説明

誘導加熱調理用容器

【課題】発熱のバラツキを抑制することができる誘導加熱調理用容器を提供する。
【解決手段】非導電性材料からなる容器本体1に電磁誘導によって発熱する発熱体2を備えた誘導加熱調理用容器であって、発熱体2は、箔状のシートを折り曲げることにより、容器本体2の底部10に位置する底面部20と該底面部20の周縁部から立ち上がって容器本体1の側壁部11に位置する筒状の側面部21とを有する形状に形成されている。容器本体1は射出成形により形成され、発熱体2はインサート成形により容器本体1と一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱を利用した誘導加熱調理器によって内容物を加熱することができる誘導加熱調理用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱を利用した誘導加熱調理器は、電磁調理器(IH調理器)とも称され、近年、いろいろな種類のものが提案されている。そして、該誘導加熱調理器によって内容物を加熱することができる誘導加熱調理用容器も種々提案されており、下記特許文献1所載のように電磁誘導によって発熱する部分を容器の底部に設けたものの他、この発熱する部分を容器の全体に備えたものもある。即ち、容器の底面部から側壁部の全体に亘って発熱体を備えているものがあるが、この容器は、深絞り加工によって形成されている。この容器では、容器の側壁部に位置する発熱体の部分によって内容物を加熱することができる。
【0003】
しかしながら、深絞り加工の場合には製造コストが嵩むうえに、発熱体の厚さにバラツキが生じる。つまり、発熱体が容器の特定の部分において厚くなったり逆に薄くなったりする。このように発熱体の厚さが容器の部分によってばらつくと、電磁誘導による発熱、即ち出力がばらつくことになり、最悪の場合には、発熱しないという場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−193529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、発熱のバラツキを抑制することができる誘導加熱調理用容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る誘導加熱調理用容器は、非導電性材料からなる容器本体に電磁誘導によって発熱する発熱体を備えた誘導加熱調理用容器であって、発熱体は、箔状のシートを折り曲げることにより、容器本体の底部に位置する底面部と該底面部の周縁部から立ち上がって容器本体の側壁部に位置する筒状の側面部とを有する形状に形成されて該側面部により内容物を加熱することを特徴とする。
【0007】
該構成の誘導加熱調理用容器にあっては、発熱体が底面部と筒状の側面部とを有している。従って、内容物を筒状の側面部によって加熱することができる。そして、発熱体は箔状のシートを折り曲げて形成されたものであるため、その厚さは均一であり、従って、発熱体は発熱ムラが生じることなく安定して発熱する。尚、箔状のシートを折り曲げて発熱体が形成されているので、発熱体の筒状の側面部には皺やヒダが生じることになるが、発熱体の厚さは箔状のシートの厚さそのものであって均一であるため、発熱にはムラが生じない。
【0008】
特に、容器本体は射出成形により形成され、発熱体はインサート成形により容器本体と一体化されていることが好ましい。インサート成形によって発熱体を容器本体に一体化させることにより、容器本体に発熱体を別途接着剤等によって装着する必要がない。また、発熱体を容器本体に接着させるための接着剤も不要になる。しかも、射出成形時の成形圧力によって、発熱体の形状が容器本体の形状に確実に沿うこととなる。更に、発熱体の筒状の側面部における皺やヒダによって容器本体と発熱体がしっかりと密着固定される。
【0009】
また、発熱体の側面部は内側に露出しており、該発熱体の側面部には多数のプリーツが縦方向に沿って形成され、該プリーツは本体片の一側縁を折り返し線として内側に折り返されたプリーツ片を有する構成であり、発熱体の側面部の上端部において隣り合うプリーツ片同士が重なり合わずに互いに離間していることが好ましい。発熱体の側面部で内容物を加熱することから側面部の高さは発熱面積を確保するうえで重要な要素であるが、側面部を高くするほどプリーツ片の幅が広くなって隣り合うプリーツ片同士が互いに接近してくる。隣り合うプリーツ片同士が内外に重なり合った状態になると、その重なり合った箇所において熱が内容物に伝達されにくくなって外側の容器本体が加熱されて変形しやすくなる。そこで、発熱体の側面部の上端部において、隣り合うプリーツ片同士が重なり合わずに互いに離間している構成とすることにより、効率良く内容物を加熱することができると共に、容器本体の熱変形も抑制できて容器本体の薄肉軽量化が可能になる。
