調整可能な量子光源
半導体ヘテロ構造を具備する光子源であって、前記半導体ヘテロ構造は、量子井戸(97)と、前記量子井戸に隣接する障壁領域(85)と、前記量子井戸内に設けられる量子ドット(95)と、を含み、前記光子源は、電気的コンタクト(87、93)と、前記量子ドットの放射エネルギーを制御するために前記量子ドットに調整可能な電場を印加するように構成される第1及び第2の電気的コンタクトに結合される電源と、をさらに具備し、前記電場は、動作範囲にわたって調整可能であり、前記量子ドットから前記第1の電気的コンタクトへのキャリアのトンネル時間及び前記量子ドットから前記第2の電気的コンタクトへのキャリアのトンネル時間は、前記放射エネルギーを制御するための前記動作範囲にわたって前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きく、前記光子源は、単一量子ドットからの放射が前記光子源から出るように構成される、光子源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここで説明される実施形態は、一般に、光子エミッタに係り、特に、量子通信及び計算での使用に関する要求に応じて、単一光子又は光子対を出力するように動作されることができる光子エミッタに関する。
【背景技術】
【0002】
量子暗号の分野では、単一光子を確実に生成する必要がある。単一光子の生成に関してこれまでに提案されている1つの光子源は、量子ドットに基づいている。量子ドットでは、伝導帯の少数の電子と価電子帯のホールとの間に束縛状態がある場合に励起子が形成され、1つのホール及び1つの電子が再結合するときに放射崩壊が起こって、それにより、光子の放射を生じる。生成処理によって、光子が放射される時間は、注意深く制御されることができ、このような処理は、パウリの排他原理により2つの光子の放射を同時に生じさせることはできない。電子とホールの組み合わせの各々は、初期の電子状態と最終の電子状態との間の異なるエネルギー差を有し、慣例により初期状態の名称で名前を付けられる異なる波長の光子をもたらす。一例として、ドットが2つの電子及び1つのホールを含む場合、それは、1つの電子をドット内に残して、放射崩壊して「負帯電励起子」と称される単一光子を放射することができる。この遷移がデコヒーレンスに対して最もロバストであることが経験的に観測されるので、こうような遷移は、コヒーレントな単一光子の生成に関して好ましい。
【0003】
量子暗号、量子イメージング、及び量子計算の分野では、光子対を生成することが必要とされることもある。そのような光子は、最初は2つの電子及び2つのホールで満たされている、即ち、「双励起子状態」である単一量子ドットにおけるカスケード放射プロセスから作成されることができる。この状況は、「(帯電中性)励起子」状態の1つの電子及び1つのホールを残して、「双励起子光子」を放射することができる。その後、この電子及びホールは、再結合して「励起子」光子を放射し、ドットが空になる。励起子状態の特性の制御を通じて、これらの2つの光子は、エンタングルされることができる。
【0004】
特によく知られている材料系は、GaAs内のInAs量子ドットの形態である。放射波長は、量子ドットに電場を印加することにより調整することができる。しかしながら、光子放射が起こる前に、印加された場が量子ドットからのキャリアのトンネリングを促進するので、量子ドットに電場を印加することは、光子源の効率を低下させる。
【0005】
引用文献リスト
Applied Physics Letters 92, 193503 2008
Kim et al, Nature 397, 500-503 (1999)
APPLIED PHYSICS LETTERS 90, 233514 2007
New Journal of Physics 10 (2008) 043035
【図面の簡単な説明】
【0006】
これより、以下の限定されない実施形態を参照して本発明を説明する。
【図1】図1は、本発明の背景にある原理を説明するために使用される単純な量子ドットのバンド図である。
【図2】図2は、図1を参照して説明されるタイプのドットからのフォトルミネセンス放射を示すプロットであり、放射波長がY軸に沿ってプロットされ、外部バイアスがX軸に沿ってプロットされている。
【図3】図3aは、従来技術に従う光子エミッタの基本構造の概略図であり、図3bは、その対応するバンド図である。
【図4】図4aは、本発明の一実施形態に従う光子エミッタの概略図であり、図4bは、その対応するバンド図である。
【図5】図5aは、本発明の一実施形態に従う光子エミッタの概略図であり、図5bは、その対応するバンド図であり、図5cは、図5aのエミッタの変形であり、図5dは、その対応するバンド図である。
【図6】図6aは、本発明のさらなる実施形態に従う光子エミッタの概略図であり、図6bは、その対応するバンド図である。
【図7】図7aは、第1の構成に従って動作される光子エミッタの概略図であり、図7bは、図7aに示されるデバイスに印加されるバイアスのプロットであり、図7cは、光子生成確率のプロットである。
【図8】図8は、第2の動作モードに従って動作される本発明に従うデバイスの概略図である。
【図9】図9は、第3の動作モードに従って動作される本発明のデバイスの構成の概略図である。
【図10】図10は、第4の動作モードに従って動作される本発明に従うデバイスの概略図である。
【図11】図11は、バイアス電圧に対する、図6を参照して説明される光子エミッタのフォトルミネセンス放射を示すプロットである。
【図12】図12は、本発明の一実施形態に従う2つの光子エミッタを使用して量子ビットエンタングルメントを作成する装置の概略図である。
【図13】図13は、本発明の一実施形態に従う光子源を使用する量子リピータの概略図である。
【図14】図14は、本発明の一実施形態に従う3つの光子エミッタに関して、外部バイアス電圧に対する微細構造分裂(FSS)を示すプロットである。
【図15】図15は、キャビティ内に設けられる本発明に従う光子エミッタである。
【図16】図16a及び16bは、キャビティの中心にあるスペーサ層の端からの距離に対するキャビティの屈折率及び光電場を示すプロットであり、キャビティスペーサの屈折率は、図16aと図16bとの間で異なる。
【図17】図17a及び17bは、異なる量子井戸の形状を示す。
【図18】図18は、本発明の一実施形態に従う光子エミッタの詳細なデバイス概略図である。
【図19】図19は、単一量子ドットからの放射が分離される本発明のさらなる実施形態に従う光子エミッタの詳細なデバイス概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一実施形態によれば、半導体ヘテロ構造を備える光子源であって、前記半導体ヘテロ構造は、量子井戸と、前記量子井戸に隣接する障壁領域と、前記量子井戸内に設けられる量子ドットとを含み、前記光子源は、電気的コンタクトと、前記量子ドットの放射エネルギーを制御するために前記量子ドットに調整可能な電場を印加するように構成される第1及び第2の電気的コンタクトに結合される電圧源と、をさらに備え、前記電場は、動作範囲にわたって調整可能であり、前記量子ドットからのキャリアのトンネル時間は、前記放射エネルギーを制御するための前記動作範囲にわたって前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きく、前記光子源は、単一量子ドットからの放射が前記光子源から出るように構成される、光子源が提供される。
【0008】
トンネル時間は、印加されるバイアスに応じて変わる。本発明では、動作範囲は、好ましくは、100KVcm−1を超える。
【0009】
さらなる実施形態では、半導体ヘテロ構造を備える光子源であって、前記半導体ヘテロ構造は、量子ドットを含み、前記光子源は、電気的コンタクトと、前記量子ドットの放射エネルギーを制御するために前記量子ドット全体にわたって調整可能な電場を印加するように構成される第1及び第2の電気的コンタクトに結合される電圧源とをさらに備え、前記電場は、100KVcm−1の動作範囲にわたって調整可能であり、前記量子ドットからのキャリアのトンネル時間は、前記放射エネルギーを制御するための前記動作範囲にわたって前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きく、前記光子源は、単一量子ドットからの放射が前記光子源から出るように構成される、光子源が提供される。
【0010】
動作範囲上で量子ドットからのトンネリングを低減することは、複数の方法で達成されることができる。量子ドットと第1及び/又は第2のコンタクトとの間の半導体膜は、トンネリングに対する障壁を与え、この障壁は、量子ドット内の最低の電子エネルギー準位より(その厚さの少なくとも一部において)少なくとも高いポテンシャルを有する。量子井戸が設けられる場合、少なくとも量子ドットの片側にある、電子トンネルが起こる障壁は、好ましくは、量子井戸の最低の電子エネルギー準位より高いポテンシャルを有する。
【0011】
一実施形態では、量子ドット領域は、障壁領域によって規定される量子井戸を含み、量子ドットは、量子井戸内に位置する。障壁領域は、量子ドットがない場合でも量子井戸が形成されるように構成されるだろう。その後、量子ドットは、この井戸内に設けられる。量子井戸は、四角形の閉じ込めポテンシャル、或いは、三角形又は放物線状のポテンシャルのような勾配のある(graded)閉じ込めポテンシャルを有する。
【0012】
光子源の量子井戸は、障壁層より低いバンドギャップを有する材料を含み、より低いバンドギャップ材料は、2つの障壁層間に設けられる。
【0013】
障壁領域は、それらのポテンシャルの高さが異なっていてもよい。それらはまた、印加される電場の方向の幅が異なっていてもよい。一実施形態では、量子井戸層より大きなポテンシャルを有する障壁は、量子井戸の片側だけに設けられる。この障壁は、電子がトンネルするのを抑制するように設けられる。
【0014】
一実施形態では、量子ドットはInAsを含み、量子井戸はGaAsを含み、少なくとも1つの障壁領域はAlGaAs又はAlAsを含む。量子井戸はAlGaAsを含んでもよく、障壁はAlGaAsを含んでもよいが、この場合には、障壁は、それらが量子井戸に障壁を提供するように、より高いAl含有量を有するAlGaAsを含む。量子井戸に勾配がある場合、GaAsは、量子ドットが位置している井戸の中心に設けられることができる。
【0015】
キャリアは、複数の方法によって量子ドットに供給されることができ、例えば、源は、キャリアが量子ドットに供給されることを可能にするように電気的コンタクトに第1の電圧を印加し、量子ドットのバンドギャップを変えるために第2電圧を印加するように構成される電圧源を備えることができる。さらなる実施形態では、源は、量子ドットにキャリアを供給するように構成される第2の電気的コンタクトをさらに備える。光源は、量子ドットにキャリアを供給するために使用されてもよい。
【0016】
一実施形態では、光子源はp−i−n構造を有し、量子ドットは真性領域に位置し、p及びn型コンタクトは「i」領域の一方の側に設けられる。
【0017】
源は、光キャビティ(optical cavity)をさらに備えることができる。調整可能な源は、源が製造後にキャビティの共鳴に調整されることができるので、この配置において有利である。
【0018】
一実施形態では、光子源は、複数の量子ドットを備えるが、放射は、1つの量子ドットからのものが利用されるだけである。これは、1つの量子ドットにだけキャリアを供給することにより、或いは、多くの量子ドットにキャリアを供給して、1つの量子ドットを除く全部からの放射を遮ることにより、達成されることができる。従って、源は、単一量子ドットへのキャリア注入を可能にするように構成されるアパーチャを備える電気絶縁層をさらに備えることができる。また、源は、1つの量子ドットからの放射を分離するように構成される不透明層をさらに備えることができる。
【0019】
源に印加される場は、源の出力における微細構造分裂を最小化するように構成され、これは、エンタングルされた光子対の源が生成されることを可能にする。
【0020】
またさらなる実施形態では、個別の源からの光子の干渉によってエンタングルメントを生成するシステムであって、前記システムは、任意の先行する請求項に従う第1の光子源と、任意の先行する請求項に従う第2の光子源と、を備え、前記第1及び第2の光子源は、同一光子を放射するように調整され、前記システムは、前記2つの源からの出力される同一光子間でエンタングルメントを提供するように構成される干渉計をさらに備えるシステムが提供される。
【0021】
さらなる実施形態では、任意の先行する請求項に従う第1の光子源と、第2の光子源と、前記第1の光子源によって出力される光子対のうちの第1の光子、及び前記第2の光子源からの光子を干渉させるように構成される干渉計と、を備え、前記第1の光子源は、エンタングルされた光子対を出力するように構成され、前記光子のうちの1つは、前記干渉計による干渉の間に前記第2の光子源によって放射される光子が前記光子対のうちの第2の光子にマッピングされるように、前記第2の光子源によって出力される光子と同一である量子リピータが提供される。
【0022】
一実施形態では、選択された波長の光子を生成する方法であって、前記方法は、半導体構造内に量子ドットを用意することと、励起子を形成するために前記量子ドットにキャリアを供給することと、前記半導体構造に用意される第1及び第2の電気的コンタクトを使用して前記量子ドットに電場を印加することと、前記電場は、前記量子ドットの放射エネルギーを変更するように構成され、前記放射エネルギーを制御するための前記電場は、動作範囲にわたって調整可能であり、前記量子ドットに供給されるキャリアが結合して前記印加される電場によって選択されるエネルギーの光子を出力することを可能にすることと、を備え、前記半導体構造は、前記放射エネルギーを制御するために、前記動作範囲にわたって前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きくなるように、前記量子ドットからのキャリアのトンネル時間を増大するように構成される、方法が提供される。
