試料掘削方法及び試料掘削装置
【課題】グロー放電を利用した球状の試料の掘削を可能とする試料掘削方法、及び試料掘削装置を提供する。
【解決手段】アルゴンガス(不活性ガス)が供給される試料室(処理室)3内で、グロー放電管1が備える電極に対向して下方に配置された載置部31に球状の試料Sを載置し、複数のセラミックボール(球)32によって試料Sの移動を拘束した上で、試料Sを電極に対向配置させる。超音波発振器(発振器)33から振動を載置部31に加えながら試料Sと電極との間に電圧を印加してグロー放電を発生させ、グロー放電に伴うアルゴンイオンのイオン衝撃により試料Sの表面を掘削する。振動によって試料Sはランダムに回転しながらほぼ等方的に掘削され、グロー放電発光分析による半径方向の成分分析が可能となり、清浄に形成した試料Sの表面をSEM等で観察することも可能となる。
【解決手段】アルゴンガス(不活性ガス)が供給される試料室(処理室)3内で、グロー放電管1が備える電極に対向して下方に配置された載置部31に球状の試料Sを載置し、複数のセラミックボール(球)32によって試料Sの移動を拘束した上で、試料Sを電極に対向配置させる。超音波発振器(発振器)33から振動を載置部31に加えながら試料Sと電極との間に電圧を印加してグロー放電を発生させ、グロー放電に伴うアルゴンイオンのイオン衝撃により試料Sの表面を掘削する。振動によって試料Sはランダムに回転しながらほぼ等方的に掘削され、グロー放電発光分析による半径方向の成分分析が可能となり、清浄に形成した試料Sの表面をSEM等で観察することも可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状の試料の表面分析を行うために、グロー放電を用いて材料を削ることにより測定に適した状態に試料を形成する試料掘削方法及び試料掘削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料に含まれる成分を分析するために、グロー放電を利用して成分の分析を行うグロー放電発光分析が行われることがあった。グロー放電発光分析では、不活性ガス雰囲気中でグロー放電管と分析対象の試料の表面との間でグロー放電を発生させ、グロー放電によって発生した光を分光することにより、試料の成分を分析する。試料はグロー放電に伴うイオン衝撃により表面から徐々に掘削されていき、掘削されている部分に含まれる成分に依存した光が発生するので、試料の深さ方向に成分の分布を調べることができる。
【0003】
また試料の構造及び組織等を視覚的に観察する際、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)を用いることがある。SEMを用いて試料を観察するには、準備処理として試料の観察面を整える必要があり、試料の所望の位置に観察面を表出させ、表出させた観察面が清浄になるように試料を形成する必要がある。従来、グロー放電に伴うイオン衝撃により試料の表面を削り取り、試料表面に清浄な観察面を形成する技術が開発されており、特許文献1及び2には、この技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−310959号公報
【特許文献2】特開2004−61163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のグロー放電発光分析により試料に含まれる成分を分析する技術、及びグロー放電により清浄な試料表面を形成する技術は、従来は半導体ウエハ等の平板状の試料を対象としている。従って、ボールベアリング用のボール等の球状の試料については、特許文献1及び2に開示された技術を始めとする従来の技術では扱うことができず、グロー放電発光分析による成分の分析及びSEMによる表面観察が困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、グロー放電を利用した球状の試料の掘削を可能とすることにより、球状の試料についてもグロー放電発光分析による成分の分析及びSEMによる表面観察を可能にする試料掘削方法及び試料掘削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る試料掘削方法は、不活性ガスが供給される処理室内で球状の試料を電極に対向配置し、前記試料をランダムに回転させ、ランダムに回転する前記試料と前記電極との間に電圧を印加してグロー放電を発生させることによって、前記試料を掘削することを特徴とする。
【0007】
第2発明に係る試料掘削装置は、不活性ガスが供給される処理室内で電極と該電極に対向配置される試料との間に電圧を印加して発生させるグロー放電により、前記試料を掘削する試料掘削装置において、前記処理室内で球状の試料を前記電極に対向配置する配置手段と、前記試料をランダムに回転させる回転手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
第1及び第2発明においては、アルゴンガス等の不活性ガスの雰囲気中で球状の試料を電極に対向配置し、試料をランダムに回転させながら試料と電極との間に電圧を印加してグロー放電を発生させ、グロー放電に伴う不活性ガスイオンの衝撃により試料の表面を掘削する。これにより、球状の試料の表面がほぼ等方的に掘削される。
【0009】
第3発明に係る試料掘削装置は、前記配置手段は、前記電極に対向して前記電極の下方に設けてあり、前記試料を載置する有縁皿形状の載置部と、該載置部に載置された前記試料と前記載置部の縁との間に配してあり、前記試料の移動を拘束する複数の球とを有することを特徴とする。
【0010】
第3発明においては、電極の下方に電極に対向して設けた有縁皿形状の載置部に球状の試料を載置し、試料と載置部の縁との間に複数の球を配することにより、球状の試料が移動を拘束されて電極に対向配置される。
【0011】
第4発明に係る試料掘削装置は、前記回転手段は、前記載置部に振動を加える発振器を有することを特徴とする。
【0012】
第4発明においては、球状の試料が載置された載置部に発振器から振動を加えることにより、試料に振動が伝わって回転が発生する。
【発明の効果】
【0013】
第1及び第2発明にあっては、グロー放電によって球状の試料が表面から中心に向かってほぼ等方的に掘削され、グロー放電による発光に基づいて試料の成分を分析するグロー放電発光分析を行うことができる。従って、平板状の試料について従来得られていたものと同様に、ボールベアリング用のボール等の球状の試料について、表面から中心までの成分の分布を取得することが可能となる。また球状の試料の表面をほぼ等方的に清浄に形成することができ、平板状の試料について従来行われていたものと同様に、SEMによって球状の試料の表面を観察することが可能となる。
【0014】
第3発明においては、試料と載置部の縁との間に配してある複数の球が球状の試料の水平方向の移動を拘束することにより、球状の試料を電極に対向配置することが可能となり、試料と電極との間にグロー放電を発生させて球状の試料を掘削することが可能となる。
【0015】
第4発明においては、発振器から加えられる振動によって球状の試料はランダムに回転軸を変えながら回転し、試料の表面の内で電極に対向してグロー放電によって掘削される部分はランダムに入れ替わり、試料をほぼ等方的に表面から中心に向かって掘削することが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、本発明の試料掘削方法を実行するために使用する試料掘削装置の構成を示すブロック図である。試料掘削装置は、グロー放電を発生させるグロー放電管1、グロー放電により発生する光を分光して強度を測定する分光器2、試料を収納する試料室(処理室)3、グロー放電を発生させるために印加する電圧に係る電力生成を行う電源部4、及び試料掘削装置の全体的な制御を行う制御装置5を備えている。電源部4は交流電源ACに接続されて高周波電力を生成するジェネレータ42及びマッチングボックス41を備えており、ジェネレータ42及びマッチングボックス41は夫々に制御装置5に接続されている。グロー放電管1とマッチングボックス41とは同電位に設定されている。