【0010】
更に、容器本体を射出成形により形成し、発熱体をインサート成形により容器本体と一体化する場合には、箔状のシートを、金属箔からなるシート本体の両面にヒートシール性を有する被覆層が積層された多層シートとすることが好ましい。射出成形時の成形圧力と熱によってプリーツ片が外側(容器本体側)の本体片及び内側(内容物側)の本体片とヒートシールされて密着一体化する。従って、プリーツ片の外側への反り返りが防止され、容器本体を薄肉化できる。更に、内容物とシート本体を構成する金属箔との接触が被覆層により防止されるので、内容物が酸性やアルカリ性のものであって金属箔に影響を及ぼす可能性のある物である場合やそれに伴って内容物の風味等が損なわれる可能性のある場合においては特に効果的である。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、箔状のシートを折り曲げて発熱体が形成されているので、発熱のバラツキが抑制されて、内容物が安定して加熱される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態における誘導加熱調理用容器を示す縦断面図。
【図2】(a)は図1のA部拡大図、(b)は図1のB部拡大図。
【図3】同実施形態における誘導加熱調理用容器に用いられる発熱体の製造工程を示す正面図。
【図4】同実施形態における誘導加熱調理用容器の製造工程を示す断面図であって、(a)は射出前の型開きの状態を示し、(b)は型締めの状態を示している。
【図5】同実施形態における誘導加熱調理用容器を示す要部横断面図。
【図6】本発明の他の実施形態における誘導加熱調理用容器を示す縦断面図。
【図7】同実施形態の誘導加熱調理用容器に用いられる発熱体を示す正面図。
【図8】同実施形態の誘導加熱調理用容器に用いられる発熱体の要部を内側から見た斜視図。
【図9】(a)は同実施形態の誘導加熱調理用容器に用いられる発熱体を構成しているシートの層構造を示す要部拡大断面図、(b)は(a)のシートから形成された発熱体の要部横断面図。
【図10】図9(b)の発熱体を用いて製造した誘導加熱調理用容器の要部横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る誘導加熱調理用容器について図1〜図5を参酌しつつ説明する。本実施形態における誘導加熱調理用容器は、有底筒状の容器本体1と、電磁誘導によって発熱する発熱体2とを備えている。
【0014】
容器本体1は、深底の円筒型のものであって、略平坦な底部10と、該底部10から上方に初めはテーパ状に拡径し、段差部15を介してその後は上方に垂直に延びる側壁部11と、該側壁部11の上端部から外方に向けて略水平に延設されたフランジ部12とを備えている。円盤状の底部10の周縁部には下方に向けて環状の脚部13が突設されている。側壁部11の外周面には、上下方向のリブ14が放射状に形成されている。該リブ14は、側壁部11のうち垂直に延びる径一定領域には設けられず、側壁部11のうちテーパ状に拡径した拡径領域の全高に亘って形成され、そのまま脚部13の外周面まで延設されている。リブ14の突出量は上述の段差部15と略等しく上下方向に沿って一定であり、従って、リブ14も側壁部11の拡径領域と同様に上方に向かって径方向外側に傾斜している。また、側壁部11の内周面の上下方向略中央部には、環状突起16が形成されている。該環状突起16は、いわゆる入り目線である。該入り目線は、内容物として収容された乾燥食品を食する際に容器内に入れる水や湯の上限を示すものである。
【0015】
かかる容器本体1は、熱可塑性樹脂から射出成形により形成されたものであり、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン等がある。特に、プロピレンエチレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂が、軽く適度な機械的強度を有し、比較的安価で成形性も良く、適度な耐熱温度及び熱変形温度を有して、総合的に優れている。容器本体1を合成樹脂から構成すれば、軽いうえに焼却廃棄も比較的容易であるため、使い捨ての容器として好ましい。また、側壁部11の外側に筒状のシュリンクラベル等のラベルを装着してもよい。
【0016】