【0023】
一実施形態では、量子ドットは、量子井戸内に設けられる。他の実施形態では、量子ドットは、障壁材料内に設けられる。さらなる実施形態では、単一の障壁は、電子トンネルを抑制するために設けられる。
【0024】
さらなる実施形態では、2つのエンタングルされた光子を生成する方法であって、前記方法は、半導体構造内に量子ドットを用意することと、双励起子又はより高次の励起子を形成するために前記量子ドットにキャリアを供給することと、前記半導体構造に用意される第1及び第2の電気的コンタクトを使用して前記量子ドットに電場を印加することと、前記電場は、前記量子ドットの放射エネルギーを変更するように構成され、前記放射エネルギーを制御するための前記電場は、動作範囲にわたって調整可能であり、前記量子ドットに供給されるキャリアが、双励起子崩壊からの第1の光子を生成し且つ前記量子ドット内の残りの励起子からの崩壊によって生成される第2の光子を生成するように結合することを可能にすることと、を備え、前記半導体構造は、前記放射エネルギーを制御するために、前記動作範囲を超えて、前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きくなるように、前記量子ドットからのキャリアのトンネル時間を増大させるように構成され、前記電場は、双励起子励起子空カスケード崩壊の間に微細構造分裂を最小化するためのレベルに変えられる、方法が提供される。
【0025】
一実施形態では、エネルギー準位の分裂は、量子ドットからの放射の均質線幅(homogenous line-width)以下である。
【0026】
定量的には、分裂は、2μeV以下であるべきであり、より好ましくは、1μeV以下であるべきである。
【0027】
図1は、量子ドットの概略のバンド図である。バンド図は、伝導帯1及び価電子帯3を示す。量子ドット5は、伝導帯に電子7を含み、価電子帯にホール9を含む。
【0028】
伝導帯の電子7及び価電子帯のホール9が結合して光子を放射するときに、量子ドットは放射を出す。伝導帯の単一電子7及び価電子帯の単一ホール9の存在は、単一励起子Xと称される束縛状態を形成する。
【0029】
図1は、単に単一中性励起子が存在する簡単化された配置を示す。しかしながら、伝導帯に2つの電子を含み且つ価電子帯に2つのホールを含む双励起子或いは電子及びホールの数が等しくない帯電励起子の形態も可能である。しかしながら、電子7が矢印で示されるように量子ドット5からトンネルする若しくはホール9が矢印で示されるように量子ドット5からトンネルする場合に、光子の放射が抑制されることがあり得る。三角形の障壁を通過するトンネル速度(tunnelling rate)|T|2は、次のようにモデル化することができる。
【数1】
【0030】
ここで、Cは定数であり、Eは電場であり、m*はトンネル粒子の有効質量であり、Wは閉じ込めポテンシャル(confinement potential)である。Eが増大すると、トンネル速度は増大する。m*が増大すると、トンネリングは減少する。Wが増大すると、トンネリングは減少する。
【0031】
従って、上述のことから、垂直電場が量子ドットに印加されると、Eが増大するのでトンネリングの確率が増大し、その結果、デバイスの放射効率が下がることは理解されることができる。
【0032】
しかしながら、障壁の高さWが増大すると、トンネリングを抑制することができることも理解される。
【0033】
図2は、バイアスが変更されるときに、図1を参照して説明したタイプのドットからのフォトルミネセンス放射を示す。GaAs内のInAs量子からの結果が示されている。プロットは、コントラストとして示される強度によって、X軸に沿う外部バイアスに対してY軸に沿う放射波長を示す。外部バイアスが(外部バイアスが内部ポテンシャルを相殺し、その結果、電場がドットの領域にない)1.5ボルトから低下されるにつれて、キャリアが束縛状態からトンネルし、発光線(emission line)は広がってそれほど極度でなくなることは理解されることができる。これは、バイアスが1.4ボルトに近づく時のデータの軽減によって理解されることができる。しかしながら、波長もバイアスに応じて変化することがこの図から理解されることができる。
【0034】
図3aは、従来技術に従う光子エミッタの概略図である。デバイスは、上方25のGaAs層と第2の下方27のGaAs層との間の界面(interface)23に形成されている複数のInAs量子ドット21を含む。上方のGaAs層の上にはp型コンタクト(p-type contact)があり、下方27のGaAs層の下にはn型コンタクト(n-type contact)がある。
【0035】
対応するバンド図は、図3bに示される。ここで、単一ドット31は、図3bに示されるような下方のGaAs層27と図3aの上方のGaAs層25との間の界面に設けられる。量子ドットは、伝導帯にある電子33、及び価電子帯にあるホール35を有する。電子33は、最終的にはnドープ領域(n-doped region)37の方へトンネルし、ホール35は、pドープ領域(p-doped region)39の方へトンネルする。電子33又はホール35が再結合の前にトンネルする場合、光子は放射されない。
【0036】
図4a及びその対応するバンド図の図4bは、本発明の一実施形態に従う設計を示す。障壁層は、設けられ、再結合の前の量子ドットからのキャリアのトンネリングを防ぐように構成される。
【0037】
図4a及び4bの実施形態では、複数の量子ドット21が、下方のガリウムヒ素層83と上方のガリウムヒ素層89との間の界面81に形成されている。上方のガリウムヒ素層89及び下方のガリウムヒ素層83は、上方の障壁層91及び下方の障壁層85にそれぞれに接触している。上方の障壁層85及び下方の障壁層91は、より高いバンドギャップ層であり、例えばAlGaAsであり得る。上方の障壁層91と下方の障壁層85との間に挟まれた上方のガリウムヒ素層89及び下方のガリウムヒ素層83を備えるこの配置は、ガリウムヒ素層が量子井戸を形成することになる。
【0038】
障壁層は、障壁層が存在しない場合よりもさらなる度合の電気的な閉じ込めを提供するように、量子ドットが形成されている界面81に十分に接近して設けられる。
【0039】
障壁層間のGaAs層は、量子井戸を形成する。
【0040】
対応するバンド図は、図4bに示される。ここで、量子ドット95は、上方のGaAs層89及び下方のGaAs層83によって形成される量子井戸内に位置する。そして、これは、図4a及び4bと5a及び5bとを参照して説明されるのと同じ方法で、量子ドットからのトンネリングを抑制する働きをする上方の障壁層91と下方の障壁層85との間に形成される。
【0041】
上記の設計では量子ドットがGaAsに形成されるが、これが量子ドットを形成する典型的な材料であるので、量子ドットの特性はよく理解される。
【0042】
障壁材料を使用することによって、量子ドットからのトンネリングがより長い時間にわたって抑制され、それは、光子エミッタの放射効率を高める。これは、400KV/cmを超える場が放射効率を損なうことなしに印加されることができるように、14nmを超える波長範囲にわたる調整につながり得る。
【0043】
図4a及び4bでは、構造は、非ドープ領域(undoped region)に位置するドットを備える、デバイスの片側がp型であり且つ反対側がn型であるp−i−n構造である。しかしながら、量子ドット及び障壁が同様の方法で構成されるのであれば、同様の結果がn−i−p、n−i−n、p−i−p、又はオーミック−i−ショットキー(ohmic-i-schottky)デバイスで得られる。
【0044】
図4に示される実施形態では、我々は、障壁が均等であり且つそれらの間の間隔が「量子井戸」内に電子状態の量子化を引き起こすのに十分小さい特別の場合を考えている。これは、キャリアが粒子のド・ブロイ波長に匹敵する領域に対して十分に強いポテンシャル内に閉じ込められる場合に起こる。
【0045】
図4は、ドットからのキャリアのトンネリングを抑制するための、ドットの一方の側にある障壁を示す。ドットから障壁までの距離が、キャリアがドットから出てトンネルする可能性がある障壁の端において閉じ込め状態が存在しないくらい十分に小さくなるように、これらの障壁の一方又は両方の高さ、位置、又は厚さが選択されている方が好ましい。電子及びホール(これらは異なる有効質量を有する。)は、ドットの一方の側にある障壁の不均等な高さに関して等しいトンネル速度を有するだろう。電場が印加されているときに量子ドットからの電子及びホールの両方のトンネリングを最小化することによって、光子源に関するより大きい調整範囲が達成されることができる。
【0046】
電子及びホールの両方に関するトンネル時間は、量子ドット内に形成される励起子の放射寿命より長い。InAs/GaAs量子ドットでは、X及びX−状態は、1nsの寿命を有する。これは、大多数のキャリアが放射的に再結合することを保証し、50%を超える効率を維持する。トンネリングは、一般に、量子ドットからコンタクトに向けて起こる。従って、電子は、n型コンタクトの方へトンネルし、ホールは、p型コンタクトの方へトンネルする。キャリアは、コンタクトの方へトンネルするが、多くは、それらが電場によってコンタクトへスイープされる(swept)真性領域へトンネルするだろう。n型コンタクトへ向かう電子及びp型コンタクトへ向かうホールに関するトンネル時間は、放射減衰時間(radiative decay time)より大きいだろう。
【0047】
図5a及び5bは、図4のデバイスの変形を示す。図5のデバイスでは、障壁は最大限に不均等である。平坦なバンドから離れたバイアスにおけるこの構成では、(一方の側の垂直なポテンシャルステップと他方の側の伝導帯の勾配との間に形成されている)障壁の側に「V」型の量子井戸がそれでもやはりある。この構成では、電子だけが、多くの場合に(to a greater extent)閉じ込められるだろう。
【0048】
図5aでは、複数の量子ドット21は、下層41と上層45との間の界面に位置する。下層41はn型コンタクト43に接続され、上層45はp型コンタクト47に接続される。対応するバンド図は、図5bに示される。量子ドット21とp型コンタクト47との間の距離は、量子ドットからのホールのトンネリングを防止することができるほど十分に大きくなければならない。
【0049】
図5bでは、単一量子ドット51は、上層45と下層41との間の界面に設けられる。下層41は、上層45より高いバンドギャップを有する。下層41は、n型領域43に接続される。量子ドットのホールの有効質量が電子の有効質量よりはるかに大きいので、電子のほうが最初にトンネルする可能性が高い。従って、図5a及び5bの配置では、より高いバンドギャップ材料41は、電子のトンネリングを抑制するために、且つ、放射が起こるのに十分長く電子及びホールを量子ドットに保持するために、量子ドットのn型の側に設けられる。
【0050】
図5aのデバイスに関する層状構造の一例では、上層はGaAsであり、量子ドットはInAsであり、下層41はAlGaAsである。図5cは、量子ドットが(図4aのように)GaAs領域に形成される図5aのデバイスの変更を示し、しかし、上層45は、AlGaAsであるが、下層41より低いAl含有量である。図5dは対応するバンド図を示す。
【0051】
図6a及び6bは、ポテンシャル障壁間の間隔が最小値に低減される第2の変形を示す。この場合、高バンドギャップ材料は、なおもキャリアの閉じ込めを増大させる。
【0052】
図6a及び6bは、本発明の一実施形態に従うさらなる設計を示す。ここで、複数の量子ドットが2つの障壁材料63及び65間の界面61に形成される。下方の障壁材料63は、n型材料67に接続され、上方の障壁層65は、p型材料69に接続される。例えばAlGaAsである2つの障壁層間に挟まれるInAs量子ドットがある場合、この設計は実現されることができる。AlGaAsのバンドギャップは2.2eVであり、これはGaAsで見られる1.5eVのバンドギャップより相当に大きい。
【0053】
AlGaAs内に量子ドットを形成するによって、大きな場はドットの中にトラップされたキャリアで印加されることができる。これは、400KV/cmを超える場が放射効率を損なうことなく印加されることができるように、20nmを超える波長範囲にわたる調整をもたらし得る。しかしながら、AlGaAs内に量子ドットを形成することによって、量子ドットの特性は変化され得る。さらに、ドットが1つの材料で成長されて異なる材料で覆われる場合、それらの特性は変わるだろう。例えば、ドットへのゼロの電場がある場合にAlAsでのQDの成長がより大きな微細構造分裂をもたらすように、QDの形状非対称性を増大することは知られている。印加される電場に応じた微細構造分裂の変化率は、アルミニウム組成が増大するにつれてより大きな空間非対称性を有することが知られている、AlGaAs内で成長されたドットに関して、より高い。従って、大きな空間非対称性を有するドットは、大部分のドットが微細構造分裂を最小化するために調整されることができるので、ゼロの又は低いFSSがそれらの増強された調整特性のために必要とされる場合に、特別に役に立つと考えられる。
【0054】
発明者らは、75%のAlGaAs内に入れられた(encapsulated)InAsドットが数10ナノメートルを超える非常に大きな波長調整範囲を有することを実験的に観測した。表1は、図3〜6を参照して説明したデバイスの比較を包括的に示す。
【表1】
【0055】
電場中の量子閉じ込め状態のエネルギーEは、次式に従ってシュタルク効果によってシフトされる。
【数2】
【0056】
ここで、E0はゼロ場でのエネルギーであり、pは「永久双極子」モーメントであり、βは「分極率」(これは負数である。)である。pは、電子とホールとの間の垂直分離の測定を与え、即ち、p=eDであり、ここで、Dは負電荷から正電荷へ向く。Fは、正の試験電荷上での真の力(net force)として定義される電場である。