【0017】
また試料掘削装置は、グロー放電管1及び試料室3の内部を真空引きする真空引き装置61を備え、真空引きした後にグロー放電管1の内部にアルゴンガス(不活性ガス)を供給するためのガス供給調整部62及びガス供給源63を備えている。ガス供給源63はアルゴンガスを充填したボンベが相当する。ガス供給源63からグロー放電管1まで、アルゴンガスを供給するための配管が配置されており、ガス供給調整部62はガス供給源63からグロー放電管1までの配管の途中に設けられている。ガス供給調整部62は、ガス供給源63からグロー放電管1へ供給されるアルゴンガスの流量を調整するための電磁弁を具備している。
【0018】
制御装置5は、コンピュータを用いてなり、CPU5a、RAM5c、ROM5d、及びハードディスク装置5eを備え、夫々は内部バス5fに接続されている。また制御装置5は、ジェネレータ42から延在する第1接続コードL1及びマッチングボックス41から延在する第2接続コードL2が接続されるインタフェース基板5bを備え、インタフェース基板5bは、内部バス5fに接続されている。また内部バス5fにはモニタ接続線L3を介してモニタ部5gが接続されている。更に内部バス5fには、制御装置5外の機器に接続されて各種の信号を入出力する外部接続部5hが接続されている。
【0019】
また、RAM5cはCPU5aが行う各種の制御処理に伴うデータ等を一時的に記憶し、ROM5dはCPU5aが行う基本的な処理内容を規定したプログラム等を予め記憶している。ハードディスク装置5eは、試料をグロー放電により掘削し、試料の成分を分析する処理に関連してCPU5aが実行する制御処理の内容を規定した制御プログラム51を記憶している。CPU5aは、必要に応じて制御プログラム51をハードディスク装置5eからRAM5cへロードし、RAM5cへロードした制御プログラム51に従って、必要な処理を実行する。またCPU5aは、図示しないキーボード又はマウス等の入力部に入力された指示に基づき各種の設定及び制御を行う。
【0020】
図2は、グロー放電管1の内部構成を示す断面図である。グロー放電管1は、試料室3及び分光器2に装着されており、グロー放電管1の上面が分光器2に装着され、グロー放電管1の下面が試料室3に装着されている。グロー放電管1は短円柱状のランプボディ11、電極12、セラミックス部材13、及び押圧ブロック15が組み合わされて構成されている。
【0021】
ランプボディ11は、押圧ブロック15が組み合わされる端面11aの中心箇所に電極12を取り付けるための窪部11bを凹設すると共に、窪部11bの中心部に中心孔11cを穿設している。また、ランプボディ11は、周壁部11dから中心へ向けて真空引き用の吸引孔11e、11fを複数設け、一部の吸引孔11eは中心孔11cと連通させると共に、他の吸引孔11fは窪部11b側に連通させている。さらに、ランプボディ11は、周壁部11dから中心へ向けて不活性ガスの供給用のガス供給孔11gを中心孔11cと連通するように形成している。
【0022】
ランプボディ11の窪部11bに収められる電極12は、円板部12aの中心から円筒部(端部)12bを突出した形状にしており、円筒部12bの内部から円板部12aを貫通する貫通孔(内孔)12cを穿設している。また、円板部12aにも穴12dが形成されている。電極12がランプボディ11の窪部11bに取り付けられた状態では、ランプボディ11の中心孔11cと貫通孔12cとは実質的に同軸に連通している。電極12は、ランプボディ11の窪部11bに取り付けられると、ランプボディ11を介してアース電位になる。また電極12がランプボディ11に取り付けられた状態では、円筒部12bがランプボディ11の端面11aから突出した状態となる。なお、電極12が収められた状態でランプボディ11の中心孔11c及び電極12の貫通孔12cの密閉性を維持するために第1オーリング16がランプボディ11及び電極12の間に取り付けられている。
【0023】
電極12を被うように配置されるセラミックス部材13は、厚みのある円板状の部材であり、電極12の円板部12aを被う突出したフランジ部13dを有すると共に、中心となる箇所には、電極12の円筒部12bを挿通させる挿通孔13cを形成している。セラミックス部材13は、耐熱性の第1絶縁体17を介して電極12の円板部12aに対して配置され、配置された状態では、セラミックス部材13の挿通孔13cと電極12の円筒部12bとの間に所定の隙間が形成されている。なお、第1絶縁体17と電極12の円板部12aとの間にも密閉性維持のために第2オーリング18が取り付けられている。
【0024】
電極12及びセラミックス部材13をランプボディ11に固定するための押圧ブロック15は、ガラエボ等の絶縁性の材料で環状に形成された部材であり、内周縁側の突出部15aでセラミックス部材13のフランジ部13dをランプボディ11側へ押圧するようにしている。なお、押圧ブロック15自体は、ボルトによりランプボディ11の端面11aに取り付けられる。また、押圧ブロック15の突出部15aと、セラミックス部材13のフランジ部13dとの間にも耐熱性の第2絶縁体19を介在させている。図2に示すように、押圧ブロック15はランプボディ11の端面11aから突出して取り付けられており、押圧ブロック15の内側にセラミックス部材13と電極12の円筒部12bとが配置された構成となっている。
【0025】
電極12の円筒部12bは、下方に向けて配置されており、セラミックス部材13の挿通孔13c及び電極12の円筒部12bの貫通孔12cは、グロー放電管1の下方に位置する試料室3の内部に対して開口している。電極12の円筒部12bは、試料室3内に配置された試料との間でグロー放電を行う。ランプボディ11に穿設してある中心孔11cの窪部11bとは反対側に位置する端部には、石英ガラス又は透光性樹脂等の透光性材料で形成された透光窓21が設けられている。透光窓21は、グロー放電管1の上面の一部となっており、グロー放電管1の上面は、グロー放電管1の上方に装着された分光器2に接している。グロー放電により発生した光は、貫通孔12c及び中心孔11cを通過し、透光窓21を透過して分光器2へ入射する。なお、透光窓21は光を集光するレンズの形状に形成された形態でもよい。
【0026】
分光器2は、グロー放電管1の上方に装着されている。分光器2は、グロー放電管1の透光窓21を透過して分光器2内に入射した光を回折格子等を用いて分光し、分光した各波長の光の強度を光電子増倍管等を用いて測定する。分光器2は、制御装置5の外部接続部5hに接続されており、制御装置5に動作を制御されると共に、測定結果を制御装置5へ入力する。
【0027】
図3は、試料室3の内部構成を示す模式的断面図である。試料室3の上側には、押圧ブロック15が試料室3内に突出してグロー放電管1が装着されており、押圧ブロック15の内側ではセラミックス部材13と電極12の円筒部12bとが試料室3内に突出して配置されている。試料室3内には、球状の試料Sを載置する有縁皿形状の載置部31を備えている。載置部31は、電極12の下方に、電極12の円筒部12bに対向して設けられている。載置部31上には、球状の試料Sと共に、複数のセラミックボール(球)32が載置されている。図4は、試料Sを載置した載置部31を上から見た状態を示す模式的平面図である。載置部31は平面視で略円形状に形成されており、円形状の略中央に球状の試料Sが配置されている。更に試料Sの周囲を囲んで複数のセラミックボール32,32,…が配されている。セラミックボール32,32,…の夫々は、中央に位置する試料Sと載置部31の縁との間に位置し、試料Sの水平方向への移動を拘束している。このように試料Sの移動を拘束した上で載置部31の中央を電極12の円筒部12bの位置に対向配置することにより、試料Sをグロー放電管1の電極12に対向配置することができる。このように、載置部31及びセラミックボール32,32,…は、試料室3内で球状の試料Sを電極12に対向配置する本発明における配置手段をなす。
