説明

誘電体表面微細成型方法及び装置ならびに誘電体接合方法及び装置

【課題】広範な熱可塑性樹脂等の使用と生産性向上を共に図るべく、その加熱に適用可能なエネルギー伝達手法を用いて被加熱物の表層部を集中して直接加熱できるようにする。
【解決手段】被成形体20に表面転写用型17を当接させて加熱し降温後に離型することにより凹凸形状を転写する際、被成形体20には熱可塑性の誘電体を採用し、表面転写用型17には導電体を用い、加熱処理では表面転写用型17及び被成形体20の外から電波8を照射し且つそのときには照射電波8が被成形体20内に進入してから表面転写用型17との当接面に進行し更に表面転写用型17の当接面で反射するよう電波照射を行うことにより被成形体20の表層部21を溶融させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電波加熱を利用した熱可塑性の誘電体の表面成形技術や接合技術に関する。詳しくは、表面成形技術はナノインプリント技術に代表される誘電体表面微細成型方法や誘電体表面微細成型装置に関し、接合技術は導電体と熱可塑性の誘電体とを融着させる誘電体接合方法や誘電体接合装置に関する。
なお、熱可塑性の誘電体は、ガラス転移温度以上で軟化し該温度以下への降温で再硬化する誘電体(電気絶縁体)を意味し、典型例には熱可塑性のプラスチックやガラスが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
光ナノインプリント技術として(例えば特許文献1参照)、半導体基板上に光硬化性樹脂層を形成し、その上に可撓性モールドを乗せ更に加圧して密着させ、そのモールドを透過させながら紫外線を樹脂に照射して樹脂を硬化させ、それからモールドを分離させる、という手法が知られている。それに用いられる装置は、転写の原パターンとなる凹凸形状を表面に形成したモールド(表面転写用型)と、モールドを保持する紫外線透過性の平面体(型支持体)と、半導体基板の支持体(被成形体支持体)と、支持体の昇降機構(接離機構)と、それらを格納して真空引きしうる筐体とを具えている。このような光ナノインプリントでは、被成形体に使用できる樹脂が限定され、熱可塑性樹脂が使えない。
【0003】
熱ナノインプリント技術として(例えば特許文献2参照)、半導体基板上に熱可塑性の有機膜(被成形体)を形成し、その有機膜を加熱して軟化させてから、その上にプラズマ処理したモールド(表面転写用型)を乗せて圧着させ、半導体基板を降温させて有機膜を硬化させてから、モールドを離脱させる、という手法が知られている。それに用いられるモールドは、170℃の加熱や14MPaの加圧に耐えられるようになっており、圧着面には転写用の反転パターンである凹凸が形成されている。被成形体を加熱する一般的な手法は、表面転写用型の裏面にヒータを付設しておき、ヒータから型を介して被成形体に熱を伝える間接加熱である。
【0004】
他の熱ナノインプリント技術として(例えば特許文献3,4参照)、金属材質等を材料とした金型(表面転写用型)を誘導加熱する手段と、樹脂材質等を材料としたワーク(被成形体)を誘電加熱する手段とを有する微細パターンプレス成形法が知られている。この装置は、ワークを固定し金型を上下動させるプレス機と、金型を誘導加熱するためのコイル及び電源と、ワークを誘電加熱するための平板電極対および電源とを具えている。平板電極対の一方は金型が兼ねており、平板電極対の他方はワーク保持材に付設されている。この場合、誘導加熱は表皮効果により金型のうちワーク密着部分を重点的に加熱するが間接加熱の範疇にある。誘電加熱は直接加熱だが表面に限らずワーク全体を加熱する。
【0005】
更に他の熱ナノインプリント技術として(例えば特許文献5参照)、赤外線透過材料からなるスタンパーの表面にCD等の基材(被成形体)を装着し、その基材を押圧しながら、スタンパー裏面を通して基材表面に赤外線を幅方向に線状に照射して、基材表層を線状に溶融させ、スタンパー表面形状と反転する凹凸形状を基材表層に転写する、という微細転写方法が知られている。それに用いられる装置は、転写の原パターンとなる微細な凹凸形状を表面に形成した上型スタンパーや下型スタンパー(表面転写用型)と、各スタンパーを保持する支持体(型支持体)と、スタンパーを基材に押圧するための加圧手段および基材をスタンパーから剥離するための剥離手段(接離機構)とを具えている。基材の支持体(被成形体支持体)は下型スタンパー及びその支持体が兼ねている。この場合の赤外線輻射加熱は、基材の直接加熱であって表面に集中するが、使用可能な樹脂は熱可塑性樹脂の総てではなく赤外線吸収樹脂に限定されるうえ、型や支持体には赤外線を透過させる材質やスリットを採用することが求められる。
【0006】
また、樹脂接合技術として(例えば特許文献6参照)、蒸着や塗布によって樹脂シートに金属層を形成する手法や、二枚の樹脂シートの間に金属芯板を挟んだ半導電性シートを金属芯板の高周波電磁誘導によって防水シートに溶着させる手法が、知られている。この場合の加熱は、間接加熱であり、中間層の材質が限定される。
その他(例えば特許文献7参照)、誘電体薄膜にマイクロ波を照射して、その誘電加熱によりポストアニーリングする手法も、知られている。この場合の加熱は、誘電体薄膜を直接加熱するが、表面に限らず内部から加熱する。加熱温度も低い。
【0007】
【特許文献1】特開2001−068411号公報
【特許文献2】特開2003−077807号公報
【特許文献3】特開2004−322323号公報
【特許文献4】特開2004−337913号公報
【特許文献5】特開2006−088517号公報
【特許文献6】特開2005−146775号公報
【特許文献7】特開2002−280380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来より、樹脂表面の微細成型や樹脂の接合に係る技術が、種々開発されている。
