説明

調整ユニット、照明光学系、露光装置、およびデバイス製造方法

【課題】 照明光学系に用いられて瞳強度分布を被照射面上の位置毎に調整することのできる調整ユニット。
【解決手段】 調整ユニット(10)は、光源(1)からの光により被照射面(M)を照明する照明光学系(2〜11)に用いられて、照明光学系の照明瞳に形成される瞳強度分布を調整する。調整ユニットは、被照射面と光学的に共役な共役位置に隣接する位置に配置されて、光束の入射位置に応じた角度分布を該光束に付与して射出する角度分布付与素子を備えている。角度分布付与素子は、瞳強度分布を被照射面上の位置毎に調整するために所定の軸線(AX)廻りに回転可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調整ユニット、照明光学系、露光装置、およびデバイス製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等のデバイスをリソグラフィー工程で製造するための露光装置に好適な照明光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の典型的な露光装置においては、光源から射出された光束が、オプティカルインテグレータとしてのフライアイレンズを介して、多数の光源からなる実質的な面光源としての二次光源(一般には照明瞳における所定の光強度分布)を形成する。以下、照明瞳での光強度分布を、「瞳強度分布」という。また、照明瞳とは、照明瞳と被照射面(露光装置の場合にはマスクまたはウェハ)との間の光学系の作用によって、被照射面が照明瞳のフーリエ変換面となるような位置として定義される。
【0003】
二次光源からの光束は、コンデンサー光学系により集光された後、所定のパターンが形成されたマスクを重畳的に照明する。マスクを透過した光は投影光学系を介してウェハ上に結像し、ウェハ上にはマスクパターンが投影露光(転写)される。マスクに形成されたパターンは高集積化されており、この微細パターンをウェハ上に正確に転写するにはウェハ上において均一な照度分布を得ることが不可欠である。
【0004】
マスクの微細パターンをウェハ上に正確に転写するために、例えば輪帯状や複数極状(2極状、4極状など)の瞳強度分布を形成し、投影光学系の焦点深度や解像力を向上させる技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0055834号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
露光装置の照明光学系では、マスクの微細パターンを露光領域の全体に亘って所望の線幅でウェハ上に正確に転写することのできる適切な照明条件を実現するために、被照射面(マスクのパターン面、ひいてはウェハの転写面)上の位置毎に瞳強度分布の形状(大きさを含む広い概念)などを調整することが望まれる。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、照明光学系に用いられて瞳強度分布を被照射面上の位置毎に調整することのできる調整ユニットを提供することを目的とする。また、本発明は、瞳強度分布を被照射面上の位置毎に調整する調整ユニットを用いて、所望の照明条件を実現することのできる照明光学系を提供することを目的とする。また、本発明は、所望の照明条件を実現する照明光学系を用いて、転写すべきパターンに応じた適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことのできる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の第1形態では、光源からの光により被照射面を照明する照明光学系に用いられて、該照明光学系の照明瞳に形成される瞳強度分布を調整する調整ユニットであって、
前記被照射面に隣接する位置、前記被照射面と光学的に共役な共役位置、または該共役位置に隣接する位置に配置されて、光束の入射位置に応じた角度分布を該光束に付与して射出する角度分布付与素子を備え、
前記角度分布付与素子は、前記瞳強度分布を前記被照射面上の位置毎に調整するために所定の軸線廻りに回転可能であることを特徴とする調整ユニットを提供する。
【0009】
本発明の第2形態では、光源からの光で被照射面を照明する照明光学系において、
第1形態の調整ユニットを備えていることを特徴とする照明光学系を提供する。
【0010】
本発明の第3形態では、所定のパターンを照明するための第2形態の照明光学系を備え、前記所定のパターンを感光性基板に露光することを特徴とする露光装置を提供する。
【0011】
本発明の第4形態では、第3形態の露光装置を用いて、前記所定のパターンを前記感光性基板に露光する露光工程と、
前記所定のパターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記所定のパターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成する現像工程と、
前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工する加工工程とを含むことを特徴とするデバイス製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様にしたがう調整ユニットは、被照射面と光学的に共役な位置に隣接して配置されて所定の軸線廻りに回転可能な回折光学素子を備えている。回折光学素子は、例えば互いに異なる回折特性を有する複数の領域を有し、各領域はその全体に亘って一定の回折特性(角度分布付与特性)を有する。したがって、回折光学素子は、光束の入射位置に応じた角度分布を該光束に付与して射出する角度分布付与素子として機能する。
【0013】
その結果、本発明の調整ユニットでは、照明光学系の照明瞳に形成される瞳強度分布を被照射面上の位置毎に調整することができる。本発明の照明光学系では、瞳強度分布を被照射面上の位置毎に調整する調整ユニットを用いて、所望の照明条件を実現することができる。本発明の露光装置では、所望の照明条件を実現する照明光学系を用いて、転写すべきパターンに応じた適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができ、ひいては良好なデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】照明瞳に形成される円形状の二次光源を示す図である。
