説明

調整器による流量測定装置及びその方法

【課題】装置の損傷程度を検知し、損傷部位を特定する装置を提供する。
【解決手段】圧力調整器10は流体流路に配置されて、流路内を移動可能な絞り要素22を有している。軸30が絞り要素22に取りつけられている。その装置は、絞り要素の上流圧力を測定するための第一圧力センサ34、絞り要素22の下流圧力を測定するための第二圧力センサ35および絞り要素22の位置を検知するための作動センサ44とを有している。測定された圧力と作動距離に基づいて流量を定めるためのアルゴリズムを備えたプロセッサ52が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、1999年6月29日に出願された米国出願No.60/141,576に基づく優先権を主張しており、その出願の内容は本願に含まれている。本発明は調整器に関し、さらに詳しくは、調整器に関する操作パラメータを測定し、流量を計算するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油やガスのパイプライン、化学プロセスなどの産業プロセスにおける流体の制御に関して、流体の圧力を減少し、制御することはしばしば必要である。調整器は、典型的には、流量を調整して制限するような作用を果たすために使用されている。ある用途における調整器の目的は、流量や他のプロセス変数を制御することである。しかし、流量を制限すれば、流量制御の結果として圧力が減少する。
【0003】
例えば、調整器が使用される特定の用途は、天然ガスの運搬と分配である。天然ガス分配システムは、典型的には、天然ガスの産地から消費者まで延びる配管網を有している。大量のガスを移送するために、ガスは圧縮されてその圧力が高められる。ガスが配管網を経て最終的に消費者に近づくと、ガスの圧力は圧力減少ステーションで減少される。圧力減少ステーションは、典型的には、ガス圧力を減少するために調整器を使用する。
【0004】
消費者に十分な量のガスを供給できることが天然ガス分配システムにとって重要である。このシステムの機能は、典型的には、システム圧力、配管径および調整器によって決定され、システムの機能は、しばしばシミュレーションモデルを使って評価される。システムモデルの正確さは、入力ポイント、圧力減少ポイントおよび出力ポイントにおける流量データを使って決められる。圧力減少ポイントは、ガス分配システムの機能に重要な影響を与える。それゆえ、圧力減少ポイントを正確にシミュレートすることは、システムモデルにとって重要である。しかし、圧力減少ポイントは、分配システム内にある。それゆえ、管理移送ポイント(すなわち、ガス流量の制御が分配システムから消費者に切り替わる点)は考慮されない。その結果、流量の測定は圧力減少ポイントでは行われない。さらに、圧力減少ポイントは管理移送ポイントではないので、正確さを高めるために付加的なコストは必要とされない。天然ガスの分配に関する上記に類似した流量測定問題は、他の調整器の用途(すなわち、工業プロセス、化学プロセスなど)においても存在する。
【0005】
さらに、調整器は使用中の摩耗によって損傷するので、パイプラインの圧力を制御する機能が低下する。損傷した調整器は、流体の漏れを招き、流体を浪費し、危険な場所を作ることにつながる。損傷した調整器を修理するかまたは取り替える間において、調整器がいつ動かなくなるかを検知し、調整器がどの程度損傷しているかを定めることは困難である。調整器の損傷を検知し、損傷程度を定めることは、パイプラインが数マイルにもわたる典型的な天然ガス搬送システムにおいてはより難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、装置の損傷程度を検知し、損傷部位を特定する装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって、流体流路に配置された圧力調整器であって、流路内を移動可能な絞り要素を有する圧力調整器を通る流体流量を定める装置が提供される。その装置は、絞り要素の上流の流体通路にある上流圧力P1 を測定するための第一圧力センサと、絞り要素の下流の流体通路にある下流圧力P2 を測定するための第二圧力センサと、絞り要素の位置Yを定めるための作動指示計とを備えている。プロセッサには、第一圧力センサ、第二圧力センサおよび作動センサが組み込まれており、該プロセッサは、上流圧力P1 と下流圧力P2 と絞り要素の位置Yに基づいて流量Fを定めるための記憶されたプログラムを有している。
【0008】
