説明

認証システム

【課題】制御装置と該制御装置の使用者に所持される認証媒体とが無線通信によって認証を実施する認証システムにおいて、妨害電波等の無線通信を阻害する要素の影響を受け難くすることにより、被制御対象を正常に作動させることができるようにする
【解決手段】スマートセキュリティ制御装置5は、応答周波数を指定した指定要求信号を携帯機3に対して送信する。そして指定要求信号が送信されてから予め設定された許容時間以内に何らかの信号が無線受信できない場合に、応答周波数を異なる周波数に変更した指定要求信号を送信させる。一方、携帯機3は、指定要求信号により指定された応答周波数を選択し、選択された応答周波数で、受信応答信号をスマートセキュリティ制御装置5に対して送信する。従って、応答信号が混信することよって応答信号が受信できなくなることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置と該制御装置の使用者に所持される認証媒体とが無線通信によって認証を実施する認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設けられた所定の操作部がICカード等の認証媒体を所持した正規の使用者により操作されると、車両に搭載された制御装置と認証媒体とが無線通信により認証を実施する認証システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この認証システムにおいては、制御装置と認証媒体との認証が成功すると、被制御対象となる車両のドアをロックまたはアンロックするように構成されている。
【特許文献1】特開2006−037396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記認証システムにおいては、妨害電波等の無線通信を阻害する要素の影響を受けると、制御装置と認証媒体との認証が正常に実施されなくなるので、正規の使用者が操作部を操作したにもかかわらず、被制御対象が作動しないことがあるという問題点があった。
【0005】
そこで、このような問題点を鑑み、制御装置と該制御装置の使用者に所持される認証媒体とが無線通信によって認証を実施する認証システムにおいて、妨害電波等の無線通信を阻害する要素の影響を受け難くすることにより、被制御対象を正常に作動させることができるようにすることを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために成された請求項1に記載の認証システムにおいては、制御装置と認証媒体とが無線通信によって認証を実施する構成にされている。この認証システムにおいて、制御装置の指定要求送信手段は、応答周波数(応答信号の周波数)を指定した指定要求信号を認証媒体に対して送信する。
【0007】
そして、認証媒体の周波数選択手段は、指定要求信号を無線受信すると指定要求信号により指定された応答周波数を選択し、認証応答送信手段は、選択された応答周波数で、識別子を含む認証応答信号を制御装置に対して無線送信する。さらに、制御装置の制御判定手段は、認証応答信号を無線受信すると、受信した識別子と自己が有する識別子とが一致するか否かを判定する。
【0008】
ここで、制御装置の周波数変更手段は、指定要求信号が送信されてから予め設定された許容時間以内に何らかの信号が無線受信できない場合に、応答周波数を異なる周波数に変更した指定要求信号を送信させる。
【0009】
従って、このような認証システムによれば、指定要求信号に対する応答がない場合に認証媒体からの応答周波数を変更させることができるので、応答信号が混信すること(妨害ノイズの影響を受けること)よって応答信号が受信できなくなることを防止することができる。よって、良好に認証を実施することができる。
【0010】
ところで、認証媒体の認証応答送信手段は、周波数選択手段が応答周波数を選択した直後に認証信号を送信してもよいが、新たに認証要求信号を受信したときに認証信号を送信するようにしてもよい。具体的には、請求項2に記載のように、制御装置は、指定要求信号を受信した旨を表す受信応答信号を認証媒体から受信すると、認証応答信号を要求する認証要求信号を認証媒体に対して無線送信する認証要求送信手段を備えていればよい。
【0011】
一方、認証媒体は、周波数選択手段により応答周波数が選択されると、受信応答信号を制御装置に対して送信する受信応答送信手段を備え、認証応答送信手段は、認証要求信号を受信すると、認証応答信号を制御装置に対して無線送信するようにされていればよい。
【0012】