【図3】本実施形態の調整ユニットの構成を概略的に示す図である。
【図4】本実施形態の調整ユニットの作用を概略的に示す図である。
【図5】第1変形例にかかる調整ユニットの構成を概略的に示す図である。
【図6】第2変形例にかかる調整ユニットの構成を概略的に示す図である。
【図7】一対の回折光学素子からなる調整ユニットを概略的に示す図である。
【図8】第3変形例にかかる調整ユニットの構成を概略的に示す図である。
【図9】第4変形例にかかる調整ユニットの構成を概略的に示す図である。
【図10】半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
【図11】液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。図1において、感光性基板であるウェハWの露光面(転写面)の法線方向に沿ってZ軸を、ウェハWの露光面内において図1の紙面に平行な方向にY軸を、ウェハWの露光面内において図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定している。
【0016】
図1を参照すると、本実施形態の露光装置では、光源1から露光光(照明光)が供給される。光源1として、たとえば193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ光源や248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ光源などを用いることができる。光源1から射出された光は、整形光学系2および円形照明用の回折光学素子3を介して、アフォーカルレンズ4に入射する。整形光学系2は、光源1からの光束を所定の矩形状の断面を有する平行光束に変換して回折光学素子3へ導く機能を有する。
【0017】
アフォーカルレンズ4は、前側レンズ群4aと後側レンズ群4bとからなり、前側レンズ群4aの前側焦点位置と回折光学素子3の位置とが一致し且つ後側レンズ群4bの後側焦点位置と図中破線で示す所定面5の位置とが一致するように設定されたアフォーカル系(無焦点光学系)である。回折光学素子3は、基板に露光光(照明光)の波長程度のピッチを有する段差を形成することによって構成され、入射ビームを所望の角度に回折する作用を有する。具体的に、円形照明用の回折光学素子3は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に円形状の光強度分布を形成する機能を有する。
【0018】
したがって、回折光学素子3に入射した平行光束は、アフォーカルレンズ4の瞳面に円形状の光強度分布を形成した後、円形状の角度分布でアフォーカルレンズ4から射出される。アフォーカルレンズ4を介した光は、σ値(σ値=照明光学系のマスク側開口数/投影光学系のマスク側開口数)可変用のズームレンズ6を介して、オプティカルインテグレータとしてのマイクロフライアイレンズ(またはフライアイレンズ)7に入射する。マイクロフライアイレンズ7は、例えば縦横に且つ稠密に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子であって、平行平面板にエッチング処理を施して微小レンズ群を形成することによって構成されている。
【0019】
マイクロフライアイレンズを構成する各微小レンズは、フライアイレンズを構成する各レンズエレメントよりも微小である。また、マイクロフライアイレンズは、互いに隔絶されたレンズエレメントからなるフライアイレンズとは異なり、多数の微小レンズ(微小屈折面)が互いに隔絶されることなく一体的に形成されている。しかしながら、正屈折力を有するレンズ要素が縦横に配置されている点でマイクロフライアイレンズはフライアイレンズと同じ波面分割型のオプティカルインテグレータである。なお、マイクロフライアイレンズ7として、例えばシリンドリカルマイクロフライアイレンズを用いることもできる。シリンドリカルマイクロフライアイレンズの構成および作用は、例えば米国特許第6913373号明細書に開示されている。
【0020】
所定面5の位置はズームレンズ6の前側焦点位置またはその近傍に配置され、マイクロフライアイレンズ7の入射面はズームレンズ6の後側焦点位置またはその近傍に配置されている。換言すると、ズームレンズ6は、所定面5とマイクロフライアイレンズ7の入射面とを実質的にフーリエ変換の関係に配置し、ひいてはアフォーカルレンズ4の瞳面とマイクロフライアイレンズ7の入射面とを光学的にほぼ共役に配置している。したがって、マイクロフライアイレンズ7の入射面上には、アフォーカルレンズ4の瞳面と同様に、たとえば光軸AXを中心とした円形状の照野が形成される。この円形状の照野の全体形状は、ズームレンズ6の焦点距離に依存して相似的に変化する。
【0021】
マイクロフライアイレンズ7における各微小レンズの入射面(すなわち単位波面分割面)は、例えばZ方向に沿って長辺を有し且つX方向に沿って短辺を有する矩形状であって、マスクM上において形成すべき照明領域の形状(ひいてはウェハW上において形成すべき露光領域の形状)と相似な矩形状である。マイクロフライアイレンズ7に入射した光束は二次元的に分割され、その後側焦点面またはその近傍の位置(ひいては照明瞳の位置)には、マイクロフライアイレンズ7の入射面に形成される照野とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源、すなわち光軸AXを中心とした円形状の実質的な面光源からなる二次光源(瞳強度分布)が形成される。
【0022】