本発明によれば、さらに、流体流路に配置された圧力調整器であって、流路内を移動可能な絞り要素を有する圧力調整器を通る流体流量を定める方法が提供される。その方法は、絞り要素の上流の流体圧力を測定することによって上流圧力値P1 を得、絞り要素の下流の流体圧力を測定することによって下流圧力値P2 を得、絞り要素の位置を定めることによって作動距離値Yを得るステップを有している。流体流量Fは、上流圧力値P1 、下流圧力値P2 および作動距離値Yに基づいて計算される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の流量測定装置とともに調整器を示す概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の流量測定装置を組み込んだ調整器の別の実施例の概略構成図である。
【図3】図3は、本発明の流量測定装置の斜視図である。
【図4】図4は、本発明の流量測定装置の側面の断面図である。
【図5】図5は、アラームルーチンのユーザ固有制限部分を概略的に示すフローチャートある。
【図6】図6は、論理アラームサブルーチンを概略的に示すフローチャートである。
【図7A】図7Aは、論理アラームサブルーチンの固有部分を概略的に示すフローチャートである。
【図7B】図7Bは、論理アラームサブルーチンの固有部分を概略的に示すフローチャートである。
【図7C】図7Cは、論理アラームサブルーチンの固有部分を概略的に示すフローチャートである。
【図7D】図7Dは、論理アラームサブルーチンの固有部分を概略的に示すフローチャートである。
【図7E】図7Eは、論理アラームサブルーチンの固有部分を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
新規であると思われる本発明の特徴は、添付図面に記載されている。本発明は、添付図面と詳細な説明を参照することによって十分に理解される。
【0011】
図1は流体圧力調整器の好ましい実施例を示し、10は本発明によるガス圧力調整器である。ガス圧力調整器10は、後記するように、上流圧力、下流圧力およびオリフィス開口度が流量と他の情報を計算するために使用されるガス流量測定装置を含んでいる。図示されたガス圧力調整器は、本発明に従った流体圧力調整器の単なる一実施例にすぎないので、液体圧力調整器も本発明の原理に従って提供しうることが理解できる。
【0012】
図1に示す調整器は、調整器本体12、隔膜ハウジング14、および上部ハウジング16を有している。調整器本体12内に上流パイプラインと接続するための入口18と下流パイプラインと接続するための出口20が備えられている。調整器本体12内のオリフィス22は、入口18と出口20の間を接続する役目をする。
【0013】
隔膜26が隔膜ハウジング14内にあって、ハウジング14を上部14aと下部14bに分割している。圧力ばね28が隔膜26の中心に取り付けられて隔膜の下部ハウジング14b内にあって、隔膜26を上方に偏倚させている。
【0014】
軸30が隔膜26に取り付けられて隔膜26とともに移動する。弁体32のような絞り要素が軸30の下端部に取り付けられて、オリフィス22の下方に位置している。弁体32は、完全にオリフィス22を封鎖する大きさであって、それによって入口18から出口20への伝搬を遮断する。従って、圧力ばね28は弁体32を上方へ偏倚させてオリフィス22を閉じることが分かる。弁体32の断面積は変化しており、弁体32が下方に移動すると、オリフィス22の未封鎖(または開放)面積が次第に増加する。その結果、オリフィス22の開口度は弁体32の位置に直接関連している。
【0015】
隔膜の上部ハウジング14a内のガス圧は、弁体32を閉鎖位置と開放位置との間を移動させることによって制御される。上部ハウジング14a内の圧力は、種々の異なった方法で変えられる。本実施例において、上部ハウジング14a内の圧力は、負荷パイロット(図示せず)によって制御される。しかし、ガス圧力調整器10としては、無負荷パイロットのような異なるタイプの作動手段を使用したものを採用することもできる。また、ガス圧力調整器10は、本発明の範囲を逸脱しない範囲において、自己作動式または圧力負荷式のものとすることもできる。
【0016】