【0028】
載置部31は、載置部31に振動を加える超音波発振器(発振器)33の上に載置されており、載置部31と超音波発振器33との間には絶縁シート35が配置されている。超音波発振器33は絶縁シート35を介して載置部31に振動を加え、載置部31が振動することによって、載置部31に載置された試料S及びセラミックボール32,32,…も振動する。試料Sは振動することによって少しづつ回転し、ランダムに回転軸を変えながら回転する。このようにして、超音波発振器33は、試料Sをランダムに回転させる本発明における回転手段として機能する。試料Sがスムーズに回転するためには、試料Sが完全には固定されないようにしておく必要がある。従って、試料Sの移動を拘束しながらも振動による試料Sの回転が可能となるように、セラミックボール32,32,…の大きさは、静止状態で試料Sとの間に若干の隙間が生じるか又は軽く接触する程度の大きさであることが望ましい。セラミックボール32,32,…の適切な大きさは試料Sの大きさによって異なるので、試料Sの大きさに応じて適切な大きさのセラミックボール32,32,…を選ぶようにすればよい。なお、載置部31は、球状の試料Sを載置するための窪みを形成した形状に構成してあり、窪みに試料Sを載置することで試料Sの水平方向への移動を拘束する形態であってもよい。
【0029】
超音波発振器33は、超音波発振器33及び載置部31を垂直方向へ移動させる垂直ユニット34の上に設置されている。垂直ユニット34は、載置部31を移動させることにより、試料Sを垂直方向へ移動させる。超音波発振器33及び垂直ユニット34は、制御装置5の外部接続部5hに接続されており、制御装置5によって動作を制御される。垂直ユニット34は、試料Sの表面が電極12の円筒部12bの先端12eに所定の距離まで近づくように試料Sの位置を制御し、試料Sは電極12の円筒部12bに近接して対向配置される。
【0030】
載置部31は導電性の素材によって構成されており、載置部31はマッチングボックス41に接続されている。この構成により、載置部31には電源部4から電圧が印加され、試料Sとグロー放電管1の電極12との間に電圧が印加される。超音波発振器33が載置部31に振動を加えながら電源部4が載置部31に電圧を印加することにより、試料Sはランダムに回転しながら電圧を印加されることが可能となっている。
【0031】
またグロー放電管1のランプボディ11の各吸引孔11e、11fは図1に示す真空引き装置61と配管で接続されており、ガス供給孔11gは配管でガス供給調整部62と接続されている。また試料室3の内部は真空引き装置61と配管で接続されている。試料Sが試料室3内に配置された状態で真空引き装置61が真空引きを行うと、各吸引孔11e、11f、中心孔11c、電極12の貫通孔12c、及び試料室3内が真空にされる。この状態でガス供給調整部62がアルゴンガスの供給を開始すると、ガス供給孔11g、中心孔11c、電極12の貫通孔12c及び試料室3内がアルゴンガスで満たされる。
【0032】
図5は、電源部4を構成するジェネレータ42の内部構成を示すブロック図である。ジェネレータ42は、高周波電力生成部42a、制御部42b及び電力計測部42cを具備する。高周波電力生成部42aは交流電源ACと接続されて高周波の交流電圧を試料S及び電極12の間に印加できるように高周波電力を生成する。また、高周波電力生成部42aは第1内部接続線42dにより制御部42bと接続されており、制御部42bの制御により高周波電力に係る出力モード及び電力値等を調整する。なお、本実施形態の高周波電力生成部42aは13.56MHzの高周波電圧からなる電力を生成している。制御部42bはIC(集積回路)で構成されており、第1接続コードL1を通じて制御装置5と接続されている。制御部42bは、制御装置5から出力される各種信号に基づいて高周波電力生成部42aの出力を制御する構成となっている。
【0033】
電力計測部42cは、第2及び第3内部接続線42e、42fにより制御部42b及び高周波電力生成部42aと接続されている。電力計測部42cは、高周波電力生成部42aで生成されて載置部31へ供給される高周波電力の進行波の電力値である出力値Pfを検出すると共に、載置部31から反射して戻ってくる反射波の電力値である反射値Prを検出し、検出した値を制御部42bへ伝送する構成となっている。
【0034】
制御部42bは、高周波電力の出力を制御する方法として、2種類の出力モードを切り替えることが可能である。一方の出力モードは、所定の時間内、連続して所定の高周波電力を出力して試料S及び電極12の間に連続的な高周波電圧の印加を行うモードであり、以下、このモードを連続モードと言う。また他方の出力モードは、所定の時間内、パルス的に所定の高周波電力を出力して試料S及び電極12の間に断続的な高周波電圧の印加を行うモードであり、以下、このモードを断続モードと言う。
【0035】
制御部42bは、制御装置5から出力される信号に基づいて連続モードと断続モードとを切り替える処理を実行し、断続モードでは内部のICでパルス的な処理を行うことで電力供給及び電力供給休止を交互に行う。また制御部42bは、単位時間当たりの給電回数に相当する給電周波数、断続モードにおいて給電を行っている時間の割合を示すデューティ比、及び給電の電力値を調整可能である。給電周波数の変更に関して、制御部42bは、約30Hz〜約30000Hzの範囲で給電周波数を調整可能であり、給電周波数が変更されるとパルス的な給電の時間間隔が変化する。
【0036】
また、グロー放電による試料Sの掘削が進行するにつれて、試料Sの表面と電極12の先端12eとの距離が長くなり、試料Sに係るインピーダンス値が随時変化するので、制御部42bは、断続モードにおけるインピーダンス値変化に対する調整処理をも実行する。具体的には、制御部42bは、前述の出力値Pf及び反射値Prを電力計測部42cから伝送され、出力値Pfと反射値Prとの差を演算し、演算した差に基づいて出力値Pfを変更する制御を行う。なお、制御部42bは、出力値Pfと反射値Prとの差(Pf−Pr)が一定となるように出力値Pfを調整しており、本実施形態では演算した差(Pf−Pr)が制御装置5から伝送されてきた基準電力値と同等となるように高周波電力生成部42aで生成される出力値Pfを制御部42bが内蔵するICのソフト的な処理で調整する。
【0037】
このように制御部42bがソフト的な調整を行うことで、断続モードでの試料Sのインピーダンス値の変化に対応して適切な給電を行える。なお、制御部42bが試料Sのインピーダンス値の変化に対応した調整を行うのは断続モードの場合であり、連続モードでは後述するようにマッチングボックス41が調整を行う。
【0038】
図6は、電源部4を構成するマッチングボックス41の内部構成を示すブロック図である。マッチングボックス41は、連続モードにおいてジェネレータ42で生成された高周波電力の出力形態を調整する可変コンデンサ41a、可変コンデンサ41aの電気容量を調整するモータ41b、モータ41bの駆動等の制御を行うコンデンサ制御部41cを具備する。可変コンデンサ41aはモータ41bの駆動に応じて自身の電気容量を変更可能であり、電気容量の変更によりモジュール及びフェーズが調整される。
【0039】