しかしながら、そのような樹脂の表面成形技術や接合技術には一長一短があり、重要な長所を兼ね備えたものは未だない。
具体的には、材質の豊富な熱可塑性樹脂を広い範囲に亘って使用できるという加熱方式の長所と(例えば特許文献2,3,4,6参照)、加熱が不要なので又は加熱するにしても加熱部位が局所に限定されていて加熱に伴う昇温や降温が速やかになされるので処理時間が短く熱歪が少ないという光方式の長所と(例えば特許文献1,5参照)の双方を備えた技術が未だ実現されていない。
【0009】
このため、それらの長所を兼備した樹脂表面微細成型技術や樹脂接合技術の開発が望まれるが、被成形体に広範な種々の熱可塑性樹脂を使用するには加熱方式の踏襲が前提となるので、その技術の実現には、樹脂の材質を限定しないで樹脂を加熱することができ、表面転写用型や接合用具さらには支持体などは加熱せずに樹脂を加熱することができ、さらにスループット(生産性)向上のため加熱に伴う昇温時間や降温時間が十分に短くなるよう樹脂の全体でなく表層部だけを加熱できるように改良することが求められる。また、そのような加熱の対象を熱可塑性樹脂以外の物まで拡張できれば更に好都合である。
そこで、広範な熱可塑性樹脂等の使用と生産性向上を共に図るべく、そのような物の加熱に適用可能なエネルギー伝達手法を用いて被加熱物の表層部を集中して直接加熱できるようにすることが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような課題を解決するために創案されたものであり、その骨子は、電波を照射導入して反射させることで誘電加熱することにより、被加熱物の表層部を集中して直接加熱する、というものである。すなわち、エネルギー伝達媒体としてマイクロ波やミリ波などの電波を用いるとともに、被成形体に当接して面状に接触する導電体を電波反射体として使用し、電波を被成形体および導電体の外から照射して被成形体内に導入し更に導電体で反射する、ことを要旨とする。
【0011】
本発明を誘電体表面微細成型方法として構成したものは(解決手段1)、被成形体に表面転写用型を当接させて加熱し降温後に離型することにより前記表面転写用型の当接面の凹凸形状を前記被成形体の当接面に転写する誘電体表面微細成型方法において、前記被成形体には熱可塑性の誘電体を採用し、前記表面転写用型の全部に又はそのうち当接面を含む部分には導電体を用い、加熱処理に際しては前記表面転写用型および前記被成形体の外から電波を照射し且つそのときには照射電波の全部または一部が前記被成形体内に進入してから前記表面転写用型との当接面に進行し更に前記表面転写用型の当接面で反射するよう電波照射を行うことにより前記被成形体の当接面部分を溶融させることを特徴とする。
【0012】
なお、本明細書では、表面転写用型と被成形体との当接による面同士の接触を前提として、『表面転写用型の当接面』は「表面転写用型における被成形体との当接面」を意味し、『表面転写用型との当接面』は「被成形体における表面転写用型との当接面」を意味し、『被成形体の当接面』は「被成形体における表面転写用型との当接面」を意味し、『被成形体との当接面』は「表面転写用型における被成形体との当接面」を意味する。
【0013】
また、本発明を誘電体表面微細成型装置として構成したものは(解決手段2)、表面転写用型を保持しうる型支持体と、被成形体を保持しうる被成形体支持体と、前記型支持体に保持されている表面転写用型と前記被成形体支持体に保持されている被成形体とを当接させたり離隔させたりする接離機構と、前記被成形体支持体に保持されている被成形体を加熱する加熱手段とを備えた誘電体表面微細成型装置において、前記加熱手段が、熱可塑性の誘電体を透過する電波を前記型支持体と前記被成形体支持体との間隙の外で発生する電波発生手段と、その電波を前記間隙内に導いてその全部または一部を前記被成形体支持体側から前記型支持体側へ(直進的に又は/及び曲折後に)進行させる電波照射手段とを具備したものであることを特徴とする。これは上記解決手段1の誘電体表面微細成型方法の実施に好適なものである。
【0014】
さらに、本発明の誘電体表面微細成型装置は(解決手段3)、上記解決手段2の誘電体表面微細成型装置であって、電波を直進的に進行させる電波照射手段を具体化したものである。すなわち、前記被成形体支持体が電波を透過させるものであり、前記電波照射手段が前記被成形体支持体を介して前記間隙内に電波を照射するものであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の誘電体表面微細成型装置は(解決手段4)、上記解決手段2の誘電体表面微細成型装置であって、電波を大部分は曲折後に又は一部は直進的に及び他の一部は曲折後に進行させる電波照射手段を具体化したものである。すなわち、前記被成形体支持体が電波を反射するものであり、前記電波照射手段が前記間隙の脇から前記間隙内に電波を照射するものであることを特徴とする。
なお、前記被成形体支持体における電波反射部位は、前記被成形体支持体の全面でも良く、前記被成形体支持体のうち被成形体の保持面を含む表面部分でも良く、前記被成形体支持体のうち内部に存在する部分であって前記型支持体に表面転写用型を保持させたときその表面転写用型と対向する断面を含む部分でも良い。
【0016】
また、本発明の誘電体表面微細成型装置は(解決手段5)、上記解決手段4の誘電体表面微細成型装置であって、前記被成形体支持体のうち被成形体の保持面に被成形体保持用凹みが形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明を誘電体接合方法として構成したものは(解決手段6)、熱可塑性の誘電体に導電体を当接させて加熱することにより前記誘電体を前記導電体に融着させる誘電体接合方法であって、加熱処理に際しては前記誘電体の外から前記誘電体に電波を照射し且つそのときには照射電波の全部または一部が前記誘電体の内に進入してから前記導電体との当接面に進行し更に前記導電体の当接面で反射するよう電波照射を行うことにより前記誘電体の当接面部分を溶融させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明を誘電体接合装置として構成したものは(解決手段7)、熱可塑性の誘電体と導電体とを当接させる当接機構と、その当接部位を前記誘電体のガラス転移温度以上に昇温させる加熱手段とを備えた誘電体接合装置であって、前記加熱手段が、前記当接機構の外で電波を発生する電波発生手段と、その電波を前記当接機構における誘電体と導電体との当接箇所に導いてその全部または一部を誘電体配置側から導電体配置側へ進行させる電波照射手段とを具備したものであることを特徴とする。これは上記解決手段6の方法の実施に好適なものである。