マイクロフライアイレンズ7の後側焦点位置またはその近傍には、必要に応じて、円形状の二次光源に対応した円形状の開口部(光透過部)を有する照明開口絞り(不図示)が配置されている。照明開口絞りは、照明光路に対して挿脱自在に構成され、且つ大きさおよび形状の異なる開口部を有する複数の開口絞りと切り換え可能に構成されている。開口絞りの切り換え方式として、たとえば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。照明開口絞りは、後述する投影光学系PLの入射瞳面と光学的にほぼ共役な位置に配置され、二次光源の照明に寄与する範囲を規定する。
【0023】
マイクロフライアイレンズ7を経た光は、コンデンサー光学系8を介して、マスクブラインド9を重畳的に照明する。こうして、マスクブラインド9には、マイクロフライアイレンズ7の微小レンズの形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。照明視野絞りとしてのマスクブラインド9は被照射面であるマスクMのパターン面と光学的に共役な位置に配置され、マスクブラインド9の光源1側の隣接した位置には調整ユニット10が配置されている。調整ユニット10の構成および作用については後述する。マスクブラインド9の矩形状の開口部(光透過部)を経た光は、前側レンズ群11aと後側レンズ群11bとからなる結像光学系11を介して、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。すなわち、結像光学系11は、マスクブラインド9の矩形状の開口部の像をマスクM上に形成することになる。
【0024】
マスクステージMS上に保持されたマスクMには転写すべきパターンが形成されており、パターン領域全体のうちY方向に沿って長辺を有し且つX方向に沿って短辺を有する矩形状(スリット状)のパターン領域が照明される。マスクMのパターン領域を透過した光は、投影光学系PLを介して、ウェハステージWS上に保持されたウェハ(感光性基板)W上にマスクパターンの像を形成する。すなわち、マスクM上での矩形状の照明領域に光学的に対応するように、ウェハW上においてもY方向に沿って長辺を有し且つX方向に沿って短辺を有する矩形状の静止露光領域(実効露光領域)にパターン像が形成される。
【0025】
こうして、いわゆるステップ・アンド・スキャン方式にしたがって、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面(XY平面)内において、X方向(走査方向)に沿ってマスクステージMSとウェハステージWSとを、ひいてはマスクMとウェハWとを同期的に移動(走査)させることにより、ウェハW上には静止露光領域のY方向寸法に等しい幅を有し且つウェハWの走査量(移動量)に応じた長さを有するショット領域(露光領域)に対してマスクパターンが走査露光される。
【0026】
本実施形態では、上述したように、マイクロフライアイレンズ7により形成される二次光源を光源として、照明光学系(2〜11)の被照射面に配置されるマスクMをケーラー照明する。このため、二次光源が形成される位置は投影光学系PLの開口絞りASの位置と光学的に共役であり、二次光源の形成面を照明光学系(2〜11)の照明瞳面と呼ぶことができる。典型的には、照明瞳面に対して被照射面(マスクMが配置される面、または投影光学系PLを含めて照明光学系と考える場合にはウェハWが配置される面)が光学的なフーリエ変換面となる。
【0027】
なお、瞳強度分布とは、照明光学系(2〜11)の照明瞳面または当該照明瞳面と光学的に共役な面における光強度分布(輝度分布)である。マイクロフライアイレンズ7による波面分割数が比較的大きい場合、マイクロフライアイレンズ7の入射面に形成される大局的な光強度分布と、二次光源全体の大局的な光強度分布(瞳強度分布)とが高い相関を示す。このため、マイクロフライアイレンズ7の入射面および当該入射面と光学的に共役な面における光強度分布についても瞳強度分布と称することができる。
【0028】
図1の構成において、回折光学素子3、アフォーカルレンズ4、ズームレンズ6、およびマイクロフライアイレンズ7は、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に瞳強度分布を形成する分布形成光学系を構成している。さらに、マイクロフライアイレンズ7の後側焦点位置またはその近傍の照明瞳と光学的に共役な別の照明瞳位置、すなわち結像光学系11の瞳位置および投影光学系PLの瞳位置(開口絞りASの位置)にも、マイクロフライアイレンズ7の直後の光強度分布に対応する瞳強度分布が形成される。
【0029】
円形照明用の回折光学素子3に代えて、複数極照明(2極照明、4極照明、8極照明など)用の回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、複数極照明を行うことができる。複数極照明用の回折光学素子は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールドに複数極状(2極状、4極状、8極状など)の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、複数極照明用の回折光学素子を介した光束は、マイクロフライアイレンズ7の入射面に、たとえば光軸AXを中心とした複数の所定形状(円弧状、円形状など)の照野からなる複数極状の照野を形成する。その結果、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳には、その入射面に形成された照野と同じ複数極状の瞳強度分布が形成される。
【0030】
また、円形照明用の回折光学素子3に代えて、輪帯照明用の回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、輪帯照明を行うことができる。輪帯照明用の回折光学素子は、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、ファーフィールドに輪帯状の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、輪帯照明用の回折光学素子を介した光束は、マイクロフライアイレンズ7の入射面に、たとえば光軸AXを中心とした輪帯状の照野を形成する。その結果、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳には、その入射面に形成された照野と同じ輪帯状の瞳強度分布が形成される。また、円形照明用の回折光学素子3に代えて、適当な特性を有する回折光学素子(不図示)を照明光路中に設定することによって、様々な形態の変形照明を行うことができる。回折光学素子3の切り換え方式として、たとえば周知のターレット方式やスライド方式などを用いることができる。