コンデンサ制御部41cは、第2接続コードL2により制御装置5と接続されており、制御装置5からマッチングボックス41へ伝送される断続モードの設定の通知信号に基づいてモータ41bの駆動を制御する。具体的には、断続モードの通知信号を受け付けた場合、コンデンサ制御部41cは、可変コンデンサ41aの電気容量が一定に固定されるようにモータ41bを一定の状態に維持する制御を行う。よって、断続モードではマッチングボックス41で高周波電力のモジュール及びフェーズは調整されない。また、断続モードの通知信号を受け付けない場合、即ち、連続モードが設定された場合は、コンデンサ制御部41cは、試料Sからの反射値Prが最小となるようにモータ41bの駆動を制御して可変コンデンサ41aの電気容量を変更する制御を行う。なお、反射値Prが最小であれば、コンデンサ制御部41cは可変コンデンサ41aの電気容量を変更する制御は行わない。
【0040】
次に、以上の構成でなる試料掘削装置が実行する処理を説明する。試料掘削装置は、グロー放電により球状の試料Sの表面から中心にかけて掘削し、発生する光を分光することによって試料Sに含まれる成分を分析する。制御装置5のCPU5aは、制御プログラム51に従って、試料Sを掘削するための条件を制御する処理を行う。制御プログラム51は、試料Sに印加する電力の条件を複数種類規定してある。具体的には、電源部4から載置部31に印加する高周波電圧の電力値、断続モードでの給電周波数、又はデューティ比等の電力の条件を制御することで、試料Sが掘削される速度を調整することができる。制御装置5は、試料Sの材質又は掘削すべき深さ等の試料掘削に必要な情報を、図示しないキーボード又はマウス等の入力部を用いて使用者の操作により入力される。CPU5aは、試料Sを適切な速度で掘削できるように、電源部4から載置部31に印加する高周波電圧の電力値、給電周波数又はデューティ比の条件を設定する。
【0041】
図7は、電極12と試料Sとの位置関係を示す模式図である。導電性の材料で形成された球状の試料Sが使用者によって載置部31に載置され、周囲に配されたセラミックボール32,32,…によって試料Sの水平方向の位置がほぼ固定される。CPU5aに動作を制御される垂直ユニット34が試料Sの垂直方向の位置を調整し、電極12の円筒部12bに試料Sが接近して対向配置される。電極12の先端12eと試料Sの表面との間には若干の空間が形成されている。
【0042】
グロー放電管1及び試料室3の内部を真空引き装置61で真空引きしてから、ガス供給源63がグロー放電管1の内部へアルゴンガスを供給し、CPU5aに制御された超音波発振器33が振動を載置部31に加え、CPU5aに設定された条件で電源部4が載置部31へ高周波電圧を供給する。載置部31に加えられた振動によって試料Sはランダムに回転し、載置部31を介して試料Sに高周波電圧が供給される。電極12の先端12eと試料Sの表面との間の空間には十分なアルゴンガスが随時供給され、試料Sに高周波電圧が電源部4から供給されることで、電極12及び試料Sの間に電圧が印加され、アルゴンガスの雰囲気中で電極12と試料Sとの間でグロー放電が発生する。グロー放電が発生することにより、アルゴンガス中でアルゴンイオンが生成し、生成したアルゴンイオンが電極12の円筒部12bの貫通孔12c内で加速され、円筒部12bの先端12eに対向する試料Sの表面に加速されたアルゴンイオンが衝突するイオン衝撃が発生する。グロー放電管1は、絶縁されているセラミックス部材13及び押圧ブロック15と電極12の円筒部12bとがランプボディ11の端面11aから突出しているので、グロー放電は近接した円筒部12bと試料Sとの間で発生し、ランプボディ11と試料S又は載置部31との間で制御困難な放電が発生することを防止することができる。
【0043】
アルゴンイオンのイオン衝撃により、電極12に対向した試料Sの表面では、試料Sの構成物質が粒子となって飛び出し、電極12の先端12eに対向した試料Sの表面の部分が掘削される。アルゴンイオンは貫通孔12c内で加速した後ほぼ直進して試料Sの表面に衝突し、試料Sの表面の内で貫通孔12cの大きさの範囲に対向する部分が限定的に掘削される。試料Sは振動によってランダムに回転しながら掘削されるので、試料Sの表面の内で電極12の先端12eに対向している部分即ち試料S上の掘削される部分はランダムに入れ替わり、試料Sはほぼ等方的に表面から中心に向かって掘削される。
【0044】
またイオン衝撃によって試料Sから飛び出した粒子は、グロー放電によって励起され、粒子に含まれる元素に固有の波長の光を放出する。放出された光はグロー放電管1の透光窓21を透過して分光器2へ入射され、分光器2は入射された光を分光し、各波長の光の強度を測定し、測定結果を制御装置5へ入力する。制御装置5のCPU5aは、外部接続部5hを介して分光器2から入力された測定結果に基づいて試料Sに含まれる成分を分析するグロー放電発光分析の処理を行う。
【0045】
またCPU5aは、試料Sの掘削を開始してから経過した時間を計測し、試料Sの成分の分析結果と計測した時間とを関連付けてハードディスク装置5eに記憶させる。グロー放電を連続して実行することにより、試料Sの表面から中心に向かって掘削が進行するので、経過時間は表面からの掘削深さに対応する。従って、制御装置5は、平板状の試料について従来得られていたものと同様に、球状の試料Sについて、表面から中心までの成分の分布を取得することができる。なお、試料掘削装置は、掘削量又は掘削深さを測定する手段を更に備え、掘削量又は掘削深さを測定しながら試料Sの掘削を行う形態であってもよい。
【0046】
また本発明の試料掘削装置は、試料Sの表面を清浄に加工する装置として利用することも可能である。制御装置5のCPU5aは時間を計測しながら掘削を行い、所望の深さまで掘削した段階で掘削を停止することにより、試料Sの表面を等方的に清浄に加工することができる。表面を清浄に加工した試料Sは、試料室3から取り出した後、平板状の試料について従来行われていたものと同様に、SEMによって表面を観察することが可能となる。例えば、ボールベアリング用のボール等の球状材について、クラックの有無等の表面構造を観察することができる。
【0047】
また本発明の試料掘削装置を用いて任意の深さまで球状の試料Sを掘削し、掘削により清浄に形成された試料Sの表面をSEMによって観察し、試料掘削装置による掘削とSEMによる観察とを繰り返すことにより、試料Sの半径方向の構造を観察することが可能となる。例えば、ボールベアリング用のボール等の球状材について、形成されたクラックの形状の観察等、球状材の内部構造を観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の試料掘削方法を実行するために使用する試料掘削装置の構成を示すブロック図である。
【図2】グロー放電管の内部構成を示す断面図である。
【図3】試料室の内部構成を示す模式的断面図である。
【図4】試料を載置した載置部を上から見た状態を示す模式的平面図である。
【図5】電源部を構成するジェネレータの内部構成を示すブロック図である。
【図6】電源部を構成するマッチングボックスの内部構成を示すブロック図である。
【図7】電極と試料との位置関係を示す模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1 グロー放電管
12 電極
12b 円筒部
12c 貫通孔
12e 先端
2 分光器
3 試料室(処理室)
31 載置部
32 セラミックボール(球)
33 超音波発振器(発振器)
4 電源部
5 制御装置
S 試料
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状の試料の表面分析を行うために、グロー放電を用いて材料を削ることにより測定に適した状態に試料を形成する試料掘削方法及び試料掘削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料に含まれる成分を分析するために、グロー放電を利用して成分の分析を行うグロー放電発光分析が行われることがあった。グロー放電発光分析では、不活性ガス雰囲気中でグロー放電管と分析対象の試料の表面との間でグロー放電を発生させ、グロー放電によって発生した光を分光することにより、試料の成分を分析する。試料はグロー放電に伴うイオン衝撃により表面から徐々に掘削されていき、掘削されている部分に含まれる成分に依存した光が発生するので、試料の深さ方向に成分の分布を調べることができる。