このような認証システムによれば、識別子のデータを含む認証応答信号の送受信については、応答周波数の確定後に実施されるので、応答周波数が確定するまでに送受信されるデータ量を識別子のデータの分だけ少なくすることができる。よって、応答周波数を確定するまでの時間を短縮することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の認証システムにおいては、請求項3に記載のように、制御装置の認証要求送信手段は、この制御装置が有する識別子を認証要求信号に含めて送信するようにされていてもよい。この場合、認証媒体は、受信した認証要求信号に含まれる識別子と自己が有する識別子とが一致するか否かを判定する認証判定手段を備え、認証応答送信手段は、認証判定手段により受信した識別子と自己が有する識別子とが一致すると判定された場合に、認証応答信号を制御装置に対して無線送信するようにされていればよい。
【0014】
このような認証システムによれば、複数の認証媒体が認証要求信号の受信可能エリア内に存在する場合に、受信した識別子と自己が有する識別子とが一致する認証媒体のみが認証応答信号を送信するので、この制御装置に無関係な(識別子が異なる)認証媒体が認証応答信号を送信することによる混信を防止することができる。
【0015】
さらに、請求項1〜請求項3の何れかに記載の認証システムにおいて、制御装置は、請求項4に記載のように、移動可能な移動物体に搭載されていてもよい。
このような認証システムによれば、車両(制御装置)の現在地によって妨害ノイズの周波数が変化するので、応答周波数を変更することができることによる効果をより享受することができる。
【0016】
また、請求項4に記載の認証システムにおいては、請求項5に記載のように、制御装置は、移動物体の現在地を検出する現在地検出手段と、現在地検出手段による検出結果に応じて、応答周波数として使用可能または使用不可能な周波数と移動物体の現在地とが予め対応付けて記録された周波数データを参照することにより、使用可能な周波数を特定する周波数特定手段と、を備え、指定要求送信手段は、周波数特定手段により特定された使用可能な周波数を前記応答周波数に指定した指定要求信号を認証媒体に対して送信するようにされていてもよい。
【0017】
このような認証システムによれば、周波数データを活用することにより、使用可能な周波数を初めに応答周波数に設定することができるので、初回に認証が成功する確率を向上させることができる。よって、認証に必要となる時間を短縮することができる。
【0018】
さらに、請求項5に記載の認証システムにおいて、制御装置は、請求項6に記載のように、制御判定手段により各識別子が一致すると判定された場合に、指定要求送信手段が直前に指定した応答周波数の情報を現在地検出手段による検出結果とともに周波数データとしてデータ記録手段に記録するデータ格納手段を備えていてもよい。
【0019】
このような認証システムによれば、周波数データを蓄積したデータベースを構築することができる。
また、請求項6に記載に記載の認証システムにおいては、請求項7に記載のように、制御装置は、制御装置の外部と通信を行う通信手段を備え、データ記録手段は、少なくとも通信手段を介して制御装置と通信可能にされたデータセンタに設けられていてもよい。
【0020】
このような認証システムによれば、他の制御装置がデータセンタから周波数データを取得することにより、周波数データを複数の制御装置の間で共有することができる。よって、より効率的に認証を実施することができる。
【0021】
さらに、請求項1〜請求項7の何れかに記載の認証システムにおいて、周波数変更手段は、請求項8に記載のように、前回指定要求信号を送信した送信周波数とは異なる送信周波数で指定要求信号を指定要求送信手段に送信させるようにしてもよい。
【0022】
このような認証システムによれば、応答周波数を変更するとともに、指定要求信号を送信する送信周波数を変更するので、より確実に混信を回避することができる。よって、より確実に認証を実施することができる。
【0023】
また、請求項1〜請求項8の何れかに記載の認証システムにおいては、請求項9に記載のように、制御判定手段により各識別子が一致すると判定された場合に、予め設定された被制御対象を作動させる作動制御手段を備えていてもよい。
【0024】
このような認証システムによれば、各識別子が一致すると判定された場合(つまり、認証に成功した場合)に、被制御対象を作動させることができる。よって、例えば、認証結果に応じて施錠、解錠を実施するようにすれば、正規の認証媒体を所持した使用者のみに、確実に入場を許可するシステムを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
図1は、実施形態の車両用電子キーシステム1(認証システム)の概略構成を示すブロック図である。
【0026】
まず図1に示すように、本実施形態の電子キーシステム1は、車両(移動物体)の使用者に携帯される携帯機3(認証媒体)と、車両に搭載されたスマートセキュリティ制御装置5(制御装置)とを備えている。
【0027】
