説明

誘導体の合成方法、化合物ライブラリー及びその作製方法、並びに、スクリーニング方法

【課題】HTSによるランダムスクリーニング、医薬品又は農薬品の探索、及び医薬品又は農薬品のリード化合物の探索などに有用な、天然化合物の誘導体を合成する方法、天然化合物の誘導体を含む化合物ライブラリーの作製方法、及び天然化合物の誘導体を含む化合物ライブラリー、並びに、化合物ライブラリーを用いたスクリーニング方法を提供すること。
【解決手段】有機化合物を生産する微生物を所定の培養液で培養し、培養により得られた有機化合物と、前記有機化合物の誘導体を合成するための反応試薬とを、前記培養液中で反応させることにより、前記有機化合物の誘導体を合成することができる。このようにして得られた有機化合物の誘導体をライブラリー化することにより、HTS(ハイスループット)によるランダムスクリーニング、医薬品又は農薬品の探索、及び医薬品又は農薬品のリード化合物の探索などが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物が生産する有機化合物の誘導体の合成方法、前記誘導体を含む化合物ライブラリー及びその作製方法、並びに前記化合物ライブラリーを用いたスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や農薬の開発において、リード化合物などの生理活性物質を探索するために、市販の化合物ライブラリーや、コンビナトリアルシンセシスによる化合物ライブラリー(例えば、特許文献1及び2参照)などを用いたスクリーニングが行われている(例えば、特許文献3〜5参照)が、有用な化合物が効率よく見出されないのが現状である。
【0003】
一方、微生物の培養液から単離・精製された天然化合物のライブラリーからは、多くの医薬品や医薬品のリード化合物(例えば、ペニシリン、タクロリムス(FK-506)、プラバスタチンなど)が見出されている。このように、天然化合物は活性の多様性や構造のユニークさを有していることから、天然化合物のライブラリーはリード化合物を探索する上で、極めて有用であると考えられている。
【0004】
また、天然化合物を化学的に修飾した誘導体の中には、天然化合物より生理活性が優れているものや、毒性が弱いもの、又は副作用が少ないものが見出されており、天然化合物の誘導体のライブラリーも、優れた医薬品を効率よく探索する上で有用であるとされており、天然化合物の誘導体を含むライブラリーの構築が求められている。
【特許文献1】特表2001−518053号公報
【特許文献2】特表2002−502393号公報
【特許文献3】特表2002−514612号公報
【特許文献4】特表2002−517474号公報
【特許文献5】特表2003−521673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、天然化合物は単離・精製に時間がかかるだけでなく、医薬品として有用なリード化合物を見出すことが困難であることから、天然化合物やその誘導体をライブラリー化することは困難であった。
【0006】
また、ライブラリーを構築するための天然化合物の誘導体の合成においては、天然化合物を単離した場合、その化合物に適した修飾方法を特定するため、その構造を明らかにする必要があり、また、誘導体を合成する際の反応条件を検討する必要があるため、誘導体の合成に時間がかかるという問題があった。そのため、迅速な誘導体の合成方法の開発が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、HTS(ハイスループット)によるランダムスクリーニング、医薬品又は農薬品の探索、及び医薬品又は農薬品のリード化合物の探索などに有用な、天然化合物の誘導体を合成する方法、天然化合物の誘導体を含む化合物ライブラリーの作製方法、及び天然化合物の誘導体を含む化合物ライブラリー、並びに、化合物ライブラリーを用いたスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、天然化合物やその誘導体をライブラリー化することを試みた。まず、下式(1)で表される化合物を合成するStreptomyces sp. MK929-43F1を培養した培養液に、反応試薬として、化合物を酸化させるジョーンズ(Jone’s)試薬又は化合物をエポキシ化させるアセトン/オキソン モノパーサルフェートを添加して反応させた。その後、酢酸エチルで培養液から抽出した抽出物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分画する一方、反応試薬と反応させていない前記培養液の抽出物をHPLCで分画し、それらの分離パターンを比較することにより、反応試薬を反応させた培養液の抽出物には含まれており、反応試薬を反応させていない培養液の抽出物には含まれていない物質を同定して回収した。この回収した物質の構造を解析した結果、ジョーンズ試薬を反応させた培養液からは、下式(1)で表される化合物の酸化物(下式(2))が得られ、アセトン/オキソン モノパーサルフェートを反応させた培養液からは、下式(1)で表される化合物がエポキシ化された化合物(下式(3))が得られることを見出した。
【0009】
このことから、培養液に誘導体を合成するための反応試薬を添加すれば、微生物が生産する有機化合物の誘導体を迅速に得られることが明らかとなり、こうして、本発明者らは本発明を完成するに至った。
【化1】

【0010】
すなわち、本発明に係る方法は、微生物が生産する有機化合物の誘導体を合成する方法であって、前記微生物を所定の培養液を用いて培養し、前記微生物の培養により得られた有機化合物と、前記有機化合物の誘導体を合成するための反応試薬とを、前記培養液中で反応させることを含む。なお、前記有機化合物と前記反応試薬との反応は、前記反応試薬を含む前記培養液中で前記微生物を培養することにより行うこととしてもよいし、前記反応試薬を実質的に含まない前記培養液中で前記微生物を培養することにより前記有機化合物を生産させ、前記微生物を培養した培養液に前記反応試薬を添加することにより行うこととしてもよい。
【0011】
また、本発明に係る方法は、微生物が生産する有機化合物を反応試薬と反応させることにより合成される前記有機化合物の誘導体を含む化合物ライブラリーの作製方法であって、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液に含まれているが、前記反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれていない化合物を回収し、前記化合物ライブラリーの構成要素とすることを含む。
【0012】
さらに、本発明に係る化合物ライブラリーは、微生物が生産する有機化合物を反応試薬と反応させることにより合成される前記有機化合物の誘導体を含む化合物ライブラリーであって、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液に含まれているが、前記反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれていない化合物を回収し、前記化合物ライブラリーの構成要素とすることにより作製することができる。
