説明

誤操作防止機能付スイッチおよびコンピュータ筐体

【課題】スイッチの瞬間的な操作を許容しつつ不用意な長押し操作を防止することのできる誤操作防止機能付スイッチを提供すること。
【解決手段】押圧操作釦4の位置と回転姿勢の変化を押圧操作釦4の可動側テーパ面21とスイッチ基板18の固定側テーパ面20から成る押圧力伝達解除機構5で規制して押圧操作釦4の係合部11と受圧部7の受圧面15の当接状態を制御することにより、スイッチ本体8の受圧部7がストロークエンド周辺のインポジション領域に突入してからストロークエンドに到達するまでの僅かな時間に限ってスイッチ本体8の作動状態を維持する構成とし、ユーザの不注意等によって押圧操作釦4が不用意に長押しされてもスイッチ本体8が長い時間たとえば数秒といった時間に亘って作動しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチの不用意な長押しが問題となる装置、たとえば、1つのスイッチを電源スイッチやシャットダウンスイッチとして兼用するコンピュータ等に用いて好適な誤操作防止機能付スイッチと、この誤操作防止機能付スイッチを備えたコンピュータ筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
旧式のコンピュータでは電源スイッチとは別にシャットダウン用のリセットスイッチを配備するのが一般的であったが、装置の製造コスト上、独立した2つのスイッチを並列的に配備することには問題があり、昨今においては、シャットダウンスイッチを兼ねる電源スイッチを筐体上に1つだけ配備し、コンピュータが備えるマイクロプロセッサとソフトウェア上の処理を利用して当該電源スイッチに対する操作が電源のON・OFFのためのものであるのかシャットダウンのためのものであるのかを判定するようにしたものが一般的となっている。
【0003】
この種のコンピュータにおいては、通常、数秒程度の時間に亘って電源スイッチが押圧され続けると、この押圧操作が、通常のキーボード操作では対処し得ないエラーを解消するためのシャットダウン指令として認識され、また、それに満たない短時間の押圧操作が検知された場合には、其の押圧操作が通常の電源のON・OFF操作として認識されるようになっている。
【0004】
しかし、電源のON・OFF操作に際してユーザが不用意に電源スイッチを長押ししたり、あるいは、コンピュータの周辺に放置された物品が荷崩れを起こして電源スイッチに当接したりすると、電源の切断に関わる適切な準備動作が装置内部で行われないまま強制的に電源がシャットダウンされてしまい、動作中のハードディスクの故障やデータの消失等の障害が発生する恐れがある。
【0005】
コンピュータ等に実装するスイッチ類の改良に関わる技術としては、電源スイッチのプッシュボタンを回転可能に構成し、プッシュボタンがアンロック位置に回転している状態ではプッシュボタンの押し込み操作を許容する一方、プッシュボタンがロック位置に回転している状況下ではプッシュボタンの押し込み操作を禁止するようにした電源ボタン装置が特許文献1として開示され、また、プッシュボタンを内周側と外周側に分割して構成し、外周側のプッシュボタンに応動して作動するスイッチがONとなってから内周側のプッシュボタンに応動して作動するスイッチがONとなった場合に限って適切なスイッチング操作が行われたものと判断して電源の投入等の処理を行うようにしたスイッチ装置が特許文献2として開示されている。
【0006】
しかしながら、前者は、スイッチの不用意な押し込み操作を禁止して子供の悪戯に対処したものであり、スイッチの瞬間的な操作と長押し操作を同時かつ全面的に禁止することはできても、スイッチの瞬間的な操作を許容しつつ不用意な長押し操作を防止するといった機能はない。
【0007】
また、後者は、内外2系統のプッシュボタンの各々に連動して独立的に作動する2つのスイッチの動作シーケンスを確認することによって、プッシュボタンが指で適正に操作されたのか他の物品の衝突等によって偶然に押圧されたのかを判定するものに過ぎず、前記と同様、やはり、スイッチの瞬間的な操作を許容しつつ不用意な長押し操作を防止するといった機能は備えていない。
【0008】
【特許文献1】特開平7−282669号公報
【特許文献2】特開2005−332780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、スイッチの瞬間的な操作を許容しつつ不用意な長押し操作を防止することのできる誤操作防止機能付スイッチを提供すること、更には、この誤操作防止機能付スイッチを備えたコンピュータ筐体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の誤操作防止機能付スイッチは、前記課題を達成するため、ON・OFF操作用の受圧部とスイッチ本体とから成り、前記受圧部の移動を該受圧部の自動復帰位置からストロークエンドに至る区間で許容すると共に、前記受圧部が前記ストロークエンド周辺のインポジション領域内に位置する間だけ作動状態を保持する自動復帰式のスイッチと、
前記受圧部の移動方向に沿って中心部に穿設された貫通孔と前記受圧部に形成された受圧面に当接する係合部とを有して前記受圧部の手前側に配備された押圧操作釦と、
前記押圧操作釦に対する押圧操作を受けて前記受圧部が前記インポジション領域内に到達した時点で前記押圧操作釦の回転姿勢を変化させて前記係合部と前記受圧面との当接を解除する押圧力伝達解除機構と、
前記押圧力伝達解除機構の作動後、前記押圧操作釦に対する押圧操作が解除された時点で、前記押圧操作釦の回転姿勢と位置を初期位置に復帰させて前記係合部を前記受圧面の手前に位置させるリセット機構とを備えたことを特徴とする構成を有する。