スマートセキュリティ制御装置5には、周知のGPS衛星からの電波を受信することにより自車両の現在地を検出するGPS受信機11(現在地検出手段)と、図示しないアンテナを介して電波を送受信することにより例えば携帯電話等の基地局21と双方向無線通信を行う通信部13(通信手段)とが接続されている。
【0028】
ここで、基地局21は、インターネット網23を介してデータセンタ25(データ記録手段)に接続されており、スマートセキュリティ制御装置5は、通信部13、基地局21、インターネット網23を介してデータセンタ25に記録された不具合情報(詳細は後述)を読み出す処理、およびデータセンタ25に不具合情報を追記する処理を実施可能に構成されている。
【0029】
また、スマートセキュリティ制御装置5には、車両外の所定の検知エリアへ送信要求信号を送信する送信機(車載送信機)7と、携帯機3から無線送信される信号を受信する受信機(車載受信機)9と、ドアの開閉状態を検出するためのドア開検出スイッチ15と、ドアのロック/アンロック状態を検出するドアロックセンサ17と、車両のドアのロックとアンロックを行うためのドアロックモータ27を駆動制御するドアロック制御装置29(被制御対象)と、ドアのロック/アンロックの指令を使用者が入力するためのスマートスイッチ35(操作部)とが接続されている。
【0030】
ここで、送信機7は、LF帯(low frequency)の電波(例えば134MHz近傍の電波)を搬送波とする電波を、FM変調またはAM変調することにより所定のデータを送信する。
【0031】
また、受信機9は、予め設定された範囲のUHF帯(ultra high frequency)の電波を受信可能に構成されている。さらに、この受信機9は、所定周波数の電波を狙って感度よく受信するためのチューニング機能を備えており、後述するスマートエントリ制御処理(図2)にて、指定した応答周波数で携帯機3に応答信号を出力させる際に、携帯機3から送信される応答周波数に合わせて受信周波数をチューニングして応答信号を受信する。
【0032】
なお、本明細書において、「応答周波数」とは、携帯機3から送信される電波の周波数を示し、「送信周波数」とは、スマートセキュリティ制御装置5から送信される電波の周波数を示すものとする。
【0033】
次に、スマートセキュリティ制御装置5には、上記構成に加えて、当該装置5の動作を司るマイコン31および不具合情報記録部33(データ記録手段)が備えられている。
ここで、不具合情報記録部33には、車両の現在地、使用可能チャンネル、および使用不可能チャンネルをそれぞれ対応させた不具合情報(周波数データ)が多数記録される。この不具合情報記録部33に記録される不具合情報は、データセンタ25から取得されて記録されるか、或いは、当該電子キーシステム1によって不具合情報が検出されることにより記録される。
【0034】
なお、当該電子キーシステム1において、ドア開検出スイッチ15、ドアロックセンサ17、ドアロックモータ27、スマートスイッチ35は、各ドアに設けられている。また、本実施形態において、送信機7が送信要求信号を送信する検知エリアは、例えば、運転席ドアの外側に設けられているドアハンドルから一定距離(例えば70cm)の範囲となっている。
【0035】
一方、携帯機3は、当該携帯機3の機能を司るマイコン37と、送信機7から所定の送信周波数で送信された各種要求信号を受信アンテナ(図示省略)により受信して、その要求信号に含まれているデータをマイコン37に入力させる受信部39と、マイコン37から出力されるデータを含んだ無線信号を送信アンテナ(図示省略)から送信させる送信部41とを備えている。また、車両のドアをロックする際に押されるロック用ボタン43と、車両のドアをアンロックする際に押されるアンロック用ボタン45とを備えている。
【0036】
ここで、送信部41は、後述する応答処理(図4参照)の際に、複数の応答周波数から指定された応答周波数を選択し、選択した応答周波数を搬送波とする電波を、FM変調またはAM変調することにより所定のデータを送信する。具体的に携帯機3は、受信した指定要求信号に対しては指定された周波数での受信応答信号を、認証要求信号に対しては認証応答信号を、送信部41を用いて返すよう構成されている。
【0037】
なお、送信部41が選択可能な応答周波数としては、例えば、UHF帯のうち300〜400MHz帯の範囲内の電波が設定されており、この範囲内において複数のチャンネル(RF1,RF2,…)が設定されている。このため、スマートセキュリティ制御装置5では応答周波数のチャンネルを指定し、携帯機3では指定されたチャンネルで応答信号を送信することになる。
【0038】
また、各装置(スマートセキュリティ制御装置5および携帯機3を表す)におけるROM(図示省略)には、この各装置を特定するためのID(識別子)が記録されている。ここで、このIDとしては、各装置で同一のものが割り当てられていてもよいし、異なるものが割り当てられていてもよい。