【0031】
以下の説明では、本実施形態の作用効果の理解を容易にするために、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳には、図2に示すように、光軸AXを中心とした円形状の瞳強度分布20が形成されるものとする。また、調整ユニット10が照明光路中に介在しない状態において、結像光学系11の光路中の照明瞳にも光軸AXを中心とした円形状の瞳強度分布21が形成され、マスクMのパターン面上に形成される照明領域内の任意の1点に関する瞳強度分布(当該点に達する光が結像光学系11の光路中の照明瞳に形成する光強度分布)は互いに同じ大きさの円形状であるものとする。また、以下の説明において、単に「照明瞳」という場合には結像光学系11の光路中の照明瞳を指すものとし、単に「瞳強度分布」という場合には結像光学系11の光路中の照明瞳における光強度分布を指すものとする。
【0032】
本実施形態では、マスクMのパターン面(ひいてはウェハWの転写面)上の位置毎に瞳強度分布の形状(大きさを含む広い概念)などを調整するための調整手段として、調整ユニット10を備えている。調整ユニット10は、例えば石英または蛍石のような光学材料により形成された円形状の平行平面板の形態を有し且つ光軸AX廻り(あるいは光軸AXと平行な軸線廻り)に回転可能な回折光学素子からなる。回折光学素子10は、例えば照明光路に対して挿脱可能であり、特性の異なる別の回折光学素子(例えば後述する各変形例にかかる回折光学素子)と交換可能に構成されている。
【0033】
具体的に、回折光学素子10は、図3に示すように、光軸AXを中心とする円の周方向に沿って分割された8つの領域101a,101b,101c,101d,101e,101f,101gおよび101hを有する。光軸AXを挟んで対向する一対の領域101aおよび101eには、回折光学面が形成されていない。すなわち、領域101a,101eは、入射光に対して平行平面板として機能する。領域101a,101eを除く領域101b〜101d,101f〜101hには、その全体に亘って一定の特性を有する回折光学面がそれぞれ形成されている。光軸AXを挟んで対向する一対の領域101bと101fとは互いに同じ回折特性を有し、一対の領域101cと101gとは互いに同じ回折特性を有し、一対の領域101dと101hとは互いに同じ回折特性を有し、隣り合う2つの領域(例えば101bと101c)は互いに異なる回折特性を有する。
【0034】
したがって、回折光学素子10では、図4に示すように、領域101a,101eの任意の1点に角度分布範囲αの光束が入射すると、入射光束の角度分布範囲αと等しい角度分布範囲を有する光束(図4において破線で示す)が射出される。図4では、説明の理解を容易にするために、調整ユニットとしての回折光学素子10とマスクMとの間の光路を光軸AXに沿って直線状に展開している。一方、領域101a,101eを除く領域101b〜101d,101f〜101hの任意の1点に角度分布範囲αの光束が入射すると、入射光束の角度分布範囲αよりも大きい角度分布範囲α+Δを有する光束(図4において実線で示す)が射出される。
【0035】
換言すると、回折光学素子10は、光束の入射位置に応じた角度分布を該光束に付与して射出する角度分布付与素子として機能し、射出光束に付与する角度分布の範囲は該射出光束に対応する入射光束の角度分布の範囲以上である。調整ユニットとしての回折光学素子10は、被照射面であるマスクMのパターン面と光学的に共役な位置に配置されたマスクブラインド9の光源1側の隣接した位置に配置されている。したがって、回折光学素子10の点P1に入射して射出された光束は、マスクMのパターン面において点P1と光学的に対応する点P2に達する。
【0036】
単純な一例として、領域101b,101fの光学回折面は入射光束の角度分布範囲αよりもあらゆる方向に1度だけ大きい角度分布範囲を有する光束を射出するように設定され、領域101c,101gの光学回折面は入射光束の角度分布範囲αよりもあらゆる方向に2度だけ大きい角度分布範囲を有する光束を射出するように設定され、領域101d,101hの光学回折面は入射光束の角度分布範囲αよりもあらゆる方向に3度だけ大きい角度分布範囲を有する光束を射出するように設定されているものとする。
【0037】
この場合、回折光学面が形成されていない領域101a,101eの1点を経て、マスクブラインド9の矩形状の開口部(図4中破線で示す)9aを通過してマスクMのパターン面上の対応する1点に入射する光束の角度分布範囲は、図4において破線で示すように回折光学素子10が照明光路中に介在しないときと同じである。領域101b,101fの1点を経て開口部9aを通過してマスクMのパターン面上の対応する1点に入射する光束の角度分布範囲は、領域101a,101eの1点を経てマスクMのパターン面上の対応する1点に入射する光束の角度分布範囲よりも大きくなる。
【0038】
同様に、領域101c,101gの1点を経て開口部9aを通過してマスクMのパターン面上の対応する1点に入射する光束の角度分布範囲は、領域101b,101fの1点を経てマスクMのパターン面上の対応する1点に入射する光束の角度分布範囲よりも大きくなる。領域101d,101hの1点を経て開口部9aを通過してマスクMのパターン面上の対応する1点に入射する光束の角度分布範囲は、領域101c,101gの1点を経てマスクMのパターン面上の対応する1点に入射する光束の角度分布範囲よりも大きくなる。
【0039】
