説明

試料分析装置、試料分析方法及びコンピュータプログラム

【課題】バーコードのような識別情報を読み取ることができなかった場合であっても、全体の処理時間を大きく増加させること無く確実に再度読み取りを実行することができる試料分析装置、試料分析方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】識別情報が付与されている検体容器、試薬容器、検体容器又は試薬容器を収容する収容部、識別情報を読み取る識別情報読取器の少なくとも1つを、識別情報を読み取ることが可能な読取位置へ順次移動させ、識別情報を読み取る識別情報読取器で、読取位置にある識別情報を順次読み取る。識別情報を正常に読み取ったか否かを判断し、複数の識別情報について読み取りが終了した後、正常に読み取ることができないと判断された識別情報を読み取ることが可能な再読取位置へ、検体容器、試薬容器、収容部、識別情報読取器の少なくとも1つを移動させ、正常に読み取ることができないと判断された識別情報を再度読み取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とを混和して調製された測定試料を分析することができる試料分析装置、試料分析方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
検体と試薬とを混和して調製された測定試料を分析することができる試料分析装置では、検体及び試薬は、試験管、容器等に収容されている。試験管、容器等には、収容されている検体、試薬等を識別するための識別情報が含まれたバーコードラベルが貼付されている。
【0003】
しかし、検体、試薬等の種類は膨大であり、提供するメーカによって試験管、容器等の種類が混在することも多い。したがって、バーコードラベルの貼付位置の相違、バーコードラベルの品質の相違等によって、識別情報を読み取ることができない場合が生じていた。
【0004】
このようなバーコードラベルの読み取りの失敗に対応するために、例えば特許文献1では、読み取りに失敗した場合には、バーコードラベル自体の存否を判断し、バーコードラベルが貼付された試験管については、バーコードラベルの読み取り位置を微調整して再度読み取りを行う自動分析装置が開示されている。読み取りに失敗した場合に、読み取る位置を微調整して変更することにより、読み取りに失敗した試験管であっても再読み取り時に正常に読み取ることができる可能性がある。
【特許文献1】特開平6−130069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている自動分析装置では、読み取りに失敗したバーコードラベルの存在を確認した場合、バーコードリーダによる読み取り位置を微調整して再読み取りを実行する。したがって、1つの識別情報の再読み取りが完了するまで、次の識別情報の読み取りを実行することができず、再読み取りが発生した場合には全体として読み取り処理に要する時間が増大するという問題点があった。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、バーコードのような識別情報を読み取ることができなかった場合であっても、全体の処理時間を大きく増加させること無く確実に再度読み取りを実行することができる試料分析装置、試料分析方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために第1発明に係る試料分析装置は、検体と試薬とを混和して調製された測定試料を分析する試料分析装置において、識別情報が付与されている検体容器、試薬容器、前記検体容器又は試薬容器を収容する収容部の少なくとも1つを移動させる移動手段と、前記検体容器に付与された識別情報、前記試薬容器に付与された識別情報、前記収容部に付与された識別情報の少なくとも1つを読み取る識別情報読取器と、該識別情報読取器が、前記識別情報を正常に読み取ったか否かを判断する判断手段と、前記識別情報読取器が順次前記識別情報を読み取るように前記移動手段の動作を制御するとともに、各識別情報の読み取りが終了した後、前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報を前記識別情報読取器が再度読み取る再読み取りを行なうように前記移動手段の動作を制御する移動制御手段とを備え、前記識別情報読取器は、前記移動手段によって読み取ることが可能な読取位置に移動された識別情報を読み取ることを特徴とする。
【0008】
また、第2発明に係る試料分析装置は、第1発明において、前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報ごとに、前記読取位置から当該識別情報までの距離を特定する距離特定手段を備え、前記移動制御手段は、特定された前記距離に基づいて、前記移動手段の動作を制御することを特徴とする。
【0009】
また、第3発明に係る試料分析装置は、第2発明において、前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報が複数ある場合、前記距離特定手段は、1の識別情報を再読み取りした後、次の識別情報を再読み取りするために必要となる前記移動手段による移動距離を特定することを特徴とする。
【0010】
また、第4発明に係る試料分析装置は、第1乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報が複数ある場合、前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報の再読み取りの順序を決定する順序決定手段を備え、前記移動制御手段は、決定された前記再読み取りの順序に基づいて、前記移動手段の動作を制御することを特徴とする。
【0011】
また、第5発明に係る試料分析装置は、第1乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記識別情報が付与されている前記検体容器、前記試薬容器、前記収容部の少なくとも1つを保持する回転テーブルをさらに備え、前記移動手段は、前記回転テーブルを略水平面上で回転移動させる駆動源を含むことを特徴とする。
【0012】
また、第6発明に係る試料分析装置は、第2発明において、前記識別情報が付与されている前記検体容器、前記試薬容器、前記収容部の少なくとも1つを保持する回転テーブルをさらに備え、前記移動手段は、前記回転テーブルを略水平面上で回転移動させる駆動源を含み、前記距離特定手段は、再読み取りの対象となっている識別情報を、前記駆動源によって前記読取位置へ移動させるために必要なパルス数に基づいて、前記距離を特定することを特徴とする。
【0013】
また、第7発明に係る試料分析装置は、第1乃至第6発明のいずれか1つにおいて、前記識別情報読取器が、前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報を正常に読み取ったか否かを再度判断する再判断手段をさらに備え、該再判断手段が、正常に読み取ることができなかったと再度判断した場合、正常に読み取ることができなかった前記識別情報につき読み取ることができなかった旨を示す情報を表示する表示手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、第8発明に係る試料分析装置は、第1発明において、前記識別情報が付与されている前記検体容器、前記試薬容器、前記収容部の少なくとも1つを保持する回転テーブルをさらに備え、前記移動制御手段は、前記回転テーブルに保持されている容器に付与されている全ての前記識別情報について読み取りが終了した後、前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報を前記識別情報読取器が再読み取りを行なうように、前記移動手段の動作を制御することを特徴とする。