【0039】
ただし、各装置で異なるIDが割り当てられている場合には、これら各装置が相手方のID(またはIDを暗号化したデータ)を自己のIDとともに記録している必要がある。なお、本実施形態においては、これら各装置に同一のIDが割り当てられている場合を想定して説明する。
【0040】
以上のような構成の電子キーシステム1において、スマートセキュリティ制御装置5は、当該車両に専用の携帯機3が上記検知エリア内に存在していることを検知してドアをロック/アンロックするスマート制御(スマートエントリ制御処理)と、使用者が携帯機3のロック用ボタン43またはアンロック用ボタン45を押すことでドアのロック/アンロックを行うリモートキーレスエントリ制御等を行う。
【0041】
ところで、上記電子キーシステム1において、携帯機3が送信する際に使用するUHF帯の電波は、スマートセキュリティ制御装置5が使用するLF帯の電波と比較して、通信ケーブルや大型表示装置等から発せられるノイズ(妨害ノイズ)の影響を受け易いため、混信(つまり通信異常)が起こり易い傾向がある。そこで、本実施形態においては、スマート制御の際に、携帯機3からの応答信号が妨害ノイズの影響を受け難いように、下記に示す処理を実施している。
【0042】
ここで、妨害ノイズの影響を受け難いように改良された処理であるスマートエントリ制御処理について図2を用いて説明する。図2はスマートセキュリティ制御装置5のマイコン31が実行するスマートエントリ制御処理を示すフローチャートである。
【0043】
スマートエントリ制御処理は、例えば図示しない車両のイグニッション(IG)がONにされると開始される処理であって、まず、GPS受信機11による検出結果に基づいて、車両の現在地を検出する(S110)。そして、イグニッションがOFFにされたか否かを判定する(S120)。
【0044】
イグニッションがOFFにされていなければ(S120:No)、S110の処理に戻る。また、イグニッションがOFFにされていれば(S120:Yes)、最新の現在地の情報をマイコン31内のRAMに記録する(S130)。
【0045】
そして、不具合情報記録部33から不具合情報を取得し(S140)、車両の現在地に対応する不具合情報の有無を判定する(S150)。なお、S140の処理においては、不具合情報記録部33のみから不具合情報を取得するようにしてもよいし、通信部13を介してデータセンタ25から不具合情報を取得するようにしてもよい。また、データセンタ25から不具合情報を取得した場合には、取得した情報を不具合情報記録部33に書き込むようにしてもよい。
【0046】
また、S150の処理において、車両の現在地に対応する不具合情報の有無を判定する際には、車両の現在地と不具合情報に含まれる現在地とが完全に一致する必要はなく、不具合情報に含まれる現在地を中心として、この現在地と同様の妨害ノイズを受ける可能性が高いと思われる範囲内(例えば半径200m以内)に車両の現在地が入っていれば、車両の現在地に対応する不具合情報がありと判定すればよい。
【0047】
車両の現在地に対応する不具合情報があれば(S150:Yes)、この不具合情報に基づいて、使用可能チャンネル(CH)を指定チャンネルに設定する(S160:周波数特定手段)。この際、受信機9による受信周波数を指定チャンネルに対応する周波数に設定(チューニング)する。そして、スマートスイッチ35が操作されたか否かを判定する(S170)。
【0048】
なお、S160の処理において、使用可能チャンネルの情報がない場合には、使用不可能チャンネル以外のチャンネルを指定チャンネルに設定する。また、車両の現在地に対応する不具合情報がなければ(S150:No)、直ちにS170に移行する。
【0049】
スマートスイッチ35が操作されていなければ(S170:No)、S170の処理を繰り返す。また、スマートスイッチ35が操作されていれば(S170:Yes)、指定された所定のチャンネル(S150から移行する場合はデフォルトのチャンネル)を応答周波数に指定した指定要求信号(詳細は後述)を携帯機3に対して送信する(S180:指定要求送信手段)。
【0050】
続いて、指定要求信号に対する応答信号である受信応答信号(詳細は後述)を予め設定された所定時間以内に携帯機3から受信したか否かを判定する(S190、S200)。受信応答信号を受信していない場合(S190:No)、所定時間が経過するまでは(S200:No)S190,S200の処理を繰り返し、所定時間以内に受信応答信号を受信していなければ(S190:No,S200:Yes)、携帯機3が送信可能な全チャンネルを既に選択したか否かを判定する(S210)。
【0051】