【0003】
また試料の構造及び組織等を視覚的に観察する際、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)を用いることがある。SEMを用いて試料を観察するには、準備処理として試料の観察面を整える必要があり、試料の所望の位置に観察面を表出させ、表出させた観察面が清浄になるように試料を形成する必要がある。従来、グロー放電に伴うイオン衝撃により試料の表面を削り取り、試料表面に清浄な観察面を形成する技術が開発されており、特許文献1及び2には、この技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−310959号公報
【特許文献2】特開2004−61163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のグロー放電発光分析により試料に含まれる成分を分析する技術、及びグロー放電により清浄な試料表面を形成する技術は、従来は半導体ウエハ等の平板状の試料を対象としている。従って、ボールベアリング用のボール等の球状の試料については、特許文献1及び2に開示された技術を始めとする従来の技術では扱うことができず、グロー放電発光分析による成分の分析及びSEMによる表面観察が困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、グロー放電を利用した球状の試料の掘削を可能とすることにより、球状の試料についてもグロー放電発光分析による成分の分析及びSEMによる表面観察を可能にする試料掘削方法及び試料掘削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る試料掘削方法は、不活性ガスが供給される処理室内で球状の試料を電極に対向配置し、前記試料をランダムに回転させ、ランダムに回転する前記試料と前記電極との間に電圧を印加してグロー放電を発生させることによって、前記試料を掘削することを特徴とする。
【0007】
第2発明に係る試料掘削装置は、不活性ガスが供給される処理室内で電極と該電極に対向配置される試料との間に電圧を印加して発生させるグロー放電により、前記試料を掘削する試料掘削装置において、前記処理室内で球状の試料を前記電極に対向配置する配置手段と、前記試料をランダムに回転させる回転手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
第1及び第2発明においては、アルゴンガス等の不活性ガスの雰囲気中で球状の試料を電極に対向配置し、試料をランダムに回転させながら試料と電極との間に電圧を印加してグロー放電を発生させ、グロー放電に伴う不活性ガスイオンの衝撃により試料の表面を掘削する。これにより、球状の試料の表面がほぼ等方的に掘削される。
【0009】
第3発明に係る試料掘削装置は、前記配置手段は、前記電極に対向して前記電極の下方に設けてあり、前記試料を載置する有縁皿形状の載置部と、該載置部に載置された前記試料と前記載置部の縁との間に配してあり、前記試料の移動を拘束する複数の球とを有することを特徴とする。
【0010】
第3発明においては、電極の下方に電極に対向して設けた有縁皿形状の載置部に球状の試料を載置し、試料と載置部の縁との間に複数の球を配することにより、球状の試料が移動を拘束されて電極に対向配置される。
【0011】
第4発明に係る試料掘削装置は、前記回転手段は、前記載置部に振動を加える発振器を有することを特徴とする。
【0012】
第4発明においては、球状の試料が載置された載置部に発振器から振動を加えることにより、試料に振動が伝わって回転が発生する。
【発明の効果】
【0013】
第1及び第2発明にあっては、グロー放電によって球状の試料が表面から中心に向かってほぼ等方的に掘削され、グロー放電による発光に基づいて試料の成分を分析するグロー放電発光分析を行うことができる。従って、平板状の試料について従来得られていたものと同様に、ボールベアリング用のボール等の球状の試料について、表面から中心までの成分の分布を取得することが可能となる。また球状の試料の表面をほぼ等方的に清浄に形成することができ、平板状の試料について従来行われていたものと同様に、SEMによって球状の試料の表面を観察することが可能となる。
【0014】
第3発明においては、試料と載置部の縁との間に配してある複数の球が球状の試料の水平方向の移動を拘束することにより、球状の試料を電極に対向配置することが可能となり、試料と電極との間にグロー放電を発生させて球状の試料を掘削することが可能となる。
【0015】
第4発明においては、発振器から加えられる振動によって球状の試料はランダムに回転軸を変えながら回転し、試料の表面の内で電極に対向してグロー放電によって掘削される部分はランダムに入れ替わり、試料をほぼ等方的に表面から中心に向かって掘削することが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、本発明の試料掘削方法を実行するために使用する試料掘削装置の構成を示すブロック図である。試料掘削装置は、グロー放電を発生させるグロー放電管1、グロー放電により発生する光を分光して強度を測定する分光器2、試料を収納する試料室(処理室)3、グロー放電を発生させるために印加する電圧に係る電力生成を行う電源部4、及び試料掘削装置の全体的な制御を行う制御装置5を備えている。電源部4は交流電源ACに接続されて高周波電力を生成するジェネレータ42及びマッチングボックス41を備えており、ジェネレータ42及びマッチングボックス41は夫々に制御装置5に接続されている。グロー放電管1とマッチングボックス41とは同電位に設定されている。
【0017】
また試料掘削装置は、グロー放電管1及び試料室3の内部を真空引きする真空引き装置61を備え、真空引きした後にグロー放電管1の内部にアルゴンガス(不活性ガス)を供給するためのガス供給調整部62及びガス供給源63を備えている。ガス供給源63はアルゴンガスを充填したボンベが相当する。ガス供給源63からグロー放電管1まで、アルゴンガスを供給するための配管が配置されており、ガス供給調整部62はガス供給源63からグロー放電管1までの配管の途中に設けられている。ガス供給調整部62は、ガス供給源63からグロー放電管1へ供給されるアルゴンガスの流量を調整するための電磁弁を具備している。
【0018】
制御装置5は、コンピュータを用いてなり、CPU5a、RAM5c、ROM5d、及びハードディスク装置5eを備え、夫々は内部バス5fに接続されている。また制御装置5は、ジェネレータ42から延在する第1接続コードL1及びマッチングボックス41から延在する第2接続コードL2が接続されるインタフェース基板5bを備え、インタフェース基板5bは、内部バス5fに接続されている。また内部バス5fにはモニタ接続線L3を介してモニタ部5gが接続されている。更に内部バス5fには、制御装置5外の機器に接続されて各種の信号を入出力する外部接続部5hが接続されている。
【0019】
また、RAM5cはCPU5aが行う各種の制御処理に伴うデータ等を一時的に記憶し、ROM5dはCPU5aが行う基本的な処理内容を規定したプログラム等を予め記憶している。ハードディスク装置5eは、試料をグロー放電により掘削し、試料の成分を分析する処理に関連してCPU5aが実行する制御処理の内容を規定した制御プログラム51を記憶している。CPU5aは、必要に応じて制御プログラム51をハードディスク装置5eからRAM5cへロードし、RAM5cへロードした制御プログラム51に従って、必要な処理を実行する。またCPU5aは、図示しないキーボード又はマウス等の入力部に入力された指示に基づき各種の設定及び制御を行う。