【0015】
次に上記目的を達成するために第9発明に係る試料分析装置は、検体と試薬とを混和して調製された測定試料を分析する試料分析装置において、検体容器、試薬容器、前記検体容器又は試薬容器を収容する収容部の少なくとも1つを識別するために付与される識別情報を読み取る識別情報読取器と、該識別情報読取器を移動させる移動手段と、前記識別情報読取器が、前記識別情報を正常に読み取ったか否かを判断する判断手段と、前記識別情報読取器が順次前記識別情報を読み取るように前記移動手段の動作を制御するとともに、各識別情報の読み取りが終了した後、前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報を前記識別情報読取器が再度読み取る再読み取りを行なうように、前記移動手段の動作を制御する移動制御手段とを備え、前記識別情報読取器は、前記移動手段によって読み取り対象である識別情報を読み取ることが可能な読取位置に移動された場合に前記識別情報を読み取ることを特徴とする。
【0016】
次に上記目的を達成するために第10発明に係る試料分析方法は、検体と試薬とを混和して調製された測定試料を分析する試料分析装置で実行することが可能な試料分析方法において、検体容器に付与された識別情報、試薬容器に付与された識別情報、前記検体容器又は試薬容器を収容する収容部に付与された識別情報の少なくとも1つを読み取る識別情報読取器が順次前記識別情報を読み取るように各識別情報を移動させ、前記識別情報読取器で各識別情報を正常に読み取ったか否かを判断し、各識別情報の読み取りが終了した後、正常に読み取ることができないと判断された識別情報を前記識別情報読取器が再度読み取る再読み取りを行なうように、各識別情報を移動させ、前記識別情報読取器によって読み取ることが可能な読取位置に移動された識別情報を読み取ることを特徴とする。
【0017】
次に上記目的を達成するために第11発明に係るコンピュータプログラムは、検体と試薬とを混和して調製された測定試料を分析する試料分析装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、前記試料分析装置を、識別情報が付与されている検体容器、試薬容器、前記検体容器又は試薬容器を収容する収容部の少なくとも1つを移動させる移動手段、前記検体容器に付与された識別情報、前記試薬容器に付与された識別情報、前記収容部に付与された識別情報の少なくとも1つを読み取る識別情報読取手段、該識別情報読取手段が、前記識別情報を正常に読み取ったか否かを判断する判断手段、及び前記識別情報読取手段が順次前記識別情報を読み取るように前記移動手段の動作を制御するとともに、各識別情報の読み取りが終了した後、前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報を前記識別情報読取手段が再度読み取る再読み取りを行なうように、前記移動手段の動作を制御する移動制御手段として機能させ、前記識別情報読取手段を、前記移動手段によって読み取ることが可能な読取位置に移動された識別情報を読み取る手段として機能させることを特徴とする。
【0018】
第1発明、第9発明、第10発明及び第11発明では、識別情報読取器が順次識別情報を読み取るように移動手段の動作を制御するとともに、各識別情報の読み取りが終了した後、判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報を識別情報読取器が再度読み取りを行なうように、移動手段の動作を制御する。1回目には正常に読み取ることができなかった識別情報について、当該識別情報を読み取る読取位置へ順次移動させて再度読み取ることにより、正常に読み取ることができた識別情報については、正常に読み取ることができなかった識別情報の再読み取りを待つことなく、2回目の読み取り処理と並行して画面への表示処理、検体又は試薬の吸引処理等を実行することができ、全体として分析処理に要する時間を短縮することが可能となる。
【0019】
ここで、「識別情報」とは、検体容器、試薬容器、及び収容部の少なくとも1つを識別するための情報であり、例えばバーコードラベル、ICチップ等からの無線信号等に含まれる識別情報一般を意味する。「読取位置」とは、例えばバーコードリーダ等でバーコード等の識別情報を読み取るための位置である。「再読取位置」とは、2回目以降に例えばバーコードリーダ等でバーコード等の識別情報を再度読み取るための位置である。「識別情報読取器」とは、識別情報を読み取ることが可能な装置、例えばバーコードラベルに対してはバーコードリーダ、ICチップに対してはICリーダ/ライタ等を意味する。
【0020】
第2発明では、正常に読み取ることができないと判断された識別情報ごとに、読取位置から当該識別情報までの距離を特定する。特定された距離に基づいて、検体容器、試薬容器、収容部の少なくとも1つを移動させる。特定された距離に基づいて、正常に読み取ることができないと判断された識別情報を読み取ることが可能な読取位置へ移動させることにより、例えば距離が短い順に又は長い順に移動させることで無駄な移動時間を省くことができ、全体として再読取位置への移動時間を短縮することが可能となる。
【0021】
第3発明では、正常に読み取ることができないと判断された識別情報が複数ある場合、一の識別情報を再読み取りした後、次の識別情報を再読み取りするために必要となる移動距離を特定することにより、再読取位置から次の再読取位置までの移動時間を短縮することができ、再読み取り完了までの時間を短縮することが可能となる。
【0022】
第4発明では、正常に読み取ることができないと判断された識別情報が複数ある場合、正常に読み取ることができないと判断された識別情報の再読み取りの順序を決定し、決定された再読み取りの順序に基づいて、再読取位置へ移動させる。例えば、特定された距離が短い順に読み取り順序を決定することにより、再読み取り完了までに要する時間を短縮することが可能となる。
【0023】
第5発明では、識別情報が付与されている検体容器、試薬容器、収容部の少なくとも1つを保持する回転テーブルをさらに備え、回転テーブルを略水平面上で回転移動させる駆動源を備える。回転テーブルを略水平面上で回転させることにより、回転テーブルの周りでバーコードリーダ等の識別情報読取器を移動させる、検体容器等を直線移動、往復移動等させる等の必要がないことから、移動機構を単純な構成とすることが可能となる。
【0024】
第6発明では、識別情報が付与されている検体容器、試薬容器、収容部の少なくとも1つを保持する回転テーブルをさらに備え、回転テーブルを略水平面上で回転移動させる駆動源を含む。再読み取りの対象となっている識別情報を、駆動源によって読取位置へ移動させるために必要なパルス数に基づいて、距離を特定する。ステッピングモータ等を駆動するパルス数によって距離を特定することにより、回転テーブルの回転角度を特定することができ、正確な再読取位置へ移動するよう容易に制御することが可能となる。
【0025】
第7発明では、正常に読み取ることができないと判断された識別情報を正常に読み取ったか否かを再度判断し、正常に読み取ることができなかったと再度判断した場合、正常に読み取ることができなかった識別情報につき読み取ることができなかった旨を示す情報を表示する。これにより、再読み取りによっても正常に読み取ることができなかった識別情報を目視で確認することができ、原因の特定を容易ならしめる。