【0013】
また、本発明に係るスクリーニング方法は、微生物が生産する有機化合物を反応試薬と反応させることにより合成される前記有機化合物の誘導体を含む化合物ライブラリーを用いた生理学的活性を有する化合物のスクリーニング方法であって、前記化合物ライブラリーは、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液に含まれているが、前記反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれていない化合物を回収し、前記化合物ライブラリーの構成要素とすることにより作製されることを含む。
【0014】
さらに、本発明に係るスクリーニング方法は、微生物が生産する有機化合物を反応試薬と反応させることにより合成される前記有機化合物の誘導体を含む化合物ライブラリーを用いた治療薬のスクリーニング方法であって、前記化合物ライブラリーの個々の化合物をヒト以外の疾患モデル動物に投与し、前記化合物の投与により前記疾患の症状が改善されたかどうかを評価する工程を含み、前記化合物ライブラリーは、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液に含まれているが、前記反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれていない化合物を回収し、前記化合物ライブラリーの構成要素とすることにより作製されることを含む。
【0015】
なお、上述の反応試薬を実質的に含まない培養液は、上述の微生物を培養するための培養液であって、上述の微生物の培養を行う前の培養液であっても、培養した後の培養液であってもよい。また、上述の、反応試薬を含む微生物を培養した培養液に含まれているが、反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれていない化合物の回収は、反応試薬を含む微生物を培養した培養液に含まれている化合物及び反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれている化合物をそれぞれ分画することにより同定して行うこととしてもよい。また、上述の反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液は、反応試薬を含む培養液中で微生物を培養することにより有機化合物と反応試薬との反応を行うことにより得ることとしてもよいが、反応試薬を実質的に含まない培養液中で微生物を培養することにより有機化合物を生産させ、微生物が生産した有機化合物を含む培養液に反応試薬を添加することにより有機化合物と反応試薬との反応を行うことにより得ることとしてもよい。
【0016】
また、上述の微生物としては、例えば、有機化合物の生産過程に関与する遺伝子に変異を生じさせた変異体であってもよいが、有機化合物の生産過程に関与する遺伝子操作を施した形質転換体であってもよい。前記有機化合物の生産過程に関与する遺伝子に変異が生じた変異体としては、例えば、紫外線照射、X線照射、若しくは化学薬品投与により、人為的に変異が導入された変異体であってもよいが、自然突然変異体(spontaneous mutant)であってもよい。
【0017】
なお、本明細書において「微生物」とは、微小な生物のことであり、例えば、古細菌類、真正細菌類、アーケゾア類、原生動物類、クロミスタ類、菌類(真菌類)、微小な動植物などを含む。古細菌類は、別名、始原菌や後生細菌とも呼ばれ、例えば、高度好塩菌、好熱古細菌、メタン菌(メタン生成古細菌)などを含む。また、真正細菌類は、例えば、大腸菌、放線菌など殆どの細菌がここに含まれる。アーケゾア類とは、分子酵素(ペルオキシソーム)なしで生きられる真核生物を意味し、例えば、トリコモナス、エンテロモナス、オキシモナス、微胞子虫、ネグレリア、ディプロモナスなどが含まれる。原生動物類とは単核単細胞生物を意味し、例えば、藻類、ミズカビ類、変形菌(真正粘菌)、細胞性粘菌などが含まれる。クロミスタ類とは、葉緑体が2枚の葉緑体膜(chloroplast envelope)の外側にさらに2枚の膜があって、合計4枚の膜に包まれることを特徴とする生物群を意味し、例えば、サカゲツボカビ、卵菌、ラビリンチュラなどが含まれる。菌類(真菌類)は、子嚢菌、接合菌、担子菌、不完全菌などを含み、例えば、カビ類、キノコ類、酵母類がこれに含まれる。なお、本発明の技術的範囲に含まれる微生物とは、ここに示された生物種に限られず、培養など上記生物種と同様な処理ができれば、どのような生物種であってもよい。
【0018】
上述の反応試薬としては、例えば、酸化反応試薬、還元反応試薬、エポキシ化反応試薬、ジヒドロキシ化反応試薬、酸化的解裂反応試薬、水素添加反応試薬、エーテル化反応試薬、ハロゲン化反応試薬、ニトロ化反応試薬、スルホン化反応試薬、ジアゾ化反応試薬、アルドール反応試薬、及びアルキル化反応試薬からなるグループから選ばれる1又は2以上の試薬を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
ここで、「反応試薬」とは、微生物が生産する有機化合物に反応し、誘導体を合成する試薬をいう。
【0020】
特に、「酸化反応試薬」、「還元反応試薬」、「エポキシ化反応試薬」、「ジヒドロキシ化反応試薬」、「エーテル化反応試薬」、「ハロゲン化反応試薬」、「ニトロ化反応試薬」、「スルホン化反応試薬」、「ジアゾ化反応試薬」、「アルキル化反応試薬」とは、微生物が生産する有機化合物のような反応基質を、それぞれ、酸化、還元、エポキシ化、ジヒドロキシ化、エーテル化、ハロゲン化、ニトロ化、スルホン化、ジアゾ化、アルキル化する試薬をいう。
【0021】
また、「酸化的開裂反応試薬」とは、有機化合物を酸化して開裂させる試薬をいう。「水素添加反応試薬」とは、微生物が生産する有機化合物の官能基を水素に置換したり、微生物が生産する有機化合物に水素を付加したりする試薬をいう。また、「アルドール反応試薬」とは、微生物が生産する有機化合物のケトンやアルデヒドに、同一または異なる構造を有するケトンやアルデヒドまたはエステル等を求核付加させて、アルドールまたはアルドールから容易に導かれる化合物を生成させる試薬をいう。
【0022】
なお、これらの試薬は、上記作用を有する試薬であれば何でもよく、例えば、対象とする有機化合物と直接反応する化合物を含んでいても、触媒作用を有する化合物を含んでいても、また両方含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、HTS(ハイスループット)によるランダムスクリーニング、医薬品又は農薬品の探索、及び医薬品又は農薬品のリード化合物の探索などに有用な、微生物産生物質の誘導体を合成する方法、微生物産生物質の誘導体を含むライブラリーの作製方法、及び微生物産生物質の誘導体を含む化合物ライブラリー、並びに、化合物ライブラリーを用いたスクリーニング方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