その結果、領域101a,101eのうちの開口部9aの内側に対応する領域を経てマスクMのパターン面上の1点に入射する光に関する瞳強度分布は、回折光学素子10が照明光路中に介在しない状態で得られる円形状の瞳強度分布21と同じ大きさの円形状の分布になる。領域101b,101fのうちの開口部9aの内側に対応する領域を経てマスクMのパターン面上の1点に入射する光に関する瞳強度分布は、瞳強度分布21よりも角度分布範囲にしてβ度分だけ大きい円形状の分布になる。
【0040】
同様に、領域101c,101gのうちの開口部9aの内側に対応する領域を経てマスクMのパターン面上の1点に入射する光に関する瞳強度分布は、瞳強度分布21よりも角度分布範囲にして2β度分だけ大きい円形状の分布になる。領域101d,101hのうちの開口部9aの内側に対応する領域を経てマスクMのパターン面上の1点に入射する光に関する瞳強度分布は、瞳強度分布21よりも角度分布範囲にして3β度分だけ大きい円形状の分布になる。こうして、回折光学素子10が照明光路中に介在する場合には、マスクMのパターン面上の各点に関する瞳強度分布は円形状の外形を維持するが、各点に関する円形状の瞳強度分布の大きさは当該点に達する光束が回折光学素子10を通過する位置(すなわち回折光学素子10への光束の入射位置)に応じて異なることになる。
【0041】
回折光学素子10は光軸AX廻りに回転可能であるため、マスクMのパターン面に形成される照明領域と光学的に対応するマスクブラインド9の矩形状の開口部9aと回折光学素子10の各領域101a〜101hとの相対的な位置関係は可変である。このことは、マスクMのパターン面上の任意の1点に達する光に着目した場合、この任意の1点に達する光が回折光学素子10を通過する位置は回折光学素子10の光軸AX廻りの角度位置に依存して変化し、ひいては上記任意の1点に関する円形状の瞳強度分布の大きさおよび強度が変化することを意味している。
【0042】
以上のように、本実施形態にかかる調整ユニットとしての回折光学素子10は、被照射面であるマスクMのパターン面と光学的に共役な位置に配置されたマスクブラインド9の光源1側の隣接した位置において光軸AX廻りに回転可能に配置され、光束の入射位置に応じた角度分布を該光束に付与して射出する角度分布付与素子として機能する。したがって、回折光学素子10のパターンと入射光束とのコンボリューションにより、結像光学系11の光路中の照明瞳(ひいては投影光学系PLの光路中の照明瞳)に形成される瞳強度分布を、マスクMのパターン面上(ひいてはウェハWの転写面上)の位置毎に調整することができる。
【0043】
本実施形態の照明光学系(2〜11)では、結像光学系11の光路中の照明瞳に形成される瞳強度分布をマスクMのパターン面上の位置毎に調整する調整ユニットとしての回折光学素子10を用いて、所望の照明条件を実現することができる。また、本実施形態の露光装置(2〜WS)では、所望の照明条件を実現する照明光学系(2〜11)を用いて、転写すべきマスクパターンに応じた適切な照明条件のもとで良好な露光を行うことができる。
【0044】
上述の説明では、マスクMのパターン面上の各点に関する瞳強度分布が円形状の外形を維持しつつその大きさを拡大する(あるいは維持する)単純な例に基づいて、本実施形態の調整ユニットの作用効果を説明している。しかしながら、これに限定されることなく、例えば各領域101a〜101hを経てマスクMのパターン面上の1点に入射する光に関する瞳強度分布が円形状の外形から楕円状の外形へ調整されるように各領域101a〜101hの回折特性をそれぞれ設定する構成も可能である。この場合、例えば、各領域101a〜101hのうち開口部9aの内側に対応する領域を経てマスクMのパターン面上の1点に入射する光に関する楕円状の瞳強度分布の形状パラメータ(長径と短径との比など)または大きさが互いに異なるように設定することができる。
【0045】
上述の実施形態では、調整ユニットが角度分布付与素子として機能する単一の回折光学素子10を有する。回折光学素子10は、互いに異なる特性を有する4種類の領域を有し、各領域はその全体に亘って一定の回折特性(角度分布付与特性)を有する。また、回折光学素子10は、円の周方向に沿って分割された8つの領域を有し、隣り合う2つの領域は互いに異なる回折特性を有する。しかしながら、これに限定されることなく、調整ユニットとして回折光学素子を用いる場合、回折光学素子の配置位置、回折光学素子の数、領域の分割、分割領域の数、各分割領域の回折特性などについて様々な形態が可能である。
【0046】
例えば、図5の第1変形例に示すように、例えば光軸AXを中心とする円の周方向および径方向に沿って分割された複数(図5では8×4=32個)の領域を有し、各領域はその全体に亘って一定の回折特性を有する単一の回折光学素子10Aからなる調整ユニットを用いることができる。第1変形例の回折光学素子10Aでは、周方向に隣り合う2つの領域(例えば領域102adと102bd,102acと102bc)が互いに異なる回折特性を有し、径方向に隣り合う2つの領域(例えば領域102adと102ac,102bdと102bc)が互いに異なる回折特性を有する。
【0047】
また、図6の第2変形例に示すように、例えば光軸AXを中心とする円の径方向に沿って分割された複数(図6では4つ)の領域103a,103b,103c,103dを有し、図6に示す標準的な姿勢において各領域103a〜103dの回折特性がX方向に沿って変化している単一の回折光学素子10Bからなる調整ユニットを用いることができる。第2変形例の回折光学素子10Bでは、隣り合う2つの領域(領域103aと103b,103bと103c,103cと103d)が互いに異なる回折特性を有する。
【0048】
また、図7に示すように、例えば光軸AXに沿って隣接して配置されて光軸AX廻りに相対的に回転可能な一対の回折光学素子10Caと10Cbとからなる調整ユニット10Cを用いることができる。回折光学素子10Caと10Cbとは、後述する第3変形例のように互いに異なる構成を有していても良いし、後述する第4変形例のように互いに同じ構成を有していても良い。
【0049】