【0026】
第8発明では、識別情報が付与されている検体容器、試薬容器、収容部の少なくとも1つを保持する回転テーブルをさらに備え、回転テーブルに保持されている容器に付与されている全ての識別情報について読み取りが終了した後、正常に読み取ることができないと判断された識別情報を識別情報読取器が再度読み取りを行なうように移動させる。これにより、再読み取りを行った後に、識別情報をまだ読み取っていない容器についての1回目の読み取りを再開する必要がなくなるので、全体として分析処理に要する時間を短縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
上記構成によれば、識別情報読取器が識別情報を読み取ることができるように順次識別情報を移動させ、各識別情報の読み取りが終了した後、正常に読み取ることができないと判断された識別情報を識別情報読取器が再度読み取りを行なうことにより、正常に読み取ることができた識別情報については、正常に読み取ることができなかった識別情報の再読み取りを待つことなく、2回目の読み取り処理と並行して画面への表示処理、検体又は試薬の吸引処理等を実行することができ、全体として分析処理に要する時間を短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態に係る試料分析装置について、血液の凝固・線溶機能に関連する特定の物質の量、活性の度合等を工学的に測定して分析する場合を一例とし、図面に基づいて具体的に説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態に係る試料分析装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態に係る試料分析装置10は、検体容器、試薬容器等を収容する収容部1が駆動部2にて移動可能としてあり、収容部1に収容されている検体容器、試薬容器等に貼付されているバーコード情報を読み取る識別情報読取器としてバーコードリーダ3が設けてある。
【0030】
駆動部2は、定電流駆動のステッピングモータを用いて収容部1を移動させる。駆動部2の動作及びバーコードリーダ3の動作の制御は、信号線で接続されている制御部4により行われる。
【0031】
制御部4は、少なくとも、CPU(中央演算装置)41、RAM42、記憶装置43、入力装置44、出力装置45、通信装置46、補助記憶装置47及び上述したハードウェアを接続する内部バス48で構成されている。CPU41は、内部バス48を介して制御部4の上述したようなハードウェア各部と接続されており、上述したハードウェア各部の動作を制御するとともに、記憶装置43に記憶されているコンピュータプログラム7に従って、接続されている駆動部2、バーコードリーダ3、及び表示装置5等の動作を制御する。
【0032】
RAM42は、SRAM、SDRAM等の揮発性メモリで構成され、コンピュータプログラム7の実行時にロードモジュールが展開され、コンピュータプログラム7の実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0033】
記憶装置43は、内蔵される固定型記憶装置(ハードディスク)等で構成されている。記憶装置43に記憶されているコンピュータプログラム7は、プログラム及びデータ等の情報を記録したDVD、CD−ROM、フラッシュメモリ等の可搬型記録媒体6から、補助記憶装置47によりダウンロードされ、実行時には記憶装置43からRAM42へ展開して実行される。もちろん、通信装置46を介して外部コンピュータからダウンロードされたコンピュータプログラムであっても良い。
【0034】
通信装置46は内部バス48に接続されており、インターネット、LAN、WAN等の外部のネットワーク網に接続されることにより、外部のコンピュータ等とデータ送受信を行うことが可能となっている。例えば上述した記憶装置43は、制御部4に内蔵される構成に限定されるものではなく、通信装置46を介して接続されている外部のストレージ等の外部記録媒体であっても良い。
【0035】
入力装置44は、キーボード及びマウス等のデータ入力媒体である。表示装置5は、CRTモニタ、LCD等の表示装置である。出力装置45は、レーザプリンタ、インクジェットプリンタ等の印刷装置である。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態に係る試料分析装置10の駆動部2の概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、制御部4のCPU41から動作信号を受信したPPMC(パルス発振器)21は、動作信号を指令パルス信号に変換してモータドライバ22へ送信する。指令パルス信号を受信したモータドライバ22は、指令パルス信号のパルス数に応じてステッピングモータ23を回転させる。
【0037】
例えば指令パルス信号が回転方向制御信号であった場合、回転方向を示すデジタル値1又は0に応じてステッピングモータ23の回転方向を決定する。また、指令パルス信号の周波数に応じて、ステッピングモータ23の回転速度を変更することができる。
【0038】
図3は、本発明の実施の形態に係る試料分析装置10の概要を示す部分平面図である。本実施の形態では、収容部1は円形状の第1試料テーブル11、円環状の第2試料テーブル12、及び検体容器、試薬容器等を収容することが可能な複数の第1容器ラック13、13、・・・、第2容器ラック14、14、・・・で構成されており、駆動部2は、第1試料テーブル11を回転させる第1ステッピングモータと、第2試料テーブル12を回転させる第2ステッピングモータとを有している。すなわち、駆動部2が、複数のモータドライバ22及びステッピングモータ23を有する構成となっている。
【0039】
そして、制御部4のCPU41から動作信号を送信することにより、駆動部2にて変換された指令パルス信号に応じて各ステッピングモータ23が動作し、それぞれ第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12を回転させる。駆動部2は、第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12を、それぞれ時計回り方向及び反時計回り方向の両方に回転させることができ、互いに独立して回転させることができる。
【0040】
第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12の上には、それぞれ検体容器、試薬容器等を収容することが可能な複数の第1容器ラック13、13、・・・、及び第2容器ラック14、14、・・・が脱着することが可能に配置されている。複数の第1容器ラック13、13、・・・、及び第2容器ラック14、14、・・・には、それぞれバーコードラベルが貼付されている。貼付されているバーコードラベルを読み取るため、第2試料テーブル12の側面の近傍に、所定の距離を隔ててバーコードリーダ3を設けている。バーコードリーダ3も、制御部4とデータ通信することが可能に接続してあり、例えば読み取ったバーコード情報をパルス信号に変換して、CPU41へ送信する。
【0041】
また、第2容器ラック14、14、・・・を第2試料テーブル12に配置した場合、第2容器ラック14、14、・・・が互いに隣接する隙間のうち、1箇所の隙間12aについては、他の4箇所の隙間より大きい間隔を有している。すなわち、他の隙間より間隔が大きい隙間12aを介して、第2試料テーブル12の内側に位置する第1試料テーブル11上に配置されている第1容器ラック13、13、・・・及び保持されている容器に貼付されているバーコードラベルから、バーコードリーダ3がバーコード情報を読み取る。