【0025】
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0026】
まず、目的となる有機化合物の誘導体を合成するために、微生物を所定の培養液を用いて培養し、微生物の培養により得られた有機化合物と、有機化合物の誘導体を合成するための反応試薬とを、前記培養液中で反応させる。
【0027】
本発明で使用する微生物は、培養条件下で代謝産物として有機化合物を生産する微生物であれば、真菌類(広くカビ・キノコ・酵母の類)、細菌類(原核単細胞生物)、変形菌類(真正粘菌)のいずれでもよい。例えば、子嚢菌類(酵母、アカパンカビ・アオカビ・コウジカビ、チャワンタケ・トリュフなど)、接合菌類(ケカビ、ミズタマカビなど)、担子菌類(マツタケ、キクラゲなど)、不完全菌類(ボトリシスなど)、ツボカビ類(以上、真菌類);真正細菌類(例えば、大腸菌、放線菌など)、古細菌類(以上、細菌類);変形菌類(ムラサキホコリカビなど)、などに含まれる種であれば、属や種を問わない。また、野生株の他、有機化合物の生産過程に関与する遺伝子に変異が生じた変異株を用いることにより、微生物が生産する有機化合物に多様性を与えることもできる。この変異株は、紫外線、X線、化学薬剤などにより人為的に変異を導入した変異体でもよく、有機化合物の生産過程に関与する遺伝子に対し、遺伝子操作を施した遺伝子を導入した形質転換体でもよく、自然突然変異体(spontaneous mutant)であってもよい。
【0028】
これら微生物の培養は、それぞれの微生物に対して通常用いられている培養方法によって行えばよい。培養に用いられる培養液は、使用する微生物が生育可能な培地であればよく、合成培地、半合成培地あるいは天然培地を用いることができる。培地に添加する栄養物としては、微生物の栄養源として公知のものを使用できる。例えば,炭素源としては,市販されている糖蜜、グルコース、マルトース、フルクトース、マンニトール、ポテトスターチ、コーンスターチ、デキストリン、可溶性デンプン等の炭水化物あるいは油脂、脂肪類などが、窒素源としては、市販されているペプトン類、肉エキス類、コーンスティープリカー、綿実粕、落花生粉、大豆粉、酵母エキス、NZ−アミン、小麦胚芽、カゼイン類、魚粉、及び硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の無機又は有機の窒素源が用いられる。また金属塩としては、Na、K、Mg、Ca、Zn、Fe、Mn、Co、Cu等の硫酸鉛、塩酸塩、硝酸塩、燐酸塩、炭酸塩等を必要に応じて添加できる。さらに必要に応じてバリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、リジン、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸や、ビタミン類、オレイン酸、オレイン酸メチル、ラード油、シリコン油、界面活性剤等の二次代謝物生産促進物質又は消泡剤を適宜使用できる。これらのもの以外でも微生物が利用し、2次代謝産物の生産に役立つものであれば、いずれの添加物も使用することができる。培養法としては、2次代謝産物の製造等における微生物培養法と同様に行えば良く、その培養方法は固体培養でも液体培養でも良い。液体培養の場合は静置培養、振とう培養、攪拌培養のいずれを実施してもよい。
【0029】
このような培養条件下で、微生物を培養することにより、2次代謝産物である有機化合物が生産する。そして、培養液中で有機化合物の誘導体を合成するための反応試薬をこの有機化合物と反応させることにより、有機化合物の誘導体を得ることができる。このようにして得られる誘導体は、ユニークな構造を保持した新規化合物の可能性が極めて高く、また、天然にはない活性を有することも期待できる。
【0030】
以下に反応の種類とその反応に用いられる試薬の例を挙げるが、2次代謝産物である有機化合物の官能基や骨格を変換できるものであれば良く、ここに記載した反応の種類や試薬に限定されるものではない。また、それぞれの反応を2段階以上組み合わせることも出来る。
【0031】
酸化反応(試薬)
1)アルコールの酸化反応(CrO3-H2SO4(Jone’s試薬)、KMnO4, Na2CrO7, NaOCl-TEMPOなど)
2)ベンジル位やまたはアリル位の酸化反応(CrO3-AcOH, O2/触媒など)
3)Baeyer-Villiger反応(過酸化物など)
還元反応(試薬)
4)カルボニル化合物(アルデヒドまたはケトン)の還元反応(NaBH4, NaBH3CN, LiAlH4, H2/触媒(例えばRh, Ru, Pd)など)
エポキシ化反応(試薬)
5)オレフィンのエポキシ化反応(過酸(過酢酸, メタクロロ過安息香酸など)、H2O2/catalyst, オキソン−アセトンなど)
ヒドロキシ化反応(試薬)
6)オレフィンのジヒドロキシ化反応(OsO4, KMnO4, R-CO3H/H+など)
酸化的開裂反応(試薬)
7)オレフィンの酸化的開裂反応(O3, NaIO4など)
水素添加反応(試薬)
8)オレフィンの水素添加反応(H2/ Pd or Pt, RaneyNiなど)
エーテル化反応(試薬)
9)アルコールのエーテル化反応((CH3)2SO4, ICH2CO2H, N-ethylmaleimide)
ハロゲン化反応(試薬)
10)芳香環やオレフィンのハロゲン化反応(F2, XeF2, Cl2, Br2, I2, HCl, HBr, HOCl)
ニトロ化反応(試薬)
11)芳香環のニトロ化(HNO3/H2SO4
スルホン化反応(試薬)
12)芳香環のスルホン化反応(SO3/H2SO4
ジアゾ化反応試薬
13)アミンのジアゾ化反応(NaNO2/H+
アルドール反応試薬
14)アルドール反応(ルイス酸/シリルエノールエーテル)
アルキル化反応試薬
15)ケトンのアルキル化反応(R-MgX, RLi)
16)カルボニルのα位のアルキル化反応(塩基/R-X)
【0032】
これらの反応試薬と2次代謝産物である有機化合物とを培養液中で反応させるには、あらかじめ添加された反応試薬を含む培養液中で微生物を培養してもよく、また、反応試薬を実質的に含まない培養液中で微生物を培養し、この微生物を培養した培養液に反応試薬を添加してもよい。培養後に反応試薬を添加する後者の方法には、例えば、微生物培養液にそのまま合成試薬を添加する方法や、微生物を含む微生物培養液又は遠心分離あるいは培養物に濾過助剤を加えて濾過して得られた培養濾液に酢酸エチル、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、エーテル等の水と混和しない有機溶剤を加えて得られた抽出液に合成試薬を添加して合成反応を行う方法等がある。
