説明

試料採取用プローブ及び試料採取方法

【課題】既存の試料採取装置であっても試料を良好に採取するための試料採取方法を提供する。
【解決手段】誘電体棒10と、誘電体棒10の先端に形成される捕捉面10bと、誘電体棒10の後端側に設けられる露出領域と、誘電体棒10のうち捕捉面10bと露出領域の間の領域において、誘電体棒10を覆う導電性被覆層12と、を有するプローブ1のうちの露出領域を誘電体物により摩擦して誘電体棒10を帯電し、プローブ1の捕捉面10bにより試料8を吸着し、プローブ1の操作により試料8を試料ホルダ6に移送する処理を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料採取用プローブ及び試料採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置、表示装置等の電子デバイスにおいては、高集積化の進展に伴いパターンの微細化がより進んでいるため、走査電子顕微鏡(SEM)の使用によるパターン、膜などの像の不良解析の判別や形状の確認ができない状況となっている。そこで、SEMの替わりに、透過電子顕微鏡(TEM)や走査型透過電子顕微鏡(STEM)が多く使用されるようになってきている。
【0003】
TEM、STEMにより観察される試料の作製方法の1つとして、収束イオンビーム(FIB)を使用することが知られている。例えば、真空容器内でFIBを基板に照射して試料となる小片を形成し、マニピュレータにより試料を基板からピックアップする方法である。マニピュレータのピックアップ部としてプローブが使用されている。
【0004】
FIBによる試料作成方法はスループットに優れるとともに、1つの基板において比較的近い領域から複数の試料を採取できるなど、多くのメリットを持つ手法の1つである。しかし、基板に形成した微小な試料を取り出す作業は熟練性が要求される要素も含まれるため、熟練度の高さの程度によって試料採取の成功率が大きく左右される。
【0005】
熟練を要する操作としては、例えば、微細加工した試料をガラス製プローブの先端に静電気により吸着させて採取する処理がある。ガラス製プローブ先端に静電吸着された試料は、例えば支持網(メッシュ)上に載置される。なお、プローブはニードル、キャピラリーとも呼ばれる。
【0006】
プローブによる試料の着脱を再現良く、正確に作業するために、例えば、タングステン製のプローブの先端を平面化してその先端に試料を面接触させ、さらにプローブに電源から電圧を印加してプローブの先端に試料を吸着させることが知られている。
【0007】
また、プローブ(ニードル)により試料を着脱する別の方法として、自然帯電可能であって先鋭、角錐状又は円錐状の先端部を有する金属製ニードルと、アース接地された導電部材とを有するマイクロマニピュレータを使用することが知られている。そのマイクロマニピュレータは、さらに、導電部材と金属製ニードルの後端部との電気的接続をON/OFF切り換える開閉接点部を有している。この場合、金属製ニードルの先端部側を除く部分と導電部材と開閉接点部とがそれぞれ柄部に装着固定される。
【0008】
プローブ(キャピラリー)により試料を着脱する他の方法として、ガラス製キャピラリーにより試料を保持するために、ガラス製キャピラリーに焦電体を取り付け、さらに焦電体を加熱するランプ照射系を有するマイクロマニピュレータが知られている。この場合、キャピラリーの先端の静電極性は、焦電体にランプを照射することにより得られる焦電効果により制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−163277号公報
【特許文献2】特開2006−068830号公報
【特許文献3】特開2006−116648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のマニピュレータによれば、プローブ電圧を調整する電源又は開閉接点部又はランプ照射系装置が必要となるので、既存の装置をそのまま使用できない。従って、それらの構造を有しない既存の試料用の採取装置を使用する場合には、改造の必要がある。
【0011】