【発明の効果】
【0019】
このような本発明の誘電体表面微細成型方法および誘電体表面微細成型装置にあっては(解決手段1,2)、加熱と離型を行うことで樹脂表面に凹凸形状が転写されるが、そのうち加熱処理に際して、エネルギー伝達媒体としてマイクロ波やミリ波などの電波を用いる電波加熱・誘電加熱を採用したことにより、導電ゴム等の特殊樹脂は別として、電波を透過させる電気絶縁性の熱可塑性樹脂であれば、更には樹脂に限らず熱可塑性の誘電体であれば、その材質を限定しないで被成形体(被加熱物)を加熱することができる。
【0020】
また、電波を反射する導電体を被成形体に面状接触させた状態で、その外から電波を照射して、電波を被成形体内に導入し更に電波反射体で反射させることにより、電波から熱へのエネルギー変換が電波反射部位で活発になるので、被成形体のうち導電体との当接面部分が発熱する。被成形体のうち他の部位では、誘電体損失の特に大きい材質と周波数との組み合わせを避けさえすれば、ほとんど発熱しない。電波を反射する導電体や、電波を透過させる絶縁体も、ほとんど発熱しないので、そのような部材の選定により表面転写用型や支持体などもほとんど発熱しないこととなる。
【0021】
このように、ほとんどの樹脂を透過する電波を用い而もその反射を活用することにより、表面転写用型や支持体などは加熱せずに樹脂を直に加熱することができ、しかも樹脂の全体でなく表層部だけに集中してそこを直接加熱することができる。
したがって、この発明によれば、広範な熱可塑性の誘電体を使用できるうえ局所加熱で処理時間が短く且つ熱歪が少ない誘電体表面微細成型方法およびその実施に好適な誘電体表面微細成型装置を実現することができる。
【0022】
また、本発明の誘電体表面微細成型装置にあっては(解決手段3)、電波発生手段や電波照射手段を、被成形体支持体の内側に格納したり、被成形体支持体の後背側に配置したりして、コンパクトに実装することができる。
さらに、本発明の誘電体表面微細成型装置にあっては(解決手段4)、照射電波が、表面転写用型で反射するのに加えて、被成形体支持体側の対向面でも反射するので、繰り返し反射しながら広い範囲に行き渡る。そのため、転写対象の当接面の全域を漏れなく加熱することができるうえ、電波から熱へのエネルギー変換の効率が向上することとなる。
また、本発明の誘電体表面微細成型装置にあっては(解決手段5)、転写対象の表層部ばかりか転写対象外の表層部まで溶融した場合でも、転写対象外の表層部を含む部分が被成形体保持用凹みに収まっているので、そこの変形を抑制することができるうえ、被成形体の不所望な横滑りを防止することができる。
【0023】
また、本発明の誘電体接合方法および誘電体接合装置にあっては(解決手段6,7)、当接部位を加熱することで熱可塑性の誘電体が導電体に融着するが、その加熱処理に際し、解決手段1,2について上述した特定の電波加熱が行われる。すなわち、被加熱物の誘電体を透過する電波を用い而も透過後の電波の反射を活用することにより、当接機構などの接合用具は加熱せずに誘電体を直に加熱することができ、しかも誘電体の全体でなく表層部だけに集中してそこを加熱することができる。
したがって、この発明によれば、広範な熱可塑性の誘電体を使用できるうえ局所加熱で処理時間が短く且つ熱歪が少ない誘電体接合方法およびその実施に好適な誘電体接合装置を実現することができる。。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
このような本発明の誘電体表面微細成型方法及び装置ならびに誘電体接合方法及び装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜8により説明する。
図1〜2に示した実施例1は、上述した解決手段1〜3(出願当初の請求項1〜3)を具現化したものであり、図3に示した実施例2や、図4に示した実施例3は、その変形例である。また、図5に示した実施例4や、図6に示した実施例5は、上述した解決手段4(出願当初の請求項4)を具現化したものであり、図7に示した実施例6や、図8に示した実施例7は、上述した解決手段5(出願当初の請求項5)を具現化したものである。
これらは樹脂表面微細成型技術(誘電体表面微細成型技術)に係るものである。
【0025】
さらに、図9に示した実施例8は、樹脂接合技術(誘電体接合技術)に係り、上述した解決手段6〜7(出願当初の請求項6〜7)を具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,ヒンジ等の連結具,電動モータ等の駆動源,タイミングベルト等の伝動部材,モータドライバ等の電気回路,コントローラ等の電子回路などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0026】
本発明の誘電体表面微細成型装置の実施例1としての樹脂表面微細成型装置10について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)及び(b)が樹脂表面微細成型装置10の縦断面図、(c)及び(d)が微細凹凸形状転写部の縦断面拡大図であり、(a)及び(c)は被成形体20の無い状態、(b)及び(d)は被成形体20を保持して転写しているときの状態を示している。