隔膜の上部ハウジング14a内のガス圧を制御する別の方法は、上流の配管から隔膜の上部ハウジング14aまでつながっている第一配管を有し、その第一配管に第一電磁ガス流量制御弁を備えている。隔膜の上部ハウジング14aから下流の配管まで第二配管がつながっている。第二配管はガス流量を制御する第二電磁弁を有している。パーソナルコンピュータ(PC)が第一および第二電磁弁を制御するために、それらの弁に接続されている。隔膜の上部ハウジング14a内の圧力を増すために、第一電磁弁が開放されて上流側の高圧ガスを上部ハウジング内に導入し、それによって隔膜26を押し下げてオリフィス22を開口する。ガスは第二電磁弁を経て排出され、それによって上部ハウジング14a内の圧力を減少して隔膜26を上昇させてオリフィス22を閉鎖する。圧力の供給および制御方法にかかわらず、圧力が増すと隔膜26を移動させて弁体32を押し下げてオリフィス22を開口し、圧力が減少するとオリフィス22を閉鎖する。図1に示す配置は一実施例にすぎず、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、当業者なら他の配置を採用することもできる。
【0017】
本発明によれば、上流および下流の圧力レベルP1 とP2 を測定するために、絞り要素の上流と下流に圧力センサが配置される。図1に示すように、第一圧力センサ34と第二圧力センサ35が、上部ハウジング16に取りつけられている。配管36が、第一圧力センサ34と入口18の上流側の配管とを接続している。別の配管37が、第二圧力センサ35と出口20の下流側の配管とを接続している。従って、第一圧力センサ34と第二圧力センサ35が上部ハウジング16に取りつけられており、配管36と37は、それぞれ上流側のガス圧と下流側のガス圧を第一圧力センサ34と第二圧力センサ35に伝達する。これに代えて、第一圧力センサ34と第二圧力センサ35をそれぞれ上流側の配管内と下流側の配管内に配置し、それらの圧力センサと上部ハウジング16を配線で接続することもできる。もし必要ならば、温度を補正するために、プロセスの温度を測定するプロセス流体温度伝達体48が上流配管に設置される。
【0018】
上部ハウジング16はさらに、弁体位置を定めるためのセンサを有している。軸30が弁体32に取りつけられて隔膜26に連結されている。好ましくは軸30の延長部である作動指示計40が隔膜26から延びて上部ハウジング16内に進入しており、弁体32の位置は作動指示計40の位置に対応している。それゆえ、センサは作動指示検知メカニズム、好ましくはホール効果センサを含んでいる。ホール効果センサは、作動指示計40の上端に取りつけられたホール効果磁石42を有している。磁石センサ44が、ホール効果磁石42の位置を検知するために、上部ハウジング16内に配置されている。磁石42の位置を検知することによって、弁体32の位置およびオリフィス22の開口面積が定められる。第二の作動指示計(図示せず)が作動指示計40に連結されて、弁体32の作動位置を目視できるようになっている。第二の作動指示計は、作動指示計40から上方に向かって延び、上部ハウジング16を通って上部ハウジング16の頂面の上方に達している。
【0019】
弁体32の作動距離を測定する別の方法としては、上部ハウジング16内の作動指示計40の上方にレーダートランシーバー(図示せず)を配置することによって行える。レーダートランシーバーは、作動指示計40の位置を検知して作動指示計に位置を指示する信号を伝達する。
【0020】
弁体32の位置は、上記磁石42とセンサ44の他に異なる種々の方法で定めることができる。例えば、レーザセンサ(図示せず)を、作動指示計40の位置を測定するために上部ハウジング16内に設置することができ、また、そのレーザセンサを、隔膜26の位置を直接測定するために隔膜ハウジング14内に設置することもできる。レーザセンサが後者の位置にあるとき、作動指示計40は必要とされない。さらに、超音波センサを弁体の位置を定めるために使用できる。
【0021】
また、図2に示すように、弁体の位置を推定するために、隔膜の上部ハウジング14a内に負荷された圧力を測定することもできる。弁体32の位置は、隔膜の上部ハウジング14a内の圧力によって変化することが分かる。本実施例において、負荷圧力センサ46が、隔膜の上部ハウジング14a内の圧力を測定するために上部ハウジング16内に設置されている。測定された負荷圧力は弁体位置を定めるために使用できる。
【0022】
図1に戻って、第一圧力センサ34と第二圧力センサ35と作動センサ44の出力は、電子モジュール50に供給される。電子モジュール50は、図1に示す上部ハウジング16内にあって、圧力調整器と一体に組み込まれているが、離れた位置に設置することもできる。入口圧力、出口圧力および弁体位置は、圧力調整器10のオリフィスを通る流体の流量を定めるために使用される。亜臨界のガス流れに対して、流量は次式を使って計算される。