【0033】
このように、微生物が生産する有機化合物を、様々な反応試薬と反応させることにより合成される有機化合物の誘導体を回収することにより、化合物ライブラリーを作製することができる。例えば、反応試薬を含む微生物を培養した培養液に含まれているが、反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれていない化合物を同定して回収すれば、有機化合物の誘導体が濃縮されたライブラリーを作製することができる。特に、反応試薬を実質的に含まない培養液として、微生物を培養する前の培養液を用いることにより、ライブラリーに、微生物が生産する有機化合物の誘導体のみならず、有機化合物自体を含ませることができる。また、反応試薬を実質的に含まない培養液として、微生物を培養した後ではあるが反応試薬を添加していない培養液を用いることにより、主に微生物が生産する有機化合物の誘導体を同定することができ、そのような誘導体を高頻度に含むライブラリーを作製することができる。
【0034】
微生物の生産した有機化合物及び/又は有機化合物の誘導体を同定し、単離する方法としては、例えば、シリカゲル、ODS、トヨパールHW-40等を用いたカラムクロマトグラフィー、遠心液々分配クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 等の常法がある。これらの方法を用いて、反応試薬を含む微生物を培養した培養液に含まれている化合物と、反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれている化合物をそれぞれ分画し、それらの分画パターンを比較することにより、回収すべき有機化合物及び/又は有機化合物の誘導体を同定することができ、また単離も容易に行うことができる。
【0035】
なお、回収した化合物は、目的により、混合して用いてもよく、また、別々に用いてもよい。例えば、生理活性のある化合物を同定するのに、個々の化合物をアッセイするのに手間がかかる場合、以下のような方法を用いればよい。まず、ライブラリーをいくつかのプールに分け、その中から活性を有するプールを同定する。さらに、そのプールにふくまれる化合物をいくつかのサブプールに分け、同様に、活性のあるサブプールを同定する。これを繰り返すことにより、少ないアッセイ回数で目的の化合物を同定することが可能となる。
【0036】
ライブラリーの構成要素とする化合物は、マススペクトル、多重マススペクトル、紫外および可視吸収スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル、炭素13核磁気共鳴スペクトル、赤外部吸収スペクトル、X線結晶スペクトルなどを用いた公知の構造解析方法、あるいはこれらを組み合わせた方法によって構造を決定できる。こうして構造を決定した化合物は、減圧下で乾固して冷暗所たとえば冷蔵庫で保存できる。
【0037】
このライブラリーを用いて、生理学的活性を有する化合物を得ることを目的に様々なスクリーニングを行うことができる。前記生理学的活性を有する化合物としては、例えば、酵素阻害剤、リガンド/受容体結合阻害剤、血管新生作用阻害剤、細胞接着阻害剤、遺伝子発現阻害剤、増殖因子様活性物質などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、前記酵素阻害剤は、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤、サイクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤、テロメアーゼ阻害剤、マトリックスタロプロテアーゼ阻害剤、プロスタグランジンD合成阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、コリンエステラーゼ阻害剤、ウイルスプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤などである。また、前記受容体は、例えば、アドレナリン受容体、ヒスタミン受容体、ロイコトリエン受容体、オピオイド受容体などである。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び図を用いてより詳細に説明する。なお、実施例において、核磁気共鳴スペクトル(1H-NMRおよび13C-NMR)はJNM-AL300(日本電子製)を用いて測定した。また、各反応は特に記載のない限り、アルゴン中で反応を行った。
【0039】
[実施例1]
上述の式(1)で表される化合物(マイグラスタチン)を合成するStreptomyces sp. MK929-43F1を培養液(2% デキストリン、2% グリセロール、1% ソイペプトン、0.3% 酵母エキス、0.2% 硫酸アンモニウム、0.2% 炭酸カルシウム、pH 7.4)中で27℃,4日間培養し、遠心分離により上清を得た。得られた培養上清 60μlに164 mg/ml ジョーンズ試薬 30μlを加え、25℃で1分間撹拌した。なお、コントロールとして、ジョーンズ試薬を加えない濾液を準備した。撹拌後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 180μl加え、中和し、酢酸エチル 720μlで抽出した。その後、抽出物を減圧濃縮して乾燥させ、乾固物をメタノール 300μlに溶解し、得られた粗生成物を高速液体クロマトグラフィー(カラム;SenshuPAK ODS C18 150 mm×4.6φ,溶出系;アセトニトリル:水=50:50)にて分離し、UV検出器(島津制作所社製,UV 220 nm)で分離パターンを得た(図1参照)。これらの分離パターンを比較して、ジョーンズ試薬を反応させた培養液の抽出物には含まれており、ジョーンズ試薬を反応させていない培養液の抽出物には含まれていない物質を同定して回収し、この物質の構造をNMRにより解析したところ(図2参照)、式(1)で表される化合物の酸化物(上述の式(2)で表される化合物:酸化マイグラスタチン)であることがわかった。このように、ジョーンズ試薬を用いることにより、有機化合物の酸化物を得ることができた。
【0040】
[実施例2]