該容器本体1の内面下部に発熱体2が設けられている。該発熱体2は、容器本体1の内面形状に合わせたカップ状である。具体的には、発熱体2は、容器本体1の底部10に位置する底面部20と、該底面部20の周縁部から立ち上がって容器本体1の側壁部11に位置する筒状の側面部11とを有している。発熱体2の底面部20は容器本体1の底部10の内面の形状に合わせた形状、即ち円形であり、発熱体2の筒状の側面部21は容器本体1の側壁部11の内面下部の形状に合わせた形状である。図2に示すように、発熱体2は、その内面全体が内側に露出しており、この誘導加熱調理用容器の内面下部領域を構成している。上述のように、容器本体1の側壁部11の下部は拡径領域であって該拡径領域に発熱体2の筒状の側面部21が位置しているので、発熱体2の筒状の側面部21も側壁部11の拡径領域に合わせて上方に向けてテーパ状に拡径している。即ち、発熱体2の筒状の側面部21は底面部20の周縁部から斜め上方に伸びている。また、発熱体2は、環状突起16よりも下方に位置している。従って、発熱体2の筒状の側面部21の上端面21aは、容器本体1の側壁部11の上端部よりも下方であって、環状突起16よりも下方に位置している。発熱体2はその内面が内側に露出しつつもその厚さの全体が容器本体1の側壁部11及び底部10に入り込むように埋設された状態にある。従って、図2(b)のように発熱体2の側面部21の上端面21aは容器本体1の側壁部11によって上側から覆われている。即ち、容器本体1の側壁部11のうち発熱体2が設けられていない上側領域における内周面と発熱体2の側面部21の内周面とは略面一となっている。
【0017】
該発熱体2は、導電性を有する一枚の平坦な箔状のシートを折り曲げることによって上面開口のカップ状に形成されている。誘導加熱調理用容器が上面開口の有底円筒状であるので、発熱体2は一枚の円形のシートから形成されており、該シートには切り込み等が設けられていない。従って、筒状の側面部21は、底面部20から継ぎ目なく連続していると共に、周方向の全周の何れの箇所にも接合部分のない無端状である。このシートとしては金属箔、特にアルミニウム箔が好ましく、その厚さは、例えば10乃至100μm、特に20乃至50μmが好ましい。尚、一枚の円形のシートから発熱体2が形成されているので、筒状の側面部21には、図1のように縦方向の皺やヒダ等の筋目22が存在する。
【0018】
かかる誘導加熱調理用容器の製造方法の概要について説明すると、まず、円形のシートを誘導加熱調理用容器の内面形状に合わせて予備成形する。具体的には、図3のように、予備成形用の治具25を使用して円形のシート24を折り曲げる。円形のシート24を折り曲げて予備成形用の治具25の側面25aに沿わせるようにするが、その際、シート24を治具25の側面25aに押し付けながら、図3の矢印X,Yのように治具25をシート24に対して相対的に軸線まわりに回転させる。例えば、回転方向を矢印X,Yというように交互に変えることで、シート24をカップ状に形成しやすくなる。
【0019】
このように予備成形してカップ状に形成した発熱体2を金型の内部にインサートする。即ち、図4(a)のようにコア30とキャビティ31から構成される金型を型開きした状態において、コア30の外側に発熱体2を被せる。ここでは横型の射出成形機を例にして説明するが、縦型であってもよい。コア30に発熱体2を被せる際に、発熱体2が予めカップ状に予備成形されているので、容易にコア30に発熱体2を装着し、保持させることができる。その後、図4(b)のように、コア30とキャビティ31を接近させて型締めを行い、コア30とキャビディ31との間の空間に樹脂を射出して固化させて容器本体1を形成する。樹脂を射出する際の成形圧力によって発熱体2はコア30に密着して容器本体の形状に確実に沿ったものとなる。また、折り曲げ形成時に発生した皺やヒダ等の筋目22は予備成形段階では比較的径方向に浮き上がった状態となっているが、その浮き上がり状態も成形圧力によってなくなり、筋目22は径方向に圧縮されて固くしっかりと重なり合った状態となる。
【0020】
このようにして射出成形により形成された誘導加熱調理用容器を金型から取り出す。図5のように、取り出された誘導加熱調理用容器においては、発熱体2がインサート成形によって容器本体1と一体化している。従って、発熱体2を別途接着剤等によって容器本体1に取り付ける作業は不要である。特に、発熱体2の筒状の側面部21は滑らかな面ではなく皺やヒダ等の筋目22が形成されて凹凸や段差等のある面であるので、発熱体2と容器本体1との間の接触面積が大きく、発熱体2が容器本体1に食い付くように密着する。しかも、成形時において発熱体2の筒状の側面部21における皺やヒダ等の筋目22の狭い隙間26にも樹脂が流れ込んでいるので、発熱体2は容器本体1に強固に固定されている。