【0023】
【数1】

【0024】
ここで、Fは流量、K1 は絶対温度定数、Gは流体の比重、Tは流体の絶対温度、K2 は軸の位置定数、Yは軸の位置、P1 は上流の絶対圧、K3 はトリムの形状定数、P2 は下流の絶対圧である。
【0025】
軸の位置定数K2 とトリムの形状定数K3 は、圧力調整器の特定の大きさおよび形式に固有のものであり、トリムの固有の大きさと形状に依存している。当業者には理解できることであるが、K2 とYの積は、流量サイズ係数と等価である。上記数式は、線形で金属トリム弁形式の圧力調整器を通る亜臨界(即ち、P1−P2<0.5P1) のガス流量を計算するために適している。
【0026】
臨界ガス流れに対しては、その計算は正弦関数を削除することによって修正される。非線形金属トリム形式および弾性スタイルの圧力調整器のような他の形式の圧力調整器に対しても、同様の数式が使用できるが、軸の位置定数K2 は圧力低下△P(上流圧力P1 と下流圧力P2 との差)および/または弁の軸位置とに関連する関数になることは、当業者によく知られている。液体に対して、その式は次式のようになる。
【0027】
【数2】

【0028】
ここで、Fは流量、K1 は絶対温度定数、Gは流体の比重、Tは流体の絶対温度、K2 は軸の位置定数、Yは軸の位置、P1 は上流の絶対圧、P2 は下流の絶対圧である。
【0029】
同様の計算を、図2の実施例において行うことができるが、この実施例では、負荷圧力定数K4 とゲージ負荷圧力PL が、軸の位置定数K2 と軸の位置Yに代わるという点を除いて、弁体の位置を推定するために隔膜の上部ハウジング14a内の負荷圧力が測定される。負荷圧力定数K4 は用途に固有のものであり、圧力調整器10の各タイプごとに定めなければならない。非線形弾性絞り部材に対しては、負荷圧力定数K4 は△PとPL の関数である。
【0030】
好ましい実施例として、ローカル流体モジュール52が上部ハウジング16内に設置されている。ローカル流体モジュール52は、計算された流体情報を提供する電子計算機を含んでいる。ローカル流体モジュール52は出力ポートを有しており、その出力ポートに通信装置によるアクセスが可能で、通信装置が流体情報にアクセスし、計算機のローカル流体情報をリセットする。好ましい実施例として、ローカル流体モジュール52は、上部ハウジング16内に封入された液晶ディスプレイ読み出し装置を含んでいる。上部ハウジング16の頂部に取り付けられたキャップ17は透明なプラスチックの窓を有しており、その窓を通して液晶ディスプレイ読み出し装置を見ることができる。
【0031】
通信モジュール54が、遠隔端末ユニット(RTU)、パソコン(PC)または圧力調整器の制御に割り込む機能を有する装置のような補助通信装置55に、流体データを伝達する。通信モジュール54は、遠隔計量読み取りシステム(図示せず)に流体情報を伝達するためのアンテナ53を有している。パワーモジュール56が流体測定メカニズムに電力を供給するために設置されている。パワーモジュール56は、装置全体に調整された電圧を供給することができ、パワーモジュール56は、太陽、電池、直流電源または交流電源のような公知の電源から電力を供給される。
【0032】
電子モジュール50、ローカル流体モジュール52、通信モジュール54およびパワーモジュール56は、図1に示すように別々に設置することもできるし、上部ハウジング16内に配置した単一の主回路ボードに設置することもできる。
【0033】
圧力調整器10による計算流量は、別の流量計58を使って素早く且つ容易に修正できる。流量計58は、タービンまたは他の形式の計器とすることができ、一時的に下流のパイプラインに挿入し、実際の流体流量を測定できる。流量計58は、補助通信装置55(RTU、PCなど)または直接主回路ボードにフィードバックをする。そのフィードバックは、観察された流体条件に基づく誤差関数を得るために使用される。その誤差関数は、圧力調整器10によって行われる流体の計算過程に組み込まれ、より正確な流体のデータを得ることができる。
【0034】
流量測定および診断装置の好ましい実施例が図3に示されており、参照番号100が付されている。図3に示すように、装置100は、圧力調整器(図示せず)に接続可能な第一端102を有する円筒体101を備えている。上記実施例と同様に、圧力調整器は上流セクションと下流セクションを有する流体流路に配置されている。円筒体101は、圧力調整器内の隔膜(図示せず)に接続された作動指示計103(図4)を内蔵している。ホール効果センサは作動指示計103の位置を検出するために使用される。作動指示計103の一部104は、磁極片を有する磁性材料で形成されている。穴要素105(図4)が、磁性材料部分104を検知し、作動指示計103の位置に従って位置信号を発するために設けられている。