【0027】
この樹脂表面微細成型装置10は、一枚ずつ逐次処理する枚様式のものであり、搬入出口13をゲート12で開閉しうる電波シールド兼用の筐体11と、その中に格納された被成形体支持体14とマグネトロン15(電波発生手段)と照射管16(電波照射手段)と表面転写用型17と型支持体18と接離機構19とを具えている。
そのうち、被成形体支持体14は被成形体20を処理する間は例えば上端面に乗載して保持するものであり、マグネトロン15は、電波法等の規制に適合した電波を発生するものであり、照射管16は、例えば導波管などからなり、発生電波を照射位置へ導くようになっている。
【0028】
また、表面転写用型17は、その当接面すなわち被成形体20との当接面に、例えば下面に、転写の原パターンとなる凹凸形状が形成されたものであり、型支持体18は、表面転写用型17を例えば上面の吸着により保持するものであり、接離機構19は、例えばエアシリンダにて型支持体18を昇降させることにより、被成形体支持体14に被成形体20が保持されていればその被成形体20と型支持体18に保持されている表面転写用型17とを当接させたり離隔させたりするものである。
これらの機構や部材は、以下に述べる特徴事項を除けば、従来品やその改造品で足りるので、以下、特徴事項を詳述する。
【0029】
すなわち、樹脂表面微細成型装置10に係る特徴事項は、被成形体支持体14に保持されており更に表面転写用型17を当接されている被成形体20を電波加熱するために、マグネトロン15と照射管16とが特定配置されていることと、加熱箇所を被成形体20における表面転写用型17との当接面に集中させるために、表面転写用型17が電波を反射する薄い導電体たとえば金属薄板や金属蒸着膜で作られ、被成形体支持体14は電波を透過させる絶縁体・誘電体で作られ、型支持体18は熱伝導率のほどよい絶縁体で作られる。
【0030】
被成形体支持体14や型支持体18は、上記要件に加えて強度や剛性等の要求仕様も満たすために例えば石英やセラミックあるいは硬質のエンジアリングプラスチック等から製造される。強制冷却手段は付設しても良いが設けなくても済むよう、型支持体18の材質の選定について更に、加熱時には表面転写用型17を介して被成形体20から熱を奪いすぎないよう且つ降温時には放熱に時間が掛かりすぎないよう、熱伝導率の適切なものが採択される。
表面転写用型17は、銅やアルミニウム等の金属に限らず、微細加工に適う導電体であれば使用可能であり、熱容量を小さくするため、薄い板状体や,箔状体,膜状体,層状体などから製造される。凹凸形状の加工は従来と同様な微細型加工技術で行える。
【0031】
照射管16は被成形体支持体14の直下に配置され、その下にマグネトロン15が配置されているので、電波発生が被成形体20の支持体14と表面転写用型17の支持体18との間隙の外で行われるとともに、発生電波が被成形体支持体14に照射され、照射電波が被成形体支持体14を透過して上記間隙内に導かれる。しかも、その照射電波の大部分は、被成形体支持体14側から型支持体18側へ進行し、型支持体18に表面転写用型17が保持されていれば、そこで反射するようになっている。なお、マグネトロン15で発生する好適な電波はマイクロ波やミリ波である。マイクロ波は、極超短波(UHF、SHF)とも呼ばれ、一般的には周波数が300MHz〜300GHz即ち波長が1m〜1mmであるが、ここでは、被成形体20の透過と透過後の反射とを利用するので、被成形体20の厚み等に応じて且つ環境規制等の範囲内で処理効率の良い波長が選定される。
【0032】
この実施例1の樹脂表面微細成型装置10を用いて行う樹脂表面微細成型方法(誘電体表面微細成型方法)について、図面を引用して説明する。図1は、(a)及び(b)が樹脂表面微細成型装置10の縦断面図、(c)及び(d)が微細凹凸形状転写部の縦断面拡大図、(e)及び(f)が拡大率を上げた微細凹凸形状転写部の縦断面拡大図である。また、図2(a)及び(b)も微細凹凸形状転写部の縦断面拡大図である。
【0033】
ここでパターン転写の対象とされる被成形体20は、例えばCDやDVDの素材となる円板状基材であり、その材質が電波を透過させる熱可塑性樹脂であり、ガラス転移温度以上で軟化し、それより低温になれば再び硬化する。
このような被成形体20は、ゲート12を動作させて搬入出口13を開けた筐体11の中へ(図1(a)参照)、図示しない搬送ロボット等にて搬入され、被成形体支持体14の上端面上に載置される(図1(c)参照)。
【0034】
それから、ゲート12で搬入出口13が閉じられて、筐体11で電波漏洩防止や減圧などの処理雰囲気が調うと、筐体11の中で、型支持体18が下降して、表面転写用型17が被成形体20に当接する(図1(b)参照)。表面転写用型17の下面には原パターンの凹凸が形成されているので、表面転写用型17の下面と被成形体20の上面とが全域で密接するよう、適宜な押し付け力が表面転写用型17に掛けられるが、大抵は、接離機構19の推進力を使うまでもなく、型支持体18の重みで足りる。
【0035】
これで加熱待ちになるので、マグネトロン15が作動して、電波8が発せられる。この電波8は、照射管16によって被成形体支持体14に本例では下から照射され、被成形体支持体14を透過して被成形体20に照射されて、大部分が被成形体20内に進入し更に被成形体20における表面転写用型17との当接面に進行し、それから表面転写用型17における被成形体20との当接面で反射される(図1(d),(e)参照)。この反射により、被成形体20のうち表面転写用型17側の表層部21が他の部分より強く加熱され、その表層部21が、ガラス転移温度以上に加熱されて軟化し、表面転写用型17の当接面の凹みを埋めるよう変形する(図1(f)参照)。
【0036】