【0011】
以上の構成において、受圧部の手前側に配備された押圧操作釦をユーザが手動操作によって押し込むと、まず、スイッチ本体に取り付けられた受圧部に形成された受圧面が押圧操作釦の係合部によって押圧され、ON・OFF操作用の受圧部が自動復帰位置からストロークエンドに向けて移動を開始する。
そして、スイッチ本体の受圧部がストロークエンド周辺のインポジション領域内に侵入すると、自動復帰式のスイッチ本体が作動状態となる。つまり、スイッチ本体が常開接点を有する構造であれば回路が閉じられ、また、スイッチ本体が常閉接点を有する構造であれば回路が開かれることになる。通常、コンピュータ等の電源スイッチは常開接点を有するスイッチであるから、回路が閉じられた時点(スイッチの作動状態)でマイクロプロセッサとソフトウェア上の処理により押圧操作時間の計測が開始される。常閉接点を有するスイッチを利用した場合であれば、回路が開かれた時点(スイッチの作動状態)で押圧操作時間の計測を開始すればよい。
これと同時に、押圧力伝達解除機構はハードウェアとして独立的に作動し、スイッチ本体の受圧部がストロークエンド周辺のインポジション領域内に到達した時点で押圧操作釦の回転姿勢を変化させ、この姿勢変化によって、少なくとも、受圧部がストロークエンドに到達する以前の段階で押圧操作釦の係合部と受圧部の受圧面との当接状態を解除する。
スイッチ本体は自動復帰式であるから、押圧操作釦の係合部と受圧部の受圧面との当接状態が一旦解除されれば、仮に、押圧操作釦が押し込まれたままの状態に保持されていても、スイッチ本体の受圧部が自動的にストロークエンド周辺のインポジション領域から自動復帰位置に向けて押し戻され、スイッチ本体が再び非作動の状態に戻る。
スイッチ本体が作動状態を維持するのは、自動復帰位置からストロークエンドに向けて移動する受圧部がストロークエンド周辺のインポジション領域に突入してから押圧力伝達解除機構の作動が完了するまでの僅かな時間であるから、この所要時間がスイッチの長押しとして認識されることはない。
なお、理論的には、自動復帰位置からストロークエンドに向けて移動する受圧部をストロークエンド周辺のインポジション領域の端部、つまり、自動復帰位置に近い側のインポジション領域の限界位置に留め置くことによって、受圧部がインポジション領域内に位置し且つ押圧力伝達解除機構が非作動といった状態、要するに、スイッチ本体が作動している状態を継続して維持することが可能であるが、実際には、ON・OFF操作用の受圧部は自動復帰位置に近い側のインポジション領域の限界位置を越えてストロークエンドにまで移動することが可能であり、押圧操作釦を介して手動で押圧される受圧部は、通常、手動操作の勢いによって自動復帰位置に近い側のインポジション領域の限界位置を越えて一気にストロークエンドの近傍にまで移動してしまうので、仮に、押圧操作釦を操作するユーザに其のような意図があったとしても、押圧操作釦の操作によってスイッチ本体の作動状態を継続して維持するといったことは現実的には殆ど不可能である。
つまり、押圧操作釦を用いた操作によって実現が可能なのは、スイッチ本体を瞬間的に作動状態とする操作のみであり、押圧操作釦それ自体を押し続けたとしても、スイッチ本体の受圧部を長押しするといった操作は実際にはできないので、押圧操作釦を用いた実質的なスイッチの長押し操作が完全に防止される。
そして、押圧力伝達解除機構の作動後、押圧操作釦からユーザが手を離すと、リセット機構が作動して押圧操作釦の回転姿勢と位置を初期位置に復帰させ、押圧操作釦の係合部を受圧部の受圧面の手前に位置させて、改めて、押圧操作釦の押圧操作によって受圧部を移動させ得る状態とする。
一方、スイッチの長押し操作が必要とされる状況下においては、受圧部の移動方向に沿って押圧操作釦の中心部に穿設された貫通孔からクリップや針金あるいはボールペン等の先端を突入させ、この先端でスイッチ本体の受圧部を直接的に押圧することで受圧部を自動復帰位置からストロークエンドに向けて移動させ、更に、そのまま押圧状態を維持することによって、受圧部をストロークエンド近傍のインポジション領域内に留め置くようにする。
ストロークエンドはインポジション領域の一部であるから、受圧部を押すクリップや針金あるいはボールペン等に受圧部の自動復帰力を上回る力を定常的に加え続けて押し切り状態を維持するといった簡単な操作によって、比較的に長い時間たとえば数秒に亘って受圧部をインポジション領域内に留め置くことができる。この場合、スイッチ本体が作動状態を維持する時間が長くなるので、マイクロプロセッサとソフトウェア上の処理により、この押圧操作時間がスイッチの長押しとして認識されることになる。
以上に述べた通り、押圧操作釦を押圧操作した場合にはスイッチ本体が必ず瞬間的に作動し、また、スイッチ本体を数秒に亘って作動させるためには、押圧操作釦に穿設された貫通孔からクリップや針金あるいはボールペン等の先端を突入させてスイッチ本体の受圧部を直接的に押圧するといった操作が要求されるので、スイッチの瞬間的な押圧操作を許容しつつ確実に不用意な長押し操作を防止することができる。
【0012】
より具体的には、前記受圧部の中心から径方向外側に向けて張り出す突出領域によって前記受圧面を形成する一方、
前記押圧操作釦の中心から径方向外側へ向かう離間距離が前記受圧面の張り出し量よりも小さく且つ前記受圧部の他部の張り出し量よりも大きい位置から前記受圧部に向けて突出し、前記押圧操作釦の回転姿勢と位置が初期位置にある状態で前記受圧面に当接する突起によって前記係合部を形成し、