実施例1の濾液60μlから酢酸エチル720μlにより抽出した抽出物を減圧濃縮して乾燥させ、得られた乾固物をアセトン100μlに溶解した。その後、NaHCO3 1mgを加えて飽和させ、さらに、20mg/ml オキソン モノパーサルフェート(アセトンに溶解) 100μlを加え、室温で3時間撹拌した。なお、コントロールとして、アセトン/オキソン モノパーサルフェートを加えない溶液を準備した。撹拌後、酢酸エチル 600μlで抽出し、抽出物を減圧濃縮して乾燥させ、乾固物をメタノール 300μlに溶解し、得られた粗生成物を高速液体クロマトグラフィー(カラム;SenshuPAK ODS C18 150 mm×4.6φ,溶出系;アセトニトリル:水=50:50)にて分離し、UV検出器(島津制作所社製,UV 220 nm)で分離パターンを得た(図1参照)。これらの分離パターンを比較して、アセトン/オキソン モノパーサルフェートを反応させた培養液の抽出物には含まれており、アセトン/オキソン モノパーサルフェートを反応させていない培養液の抽出物には含まれていない物質を同定して回収し、この物質の構造をNMRにより解析したところ(図3参照)、式(1)で表される化合物がエポキシ化された化合物(上述の式(3)で表される化合物:エポキシマイグラスタチン)であることがわかった。このように、アセトン/オキソン モノパーサルフェートを用いることにより、有機化合物がエポキシ化された化合物を得ることができた。
【0041】
[実施例3]
従来、マイグラスタチンが腫瘍細胞の遊走能を阻害することが知られている。そこで、実施例1で得られた酸化マイグラスタチンが腫瘍細胞の遊走能を阻害することができるかどうかを確認するために以下の実験を行った。
【0042】
48ウェルプレートの各ウェルに、ヒト食道癌由来EC17細胞の懸濁液(1.5×105個/ml;RPMI1640培地(ニッスイ))を500μlずつ添加し、37℃で24時間培養した。その後、各ウェルの底面の中央を一直線にマイクロピペットチップで傷をつけ、細胞を直線上にはがした。その後、直ちに培養液上清を除去し、PBS-(8 g/l NaCl, 0.2 g/l KCl, 0.916 g/l Na2HPO4, 0.2 g/l KH2PO4)300μlで細胞をはがさないように注意しながら洗浄して1%の血清(FBS;Tissue Culture Biologicals社製)を含むRPMI1640培地500μlを静かに注入した。それから、マイグラスタチン又は酸化マイグラスタチンを添加し、37℃で24時間培養した。なお、コントロールとして、マイグラスタチン又は酸化マイグラスタチンを添加しない培養液で培養したものも準備した。培養後、顕微鏡下で観察し、マイクロピペットチップで傷つけた傷が周囲から遊走してきた細胞によってどの程度埋められたかを確認し、細胞の遊走能を評価した。その結果を図4に示す。
【0043】
図4に示すように、コントロールではEC17細胞の培養プレートに傷を付け(0 h)、24時間培養すると細胞が遊走して傷が埋まるが、傷を付けると同時に(0 h)マイグラスタチンを添加すると、濃度依存的に細胞の遊走能が阻害され、30μg/mlの濃度では完全に阻害されることがわかった。また、傷を付けると同時に酸化マイグラスタチンを添加した場合もほぼ同じ濃度域でマイグラスタチンと同様の阻害効果を示した。
【0044】
以上のことから、マイグラスタチンの誘導体である酸化マイグラスタチンもマイグラスタチンと同様に腫瘍細胞の遊走能を阻害することができることが明らかになった。また、ある化合物の誘導体が、もとの化合物と同様の活性を有する場合があることが明らかになった。
【0045】
[実施例4]
次に、マイグラスタチンが有するATP合成の抑制作用を、酸化マイグラスタチンも有するか否かを確認するために以下の実験を行った。
【0046】
24ウェルプレートの各ウェルに、ヒト大腸癌由来のHT-29細胞の懸濁液(4×105個/ml;RPMI1640培地)を1 mlずつ添加し、37℃で24時間培養した。その後、マイグラスタチン又は酸化マイグラスタチンを添加し、3時間培養した。なお、コントロールとして、マイグラスタチン又は酸化マイグラスタチンを添加しないで培養した培養液も準備した。培養後、氷冷したPBS-で2回洗浄した後、2% トリクロロ酢酸を200μl加え、4℃で30分静置した。この上清160μlに対し、0.5N NaOHを36.8μl添加して中和させたものをサンプルとした。4mM MgCl2を含むPBS- 3 mlにこのサンプルを160μl加え、これに4 mg/ml ルシフェラーゼ―ルシフェリン(Sigma)を40μl加えて、直ちに液体シンチレーションカウンター(LS-5000TD: BECKMAN COULTER)のシングルフォトンモニターでATP量を測定した。なお、ブランク値は、サンプル及びルシフェラーゼ―ルシフェリンを加えない条件で測定し、全てのデータから差し引いた。その結果を図5に示す。
【0047】
図5に示すように、マイグラスタチンが細胞遊走を阻害する濃度域でATP合成を抑制するが、酸化マイグラスタチンはその濃度域でATP合成を全く抑制しないことが明らかになった。このことから、マイグラスタチンのヒドロキシル基を酸化させると、ATP合成の抑制作用がなくなることがわかった。また、マイグラスタチンのヒドロキシル基の部分がATP合成の抑制作用に重要であることが示唆された。以上のことから、ある化合物の誘導体が、もとの化合物の活性を有しない場合があることが明らかになり、このことは、本発明に係るスクリーニング方法が、例えば、副作用を有しない化合物を得る等、異なる活性を有する化合物を得るのに役立つことが示唆された。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例において、ジョーンズ試薬及びアセトン/オキソン モノパーサルフェートを反応させていないStreptomyces sp. MK929-43F1の培養液の抽出物(上段)と、ジョーンズ試薬を反応させたStreptomyces sp. MK929-43F1の培養液の抽出物(中段)と、アセトン/オキソン モノパーサルフェートを反応させたStreptomyces sp. MK929-43F1の培養液の抽出物(下段)との分離パターンを示す図である。
【図2】本発明の一実施例において、ジョーンズ試薬を反応させたStreptomyces sp. MK929-43F1の培養液の抽出物に含まれている物質の構造を1H-NMRにより解析した結果を示す図である。
【図3】本発明の一実施例において、アセトン/オキソン モノパーサルフェートを反応させたStreptomyces sp. MK929-43F1の培養液の抽出物に含まれている物質の構造を1H-NMRにより解析した結果を示す図である。
【図4】本発明の一実施例において、マイグラスタチン及び酸化マイグラスタチンの細胞遊走能の阻害活性を調べた結果を示す図である。
【図5】本発明の一実施例において、マイグラスタチン及び酸化マイグラスタチンがATP合成に対して及ぼす影響を調べた結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物が生産する有機化合物の誘導体を合成する方法であって、
前記微生物を所定の培養液を用いて培養し、
前記微生物の培養により得られた有機化合物と、前記有機化合物の誘導体を合成するための反応試薬とを、前記培養液中で反応させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記反応試薬を含む前記培養液中で前記微生物を培養することにより、