全チャンネルを選択済みであれば(S210:Yes)、RAMに記録された学習データ(学習仮登録されたチャンネルの情報)を削除し(S220)、スマートエントリ制御処理を終了する。また、何れかのチャンネルが未選択であれば(S210:No)、受信応答信号等の信号を正常に受信できなかったチャンネルの情報を送信不可能チャンネルとしてRAMに登録する(S270、学習仮登録)。続いて、未選択のチャンネルを選択し(S280:周波数変更手段)、S180の処理に戻る。
【0052】
一方、S190の処理において、受信応答信号を受信していた場合には(S190:Yes)、認証要求信号(詳細は後述)を携帯機3に対して送信する(S230:認証要求送信手段)。そして、携帯機3から認証要求信号に対する応答信号である認証応答信号(詳細は後述)を、予め設定された所定時間以内に携帯機3から受信したか否かを判定する(S240、S250)。
【0053】
認証応答信号を受信していない場合(S240:No)、所定時間が経過するまでは(S250:No)S240,S250の処理を繰り返し、所定時間以内に認証応答信号を受信していなければ(S240:No,S250:Yes)、S210以下の処理を実施する。
【0054】
さらに、認証応答信号を受信していた場合には(S240:Yes)、認証応答信号に含まれるIDと当該スマートセキュリティ制御装置5内のROMに予め記録されたIDとが一致するか否かを判定する(S260:制御判定手段)。これらのIDが一致していなければ(S260:No)、前述のS210以下の処理を実施する。
【0055】
また、これらのIDが一致していれば(S260:Yes)、IDの認証に成功したものとして、ドアロック制御装置29の機能を作動させる(S290:作動制御手段)。ここで、ドアロック制御装置29の機能としては、ドア開検出スイッチ15およびドアロックセンサ17による検出状態によって異なる作動を実施することが考えられる。
【0056】
例えば、ドア開検出スイッチ15が車両のドアの何れかが開いている状態を検出している場合には、ドアロックセンサ17による検出状態にかかわらずドアロック制御装置29による作動を禁止する。そして、ドア開検出スイッチ15が車両のドアの全てが閉じている状態を検出し、かつドアロックセンサ17がドアのロック状態を検出している場合には、ドアをアンロックし、ドアロックセンサ17がドアのアンロック状態を検出している場合には、ドアをロックする。
【0057】
次に、RAMに記録された車両の現在地の情報、およびチャンネルの情報(使用不可能チャンネル)に加えて、IDの認証に成功したチャンネルの情報(使用可能チャンネル)を、不具合情報記録部33に記録し(S300、学習本登録:データ格納手段)、不具合情報記録部33に記録した学習データと同様のデータを通信部13を介してデータセンタ25に送信し(S310:データ格納手段)、スマートエントリ制御処理を終了する。
【0058】
なお、この学習データを受信したデータセンタ25では、スマートセキュリティ制御装置5から送信された不具合情報が、他の車両のスマートセキュリティ制御装置から送信された不具合情報とともにデータベース化されることになる。
【0059】
このようなスマートエントリ制御処理が実施されている際に、携帯機3では図3に示すような処理が実施される。図3は、携帯機3のマイコン37が実行する応答処理を示すフローチャートである。
【0060】
応答処理は、例えば、何らかの信号を受信した際に起動される処理であって、図3に示すように、まず、指定要求信号を受信したか否かを判定する(S410)。指定要求信号を受信していなければ(S410:No)、直ちに後述するS440に移行する。
【0061】
また、指定要求信号を受信していれば(S410:Yes)、応答周波数を指定要求信号により指定されたチャンネルに設定し(S420:周波数選択手段)、このチャンネルで受信応答信号を送信する(S430:受信応答送信手段)。続いて、認証要求信号を受信したか否かを判定する(S440)。
【0062】
認証要求信号を受信していなければ(S440:No)、直ちに応答処理を終了する。また、認証要求信号を受信していれば(S440:Yes)、認証要求信号に含まれる制御装置のIDと、当該携帯機3が有するIDとが一致するか否かを判定する(S450:認証判定手段)。
【0063】
これらの各IDが一致しなければ(S450:No)、直ちに応答処理を終了する。また、各IDが一致すれば(S450:Yes)、受信応答信号を送信したチャンネルと同チャンネルで認証応答信号を送信し(S460:認証応答送信手段)、応答処理を終了する。
【0064】
ここで、各種信号(指定要求信号、受信応答信号、認証要求信号、認証応答信号)の詳細について図4を用いて説明する。図4は携帯機3とスマートセキュリティ制御装置5との信号のやりとりを説明するタイミングチャートである。
【0065】