前記スイッチ本体を固定するスイッチ基板の側に前記押圧操作釦の外周部先端の輪郭に合わせて形成された固定側テーパ面と、前記押圧操作釦の外周部先端で周方向に沿って形成された可動側テーパ面とによって前記押圧力伝達解除機構を構成し、
前記押圧操作釦の外周部とスイッチの取り付け対象となる装置側固定部とに両端部を接続され、前記押圧操作釦の回転姿勢と位置が初期位置にある状態で弾性変形量が最小となるバネ体によって前記リセット機構を構成するといったことが可能である。
【0013】
このような構成を適用した場合、初期位置にある押圧操作釦をユーザが手動操作によって押し込むと、まず、押圧操作釦の外周部とスイッチを取り付けた装置側固定部とに両端部を接続されたバネ体が弾性変形して押圧操作釦の移動を許容し、スイッチ本体に取り付けられた受圧部に形成された受圧面が、移動する押圧操作釦の係合部によって押圧され、ON・OFF操作用の受圧部が自動復帰位置からストロークエンドに向けて移動を開始する。
そして、スイッチ本体の受圧部がストロークエンド周辺のインポジション領域に到達すると、自動復帰式のスイッチ本体が作動状態となると共に、押圧操作釦の外周部先端に押圧力伝達解除機構の一部として形成された可動側テーパ面が、スイッチ基板の側に押圧力伝達解除機構の他部として形成された固定側テーパ面に摺接し、可動側テーパ面が固定側テーパ面から押圧操作釦の外周部の周方向に沿った力を受けて、押圧操作釦の回転姿勢の変化が始まる。
受圧部の受圧面が受圧部の中心から径方向外側に向けて張り出す突出領域によって形成される一方、この受圧部に向けて突出する突起から成る押圧操作釦の係合部は、押圧操作釦の中心から径方向外側へ向かう離間距離が受圧面の張り出し量よりも小さく且つ受圧部の他部の張り出し量よりも大きい位置に設けられているので、受圧部に対する押圧操作釦の回転姿勢が相対的に変化すると、押圧操作釦の係合部が受圧部の受圧面から周方向に沿って徐々に移動し、最終的には、係合部が受圧面から完全に離脱して、押圧操作釦の係合部と受圧部の受圧面との当接状態が解除される。
押し込み方向に向けて移動する押圧操作釦の移動量と回転姿勢の変化量との関係は、可動側テーパ面や固定側テーパ面の傾斜角や長さに依存し、厳密に言えば、押圧操作釦の回転姿勢の変化が始まるタイミングは、受圧部がストロークエンド周辺のインポジション領域に到達した瞬間、あるいは、其の前後であっても構わないが、ストロークエンド周辺のインポジション領域の端部、つまり、自動復帰位置に近い側のインポジション領域の限界位置に受圧部が到達してから受圧部がストロークエンドに至るまでの区間で少なくとも瞬間的に押圧操作釦の係合部と受圧部の受圧面との当接状態が確保され、且つ、受圧部がストロークエンドに到達した段階では、押圧操作釦の係合部が受圧部の受圧面から完全に離脱しているように、可動側テーパ面や固定側テーパ面の傾斜角や長さを設計する必要がある。
スイッチ本体は自動復帰式であるから、押圧操作釦の係合部と受圧部の受圧面との当接状態が一旦解除されれば、仮に、押圧操作釦が押し込まれたままの状態に保持されていても、スイッチ本体の受圧部は、押圧操作釦から受圧部に向けて突出する突起から成る係合部の長さの分だけ、自動的にストロークエンド周辺のインポジション領域から自動復帰位置に向けて押し戻され、スイッチ本体が再び非作動の状態に戻る。
スイッチ本体が作動状態を維持するのは、自動復帰位置からストロークエンドに向けて移動する受圧部がストロークエンド周辺のインポジション領域に突入してから押圧操作釦の係合部が受圧部の受圧面から完全に離脱するまでの間、つまり、最長でも受圧部がストロークエンド周辺のインポジション領域に突入してからストロークエンドに到達するまでの僅かな時間であるから、この所要時間がスイッチの長押しとして認識されることはない。
前記と同様、理論的には、自動復帰位置からストロークエンドに向けて移動する受圧部がインポジション領域内に位置し且つ受圧部の受圧面が押圧操作釦の係合部と当接している状態、要するに、スイッチ本体が作動している状態を継続して維持することが可能であるが、実際には、ON・OFF操作用の受圧部は自動復帰位置に近い側のインポジション領域の限界位置を越えてストロークエンドにまで移動することが可能であり、押圧操作釦を介して手動で押圧される受圧部は、通常、手動操作の勢いによって自動復帰位置に近い側のインポジション領域の限界位置を越えて一気にストロークエンドの近傍にまで移動してしまい、受圧部がストロークエンドの近傍に到達する時点では既に押圧操作釦の係合部が受圧部の受圧面から完全に離脱してスイッチ本体が非作動の状態となってしまうので、仮に、押圧操作釦を操作するユーザに其のような意図があったとしても、押圧操作釦の操作によってスイッチ本体の作動状態を継続して維持するといったことは現実的には殆ど不可能である。
つまり、押圧操作釦を用いた操作によって実現が可能なのは、スイッチ本体を瞬間的に作動状態とする操作のみであり、押圧操作釦それ自体を押し続けたとしても、スイッチ本体の受圧部を長押しするといった操作は実際にはできないので、押圧操作釦を用いた実質的なスイッチの長押し操作が完全に防止される。
そして、押圧力伝達解除機構の作動後、押圧操作釦からユーザが手を離すと、リセット機構として機能するバネ体が弾性変形量が最小となる初期の状態に復帰し、その過程で、押圧操作釦の回転姿勢と位置を初期位置に復帰させ、押圧操作釦の係合部を受圧部の受圧面の手前に位置させて、改めて、押圧操作釦の押圧操作によって受圧部を移動させ得る状態とする。