被成形体20の表層部21が十分に溶融して、表面転写用型17の当接面の凹凸が溶融樹脂で埋め尽くされた頃に、電波8の発生と照射が止められる(図2(a)参照)。被成形体20が熱可塑性樹脂であっても、その軟化・溶融は表層部21にとどまり、被成形体20の大部分は固まったままなので、電波8の照射停止のタイミングが遅れる分にはスループット低下以外の不都合がない。電波8の照射が無くなると、表層部21の熱が、表面転写用型17から型支持体18へ伝達されるとともに、被成形体20から被成形体支持体14へも伝達されて、逃がされる。表層部21が薄くて、その熱容量が小さいので、表層部21の温度が速やかに下降し、そのため表層部21が速やかに固化する。一方、他の部分の昇温は、僅かにすぎない。
【0037】
そして、表層部21の降温後には型支持体18が上昇して、表面転写用型17と被成形体20とが離隔すると(図2(b)参照)、表面転写用型17に当接していた表面22に表面転写用型17の凹凸形状の転写された被成形体20が出来上がる。
その後は、搬入出口13が開き、筐体11から被成形体20が搬出されて、樹脂表面微細成型装置10が次の被成形体20を受け入れる態勢に戻る(図1(a)参照)。
こうして、一枚の被成形体20に対する樹脂表面微細成型が実行される。また、それが繰り返されると、多数の被成形体20の表面22に微細な凹凸形状が転写される。
【実施例2】
【0038】
本発明の樹脂表面微細成型装置の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図3は、(a)が樹脂表面微細成型装置30の表面転写用型17の縦断面拡大図、(b)が微細凹凸形状転写部の縦断面拡大図である。
【0039】
この樹脂表面微細成型装置30が上述した実施例1の樹脂表面微細成型装置10と相違するのは(図3(a)参照)、表面転写用型17が材質の異なる基層部31と凹凸層32とからなる二層物になった点である。
基層部31も凹凸層32も導電体からなり厚みが例えばnmやμm単位で表されるほど薄いが、基層部31は例えば銅で作られ、凹凸層32は別の導電体たとえばアルミニウムで作られる。
【0040】
表面転写用型17の表面に形成される原パターンの凹凸形状は、微細なものが想定されており、全部が又は少なくとも一部が例えばnmやμm単位で表されるほど細かい。
大量生産の不要な型加工であっても、そのような微細凹凸形状の加工形成に際して凹部の深さを均一に揃えるのは、一般に難しいが、この場合は、基層部31と凹凸層32とで材質が異なるので、それぞれに対して作用レベルの異なる加工法を適用することで容易かつ的確に凹部深さを揃えることができる。例えば、エッチングで加工するのであれば、銅とアルミニウムとの選択比が大きい反応ガスを使用することにより、凹凸層32だけを綺麗に打ち抜いて正確な凹凸形状を形成することができる。
【0041】
表面転写用型17が出来上がれば、樹脂表面微細成型装置30の使用態様や動作は樹脂表面微細成型装置10のときと同じなので(図2(b)参照)、繰り返しとなる説明は割愛するが、この場合、基層部31の材質に靱性の高い導電体を採用することで、容易に、表面転写用型17の寿命を延ばすことができる。
【実施例3】
【0042】
本発明の樹脂表面微細成型装置の実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図4は、(a)が樹脂表面微細成型装置40の表面転写用型17の縦断面拡大図、(b)が微細凹凸形状転写部の縦断面拡大図である。
【0043】
この樹脂表面微細成型装置40が上述した実施例2の樹脂表面微細成型装置30と相違するのは(図3(a)参照)、表面転写用型17の基層部31が導電体ではない基層部41になった点である。
この場合、基層部41は例えばセラミックや耐熱性樹脂で作られ、その材質の選択範囲が広がっている。なお、基層部41が電気絶縁性の誘電体の場合はそれを電波8が透過するが(図4(b)参照)、その場合でも、電波8の照射量を増やせば、凹凸層32による電波8の反射によって表層部21が適切に加熱されるので、樹脂表面微細成型装置40を樹脂表面微細成型装置10と同じく使用することができる。
【実施例4】
【0044】
本発明の樹脂表面微細成型装置の実施例4について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図5(a)〜(c)は、何れも、樹脂表面微細成型装置50の縦断面図である。
【0045】
この樹脂表面微細成型装置50が上述した実施例1〜3の樹脂表面微細成型装置10,30,40と相違するのは(図5(a)〜(c)参照)、被成形体支持体14が電波反射体の被成形体支持体51になった点と、照射管16が輪状の照射管53になった点と、照射管53を進退移動させる待避機構52が追加された点である。
被成形体支持体51は、全体が金属等の導電体からなり、その全面が電波を反射するものであり、被成形体20を載置する上端面も電波を反射するようになっている。
【0046】
待避機構52は、例えばエアシリンダやボールねじ機構からなり、この例では照射管53を作用位置まで上昇させることと照射管53を待避位置まで下降させることとを交互に行うようになっている。
照射管53は、被成形体20や被成形体支持体51の外形に応じて丸い輪状であったり角形の輪状であったりするが、何れであっても、マグネトロン15の発した電波8を内向きに照射するようになっており、しかも内径・内寸が被成形体支持体51の外径・外寸より少し大きくて被成形体支持体51の外周に遊嵌しうるようにもなっている。
【0047】
この実施例4の樹脂表面微細成型装置50を用いて行う樹脂表面微細成型方法について、図面を引用して説明する。図5は、(a)〜(c)が何れも樹脂表面微細成型装置50の縦断面図であり、(d)が微細凹凸形状転写部の縦断面拡大図である。
樹脂表面微細成型装置50の使用態様や動作は樹脂表面微細成型装置10と概ね同じで部分的に相違するだけなので、繰り返しとなる説明は割愛し、相違点を詳述する。
この場合、先ず被成形体20の搬入出時には、それを妨げない待避位置まで照射管53が待避機構52によって下降させられる(図5(a),(b)参照)。