まず、スマートエントリ制御処理のS180にて送信される指定要求信号は、携帯機3を起動させるWAKEビット(例えば4bitデータ)、応答信号の周波数を指定(例えばRF1に指定)する指定周波数情報信号(例えば4bitデータ)、およびデータの終端を示すSTOPビット(例えば2bitデータ)を備えて構成されている。携帯機3によりこの指定要求信号が正確に検出されると、携帯機3から受信応答信号が送信されることになる(応答処理S430)。
【0066】
受信応答信号は、単に指定要求信号を受信したことを指定された応答周波数で応答するための所定パターンの信号(例えば4bitデータ)である。なお、この受信応答信号が妨害ノイズの影響によりスマートセキュリティ制御装置5にて正常に受信できなかった場合には、応答周波数を変更して指定(例えばRF2に指定)する指定周波数情報信号が再送されることになる(図4参照)。すると、携帯機3は、新たに指定されたチャンネル(応答周波数)で受信応答信号を送信することになる。
【0067】
また、スマートセキュリティ制御装置5によりこの受信応答信号が検出されると(スマートエントリ制御処理S190:Yes)、スマートセキュリティ制御装置5からは、認証要求信号が送信されることになる(S230)。
【0068】
この認証要求信号は、データ先端を示すSTARTビット(例えば6bitデータ)、IDのデータを含む認証データ(例えば60bitデータ)、およびデータの終端を示すSTOPビット(例えば2bitデータ)を備えて構成されている。携帯機3によりこの指定要求信号が検出され、IDの一致が確認されると、携帯機3から認証応答信号が送信されることになる(応答処理S460)。
【0069】
この認証応答信号は、認証要求信号と同様に、データ先端を示すHeaderデータ(例えば6bitデータ)、IDのデータを含む認証データ(例えば69bitデータ)、およびデータの終端を示すSTOPビット(例えば2bitデータ)を備えて構成されている。
【0070】
以上のように詳述した電子キーシステム1においては、スマートセキュリティ制御装置5と携帯機3とが無線通信によって認証を実施する構成にされている。この電子キーシステム1において、スマートセキュリティ制御装置5は、スマートエントリ制御処理にて、応答周波数を指定した指定要求信号を携帯機3に対して送信する。
【0071】
また、スマートセキュリティ制御装置5は、指定要求信号を受信した旨を表す受信応答信号を携帯機3から受信すると、認証応答信号を要求する認証要求信号を携帯機3に対して無線送信する。さらに、スマートセキュリティ制御装置5は、認証応答信号を無線受信すると、受信したID(識別子)と自己が有するIDとが一致するか否かを判定する。
【0072】
一方、携帯機3は、応答処理にて、指定要求信号により指定された応答周波数を選択し、選択された応答周波数で、受信応答信号をスマートセキュリティ制御装置5に対して送信する。また、携帯機3は、認証要求信号を受信すると、IDを含む認証応答信号をスマートセキュリティ制御装置5に対して無線送信する。
【0073】
ここで、スマートセキュリティ制御装置5は、指定要求信号が送信されてから予め設定された許容時間以内に何らかの信号が無線受信できない場合に、応答周波数(チャンネル)を異なる周波数に変更した指定要求信号を送信させる。
【0074】
従って、このような電子キーシステム1によれば、指定要求信号に対する応答がない場合に携帯機3から送信される応答信号の周波数(応答周波数)を変更させることができるので、応答信号が混信することよって応答信号が受信できなくなることを防止することができる。よって、良好に認証を実施することができる。
【0075】
また、IDのデータを含む認証応答信号の送受信については、応答周波数を確定後に実施されるので、応答周波数が確定するまでに送受信されるデータ量をIDのデータの分だけ少なくすることができる。よって、応答周波数を確定するまでの時間を短縮することができる。
【0076】
また、電子キーシステム1において、スマートセキュリティ制御装置5は、このスマートセキュリティ制御装置5が有するIDを認証要求信号に含めて送信する。また、携帯機3は、受信した認証要求信号に含まれるIDと自己が有するIDとが一致するか否かを判定し、各IDとが一致すると判定された場合に、認証応答信号をスマートセキュリティ制御装置5に対して無線送信する。
【0077】
従って、このような電子キーシステム1によれば、複数の携帯機3が認証要求信号の受信可能エリア内に存在する場合に、受信したIDと自己が有するIDとが一致する携帯機3のみが認証応答信号を送信するので、このスマートセキュリティ制御装置5に無関係な(IDが異なる)携帯機3が認証応答信号を送信することによる混信を防止することができる。
【0078】
さらに、スマートセキュリティ制御装置5は、車両に搭載されている。