【0020】
図2は、グロー放電管1の内部構成を示す断面図である。グロー放電管1は、試料室3及び分光器2に装着されており、グロー放電管1の上面が分光器2に装着され、グロー放電管1の下面が試料室3に装着されている。グロー放電管1は短円柱状のランプボディ11、電極12、セラミックス部材13、及び押圧ブロック15が組み合わされて構成されている。
【0021】
ランプボディ11は、押圧ブロック15が組み合わされる端面11aの中心箇所に電極12を取り付けるための窪部11bを凹設すると共に、窪部11bの中心部に中心孔11cを穿設している。また、ランプボディ11は、周壁部11dから中心へ向けて真空引き用の吸引孔11e、11fを複数設け、一部の吸引孔11eは中心孔11cと連通させると共に、他の吸引孔11fは窪部11b側に連通させている。さらに、ランプボディ11は、周壁部11dから中心へ向けて不活性ガスの供給用のガス供給孔11gを中心孔11cと連通するように形成している。
【0022】
ランプボディ11の窪部11bに収められる電極12は、円板部12aの中心から円筒部(端部)12bを突出した形状にしており、円筒部12bの内部から円板部12aを貫通する貫通孔(内孔)12cを穿設している。また、円板部12aにも穴12dが形成されている。電極12がランプボディ11の窪部11bに取り付けられた状態では、ランプボディ11の中心孔11cと貫通孔12cとは実質的に同軸に連通している。電極12は、ランプボディ11の窪部11bに取り付けられると、ランプボディ11を介してアース電位になる。また電極12がランプボディ11に取り付けられた状態では、円筒部12bがランプボディ11の端面11aから突出した状態となる。なお、電極12が収められた状態でランプボディ11の中心孔11c及び電極12の貫通孔12cの密閉性を維持するために第1オーリング16がランプボディ11及び電極12の間に取り付けられている。
【0023】
電極12を被うように配置されるセラミックス部材13は、厚みのある円板状の部材であり、電極12の円板部12aを被う突出したフランジ部13dを有すると共に、中心となる箇所には、電極12の円筒部12bを挿通させる挿通孔13cを形成している。セラミックス部材13は、耐熱性の第1絶縁体17を介して電極12の円板部12aに対して配置され、配置された状態では、セラミックス部材13の挿通孔13cと電極12の円筒部12bとの間に所定の隙間が形成されている。なお、第1絶縁体17と電極12の円板部12aとの間にも密閉性維持のために第2オーリング18が取り付けられている。
【0024】
電極12及びセラミックス部材13をランプボディ11に固定するための押圧ブロック15は、ガラエボ等の絶縁性の材料で環状に形成された部材であり、内周縁側の突出部15aでセラミックス部材13のフランジ部13dをランプボディ11側へ押圧するようにしている。なお、押圧ブロック15自体は、ボルトによりランプボディ11の端面11aに取り付けられる。また、押圧ブロック15の突出部15aと、セラミックス部材13のフランジ部13dとの間にも耐熱性の第2絶縁体19を介在させている。図2に示すように、押圧ブロック15はランプボディ11の端面11aから突出して取り付けられており、押圧ブロック15の内側にセラミックス部材13と電極12の円筒部12bとが配置された構成となっている。
【0025】
電極12の円筒部12bは、下方に向けて配置されており、セラミックス部材13の挿通孔13c及び電極12の円筒部12bの貫通孔12cは、グロー放電管1の下方に位置する試料室3の内部に対して開口している。電極12の円筒部12bは、試料室3内に配置された試料との間でグロー放電を行う。ランプボディ11に穿設してある中心孔11cの窪部11bとは反対側に位置する端部には、石英ガラス又は透光性樹脂等の透光性材料で形成された透光窓21が設けられている。透光窓21は、グロー放電管1の上面の一部となっており、グロー放電管1の上面は、グロー放電管1の上方に装着された分光器2に接している。グロー放電により発生した光は、貫通孔12c及び中心孔11cを通過し、透光窓21を透過して分光器2へ入射する。なお、透光窓21は光を集光するレンズの形状に形成された形態でもよい。
【0026】
分光器2は、グロー放電管1の上方に装着されている。分光器2は、グロー放電管1の透光窓21を透過して分光器2内に入射した光を回折格子等を用いて分光し、分光した各波長の光の強度を光電子増倍管等を用いて測定する。分光器2は、制御装置5の外部接続部5hに接続されており、制御装置5に動作を制御されると共に、測定結果を制御装置5へ入力する。
【0027】
図3は、試料室3の内部構成を示す模式的断面図である。試料室3の上側には、押圧ブロック15が試料室3内に突出してグロー放電管1が装着されており、押圧ブロック15の内側ではセラミックス部材13と電極12の円筒部12bとが試料室3内に突出して配置されている。試料室3内には、球状の試料Sを載置する有縁皿形状の載置部31を備えている。載置部31は、電極12の下方に、電極12の円筒部12bに対向して設けられている。載置部31上には、球状の試料Sと共に、複数のセラミックボール(球)32が載置されている。図4は、試料Sを載置した載置部31を上から見た状態を示す模式的平面図である。載置部31は平面視で略円形状に形成されており、円形状の略中央に球状の試料Sが配置されている。更に試料Sの周囲を囲んで複数のセラミックボール32,32,…が配されている。セラミックボール32,32,…の夫々は、中央に位置する試料Sと載置部31の縁との間に位置し、試料Sの水平方向への移動を拘束している。このように試料Sの移動を拘束した上で載置部31の中央を電極12の円筒部12bの位置に対向配置することにより、試料Sをグロー放電管1の電極12に対向配置することができる。このように、載置部31及びセラミックボール32,32,…は、試料室3内で球状の試料Sを電極12に対向配置する本発明における配置手段をなす。
【0028】
載置部31は、載置部31に振動を加える超音波発振器(発振器)33の上に載置されており、載置部31と超音波発振器33との間には絶縁シート35が配置されている。超音波発振器33は絶縁シート35を介して載置部31に振動を加え、載置部31が振動することによって、載置部31に載置された試料S及びセラミックボール32,32,…も振動する。試料Sは振動することによって少しづつ回転し、ランダムに回転軸を変えながら回転する。このようにして、超音波発振器33は、試料Sをランダムに回転させる本発明における回転手段として機能する。試料Sがスムーズに回転するためには、試料Sが完全には固定されないようにしておく必要がある。従って、試料Sの移動を拘束しながらも振動による試料Sの回転が可能となるように、セラミックボール32,32,…の大きさは、静止状態で試料Sとの間に若干の隙間が生じるか又は軽く接触する程度の大きさであることが望ましい。セラミックボール32,32,…の適切な大きさは試料Sの大きさによって異なるので、試料Sの大きさに応じて適切な大きさのセラミックボール32,32,…を選ぶようにすればよい。なお、載置部31は、球状の試料Sを載置するための窪みを形成した形状に構成してあり、窪みに試料Sを載置することで試料Sの水平方向への移動を拘束する形態であってもよい。
【0029】
超音波発振器33は、超音波発振器33及び載置部31を垂直方向へ移動させる垂直ユニット34の上に設置されている。垂直ユニット34は、載置部31を移動させることにより、試料Sを垂直方向へ移動させる。超音波発振器33及び垂直ユニット34は、制御装置5の外部接続部5hに接続されており、制御装置5によって動作を制御される。垂直ユニット34は、試料Sの表面が電極12の円筒部12bの先端12eに所定の距離まで近づくように試料Sの位置を制御し、試料Sは電極12の円筒部12bに近接して対向配置される。