一方、スイッチの長押し操作が必要とされる状況下においては、受圧部の移動方向に沿って押圧操作釦の中心部に穿設された貫通孔からクリップや針金あるいはボールペン等の先端を突入させ、この先端でスイッチ本体の受圧部を直接的に押圧することで受圧部を自動復帰位置からストロークエンドに向けて移動させ、更に、そのまま押圧状態を維持することによって、受圧部をストロークエンド近傍のインポジション領域内に留め置くようにする。
ストロークエンドはインポジション領域の一部であるから、受圧部を押すクリップや針金あるいはボールペン等に受圧部の自動復帰力を上回る力を定常的に加え続けて押し切り状態を維持するといった簡単な操作によって、比較的に長い時間たとえば数秒に亘って受圧部をインポジション領域内に留め置くことができる。この場合、スイッチ本体が作動状態を維持する時間が長くなるので、マイクロプロセッサとソフトウェア上の処理により、この押圧操作時間がスイッチの長押しとして認識されることになる。
前記と同様、押圧操作釦を押圧操作した場合にはスイッチ本体が必ず瞬間的に作動し、また、スイッチ本体を数秒に亘って作動させるためには、押圧操作釦に穿設された貫通孔からクリップや針金あるいはボールペン等の先端を突入させてスイッチ本体の受圧部を直接的に押圧するといった操作が要求されるので、スイッチの瞬間的な押圧操作を許容しつつ確実に不用意な長押し操作を防止することができる。
【0014】
本発明のコンピュータ筐体は、前述した誤操作防止機能付スイッチをシャットダウンスイッチ兼電源スイッチとして備えたことを特徴とするコンピュータ筐体である。
【0015】
この種のコンピュータにおいては、通常、数秒程度の時間に亘って電源スイッチが押圧され続けると、この押圧操作がシャットダウン指令として認識され、また、それに満たない短時間の押圧操作が検知された場合には其の押圧操作が通常の電源のON・OFF操作として認識される。
本発明における誤操作防止機能付スイッチは、押圧操作釦を用いた操作によってスイッチ本体の瞬間的な作動のみを許容し、スイッチ本体の長押し操作を行うためには押圧操作釦に穿設された貫通孔からクリップや針金あるいはボールペン等の先端を突入させてスイッチ本体の受圧部を直接的に押圧する操作を必要とするものであるから、この誤操作防止機能付スイッチをシャットダウンスイッチ兼電源スイッチとして利用すれば、押圧操作釦の操作によって電源のON・OFF操作を行うことが可能であり、また、押圧操作釦それ自体をユーザが不用意に長押ししたりコンピュータの周辺に放置された物品が荷崩れを起こして押圧操作釦に当接したりしても、電源の切断に関わる適切な準備動作が装置内部で行われないまま強制的に電源がシャットダウンされることはなく、動作中のハードディスクの故障やデータの消失等の障害の発生を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の誤操作防止機能付スイッチは、押圧操作釦で押されて自動復帰位置からストロークエンドに向けて移動する受圧部がストロークエンド周辺のインポジション領域に突入してから受圧部がストロークエンドに到達するまでの僅かな時間に限ってスイッチ本体の作動状態を維持するようにしているので、仮に押圧操作釦それ自体をユーザが長押ししたとしても、スイッチ本体が長い時間たとえば数秒といった時間に亘って作動し続けることはない。
また、コンピュータのシャットダウン操作等のように意図的にスイッチの長押し操作が必要とされる場合においては、押圧操作釦の中心部に穿設された貫通孔からクリップや針金あるいはボールペン等の先端を突入させ、この先端でスイッチ本体の受圧部を直接的に押圧することで、スイッチ本体を長い時間たとえば数秒といった時間で作動状態に維持することもできる。
従って、この誤操作防止機能付スイッチをシャットダウンスイッチ兼電源スイッチとしてコンピュータ筐体に実装すれば、押圧操作釦の操作によって電源のON・OFF操作を行うことが可能であり、また、押圧操作釦それ自体をユーザが不用意に長押ししたりコンピュータの周辺に放置された物品が荷崩れを起こして押圧操作釦に当接したりしても、電源の切断に関わる適切な準備動作が装置内部で行われないまま強制的に電源がシャットダウンされることはなく、動作中のハードディスクの故障やデータの消失等の障害の発生を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態について一実施形態を挙げて具体的に説明する。
【0018】
図1は本発明を適用した一実施形態の誤操作防止機能付スイッチ1を実装したコンピュータ筐体2の外観を示した正面図、図2は同実施形態の誤操作防止機能付スイッチ1を図1の矢視A−Aに沿って示した断面図である。
【0019】
この実施形態の誤操作防止機能付スイッチ1は、図2に示される通り、概略において、自動復帰式のスイッチ3と押圧操作釦4および押圧力伝達解除機構5とリセット機構6によって構成される。
【0020】
スイッチ3は、ON・OFF操作用の受圧部7とスイッチ本体8とによって構成される常開型のプッシュスイッチであり、受圧部7が押し込まれた際に、スイッチ本体8の内部に設けられた図示しない常開接点が閉じられるようになっている。
【0021】
図2では受圧部7が自動復帰位置に復帰した初期状態について示しており、スイッチ本体8は、図2に示される自動復帰位置から受圧部7の押し込み限界位置であるストロークエンドに至る区間で受圧部7の移動を許容している。
【0022】