【0042】
図4は、第1容器ラック13の構成を示す斜視図である。第1容器ラック13は、検体容器、試薬容器等の容器を保持するための2つの保持部131、132と、保持部131、132の前面側にそれぞれ設けてある切欠部131a、132aと、上方に突出するよう設けてある把持部133とで構成されている。保持部131、132は、円筒型の容器を保持することができるよう、収容可能部分が上から見て略円形状となっている。保持部131、132の内径よりも小さい外形を有する容器を保持する場合には、別途アダプタ等を介することにより安定して保持することができる。
【0043】
保持部131、132の外周面には、それぞれバーコードラベル131b、132bが貼付されている。保持部131、132の内周面にも、それぞれバーコードラベル131c、132cが貼付されている。
【0044】
図5は、第2容器ラック14の構成を示す斜視図である。第2容器ラック14は、検体容器、試薬容器等の容器を保持するための6つの保持部141〜146と、保持部141〜146の前面側にそれぞれ設けてある切欠部141a〜146aと、上方に突出するよう設けてある把持部147とで構成されている。保持部141〜146は、円筒型の容器200を保持することができるよう、収容可能部分が上から見て略円形状となっている。保持部141〜146の内径よりも小さい外形を有する容器を保持する場合には、別途アダプタ等を介することにより安定して保持することができる。
【0045】
保持部141〜146の外周面には、それぞれバーコードラベル141b〜146bが貼付されている。保持部141〜146の内周面にも、それぞれバーコードラベル141c〜146cが貼付されている。
【0046】
図6は、容器200を1個保持した状態での第1容器ラック13の構成を示す斜視図である。保持部131に容器200が保持されており、保持部131の内周面に貼付されているバーコードラベル131cを読み取ることができない状態となっている。
【0047】
すなわち、バーコードリーダ3がバーコードラベル131bを読み取った後、バーコードラベル131cを読み取ることなく容器200に貼付してあるバーコードラベル200aを読み取った場合には、制御部4のCPU41は、バーコードラベル200aにて読み取られるバーコード情報に対応する検体、試薬を内蔵する容器200が保持されていると判断することができる。
【0048】
同様に図7は、容器200を3個保持した状態での第2容器ラック14の構成を示す斜視図である。保持部141、144、145に容器200、200、200が保持されており、保持部141、144、145の内周面に貼付されているバーコードラベル141c、144c、145cを読み取ることができない状態となっている。
【0049】
すなわち、バーコードリーダ3がバーコードラベル141b、144b又は145bを読み取った後、バーコードラベル141c、144c又は145cを読み取ることなく容器200に貼付してあるバーコードラベル200aを読み取った場合には、制御部4のCPU41は、バーコードラベル200aにて読み取られるバーコード情報に対応する検体、試薬を内蔵する容器200が保持されていると判断することができる。
【0050】
本実施の形態では、まず第1容器ラック13及び第2容器ラック14にて容器200を保持することが可能なすべての位置について、容器200が保持されているか否か、及びバーコード情報を正常に読み取ることができたか否かを判断する。すなわち、第1試料テーブル11、及び第2試料テーブル12を所定の方向及び速度で一周回転させて、第1試料テーブル11、及び第2試料テーブル12の上に載置してある第1容器ラック13及び第2容器ラック14に保持されているすべての容器200について、バーコードリーダ3で正常に読み取ることができたか否かを制御部4で判断する。
【0051】
次に、1回目で正常に読み取ることができなかった容器200の保持されている位置までの距離を特定し、特定された距離に保持されている容器200についてのみ、再度バーコードリーダ3を用いてバーコード情報を読み取る。1回目と2回目とで、読み取り条件は一致していても変更しても良い。ここで、読み取り条件とは、バーコード情報等を読み取るための読み取り方法、バーコードリーダ3の読み取り設定等に関する条件であり、事前に記憶装置43に記憶しておく。
【0052】
本実施の形態では、バーコードリーダ3としてバーコードラベルに対してレーザ光を照射して走査するレーザ式を採用する。バーコードリーダ3は、反射光を受光して受光量に応じた電圧信号を、2値化された電圧パルス信号として出力する。バーコード情報を正常に読み取ることができたか否かは、制御部4がバーコードリーダ3から取得した電圧パルス信号が、所定の閾値より大きいか否かで判断する。
【0053】
したがって、読み取り条件として、例えば正常に読み取ることができたか否かを判断する閾値を変更しても良い。すなわち1回目より2回目の方が閾値を低くするよう変更することにより、1回目の読み取り時にはバーコードリーダ3から取得した電圧パルス信号に十分な強度がなかったと判断されたバーコードラベルであっても、2回目には正常に読み取ることができたと判断される可能性が高まる。
【0054】
その他、バーコードリーダ3から取得した電圧パルス信号について、1回目と2回目とで、バーコードラベルから読み取ったバーコード情報を正常に読み取ることができたか否かを判断するための1パルス内での読み取りタイミングを変更しても良い。また、1回目と2回目とで、バーコード情報を読み取るためにバーコードリーダ3から照射されるレーザ光の照射角度、すなわちバーコードリーダ3の読み取り可能角度を変更しても良い。
【0055】
さらに、バーコードリーダ3にて受光量に応じて出力される電圧信号に対して、信号出力を一定に保持する安定化回路を用いるか、安定化回路を用いることなく固定的な複数の増幅率を用いて増幅するかを変更することで、バーコードラベルに水滴が付着している場合等に含まれる反射光の影響を排除しても良い。
【0056】
また、バーコード情報を読み取るために回転移動させる第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12の回転方向及び回転速度を変更させても良い。このように1回目と2回目とで読み取り条件を変更させることにより、2回目の再読み取り時に正常に読み取ることができる可能性を高めることができる。
【0057】
図8は、本発明の実施の形態に係る試料分析装置10の制御部4のCPU41の処理手順を示すフローチャートである。図8において、制御部4のCPU41は、駆動部2に対して第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12の回転方向及び回転速度を指示する指示情報を送信し(ステップS801)、これにより、第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12が、所定の初期位置から、1つ目のバーコードラベルがバーコードリーダ3と対向する位置にくるまで回転し、バーコードリーダ3は、CPU41からの指示を受けてバーコードラベルの読み取りを開始する。そして、CPU41は、バーコードリーダ3から電圧パルス信号を受信する(ステップS802)。CPU41は、バーコード情報を正常に読み取ることができたか否かを、バーコードリーダ3から受信した電圧パルス信号が所定の閾値以上であるか否かで判断する(ステップS803)。
【0058】