図8に示す第3変形例では、回折光学素子10Caと10Cbとが互いに異なる構成を有する。例えば光軸AX廻りに回転可能な一方の回折光学素子(第1素子)10Caは、図6の第2変形例の回折光学素子10Bと類似の構成を有するが、回折光学素子10Bの領域103b,103dに対応する領域103bx,103dxには回折光学面が形成されていない。また、例えば光軸AX廻りに回転可能な他方の回折光学素子(第2素子)10Cbも、第2変形例の回折光学素子10Bと類似の構成を有するが、回折光学素子10Bの領域103a,103cに対応する領域103ax,103cxには回折光学面が形成されていない。その結果、第3変形例では、光軸AXの方向に沿って見たときに回折光学素子10Caと10Cbとの間で回折光学面が重なり合っていないため、回折光学素子10Caと10Cbとの間でコンボリューションが起こらない。
【0050】
図9に示す第4変形例では、回折光学素子10Caと10Cbとが互いに同じ構成を有する。例えば光軸AX廻りに回転可能な回折光学素子10Caおよび10Cbは、光軸AXを通る直線104cによって分割された2つの領域104aおよび104bを有する。各領域104a,104bでは、例えば分割線104cと直交する方向に沿って回折特性が変化している。第4変形例では、光軸AXの方向に沿って見たときに回折光学素子10Caと10Cbとの間で回折光学面が重なり合っているため、回折光学素子10Caと10Cbとの間でコンボリューションが起こる。
【0051】
上述の実施形態の回折光学素子10および第1変形例の回折光学素子10Aにおいて、複数の領域のうちの少なくとも1つの領域において回折特性が例えば所定方向に沿って変化していても良い。また、第2変形例の回折光学素子10Bでは、複数の領域のうちの全ての領域または少なくとも1つの領域において回折特性が一定であっても良い。また、上述の実施形態、第1変形例および第2変形例において、例えば光軸AX廻りに回転可能な一対の回折光学素子(10,10A,10B)を光軸AXに沿って隣接配置することもできる。
【0052】
上述の実施形態および各変形例では、調整ユニットが、光軸AX廻りに回転可能な1つまたは複数の回折光学素子により構成されている。しかしながら、一般には、所定の軸線廻りに回転可能に構成されて、光束の入射位置に応じた角度分布を該光束に付与して射出する角度分布付与素子を用いて、調整ユニットを構成することができる。この場合、角度分布付与素子が射出光束に付与する角度分布の範囲は、該射出光束に対応する入射光束の角度分布の範囲以上である。
【0053】
上述の実施形態および各変形例では、調整ユニットが、被照射面であるマスクMのパターン面と光学的に共役な位置に配置されたマスクブラインド9の光源1側の隣接した位置に配置されている。しかしながら、これに限定されることなく、例えばマスクブラインド9のマスクM側の隣接した位置、結像光学系11とマスクMとの間の光路中においてマスクMに隣接した位置(すなわち被照射面に隣接する位置)、結像光学系11の光路中においてマスクMのパターン面と光学的に共役な位置(すなわち被照射面と光学的に共役な共役位置)などに、調整ユニットを配置することができる。ただし、マスクブラインド9の光源1側の隣接した位置に調整ユニットを配置することにより、結像光学系11の結像性能に対する調整ユニットの悪影響を回避することができる。
【0054】
上述の説明では、照明瞳に円形状の瞳強度分布が形成される円形照明を例にとって、本発明の作用効果を説明している。しかしながら、円形照明に限定されることなく、例えば輪帯状の瞳強度分布が形成される輪帯照明、複数極状の瞳強度分布が形成される複数極照明などの変形照明に対しても、同様に本発明を適用して同様の作用効果を得ることができることは明らかである。
【0055】
上述の実施形態では、マスクの代わりに、所定の電子データに基づいて所定パターンを形成する可変パターン形成装置を用いることができる。このような可変パターン形成装置を用いれば、パターン面が縦置きでも同期精度に及ぼす影響を最低限にできる。なお、可変パターン形成装置としては、たとえば所定の電子データに基づいて駆動される複数の反射素子を含むDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を用いることができる。DMDを用いた露光装置は、例えば特開2004−304135号公報、国際特許公開第2006/080285号パンフレットおよびこれに対応する米国特許公開第2007/0296936号公報に開示されている。また、DMDのような非発光型の反射型空間光変調器以外に、透過型空間光変調器を用いても良く、自発光型の画像表示素子を用いても良い。ここでは、米国特許公開第2007/0296936号公報の教示を参照として援用する。
【0056】
また、上述の実施形態では、オプティカルインテグレータとして、マイクロフライアイレンズ7を用いているが、その代わりに、内面反射型のオプティカルインテグレータ(典型的にはロッド型インテグレータ)を用いても良い。この場合、ズームレンズ6の後側にその前側焦点位置がズームレンズ6の後側焦点位置と一致するように集光レンズを配置し、この集光レンズの後側焦点位置またはその近傍に入射端が位置決めされるようにロッド型インテグレータを配置する。このとき、ロッド型インテグレータの射出端が照明視野絞り9の位置になる。ロッド型インテグレータを用いる場合、このロッド型インテグレータの下流の視野絞り結像光学系11内の、投影光学系PLの開口絞りASの位置と光学的に共役な位置を照明瞳面と呼ぶことができる。また、ロッド型インテグレータの入射面の位置には、照明瞳面の二次光源の虚像が形成されることになるため、この位置およびこの位置と光学的に共役な位置も照明瞳面と呼ぶことができる。ここで、ズームレンズ6、上記の集光レンズおよびロッド型インテグレータを分布形成光学系とみなすことができる。
【0057】
また、上述の実施形態において、回折光学素子3に代えて、或いは回折光学素子3に加えて、たとえばアレイ状に配列され且つ傾斜角および傾斜方向が個別に駆動制御される多数の微小な要素ミラーにより構成されて入射光束を反射面毎の微小単位に分割して偏向させることにより、光束の断面を所望の形状または所望の大きさに変換する空間光変調素子を用いても良い。このような空間光変調素子を用いた照明光学系は、例えば特開2002−353105号公報に開示されている。
【0058】