受圧部7の押し込み操作によって実際にスイッチ本体8の常開接点が閉じるのは、受圧部7がストロークエンド周辺のインポジション領域内に突入してからストロークエンドに到達するまでの区間であり、それまでの区間は、常開接点の開成を確実なものとするための予備動作区間として機能する。例えば、受圧部7の自動復帰位置からストロークエンドに至る区間が5mmで、インポジション領域の幅が3mmであったとすれば、図2の状態を初期位置として受圧部7を図2中で左側から右側に向けて押圧した場合、受圧部7が移動する最初の2mmの区間が予備動作区間であり、この区間においては、スイッチ本体8が作動状態となることはなく、受圧部7は、単に、スイッチ本体8の内部に実装された図示しないリターンスプリング等の弾性復帰力に抗して移動するに過ぎない。そして、受圧部7が2mmの予備動作区間を越えて図2中で更に右側に移動し、ストロークエンド周辺の3mmのインポジション領域内に到達した段階で初めてスイッチ本体8が作動状態となる。受圧部7が当該3mmのインポジション領域内にある間は、受圧部7がストロークエンドに当接して押し切られた状態を含め、スイッチ本体8の作動状態が保持される。
【0023】
インポジション領域は常開接点の閉成を確実なものとするための冗長動作区間であり、通常、この動作区間内で受圧部7を移動させると、スイッチ本体8の内部に設けられた接点部材が弾性変形あるいは弾性復帰することで受圧部7の移動を吸収し、接点間の接触状態つまりスイッチ本体8の作動状態を維持する。
【0024】
図2に示される通り、受圧部7の手前側に配備された押圧操作釦4は、受圧部7の移動方向に沿って中心部に穿設された貫通孔9と受圧部7に形成された受圧面10に当接する係合部11とを備え、この押圧操作釦4と一体に成形されたバネ体12,12から成るリセット機構6を介して、誤操作防止機能付スイッチ1の取り付け対象となる装置側の固定部、つまり、本実施形態においてはコンピュータ筐体2の前面パネル13に取り付けられている。貫通孔9の直径は指先が侵入しない程度の大きさとする必要がある。
【0025】
バネ体12,12は、図3に示されるように、押圧操作釦4の外周部から径方向外側に向けて延出する略S字型の帯状体であり、その一端が押圧操作釦4の外周部と一体化される一方、その他端には孔を有する舌片14,14が一体に成形され、舌片14,14の部分をタッピングネジ等で前面パネル13の裏面側に固定することによって、コンピュータ筐体2の前面パネル13に一体的に取り付けられている。
【0026】
図3ではバネ体12,12の弾性変形量が最小となったときの状態を示しており、この状態で、押圧操作釦4の回転姿勢と位置が図2に示されるような初期位置に保持されるようになっている。バネ体12,12は合成樹脂等の弾性体で形成されているので、冗長的な長さを有するバネ体12,12の屈曲や捩れ等の弾性変形によって図2中で左から右に向かう方向の押圧操作釦4の移動と、図2に示される中心軸CLを回転中心とした押圧操作釦4の回転姿勢の変化が一定の範囲内で許容される。
【0027】
つまり、押圧操作釦4に対する押圧操作を解除して外力が作用しない状態とすれば、バネ体12,12から成るリセット機構6の弾性復帰力を利用して押圧操作釦4の回転姿勢と位置を初期位置に復帰させることが可能である。
【0028】
図4は誤操作防止機能付スイッチ1を図2の矢視D−Dに沿って示した断面図である。
【0029】
スイッチ本体8の先端に固着されたON・OFF操作用の受圧部7は図4に示されるような矩形状の板状体であり、その前面側には図2に示されるようにして円柱状の操作突起23が一体に形成されている。この実施形態では、図4に示すように、受圧部7の一部を構成する板状体の四隅に相当する部分が、受圧部7の中心から径方向外側に向けて張り出す突出領域、すなわち、受圧面15として機能する。なお、図4中の符号16は、突出領域からなる受圧面15を除いた受圧部7の他部を意味する符号である。
【0030】
また、押圧操作釦4の係合部11は、図4および図2に示されるように、押圧操作釦4から受圧部7に向けて突出する突起によって構成されるもので、具体的には、押圧操作釦4の貫通孔9の周囲から後方に突出して形成された内側円筒部17の先端部に、併せて4本の係合部11が90°のピッチで内側円筒部17と一体的に形成されている。
【0031】
図4に示される通り、突起からなる係合部11は、押圧操作釦4の中心から径方向外側へ向かう離間距離X1が受圧面15の張り出し量X2よりも小さく且つ受圧部7の他部16の実質的な張り出し量X3よりも大きい位置に設けられている。
【0032】
図4では押圧操作釦4の回転姿勢と位置が初期位置に復帰した状態で押圧操作釦4の係合部11と受圧部7の受圧面15の位置関係を示しており、図4に示される通り、押圧操作釦4の回転姿勢と位置が初期位置にある状態で、係合部11の先端が受圧面15の手前に位置するようになっている。
【0033】
図5は誤操作防止機能付スイッチ1を図2の矢視Bに沿って示した部分平面図であり、専ら、押圧力伝達解除機構5の周辺構造について示している。
【0034】
この実施形態の押圧力伝達解除機構5は、図5に示される通り、スイッチ本体8を固定するスイッチ基板18の側に、押圧操作釦4の外周部先端の輪郭つまり外側円筒部19の先端面の輪郭に合わせて形成された固定側テーパ面20と、押圧操作釦4の一部である外側円筒部19の外周部先端面で周方向に沿って形成された可動側テーパ面21とによって構成される。
【0035】
具体的にいえば、固定側テーパ面20は、前面パネル13と平行を成すスイッチ基板18に対して図2の中心軸CLの方向に沿って外側円筒部19の先端部の輪郭を投影した際に得られる円環を幾つかに分割して得られる部分円弧に沿ってスイッチ基板18上に突設された円弧状の部分周壁22の立ち上がり部分に形成された斜面であり、また、可動側テーパ面21は、外側円筒部19の先端から更に突出する円弧状の部分周壁24の立ち上がり部分に形成された斜面である。
【0036】