【0035】
ハウジング106が円筒体101に取りつけられて、第一圧力ポート107、第二圧力ポート108、補助圧力ポート109および補助ポート110(図3)を有している。第一圧力センサアセンブリ111が第一圧力ポート107内に挿入され、配管(図示せず)がアセンブリ111を流路の上流セクションに接続している。第二圧力センサアセンブリ114が第二圧力ポート108内に挿入され、配管(図示せず)がアセンブリ114を流路の下流セクションに接続している。第三圧力センサアセンブリ115が、第三圧力ポイントにおける圧力を測定するために補助圧力ポート109内に挿入されている。第三圧力センサアセンブリ115が、上記実施例において詳細に説明したように、プラグの作動距離を推定するために、流路内や圧力調整器内を含む様々な位置における圧力を測定するために使用される。好ましい実施例として、第四圧力ポート117が大気圧を測定するために使用される。補助ポート110は、図1に示す温度伝達体48のように、別の装置からの不連続又はアナログ入力を受けるために設置されている。さらに、以下に詳細に説明するように、入力/出力ポート112が、外部装置と接続するために設置されている。
【0036】
複数の回路ボード120a−eが、装置100の様々な演算を制御するために、ハウジング106内に設置されている(図4)。図示の実施例では、第一(または主)回路ボード120aは、第一、第二、第三圧力センサおよび大気圧センサのためのインターフェースと、ホール効果センサ105のための接続部を備えている。第二(または通信)回路ボード120bは、外部装置との通信のためのインターフェースを提供する。第二回路ボード120bは、モデムカード、RF232 通信ドライバ、およびCDPDモデムのような配線された伝達手段のための接続部を備えている。さらに、無線通信のためにトランシーバを備えることができる。第三(または主)回路ボード120cは、プロセッサ、メモリ、実時間クロックおよび2つの通信チャネルのための通信ドライバを備えるのが好ましい。プロセッサは、流量を計算するために、上記のアルゴリズムの中の1つまたは2つ以上のものを備えている。一方、メモリはそれぞれの日における高圧および低圧のような選択されたパラメータを記憶する。第四回路ボード120dは、補助通信装置55のためのインターフェースを提供する。電源調整器、フィールドターミネーション(入・出力装置への接続)、バックアップ電源および他のボード120a−dがつながれる接続部を有する第五(または終端)ボード120eが提供される。5つの回路ボード120a−eが図示されているが、単一の回路ボード、5つより少ない回路ボードまたは5つより多い回路ボードを、本発明の範囲を逸脱しない範囲で使用することができる。
【0037】
それゆえ、装置100と外部装置との通信は、RFモデム、イーサネット(登録商標)または他の公知の類似の通信手段によって行うことができる。そのプロセッサによって、外部装置が、所望圧力設定値およびアラーム条件のような情報を装置100に入力することができ、メモリーに記憶されたデータを検索することができる。検索されたデータは、アラームログおよび記憶された演算パラメータを含むことができる。例えば、検索された情報は、メモリーに定期的に記憶された上流圧力と下流圧力の履歴を含むことができる。そこで、装置100は、圧力レコーダーとしての機能も果たす。
【0038】
本発明によれば、プロセッサーは、アラーム信号を生成するためのルーチンを含む。そのルーチンの第一部分は、図5に示すように、測定されたパラメータ(すなわち、上流圧力、下流圧力および作動位置)をあるユーザ固有の制限値と比較する。さらに、測定されたパラメータの中の少なくとも2つを比較し、固有の論理演算に基づくアラーム信号を生成する1つまたはそれ以上の論理サブルーチンがランされ、その例が図6および図7A−7Dに示されている。
【0039】