本発明の目的は、プローブ以外に新たな部品を要求せずに試料を良好に採取するための試料採取用プローブ及び試料採取方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの観点によれば、誘電体棒と、前記誘電体棒の先端に形成される捕捉面と、前記誘電体棒の後端側に設けられる露出領域と、前記誘電体棒のうち前記捕捉面と前記露出領域の間の領域において、前記誘電体棒を覆う導電性被覆層と、を有する試料採取用プローブが提供される。
別の観点によれば、誘電体棒と、前記誘電体棒の先端に形成される捕捉面と、前記誘電体棒の後端側に設けられる露出領域と、前記誘電体棒のうち前記捕捉面と前記露出領域の間の領域において前記誘電体棒を覆う導電性被覆層と、を有するプローブにおいて、前記露出領域を帯電物により摩擦して前記誘電体棒を帯電し、前記プローブの前記捕捉面により試料を吸着し、前記プローブの操作により前記試料を試料ホルダに移送する試料採取方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本実施形態によれば、試料の採取、移送に使用するプローブにおける誘電体棒の先端と後端側の領域を露出するとともに先端から後端側露出領域の間の領域を導電性被覆層により覆っている。このため、誘電体棒の後端側の露出領域を摩擦することにより、誘電体棒の全体を帯電させることが可能になる。しかも、プローブでは、導電性被覆層により電気的にシールドすることによって、試料がプローブ側面に吸着することが防止される。従って、既存の試料採取装置であってもプローブを交換することにより試料を再現良く、正確に採取、搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1A〜図1Dは、実施形態に係る試料採取用プローブを形成する一部の工程を例示する側面図である。
【図1E】図1E〜図1Gは、実施形態に係る試料採取用プローブを形成する残りの工程を例示する側面図である。
【図2】図2は、実施形態に係る試料採取用プローブをマニピュレータに取り付けた状態を例示する斜視図である。
【図3】図3は、実施形態に係る試料採取用プローブにより捕捉される試料を作成するための試料作製装置の一例を示す概要構成図である。
【図4】図4A〜図4Dは、実施形態に係る試料採取用プローブにより捕捉される試料を作成する工程を例示する斜視図である。
【図5】図5Aは、比較例に係る試料捕捉に使用されるプローブを例示する側面図、図5Bは、比較例に係る試料捕捉の処理を例示する斜視図である。
【図6】図6は、実施形態に係る試料採取方法によるグリッドメッシュ上への試料の載置状態を例示する斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。図面において、同様の構成要素には同じ参照番号が付されている。図1A〜図1Gは、実施形態に係る試料採取
用のプローブを形成する工程を例示する側面図である。
【0016】
まず、図1Aに示すように、作成しようとするプローブの約2倍の長さの筒状のガラス棒10を用意し、ガラス棒10の上端側を固定して垂直に支持するとともに下端側に自重又は荷重をかけながらその中央をヒータにより加熱する。
【0017】
これによりガラス棒10の中央部には溶融によりくびれが生じ、さらにガラス棒10の自重又は下端側への荷重により下方に引っ張られるので、その中央部を境にしてその近傍の上の部分と下の部分の双方には互いに反対形状のテーパーが形成される。さらに加熱を進めると、ガラス棒10は中央部で引きちぎられ、上下に2つに分離される。
【0018】
分割されたガラス棒10のそれぞれの先端領域10aは図1Bに示すように先鋭な先細りの形状を有する。ガラス棒10の長さは例えば30mm〜50mm程度であり、また、最も太い部分の直径は例えば1mm〜2mm程度となる。
【0019】
次に、図1C、図1Dに示すように、ガラス棒10の後端から中央に向けて約5mm〜20mmまでの後端側の領域をマスキングテープ11により覆う。マーキングテープ11は、後の工程で剥がされるので特に材料は限定されないが、ガラス棒10に対して粘着性があって次の成膜工程で剥がれずにガラス棒10を保護できる材料及び構造が選択される。マスキングテープ11として例えばシート状レジストを使用する。
【0020】