なお、スイッチ基板18それ自体は図2では記載を省略された上下あるいは左右の端部をコンピュータ筐体2の前面パネル18の裏面にネジ等で固定して取り付けてもよいし、あるいは、コンピュータ筐体2の内部に実装されるコンピュータ本体のシャーシ部分を利用して構成しても構わない。
【0037】
図5および図2では押圧操作釦4の回転姿勢と位置が初期位置に復帰した状態で押圧操作釦4の可動側テーパ面21とスイッチ基板18の固定側テーパ面20の位置関係を示しており、この状態から図2中で左から右に向かう方向に向けてユーザが押圧操作釦4を押し込むと、まず、押圧操作釦4の外周部と前面パネル18に両端部を接続されたバネ体12,12が弾性変形して押圧操作釦4の移動を許容し、スイッチ本体8に取り付けられた受圧部7に形成された受圧面15が、移動する押圧操作釦4の係合部11の先端で押圧され、受圧部7が其の自動復帰位置からストロークエンドに向けて図2中で左から右に移動を開始する。
【0038】
そして、スイッチ本体8の受圧部7がストロークエンド周辺のインポジション領域に到達すると、自動復帰式のスイッチ本体8が作動状態つまり閉成の状態となり、筐体2に納められたコンピュータ本体のマイクロプロセッサとソフトウェア上の処理により押圧操作時間の計測が開始される。
【0039】
そして、これと同時に、または、多少前後して、押圧操作釦4の外側円筒部19の先端に形成された可動側テーパ面21がスイッチ基板18側の固定側テーパ面20に摺接し、可動側テーパ面21が固定側テーパ面20から押圧操作釦4の外側円筒部19の周方向に沿った力、より具体的には、図5中の矢印P方向の力を受けて、押圧操作釦4が、図2に示される矢印Q方向に回転姿勢を変化させ始める。
【0040】
この結果、外側円筒部19の先端に設けられた係合部11は、外側円筒部19の周方向に沿って図4に示される矢印Rの方向に徐々に移動し、外側円筒部19の回転姿勢の変化量が図5中のFに到達する押し切り直前の時点、つまり、係合部11の移動量が図4中のEに到達した時点で、係合部11が受圧部7の受圧面15から完全に離脱して、押圧操作釦4の係合部11と受圧部7の受圧面15との当接状態が解除される。
【0041】
スイッチ本体8は自動復帰式であるから、押圧操作釦4の係合部11と受圧部7の受圧面15との当接状態が一旦解除されれば、仮に、押圧操作釦4が押し込まれたままの状態に保持されていても、あるいは、押圧操作釦4が更に押し込まれて押し切り位置に達していたとしても、スイッチ本体8の受圧部7は、スイッチ本体8内のリターンスプリング等の弾性復帰力により、外側円筒部19から受圧部7に向けて突出する係合部11の長さの分だけ、自動的にストロークエンド周辺のインポジション領域から自動復帰位置に向けて押し戻され、スイッチ本体8が再び非作動の状態に戻る。
【0042】
つまり、図4に示される通り、中心から径方向外側に向けて張り出す受圧面15の張り出し量X2に比べて押圧操作釦4の中心から係合部11に至る離間距離X1の方が小さいので、図4に示されるような初期の姿勢では係合部11が受圧面15に当接して受圧部7を支えているが、外側円筒部19の回転姿勢の変化量が図4中のEに到達した時点、あるいは、それよりも僅かに前の時点で、受圧部7の中心からの実質的な張り出し量がX3である受圧部7の他部16の位置まで係合部11が移動し、この結果として、受圧部7が係合部11による支えを失ってスイッチ本体8内のリターンスプリング等の力で押し戻されるということである。
【0043】
スイッチ本体8が作動状態を維持するのは、自動復帰位置からストロークエンドに向けて移動する受圧部7がストロークエンド周辺のインポジション領域に突入してから押圧操作釦4の係合部11が受圧部7の受圧面15から完全に離脱するまでの間、つまり、最長でも受圧部7がストロークエンド周辺のインポジション領域に突入してからストロークエンドに到達するまでの僅かな時間であるから、この所要時間が筐体2に納められたコンピュータ本体のマイクロプロセッサによってスイッチの長押しとして認識されることはない。
【0044】
押し込み方向に向けて移動する押圧操作釦4の移動量と回転姿勢の変化量との関係は可動側テーパ面21や固定側テーパ面20の傾斜角や長さに依存し、また、押圧操作釦4の回転姿勢の変化が始まるタイミングは可動側テーパ面21と固定側テーパ面20との間のクリアランスに依存する。押圧操作釦4の回転姿勢の変化が始まるタイミングは、受圧部7がストロークエンド周辺のインポジション領域に到達した瞬間、あるいは、其の前後であっても構わないが、インポジション領域の端部、つまり、自動復帰位置に近い側のインポジション領域の限界位置に受圧部7が到達してから受圧部7がストロークエンドに至るまでの区間で少なくとも瞬間的に押圧操作釦4の係合部11と受圧部7の受圧面15との当接状態が確保され、且つ、受圧部7がストロークエンドに到達した段階では、押圧操作釦4の係合部11が受圧部7の受圧面15から完全に離脱しているように、可動側テーパ面21や固定側テーパ面20の傾斜角や長さ、更には、可動側テーパ面21と固定側テーパ面20との間のクリアランスを設計する必要がある。
【0045】