まず、レベルアラームについて、ユーザによってレベル制限値が入力されているかどうかを定めるために、150を始動させて検査される。圧力、作動距離、流量およびバッテリー値が、まず、ユーザが入力した高−高制限値と比較される(151)。もし、その値のいずれかが高−高制限値を上回れば、その日付と時間が読み出され(152)、対応する高−高アラーム値がロギングされる(153)。次に、測定された値が、ユーザが入力した高制限値と比較される(154)。もし、その値のいずれかが高制限値を上回れば、その日付と時間が読み出され(155)、対応する高アラーム値がロギングされる(156)。それから、その値が、ユーザが入力した低制限値と比較される(157)。もし、その値のいずれかがユーザが入力した低制限値を下回れば、その日付と時間が読み出され(158)、対応する低アラーム値がロギングされる(159)。最後に、その値が、ユーザが入力した低−低制限値と比較される(160)。もし、その値のいずれかが低−低制限値を下回れば、その日付と時間が読み出され(161)、対応する低−低アラーム値がロギングされる(162)。
【0040】
付加的な制限アラーム値を、計算された流量Fに基づいて設定することができる。例えば、ユーザは、瞬時にかつ蓄積された流量のための制限値を入力することができる。計算された流量Fが、これらの制限値のいずれかを上回ると、アラームが発せられる。さらに、軸の作動距離に基づいてアラームを発することもできる。ユーザは蓄積された軸の作動距離に対する制限値を入力することができる。蓄積された軸の作動距離が、その制限値を上回ると、アラームが発せられる。
【0041】
ユーザが入力した制限アラーム値を検査した後、論理アラーム条件が存在しているかどうかを定めるために、1つまたはそれ以上の論理サブルーチンがランされる。好ましい実施例において、各論理サブルーチンは1つに結合され、合成論理サブルーチンは図6に示されている。図6に示すように、すべての圧力および作動データを集めることによってサブルーチンは始まり、圧力調整器を通る流量を計算する(165)。各測定パラメータは、他の測定パラメータおよびユーザ固有の設定値と比較される。論理アラーム値が、上流圧力(166)、下流圧力(167)、補助圧力(168)、軸の作動距離(169)および流量(170)のためにモニタされる。付加的な論理アラーム値を、第三の圧力センサアセンブリおよび入・出力接続部112に接続された補助装置からのフィードバックのために設けることもできる。各パラメータに関連する値を得た後、以下に詳細に記載するように、論理アラームが検査される。
【0042】
上流圧力(ステップ166)に基づく論理アラームを定めるための好ましい演算シーケンスが図7Aに示されている。まず、上流圧力に関して入力された値のサブルーチンが検査される(172)。もしある値が上流圧力に関して入力されれば、測定された上流圧力が、ユーザが入力した値に比べて大きいか(173)、小さいか(174)、または等しいか(175)を、サブルーチンが定める。各々の場合(すなわち、ステップ173、174および175)に対して、一連のサブステップが図7B−7Dに示されている。
【0043】
もしアラームが、ある値より上流圧力が大きいことを必要とするならば、サブルーチンは、まず、ユーザによって入力された固有の上流圧力値のために検査する(図7B)。もし、ユーザが上流圧力に対してある値を入力すれば、測定された上流圧力がその入力された値と比較される(177)。もし測定された値が入力された値より大きければ、フラグより大きい上流圧力が設定される(178)。もし、ユーザが入力した固有の値が使用されなければ、下流圧力が上流圧力と比較されるべきかどうかを知るためにサブルーチンが検査する(179)。もしそうならば、上流圧力が下流圧力より大きいかどうかをサブルーチンが定める(180)。もしそうならば、下流圧力フラグより大きい上流圧力が設定される(181)。もし下流圧力が論理アラームとして使用されなければ、補助圧力に基づく論理アラームのためにサブルーチンが検査する(182)。もし補助圧力が論理アラームとして使用されるならば、上流圧力が下流圧力より大きいかどうかをサブルーチンが検査する(183)。もしそうならば、補助圧力フラグより大きい上流圧力が設定される(184)。
【0044】
図7Cおよび図7Dに示すように、上流圧力が論理アラーム値より小さいか又は等しいかを定めるために、サブルーチンが同様のステップを実行する(185−202)。さらに、下流圧力および補助圧力が固有の論理アラーム値より大きいか、小さいか又は等しいかを定めるために、図7B−図7Dに示す演算と同一の演算が下流圧力および補助圧力のために実行される。これらの演算は同じなので、これらのステップを示すフローチャートは図示されていない。
【0045】