その後に、ガラス棒10を成膜装置(不図示)、例えばスパッタ装置のチャンバに入れ、図1Eに示すようにガラス棒10表面に導電性被覆層12を形成する。導電性被覆層12として、例えば金、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、プラチナのいずれかの導電性材料の膜を例えば5nm〜1000nmの厚さに形成する。
【0021】
次に、図1Fに示すように、集束イオンビーム(FIB)の照射によりガラス棒10の先細りの先端を切断して面積を拡大し、その切断面を導電性被覆層12から露出させて試料捕捉用の捕捉面10bを形成する。ガラス棒10のうち捕捉面10bは、例えば面積が1μm〜10μmの平坦なガラス面であり、ガラス棒10の長手方向の軸に対して斜めに形成されてもよいし垂直に形成されてもよい。また、捕捉面10aの形成方法として、ガラス棒10の先端を研磨する方法を採用してもよいし、その他の方法を採用してもよい。
【0022】
その後に、図1Gに示すように、ガラス棒10の後端領域のマスキングテープ11を剥がし、露出したガラス面を露出領域10cとする。この場合、マスキングテープ11がレジストから形成されている場合には、マスキングテープ11は溶剤を用いて除去される。
【0023】
以上の工程によりプローブ1が完成する。プローブ1では、先細りの先端からガラス棒10の捕捉面10bが露出し、後端領域の露出領域10cからガラス棒10が露出するとともに、捕捉面10bと露出領域10cの間の領域の表面は導電性被覆層12に覆われる。
【0024】
プローブ1は、図2に例示するように、その後端をペンシル型ホルダ2の先端の開口内に押し込んだ後に、ネジ止めにより締め付けることにより固定される。また、ペンシル型ホルダ2の胴は、試料捕捉装置のマニピュレータ3のホルダ把持部3aに挟まれ、プローブ1の先端が基板載置領域4に向くように最初の位置が調整される。

【0025】
マニピュレータ3は、試料捕捉装置の油圧ハンドル(不図示)の操作により、x方向、
y方向、z方向にその位置が調整され、さらに、試料捕捉装置の光学顕微鏡筒9を通して光学顕微鏡で観察しながらプローブ1の先端で試料を捕捉する。マニピュレータ3は、その後に、プローブ1の先端の下にホルダ載置台5を移動させ、ホルダ載置台5の上の試料ホルダ、例えばグリッドメッシュ6上に試料を移す。
【0026】
プローブ1は、ペンシル型ホルダ2の先端部に挿入する際にガラス棒10が例えば正電荷に帯電された状態にされる。これは、後述するように、試料作成に使用される電子イオンビームにより試料が負に帯電していることが多いからである。しかし、試料が帯電していないこともあるのでその場合には負電荷に帯電させてもよい。
【0027】
プローブ1のガラス棒10を帯電させる方法として、例えば、図1Gに示すように、摩擦により負に帯電する誘電体物質から形成される誘電体物13、例えば誘電体布を用いてプローブ1の露出領域10cを擦る。これにより、ガラス棒10は正に帯電され、帯電されたガラス棒10を有するプローブ1は、後端をペンシル型ホルダ2の先端に嵌め込んで装着され、さらにマニュピュレータ3に装着される。負に帯電する誘電体物質として、例えばフッ素樹脂、アクリル、ゴム、ポリエチレンのいずれかを有する帯電可能物質がある。
【0028】
次に、プローブ1の捕捉対象となる試料の形成方法とプローブ1による試料捕捉について説明する。図3は、試料作製装置の概要を例示する断面図である。
【0029】
図3に示す試料作製装置の試料作成室21の中には、試料採取対象として例えば半導体ウエーハ又は半導体チップのような基板7を載置するための試料加工用ステージ22が配置されている。試料加工用ステージ22は、制御部及び駆動機構(不図示)により上下方向(Z方向) 、水平方向(X方向、Y方向)に移動可能であり、さらに水平方向に対して傾斜可能に取り付けられている。また、試料加工用ステージ22の上には、基板7が載置される基板ホルダ23が置かれている。
【0030】
試料作成室21において試料加工用ステージ22の上方にはSEMカラム24が取り付けられ、その側方にはFIBカラム25が取り付けられている。SEMカラム24、FIBカラム25は、双方の電子照射方向の中心軸が試料加工用ステージ22上の基板7に向くように配置される。また、SEMカラム24の電子照射方向の中心軸は、FIBカラム25の電子照射方向の中心軸に対して例えば52°の角度で傾斜している。SEMカラム24、FIBカラム25は、それぞれイオン源、集光レンズ、偏光器等(不図示)を有している。