上述の実施形態の露光装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行っても良い。
【0059】
次に、上述の実施形態にかかる露光装置を用いたデバイス製造方法について説明する。図10は、半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図10に示すように、半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの基板となるウェハWに金属膜を蒸着し(ステップS40)、この蒸着した金属膜上に感光性材料であるフォトレジストを塗布する(ステップS42)。つづいて、上述の実施形態の露光装置を用い、マスク(レチクル)Mに形成されたパターンをウェハW上の各ショット領域に転写し(ステップS44:露光工程)、この転写が終了したウェハWの現像、つまりパターンが転写されたフォトレジストの現像を行う(ステップS46:現像工程)。その後、ステップS46によってウェハWの表面に生成されたレジストパターンをマスクとし、ウェハWの表面に対してエッチング等の加工を行う(ステップS48:加工工程)。
【0060】
ここで、レジストパターンとは、上述の実施形態の露光装置によって転写されたパターンに対応する形状の凹凸が生成されたフォトレジスト層であって、その凹部がフォトレジスト層を貫通しているものである。ステップS48では、このレジストパターンを介してウェハWの表面の加工を行う。ステップS48で行われる加工には、例えばウェハWの表面のエッチングまたは金属膜等の成膜の少なくとも一方が含まれる。なお、ステップS44では、上述の実施形態の露光装置は、フォトレジストが塗布されたウェハWを、感光性基板つまりプレートPとしてパターンの転写を行う。
【0061】
図11は、液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図11に示すように、液晶デバイスの製造工程では、パターン形成工程(ステップS50)、カラーフィルター形成工程(ステップS52)、セル組立工程(ステップS54)およびモジュール組立工程(ステップS56)を順次行う。ステップS50のパターン形成工程では、プレートPとしてフォトレジストが塗布されたガラス基板上に、上述の実施形態の露光装置を用いて回路パターンおよび電極パターン等の所定のパターンを形成する。このパターン形成工程には、上述の実施形態の露光装置を用いてフォトレジスト層にパターンを転写する露光工程と、パターンが転写されたプレートPの現像、つまりガラス基板上のフォトレジスト層の現像を行い、パターンに対応する形状のフォトレジスト層を生成する現像工程と、この現像されたフォトレジスト層を介してガラス基板の表面を加工する加工工程とが含まれている。
【0062】
ステップS52のカラーフィルター形成工程では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応する3つのドットの組をマトリックス状に多数配列するか、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルターの組を水平走査方向に複数配列したカラーフィルターを形成する。ステップS54のセル組立工程では、ステップS50によって所定パターンが形成されたガラス基板と、ステップS52によって形成されたカラーフィルターとを用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。具体的には、例えばガラス基板とカラーフィルターとの間に液晶を注入することで液晶パネルを形成する。ステップS56のモジュール組立工程では、ステップS54によって組み立てられた液晶パネルに対し、この液晶パネルの表示動作を行わせる電気回路およびバックライト等の各種部品を取り付ける。
【0063】
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
【0064】
なお、上述の実施形態では、露光光としてArFエキシマレーザ光(波長:193nm)やKrFエキシマレーザ光(波長:248nm)を用いているが、これに限定されることなく、他の適当なレーザ光源、たとえば波長157nmのレーザ光を供給するF2レーザ光源などに対して本発明を適用することもできる。
【0065】
また、上述の実施形態において、投影光学系と感光性基板との間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用しても良い。この場合、投影光学系と感光性基板との間の光路中に液体を満たす手法としては、国際公開第WO99/49504号パンフレットに開示されているような局所的に液体を満たす手法や、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる手法や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する手法などを採用することができる。ここでは、国際公開第WO99/49504号パンフレット、特開平6−124873号公報および特開平10−303114号公報の教示を参照として援用する。
【0066】
また、上述の実施形態において、米国公開公報第2006/0170901号及び第2007/0146676号に開示されるいわゆる偏光照明方法を適用することも可能である。ここでは、米国特許公開第2006/0170901号公報及び米国特許公開第2007/0146676号公報の教示を参照として援用する。
【0067】
また、上述の実施形態では、ウェハWのショット領域にマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置に対して本発明を適用している。しかしながら、これに限定されることなく、ウェハWの各露光領域にマスクMのパターンを一括露光する動作を繰り返すステップ・アンド・リピート方式の露光装置に対して本発明を適用することもできる。
【0068】