【0057】
さらに、フォトルミネセンス(PL)放射が観測されることが可能になる量子ドットに垂直に印加され得る最大の電場は、図3のデバイスと比較して、図4〜6のデバイスでは相当に大きい。しかしながら、特に大きな場は図4及び6のデバイスに関して見られる。これはまた、より大きな波長調整範囲に変わる。図3を参照して説明した従来のデバイス設計においては、0.3nm未満の調整範囲が観測される。しかしながら、これは図4及び6のデバイスでは20nm超まで増大する。
【0058】
次に、デバイスの可能な動作モードを図7〜10を参照して説明する。バイアスが量子ドットに印加されることができる単一量子ドットを含む最も簡単な形態においてデバイスを説明する。
【0059】
図7aのデバイス構成では、電場は層の面と垂直に印加される。層は、p−i−n型構造を有する。まず、図7bを参照すると、電子及びホールが量子ドットに存在することとができるように、ダイオードの閾値電圧より大きい第1レベル101のバイアスが印加される。次に、閾値電圧未満である第2レベル103のバイアスが印加される。このバイアスは、電流注入を止めて、シュタルク効果によって量子ドットの放射をデバイスの所望の出力エネルギーと等しいエネルギーへシフトする。印加電圧は図7bに示される。電圧が第2電圧レベル103にある場合、図7cに示されるように、光子が生成される確率がより高くなる。
【0060】
本発明の実施形態に従うデバイスを使用することによって、第2電圧レベルのより大きな範囲が可能であり、従って、デバイスは、放射波長のより大きな範囲に関して出力するように構成されることができる。
【0061】
この動作モードの原理は、Applied Physics Letters 92, 193503 2008により詳細に説明されている。
【0062】
図8は、第2の動作モードを示す。ここで、デバイス100は、この場合にも、デバイスの層の面と垂直に印加される電場を受ける。デバイスは、連続注入メカニズム(sequential injection mechanism)を使用して動作する。ここで、まず、電子(ホール)が量子ドットに共鳴トンネルする(resonantly tunnel)ことを可能にするバイアスが印加される。一旦これが達成されると、バイアスは、ホール(電子)が光学活性な領域に共鳴トンネルすることができる範囲に急速に切り替えられる。この配置が機能するためには、デバイスが、電子(ホール)がトンネルして出るより速く切り替わってホール(電子)にトンネルすることができることが重要である。この種の配置の原理は、Kim et al, Nature 397, 500-503 (1999)に説明されている。
【0063】
「共振連続(resonant, sequential)」動作として知られるこの動作モードは、より狭い発光線において明らかである高い光子純度(photon purity)を達成する。一旦電子(ホール)及びホール(電子)が量子ドットへトンネルすると、デバイスは、図7を参照して説明した量子ドットの放射波長を規定する第3電圧レベルに戻される。
【0064】
図9を参照して説明されるモードでは、デバイス100は、源111によって層と垂直に印加される場を受け、さらなる電圧源113は、層の面に設けられる。電圧源113は、層の面に設けられ、デバイス100内の量子ドットにキャリアを注入するために使用される。第1の電圧源111は、量子ドットの放射波長又は微細構造分裂を制御するために設けられる。
【0065】
図10は、動作モードのまたさらなる変形を示す。図10のデバイスでは、デバイス100は、この場合にも、源111からの層の面に直交して印加される垂直電場を受ける。キャリアは、光学的励起によって量子ドットに注入される。源111によって印加される電圧を設定することにより、量子ドットの放射波長又は微細構造分裂を制御することが可能になる。
【0066】
図11は、合理的に大きな範囲にわたって調整された本発明の一実施形態に従う量子ドットの出力を示す。図11の結果を生成するために使用されたデバイスの設計は、図4a及び4bを参照して説明したものである。出力依存性(power dependence)及び偏光測定を実行することによって、量子ドットにおける特定の遷移を識別することが可能である。
【0067】
Xが付されているラインは、伝導帯の単一電子及び価電子帯の単一ホールが結合してドットを完全に空にして光子を放射する単一中性励起子に起因する。XXが付されているラインは、中性双励起子崩壊に起因する。これは、伝導帯の2つの電子及び価電子帯の2つのホールがあり、伝導帯の1つの電子が価電子帯の単一電子と結合して光子を放射し、伝導帯に単一電子及び価電子帯に単一ホールを残す場合である。
【0068】
X−が付されているラインは、伝導帯に2つの電子が存在し且つ価電子帯に1つのホールが存在する量子ドットからの崩壊に起因する。伝導帯の1つの電子は、価電子帯の単一ホールと結合し、伝導帯に単一電子を残す。この崩壊は、負励起子崩壊として知られている。同様に、正励起子崩壊X+は、開始状態が伝導帯の単一電子及び価電子帯の2つのホールである場合である。さらに、より高次の励起子(higher order excitons)の帯電崩壊(charged decay)も可能であり、励起子XX+は、伝導帯に3つの電子を含み且つ価電子帯に2つのホールを含む。
【0069】
図11からは、異なる励起子の発光線が異なる調整電圧で支配的になることを認識することができる。従って、特定のタイプの放射を制御する若しくは支持する(favour)ことが可能である。例えば、エンタングルされた光子の生成においては、X2/X崩壊が好ましく、この特定のサンプルに関しては0ボルトの近くのバイアスデバイスが望まれる。
【0070】
X−励起子は、高純度光子状態を生成するのに有用である狭い線幅をしばしば有する。従って、このラインが支配的になる1ボルトと2.2ボルトとの間でデバイスにバイアスをかけることが望まれる場合がある。
【0071】
大きな波長にわたって調整する能力は、エンタングルメントを可能にするのに十分に類似するように2つの独立した源の出力特性を調整することを可能にする。これは、量子リピータ及び量子計算での利用がある異なる源から放射される光子のエンタングルメントを可能にする。量子計算では、異なる源からの光子をエンタングルする能力は、個体状態量子ビット(solid state qubit)のエンタングルメントを可能にする。
【0072】
上記の光子源は、エンタングルされた光子の源としてより容易に構成することができる光子源をさらに提供する。エンタングル光子源(entangled photon source)を実現するためには、量子ドットからのフォトルミネセンスにおいて微細構造分裂がない量子ドットを有していることが望ましい。広範囲の電場にわたる調整を可能にする実施形態を使用して、微細構造分裂が最小化される場で源を動作することは可能である。微細構造分裂は、双励起子励起子空カスケード崩壊(biexciton-to-exciton to-empty cascade decay)中に起こる。
【0073】
最後に、量子ドットの出力を支配する励起子崩壊のタイプは、印加される電場に依存する。従って、広い波長範囲にわたって出力を調整する能力は、特定の励起子崩壊が出力を支配するようにドットが構成されることを可能にする。
【0074】
増強された閉じ込めはまた、デバイスがより高温度で動作されることを可能にするだろう。
【0075】
本発明の実施形態に従うデバイスでは、高いルミネセンス効率を保持しながら、QDに非常に大きな垂直電場を印加することが可能である。全ての先行技術において、数十KVcm−1より小さい場は、キャリアがドットからトンネルする前に、印加されることができるかもしれない。本発明の実施形態に係るデバイスでは、500KVcm−1までの場を印加することが可能であり、さらに、高い内部量子効率を観測するが可能である。
【0076】
図12は、本発明の一実施形態に従う光源に関する第1の可能な使用を示す。
【0077】
図12は、第1の源201及び第2の源203が同一の放射エネルギーを有するように構成されるそのような配置を示す。これらの源はまた、それらが双励起子又は帯電励起子崩壊によって光子を放射するように構成される。第1の源201及び第2の源203は、各々がドット内に電子・ホールの対又は単一電荷を残して、単一光子を放射する。
【0078】
この崩壊によって生成される光子の各々は、量子ドットに残る複数のキャリア又は1つのキャリアのスピンによって形成される個体状態量子ビットとエンタングルされる。崩壊による同一光子が2つの異なる光子源からビームスプリッター205に同時に入射し、適切な測定が検出器D1及びD2の各々によって実行される場合、光子はエンタングルされるだろう。これは、源201及び203における個体状態量子ビットを互いにエンタングルする働きをする。2つの個体状態量子ビットをエンタングルするこの能力には、分散量子計算での利用がある。
【0079】
図13は、量子リピータ動作を実行する本発明の実施形態に従う源に関するさらなる使用を示す。長距離を超えて単一光子で符号化された情報を送信するために、量子情報がアリス211からボブ217へ送信されることができる距離の増加を可能にするように、量子リピータを有することが望ましい。我々の単純な例では、量子リピータ動作は、2光子ゲート(2 photon gate)215、エンタングル光子源213、及び古典的チャネル218を要求する。
【0080】
図13の配置では、送信器アリス211は、単一光子源を有する。エンタングル光子源213である第2の光子源は、エンタングルされた光子対を生成する。エンタングル光子源213から2光子ゲート215へ送られた光子のうちの1つは、アリス211によって放射された光子と同一である必要がある。213によって生成されたエンタングルされた対の他方の光子は、ボブ217へ送られる。その後、同一光子は、それらを比較する測定を実行する2光子ゲート215に渡される。この測定の結果に基づいて、古典的情報は、チャネル218によってボブへ伝送されることができる。ボブは、エンタングル光子源が彼へ送った光子で変換
【数3】
【0081】
を実行するためにこの情報を使用し、それにより、その量子状態を、アリスによって生成された最初の光子と同じになるように変換する。このように、ボブ217に到達した光子は、アリスによって送られた量子情報を含み、この情報は、アリスが彼女の光子を直接送ることが可能である距離より長い距離を超えて伝送される。
【0082】
図14は、図4を参照して説明したデバイスにわたって調整電圧を印加する効果を示す。微細構造分裂(FSS)は、励起子状態の垂直に偏光された成分(H及びV)間のエネルギー差である。量子ドットからエンタングルされた光子の生成を得る場合、FSSをゼロにすることが望まれる。エンタングルされた光子の生成の前の実証は、(i)面内磁場、(ii)サンプルのアニーリング、又は(iii)ゼロのFSSを自然に有するドットの広範囲の探索を使用している。量子ドット源を備える全てのエンタングルメント実証では、これまでのところ、ゼロのFSS分裂は、「湿潤層(wetting layer)」のバックグラウンドからの放射がパフォーマンスに弊害をもたらし得る885ナノメートルで得ることができるだけである。
【0083】
これらの解決策は、複雑であり、時間がかかり、アンサンブル(ensemble)に適切な量子ドットを見つけることを我々に要求する。垂直電場の印加を使用する本発明の解決策は、比較的容易である。さらに、この技術は、我々が量子状態の放射寿命に匹敵する若しくはそれより速い時間スケールでFSSを変えることを可能にし、それは、有利であり得るが、以前に使用されている技術では不可能である。
【0084】
従って、大きな垂直場は、放射が930と950nmとの間で起こる図4を参照して説明したデバイスの量子ドットに関する同じような方法で、微細構造分裂を調整するために使用されることができる。観測された全ての量子ドットでは、FSSは、同様の方法で印加されるバイアスに応じて直線的に変化する。
【0085】
異なる特性を備える量子ドットの成長を通じて、他の波長(即ち、1300及び1550ナノメートルの通信波長)及び/又はInAs/InPのような量子ドットタイプまで放射を広げることは可能かもしれない。
【0086】
InP/InAs/InPのQDでは、システムは、0.75−0.95eVの範囲で放射する場合に、FSSが、約10μeVの散乱(scatter)を含んでFSS=0のあたりで不規則に分布されることが予想される。本発明の実施形態は、このシステムの個々のQDごとにFSSをゼロに低減するために使用されることができる。
【0087】
GaAs/InAs/GaAsのQDでは、ゼロの場でのFSSは、より広い範囲にわたってドットごとにガウス分布に応じて不規則に変化する。1.4eVの放射エネルギーでは、50μeV近くの「散乱」を含んで、平均のFSSはゼロである。FSSは、これらのドットに関して1KVcm−1当たり0.28μeVの割合で変化するので、「散乱」/「割合」=180KVcm−1の範囲にわたって場を印加することができるデバイスは、全てのドットをゼロに調整することができる。より小さな調整範囲については、ドットの部分集合だけがゼロのFSSに調整することができる。
【0088】
1.32eVで放射するQDにおいては、平均のFSSは、100μeVの散乱を含んで〜100μeVであり、従って、150μeVの調整範囲は、全てのQDをゼロに調整することができることを意味し、それは530KVcm−1の場に対応する。
【0089】
図15は、デバイス301が源303からの垂直電場を受ける本発明の一実施形態に従うデバイス構成の概略図を示す。さらに、デバイスはキャビティ(cavity)305を含む。キャビティは、量子ドットの周囲に設けられ、1つの方向の放射を増強して効率を増加させるために、且つ/或いは、量子ドットの放射特性を変更するために使用される。