【0048】
そして、筐体11の中で、型支持体18が下降して、表面転写用型17が被成形体支持体51上の被成形体20に当接して、対向する被成形体支持体51と表面転写用型17及び型支持体18との間隙に被成形体20が挟み込まれた状態になると(図5(c)参照)、その被成形体20の周囲を取り巻く作用位置まで照射管53が待避機構52によって上昇させられる。それから、その状態で、マグネトロン15から電波8が発せられる。すると、その電波8は、照射管53によって被成形体支持体51と型支持体18との間隙の脇からその間隙内に照射され、被成形体支持体51の上面と表面転写用型17の下面とで反射を繰り返しながら被成形体20内を進行して(図5(d)参照)、上記間隙の全域ひいては被成形体20の全体に行き渡る。
【0049】
こうして、この場合も、反射電波によって被成形体20の表層部21が集中して加熱される。しかも、電波8の反射回数が多いことから、より多くの割合で電波エネルギーが熱エネルギーに変換されるので、電波照射量が削減でき、電波漏洩量も減る。
また、反射利用の電波加熱には平坦面での反射電波より凹凸面での反射電波の方が電波から熱へのエネルギー変換効率が良いという特性があるので、電波8の照射強度や照射時間を適切に選定すれば、被成形体20の表層部のうち表面転写用型17側の表層部21だけを溶融させ、被成形体支持体51側の表層部の溶融は回避することも可能である。
【実施例5】
【0050】
本発明の樹脂表面微細成型装置の実施例5について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図6は、(a)が微細凹凸形状転写部の縦断面図、(b)が微細凹凸形状転写部の縦断面拡大図である。
【0051】
この樹脂表面微細成型装置60が上述した実施例4の樹脂表面微細成型装置50と相違するのは(図6(a)参照)、被成形体支持体51が材質の異なる被成形体支持体端部61と被成形体支持体本体62との組み合わせになった点である。
被成形体20を乗載する被成形体支持体端部61は、電波8を反射する銅板などの導電体で作られるが、被成形体支持体本体62は安価で丈夫な他の部材で作られ、それらを合わせた被成形体支持体における電波反射部位は、被成形体20の保持面を含む表面部分だけになっている。
【0052】
このような樹脂表面微細成型装置60の使用態様や動作は上述した樹脂表面微細成型装置50と基本的に同じであるが、被成形体支持体端部61をもう一つの表面転写用型にしても良く、そうすれば被成形体20の表裏に対して一度に凹凸形状を転写することができる。表裏両面の同時転写の方式には両転写パターンの位置合わせ精度が良いという利点もある。
また、被成形体支持体本体62に対する被成形体支持体端部61の着脱を容易に行えるようにしておけば、被成形体20の表裏面のうち溶融させたくない方の表層部23が調整時等に不所望に加熱されて被成形体支持体端部61に融着してしまったようなときでも、速やかに修復することができる。
【実施例6】
【0053】
図7に微細凹凸形状転写部の縦断面図を示した本発明の樹脂表面微細成型装置70が上述した実施例5の樹脂表面微細成型装置60と相違するのは、被成形体支持体が被成形体支持体本体71と対向反射体73との組み合わせになった点である。
被成形体支持体本体71は、上端部を除けば被成形体支持体本体62と同様のもので良いが、上端面のうち被成形体20の保持部分には被成形体保持用凹み72が彫り込み形成されており、その内底には対向反射体73が填め込まれている。
【0054】
対向反射体73は、被成形体支持体端部61同様、電波8を反射する銅板などの導電体で作られ、単なる電波反射体で足りる場合は上面が平坦に仕上げられ、もう一つの表面転写用型を兼ねる場合は上面に原パターンの凹凸形状が形成される。
被成形体保持用凹み72は、深さが対向反射体73の厚みと被成形体20の厚みとの和よりも浅く、内径・内寸が被成形体20の外径・外寸より僅かに小さいので、被成形体20を嵌入保持すると、被成形体20の上面部分が被成形体支持体本体71の上端面から上へ出るようになっている。
【0055】
このような樹脂表面微細成型装置70の使用態様や動作は上述した樹脂表面微細成型装置60とほとんど同じであるが、被成形体20が被成形体保持用凹み72に嵌り込むようになっているので、被成形体保持用凹み72に被成形体20や対向反射体73の位置決めの役目も持たせることにより、位置決め手段が簡素化されるうえ、被成形体20や対向反射体73の不所望な横滑りも簡便に防止することができる。
また、対向反射体73の上面が平坦であると、そこに当接する被成形体20の表層部23が溶融したときに縁の部分が流出して被成形体20の不所望な変形を招きやすいが、樹脂表面微細成型装置70にあっては、被成形体20の表層部23が被成形体保持用凹み72の内壁面で囲まれているので、被成形体20の不所望な変形が抑制される。
【実施例7】
【0056】
図8に微細凹凸形状転写部の縦断面図を示した本発明の樹脂表面微細成型装置80が上述した実施例6の樹脂表面微細成型装置70と相違するのは、被成形体支持体が被成形体支持体本体81と被成形体支持体端部82との組み合わせになった点である。
【0057】
被成形体支持体本体81は、上端面が電波を反射するものであれば、上述した被成形体支持体51のようなものでも良く、あるいは、やはり上述した被成形体支持体端部61と被成形体支持体本体62との結合体のようなものでも良い。
被成形体支持体端部82は、上述した被成形体支持体14のように電波を透過させる部材から作られ、被成形体支持体本体81を延長する形で被成形体支持体本体81の上端に取り付けられる。この被成形体支持体端部82の上面には、上述した被成形体保持用凹み72と同様で少しだけ浅い被成形体保持用凹み83が形成されているが、その作用効果が不要であれば被成形体支持体端部82の上面は平坦で良い。
【0058】