また、上述の実施形態では、露光装置においてマスク(またはウェハ)を照明する照明光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、マスク(またはウェハ)以外の被照射面を照明する一般的な照明光学系に対して本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0069】
1 光源
3 回折光学素子
4 アフォーカルレンズ
6 ズームレンズ
7 マイクロフライアイレンズ(オプティカルインテグレータ)
8 コンデンサー光学系
9 マスクブラインド
10 調整ユニット
11 結像光学系
M マスク
MS マスクステージ
PL 投影光学系
AS 開口絞り
W ウェハ
WS ウェハステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光により被照射面を照明する照明光学系に用いられて、該照明光学系の照明瞳に形成される瞳強度分布を調整する調整ユニットであって、
前記被照射面に隣接する位置、前記被照射面と光学的に共役な共役位置、または該共役位置に隣接する位置に配置されて、光束の入射位置に応じた角度分布を該光束に付与して射出する角度分布付与素子を備え、
前記角度分布付与素子は、前記瞳強度分布を前記被照射面上の位置毎に調整するために所定の軸線廻りに回転可能であることを特徴とする調整ユニット。
【請求項2】
前記角度分布付与素子が射出光束に付与する角度分布の範囲は、該射出光束に対応する入射光束の角度分布の範囲以上であることを特徴とする請求項1に記載の調整ユニット。
【請求項3】
前記角度分布付与素子は、前記照明光学系の光軸、または該光軸と平行な軸線廻りに回転可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の調整ユニット。
【請求項4】
前記角度分布付与素子は、回折光学素子を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の調整ユニット。
【請求項5】
前記角度分布付与素子は、互いに異なる特性を有する複数の領域を有し、各領域はその全体に亘って一定の角度分布付与特性を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の調整ユニット。
【請求項6】
前記角度分布付与素子は、前記所定の軸線を中心とする円の周方向に沿って分割された複数の領域を有し、隣り合う2つの領域は互いに異なる角度分布付与特性を有することを特徴とする請求項5に記載の調整ユニット。
【請求項7】
前記角度分布付与素子は、前記所定の軸線を中心とする円の周方向および径方向に沿って分割された複数の領域を有し、周方向に隣り合う2つの領域は互いに異なる角度分布付与特性を有し、径方向に隣り合う2つの領域は互いに異なる角度分布付与特性を有することを特徴とする請求項5に記載の調整ユニット。
【請求項8】
前記角度分布付与素子は、互いに異なる特性を有する複数の領域を有し、該複数の領域のうちの少なくとも1つの領域において角度分布付与特性が所定方向に沿って変化していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の調整ユニット。
【請求項9】
前記角度分布付与素子は、前記所定の軸線を中心とする円の径方向に沿って分割された複数の領域を有し、隣り合う2つの領域は互いに異なる特性を有することを特徴とする請求項8に記載の調整ユニット。
【請求項10】
前記角度分布付与素子は、第1の構成を有する第1素子と、該第1素子に隣接して配置されて前記第1の構成とは異なる第2の構成を有する第2素子とを備え、前記第1素子と前記第2素子とは前記所定の軸線廻りに相対的に回転可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の調整ユニット。
【請求項11】
前記角度分布付与素子は、互いに同じ構成を有し且つ互いに隣接して配置された第1素子と第2素子とを備え、前記第1素子と前記第2素子とは前記所定の軸線廻りに相対的に回転可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の調整ユニット。
【請求項12】
光源からの光で被照射面を照明する照明光学系において、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の調整ユニットを備えていることを特徴とする照明光学系。
【請求項13】
前記被照射面と光学的に共役な位置に配置された照明視野絞りを備え、
前記調整ユニットは、前記照明視野絞りの前記光源側の隣接した位置に配置されていることを特徴とする請求項12に記載の照明光学系。
【請求項14】
前記被照射面と光学的に共役な面を形成する投影光学系と組み合わせて用いられ、前記照明瞳は前記投影光学系の開口絞りと光学的に共役な位置であることを特徴とする請求項12または13に記載の照明光学系。
【請求項15】
所定のパターンを照明するための請求項12乃至14のいずれか1項に記載の照明光学系を備え、前記所定のパターンを感光性基板に露光することを特徴とする露光装置。
【請求項16】
前記所定のパターンの像を前記感光性基板上に形成する投影光学系を備えていることを特徴とする請求項15に記載の露光装置。
【請求項17】
請求項15または16に記載の露光装置を用いて、前記所定のパターンを前記感光性基板に露光する露光工程と、
前記所定のパターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記所定のパターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成する現像工程と、
前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工する加工工程とを含むことを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−171563(P2011−171563A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34780(P2010−34780)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】