【0090】
キャビティは、屈折率が交互に変化する4分の1波長層のブラッグミラーに基づくもの、当技術分野で周知である若しくはより普通ではない配置であるフォトニック結晶を含むことができる。
【0091】
図4−6に示される設計では、量子ドットは、高屈折率材料又は低屈折率材料で作られ得るキャビティ内に位置されることができる。図16は、X軸上の距離に沿って、Y軸に沿う層の屈折率及び電場を示す。キャビティ401は、スペーサの形態で存在する。
【0092】
キャビティが主に高屈折率(即ち、GaAs)で作られている場合、スペーサの端から(2Μ)λ/4にあるQDを備えて1/2(Ν+1)λの厚さをスペーサが有する図17aに示される基準を使用するのに望ましい。ここで、N、Mは、ゼロ以外の整数である。
【0093】
しかしながら、スペーサ及びキャビティが主に低屈折率(即ちAlGaAs)である場合、端から(2Μ−1)λ/4にあるQDを備えて1/2(N)λの厚みをスペーサが有する図17bに示される基準が使用されなければならない。
【0094】
上述の設計は、光がキャビティの中心に可能な限り接近して閉じ込められることを保証し、光電場(optical electric field)が最大のところにドット層の位置を決める。
【0095】
キャビティの考察に加えて、異なるタイプの量子井戸配置は、量子ドットにおいて状態を制限するために使用されてもよい。図18a及び18bは可能な量子井戸を示す。図18aは、図4を参照して説明されてもいる四角形タイプの量子井戸を示す。図18bは、キャリアが量子ドットに近い最低のポテンシャルで蓄積する傾向がある可変組成量子井戸(variable composition quantum well)を示す。さらに、エネルギープロファイルが放物線状、直線状、又は他の種々の形状(profile)であるように、組成を変えることも可能である。量子井戸の閉じ込め状態は、量子ドットの閉じ込め状態との特定の関係を有するように設計されることができる。例えば、量子井戸の閉じ込め状態が1つのフォノンエネルギーによって分離される場合、量子ドットへの捕捉は、増進されることができる。
【0096】
図18は、層状構造の詳細を備える本発明の一実施形態に従うデバイスを示す。このデバイスにおいては、デバイスの放射波長が955nmであり、n(GaAs)=3.472、n(95%AlGaAs)=2.947、n75%=3.088、GaAsの4分の1波長厚さが955/(4×3.472)=68.764nmであり、95%AlGaAsの4分の1波長厚さが81.015nmであると仮定する。
【0097】
デバイスは、非ドープバッファ層(undoped buffer layer)を備えた基板501上に形成される。典型的には、基板はGaAsである。次に、各々の厚さが光学波長の4分の1である高又は低屈折率材料の複数の交互層を含む下部ブラッグミラー層503が形成される。最後の数個の繰り返しは、Nドープされていてもよい。
【0098】
下部キャビティスペーサ層は、n型下部ブラッグ領域505に重なって接触している。下部キャビティスペーサ層は、75%のAlGaAs(これは、短周期超格子に、或いは、基板に同時に作用する(impinge)3つ全ての要素とともに付着される(deposited)ことができる)を含む。半分の量子井戸は、下部キャビティスペーサ層に重なって接触して付着される。
【0099】
そして、量子ドット層509は、重なって形成される。例えば、この特定の実施形態中では、InAs源の1.7超の単分子層(more than 1.7monolayers)は付着され、これは当技術分野で周知の方法で量子ドットに「自己集合される(self assembled)」。
【0100】
次に、量子井戸の残り半分が付着され、上部スペーサ層511は重なって形成される。
【0101】
上部のブラッグミラー513は、上部スペーサ層511に重なって接触している。このミラーの最後の少数の層は、オーム接触の形成を可能にするために、我々の例では、P型にドープされた。
【0102】
一旦層成長が終了すると、デバイスは、n型コンタクト521を形成するためにnドープミラー層505までエッチングされ、p型コンタクトは、上部ミラー層513に重なって接触して設けられる。コンタクト金属525は、下位層へのコンタクト金属のショートを防ぐために設けられる絶縁層527に重なっている。
【0103】
上述のものでは、ブラッグミラーは、各々が4分の1波長の厚さの交互になっている高屈折率層及び低屈折率層を使用して形成される。層の数が大きいほど、より高い反射率が達成される。さらに、屈折率のコントラストが大きいほど、より高い反射率が達成される。上述のものでは、単一体で成長されることができ且つ容易に形成されることができるGaAs/AlGaAs層が使用される。しかしながら、これらは、約900nmで0.5の屈折率差を有する。従って、後になって置かれ且つより高い屈折率コントラストを達成することができるSiO2/TiO2又はSiO2/Si3N4のような誘電体を使用することが望まれることもある。
【0104】
図19は、図18のデバイスにおける変形を示す。いくらかの不必要な反復を回避するために、同様の参照番号を同様の特徴を示すために使用する。図19のものと比較した図20のデバイスの主な差異は、電流が流れる小さな領域を制限するスペーサ層内に設けられる絶縁層531の形状である。これは、単一量子ドットに注入することができることを意味する。そのような層は、湿度の高い空気中での高いAl含有量のAlGaAs層の酸化によって形成することができる。高反射率ブラッグミラー及び酸化層からの屈折率の横方向変化の組み合わせは、3Dの光学の閉じ込めに結びつく場合があり、量子ドットの放射特性を変更する。この原理は、APPLIED PHYSICS LETTERS 90, 233514 2007及びNew Journal of Physics 10 (2008) 043035により詳細に説明される。
【0105】
特定の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例証として示されており、本発明の範囲を制限するようには意図されない。実際には、ここで説明される新規の源、システム、レピータ及び方法は、様々な他の形態で具体化されることができる。さらに、ここで説明される源、システム、レピータ及び方法の形態における様々な省略、置換及び変更は、本発明の精神から逸脱することなく、なされることができる。添付の特許請求の範囲及びその均等物は、本発明の範囲及び精神に含まれるような形態或いは改良に及ぶように意図される。
【技術分野】
【0001】
ここで説明される実施形態は、一般に、光子エミッタに係り、特に、量子通信及び計算での使用に関する要求に応じて、単一光子又は光子対を出力するように動作されることができる光子エミッタに関する。
【背景技術】
【0002】
量子暗号の分野では、単一光子を確実に生成する必要がある。単一光子の生成に関してこれまでに提案されている1つの光子源は、量子ドットに基づいている。量子ドットでは、伝導帯の少数の電子と価電子帯のホールとの間に束縛状態がある場合に励起子が形成され、1つのホール及び1つの電子が再結合するときに放射崩壊が起こって、それにより、光子の放射を生じる。生成処理によって、光子が放射される時間は、注意深く制御されることができ、このような処理は、パウリの排他原理により2つの光子の放射を同時に生じさせることはできない。電子とホールの組み合わせの各々は、初期の電子状態と最終の電子状態との間の異なるエネルギー差を有し、慣例により初期状態の名称で名前を付けられる異なる波長の光子をもたらす。一例として、ドットが2つの電子及び1つのホールを含む場合、それは、1つの電子をドット内に残して、放射崩壊して「負帯電励起子」と称される単一光子を放射することができる。この遷移がデコヒーレンスに対して最もロバストであることが経験的に観測されるので、こうような遷移は、コヒーレントな単一光子の生成に関して好ましい。
【0003】
量子暗号、量子イメージング、及び量子計算の分野では、光子対を生成することが必要とされることもある。そのような光子は、最初は2つの電子及び2つのホールで満たされている、即ち、「双励起子状態」である単一量子ドットにおけるカスケード放射プロセスから作成されることができる。この状況は、「(帯電中性)励起子」状態の1つの電子及び1つのホールを残して、「双励起子光子」を放射することができる。その後、この電子及びホールは、再結合して「励起子」光子を放射し、ドットが空になる。励起子状態の特性の制御を通じて、これらの2つの光子は、エンタングルされることができる。
【0004】
特によく知られている材料系は、GaAs内のInAs量子ドットの形態である。放射波長は、量子ドットに電場を印加することにより調整することができる。しかしながら、光子放射が起こる前に、印加された場が量子ドットからのキャリアのトンネリングを促進するので、量子ドットに電場を印加することは、光子源の効率を低下させる。
【0005】
引用文献リスト
Applied Physics Letters 92, 193503 2008
Kim et al, Nature 397, 500-503 (1999)
APPLIED PHYSICS LETTERS 90, 233514 2007
New Journal of Physics 10 (2008) 043035
【図面の簡単な説明】
【0006】
これより、以下の限定されない実施形態を参照して本発明を説明する。
【図1】図1は、本発明の背景にある原理を説明するために使用される単純な量子ドットのバンド図である。
【図2】図2は、図1を参照して説明されるタイプのドットからのフォトルミネセンス放射を示すプロットであり、放射波長がY軸に沿ってプロットされ、外部バイアスがX軸に沿ってプロットされている。
【図3】図3aは、従来技術に従う光子エミッタの基本構造の概略図であり、図3bは、その対応するバンド図である。
【図4】図4aは、本発明の一実施形態に従う光子エミッタの概略図であり、図4bは、その対応するバンド図である。
【図5】図5aは、本発明の一実施形態に従う光子エミッタの概略図であり、図5bは、その対応するバンド図であり、図5cは、図5aのエミッタの変形であり、図5dは、その対応するバンド図である。
【図6】図6aは、本発明のさらなる実施形態に従う光子エミッタの概略図であり、図6bは、その対応するバンド図である。
【図7】図7aは、第1の構成に従って動作される光子エミッタの概略図であり、図7bは、図7aに示されるデバイスに印加されるバイアスのプロットであり、図7cは、光子生成確率のプロットである。
【図8】図8は、第2の動作モードに従って動作される本発明に従うデバイスの概略図である。
【図9】図9は、第3の動作モードに従って動作される本発明のデバイスの構成の概略図である。
【図10】図10は、第4の動作モードに従って動作される本発明に従うデバイスの概略図である。
【図11】図11は、バイアス電圧に対する、図6を参照して説明される光子エミッタのフォトルミネセンス放射を示すプロットである。
【図12】図12は、本発明の一実施形態に従う2つの光子エミッタを使用して量子ビットエンタングルメントを作成する装置の概略図である。
【図13】図13は、本発明の一実施形態に従う光子源を使用する量子リピータの概略図である。
【図14】図14は、本発明の一実施形態に従う3つの光子エミッタに関して、外部バイアス電圧に対する微細構造分裂(FSS)を示すプロットである。
【図15】図15は、キャビティ内に設けられる本発明に従う光子エミッタである。
【図16】図16a及び16bは、キャビティの中心にあるスペーサ層の端からの距離に対するキャビティの屈折率及び光電場を示すプロットであり、キャビティスペーサの屈折率は、図16aと図16bとの間で異なる。
【図17】図17a及び17bは、異なる量子井戸の形状を示す。
【図18】図18は、本発明の一実施形態に従う光子エミッタの詳細なデバイス概略図である。
【図19】図19は、単一量子ドットからの放射が分離される本発明のさらなる実施形態に従う光子エミッタの詳細なデバイス概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一実施形態によれば、半導体ヘテロ構造を備える光子源であって、前記半導体ヘテロ構造は、量子井戸と、前記量子井戸に隣接する障壁領域と、前記量子井戸内に設けられる量子ドットとを含み、前記光子源は、電気的コンタクトと、前記量子ドットの放射エネルギーを制御するために前記量子ドットに調整可能な電場を印加するように構成される第1及び第2の電気的コンタクトに結合される電圧源と、をさらに備え、前記電場は、動作範囲にわたって調整可能であり、前記量子ドットからのキャリアのトンネル時間は、前記放射エネルギーを制御するための前記動作範囲にわたって前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きく、前記光子源は、単一量子ドットからの放射が前記光子源から出るように構成される、光子源が提供される。
【0008】
トンネル時間は、印加されるバイアスに応じて変わる。本発明では、動作範囲は、好ましくは、100KVcm−1を超える。
【0009】
さらなる実施形態では、半導体ヘテロ構造を備える光子源であって、前記半導体ヘテロ構造は、量子ドットを含み、前記光子源は、電気的コンタクトと、前記量子ドットの放射エネルギーを制御するために前記量子ドット全体にわたって調整可能な電場を印加するように構成される第1及び第2の電気的コンタクトに結合される電圧源とをさらに備え、前記電場は、100KVcm−1の動作範囲にわたって調整可能であり、前記量子ドットからのキャリアのトンネル時間は、前記放射エネルギーを制御するための前記動作範囲にわたって前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きく、前記光子源は、単一量子ドットからの放射が前記光子源から出るように構成される、光子源が提供される。
【0010】