前記有機化合物と前記反応試薬とを反応させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応試薬を実質的に含まない前記培養液中で前記微生物を培養することにより前記有機化合物を生産させ、
前記微生物を培養した培養液に前記反応試薬を添加することにより、前記有機化合物と前記反応試薬とを反応させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記微生物が、前記有機化合物の生産過程に関与する遺伝子に変異が生じた変異体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記微生物が、紫外線照射、X線照射、若しくは化学薬品投与により、人為的に変異を導入した変異体であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記微生物が、自然突然変異体(spontaneous mutant)であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記微生物が、前記有機化合物の生産過程に関与する遺伝子操作を施した形質転換体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記微生物が、古細菌類、真正細菌類、原生生物類、菌類からなるグループから選ばれるいずれかの類に属することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記微生物が、子嚢菌類、接合菌類、担子菌類、不完全菌類、変形菌類、及び細胞性粘菌類からなるグループから選ばれるいずれかの類に属することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記微生物が、放線菌であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記反応試薬が、酸化反応試薬、還元反応試薬、エポキシ化反応試薬、ジヒドロキシ化反応試薬、酸化的解裂反応試薬、水素添加反応試薬、エーテル化反応試薬、ハロゲン化反応試薬、ニトロ化反応試薬、スルホン化反応試薬、ジアゾ化反応試薬、アルドール反応試薬、及びアルキル化反応試薬からなるグループから選ばれる1又は2以上の試薬であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
微生物が生産する有機化合物を反応試薬と反応させることにより合成される前記有機化合物の誘導体を含む化合物ライブラリーの作製方法であって、
前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液に含まれているが、前記反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれていない化合物を回収し、前記化合物ライブラリーの構成要素とすることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記反応試薬を実質的に含まない培養液が、前記微生物を培養した培養液であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液に含まれている化合物及び前記反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれている化合物をそれぞれ分画することにより、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液に含まれているが、前記反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれていない化合物を同定して回収することを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記反応試薬を含む前記培養液中で前記微生物を培養することにより前記有機化合物と前記反応試薬との反応を行い、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液を得ることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記反応試薬を実質的に含まない培養液中で前記微生物を培養することにより前記有機化合物を生産させ、
前記微生物が生産した前記有機化合物を含む培養液に前記反応試薬を添加することにより前記有機化合物と前記反応試薬との反応を行い、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液を得ることを特徴とする請求項12〜14に記載の方法。
【請求項17】
前記微生物が、前記有機化合物の生産過程に関与する遺伝子に変異が生じた変異体であることを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記微生物が、紫外線照射、X線照射、若しくは化学薬品投与により、人為的に変異を導入した変異体であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記微生物が、自然突然変異体(spontaneous mutant)であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記微生物が、前記有機化合物の生産過程に関与する遺伝子操作を施した形質転換体であることを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記微生物が、古細菌類、真正細菌類、原生生物類、菌類からなるグループから選ばれるいずれかの類に属することを特徴とする請求項12〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記微生物が、子嚢菌類、接合菌類、担子菌類、不完全菌類、変形菌類、及び細胞性粘菌類からなるグループから選ばれるいずれかの類に属することを特徴とする請求項12〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記微生物が、放線菌であることを特徴とする請求項12〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記反応試薬が、酸化反応試薬、還元反応試薬、エポキシ化反応試薬、ジヒドロキシ化反応試薬、酸化的解裂反応試薬、水素添加反応試薬、エーテル化反応試薬、ハロゲン化反応試薬、ニトロ化反応試薬、スルホン化反応試薬、ジアゾ化反応試薬、アルドール反応試薬、及びアルキル化反応試薬からなるグループから選ばれる1又は2以上の試薬であることを特徴とする請求項12〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
微生物が生産する有機化合物を反応試薬と反応させることにより合成される前記有機化合物の誘導体を含む化合物ライブラリーであって、