CPU41が、所定の閾値より小さいと判断した場合(ステップS803:NO)、CPU41は、正常に読み取ることができなかったと判断し、読み取ることができなかったバーコードラベルの位置に関する位置情報を記憶装置43に記憶する(ステップS804)。
【0059】
図9は、第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12上の読み込み対象領域の説明図である。図9に示すように、第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12上に第1容器ラック13、13、・・・及び第2容器ラック14、14、・・・が載置され、隙間12aの右端の位置がバーコードリーダ3の正面に、そして第1容器ラック13、13の境界がバーコードリーダ3の正面になる位置となっている。本実施の形態では、この位置を初期位置Sとする。
【0060】
そして、第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12上に載置されている第1容器ラック13、13、・・・及び第2容器ラック14、14、・・・が初期位置Sに存在する場合のラックの位置に対応する領域を、それぞれ以下のように設定する。第1容器ラック13、13、・・・に対応する領域は、初期位置Sから時計回りに順次領域B1、B2、B3、B4、B5と設定する。また、第2容器ラック14、14、・・・に対応する領域は、初期位置Sから時計回りに順次領域A1、A2、A3、A4、A5と設定する。なお、領域A1、A2、A3、A4、A5は、固定の領域をそれぞれ領域A1、A2、A3、A4、A5と設定しても良いし、可変の領域をそれぞれ領域A1、A2、A3、A4、A5と設定しても良い。
【0061】
図10は、第1容器ラック13、13、・・・又は第2容器ラック14、14、・・・に容器200が収容された場合を含む記憶装置43に記憶される位置情報の例示図である。項目「領域」は、初期位置Sにおける第1容器ラック13、13、・・・又は第2容器ラック14、14、・・・が載置されている領域を示しており、項目「ラック番号」は、初期位置Sにて第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12上に載置されている第1容器ラック13、13、・・・及び第2容器ラック14、14、・・・の識別情報であり、設定されている領域名で記載されている。
【0062】
例えば図10(a)では、最初「領域」A2に載置されていた第2容器ラック14が反時計回りに回転移動して、「領域」A1、すなわち初期位置Sの時計回り方向の最初の領域に載置されていることを示している。そして、項目「位置」は、第2容器ラック14における6個の収容可能位置を示しており、時計回りに順次1〜6と番号を付与している。
【0063】
項目「流し読み結果」は、バーコードリーダ3でバーコードラベルを読み取った場合に取得したバーコード情報を示している。すなわち、項目「流し読み結果」に識別情報、例えば図10(a)では‘527000H’、‘527100H’、‘A100A’、図10(c)では‘B9003’、‘W900H’が記憶されている部分は、バーコードラベルを正常に読み取ることができたことを意味している。
【0064】
また、項目「流し読み結果」において、‘N’は容器200が収容されていない旨のバーコードラベルを正常に読み取ることができたことを意味している。例えば図10(a)では、収容可能位置3、4には容器200が収容されておらず、図10(c)では、収容可能位置1、4に容器200が収容されていないことがわかる。
【0065】
項目「流し読み結果」において、‘NA’は、第1容器ラック13、13、・・・又は第2容器ラック14、14、・・・自体が載置されていないことを示している。すなわち図10(b)では、第2容器ラック14が領域A2には載置されていない旨を示している。
【0066】
項目「流し読み結果」において、‘×’は正常に読み取ることができなかった旨を示している。すなわち、図10(a)では、収容可能位置6に収容されている容器200に付与されているバーコードラベルが、図10(c)では、収容可能位置3、5に収容されている容器200に付与されているバーコードラベルが、それぞれ正常に読み取ることができなかった旨を示している。
【0067】
項目「初期位置からの距離(パルス数)」は、初期位置Sから現在の収容可能位置までの回転角度を、ステッピングモータ23へ出力する駆動パルス数で示している。すなわち第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12が回転を開始する初期位置Sからの駆動パルス数を記憶しておくことにより、ステッピングモータ23による回転角度を求めることができ、例えば読み取ることができなかったバーコードラベルが貼付されている位置の回転角度を特定することができる。
【0068】
なお、バーコード情報の位置特定方法は上述した位置情報を用いる方法に限定されるものではなく、例えば別途ロータリーエンコーダ等の角度センサを設置し、第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12それぞれについて初期位置Sからの回転角度を直接記憶する方法であっても良い。
【0069】
図8に戻って、制御部4のCPU41が、所定の閾値以上であると判断した場合には(ステップS803:YES)、CPU41は、第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12が一周したか否かを判断する(ステップS805)。CPU41が、いずれか一方でも一周していないと判断した場合(ステップS805:NO)、CPU41は、次のバーコードラベルの読み取りを指示し、得られた電圧パルス信号をバーコードリーダ3から受信し(ステップS806)、処理をステップS803へ戻して、上述した処理を繰り返す。CPU41が、第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12が一周したと判断した場合(ステップS805:YES)、CPU41は、記憶装置43に記憶されている位置情報を読み出し(ステップS807)、所定の原点からの距離を位置情報ごとに特定する(ステップS808)。
【0070】
本実施の形態では、所定の原点は、例えば第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12が回転を開始する初期位置Sとする。所定の原点の定め方は特にこれに限定されるものではなく、回転角度を特定することが可能である位置であれば何でも良い。
【0071】
CPU41は、特定された距離に基づいて、最初に再読み取りすべきバーコードラベルを決定し(ステップS809)、該バーコードラベルの再読み取り位置へ第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12を回転させるよう駆動部2に指示信号を送信する(ステップS810)。CPU41は、再度バーコードラベルの読み取りを指示してバーコードリーダ3から電圧パルス信号を受信する(ステップS811)。
【0072】
CPU41は、バーコード情報を正常に読み取ることができたか否かを、バーコードリーダ3から受信した電圧パルス信号が閾値以上であるか否かで判断する(ステップS812)。CPU41が、閾値以上であると判断した場合には(ステップS812:YES)、CPU41は、記憶装置43に記憶されている位置情報のうち、新たな閾値以上であると判断されたバーコードラベルの位置情報につき、再読み取りした情報に更新する(ステップS813)。
【0073】