動作範囲上で量子ドットからのトンネリングを低減することは、複数の方法で達成されることができる。量子ドットと第1及び/又は第2のコンタクトとの間の半導体膜は、トンネリングに対する障壁を与え、この障壁は、量子ドット内の最低の電子エネルギー準位より(その厚さの少なくとも一部において)少なくとも高いポテンシャルを有する。量子井戸が設けられる場合、少なくとも量子ドットの片側にある、電子トンネルが起こる障壁は、好ましくは、量子井戸の最低の電子エネルギー準位より高いポテンシャルを有する。
【0011】
一実施形態では、量子ドット領域は、障壁領域によって規定される量子井戸を含み、量子ドットは、量子井戸内に位置する。障壁領域は、量子ドットがない場合でも量子井戸が形成されるように構成されるだろう。その後、量子ドットは、この井戸内に設けられる。量子井戸は、四角形の閉じ込めポテンシャル、或いは、三角形又は放物線状のポテンシャルのような勾配のある(graded)閉じ込めポテンシャルを有する。
【0012】
光子源の量子井戸は、障壁層より低いバンドギャップを有する材料を含み、より低いバンドギャップ材料は、2つの障壁層間に設けられる。
【0013】
障壁領域は、それらのポテンシャルの高さが異なっていてもよい。それらはまた、印加される電場の方向の幅が異なっていてもよい。一実施形態では、量子井戸層より大きなポテンシャルを有する障壁は、量子井戸の片側だけに設けられる。この障壁は、電子がトンネルするのを抑制するように設けられる。
【0014】
一実施形態では、量子ドットはInAsを含み、量子井戸はGaAsを含み、少なくとも1つの障壁領域はAlGaAs又はAlAsを含む。量子井戸はAlGaAsを含んでもよく、障壁はAlGaAsを含んでもよいが、この場合には、障壁は、それらが量子井戸に障壁を提供するように、より高いAl含有量を有するAlGaAsを含む。量子井戸に勾配がある場合、GaAsは、量子ドットが位置している井戸の中心に設けられることができる。
【0015】
キャリアは、複数の方法によって量子ドットに供給されることができ、例えば、源は、キャリアが量子ドットに供給されることを可能にするように電気的コンタクトに第1の電圧を印加し、量子ドットのバンドギャップを変えるために第2電圧を印加するように構成される電圧源を備えることができる。さらなる実施形態では、源は、量子ドットにキャリアを供給するように構成される第2の電気的コンタクトをさらに備える。光源は、量子ドットにキャリアを供給するために使用されてもよい。
【0016】
一実施形態では、光子源はp−i−n構造を有し、量子ドットは真性領域に位置し、p及びn型コンタクトは「i」領域の一方の側に設けられる。
【0017】
源は、光キャビティ(optical cavity)をさらに備えることができる。調整可能な源は、源が製造後にキャビティの共鳴に調整されることができるので、この配置において有利である。
【0018】
一実施形態では、光子源は、複数の量子ドットを備えるが、放射は、1つの量子ドットからのものが利用されるだけである。これは、1つの量子ドットにだけキャリアを供給することにより、或いは、多くの量子ドットにキャリアを供給して、1つの量子ドットを除く全部からの放射を遮ることにより、達成されることができる。従って、源は、単一量子ドットへのキャリア注入を可能にするように構成されるアパーチャを備える電気絶縁層をさらに備えることができる。また、源は、1つの量子ドットからの放射を分離するように構成される不透明層をさらに備えることができる。
【0019】
源に印加される場は、源の出力における微細構造分裂を最小化するように構成され、これは、エンタングルされた光子対の源が生成されることを可能にする。
【0020】
またさらなる実施形態では、個別の源からの光子の干渉によってエンタングルメントを生成するシステムであって、前記システムは、任意の先行する請求項に従う第1の光子源と、任意の先行する請求項に従う第2の光子源と、を備え、前記第1及び第2の光子源は、同一光子を放射するように調整され、前記システムは、前記2つの源からの出力される同一光子間でエンタングルメントを提供するように構成される干渉計をさらに備えるシステムが提供される。
【0021】
さらなる実施形態では、任意の先行する請求項に従う第1の光子源と、第2の光子源と、前記第1の光子源によって出力される光子対のうちの第1の光子、及び前記第2の光子源からの光子を干渉させるように構成される干渉計と、を備え、前記第1の光子源は、エンタングルされた光子対を出力するように構成され、前記光子のうちの1つは、前記干渉計による干渉の間に前記第2の光子源によって放射される光子が前記光子対のうちの第2の光子にマッピングされるように、前記第2の光子源によって出力される光子と同一である量子リピータが提供される。
【0022】
一実施形態では、選択された波長の光子を生成する方法であって、前記方法は、半導体構造内に量子ドットを用意することと、励起子を形成するために前記量子ドットにキャリアを供給することと、前記半導体構造に用意される第1及び第2の電気的コンタクトを使用して前記量子ドットに電場を印加することと、前記電場は、前記量子ドットの放射エネルギーを変更するように構成され、前記放射エネルギーを制御するための前記電場は、動作範囲にわたって調整可能であり、前記量子ドットに供給されるキャリアが結合して前記印加される電場によって選択されるエネルギーの光子を出力することを可能にすることと、を備え、前記半導体構造は、前記放射エネルギーを制御するために、前記動作範囲にわたって前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きくなるように、前記量子ドットからのキャリアのトンネル時間を増大するように構成される、方法が提供される。
【0023】
一実施形態では、量子ドットは、量子井戸内に設けられる。他の実施形態では、量子ドットは、障壁材料内に設けられる。さらなる実施形態では、単一の障壁は、電子トンネルを抑制するために設けられる。
【0024】
さらなる実施形態では、2つのエンタングルされた光子を生成する方法であって、前記方法は、半導体構造内に量子ドットを用意することと、双励起子又はより高次の励起子を形成するために前記量子ドットにキャリアを供給することと、前記半導体構造に用意される第1及び第2の電気的コンタクトを使用して前記量子ドットに電場を印加することと、前記電場は、前記量子ドットの放射エネルギーを変更するように構成され、前記放射エネルギーを制御するための前記電場は、動作範囲にわたって調整可能であり、前記量子ドットに供給されるキャリアが、双励起子崩壊からの第1の光子を生成し且つ前記量子ドット内の残りの励起子からの崩壊によって生成される第2の光子を生成するように結合することを可能にすることと、を備え、前記半導体構造は、前記放射エネルギーを制御するために、前記動作範囲を超えて、前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きくなるように、前記量子ドットからのキャリアのトンネル時間を増大させるように構成され、前記電場は、双励起子励起子空カスケード崩壊の間に微細構造分裂を最小化するためのレベルに変えられる、方法が提供される。
【0025】
一実施形態では、エネルギー準位の分裂は、量子ドットからの放射の均質線幅(homogenous line-width)以下である。
【0026】
定量的には、分裂は、2μeV以下であるべきであり、より好ましくは、1μeV以下であるべきである。
【0027】
図1は、量子ドットの概略のバンド図である。バンド図は、伝導帯1及び価電子帯3を示す。量子ドット5は、伝導帯に電子7を含み、価電子帯にホール9を含む。
【0028】
伝導帯の電子7及び価電子帯のホール9が結合して光子を放射するときに、量子ドットは放射を出す。伝導帯の単一電子7及び価電子帯の単一ホール9の存在は、単一励起子Xと称される束縛状態を形成する。
【0029】
図1は、単に単一中性励起子が存在する簡単化された配置を示す。しかしながら、伝導帯に2つの電子を含み且つ価電子帯に2つのホールを含む双励起子或いは電子及びホールの数が等しくない帯電励起子の形態も可能である。しかしながら、電子7が矢印で示されるように量子ドット5からトンネルする若しくはホール9が矢印で示されるように量子ドット5からトンネルする場合に、光子の放射が抑制されることがあり得る。三角形の障壁を通過するトンネル速度(tunnelling rate)|T|2は、次のようにモデル化することができる。
【数1】
【0030】
ここで、Cは定数であり、Eは電場であり、m*はトンネル粒子の有効質量であり、Wは閉じ込めポテンシャル(confinement potential)である。Eが増大すると、トンネル速度は増大する。m*が増大すると、トンネリングは減少する。Wが増大すると、トンネリングは減少する。
【0031】
従って、上述のことから、垂直電場が量子ドットに印加されると、Eが増大するのでトンネリングの確率が増大し、その結果、デバイスの放射効率が下がることは理解されることができる。
【0032】
しかしながら、障壁の高さWが増大すると、トンネリングを抑制することができることも理解される。
【0033】
図2は、バイアスが変更されるときに、図1を参照して説明したタイプのドットからのフォトルミネセンス放射を示す。GaAs内のInAs量子からの結果が示されている。プロットは、コントラストとして示される強度によって、X軸に沿う外部バイアスに対してY軸に沿う放射波長を示す。外部バイアスが(外部バイアスが内部ポテンシャルを相殺し、その結果、電場がドットの領域にない)1.5ボルトから低下されるにつれて、キャリアが束縛状態からトンネルし、発光線(emission line)は広がってそれほど極度でなくなることは理解されることができる。これは、バイアスが1.4ボルトに近づく時のデータの軽減によって理解されることができる。しかしながら、波長もバイアスに応じて変化することがこの図から理解されることができる。
【0034】
図3aは、従来技術に従う光子エミッタの概略図である。デバイスは、上方25のGaAs層と第2の下方27のGaAs層との間の界面(interface)23に形成されている複数のInAs量子ドット21を含む。上方のGaAs層の上にはp型コンタクト(p-type contact)があり、下方27のGaAs層の下にはn型コンタクト(n-type contact)がある。
【0035】
対応するバンド図は、図3bに示される。ここで、単一ドット31は、図3bに示されるような下方のGaAs層27と図3aの上方のGaAs層25との間の界面に設けられる。量子ドットは、伝導帯にある電子33、及び価電子帯にあるホール35を有する。電子33は、最終的にはnドープ領域(n-doped region)37の方へトンネルし、ホール35は、pドープ領域(p-doped region)39の方へトンネルする。電子33又はホール35が再結合の前にトンネルする場合、光子は放射されない。
【0036】
図4a及びその対応するバンド図の図4bは、本発明の一実施形態に従う設計を示す。障壁層は、設けられ、再結合の前の量子ドットからのキャリアのトンネリングを防ぐように構成される。
【0037】
図4a及び4bの実施形態では、複数の量子ドット21が、下方のガリウムヒ素層83と上方のガリウムヒ素層89との間の界面81に形成されている。上方のガリウムヒ素層89及び下方のガリウムヒ素層83は、上方の障壁層91及び下方の障壁層85にそれぞれに接触している。上方の障壁層85及び下方の障壁層91は、より高いバンドギャップ層であり、例えばAlGaAsであり得る。上方の障壁層91と下方の障壁層85との間に挟まれた上方のガリウムヒ素層89及び下方のガリウムヒ素層83を備えるこの配置は、ガリウムヒ素層が量子井戸を形成することになる。
【0038】
障壁層は、障壁層が存在しない場合よりもさらなる度合の電気的な閉じ込めを提供するように、量子ドットが形成されている界面81に十分に接近して設けられる。
【0039】
障壁層間のGaAs層は、量子井戸を形成する。
【0040】
対応するバンド図は、図4bに示される。ここで、量子ドット95は、上方のGaAs層89及び下方のGaAs層83によって形成される量子井戸内に位置する。そして、これは、図4a及び4bと5a及び5bとを参照して説明されるのと同じ方法で、量子ドットからのトンネリングを抑制する働きをする上方の障壁層91と下方の障壁層85との間に形成される。
【0041】
上記の設計では量子ドットがGaAsに形成されるが、これが量子ドットを形成する典型的な材料であるので、量子ドットの特性はよく理解される。
【0042】
障壁材料を使用することによって、量子ドットからのトンネリングがより長い時間にわたって抑制され、それは、光子エミッタの放射効率を高める。これは、400KV/cmを超える場が放射効率を損なうことなしに印加されることができるように、14nmを超える波長範囲にわたる調整につながり得る。
【0043】
図4a及び4bでは、構造は、非ドープ領域(undoped region)に位置するドットを備える、デバイスの片側がp型であり且つ反対側がn型であるp−i−n構造である。しかしながら、量子ドット及び障壁が同様の方法で構成されるのであれば、同様の結果がn−i−p、n−i−n、p−i−p、又はオーミック−i−ショットキー(ohmic-i-schottky)デバイスで得られる。
【0044】
図4に示される実施形態では、我々は、障壁が均等であり且つそれらの間の間隔が「量子井戸」内に電子状態の量子化を引き起こすのに十分小さい特別の場合を考えている。これは、キャリアが粒子のド・ブロイ波長に匹敵する領域に対して十分に強いポテンシャル内に閉じ込められる場合に起こる。
【0045】