【0021】
一方、発熱体2の筒状の側面部21に皺やヒダ等の筋目22が存在していても筒状の側面部21自体には継ぎ目がなく連続したものである。従って、発熱体2は電磁誘導によって確実に発熱し、内容物が安定して加熱する。しかも、発熱体2はシート24から折り曲げ形成されたものであるので、電磁誘導に関係する発熱体2の厚さはシート24の厚さそのものである。従って、皺やヒダ等の筋目22が存在していても電磁誘導に関係する発熱体2の厚さは均一であり、発熱ムラ、加熱ムラがなく、安定した加熱調理が可能となる。更に、発熱体2が容器の内面を構成しているので、湯や水等の内容物を直接加熱することができ、効率の良い加熱調理が可能である。
【0022】
尚、この誘導加熱調理用容器において内容物を加熱する場合、電磁調理器としては、例えば誘導加熱調理用容器が挿入可能な凹部を備えていて、該凹部の壁面内部に誘導加熱調理用容器の側面を加熱するためのコイルを備え、凹部底面には誘導加熱調理用容器が載置されて回転する回転体を備えたものが好ましい。電磁調理器のコイルによって主として発熱体2の筒状の側面部21が電磁誘導により効率良く発熱する。また、電磁調理器の凹部に誘導加熱調理用容器を入れて回転体を回転させることにより、回転体と共に誘導加熱調理用容器も回転することになる。従って、誘導加熱調理用容器を回転させながらその内容物を誘導加熱調理用容器の側面から加熱することができるので、より一層効率良く加熱することができ、短時間で内容物を加熱調理したり、暖めたりすることができる。
【0023】
尚、本実施形態では、入り目線を構成する環状突起16を設けていたが、入り目線を省略してもよい。特に、液体を有する内容物が予め収容された誘導加熱調理用容器の場合には入り目線が不要である。その場合、内容物の液面よりも発熱体2を下方に位置させる、即ち、発熱体2の筒状の側面部21の上端を内容物の液面よりも下方に位置させる。予め容器内に内容物を入れておく構成では、蓋付きの容器として密封することが好ましい。その場合、容器本体1のフランジ部12に蓋をヒートシールして密封することが好ましい。
【0024】
また、発熱体2の側面部21にプリーツ加工によってプリーツ40を形成するようにしてもよい。図6には誘導加熱調理用容器の縦断面図を示しているが、この発熱体2の筒状の側面部21には図7にも示しているように多数のプリーツ40が縦方向に沿って形成されている。尚、図6の符号18は入り目線である。また、側壁部11は、上端に近い境界線17より下側の領域がテーパ状に拡径する拡径領域であり、境界線17より上側の領域が上方にほぼ垂直に延びる垂直領域となっている。尚、上述したように誘導加熱調理用容器が挿入可能な凹部を備えた電磁調理器を用いて加熱する場合、その凹部底面の回転体に係合凹部を形成すると共にその係合凹部に係入可能な係合凸部19を容器本体1の底部10に下方に向けて突設してもよく、誘導加熱調理用容器を回転体と一体に回転させることができる。
【0025】
発熱体2の側面部21のプリーツ40の構成をより詳細に説明すると、図8に示すように本体片41の周方向一側縁の折り返し線43を介してプリーツ片42が内側且つ周方向他側縁側に向けて折り返されて形成され、該プリーツ片42には周方向他側縁の折り返し線44を介して隣の本体片41が連設されている。本体片41の一側縁の折り返し線43は外面凸の山折りであって縦方向に延びており、本体片41の他側縁の折り返し線44は外面凹の谷折りであって同じく縦方向に延びており、径方向に見ると、山折りの折り返し線43は外側(容器本体側)に位置し、谷折りの折り返し線44は内側(内容物側)に位置している。このように本体片41、プリーツ片42、本体片41が平面視Z字状に折り曲げ形成されることでプリーツ40が構成され、このプリーツ40が周方向に一定間隔毎に繰り返して形成されて筒状の側面部21の全周に亘って形成されている。
【0026】
このプリーツ40は、円形のシート24をカップ状に折り曲げ形成する際に形成されたものである。例えば、上述した治具25を雄側として用いると共に該雄側の治具25に対応した雌側の治具をその外側に配置して、雄側の治具25と雌側の治具の間にシート24を挟み込むようにしながらカップ状に形成すると同時にプリーツ40を形成する。このようにカップ状に形成することで側面部21にプリーツ40を形成することから、プリーツ片42は下側の幅が小さく上側の幅が大きい下向き略三角形状であって、プリーツ片42の幅は発熱体2の開口縁部である側面部21の上端部に向けて徐々に広がっていってその側面部21の上端部において最大幅となる。側面部21の上端部におけるプリーツ片42の幅は、カップ状の発熱体2の高さ寸法が大きくなるほど広くなり、発熱体2の底面部20の直径が小さいほど広くなる。また、発熱体2の筒状の側面部21は容器本体1の側壁部11に合わせて上方に向けて拡径したテーパ状であるため、その広がり角度(テーパ角度であって、底面部20に対して側面部21が直角に立ち上がったときを0°としてそこからの傾斜角度)が小さく底面部20に対して直角に近い角度(例えば底面部に対して80°以上)で側面部21が立ち上がっているほど、側面部21の上端部におけるプリーツ片42の幅は大きくなる。