前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液に含まれているが、前記反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれていない化合物を回収し、前記化合物ライブラリーの構成要素とすることにより作製することを特徴とする化合物ライブラリー。
【請求項26】
前記反応試薬を実質的に含まない培養液が、前記微生物を培養した培養液であることを特徴とする請求項25に記載の化合物ライブラリー。
【請求項27】
前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液に含まれている化合物及び前記反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれている化合物をそれぞれ分画することにより、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液に含まれているが、前記反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれていない化合物を同定して回収することを特徴とする請求項25または26に記載の化合物ライブラリー。
【請求項28】
前記反応試薬を含む前記培養液中で前記微生物を培養することにより前記有機化合物と前記反応試薬との反応を行い、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液を得ることを特徴とする請求項25〜27のいずれかに記載の化合物ライブラリー。
【請求項29】
前記反応試薬を実質的に含まない培養液中で前記微生物を培養することにより前記有機化合物を生産させ、
前記微生物が生産した前記有機化合物を含む培養液に前記反応試薬を添加することにより前記有機化合物と前記反応試薬との反応を行い、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液を得ることを特徴とする請求項25〜27のいずれかに記載の化合物ライブラリー。
【請求項30】
前記微生物が、前記有機化合物の生産過程に関与する遺伝子に変異が生じた変異体であることを特徴とする請求項25〜29のいずれかに記載の化合物ライブラリー。
【請求項31】
前記微生物が、紫外線照射、X線照射、若しくは化学薬品投与により、人為的に変異を導入した変異体であることを特徴とする請求項30に記載の化合物ライブラリー。
【請求項32】
前記微生物が、自然突然変異体(spontaneous mutant)であることを特徴とする請求項30に記載の化合物ライブラリー。
【請求項33】
前記微生物が、前記有機化合物の生産過程に関与する遺伝子操作を施した形質転換体であることを特徴とする請求項25〜29のいずれかに記載の化合物ライブラリー。
【請求項34】
前記微生物が、古細菌類、真正細菌類、原生生物類、菌類からなるグループから選ばれるいずれかの類に属することを特徴とする請求項25〜33のいずれかに記載の化合物ライブラリー。
【請求項35】
前記微生物が、子嚢菌類、接合菌類、担子菌類、不完全菌類、変形菌類、及び細胞性粘菌類からなるグループから選ばれるいずれかの類に属することを特徴とする請求項25〜33のいずれかに記載の化合物ライブラリー。
【請求項36】
前記微生物が、放線菌であることを特徴とする請求項25〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記反応試薬が、酸化反応試薬、還元反応試薬、エポキシ化反応試薬、ジヒドロキシ化反応試薬、酸化的解裂反応試薬、水素添加反応試薬、エーテル化反応試薬、ハロゲン化反応試薬、ニトロ化反応試薬、スルホン化反応試薬、ジアゾ化反応試薬、アルドール反応試薬、及びアルキル化反応試薬からなるグループから選ばれる1又は2以上の試薬であることを特徴とする請求項25〜36のいずれかに記載の化合物ライブラリー。
【請求項38】
微生物が生産する有機化合物を反応試薬と反応させることにより合成される前記有機化合物の誘導体を含む化合物ライブラリーを用いた生理学的活性を有する化合物のスクリーニング方法であって、
前記化合物ライブラリーは、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液に含まれているが、前記反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれていない化合物を回収し、前記化合物ライブラリーの構成要素とすることにより作製されることを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項39】
前記反応試薬を実質的に含まない培養液が、前記微生物を培養した培養液であることを特徴とする請求項38に記載のスクリーニング方法。
【請求項40】
前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液に含まれている化合物及び前記反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれている化合物をそれぞれ分画することにより、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液に含まれているが、前記反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれていない化合物を同定して回収することを特徴とする請求項38または39に記載のスクリーニング方法。
【請求項41】
前記反応試薬を含む前記培養液中で前記微生物を培養することにより前記有機化合物と前記反応試薬との反応を行い、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液を得ることを特徴とする請求項38〜40のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項42】
前記反応試薬を実質的に含まない培養液中で前記微生物を培養することにより前記有機化合物を生産させ、
前記微生物が生産した前記有機化合物を含む培養液に前記反応試薬を添加することにより前記有機化合物と前記反応試薬との反応を行い、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液を得ることを特徴とする請求項38〜40のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項43】
前記微生物が、前記有機化合物の生産過程に関与する遺伝子に変異が生じた変異体であることを特徴とする請求項38〜42のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項44】
前記微生物が、紫外線照射、X線照射、若しくは化学薬品投与により、人為的に変異を導入した変異体であることを特徴とする請求項43に記載のスクリーニング方法。