従って、このような電子キーシステム1によれば、車両(スマートセキュリティ制御装置5)の現在地によって妨害ノイズの周波数が変化するので、応答周波数を変更することができることによる効果をより享受することができる。
【0079】
また、スマートセキュリティ制御装置5は、車両の現在地を検出するGPS受信機11と、GPS受信機11による検出結果に応じて、応答周波数として使用可能または使用不可能な周波数と車両の現在地とが予め対応付けて記録された不具合情報(周波数データ)を参照することにより、使用可能な周波数を特定する。そして、スマートセキュリティ制御装置5は、特定した使用可能な周波数を応答周波数に指定した指定要求信号を携帯機3に対して送信する。
【0080】
従って、このような電子キーシステム1によれば、不具合情報を活用することにより、使用可能な周波数を初めに応答周波数に設定することができるので、初回に認証が成功する確率を向上させることができる。よって、認証に必要となる時間を短縮することができる。
【0081】
さらに、スマートセキュリティ制御装置5は、各IDが一致すると判定された場合に、直前に指定した応答周波数の情報をGPS受信機11による検出結果とともに不具合情報として不具合情報記録部33、およびデータセンタ25に記録する。
【0082】
このような電子キーシステム1によれば、不具合情報を蓄積したデータベースを構築することができる。
また、スマートセキュリティ制御装置5は、スマートセキュリティ制御装置5の外部と通信を行う通信部13を備え、不具合情報を記録するデータセンタ25が通信部13を介してスマートセキュリティ制御装置5と通信可能に構成されている。
【0083】
従って、このような電子キーシステム1によれば、他の制御装置がデータセンタ25から不具合情報を取得することにより、不具合情報を複数のスマートセキュリティ制御装置5の間で共有することができるので、より効率的に認証を実施することができる。
【0084】
また、スマートセキュリティ制御装置5は、各IDが一致すると判定した場合に、予め設定されたドアロック制御装置29を作動させる。
従って、このような電子キーシステム1によれば、各IDが一致すると判定された場合(つまり、認証に成功した場合)に、ドアロック制御装置29を作動させることができる。よって、例えば、認証結果に応じて施錠、解錠を実施するようにすれば、正規の携帯機3を所持した使用者のみに、確実に入場を許可するシステムを構築することができる。
【0085】
なお、本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
例えば、本実施例において、スマートセキュリティ制御装置5は、スマートエントリ制御処理の際にデータセンタ25と通信を行い、不具合情報を取得するよう構成したが、スマートエントリ制御処理の際に限らず、任意のタイミングでデータセンタ25と通信を行い、不具合情報を取得するようにしてもよい。
【0086】
また、携帯機3は、指定要求信号を受信すると、受信応答信号を送信することなく、認証応答信号を送信するようにしてもよい。
さらに、スマートセキュリティ制御装置5は、応答周波数(チャンネル)を変更した指定要求信号を送信する際に、携帯機3が受信可能な周波数の範囲で各要求信号を送信する送信周波数を、前回指定要求信号を送信した送信周波数とは異なる送信周波数に変更してもよい。この場合には、応答周波数を変更するとともに、指定要求信号を送信する送信周波数を変更するので、より確実に混信を回避することができる。よって、より確実に認証を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施形態の車両用電子キーシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】スマートエントリ制御処理を示すフローチャートである。
【図3】応答処理を示すフローチャートである。
【図4】携帯機とスマートセキュリティ制御装置との信号のやりとりを説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0088】
1…電子キーシステム、3…携帯機、5…スマートセキュリティ制御装置、7…送信機、9…受信機、11…GPS受信機、13…通信部、15…ドア開検出スイッチ、17…ドアロックセンサ、21…基地局、23…インターネット網、25…データセンタ、27…ドアロックモータ、29…ドアロック制御装置、31…マイコン、33…不具合情報記録部、35…スマートスイッチ、37…マイコン、39…受信部、41…送信部、43…ロック用ボタン、45…アンロック用ボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と該制御装置の使用者に所持される認証媒体とが無線通信によって認証を実施する認証システムであって、
前記制御装置は、