【0027】
そして、側面部21の上端部において、隣り合うプリーツ片42同士が径方向に重なり合わずに互いに周方向に離間していることが好ましい。即ち、プリーツ40が形成された箇所では外側の本体片41、プリーツ片42、内側の本体片41と合計三枚のシートが径方向に重なり合った三枚構成となっているが、隣り合うプリーツ片42同士の間の箇所においては、本体片41のみの一枚構成であり、この一枚構成の領域Yが側面部21の上端部において形成されるようにすることが好ましい。従って、側面部21の上端部における本体片41の幅をW、側面部21の上端部におけるプリーツ片42の幅をXとすると、W>2Xの関係式が成立することが好ましい。側面部21の上端部において隣り合うプリーツ片42同士が径方向に重なり合うと、その重なり合った箇所において発熱体2からの熱が内側の内容物の方には伝達されにくくなり、逆に外側の容器本体1の方に伝達されやすくなる。その結果、発熱体2の側面部21の上端部近傍において容器本体1が熱によって変形しやすくなる。この熱による容器本体1の変形を防止するためには、発熱体2の側面部21の上端部近傍における容器本体1の側壁部11の肉厚を厚くしておく必要がある。従って、容器本体1を薄肉軽量化するためには、側面部21の上端部において隣り合うプリーツ片42同士が径方向に重なり合わずに互いに周方向に離間するように形成することが好ましく、また内容物に対する加熱効率も良くなる。この誘導加熱調理用容器は、容器本体1の側壁部11の径方向外側を周回するように配置された調理器のコイルによって発熱体2の側面部21が発熱して内容物を加熱するものである。従って、発熱体2の底面部20の直径よりも側面部21の高さの方が大きいことが好ましい。また、発熱体2の底面部20の直径は、120mm以下、特に90mm以下が好ましく、更に70mm以下がより好ましく、発熱体2の側面部21の上端部における直径は70mm以下が好ましい。また、側面から加熱することから側面部21の面積を確保する必要もあり、側面部21の高さは、特に50mm以上であることが好ましく、例えば60〜70mmとすることが挙げられ、容器本体1の上端部よりも下方(例えば入り目線よりも下方)が好ましい。容器本体1の側壁部11の拡がり角度があまりに大きいと容器側面からの加熱に適さないので、側壁部11の拡がり角度は片側2〜10°程度(底部10に対する側壁部11の立ち上がり角度では80〜88°)が好ましい。
【0028】
また、発熱体2を構成する箔状のシート24を単層構造ではなく多層構造としてもよい。即ち、箔状のシート24を、図9(a)のようにアルミニウム箔等の金属箔からなるシート本体27と、該シート本体27の片面あるいは両面を被覆する非導電性の被覆層28a,28bとを備えた多層シート24としてもよい。被覆層28a,28bとしては各種の合成樹脂フィルムが使用でき、ドライラミネート法等の各種のラミネート法でシート本体27に積層する。合成樹脂フィルムはヒートシール性を有するものが好ましく、特に容器本体1とヒートシール可能なものが好ましく、例えばCPPフィルムが好適である。
【0029】
即ち、多層シート24の好適な一例としては、アルミニウム箔からなるシート本体27の両面に被覆層28a,28bとしてCPPフィルムが積層されたものである。アルミニウム箔の厚さは30ミクロン程度、CPPフィルムの厚さは両面共に20ミクロン程度が好ましい。即ち、被覆層28a,28bはシート本体27よりも薄いものが好ましい。この多層シート24を用いて上述したようにカップ状に折り曲げ形成する際にプリーツ加工により側面部21に多数のプリーツ40を形成することも好ましい。図9(b)にプリーツ加工を施した発熱体2の側面部21の要部を横断面図で示しており、この発熱体2はインサート成形前の状態である。発熱体2はインサート成形前の単体の状態では本体片41とプリーツ片42とが互いに接着しておらず径方向に離れた状態にある。その後、インサート成形により容器本体1を形成すると共に発熱体2と一体化させると、図10のようにその際の成形圧力によってプリーツ片42は外側の本体片41と密着すると共に内側の本体片41にも密着する。