【0031】
試料作成室21内の側部には、基板7から放出される二次電子や後方散乱電子を検出する検出器26が配置されている。試料加工用ステージ22の位置や、SEMカラム24、FIBカラム25、検出器26等の制御は、制御部(不図示)によって制御される。また、試料作成室21の底面には、排気により内部を減圧するための排気口27が設けられている。なお、SEMカラム24とFIBカラム25の取り付け位置は逆であってもよい。
【0032】
次に、基板7から試料8を作製し、これをプローブ1により捕捉してグリッドメッシュ6に移すまでの工程を説明する。
基板7から試料8を作製するために、まず、図3に示す試料作製装置の試料作成室21内を減圧した状態で、基板7が搭載された基板ホルダ23をロードロック室(不図示)から試料加工用ステージ22上に搬送する。続いて、試料加工用ステージ22の位置を調整してFIB加工位置に基板7を設置する。なお、基板7の加工は、SEMカラム24によって取得される画像を参照して加工位置を探した後に、ステージ22を例えば52℃傾けてFIBカラム24を加工面に向ける。
【0033】
続いて、基板7の観察箇所をFIBカラム25の電子照射位置に配置する。この場合、基板7は、図4Aに例示するようにシリコン基板7aの上に膜7bが形成された構造を有しているが、半導体集積回路、その他の構造を有してもよい。そのような状態で、まず、基板7における試料形成領域7cを特定し、試料形成領域7cの両側の領域にFIBカラム25から出射される電子ビームの焦点を合わせる。試料形成領域7cの大きさは、例えば、試料の厚みとなる横方向で50nm〜500nm、長さ方向で5μm〜20μmである。
【0034】
続いて、図4Bに例示するように、試料加工用ステージ22の位置を調整しながらFIBカラム25からイオンビームを照射することにより、試料形成領域7cの両側の領域にそれぞれ矩形孔7d、7eを形成する。2個の矩形孔7d、7eの少なくとも一方は、プローブ1の先端領域10aを挿入できる大きさを有する。これらの操作は、制御部(不図示)により制御される。
【0035】
2個の矩形孔7d、7eを形成した後に、試料加工用ステージ22の傾きを調整し、試料形成領域7cの底部に、矩形孔7d、7eの一方を通して電子ビームを基板7に照射してボトムカットを行う。
【0036】
その後に、FIBカラム25からの電子ビーム照射方向が基板7の上面に垂直となる位置に試料加工用ステージ22の傾きを戻した後に、さらに、電子ビーム照射により加工を進め、整形し、仕上げを行う。そのような加工により試料形成領域7cを薄板状に成形した後に、図4Cに例示するように、イオンビームの照射により試料形成領域7cの両端を切断する。これにより、薄板状の試料形成領域7cは、基板7から分離されて試料8となる。
【0037】
次に、試料加工用ステージ22を水平にした後に、基板7が載置された基板ホルダ23を試料作成室21からロードロックチャンバを介して大気中に取り出し、さらに、基板7を図2に示す試料捕捉装置の光学顕微鏡筒9の下の基板載置領域4に移す。
【0038】
その後に、帯電したプローブ1が取り付けられたホルダ2を図2に示すようにマニピュレータ3に装着した状態で、油圧ハンドル(不図示)を操作してマニュピュレータ3をX、Y、Z方向に移動させてプローブ1の先端の位置を調整する。
【0039】
これにより、図4Dに例示するように、プローブ1の先端部の捕捉面10bを矩形孔7e内に入れて試料8の一方の面に接触させる。この場合、試料8は、電子ビームの照射により負に帯電している一方、プローブ1のガラス棒10が正に帯電しているので、試料8の一面は静電力によりガラス棒10の先端の捕捉面10bに静電吸着される。
【0040】
ガラス棒10の帯電量が不足する場合には、プローブ1が試料8に接触する際に、試料8との吸着力が小さくなって、プローブ1により試料8を捕捉することができず、あるいは、プローブ1により試料8を突きすぎて試料8を破損させるおそれがある。そこで、誘電体物13との摩擦による大きな帯電量をガラス棒10に付与することが必要である。
【0041】