図4は、ドットからのキャリアのトンネリングを抑制するための、ドットの一方の側にある障壁を示す。ドットから障壁までの距離が、キャリアがドットから出てトンネルする可能性がある障壁の端において閉じ込め状態が存在しないくらい十分に小さくなるように、これらの障壁の一方又は両方の高さ、位置、又は厚さが選択されている方が好ましい。電子及びホール(これらは異なる有効質量を有する。)は、ドットの一方の側にある障壁の不均等な高さに関して等しいトンネル速度を有するだろう。電場が印加されているときに量子ドットからの電子及びホールの両方のトンネリングを最小化することによって、光子源に関するより大きい調整範囲が達成されることができる。
【0046】
電子及びホールの両方に関するトンネル時間は、量子ドット内に形成される励起子の放射寿命より長い。InAs/GaAs量子ドットでは、X及びX−状態は、1nsの寿命を有する。これは、大多数のキャリアが放射的に再結合することを保証し、50%を超える効率を維持する。トンネリングは、一般に、量子ドットからコンタクトに向けて起こる。従って、電子は、n型コンタクトの方へトンネルし、ホールは、p型コンタクトの方へトンネルする。キャリアは、コンタクトの方へトンネルするが、多くは、それらが電場によってコンタクトへスイープされる(swept)真性領域へトンネルするだろう。n型コンタクトへ向かう電子及びp型コンタクトへ向かうホールに関するトンネル時間は、放射減衰時間(radiative decay time)より大きいだろう。
【0047】
図5a及び5bは、図4のデバイスの変形を示す。図5のデバイスでは、障壁は最大限に不均等である。平坦なバンドから離れたバイアスにおけるこの構成では、(一方の側の垂直なポテンシャルステップと他方の側の伝導帯の勾配との間に形成されている)障壁の側に「V」型の量子井戸がそれでもやはりある。この構成では、電子だけが、多くの場合に(to a greater extent)閉じ込められるだろう。
【0048】
図5aでは、複数の量子ドット21は、下層41と上層45との間の界面に位置する。下層41はn型コンタクト43に接続され、上層45はp型コンタクト47に接続される。対応するバンド図は、図5bに示される。量子ドット21とp型コンタクト47との間の距離は、量子ドットからのホールのトンネリングを防止することができるほど十分に大きくなければならない。
【0049】
図5bでは、単一量子ドット51は、上層45と下層41との間の界面に設けられる。下層41は、上層45より高いバンドギャップを有する。下層41は、n型領域43に接続される。量子ドットのホールの有効質量が電子の有効質量よりはるかに大きいので、電子のほうが最初にトンネルする可能性が高い。従って、図5a及び5bの配置では、より高いバンドギャップ材料41は、電子のトンネリングを抑制するために、且つ、放射が起こるのに十分長く電子及びホールを量子ドットに保持するために、量子ドットのn型の側に設けられる。
【0050】
図5aのデバイスに関する層状構造の一例では、上層はGaAsであり、量子ドットはInAsであり、下層41はAlGaAsである。図5cは、量子ドットが(図4aのように)GaAs領域に形成される図5aのデバイスの変更を示し、しかし、上層45は、AlGaAsであるが、下層41より低いAl含有量である。図5dは対応するバンド図を示す。
【0051】
図6a及び6bは、ポテンシャル障壁間の間隔が最小値に低減される第2の変形を示す。この場合、高バンドギャップ材料は、なおもキャリアの閉じ込めを増大させる。
【0052】
図6a及び6bは、本発明の一実施形態に従うさらなる設計を示す。ここで、複数の量子ドットが2つの障壁材料63及び65間の界面61に形成される。下方の障壁材料63は、n型材料67に接続され、上方の障壁層65は、p型材料69に接続される。例えばAlGaAsである2つの障壁層間に挟まれるInAs量子ドットがある場合、この設計は実現されることができる。AlGaAsのバンドギャップは2.2eVであり、これはGaAsで見られる1.5eVのバンドギャップより相当に大きい。
【0053】
AlGaAs内に量子ドットを形成するによって、大きな場はドットの中にトラップされたキャリアで印加されることができる。これは、400KV/cmを超える場が放射効率を損なうことなく印加されることができるように、20nmを超える波長範囲にわたる調整をもたらし得る。しかしながら、AlGaAs内に量子ドットを形成することによって、量子ドットの特性は変化され得る。さらに、ドットが1つの材料で成長されて異なる材料で覆われる場合、それらの特性は変わるだろう。例えば、ドットへのゼロの電場がある場合にAlAsでのQDの成長がより大きな微細構造分裂をもたらすように、QDの形状非対称性を増大することは知られている。印加される電場に応じた微細構造分裂の変化率は、アルミニウム組成が増大するにつれてより大きな空間非対称性を有することが知られている、AlGaAs内で成長されたドットに関して、より高い。従って、大きな空間非対称性を有するドットは、大部分のドットが微細構造分裂を最小化するために調整されることができるので、ゼロの又は低いFSSがそれらの増強された調整特性のために必要とされる場合に、特別に役に立つと考えられる。
【0054】
発明者らは、75%のAlGaAs内に入れられた(encapsulated)InAsドットが数10ナノメートルを超える非常に大きな波長調整範囲を有することを実験的に観測した。表1は、図3〜6を参照して説明したデバイスの比較を包括的に示す。
【表1】
【0055】
電場中の量子閉じ込め状態のエネルギーEは、次式に従ってシュタルク効果によってシフトされる。
【数2】
【0056】
ここで、E0はゼロ場でのエネルギーであり、pは「永久双極子」モーメントであり、βは「分極率」(これは負数である。)である。pは、電子とホールとの間の垂直分離の測定を与え、即ち、p=eDであり、ここで、Dは負電荷から正電荷へ向く。Fは、正の試験電荷上での真の力(net force)として定義される電場である。
【0057】
さらに、フォトルミネセンス(PL)放射が観測されることが可能になる量子ドットに垂直に印加され得る最大の電場は、図3のデバイスと比較して、図4〜6のデバイスでは相当に大きい。しかしながら、特に大きな場は図4及び6のデバイスに関して見られる。これはまた、より大きな波長調整範囲に変わる。図3を参照して説明した従来のデバイス設計においては、0.3nm未満の調整範囲が観測される。しかしながら、これは図4及び6のデバイスでは20nm超まで増大する。
【0058】
次に、デバイスの可能な動作モードを図7〜10を参照して説明する。バイアスが量子ドットに印加されることができる単一量子ドットを含む最も簡単な形態においてデバイスを説明する。
【0059】
図7aのデバイス構成では、電場は層の面と垂直に印加される。層は、p−i−n型構造を有する。まず、図7bを参照すると、電子及びホールが量子ドットに存在することとができるように、ダイオードの閾値電圧より大きい第1レベル101のバイアスが印加される。次に、閾値電圧未満である第2レベル103のバイアスが印加される。このバイアスは、電流注入を止めて、シュタルク効果によって量子ドットの放射をデバイスの所望の出力エネルギーと等しいエネルギーへシフトする。印加電圧は図7bに示される。電圧が第2電圧レベル103にある場合、図7cに示されるように、光子が生成される確率がより高くなる。
【0060】
本発明の実施形態に従うデバイスを使用することによって、第2電圧レベルのより大きな範囲が可能であり、従って、デバイスは、放射波長のより大きな範囲に関して出力するように構成されることができる。
【0061】
この動作モードの原理は、Applied Physics Letters 92, 193503 2008により詳細に説明されている。
【0062】
図8は、第2の動作モードを示す。ここで、デバイス100は、この場合にも、デバイスの層の面と垂直に印加される電場を受ける。デバイスは、連続注入メカニズム(sequential injection mechanism)を使用して動作する。ここで、まず、電子(ホール)が量子ドットに共鳴トンネルする(resonantly tunnel)ことを可能にするバイアスが印加される。一旦これが達成されると、バイアスは、ホール(電子)が光学活性な領域に共鳴トンネルすることができる範囲に急速に切り替えられる。この配置が機能するためには、デバイスが、電子(ホール)がトンネルして出るより速く切り替わってホール(電子)にトンネルすることができることが重要である。この種の配置の原理は、Kim et al, Nature 397, 500-503 (1999)に説明されている。
【0063】
「共振連続(resonant, sequential)」動作として知られるこの動作モードは、より狭い発光線において明らかである高い光子純度(photon purity)を達成する。一旦電子(ホール)及びホール(電子)が量子ドットへトンネルすると、デバイスは、図7を参照して説明した量子ドットの放射波長を規定する第3電圧レベルに戻される。
【0064】
図9を参照して説明されるモードでは、デバイス100は、源111によって層と垂直に印加される場を受け、さらなる電圧源113は、層の面に設けられる。電圧源113は、層の面に設けられ、デバイス100内の量子ドットにキャリアを注入するために使用される。第1の電圧源111は、量子ドットの放射波長又は微細構造分裂を制御するために設けられる。
【0065】
図10は、動作モードのまたさらなる変形を示す。図10のデバイスでは、デバイス100は、この場合にも、源111からの層の面に直交して印加される垂直電場を受ける。キャリアは、光学的励起によって量子ドットに注入される。源111によって印加される電圧を設定することにより、量子ドットの放射波長又は微細構造分裂を制御することが可能になる。
【0066】
図11は、合理的に大きな範囲にわたって調整された本発明の一実施形態に従う量子ドットの出力を示す。図11の結果を生成するために使用されたデバイスの設計は、図4a及び4bを参照して説明したものである。出力依存性(power dependence)及び偏光測定を実行することによって、量子ドットにおける特定の遷移を識別することが可能である。
【0067】
Xが付されているラインは、伝導帯の単一電子及び価電子帯の単一ホールが結合してドットを完全に空にして光子を放射する単一中性励起子に起因する。XXが付されているラインは、中性双励起子崩壊に起因する。これは、伝導帯の2つの電子及び価電子帯の2つのホールがあり、伝導帯の1つの電子が価電子帯の単一電子と結合して光子を放射し、伝導帯に単一電子及び価電子帯に単一ホールを残す場合である。
【0068】
X−が付されているラインは、伝導帯に2つの電子が存在し且つ価電子帯に1つのホールが存在する量子ドットからの崩壊に起因する。伝導帯の1つの電子は、価電子帯の単一ホールと結合し、伝導帯に単一電子を残す。この崩壊は、負励起子崩壊として知られている。同様に、正励起子崩壊X+は、開始状態が伝導帯の単一電子及び価電子帯の2つのホールである場合である。さらに、より高次の励起子(higher order excitons)の帯電崩壊(charged decay)も可能であり、励起子XX+は、伝導帯に3つの電子を含み且つ価電子帯に2つのホールを含む。
【0069】
図11からは、異なる励起子の発光線が異なる調整電圧で支配的になることを認識することができる。従って、特定のタイプの放射を制御する若しくは支持する(favour)ことが可能である。例えば、エンタングルされた光子の生成においては、X2/X崩壊が好ましく、この特定のサンプルに関しては0ボルトの近くのバイアスデバイスが望まれる。
【0070】
X−励起子は、高純度光子状態を生成するのに有用である狭い線幅をしばしば有する。従って、このラインが支配的になる1ボルトと2.2ボルトとの間でデバイスにバイアスをかけることが望まれる場合がある。
【0071】
大きな波長にわたって調整する能力は、エンタングルメントを可能にするのに十分に類似するように2つの独立した源の出力特性を調整することを可能にする。これは、量子リピータ及び量子計算での利用がある異なる源から放射される光子のエンタングルメントを可能にする。量子計算では、異なる源からの光子をエンタングルする能力は、個体状態量子ビット(solid state qubit)のエンタングルメントを可能にする。
【0072】
上記の光子源は、エンタングルされた光子の源としてより容易に構成することができる光子源をさらに提供する。エンタングル光子源(entangled photon source)を実現するためには、量子ドットからのフォトルミネセンスにおいて微細構造分裂がない量子ドットを有していることが望ましい。広範囲の電場にわたる調整を可能にする実施形態を使用して、微細構造分裂が最小化される場で源を動作することは可能である。微細構造分裂は、双励起子励起子空カスケード崩壊(biexciton-to-exciton to-empty cascade decay)中に起こる。
【0073】
最後に、量子ドットの出力を支配する励起子崩壊のタイプは、印加される電場に依存する。従って、広い波長範囲にわたって出力を調整する能力は、特定の励起子崩壊が出力を支配するようにドットが構成されることを可能にする。
【0074】
増強された閉じ込めはまた、デバイスがより高温度で動作されることを可能にするだろう。
【0075】
本発明の実施形態に従うデバイスでは、高いルミネセンス効率を保持しながら、QDに非常に大きな垂直電場を印加することが可能である。全ての先行技術において、数十KVcm−1より小さい場は、キャリアがドットからトンネルする前に、印加されることができるかもしれない。本発明の実施形態に係るデバイスでは、500KVcm−1までの場を印加することが可能であり、さらに、高い内部量子効率を観測するが可能である。
【0076】
図12は、本発明の一実施形態に従う光源に関する第1の可能な使用を示す。
【0077】
図12は、第1の源201及び第2の源203が同一の放射エネルギーを有するように構成されるそのような配置を示す。これらの源はまた、それらが双励起子又は帯電励起子崩壊によって光子を放射するように構成される。第1の源201及び第2の源203は、各々がドット内に電子・ホールの対又は単一電荷を残して、単一光子を放射する。
【0078】