更に成形時の熱によってプリーツ片42の外面の被覆層28aが内側の本体片41の外面の被覆層28aとヒートシールされて密着一体化し、プリーツ片42の内面の被覆層28bが外側の本体片41の内面の被覆層28bとヒートシールされて密着一体化する。従って、発熱体2の側面部21のプリーツ40が径方向外側即ち容器本体1側に反り返って突出するということが防止され、容器本体1の外面から発熱体2が表出するということも防止される。また、発熱体2の外面の被覆層28aが容器本体1とヒートシールにより一体化されるので、容器本体1と発熱体2とがより一層強固に密着一体化される。更には、発熱体2が内側に露出していて内容物に触れて直接加熱する構成であっても、内容物とシート本体27を構成するアルミニウム箔との接触が被覆層28a,28bによって防止される。従って、内容物の特性上、シート本体27との接触を防止したい場合、例えば、内容物の酸やアルカリによってシート本体27が腐食する可能性がある場合や、内容物の風味等が損なわれる可能性がある場合等において、特に効果が大きい。また、プリーツ片42が成形圧力と共にヒートシールによって内側の本体片41と外側の本体片41と密着一体化することから、成形後において発熱体2の側面部21の内面も凹凸の少ない面形状となる。従って、プリーツ40の隙間に内容物が入り込むことも防止される。
【0030】
尚、上記説明では、インサート成形の前に予め発熱体2を予備成形していたが、例えば、平坦なシート24を予備成形することなく直接コア30に保持させて、成形時にシート24を金型によって折り曲げてもよい。例えばコア30に吸引孔を設けてシート24を吸引保持してもよい。
【0031】
また、発熱体2の全体が容器の内側に露出した構成としたが、発熱体2の一部のみが内側に露出してもよく、また、発熱体2が全く露出しない構成であってもよい。
【0032】
また、容器本体1の形状も適宜設計変更可能であって、角筒状のものであってもよく、底の浅いタイプでもよい。容器本体1を射出成形ではなく、真空成形等のシート成形によって形成してもよい。
【0033】
また更に、容器本体1と発熱体2を接着剤等によって固定してもよい。
【0034】
更に、発熱体2の底面部20の中央に孔を形成してもよく、発熱体2の底面部20は容器本体1の底部10のうち少なくとも周縁部に位置していればよい。
【符号の説明】
【0035】
1 容器本体
2 発熱体
10 底部
11 側壁部
12 フランジ部
13 脚部
14 リブ
15 段差部
16 環状突起
17 境界線
18 入り目線
19 係合凸部
20 底面部
21 筒状の側面部
21a 上端面
22 筋目
24 シート
25 治具
25a 側面
26 隙間
27 シート本体
28a 被覆層
28b 被覆層
30 コア
31 キャビティ
40 プリーツ
41 本体片
42 プリーツ片
43 折り返し線
44 折り返し線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性材料からなる容器本体に電磁誘導によって発熱する発熱体を備えた誘導加熱調理用容器であって、
該発熱体は、箔状のシートを折り曲げることにより、容器本体の底部に位置する底面部と該底面部の周縁部から立ち上がって容器本体の側壁部に位置する筒状の側面部とを有する形状に形成されて該側面部により内容物を加熱することを特徴とする誘導加熱調理用容器。
【請求項2】
容器本体は射出成形により形成され、発熱体はインサート成形により容器本体と一体化されている請求項1記載の誘導加熱調理用容器。
【請求項3】
発熱体の側面部は内側に露出しており、該発熱体の側面部には多数のプリーツが縦方向に沿って形成され、該プリーツは本体片の一側縁を折り返し線として内側に折り返されたプリーツ片を有する構成であり、発熱体の側面部の上端部において隣り合うプリーツ片同士が重なり合わずに互いに離間している請求項1又は2記載の誘導加熱調理用容器。
【請求項4】
容器本体は射出成形により形成され、発熱体はインサート成形により容器本体と一体化され、
箔状のシートは、金属箔からなるシート本体の両面にヒートシール性を有する被覆層が積層された多層シートである請求項3記載の誘導加熱調理用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−176231(P2012−176231A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−18152(P2012−18152)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】