ところで、図5Aに例示するように、表面に導電性被覆層が形成されないガラス棒40をプローブとして使用し、ガラス棒40の帯電量を大きくすると、図5Bに例示するように、試料8がガラス棒40の先端から飛んでその胴表面に吸着されることがある。このような場合、試料8は極めて小さいので、試料8の位置を調整してガラス棒40の先端に再び移動させることは困難である。
【0042】
これに対し、本実施形態に係るプローブ1では、ガラス棒10の先端に捕捉面10bを形成し、捕捉面10bから後端部の露出領域10cの間の領域の表面を導電性被覆層12により覆っている。このため、ガラス棒10の後端側の露出領域10cをフッ素樹脂等の負の帯電物で強く摩擦し、これによりガラス棒10の全体に大きな正の電荷量を付与しても、試料8を基板7から取り出す際に、試料8がプローブ1の先端に正常に付着し、その胴表面に付着することはない。
【0043】
これは、プローブ1の胴を覆う導電性被覆層12が電気的シールドとして機能するからである。即ち、図1Gに示すように、初期状態で帯電していないガラス棒10の後端部の露出領域10cを負に帯電する誘電体物13により擦ることにより、ガラス棒10の全体が正に帯電するが、導電性被覆層12は帯電しない。従って、導電性被覆層12に覆われた領域ではガラス棒10に直接に電荷を付与できず、露出領域10cからガラス棒10の中を移動する電荷がガラス棒10の先端の捕捉面10bに移動することになり、プローブ1の全体の過剰な帯電が防止される。
【0044】
プローブ1の先端の捕捉面10bに吸着された試料8は、図6に例示するように、図2に示すホルダ載置台5上のグリッドメッシュ6上に載置される。この場合、ホルダ載置台5を光学顕微鏡筒9の下に移動する。
【0045】
グリッドメッシュ6は、銅、モリブデン、ニッケル等の導電性板から形成される環状フレーム6a及びメッシュ6bを有し、さらにコロジオン膜のような支持膜6cを貼り付けた構造を有している。メッシュ6bは、試料8の支持・補強としての機能を有し、例えば10μm〜数百μmの孔が網目状にあいている。なお、メッシュ6bの網目は四角形に限られるものではなく、例えば五角形、六角形であってもよい。また、メッシュ6bとして、中央に1つの孔が形成されているものであってもよい。
【0046】
メッシュ6bの網目の間の支持膜6c上に試料8を載せる際に、油圧ハンドル(不図示)の操作によりプローブ1の先端の位置を調整し、捕捉面10bに付着した試料8をグリッドメッシュ6の面にできるだけ平行な姿勢にした後に、グリッドメッシュ6の面に一瞬密着させ、すぐにプローブ1を試料8から離す。続いて、プローブ1から試料8が離れたことを確認した後に、プローブ1をグリッドメッシュ6から遠ざけることにより、試料作製の1サイクルの作業が終了する。
【0047】
ところで、図5Aに例示したと同様に、プローブであるガラス棒40の表面を導電性被覆層により覆わずにガラス棒40の全体を露出させると、試料8をグリッドメッシュ6上に移せないことがある。例えば、グリッドメッシュ6が負に帯電されている場合にガラス棒40に正電荷を多く付与すると、支持膜6c上でガラス棒40の先端から離された試料8が図5Bに例示すると同様に帯電したガラス棒40の胴表面に付着することがある。この場合、ガラス棒40の胴表面に付着した試料8をグリッドメッシュ7上に置き直すことは極めて困難である。
【0048】
グリッドメッシュ6上に複数の試料8を載置する場合には、上記した操作を繰り返すことにより複数の試料8をそれぞれ異なるグリッド(マス目)の上に載置する。
【0049】
以上のようなグリッドメッシュ6上への試料8の搭載を終えた後に、グリッドメッシュ6をTEM(不図示)やSTEM(不図示)の試料ホルダに取り付け、観察を行う。
【0050】
以上述べたように本実施形態によれば、試料8の採取、搬送に使用するプローブ1において、ガラス(誘電体)棒10の先端と後端領域を露出するとともに先端から後端領域の間の表面を導電性被服層12により覆っている。このため、プローブ1への帯電の正と負
の方向付けと帯電量の調整が容易になる。また、導電性被覆層12が電気的シールドとして機能するので、プローブ1の静電吸着領域をその先端の捕捉面10bに絞ることができ、試料8の吸着を再現性良く、正確に行うことができる。
【0051】