この崩壊によって生成される光子の各々は、量子ドットに残る複数のキャリア又は1つのキャリアのスピンによって形成される個体状態量子ビットとエンタングルされる。崩壊による同一光子が2つの異なる光子源からビームスプリッター205に同時に入射し、適切な測定が検出器D1及びD2の各々によって実行される場合、光子はエンタングルされるだろう。これは、源201及び203における個体状態量子ビットを互いにエンタングルする働きをする。2つの個体状態量子ビットをエンタングルするこの能力には、分散量子計算での利用がある。
【0079】
図13は、量子リピータ動作を実行する本発明の実施形態に従う源に関するさらなる使用を示す。長距離を超えて単一光子で符号化された情報を送信するために、量子情報がアリス211からボブ217へ送信されることができる距離の増加を可能にするように、量子リピータを有することが望ましい。我々の単純な例では、量子リピータ動作は、2光子ゲート(2 photon gate)215、エンタングル光子源213、及び古典的チャネル218を要求する。
【0080】
図13の配置では、送信器アリス211は、単一光子源を有する。エンタングル光子源213である第2の光子源は、エンタングルされた光子対を生成する。エンタングル光子源213から2光子ゲート215へ送られた光子のうちの1つは、アリス211によって放射された光子と同一である必要がある。213によって生成されたエンタングルされた対の他方の光子は、ボブ217へ送られる。その後、同一光子は、それらを比較する測定を実行する2光子ゲート215に渡される。この測定の結果に基づいて、古典的情報は、チャネル218によってボブへ伝送されることができる。ボブは、エンタングル光子源が彼へ送った光子で変換
【数3】
【0081】
を実行するためにこの情報を使用し、それにより、その量子状態を、アリスによって生成された最初の光子と同じになるように変換する。このように、ボブ217に到達した光子は、アリスによって送られた量子情報を含み、この情報は、アリスが彼女の光子を直接送ることが可能である距離より長い距離を超えて伝送される。
【0082】
図14は、図4を参照して説明したデバイスにわたって調整電圧を印加する効果を示す。微細構造分裂(FSS)は、励起子状態の垂直に偏光された成分(H及びV)間のエネルギー差である。量子ドットからエンタングルされた光子の生成を得る場合、FSSをゼロにすることが望まれる。エンタングルされた光子の生成の前の実証は、(i)面内磁場、(ii)サンプルのアニーリング、又は(iii)ゼロのFSSを自然に有するドットの広範囲の探索を使用している。量子ドット源を備える全てのエンタングルメント実証では、これまでのところ、ゼロのFSS分裂は、「湿潤層(wetting layer)」のバックグラウンドからの放射がパフォーマンスに弊害をもたらし得る885ナノメートルで得ることができるだけである。
【0083】
これらの解決策は、複雑であり、時間がかかり、アンサンブル(ensemble)に適切な量子ドットを見つけることを我々に要求する。垂直電場の印加を使用する本発明の解決策は、比較的容易である。さらに、この技術は、我々が量子状態の放射寿命に匹敵する若しくはそれより速い時間スケールでFSSを変えることを可能にし、それは、有利であり得るが、以前に使用されている技術では不可能である。
【0084】
従って、大きな垂直場は、放射が930と950nmとの間で起こる図4を参照して説明したデバイスの量子ドットに関する同じような方法で、微細構造分裂を調整するために使用されることができる。観測された全ての量子ドットでは、FSSは、同様の方法で印加されるバイアスに応じて直線的に変化する。
【0085】
異なる特性を備える量子ドットの成長を通じて、他の波長(即ち、1300及び1550ナノメートルの通信波長)及び/又はInAs/InPのような量子ドットタイプまで放射を広げることは可能かもしれない。
【0086】
InP/InAs/InPのQDでは、システムは、0.75−0.95eVの範囲で放射する場合に、FSSが、約10μeVの散乱(scatter)を含んでFSS=0のあたりで不規則に分布されることが予想される。本発明の実施形態は、このシステムの個々のQDごとにFSSをゼロに低減するために使用されることができる。
【0087】
GaAs/InAs/GaAsのQDでは、ゼロの場でのFSSは、より広い範囲にわたってドットごとにガウス分布に応じて不規則に変化する。1.4eVの放射エネルギーでは、50μeV近くの「散乱」を含んで、平均のFSSはゼロである。FSSは、これらのドットに関して1KVcm−1当たり0.28μeVの割合で変化するので、「散乱」/「割合」=180KVcm−1の範囲にわたって場を印加することができるデバイスは、全てのドットをゼロに調整することができる。より小さな調整範囲については、ドットの部分集合だけがゼロのFSSに調整することができる。
【0088】
1.32eVで放射するQDにおいては、平均のFSSは、100μeVの散乱を含んで〜100μeVであり、従って、150μeVの調整範囲は、全てのQDをゼロに調整することができることを意味し、それは530KVcm−1の場に対応する。
【0089】
図15は、デバイス301が源303からの垂直電場を受ける本発明の一実施形態に従うデバイス構成の概略図を示す。さらに、デバイスはキャビティ(cavity)305を含む。キャビティは、量子ドットの周囲に設けられ、1つの方向の放射を増強して効率を増加させるために、且つ/或いは、量子ドットの放射特性を変更するために使用される。
【0090】
キャビティは、屈折率が交互に変化する4分の1波長層のブラッグミラーに基づくもの、当技術分野で周知である若しくはより普通ではない配置であるフォトニック結晶を含むことができる。
【0091】
図4−6に示される設計では、量子ドットは、高屈折率材料又は低屈折率材料で作られ得るキャビティ内に位置されることができる。図16は、X軸上の距離に沿って、Y軸に沿う層の屈折率及び電場を示す。キャビティ401は、スペーサの形態で存在する。
【0092】
キャビティが主に高屈折率(即ち、GaAs)で作られている場合、スペーサの端から(2Μ)λ/4にあるQDを備えて1/2(Ν+1)λの厚さをスペーサが有する図17aに示される基準を使用するのに望ましい。ここで、N、Mは、ゼロ以外の整数である。
【0093】
しかしながら、スペーサ及びキャビティが主に低屈折率(即ちAlGaAs)である場合、端から(2Μ−1)λ/4にあるQDを備えて1/2(N)λの厚みをスペーサが有する図17bに示される基準が使用されなければならない。
【0094】
上述の設計は、光がキャビティの中心に可能な限り接近して閉じ込められることを保証し、光電場(optical electric field)が最大のところにドット層の位置を決める。
【0095】
キャビティの考察に加えて、異なるタイプの量子井戸配置は、量子ドットにおいて状態を制限するために使用されてもよい。図18a及び18bは可能な量子井戸を示す。図18aは、図4を参照して説明されてもいる四角形タイプの量子井戸を示す。図18bは、キャリアが量子ドットに近い最低のポテンシャルで蓄積する傾向がある可変組成量子井戸(variable composition quantum well)を示す。さらに、エネルギープロファイルが放物線状、直線状、又は他の種々の形状(profile)であるように、組成を変えることも可能である。量子井戸の閉じ込め状態は、量子ドットの閉じ込め状態との特定の関係を有するように設計されることができる。例えば、量子井戸の閉じ込め状態が1つのフォノンエネルギーによって分離される場合、量子ドットへの捕捉は、増進されることができる。
【0096】
図18は、層状構造の詳細を備える本発明の一実施形態に従うデバイスを示す。このデバイスにおいては、デバイスの放射波長が955nmであり、n(GaAs)=3.472、n(95%AlGaAs)=2.947、n75%=3.088、GaAsの4分の1波長厚さが955/(4×3.472)=68.764nmであり、95%AlGaAsの4分の1波長厚さが81.015nmであると仮定する。
【0097】
デバイスは、非ドープバッファ層(undoped buffer layer)を備えた基板501上に形成される。典型的には、基板はGaAsである。次に、各々の厚さが光学波長の4分の1である高又は低屈折率材料の複数の交互層を含む下部ブラッグミラー層503が形成される。最後の数個の繰り返しは、Nドープされていてもよい。
【0098】
下部キャビティスペーサ層は、n型下部ブラッグ領域505に重なって接触している。下部キャビティスペーサ層は、75%のAlGaAs(これは、短周期超格子に、或いは、基板に同時に作用する(impinge)3つ全ての要素とともに付着される(deposited)ことができる)を含む。半分の量子井戸は、下部キャビティスペーサ層に重なって接触して付着される。
【0099】
そして、量子ドット層509は、重なって形成される。例えば、この特定の実施形態中では、InAs源の1.7超の単分子層(more than 1.7monolayers)は付着され、これは当技術分野で周知の方法で量子ドットに「自己集合される(self assembled)」。
【0100】
次に、量子井戸の残り半分が付着され、上部スペーサ層511は重なって形成される。
【0101】
上部のブラッグミラー513は、上部スペーサ層511に重なって接触している。このミラーの最後の少数の層は、オーム接触の形成を可能にするために、我々の例では、P型にドープされた。
【0102】
一旦層成長が終了すると、デバイスは、n型コンタクト521を形成するためにnドープミラー層505までエッチングされ、p型コンタクトは、上部ミラー層513に重なって接触して設けられる。コンタクト金属525は、下位層へのコンタクト金属のショートを防ぐために設けられる絶縁層527に重なっている。
【0103】
上述のものでは、ブラッグミラーは、各々が4分の1波長の厚さの交互になっている高屈折率層及び低屈折率層を使用して形成される。層の数が大きいほど、より高い反射率が達成される。さらに、屈折率のコントラストが大きいほど、より高い反射率が達成される。上述のものでは、単一体で成長されることができ且つ容易に形成されることができるGaAs/AlGaAs層が使用される。しかしながら、これらは、約900nmで0.5の屈折率差を有する。従って、後になって置かれ且つより高い屈折率コントラストを達成することができるSiO2/TiO2又はSiO2/Si3N4のような誘電体を使用することが望まれることもある。
【0104】
図19は、図18のデバイスにおける変形を示す。いくらかの不必要な反復を回避するために、同様の参照番号を同様の特徴を示すために使用する。図19のものと比較した図20のデバイスの主な差異は、電流が流れる小さな領域を制限するスペーサ層内に設けられる絶縁層531の形状である。これは、単一量子ドットに注入することができることを意味する。そのような層は、湿度の高い空気中での高いAl含有量のAlGaAs層の酸化によって形成することができる。高反射率ブラッグミラー及び酸化層からの屈折率の横方向変化の組み合わせは、3Dの光学の閉じ込めに結びつく場合があり、量子ドットの放射特性を変更する。この原理は、APPLIED PHYSICS LETTERS 90, 233514 2007及びNew Journal of Physics 10 (2008) 043035により詳細に説明される。
【0105】
特定の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例証として示されており、本発明の範囲を制限するようには意図されない。実際には、ここで説明される新規の源、システム、レピータ及び方法は、様々な他の形態で具体化されることができる。さらに、ここで説明される源、システム、レピータ及び方法の形態における様々な省略、置換及び変更は、本発明の精神から逸脱することなく、なされることができる。添付の特許請求の範囲及びその均等物は、本発明の範囲及び精神に含まれるような形態或いは改良に及ぶように意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ヘテロ構造を具備する光子源であって、前記半導体ヘテロ構造は、量子井戸と、前記量子井戸に隣接する障壁領域と、前記量子井戸内に設けられる量子ドットと、を含み、前記光子源は、電気的コンタクトと、前記量子ドットの放射エネルギーを制御するために前記量子ドットに調整可能な電場を印加するように構成される第1及び第2の電気的コンタクトに結合される電圧源と、をさらに具備し、前記電場は、動作範囲にわたって調整可能であり、前記量子ドットからのキャリアのトンネル時間は、前記放射エネルギーを制御するための前記動作範囲にわたって前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きく、前記光子源は、単一量子ドットからの放射が前記光子源から出るように構成される、光子源。
【請求項2】
前記量子井戸は、前記障壁層より低いバンドギャップを有する材料を含み、前記より低いバンドギャップ材料は、2つの障壁領域間に設けられ、前記障壁領域は、前記量子ドットの互いに対向する側に形成されている、請求項1に記載の光子源。
【請求項3】
前記量子ドットはInAsを含み、前記量子井戸はGaAsを含み、前記少なくとも1つの障壁領域はAlGaAs又はAlAsを含む、請求項1又は請求項2に記載の光子源。
【請求項4】
前記動作範囲は、100KVcm−1以上である、任意の先行する請求項に記載の光子源。
【請求項5】
半導体ヘテロ構造を具備する光子源であって、前記半導体ヘテロ構造は、量子ドットを含み、前記光子源は、電気的コンタクトと、前記量子ドットの放射エネルギーを制御するために前記量子ドットに調整可能な電場を印加するように構成される第1及び第2の電気的コンタクトに結合される電圧源と、をさらに具備し、前記電場は、100KVcm−1の動作範囲にわたって調整可能であり、前記量子ドットからのキャリアのトンネル時間は、前記放射エネルギーを制御するための前記動作範囲にわたって前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きく、前記光子源は、単一量子ドットからの放射が前記光子源から出るように構成される、光子源。