CPU41が、閾値より小さいと判断した場合(ステップS812:NO)、CPU41は、再度正常に読み取ることができなかったと判断し、再読み取りに失敗した旨を示す情報を付与することにより、記憶装置43に記憶されている位置情報を更新する(ステップS814)。
【0074】
CPU41は、記憶されている全ての位置情報に対応するバーコードラベルを再読み取りしたか否かを判断し(ステップS815)、CPU41が、全てのバーコードラベルを再読み取りしたと判断した場合には(ステップS815:YES)、CPU41は、記憶装置43に削除されずに残されている位置情報に相当する位置に、正常に読み取れなかった旨を示す情報を表示する(ステップS816)。CPU41が、まだ全てのバーコードラベルの再読み取りが完了していないと判断した場合には(ステップS815:NO)、CPU41は、特定された距離に基づいて、次に再読み取りすべきバーコードラベルを決定し(ステップS817)、処理をステップS810へ戻して上述した処理を繰り返す。なお、ステップS816において、再読み取りしたにもかかわらず正常に読み取れなかったバーコードラベルがない場合には、常に読み取れなかった旨を示す情報が表示されないことは言うまでもない。
【0075】
このように1回目で正常に読み取ることができなかったバーコードラベルだけを、該バーコードラベルまでの距離に基づいて順序を定めて再読み取りすることにより、正常に読み取ることができた識別情報については、正常に読み取ることができなかった識別情報の再読み取り結果を待つことなく、2回目の読み取り処理と並行して画面への表示処理、検体又は試薬の吸引処理等を実行することができ、全体として分析処理に要する時間を短縮することが可能となる。
【0076】
このように本実施の形態では、すべての位置についてバーコードラベルを読み取ってから、正常に読み取ることができなかった位置に収容されている容器200に対してのみ再度読み取りを実行する。したがって、回転移動の時間的ロスも少なく、制御も単純であることから、処理全体のスループットを最小限にすることが可能となる。また、正常に読み取ることができなかったバーコードラベルの再読み取りと並行して、正常に読み取ることができたバーコードラベルを示す情報の表示、検体又は試薬の吸引等を実行することができ、分析処理に要する時間を短縮することが可能となる。
【0077】
また、距離に基づいて、再読み取りするバーコードラベルの読み取り順序を決定する方法は特に限定されるものではない。例えば距離が近い順に読み取り順序番号を付与しても良い。図11は、本発明の実施の形態に係る試料分析装置10の制御部4のCPU41の読み取り順序決定の処理手順を示すフローチャートである。
【0078】
制御部4のCPU41は、正常に読み取ることができなかったバーコードラベルの初期位置Sからの距離D(n)(n=1、2、・・・、n)を記憶装置43から読み出し(ステップS1101)、iの初期値を‘0’に設定する(ステップS1102)。ここで、nは正常に読み取ることができなかったバーコードラベルの総数である。
【0079】
CPU41は、iを1インクリメントするとともに、jの初期値を‘n+1’に設定する(ステップS1103)。CPU41は、jを1デクリメントし(ステップS1104)、距離D(j−1)が距離D(j)より大きいか否かを判断する(ステップS1105)。
【0080】
CPU41が、距離D(j−1)が距離D(j)より大きいと判断した場合(ステップS1105:YES)、CPU41は、距離D(j−1)と距離D(j)とを交換し(ステップS1106)、CPU41が、距離D(j−1)が距離D(j)以下であると判断した場合(ステップS1105:NO)、CPU41は、ステップS1106をスキップし、jがi以下であるか否かを判断する(ステップS1107)。
【0081】
CPU41は、jがiより大きいと判断した場合(ステップS1107:NO)、CPU41は、処理をステップS1104へ戻し、上述した処理を繰り返す。CPU41が、jがi以下であると判断した場合(ステップS1107:YES)、CPU41は、iがn以上であるか否かを判断する(ステップS1108)。
【0082】
CPU41が、iがnより小さいと判断した場合(ステップS1108:NO)、CPU41は、処理をステップS1103へ戻し、上述した処理を繰り返す。CPU41が、iがn以上であると判断した場合(ステップS1108:YES)、CPU41は、ソートされた距離D(n)の順にバーコードラベルの読み取り順序番号を付与して(ステップS1109)、記憶装置43に記憶する。CPU41は、上述した処理で決定された読み取り順序番号の順に、図8の処理を実行する。
【0083】
このように、距離が短い順にバーコードラベルの再読み取りを実行することにより、読取位置までの移動時間を最小限にすることができ、再読み取り時間を短縮することが可能となる。なお、読み取り順序の決定処理は、上述したバブルソートに限定されるものではなく、距離が短い順にソートすることができる手順であれば特に限定されるものではない。
【0084】
なお、図8のステップS817にて、次に再読み取りするバーコードラベルを決定する場合に、移動された再読取位置に最も近いバーコードラベルに決定することが好ましい。移動距離が最も短くなり、再読み取り時間を短縮することができるからである。図12は、再読取位置からの距離を求める場合の試料分析装置10の制御部4のCPU41の処理手順を示すフローチャートである。
【0085】
図12において、制御部4のCPU41は、記憶されている全ての位置情報に対応するバーコードラベルを再読み取りしたか否かを判断し(ステップS815)、CPU41が、まだ全てのバーコードラベルの再読み取りが完了していないと判断した場合には(ステップS815:NO)、CPU41は、記憶装置43に記憶されている位置情報に基づいて、現在の再読取位置と、次に再読み取りの対象となる、再読み取りが未完了であるバーコードラベルとの距離を特定する(ステップS1201)。
【0086】
CPU41は、現在の再読取位置との距離が最短であるバーコードラベルを、次に再読み取りすべきバーコードラベルとして決定し(ステップS1202)、処理をステップS810へ戻して上述した処理を繰り返す。
【0087】
図13は、表示装置5に表示される画面の例示図である。試料分析装置10の状況を表示する画面は、少なくとも第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12に載置されている第1容器ラック13及び第2容器ラック14の位置及び容器保持可能位置を表示する配置表示領域420と、選択された位置に保持されている容器の内容物に関する詳細情報を表示する詳細情報表示領域430と、操作を指示する操作表示領域440とを有している。
【0088】
配置表示領域420には、少なくとも第1試料テーブル11の配置状況に対応して表示される最大10個の第1試料マーク421、421、・・・と、第2試料テーブル12の配置状況に対応して表示される最大30個の第2試料マーク422、422、・・・とが表示される。第1試料マーク421は、位置を表示する位置表示部421a、試料の名称を表示する名称表示部421b、及び試料の残量を表示する残量表示部421cを含む。同様に第2試料マーク422は、位置を表示する位置表示部422a、試料の名称を表示する名称表示部422b、及び試料の残量を表示する残量表示部422cを含む。なお、残量表示部421c、422cは、試料の残量が所定量以下となった場合にのみ表示される。
【0089】