なお、理論的には、自動復帰位置からストロークエンドに向けて移動する受圧部7がインポジション領域内に位置し且つ受圧部7の受圧面15が押圧操作釦4の係合部11と当接してスイッチ本体8が作動している状態を継続して維持することも可能であるが、そのためには、図4において係合部11が受圧部7の受圧面15から離脱する直前の状態、つまり、係合部11の先端の外周端部が受圧面15の縁に辛うじて引っ掛かった状態を保持する必要がある。しかし、実際には、ON・OFF操作用の受圧部7は自動復帰位置に近い側のインポジション領域の限界位置を越えてストロークエンドにまで移動することが可能であり、押圧操作釦4を介して手動で押圧される受圧部7は、通常、手動操作の勢いによって自動復帰位置に近い側のインポジション領域の限界位置を越えて一気にストロークエンドの近傍にまで移動してしまい、図5に示される部分周壁24の右端面がスイッチ基板18に底突きした状態となるのが普通である。このような底突き現象が生じる時点、つまり、受圧部7がストロークエンドの近傍に到達する時点では、既に押圧操作釦4の係合部11が受圧部7の受圧面15から完全に離脱してスイッチ本体8が非作動の状態となっているので、仮に、押圧操作釦を操作するユーザに其のような意図があったとしても、図4において係合部11の先端の外周端部が受圧面15の縁に辛うじて引っ掛かった状態を保持すること、つまり、押圧操作釦4の操作によってスイッチ本体8の作動状態を継続して維持するといったことは現実的には殆ど不可能である。
【0046】
つまり、押圧操作釦4を用いた操作によって実現が可能なのは、スイッチ本体8を瞬間的に作動状態とする操作のみであり、押圧操作釦4それ自体を押し続けたとしても、スイッチ本体8の受圧部7を長押しするといった操作は実際にはできないので、押圧操作釦4を用いた実質的なスイッチの長押し操作は完全に防止されることになる。
【0047】
このようにして固定側テーパ面20と可動側テーパ面21とから押圧力伝達解除機構5によって押圧操作釦4の係合部11と受圧部7の受圧面15との当接状態が解除された後、押圧操作釦4からユーザが手を離すと、リセット機構6を構成するバネ体12,12が弾性変形量が最小となる初期の状態に復帰し、このバネ体12,12に一体に取り付けられている押圧操作釦4の回転姿勢と位置を図2に示されるような初期位置に復帰させ、押圧操作釦4の係合部11を受圧部7の受圧面15の手前に位置させて、改めて、押圧操作釦4の押圧操作によって受圧部7を移動させ得る状態とする。なお、スイッチ本体8は自動復帰式であるから、受圧部7それ自体は図示しないリターンスプリング等の力で復帰位置に向けて自動的に押し戻される。係合部11の先端と原位置復帰した受圧部7との間には僅かなクリアランスがあるので、押圧操作釦4の係合部11が受圧面15の縁に干渉することはなく、押圧操作釦4は確実に初期の回転姿勢に復帰することができる。
【0048】
一方、スイッチ本体8の長押し操作が必要とされる状況下においては、押圧操作釦4の中心部に穿設された貫通孔9からクリップや針金あるいはボールペン等の先端を突入させ、この先端で受圧部7の一部である操作突起23を直接的に押圧することで受圧部7を自動復帰位置からストロークエンドに向けて移動させ、更に、そのまま押圧状態を維持することによって、受圧部7をストロークエンド近傍のインポジション領域内に留め置くようにする。
【0049】
ストロークエンドはインポジション領域の一部であるから、操作突起23を押すクリップや針金あるいはボールペン等に受圧部7の自動復帰力を上回る力を定常的に加え続けて押し切り状態を維持するといった簡単な操作によって、比較的に長い時間たとえば数秒に亘って受圧部7をインポジション領域内に留め置くことができる。この場合、スイッチ本体8が作動状態を維持する時間が長くなるので、筐体2に納められたコンピュータ本体のマイクロプロセッサは、この押圧操作時間をスイッチの長押し操作として認識することになる。
【0050】
以上に述べた通り、押圧操作釦4を押圧操作した場合にはスイッチ本体8が必ず瞬間的に作動し、また、スイッチ本体8を数秒に亘って作動させるためには、押圧操作釦4に穿設された貫通孔9からクリップや針金あるいはボールペン等の先端を突入させてスイッチ本体8の受圧部7に設けられた操作突起23を直接的に押圧するといった操作が要求されるので、スイッチ本体8の瞬間的な押圧操作を許容しつつ確実に不用意な長押し操作を防止することができる。
【0051】
この実施形態では、誤操作防止機能付スイッチ1をコンピュータ筐体2の前面パネル13に取り付け、この誤操作防止機能付スイッチ1をシャットダウンスイッチ兼電源スイッチとして利用している。
【0052】
この種のコンピュータにおいては、通常、数秒程度の時間に亘って電源スイッチが押圧され続けると、この押圧操作がシャットダウン指令として認識され、また、それに満たない短時間の押圧操作が検知された場合には其の押圧操作が通常の電源のON・OFF操作として認識されるようになっており、特に、この実施形態においては、押圧操作釦4を用いた操作によってスイッチ本体8の瞬間的な作動のみを許容し、押圧操作釦4によるスイッチ本体8の長押し操作を禁止するようにしているので、押圧操作釦4の操作によって電源のON・OFF操作を簡単に行うことが可能であり、また、押圧操作釦4それ自体をユーザが不用意に長押ししたり或いは筐体2の周辺に放置された物品が荷崩れを起こして押圧操作釦4に当接したりしても、電源の切断に関わる適切な準備動作が装置内部で行われないまま強制的に電源がシャットダウンされることはなく、動作中のハードディスクの故障やデータの消失等の障害の発生を未然に防止することができる。
【0053】
また、長押しによる不用意なシャットダウン操作が行われるのを防止するために独立的に作動する電源スイッチとシャットダウンスイッチ(リセットスイッチ)を並列的に配備したものとは違い、筐体2に配備するスイッチが1つで済むことから、製品のコストダウンの点でも有利である。
【0054】