【請求項45】
前記微生物が、自然突然変異体(spontaneous mutant)であることを特徴とする請求項43に記載のスクリーニング方法。
【請求項46】
前記微生物が、前記有機化合物の生産過程に関与する遺伝子操作を施した形質転換体であることを特徴とする請求項38〜42のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項47】
前記微生物が、古細菌類、真正細菌類、原生生物類、菌類からなるグループから選ばれるいずれかの類に属することを特徴とする請求項38〜46のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項48】
前記微生物が、子嚢菌類、接合菌類、担子菌類、不完全菌類、変形菌類、及び細胞性粘菌類からなるグループから選ばれるいずれかの類に属することを特徴とする請求項38〜46のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項49】
前記微生物が、放線菌であることを特徴とする請求項38〜46のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項50】
前記反応試薬が、酸化反応試薬、還元反応試薬、エポキシ化反応試薬、ジヒドロキシ化反応試薬、酸化的解裂反応試薬、水素添加反応試薬、エーテル化反応試薬、ハロゲン化反応試薬、ニトロ化反応試薬、スルホン化反応試薬、ジアゾ化反応試薬、アルドール反応試薬、及びアルキル化反応試薬からなるグループから選ばれる1又は2以上の試薬であることを特徴とする請求項38〜49のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項51】
微生物が生産する有機化合物を反応試薬と反応させることにより合成される前記有機化合物の誘導体を含む化合物ライブラリーを用いた治療薬のスクリーニング方法であって、
前記化合物ライブラリーの個々の化合物をヒト以外の疾患モデル動物に投与し、
前記化合物の投与により前記疾患の症状が改善されたかどうかを評価する工程を含み、
前記化合物ライブラリーは、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液に含まれているが、前記反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれていない化合物を回収し、前記化合物ライブラリーの構成要素とすることにより作製されることを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項52】
前記反応試薬を実質的に含まない培養液が、前記微生物を培養した培養液であることを特徴とする請求項51に記載のスクリーニング方法。
【請求項53】
前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液に含まれている化合物及び前記反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれている化合物をそれぞれ分画することにより、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液に含まれているが、前記反応試薬を実質的に含まない培養液に含まれていない化合物を同定して回収することを特徴とする請求項51または52に記載のスクリーニング方法。
【請求項54】
前記反応試薬を含む前記培養液中で前記微生物を培養することにより前記有機化合物と前記反応試薬との反応を行い、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液を得ることを特徴とする請求項51〜53のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項55】
前記反応試薬を実質的に含まない培養液中で前記微生物を培養することにより前記有機化合物を生産させ、
前記微生物が生産した前記有機化合物を含む培養液に前記反応試薬を添加することにより前記有機化合物と前記反応試薬との反応を行い、前記反応試薬を含む前記微生物を培養した培養液を得ることを特徴とする請求項51〜53のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項56】
前記微生物が、前記有機化合物の生産過程に関与する遺伝子に変異が生じた変異体であることを特徴とする請求項51〜55のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項57】
前記微生物が、紫外線照射、X線照射、若しくは化学薬品投与により、人為的に変異を導入した変異体であることを特徴とする請求項56に記載のスクリーニング方法。
【請求項58】
前記微生物が、自然突然変異体(spontaneous mutant)であることを特徴とする請求項56に記載のスクリーニング方法。
【請求項59】
前記微生物が、前記有機化合物の生産過程に関与する遺伝子操作を施した形質転換体であることを特徴とする請求項51〜55のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項60】
前記微生物が、古細菌類、真正細菌類、原生生物類、菌類からなるグループから選ばれるいずれかの類に属することを特徴とする請求項51〜59のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項61】
前記微生物が、子嚢菌類、接合菌類、担子菌類、不完全菌類、変形菌類、及び細胞性粘菌類からなるグループから選ばれるいずれかの類に属することを特徴とする請求項51〜59のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項62】
前記微生物が、放線菌であることを特徴とする請求項51〜59のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項63】
前記反応試薬が、酸化反応試薬、還元反応試薬、エポキシ化反応試薬、ジヒドロキシ化反応試薬、酸化的解裂反応試薬、水素添加反応試薬、エーテル化反応試薬、ハロゲン化反応試薬、ニトロ化反応試薬、スルホン化反応試薬、ジアゾ化反応試薬、アルドール反応試薬、及びアルキル化反応試薬からなるグループから選ばれる1又は2以上の試薬であることを特徴とする請求項51〜62のいずれかに記載のスクリーニング方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−87392(P2006−87392A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279597(P2004−279597)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】