第1試料マーク421及び第2試料マーク422の位置表示部421a、422aに表示される試料の位置情報は、第1容器ラック13及び第2容器ラック14に貼付されているバーコードラベルをバーコードリーダ3が読み取ることにより表示される。また、名称表示部421b、422bに表示される試料の名称は、試料を収容した容器200に貼付されているバーコードラベル200aから読み取られたバーコード情報に含まれており、バーコードリーダ3で読み取った信号に基づいて記憶装置43に記憶されている試料マスタ等を参照することにより表示される。
【0090】
第1試料マーク421は、第1試料テーブル11に配置されている2個の容器200、200を保持可能な5個の第1容器ラック13、13、・・・に対応している第1ラックマーク424、424、・・・に分割されて表示される。第2試料マーク422は、第2試料テーブル12に配置されている6個の容器200、200、・・・を保持可能な5個の第2容器ラック14、14、・・・に対応している第2ラックマーク425、425、・・・に分割されて表示される。したがって、どの試料テーブルのどの容器ラックのどの位置に試料が配置されているか、目視で確認することができる。
【0091】
また、第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12に容器ラックが配置されていない場合には、配置表示領域420にて、内側に何も表示されていない円形のラック未配置マーク426が表示される。さらに、第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12にそれぞれ第1容器ラック13及び第2容器ラック14が配置されてはいるが、試料の入った容器200が配置されていない位置に相当する領域には、試料未配置マーク427が表示される。試料未配置マーク427は、位置情報を表示する位置表示部427aを有している。
【0092】
容器200に貼付されているバーコードラベル200aの読み取りに失敗した場合には、読み取りが失敗した容器200が収容されている試料マークに、読み取りエラーマーク428が表示される。したがって、1回目で正常に読み取ることができなかった容器200の位置は、読み取りエラーマーク428が表示されている位置であることが目視で確認できる。
【0093】
また、容器200に貼付されているバーコードラベル200aを再度読み取った場合であっても読み取りに失敗した場合には、読み取りが失敗した容器200が収容されている試料マークに、再読み取りエラーマーク429が表示される。したがって、再読み取りでも正常に読み取ることができなかった容器200の位置は、再読み取りエラーマーク429が表示されている位置であることが目視で確認できる。
【0094】
なお、上述した実施の形態において、正常に読み取ることができなかったバーコードラベルの位置情報は、初期位置Sから回転移動させるために必要な駆動パルス数で特定しているが、これに限定されるものではなく、例えば初期位置Sから順番に位置番号情報を付与しておき、位置番号情報と駆動パルス数とを対応付けた位置情報テーブルを記憶装置43に記憶しておいても良い。このようにすることで、正常に読み取ることができなかったバーコードラベルの位置情報は、位置番号情報のみで足りる。
【0095】
また、再読み取りした場合であっても正常に読み取ることができなかった場合、図12に示す表示画面上に、例えば「再読取ボタン」等を表示出力し、「再読取ボタン」がマウス等で選択された場合に再度読み取りを実行するようにしても良い。また、再読み取りの対象となる識別情報を、キーボード等からマニュアル入力できるようにしても良い。
【0096】
また、上述した実施の形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。すなわち、検体容器、試薬容器等を収容する収容部1は、駆動部2にて回転移動する構成に限定されるものではなく、バーコードリーダ3にて読み取り可能な位置へ相対的に移動することが可能であれば、例えば直線移動であっても良い。また、識別情報がバーコード情報に限定されるものではなく、QRコード等の三次元コードであっても良い。さらに、ICチップを用いた無線通信により、識別情報を読み取っても良いことは言うまでもない。さらに、1つの識別情報に対する読み取り回数も2回に限定されるものではなく、設定することが可能な所定の回数まで再読み取りを繰り返すようにしても良い。
【0097】
また、バーコードリーダ3等の識別情報読取器を固定しておくことに限定されるものではなく、識別情報読取器側が移動できるような機構及び駆動源を備えていても良いことは言うまでもない。
【0098】
さらに、上述した実施の形態では、1回目の読み取りに失敗したバーコードラベルについてのみ再読み取りを行なっているが、1回目の読み取りに成功したバーコードラベルも含めて再読み取りを行っても良い。
【0099】
また、バーコードラベルの読み取りは、第1試料テーブル11及び第2試料テーブル12の回転を停止して行なっても良いし、これらのテーブルの回転中に行っても良い。
【0100】
さらに、上述した実施の形態では、試料テーブルを回転させるための駆動源としてステッピングモータを用いているが、駆動源としてサーボモータを用いるとともにエンコーダを用いて初期値からの距離(パルス数)を記憶装置43に記憶するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態に係る試料分析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る試料分析装置の駆動部の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る試料分析装置の概要を示す部分平面図である。
【図4】第1容器ラックの構成を示す斜視図である。
【図5】第2容器ラックの構成を示す斜視図である。
【図6】容器を1個保持した状態での第1容器ラックの構成を示す斜視図である。
【図7】容器を3個保持した状態での第2容器ラックの構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る試料分析装置の制御部のCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図9】第1試料テーブル及び第2試料テーブル上の読み込み対象領域の説明図である。
【図10】第1容器ラック又は第2容器ラックに容器が収容された場合を含む記憶装置に記憶される位置情報の例示図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る試料分析装置の制御部のCPUの読み取り順序決定の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】再読取位置からの距離を求める場合の試料分析装置の制御部のCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図13】表示装置に表示される画面の例示図である。
【符号の説明】
【0102】
1 収容部
2 駆動部
3 バーコードリーダ(識別情報読取器)
4 制御部
5 表示装置
6 可搬型記録媒体
7 コンピュータプログラム
10 試料分析装置
11 第1試料テーブル
12 第2試料テーブル
13 第1容器ラック
14 第2容器ラック
41 CPU
42 RAM
43 記憶装置
44 入力装置
45 出力装置
46 通信装置
47 補助記憶装置
48 内部バス
131b、131c、132b、132c、141b〜146b、141c〜146c、200a バーコードラベル