ここで挙げた全ての例および条件的表現は、発明者が技術促進に貢献した発明および概念を読者が理解するのを助けるためのものであり、ここで具体的に挙げたそのような例および条件に限定することなく解釈すべきであり、また、明細書におけるそのような例の編成は本発明の優劣を示すこととは関係ない。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換および変形を施すことができると理解される。
【0052】
次に、本発明の実施形態について特徴を付記する。
(付記1) 誘電体棒と、前記誘電体棒の先端に形成される捕捉面と、前記誘電体棒の後端側に設けられる露出領域と、前記誘電体棒のうち前記捕捉面と前記露出領域の間の領域において、前記誘電体棒を覆う導電性被覆層と、を有する試料採取用プローブ。
(付記2) 前記誘電体棒はガラス棒であることを特徴とする付記1に記載の試料作製装置。
(付記3) 前記誘電体棒の前記捕捉面は、前記誘電体棒の長手方向に対して傾斜していることを特徴とする付記1又は付記2に記載の試料採取用プローブ。
(付記4) 前記導電性被覆層は、金属から形成されていることを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか1つに記載の試料採取用プローブ。
(付記5) 誘電体棒と、前記誘電体棒の先端に形成される捕捉面と、前記誘電体棒の後端側に設けられる露出領域と、前記誘電体棒のうち前記捕捉面と前記露出領域の間の領域において、前記誘電体棒を覆う導電性被覆層と、を有するプローブのうちの前記露出領域を誘電体物により摩擦して前記誘電体棒を帯電し、前記プローブの前記捕捉面により試料を吸着し、前記プローブの操作により前記試料を試料ホルダに移送する試料採取方法。
(付記6) 前記誘電体棒はガラス棒であることを特徴とする付記5に記載の試料採取方法。
(付記7) 前記誘電体物は、アクリル、フッ素樹脂、ゴム、ポリエチレンの少なくとも1つを含む材料から形成されていることを特徴とする付記6に記載の試料採取方法。
【符号の説明】
【0053】
1 プローブ
2 ホルダ
3 マニピュレータ
4 基板載置領域
5 ホルダ載置台
6 グリッドメッシュ(試料ホルダ)
7 基板
8 試料
9 光学顕微鏡筒
10 ガラス棒(誘電体棒)
10a 先端領域
10b 捕捉面
10c 露出領域
11 マスキングテープ
12 導電性被覆層
13 誘電体物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体棒と、
前記誘電体棒の先端に形成される捕捉面と、
前記誘電体棒の後端側に設けられる露出領域と、
前記誘電体棒のうち前記捕捉面と前記露出領域の間の領域において、前記誘電体棒を覆う導電性被覆層と、
を有する試料採取用プローブ。
【請求項2】
前記誘電体棒はガラス棒であることを特徴とする請求項1に記載の試料採取用プローブ。
【請求項3】
前記導電性被覆層は、金属から形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の試料採取用プローブ。
【請求項4】
誘電体棒と、前記誘電体棒の先端に形成される捕捉面と、前記誘電体棒の後端側に設けられる露出領域と、前記誘電体棒のうち前記捕捉面と前記露出領域の間の領域において前記誘電体棒を覆う導電性被覆層と、を有するプローブにおいて、前記露出領域を帯電物により摩擦して前記誘電体棒を帯電し、
前記プローブの前記捕捉面により試料を吸着し、
前記プローブの操作により前記試料を試料ホルダに移送する
試料採取方法。
【請求項5】
前記誘電体棒はガラス棒であることを特徴とする請求項4に記載の試料採取方法。

【図1A】
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【図1E】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−202846(P2012−202846A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68139(P2011−68139)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】