このような樹脂表面微細成型装置80の使用態様や動作は上述した樹脂表面微細成型装置50,60,70と基本的に同じであるが、表面転写用型17と対向する電波反射面が被成形体20の下面から被成形体支持体本体81の上面へ移っているので、電波を脇から照射しうる間隙が、電波の反射を基準としてみたときには、表面転写用型17の直接的な支持体18と被成形体20の間接的な支持体81との間隙になっていて、被成形体20の厚みより概ね被成形体支持体端部82の厚み分だけ広いので、被成形体20が極めて薄いものであっても、十分な量の電波を脇から照射することができる。
【実施例8】
【0059】
本発明の誘電体接合装置の実施例8としての樹脂接合装置90について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図9は、樹脂接合装置90の要部の模式図である。
【0060】
この樹脂接合装置90は、電波を反射する導電体フィルム99を間に挟んで導電体フィルム99の片面には熱可塑性樹脂のシート97を融着させると同時に導電体フィルム99の他面には熱可塑性樹脂のシート98を融着させるのを反射利用の電波加熱にて連続して行うために、近接配置された一対の押えローラ91,92と、それらの外であって押えローラ91寄りのところに設置された照射管93及びマグネトロン95と、押えローラ91,92の外であって押えローラ92寄りのところに設置された照射管94及びマグネトロン96と、図示しないシート供給ユニットやシート巻取ユニットとを具えている。
【0061】
押えローラ91,92は、その全体が又は樹脂シート97,98を押す外周面部分が電気絶縁性の誘電体からなり、照射管93,94から照射された電波を透過させるようになっている。また、押えローラ91,92は、樹脂シート97と導電体フィルム99と樹脂シート98とを重ねた状態で纏めて挟むことによりそれらを軽く当接させる当接機構として機能するとともに、鏡像状態で回転することによりシート移送機構としても機能するものである。
【0062】
マグネトロン95と照射管93は、押えローラ91,92の対向間隙における樹脂シート97と導電体フィルム99との当接箇所に電波を照射するものであり、その照射電波の大部分が樹脂シート97の外からその中へ導入されて導電体フィルム99の表面で反射するようになっている。
マグネトロン96と照射管94は、押えローラ91,92の対向間隙における樹脂シート98と導電体フィルム99との当接部位に電波を照射するものであり、その照射電波の大部分が樹脂シート98の外からその中へ導入されて導電体フィルム99の表面で反射するようになっている。
【0063】
この実施例8の樹脂接合装置90を用いて行う樹脂接合方法(誘電体接合方法)について説明する。この場合、樹脂シート97,98には、電波を透過させる電気絶縁性の熱可塑性樹脂(熱可塑性の誘電体)が用いられる。
樹脂接合装置90を稼動させると、マグネトロン95,96が作動するとともに、押えローラ91,92が回転する。押えローラ91,92の回転に随伴して又は連動してシート供給ユニットやシート巻取ユニットも作動する。
そして、押えローラ91,92が回転すると、導電体フィルム99を中間に挟んだ樹脂シート97及び樹脂シート98の積層シートが、押えローラ91,92の間に送り込まれて、互いに当接しあう。
【0064】
また、マグネトロン95が作動すると、樹脂シート97の外から樹脂シート97に電波が照射される。そして、その照射電波の大部分が、樹脂シート97内に進入してから、樹脂シート97における導電体フィルム99との当接面に進行し、更に導電体フィルム99における樹脂シート97との当接面で反射する。
これにより、樹脂シート97における導電体フィルム99との当接面のうち電波を照射された部分が、集中して加熱され、ガラス転移温度以上に昇温して、導電体フィルム99に融着する。
【0065】
さらに、マグネトロン96が作動すると、樹脂シート98の外から樹脂シート98に電波が照射される。そして、その照射電波の大部分が、樹脂シート98内に進入してから、樹脂シート98における導電体フィルム99との当接面に進行し、更に導電体フィルム99における樹脂シート98との当接面で反射する。
これにより、樹脂シート98における導電体フィルム99との当接面のうち電波を照射された部分(表層部)が、集中して加熱され、ガラス転移温度以上に昇温して、導電体フィルム99に融着する。そして、その融着部分は、電波照射位置を通り過ぎると、強制冷却など行うまでもなく速やかに降温して固まり、しっかり接合する。
【0066】
こうして、導電体フィルム99を中間層とし樹脂シート97,98を外層とする三層の導電性シートが能率良く製造される。
なお、導電体フィルム99と樹脂シート97との二層シートを製造する場合は、樹脂シート98の供給を省くとともに、マグネトロン96を停止させておけば良い。また、そのような二層シート製造の専用装置では、樹脂シート98の供給ユニットや,マグネトロン96,照射管94を設ける必要がない。
【0067】
[その他]
上記実施例では、樹脂表面の微細成型については一枚ごと一括処理するものを例示し、樹脂接合については連続式のものを例示したが、逆でも良く、バッチ式でも良く、ステップ&リピート方式でも良い。
また、樹脂表面の微細成型に離型剤や抜勾配を利用するのも良い。
さらに、上記実施例では、本発明の加熱手法の適用対象である被加熱物として熱可塑性樹脂の被成形体20や樹脂シート97,98を例示したが、本発明の適用は、熱可塑性樹脂に限定されるものでなく、熱可塑性を示す物質であって電波加熱の可能な誘電体であれば良い。例えばガラスなどにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例1について、(a)及び(b)が樹脂表面微細成型装置の縦断面図、(c)及び(d)が微細凹凸形状転写部の縦断面拡大図、(e)及び(f)が拡大率を上げた微細凹凸形状転写部の縦断面拡大図である。