200 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬とを混和して調製された測定試料を分析する試料分析装置において、
識別情報が付与されている検体容器、試薬容器、前記検体容器又は試薬容器を収容する収容部の少なくとも1つを移動させる移動手段と、
前記検体容器に付与された識別情報、前記試薬容器に付与された識別情報、前記収容部に付与された識別情報の少なくとも1つを読み取る識別情報読取器と、
該識別情報読取器が、前記識別情報を正常に読み取ったか否かを判断する判断手段と、
前記識別情報読取器が順次前記識別情報を読み取るように前記移動手段の動作を制御するとともに、各識別情報の読み取りが終了した後、前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報を前記識別情報読取器が再度読み取る再読み取りを行なうように前記移動手段の動作を制御する移動制御手段と
を備え、
前記識別情報読取器は、前記移動手段によって読み取ることが可能な読取位置に移動された識別情報を読み取ることを特徴とする試料分析装置。
【請求項2】
前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報ごとに、前記読取位置から当該識別情報までの距離を特定する距離特定手段を備え、
前記移動制御手段は、特定された前記距離に基づいて、前記移動手段の動作を制御することを特徴とする請求項1記載の試料分析装置。
【請求項3】
前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報が複数ある場合、前記距離特定手段は、1の識別情報を再読み取りした後、次の識別情報を再読み取りするために必要となる前記移動手段による移動距離を特定することを特徴とする請求項2記載の試料分析装置。
【請求項4】
前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報が複数ある場合、前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報の再読み取りの順序を決定する順序決定手段を備え、
前記移動制御手段は、決定された前記再読み取りの順序に基づいて、前記移動手段の動作を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の試料分析装置。
【請求項5】
前記識別情報が付与されている前記検体容器、前記試薬容器、前記収容部の少なくとも1つを保持する回転テーブルをさらに備え、
前記移動手段は、前記回転テーブルを略水平面上で回転移動させる駆動源を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の試料分析装置。
【請求項6】
前記識別情報が付与されている前記検体容器、前記試薬容器、前記収容部の少なくとも1つを保持する回転テーブルをさらに備え、
前記移動手段は、前記回転テーブルを略水平面上で回転移動させる駆動源を含み、
前記距離特定手段は、再読み取りの対象となっている識別情報を、前記駆動源によって前記読取位置へ移動させるために必要なパルス数に基づいて、前記距離を特定することを特徴とする請求項2記載の試料分析装置。
【請求項7】
前記識別情報読取器が、前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報を正常に読み取ったか否かを再度判断する再判断手段をさらに備え、
該再判断手段が、正常に読み取ることができなかったと再度判断した場合、正常に読み取ることができなかった前記識別情報につき読み取ることができなかった旨を示す情報を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の試料分析装置。
【請求項8】
前記識別情報が付与されている前記検体容器、前記試薬容器、前記収容部の少なくとも1つを保持する回転テーブルをさらに備え、
前記移動制御手段は、前記回転テーブルに保持されている容器に付与されている全ての前記識別情報について読み取りが終了した後、前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報を前記識別情報読取器が再読み取りを行なうように、前記移動手段の動作を制御することを特徴とする請求項1記載の試料分析装置。
【請求項9】
検体と試薬とを混和して調製された測定試料を分析する試料分析装置において、
検体容器、試薬容器、前記検体容器又は試薬容器を収容する収容部の少なくとも1つを識別するために付与される識別情報を読み取る識別情報読取器と、
該識別情報読取器を移動させる移動手段と、
前記識別情報読取器が、前記識別情報を正常に読み取ったか否かを判断する判断手段と、
前記識別情報読取器が順次前記識別情報を読み取るように前記移動手段の動作を制御するとともに、各識別情報の読み取りが終了した後、前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報を前記識別情報読取器が再度読み取る再読み取りを行なうように、前記移動手段の動作を制御する移動制御手段と
を備え、
前記識別情報読取器は、前記移動手段によって読み取り対象である識別情報を読み取ることが可能な読取位置に移動された場合に前記識別情報を読み取ることを特徴とする試料分析装置。
【請求項10】
検体と試薬とを混和して調製された測定試料を分析する試料分析装置で実行することが可能な試料分析方法において、
検体容器に付与された識別情報、試薬容器に付与された識別情報、前記検体容器又は試薬容器を収容する収容部に付与された識別情報の少なくとも1つを読み取る識別情報読取器が順次前記識別情報を読み取るように各識別情報を移動させ、
前記識別情報読取器で各識別情報を正常に読み取ったか否かを判断し、
各識別情報の読み取りが終了した後、正常に読み取ることができないと判断された識別情報を前記識別情報読取器が再度読み取る再読み取りを行なうように、各識別情報を移動させ、
前記識別情報読取器によって読み取ることが可能な読取位置に移動された識別情報を読み取ることを特徴とする試料分析方法。
【請求項11】
検体と試薬とを混和して調製された測定試料を分析する試料分析装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、
前記試料分析装置を、
識別情報が付与されている検体容器、試薬容器、前記検体容器又は試薬容器を収容する収容部の少なくとも1つを移動させる移動手段、
前記検体容器に付与された識別情報、前記試薬容器に付与された識別情報、前記収容部に付与された識別情報の少なくとも1つを読み取る識別情報読取手段、
該識別情報読取手段が、前記識別情報を正常に読み取ったか否かを判断する判断手段、及び
前記識別情報読取手段が順次前記識別情報を読み取るように前記移動手段の動作を制御するとともに、各識別情報の読み取りが終了した後、前記判断手段で正常に読み取ることができないと判断された識別情報を前記識別情報読取手段が再度読み取る再読み取りを行なうように、前記移動手段の動作を制御する移動制御手段
として機能させ、
前記識別情報読取手段を、前記移動手段によって読み取ることが可能な読取位置に移動された識別情報を読み取る手段として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−210536(P2009−210536A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56592(P2008−56592)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】