作動距離に基づく論理アラームに戻って(169、図6)、論理シーケンスフローチャートが図7Eに示されている。従って、作動距離論理値が入力されていないかどうかをサブルーチンがまず検査する(203)。もし、作動距離論理値が入力されていれば、測定された値が論理値より大きいかどうかをサブルーチンが定める(204)。もし、論理演算子が制限値より大きければ、測定された作動距離が入力された値より大きいかどうかをサブルーチンが定める(205)。もしそうならば、フラグより大きい作動距離が設定される(206)。もし、制限値より大きくない論理演算子が作動距離のために使用されれば、サブルーチンは、論理演算子が制限値より小さいかどうかを検査する(207)。もし、制限値より小さい論理演算子が作動距離のために使用されれば、測定された作動距離が入力された値より小さいかどうかをサブルーチンが定める(208)。もしそうならば、フラグより小さい作動距離が設定される(209)。もし、制限値より小さい論理演算子が作動距離のために使用されなければ、サブルーチンは論理演算子が制限値に等しいかどうかを検査する(210)。もし、制限値に等しい論理演算子が作動距離のために使用されれば、測定された作動距離が入力された値に等しいかどうかをサブルーチンが定める(211)。もしそうならば、フラグに等しい作動距離が設定される(212)。図6のステップ170に示されるように、計算された流量が論理流量アラーム値より大きいか、小さいか又は等しいかを定めるために、類似のステップのシーケンスが使用できる。
【0046】
設定された論理フラグに基づいて、測定された2つのパラメータの比較に基づく論理アラームが発せられる。例えば、作動距離がゼロに等しく、下流圧力が増加するとき(現在の下流圧力が以前に測定された下流圧力より大きいとき)、閉鎖アラームが発せられる。適当な演算条件が対応する論理フラグを設定するために存在するとき、閉鎖アラームが発せられ、流体が絞り要素の損傷によって圧力調整器から漏れていることを指摘する。作動距離がゼロより大きく、下流圧力信号が減少しているとき、別の論理アラームを発することができ、軸が破損したことを指摘する。作動距離がゼロより大きく、上流圧力信号が増加しているとき、さらに別の論理アラームを発することができ、軸が破損したか又は圧力調整器に別の問題が発生したことを指摘する。作動距離がゼロより大きく、下流圧力信号がユーザが入力した下流圧力制限値より大きいとき、さらに別の論理アラームを発することができ、圧力調整器を制御するパイロットに問題が発生したことを指摘する。他の論理アラームは、種々の測定値や計算値を考慮して入力することができる。そこで、圧力調整器についての他の潜在的な問題を指摘することができる。
【0047】
プロセッサと一体になったメモリが、日付、時刻およびアラームの形式を読み出すアラーム論理を含むのが好ましい。アラーム論理は、アラームの履歴を検索しうるように、外部の通信装置によってアクセスすることが可能である。さらに、プロセッサは、離れたところにあるホストコンピュータに自動的にアラーム条件を伝達する例外レポート(RBX)回路を含むのが好ましい。従って、パイプラインにおける潜在的な問題は、すばやくレポートされ、特定要素または損傷領域を明らかにすることができる。
【0048】
調整器による流量測定装置と診断装置が結合したものを説明したが、本発明に従って、調整器による流量測定装置と調整器による診断装置を別々のものにすることもできる。
【0049】
上記の詳細な説明は本発明の理解のためにのみなされたものであり、何ら不必要な限定はされるべきでなく、当業者にとって修正は容易である。
【符号の説明】
【0050】
10…ガス圧力調整器
12…調整器本体
14…隔膜ハウジング
16…上部ハウジング
18…入口
20…出口
22…オリフィス
26…隔膜
28…圧力ばね
30…軸
32…弁体
34…第一圧力センサ
35…第二圧力センサ
40、103…作動指示計
42…ホール効果磁石
44…磁石センサ
46…負荷圧力センサ
106…ハウジング
111…第一圧力センサアセンブリ
114…第二圧力センサアセンブリ
115…第三圧力センサアセンブリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力調整器による流体流量測定装置であって、該圧力調整器は、
流体通路を定める本体と、
その中に配置されたアクチュエータを有し且つ上記本体に取り付けられたアクチュエータハウジングであって、上記アクチュエータが流体通路と連通しているアクチュエータハウジングと、
流体通路内を移動可能であって上記アクチュエータに取り付けられた絞り要素と、
絞り要素に接続された隔膜と、
絞り要素の上流の流体通路にある上流圧力P1 を測定するための第一圧力センサと、
絞り要素の下流の流体通路にある下流圧力P2 を測定するための第二圧力センサと、