【0030】
載置部31は導電性の素材によって構成されており、載置部31はマッチングボックス41に接続されている。この構成により、載置部31には電源部4から電圧が印加され、試料Sとグロー放電管1の電極12との間に電圧が印加される。超音波発振器33が載置部31に振動を加えながら電源部4が載置部31に電圧を印加することにより、試料Sはランダムに回転しながら電圧を印加されることが可能となっている。
【0031】
またグロー放電管1のランプボディ11の各吸引孔11e、11fは図1に示す真空引き装置61と配管で接続されており、ガス供給孔11gは配管でガス供給調整部62と接続されている。また試料室3の内部は真空引き装置61と配管で接続されている。試料Sが試料室3内に配置された状態で真空引き装置61が真空引きを行うと、各吸引孔11e、11f、中心孔11c、電極12の貫通孔12c、及び試料室3内が真空にされる。この状態でガス供給調整部62がアルゴンガスの供給を開始すると、ガス供給孔11g、中心孔11c、電極12の貫通孔12c及び試料室3内がアルゴンガスで満たされる。
【0032】
図5は、電源部4を構成するジェネレータ42の内部構成を示すブロック図である。ジェネレータ42は、高周波電力生成部42a、制御部42b及び電力計測部42cを具備する。高周波電力生成部42aは交流電源ACと接続されて高周波の交流電圧を試料S及び電極12の間に印加できるように高周波電力を生成する。また、高周波電力生成部42aは第1内部接続線42dにより制御部42bと接続されており、制御部42bの制御により高周波電力に係る出力モード及び電力値等を調整する。なお、本実施形態の高周波電力生成部42aは13.56MHzの高周波電圧からなる電力を生成している。制御部42bはIC(集積回路)で構成されており、第1接続コードL1を通じて制御装置5と接続されている。制御部42bは、制御装置5から出力される各種信号に基づいて高周波電力生成部42aの出力を制御する構成となっている。
【0033】
電力計測部42cは、第2及び第3内部接続線42e、42fにより制御部42b及び高周波電力生成部42aと接続されている。電力計測部42cは、高周波電力生成部42aで生成されて載置部31へ供給される高周波電力の進行波の電力値である出力値Pfを検出すると共に、載置部31から反射して戻ってくる反射波の電力値である反射値Prを検出し、検出した値を制御部42bへ伝送する構成となっている。
【0034】
制御部42bは、高周波電力の出力を制御する方法として、2種類の出力モードを切り替えることが可能である。一方の出力モードは、所定の時間内、連続して所定の高周波電力を出力して試料S及び電極12の間に連続的な高周波電圧の印加を行うモードであり、以下、このモードを連続モードと言う。また他方の出力モードは、所定の時間内、パルス的に所定の高周波電力を出力して試料S及び電極12の間に断続的な高周波電圧の印加を行うモードであり、以下、このモードを断続モードと言う。
【0035】
制御部42bは、制御装置5から出力される信号に基づいて連続モードと断続モードとを切り替える処理を実行し、断続モードでは内部のICでパルス的な処理を行うことで電力供給及び電力供給休止を交互に行う。また制御部42bは、単位時間当たりの給電回数に相当する給電周波数、断続モードにおいて給電を行っている時間の割合を示すデューティ比、及び給電の電力値を調整可能である。給電周波数の変更に関して、制御部42bは、約30Hz〜約30000Hzの範囲で給電周波数を調整可能であり、給電周波数が変更されるとパルス的な給電の時間間隔が変化する。
【0036】
また、グロー放電による試料Sの掘削が進行するにつれて、試料Sの表面と電極12の先端12eとの距離が長くなり、試料Sに係るインピーダンス値が随時変化するので、制御部42bは、断続モードにおけるインピーダンス値変化に対する調整処理をも実行する。具体的には、制御部42bは、前述の出力値Pf及び反射値Prを電力計測部42cから伝送され、出力値Pfと反射値Prとの差を演算し、演算した差に基づいて出力値Pfを変更する制御を行う。なお、制御部42bは、出力値Pfと反射値Prとの差(Pf−Pr)が一定となるように出力値Pfを調整しており、本実施形態では演算した差(Pf−Pr)が制御装置5から伝送されてきた基準電力値と同等となるように高周波電力生成部42aで生成される出力値Pfを制御部42bが内蔵するICのソフト的な処理で調整する。
【0037】
このように制御部42bがソフト的な調整を行うことで、断続モードでの試料Sのインピーダンス値の変化に対応して適切な給電を行える。なお、制御部42bが試料Sのインピーダンス値の変化に対応した調整を行うのは断続モードの場合であり、連続モードでは後述するようにマッチングボックス41が調整を行う。
【0038】
図6は、電源部4を構成するマッチングボックス41の内部構成を示すブロック図である。マッチングボックス41は、連続モードにおいてジェネレータ42で生成された高周波電力の出力形態を調整する可変コンデンサ41a、可変コンデンサ41aの電気容量を調整するモータ41b、モータ41bの駆動等の制御を行うコンデンサ制御部41cを具備する。可変コンデンサ41aはモータ41bの駆動に応じて自身の電気容量を変更可能であり、電気容量の変更によりモジュール及びフェーズが調整される。
【0039】
コンデンサ制御部41cは、第2接続コードL2により制御装置5と接続されており、制御装置5からマッチングボックス41へ伝送される断続モードの設定の通知信号に基づいてモータ41bの駆動を制御する。具体的には、断続モードの通知信号を受け付けた場合、コンデンサ制御部41cは、可変コンデンサ41aの電気容量が一定に固定されるようにモータ41bを一定の状態に維持する制御を行う。よって、断続モードではマッチングボックス41で高周波電力のモジュール及びフェーズは調整されない。また、断続モードの通知信号を受け付けない場合、即ち、連続モードが設定された場合は、コンデンサ制御部41cは、試料Sからの反射値Prが最小となるようにモータ41bの駆動を制御して可変コンデンサ41aの電気容量を変更する制御を行う。なお、反射値Prが最小であれば、コンデンサ制御部41cは可変コンデンサ41aの電気容量を変更する制御は行わない。
【0040】
次に、以上の構成でなる試料掘削装置が実行する処理を説明する。試料掘削装置は、グロー放電により球状の試料Sの表面から中心にかけて掘削し、発生する光を分光することによって試料Sに含まれる成分を分析する。制御装置5のCPU5aは、制御プログラム51に従って、試料Sを掘削するための条件を制御する処理を行う。制御プログラム51は、試料Sに印加する電力の条件を複数種類規定してある。具体的には、電源部4から載置部31に印加する高周波電圧の電力値、断続モードでの給電周波数、又はデューティ比等の電力の条件を制御することで、試料Sが掘削される速度を調整することができる。制御装置5は、試料Sの材質又は掘削すべき深さ等の試料掘削に必要な情報を、図示しないキーボード又はマウス等の入力部を用いて使用者の操作により入力される。CPU5aは、試料Sを適切な速度で掘削できるように、電源部4から載置部31に印加する高周波電圧の電力値、給電周波数又はデューティ比の条件を設定する。
【0041】
図7は、電極12と試料Sとの位置関係を示す模式図である。導電性の材料で形成された球状の試料Sが使用者によって載置部31に載置され、周囲に配されたセラミックボール32,32,…によって試料Sの水平方向の位置がほぼ固定される。CPU5aに動作を制御される垂直ユニット34が試料Sの垂直方向の位置を調整し、電極12の円筒部12bに試料Sが接近して対向配置される。電極12の先端12eと試料Sの表面との間には若干の空間が形成されている。
【0042】