【請求項6】
前記電圧源は、前記量子ドットの放射エネルギーを制御するために、前記動作範囲内で電場を制御するように構成される第1の電圧を印加し、キャリアが前記量子ドットに供給されることを可能にする第2の電圧を印加するように構成される、任意の先行する請求項に記載の光子源。
【請求項7】
前記量子ドットにキャリアを供給するように構成される光源をさらに具備する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光子源。
【請求項8】
前記量子井戸は四角形の形状を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光子源。
【請求項9】
光キャビティをさらに備える任意の先行する請求項に記載の光子源。
【請求項10】
複数の量子ドットを具備し、前記光子源は、単一量子ドットへのキャリア注入を可能にするように構成されるアパーチャが設けられている層をさらに具備する、任意の先行する請求項に記載の光子源。
【請求項11】
複数の量子ドットを具備し、前記光子源は、1つの量子ドットからの放射を分離するように構成される不透明層をさらに具備する、任意の先行する請求項に記載の光子源。
【請求項12】
前記量子ドットは、双励起子又はより高次の励起子を含み、前記源に印加される場は、微細構造分裂を最小化するように構成される、任意の先行する請求項に記載の光子源。
【請求項13】
エンタングルメントを生成するシステムであって、前記システムは、任意の先行する請求項に従う第1の光子源と、任意の先行する請求項に従う第2の光子源と、を具備し、前記第1及び第2の光子源は、同一光子を放射するように調整され、前記システムは、前記2つの源から出力される同一光子間でエンタングルメントを提供するように構成される干渉計をさらに具備する、システム。
【請求項14】
任意の先行する請求項に従う第1の光子源と、第2の光子源と、前記第1の光子源によって出力される光子対のうちの第1の光子、及び前記第2の光子源からの光子を干渉させるように構成される干渉計と、を具備し、前記第1の光子源は、エンタングルされた光子対を出力するように構成され、前記光子のうちの1つは、前記干渉計による干渉の間に前記第2の光子源によって放射される光子の状態が前記光子対のうちの第2の光子にマッピングされるように、前記第2の光子源によって出力される光子と同一である、量子リピータ。
【請求項15】
選択された波長の光子を生成する方法であって、前記方法は、
半導体構造内に量子ドットを用意することと、
励起子を形成するために前記量子ドットにキャリアを供給することと、
前記半導体構造に用意される第1及び第2の電気的コンタクトを使用して前記量子ドットに電場を印加することと、前記電場は、前記量子ドットの放射エネルギーを変更するように構成され、前記放射エネルギーを制御するための前記電場は、動作範囲にわたって調整可能であり、
前記量子ドットに供給されるキャリアが結合して前記印加される電場によって選択されるエネルギーの光子を出力することを可能にすることと、
を具備し、
前記半導体構造は、前記放射エネルギーを制御するために、前記動作範囲にわたって前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きくなるように、前記量子ドットからのキャリアのトンネル時間を増大するように構成される、方法。
【請求項16】
前記量子ドットは、前記量子井戸内に設けられる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記動作範囲は、少なくとも100kVcm−1である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項18】
2つのエンタングルされた光子を生成する方法であって、前記方法は、
半導体構造内に量子ドットを用意することと、
双励起子又はより高次の励起子を形成するために前記量子ドットにキャリアを供給することと、
前記半導体構造に用意される第1及び第2の電気的コンタクトを使用して前記量子ドットに電場を印加することと、前記電場は、前記量子ドットの放射エネルギーを変更するように構成され、前記放射エネルギーを制御するための前記電場は、動作範囲にわたって調整可能であり、
前記量子ドットに供給されるキャリアが、双励起子崩壊からの第1の光子を生成し且つ前記量子ドット内の残りの励起子からの崩壊によって生成される第2の光子を生成するように結合することを可能にすることと、
を具備し、
前記半導体構造は、前記放射エネルギーを制御するために、前記動作範囲にわたって前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きくなるように、前記量子ドットからのキャリアのトンネル時間を増大させるように構成され、前記電場は、双励起子励起子空カスケード崩壊の間に微細構造分裂を最小化するためのレベルに変えられる、方法。
【請求項19】
前記電場は、双励起子及び励起子遷移の線幅以下に微細構造分裂を最小化するためのレベルに変えられる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記量子ドットは、電場がない場合に、ある割合のエンタングルされた光子を放射し、前記電場は、前記微細構造分裂をさらに変えるために変えられる、請求項18に記載の方法。
【請求項1】
半導体ヘテロ構造を具備する光子源であって、前記半導体ヘテロ構造は、量子井戸と、前記量子井戸に隣接する障壁領域と、前記量子井戸内に設けられる量子ドットと、を含み、前記光子源は、電気的コンタクトと、前記量子ドットの放射エネルギーを制御するために前記量子ドットに調整可能な電場を印加するように構成される第1及び第2の電気的コンタクトに結合される電圧源と、をさらに具備し、前記電場は、動作範囲にわたって調整可能であり、前記量子ドットからのキャリアのトンネル時間は、前記放射エネルギーを制御するための前記動作範囲にわたって前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きく、前記光子源は、単一量子ドットからの放射が前記光子源から出るように構成される、光子源。
【請求項2】
前記量子井戸は、前記障壁層より低いバンドギャップを有する材料を含み、前記より低いバンドギャップ材料は、2つの障壁領域間に設けられ、前記障壁領域は、前記量子ドットの互いに対向する側に形成されている、請求項1に記載の光子源。
【請求項3】
前記量子ドットはInAsを含み、前記量子井戸はGaAsを含み、前記少なくとも1つの障壁領域はAlGaAs又はAlAsを含む、請求項1又は請求項2に記載の光子源。
【請求項4】
前記動作範囲は、100KVcm−1以上である、任意の先行する請求項に記載の光子源。
【請求項5】
半導体ヘテロ構造を具備する光子源であって、前記半導体ヘテロ構造は、量子ドットを含み、前記光子源は、電気的コンタクトと、前記量子ドットの放射エネルギーを制御するために前記量子ドットに調整可能な電場を印加するように構成される第1及び第2の電気的コンタクトに結合される電圧源と、をさらに具備し、前記電場は、100KVcm−1の動作範囲にわたって調整可能であり、前記量子ドットからのキャリアのトンネル時間は、前記放射エネルギーを制御するための前記動作範囲にわたって前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きく、前記光子源は、単一量子ドットからの放射が前記光子源から出るように構成される、光子源。
【請求項6】
前記電圧源は、前記量子ドットの放射エネルギーを制御するために、前記動作範囲内で電場を制御するように構成される第1の電圧を印加し、キャリアが前記量子ドットに供給されることを可能にする第2の電圧を印加するように構成される、任意の先行する請求項に記載の光子源。
【請求項7】
前記量子ドットにキャリアを供給するように構成される光源をさらに具備する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光子源。
【請求項8】
前記量子井戸は四角形の形状を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光子源。
【請求項9】
光キャビティをさらに備える任意の先行する請求項に記載の光子源。
【請求項10】
複数の量子ドットを具備し、前記光子源は、単一量子ドットへのキャリア注入を可能にするように構成されるアパーチャが設けられている層をさらに具備する、任意の先行する請求項に記載の光子源。
【請求項11】
複数の量子ドットを具備し、前記光子源は、1つの量子ドットからの放射を分離するように構成される不透明層をさらに具備する、任意の先行する請求項に記載の光子源。
【請求項12】
前記量子ドットは、双励起子又はより高次の励起子を含み、前記源に印加される場は、微細構造分裂を最小化するように構成される、任意の先行する請求項に記載の光子源。
【請求項13】
エンタングルメントを生成するシステムであって、前記システムは、任意の先行する請求項に従う第1の光子源と、任意の先行する請求項に従う第2の光子源と、を具備し、前記第1及び第2の光子源は、同一光子を放射するように調整され、前記システムは、前記2つの源から出力される同一光子間でエンタングルメントを提供するように構成される干渉計をさらに具備する、システム。
【請求項14】
任意の先行する請求項に従う第1の光子源と、第2の光子源と、前記第1の光子源によって出力される光子対のうちの第1の光子、及び前記第2の光子源からの光子を干渉させるように構成される干渉計と、を具備し、前記第1の光子源は、エンタングルされた光子対を出力するように構成され、前記光子のうちの1つは、前記干渉計による干渉の間に前記第2の光子源によって放射される光子の状態が前記光子対のうちの第2の光子にマッピングされるように、前記第2の光子源によって出力される光子と同一である、量子リピータ。
【請求項15】
選択された波長の光子を生成する方法であって、前記方法は、
半導体構造内に量子ドットを用意することと、
励起子を形成するために前記量子ドットにキャリアを供給することと、
前記半導体構造に用意される第1及び第2の電気的コンタクトを使用して前記量子ドットに電場を印加することと、前記電場は、前記量子ドットの放射エネルギーを変更するように構成され、前記放射エネルギーを制御するための前記電場は、動作範囲にわたって調整可能であり、
前記量子ドットに供給されるキャリアが結合して前記印加される電場によって選択されるエネルギーの光子を出力することを可能にすることと、
を具備し、
前記半導体構造は、前記放射エネルギーを制御するために、前記動作範囲にわたって前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きくなるように、前記量子ドットからのキャリアのトンネル時間を増大するように構成される、方法。
【請求項16】
前記量子ドットは、前記量子井戸内に設けられる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記動作範囲は、少なくとも100kVcm−1である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項18】
2つのエンタングルされた光子を生成する方法であって、前記方法は、
半導体構造内に量子ドットを用意することと、
双励起子又はより高次の励起子を形成するために前記量子ドットにキャリアを供給することと、
前記半導体構造に用意される第1及び第2の電気的コンタクトを使用して前記量子ドットに電場を印加することと、前記電場は、前記量子ドットの放射エネルギーを変更するように構成され、前記放射エネルギーを制御するための前記電場は、動作範囲にわたって調整可能であり、
前記量子ドットに供給されるキャリアが、双励起子崩壊からの第1の光子を生成し且つ前記量子ドット内の残りの励起子からの崩壊によって生成される第2の光子を生成するように結合することを可能にすることと、
を具備し、
前記半導体構造は、前記放射エネルギーを制御するために、前記動作範囲にわたって前記量子ドット内の励起子の放射減衰時間より大きくなるように、前記量子ドットからのキャリアのトンネル時間を増大させるように構成され、前記電場は、双励起子励起子空カスケード崩壊の間に微細構造分裂を最小化するためのレベルに変えられる、方法。
【請求項19】
前記電場は、双励起子及び励起子遷移の線幅以下に微細構造分裂を最小化するためのレベルに変えられる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記量子ドットは、電場がない場合に、ある割合のエンタングルされた光子を放射し、前記電場は、前記微細構造分裂をさらに変えるために変えられる、請求項18に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2013−510419(P2013−510419A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535925(P2012−535925)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002038
【国際公開番号】WO2011/055119
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002038
【国際公開番号】WO2011/055119
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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