隔膜上のゲージ負荷圧力PL を測定するための第三圧力センサと、
第一圧力センサ、第二圧力センサおよび第三圧力センサを組み込まれたプロセッサとを備えており、
該プロセッサは、上流圧力P1 と下流圧力P2 ゲージ負荷圧力PL に基づいて流量Fを定めるために記憶されたプログラムを有しているもの。
【請求項2】
流体の温度Tを測定するための温度センサを有しており、記憶されたプログラムは次式に従って流量Fを定める請求項1記載の装置。
流体が臨界であるとき、下記の数式3によって流量Fが定められ、
【数3】

流体が亜臨界であるとき、下記の数式4によって流量Fが定められる。
【数4】

ここで、K1 は温度定数、Gは流体の比重、3 はトリムの形状定数、K4 は負荷圧力定数である。
【請求項3】
絞り要素は可撓性の部材を有し、第三圧力センサは可撓性の部材上のゲージ負荷圧力PL を測定する請求項1記載の装置
【請求項4】
負荷圧力定数K4 は、上流圧力P1 から下流圧力P2 を引いた差の関数である請求項3記載の装置。
【請求項5】
絞り要素は非線形のトリム形式弁部材を有し、第三圧力センサは非線形のトリム形式弁部材上のゲージ負荷圧力PL を測定する請求項1記載の装置
【請求項6】
負荷圧力定数K4 は、ゲージ負荷圧力PL の関数である請求項5記載の装置。
【請求項7】
圧力調整器の操作に関係するデジタルデータを記憶するためにプロセッサに接続されたメモリと、記憶されたデジタルデータの中の少なくともいくらかを外部通信装置に伝達するためにプロセッサに接続された通信回路とを有する請求項2記載の装置。
【請求項8】
プロセッサは、圧力調整器の操作に対応する診断データを得るために、記憶されたデジタルデータを現在のデジタルデータと比較するための論理サブルーチンを実行する請求項7記載の装置。
【請求項9】
論理サブルーチンは、流量Fがユーザが入力した流量制限値より大きいときにアラームを発する請求項8記載の装置。
【請求項10】
流体は液体であって、記憶されたプログラムは、次式に従って液体の流量Fを定める請求項1記載の装置。
【数5】

ここで、K1 は温度定数、Gは液体の比重、Tは液体の温度、4 は負荷圧力定数である。
【請求項11】
流体流路に配置された圧力調整器を通る流体流量を測定する方法であって、該圧力調整器は、流体通路内を移動可能な絞り要素と該絞り要素に接続された可撓性の隔膜を有し、
当該方法は、
絞り要素の上流の流体圧力を測定することによって上流圧力値P1 を得
絞り要素の下流の流体圧力を測定することによって下流圧力値P2 を得
隔膜上のゲージ負荷圧力PL を得、
上流圧力値P1 と下流圧力値P2 ゲージ負荷圧力PL に基づいて流体の流量Fを計算するステップを有するもの。
【請求項12】
流体の温度を測定することによって絶対温度Tを得、流体の流量Fは次式に従って計算される請求項11記載の方法。
流体が臨界であるとき、下記の数式6によって流量Fが定められ、
【数6】

流体が亜臨界であるとき、下記の数式7によって流量Fが定められる。
【数7】

ここで、K1 は絶対温度定数、Gは流体の比重、K3 はトリムの形状定数、K4 は負荷圧力定数である
【請求項13】
絞り要素は非線形のトリム形式弁部材を有する請求項12記載の方法。
【請求項14】
絞り要素は可撓性の部材を有し、第三圧力センサは可撓性の部材上のゲージ負荷圧力PL を測定する請求項11記載の方法
【請求項15】
負荷圧力定数K4 は、上流圧力P1 から下流圧力P2 を引いた差の関数である請求項14記載の方法。
【請求項16】
絞り要素は非線形のトリム形式弁部材を有し、第三圧力センサは非線形のトリム形式弁部材上のゲージ負荷圧力を測定する請求項11記載の方法
【請求項17】
負荷圧力定数K4 は、ゲージ負荷圧力PL の関数である請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【公開番号】特開2010−113733(P2010−113733A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−764(P2010−764)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【分割の表示】特願2001−507161(P2001−507161)の分割
【原出願日】平成12年6月26日(2000.6.26)
【出願人】(591055436)フィッシャー コントロールズ インターナショナル リミテッド ライアビリティー カンパニー (183)
【Fターム(参考)】