自己の操作部が操作されると、応答周波数を指定した指定要求信号を前記認証媒体に対して送信する指定要求送信手段と、
前記指定要求送信手段により指定要求信号が送信されてから予め設定された許容時間以内に前記指定要求信号に対する何らかの信号が無線受信できない場合に、前記応答周波数を異なる周波数に変更した指定要求信号を前記指定要求送信手段に送信させる周波数変更手段と、
前記認証媒体を特定する識別子を含む認証応答信号を無線受信すると、該受信した認証応答信号に含まれる識別子と自己が有する識別子とが一致するか否かを判定する制御判定手段と、
を備え、
前記認証媒体は、
前記指定要求信号を無線受信すると複数の周波数から該指定要求信号により指定された応答周波数を選択する周波数選択手段と、
前記周波数選択手段による応答周波数の選択後に、前記選択された応答周波数で、当該認証媒体を特定する識別子を含む認証応答信号を前記制御装置に対して無線送信する認証応答送信手段と、
を備えたことを特徴とする認証システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記指定要求信号を受信した旨を表す受信応答信号を前記認証媒体から受信すると、前記認証応答信号を要求する認証要求信号を前記認証媒体に対して無線送信する認証要求送信手段、
を備え、
前記認証媒体は、
前記周波数選択手段により応答周波数が選択されると、前記受信応答信号を前記制御装置に対して送信する受信応答送信手段、
を備え、
前記認証応答送信手段は、前記認証要求信号を受信すると、前記認証応答信号を前記制御装置に対して無線送信すること
を特徴とする請求項1に記載の認証システム。
【請求項3】
前記制御装置の認証要求送信手段は、当該制御装置が有する識別子を前記認証要求信号に含めて送信し、
前記認証媒体は、
受信した認証要求信号に含まれる識別子と自己が有する識別子とが一致するか否かを判定する認証判定手段、
を備え、
前記認証応答送信手段は、前記認証判定手段により受信した識別子と自己が有する識別子とが一致すると判定された場合に、前記認証応答信号を前記制御装置に対して無線送信すること
を特徴とする請求項2に記載の認証システム。
【請求項4】
前記制御装置は、移動可能な移動物体に搭載されていること
を特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の認証システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記移動物体の現在地を検出する現在地検出手段と、
前記現在地検出手段による検出結果に応じて、前記応答周波数として使用可能または使用不可能な周波数と移動物体の現在地とが予め対応付けて記録された周波数データを参照することにより、使用可能な周波数を特定する周波数特定手段と、
を備え、
前記指定要求送信手段は、前記周波数特定手段により特定された使用可能な周波数を前記応答周波数に指定した指定要求信号を前記認証媒体に対して送信すること
を特徴とする請求項4に記載の認証システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記制御判定手段により前記各識別子が一致すると判定された場合に、前記指定要求送信手段が直前に指定した応答周波数の情報を前記現在地検出手段による検出結果とともに前記周波数データとしてデータ記録手段に格納するデータ格納手段
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の認証システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
当該制御装置の外部と通信を行う通信手段
を備え、
前記データ記録手段は、少なくとも前記通信手段を介して前記制御装置と通信可能にされたデータセンタに設けられたこと
を特徴とする請求項6に記載の認証システム。
【請求項8】
前記周波数変更手段は、前回指定要求信号を送信した送信周波数とは異なる送信周波数で前記指定要求信号を前記指定要求送信手段に送信させること
を特徴とする請求項1〜請求項7の何れかに記載の認証システム。
【請求項9】
前記制御判定手段により前記各識別子が一致すると判定された場合に、予め設定された被制御対象を作動させる作動制御手段
を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項8の何れかに記載の認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−190173(P2008−190173A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24342(P2007−24342)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】