この実施形態では、一例として、受圧部7を矩形状の板状体で構成したものについて示したが、前述した通りの条件、つまり、押圧操作釦4の中心から係合部11までの径方向の離間距離X1と、受圧部7の中心から径方向外側に向かう受圧面15の張り出し量X2と、受圧部7の中心から径方向外側に向かう他部16の実質的な張り出し量X3との関係において、X2>X1>X3の関係さえ成立すれば、当然、他の形状の受圧部7を利用しても構わない。
【0055】
具体的には、ヒトデ型や星型の板状体(ある程度の幅を以って放射線状に形成された板状体)や正三角形状の板状体等が受圧部7の形状として好適である。
【0056】
理論的には、五角形以上の多角形の利用も考えられるが、X2とX1の偏差つまり多角形の中心から多角形の頂角までの距離と多角形の中心から多角形の辺までの距離の偏差が小さくなるので、係合部11を離脱させ難い難点がある。
【0057】
また、押圧操作釦4の可動側テーパ面21とスイッチ基板18の固定側テーパ面20から成る押圧力伝達解除機構5に代えて利用可能な押圧力伝達解除機構の構造としては、例えば、円筒カムの応用が考えられる。
【0058】
円筒カムの構造を利用する場合は、例えば、筐体2の裏面側に押圧操作釦4を包囲する形状の円筒部を設け、その内側にリードの長いネジ溝に類似したカム溝を例えば180°のピッチで2本形成し、このカム溝に突入して押圧操作釦4の移動と回転姿勢の変化をガイドする2つの突起を押圧操作釦4の外周面に突設するといったことが考えられる。この場合は、バネ体12,12から成る図3のようなリセット機構6を用いると筐体2の裏面側の円筒部との干渉が考えられるので、押圧操作釦4の押し戻しには押圧操作釦4と略同径のコイルスプリング等を利用することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明を適用した一実施形態の誤操作防止機能付スイッチを実装したコンピュータ筐体の外観を示した正面図である。
【図2】同実施形態の誤操作防止機能付スイッチを図1の矢視A−Aに沿って示した断面図である。
【図3】同実施形態の誤操作防止機能付スイッチのリセット機構の構成を示した正面図である。
【図4】同実施形態の誤操作防止機能付スイッチを図2の矢視D−Dに沿って示した断面図である。
【図5】同実施形態の誤操作防止機能付スイッチを図2の矢視Bに沿って示した部分平面図であり、専ら、押圧力伝達解除機構の周辺構造について示している。
【符号の説明】
【0060】
1 誤操作防止機能付スイッチ
2 コンピュータ筐体
3 自動復帰式のスイッチ
4 押圧操作釦
5 押圧力伝達解除機構
6 リセット機構
7 受圧部
8 スイッチ本体
9 貫通孔
10 受圧面
11 係合部(突起)
12 バネ体
13 前面パネル(取り付け対象となる装置側の固定部)
14 舌片
15 受圧面(突出領域)
16 受圧部の他部
17 内側円筒部
18 スイッチ基板
19 外側円筒部
20 固定側テーパ面
21 可動側テーパ面
22 部分周壁
23 操作突起
24 部分周壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ON・OFF操作用の受圧部とスイッチ本体とから成り、前記受圧部の移動を該受圧部の自動復帰位置からストロークエンドに至る区間で許容すると共に、前記受圧部が前記ストロークエンド周辺のインポジション領域内に位置する間だけ作動状態を保持する自動復帰式のスイッチと、
前記受圧部の移動方向に沿って中心部に穿設された貫通孔と前記受圧部に形成された受圧面に当接する係合部とを有して前記受圧部の手前側に配備された押圧操作釦と、
前記押圧操作釦に対する押圧操作を受けて前記受圧部が前記インポジション領域内に到達した時点で前記押圧操作釦の回転姿勢を変化させて前記係合部と前記受圧面との当接を解除する押圧力伝達解除機構と、
前記押圧力伝達解除機構の作動後、前記押圧操作釦に対する押圧操作が解除された時点で、前記押圧操作釦の回転姿勢と位置を初期位置に復帰させて前記係合部を前記受圧面の手前に位置させるリセット機構とを備えたことを特徴とする誤操作防止機能付スイッチ。
【請求項2】
前記受圧部の中心から径方向外側に向けて張り出す突出領域によって前記受圧面が形成される一方、
前記押圧操作釦の中心から径方向外側へ向かう離間距離が前記受圧面の張り出し量よりも小さく且つ前記受圧部の他部の張り出し量よりも大きい位置から前記受圧部に向けて突出し、前記押圧操作釦の回転姿勢と位置が初期位置にある状態で前記受圧面に当接する突起によって前記係合部が形成され、
前記押圧力伝達解除機構は、前記スイッチ本体を固定するスイッチ基板の側に前記押圧操作釦の外周部先端の輪郭に合わせて形成された固定側テーパ面と、前記押圧操作釦の外周部先端で周方向に沿って形成された可動側テーパ面とによって構成され、
前記リセット機構は、前記押圧操作釦の外周部とスイッチの取り付け対象となる装置側固定部とに両端部を接続され、前記押圧操作釦の回転姿勢と位置が初期位置にある状態で弾性変形量が最小となるバネ体によって構成されていることを特徴とする請求項1記載の誤操作防止機能付スイッチ。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の誤操作防止機能付スイッチをシャットダウンスイッチ兼電源スイッチとして備えたことを特徴とするコンピュータ筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−181793(P2008−181793A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15041(P2007−15041)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】