グロー放電管1及び試料室3の内部を真空引き装置61で真空引きしてから、ガス供給源63がグロー放電管1の内部へアルゴンガスを供給し、CPU5aに制御された超音波発振器33が振動を載置部31に加え、CPU5aに設定された条件で電源部4が載置部31へ高周波電圧を供給する。載置部31に加えられた振動によって試料Sはランダムに回転し、載置部31を介して試料Sに高周波電圧が供給される。電極12の先端12eと試料Sの表面との間の空間には十分なアルゴンガスが随時供給され、試料Sに高周波電圧が電源部4から供給されることで、電極12及び試料Sの間に電圧が印加され、アルゴンガスの雰囲気中で電極12と試料Sとの間でグロー放電が発生する。グロー放電が発生することにより、アルゴンガス中でアルゴンイオンが生成し、生成したアルゴンイオンが電極12の円筒部12bの貫通孔12c内で加速され、円筒部12bの先端12eに対向する試料Sの表面に加速されたアルゴンイオンが衝突するイオン衝撃が発生する。グロー放電管1は、絶縁されているセラミックス部材13及び押圧ブロック15と電極12の円筒部12bとがランプボディ11の端面11aから突出しているので、グロー放電は近接した円筒部12bと試料Sとの間で発生し、ランプボディ11と試料S又は載置部31との間で制御困難な放電が発生することを防止することができる。
【0043】
アルゴンイオンのイオン衝撃により、電極12に対向した試料Sの表面では、試料Sの構成物質が粒子となって飛び出し、電極12の先端12eに対向した試料Sの表面の部分が掘削される。アルゴンイオンは貫通孔12c内で加速した後ほぼ直進して試料Sの表面に衝突し、試料Sの表面の内で貫通孔12cの大きさの範囲に対向する部分が限定的に掘削される。試料Sは振動によってランダムに回転しながら掘削されるので、試料Sの表面の内で電極12の先端12eに対向している部分即ち試料S上の掘削される部分はランダムに入れ替わり、試料Sはほぼ等方的に表面から中心に向かって掘削される。
【0044】
またイオン衝撃によって試料Sから飛び出した粒子は、グロー放電によって励起され、粒子に含まれる元素に固有の波長の光を放出する。放出された光はグロー放電管1の透光窓21を透過して分光器2へ入射され、分光器2は入射された光を分光し、各波長の光の強度を測定し、測定結果を制御装置5へ入力する。制御装置5のCPU5aは、外部接続部5hを介して分光器2から入力された測定結果に基づいて試料Sに含まれる成分を分析するグロー放電発光分析の処理を行う。
【0045】
またCPU5aは、試料Sの掘削を開始してから経過した時間を計測し、試料Sの成分の分析結果と計測した時間とを関連付けてハードディスク装置5eに記憶させる。グロー放電を連続して実行することにより、試料Sの表面から中心に向かって掘削が進行するので、経過時間は表面からの掘削深さに対応する。従って、制御装置5は、平板状の試料について従来得られていたものと同様に、球状の試料Sについて、表面から中心までの成分の分布を取得することができる。なお、試料掘削装置は、掘削量又は掘削深さを測定する手段を更に備え、掘削量又は掘削深さを測定しながら試料Sの掘削を行う形態であってもよい。
【0046】
また本発明の試料掘削装置は、試料Sの表面を清浄に加工する装置として利用することも可能である。制御装置5のCPU5aは時間を計測しながら掘削を行い、所望の深さまで掘削した段階で掘削を停止することにより、試料Sの表面を等方的に清浄に加工することができる。表面を清浄に加工した試料Sは、試料室3から取り出した後、平板状の試料について従来行われていたものと同様に、SEMによって表面を観察することが可能となる。例えば、ボールベアリング用のボール等の球状材について、クラックの有無等の表面構造を観察することができる。
【0047】
また本発明の試料掘削装置を用いて任意の深さまで球状の試料Sを掘削し、掘削により清浄に形成された試料Sの表面をSEMによって観察し、試料掘削装置による掘削とSEMによる観察とを繰り返すことにより、試料Sの半径方向の構造を観察することが可能となる。例えば、ボールベアリング用のボール等の球状材について、形成されたクラックの形状の観察等、球状材の内部構造を観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の試料掘削方法を実行するために使用する試料掘削装置の構成を示すブロック図である。
【図2】グロー放電管の内部構成を示す断面図である。
【図3】試料室の内部構成を示す模式的断面図である。
【図4】試料を載置した載置部を上から見た状態を示す模式的平面図である。
【図5】電源部を構成するジェネレータの内部構成を示すブロック図である。
【図6】電源部を構成するマッチングボックスの内部構成を示すブロック図である。
【図7】電極と試料との位置関係を示す模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1 グロー放電管
12 電極
12b 円筒部
12c 貫通孔
12e 先端
2 分光器
3 試料室(処理室)
31 載置部
32 セラミックボール(球)
33 超音波発振器(発振器)
4 電源部
5 制御装置
S 試料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガスが供給される処理室内で球状の試料を電極に対向配置し、
前記試料をランダムに回転させ、
ランダムに回転する前記試料と前記電極との間に電圧を印加してグロー放電を発生させることによって、前記試料を掘削する
ことを特徴とする試料掘削方法。
【請求項2】
不活性ガスが供給される処理室内で電極と該電極に対向配置される試料との間に電圧を印加して発生させるグロー放電により、前記試料を掘削する試料掘削装置において、
前記処理室内で球状の試料を前記電極に対向配置する配置手段と、
前記試料をランダムに回転させる回転手段と
を備えることを特徴とする試料掘削装置。
【請求項3】
前記配置手段は、
前記電極に対向して前記電極の下方に設けてあり、前記試料を載置する有縁皿形状の載置部と、
該載置部に載置された前記試料と前記載置部の縁との間に配してあり、前記試料の移動を拘束する複数の球と
を有することを特徴とする請求項2に記載の試料掘削装置。
【請求項4】
前記回転手段は、
前記載置部に振動を加える発振器を有すること
を特徴とする請求項3に記載の試料掘削装置。
【請求項1】
不活性ガスが供給される処理室内で球状の試料を電極に対向配置し、
前記試料をランダムに回転させ、
ランダムに回転する前記試料と前記電極との間に電圧を印加してグロー放電を発生させることによって、前記試料を掘削する
ことを特徴とする試料掘削方法。
【請求項2】
不活性ガスが供給される処理室内で電極と該電極に対向配置される試料との間に電圧を印加して発生させるグロー放電により、前記試料を掘削する試料掘削装置において、
前記処理室内で球状の試料を前記電極に対向配置する配置手段と、
前記試料をランダムに回転させる回転手段と
を備えることを特徴とする試料掘削装置。
【請求項3】
前記配置手段は、
前記電極に対向して前記電極の下方に設けてあり、前記試料を載置する有縁皿形状の載置部と、
該載置部に載置された前記試料と前記載置部の縁との間に配してあり、前記試料の移動を拘束する複数の球と
を有することを特徴とする請求項2に記載の試料掘削装置。
【請求項4】
前記回転手段は、
前記載置部に振動を加える発振器を有すること
を特徴とする請求項3に記載の試料掘削装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2008−122245(P2008−122245A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306734(P2006−306734)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】
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