなCCDカメラの位置調節は、イオンビームBの中心軸の位置が変化する毎に行い、例えば、イオン銃の交換後やイオン銃の加熱クリーニング後に行う。
【0048】
次に、加工室を開放し、遮蔽板10の位置調節を行う。まず、遮蔽板10を第2の支持部材9,9に取り付ける。このとき、遮蔽板10は、一側縁10aが図1中矢印Yで示すY軸に平行になるように設置する。そして、板バネ12,12により、遮蔽板10を第2の支持部材9,9に固定する。
【0049】
このとき、CCDカメラにより観察される画像においては、イオンビーム痕とともに、遮蔽板10の一側縁10aが観察される。さらに遮蔽板10の位置を調整し、遮蔽板10の一側縁10aをCCDカメラの光軸上に位置させる。このようにして、遮蔽板10の一側縁10aは、イオンビームBの中心軸上に位置される。
【0050】
次に、試料101の位置調節を行う。試料101の位置調整は、イオンビームBによる加工を行って試料断面を得たい部分が、遮蔽板10の一側縁10aの真下に位置するように調整する。
【0051】
そして、加工室内を排気装置によって排気し、試料101のイオンビームBによる加工を行う。イオン銃からイオンビームBを放出させ、遮蔽板10で遮られなかったイオンビームBによって、試料101の表面が所定時間エッチングされる。すなわち、遮蔽板10の一側縁10aの横を通過したイオンビームBによって、試料101上の加工位置及びその周辺部がエッチングされる。このとき、加工によって現れた試料断面がCCDカメラによって観察される。
【0052】
なお、試料101をイオンビームBにより加工するときには、CCDカメラを真空チャンバの外に設置しておけば、イオンエッチングによって試料101から飛散する粒子によってCCDカメラのレンズが汚れることはない。したがって、試料断面の観察を良好に行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
(同一または類似の動作を行うものには共通の符号を付す。)
1 基台
2 第1の支持部材
3 調整ピニオンギヤ
4 ラック部
5 スライダ板
6 調整ネジ
7 第1のリニアベアリング
8 第2のリニアベアリング
9 第2の支持部材
10 遮蔽板
11 支持台
12 板バネ
13 加熱ヒーター(加熱手段)
14 断熱部材
101 試料
B イオンビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームの照射により断面を露出させた試料を作製するため、試料をイオンビームに対する所定位置に保持する試料作製装置であって、
基端側を支持され、先端側が自由端となされた第1の支持部材と、
前記第1の支持部材の先端側に基端側を支持され、先端側を前記第1の支持部材の基端側に向けた自由端としている第2の支持部材と、
前記第2の支持部材に取り付けられ、前記第2の支持部材を加熱する加熱手段と、
前記第2の支持部材に支持された遮蔽板と
を備え、
前記第2の支持部材は、前記加熱手段により加熱せられて前記第1の支持部材の基端側方向に膨張する構造となされており、前記遮蔽板の前記第1の支持部材の先端側に向かう一側縁を前記イオンビームの照射位置として該遮蔽板を保持し、この遮蔽板により前記イオンビームが遮蔽される位置に設置された前記試料の該遮蔽板の一側縁より露出した箇所への前記イオンビームによる加工を行わせる
ことを特徴とする試料作製装置。
【請求項2】
前記第2の支持部材は、前記第1の支持部材の先端側に断熱支持されていることを特徴とする請求項1に記載の試料作製装置。
【請求項3】
イオンビームの照射により断面を露出させた試料を作製するため、試料をイオンビームに対する所定位置に保持する試料作製装置であって、
基端側を支持され、先端側が自由端となされた第1の支持部材と、
前記第1の支持部材の先端側に基端側を支持され、先端側を前記第1の支持部材の基端側に向けた自由端としている第2の支持部材と、
前記第2の支持部材に支持された遮蔽板と
を備え、
前記第2の支持部材は、前記第1の支持部材の先端側に断熱支持される構造となされており、前記遮蔽板の前記第1の支持部材の先端側に向かう一側縁を前記イオンビームの照射位置として該遮蔽板を保持し、この遮蔽板により前記イオンビームが遮蔽される位置に設置された前記試料の該遮蔽板の一側縁より露出した箇所への前記イオンビームによる加工を行わせる
ことを特徴とする試料作製装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−169407(P2010−169407A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9644(P2009−9644)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】