【図2】(a)及び(b)も微細凹凸形状転写部の縦断面拡大図である。
【図3】本発明の実施例2について、(a)が表面転写用型の縦断面拡大図、(b)が微細凹凸形状転写部の縦断面拡大図である。
【図4】本発明の実施例3について、(a)が表面転写用型の縦断面拡大図、(b)が微細凹凸形状転写部の縦断面拡大図である。
【図5】本発明の実施例4について、(a)〜(c)何れも樹脂表面微細成型装置の縦断面図、(d)が微細凹凸形状転写部の縦断面拡大図である。
【図6】本発明の実施例5について、(a)が微細凹凸形状転写部の縦断面図、(b)が微細凹凸形状転写部の縦断面拡大図である。
【図7】本発明の実施例6について、(a)及び(b)何れも微細凹凸形状転写部の縦断面図であり、(a)は被成形体の無い状態、(b)は被成形体を保持して転写しているときの状態を示している。
【図8】本発明の実施例7について、(a)及び(b)何れも微細凹凸形状転写部の縦断面図であり、(a)は被成形体の無い状態、(b)は被成形体を保持して転写しているときの状態を示している。
【図9】本発明の実施例8について、樹脂接合装置の要部の模式図である。
【符号の説明】
【0069】
8…電波、
10…樹脂表面微細成型装置(誘電体表面微細成型装置)、
11…筐体、12…ゲート、13…搬入出口、
14…被成形体支持体、15…マグネトロン、16…照射管、
17…表面転写用型、18…型支持体、19…接離機構、
20…被成形体、21…表層部、22…表面、23…表層部、
30…樹脂表面微細成型装置、31…基層部、32…凹凸層、
40…樹脂表面微細成型装置、41…基層部、
50…樹脂表面微細成型装置、51…被成形体支持体、
52…待避機構、53…照射管、
60…樹脂表面微細成型装置、
61…被成形体支持体端部、62…被成形体支持体本体、
70…樹脂表面微細成型装置、71…被成形体支持体本体、
72…被成形体保持用凹み、73…対向反射体、
80…樹脂表面微細成型装置、81…被成形体支持体本体、
82…被成形体支持体端部、83…被成形体保持用凹み、
90…樹脂接合装置(誘電体接合装置)、
91,92…押えローラ、93,94…照射管、
95,96…マグネトロン、97,98…樹脂シート、
99…導電体フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成形体に表面転写用型を当接させて加熱し降温後に離型することにより前記表面転写用型の当接面の凹凸形状を前記被成形体の当接面に転写する誘電体表面微細成型方法において、前記被成形体には熱可塑性の誘電体を採用し、前記表面転写用型の全部に又はそのうち当接面を含む部分には導電体を用い、加熱処理に際しては前記表面転写用型および前記被成形体の外から電波を照射し且つそのときには照射電波の全部または一部が前記被成形体内に進入してから前記表面転写用型との当接面に進行し更に前記表面転写用型の当接面で反射するよう電波照射を行うことにより前記被成形体の当接面部分を溶融させることを特徴とする誘電体表面微細成型方法。
【請求項2】
表面転写用型を保持しうる型支持体と、被成形体を保持しうる被成形体支持体と、前記型支持体に保持されている表面転写用型と前記被成形体支持体に保持されている被成形体とを当接させたり離隔させたりする接離機構と、前記被成形体支持体に保持されている被成形体を加熱する加熱手段とを備えた誘電体表面微細成型装置において、前記加熱手段が、熱可塑性の誘電体を透過する電波を前記型支持体と前記被成形体支持体との間隙の外で発生する電波発生手段と、その電波を前記間隙内に導いてその全部または一部を前記被成形体支持体側から前記型支持体側へ進行させる電波照射手段とを具備したものであることを特徴とする誘電体表面微細成型装置。
【請求項3】
前記被成形体支持体が電波を透過させるものであり、前記電波照射手段が前記被成形体支持体を介して前記間隙内に電波を照射するものであることを特徴とする請求項2記載の誘電体表面微細成型装置。
【請求項4】
前記被成形体支持体の全面が又は前記被成形体支持体のうち被成形体の保持面を含む表面部分が若しくは前記型支持体に表面転写用型を保持させたときその表面転写用型と対向する断面を含む部分が電波を反射するものであり、前記電波照射手段が前記間隙の脇から前記間隙内に電波を照射するものであることを特徴とする請求項2記載の誘電体表面微細成型装置。
【請求項5】
前記被成形体支持体のうち被成形体の保持面に被成形体保持用凹みが形成されていることを特徴とする請求項4記載の誘電体表面微細成型装置。
【請求項6】
熱可塑性の誘電体に導電体を当接させて加熱することにより前記誘電体を前記導電体に融着させる誘電体接合方法であって、加熱処理に際しては前記誘電体の外から前記誘電体に電波を照射し且つそのときには照射電波の全部または一部が前記誘電体の内に進入してから前記導電体との当接面に進行し更に前記導電体の当接面で反射するよう電波照射を行うことにより前記誘電体の当接面部分を溶融させることを特徴とする誘電体接合方法。
【請求項7】
熱可塑性の誘電体と導電体とを当接させる当接機構と、その当接部位を前記誘電体のガラス転移温度以上に昇温させる加熱手段とを備えた誘電体接合装置であって、前記加熱手段が、前記当接機構の外で電波を発生する電波発生手段と、その電波を前記当接機構における誘電体と導電体との当接箇所に導いてその全部または一部を誘電体配置側から導電体配置側へ進行させる電波照射手段とを具備したものであることを特徴とする誘電体接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−18570(P2008−18570A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190656(P2006−190656)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(506238282)有限会社中▲野▼製作所 (2)
【Fターム(参考)】