説明

調整方法、露光方法、デバイス製造方法及び露光装置

【課題】実露光条件における偏光状態を測定して照明条件を調整する調整方法を提供する。
【解決手段】照明光学系を用いて原版を照明し、投影光学系を介して前記原版のパターンの像を基板に投影する際の、照明条件を調整する調整方法において、前記原版のパターンのうち対象領域を決定するステップと、前記投影光学系の物体面に前記原版が配置された状態において、前記照明光学系と前記原版の前記対象領域と前記投影光学系とを通過した、前記投影光学系の像面における光の偏光状態および角度分布を測定する測定ステップと、前記測定ステップにおける測定結果に基づいて、前記光の偏光状態および光強度分布を調整する調整ステップと、を有することを特徴とする調整方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調整方法、露光方法、デバイス製造方法及び露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィー(焼き付け)技術を用いて半導体デバイスを製造する際に、レチクル(マスク)に描画された回路パターンを投影光学系によってウエハ等に投影して回路パターンを転写する投影露光装置が従来から使用されている。
【0003】
投影露光装置の露光性能を決定する要素には、解像度、重ね合わせ精度(オーバーレイ精度)及びスループットの3つの重要な要素がある。近年では、かかる3つの要素のうち、特に、解像度に関して、投影光学系の液浸化による高NA化が注目されている。投影光学系のNAを大きくすることは、像面からの垂線と入射光の進行方向との成す角が大きくなることを意味しており、高NA結像と呼ばれる。
【0004】
高NA結像では、露光光の偏光状態が重要となる。例えば、繰り返しパターン(例えば、ラインとスペースが繰り返されているようなライン・アンド・スペースパターン)に対して、平行な偏光方向を有する光をS偏光、垂直な偏光方向を有する光をP偏光とする。干渉光の成す角が90である場合、S偏光は干渉するため、パターンに応じた光強度分布が像面上に形成される。一方、P偏光は干渉しない(干渉の効果が打ち消される)ため、光強度分布は一定となり、パターンに応じた光強度分布が像面上に形成されることはない。S偏光とP偏光が混在していると、S偏光だけのときよりもコントラストが悪い光強度分布が像面上に形成され、P偏光の割合が大きくなると像面上の光強度分布のコントラストが低下し、最終的には、パターンが形成されなくなる。
【0005】
このため、露光光の偏光状態を制御してコントラストを向上させる必要がある。偏光制御された露光光は、十分なコントラストの光強度分布を像面上に形成することができ、より微細なパターンを露光することができる。
【0006】
露光光の偏光制御は、照明光学系の瞳面における偏光状態を制御することで行われる。
【0007】
但し、照明光学系の瞳面における偏光状態を制御したとしても、照明光学系のうち瞳より後段の光学系、若しくは、投影光学系の影響によって、制御した偏光状態が常に維持されて像面上に到達するとは限らない。例えば、透過率又は反射率を向上させるために、レンズに反射防止膜又は反射ミラーに高反射膜を形成しているが、これらの反射率は偏光方向によって異なり、位相差が加わることで偏光状態を変化させる要素を有している。また、露光光の短波長化に伴って、石英や蛍石の結晶部材が硝材に使用されており、これらの硝材は複屈折を有しているため、偏光状態を変化させてしまう。更に、硝材を保持する鏡筒などのメカ部材の応力によって、硝材の有する複屈折は変化するため、硝材の複屈折を常に一定に維持することは極めて困難である。
【0008】
従って、露光装置としての偏光状態を測定することが必要であり、例えば、照明光学系や投影光学系の偏光状態を測定することができる露光装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−59566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された露光装置は、レチクルステージ上にレチクルがセットされた状態で、即ち、照明光学系と投影光学系との間にレチクルが配置された状態で、照明光学系や投影光学系の偏光状態を測定するものではない。実際に露光を行う場合には、照明光学系と投影光学系との間にレチクルが配置されるため、レチクル自身の複屈折やレチクルを保持する際に発生する応力複屈折などによって、偏光状態が変化してしまう可能性が高い。従って、特許文献1に開示された露光装置は、照明光学系や投影光学系の偏光状態を測定しているものの、実露光条件における偏光状態を測定しているとは言えない。
【0010】
そこで、本発明は、実露光条件における偏光状態を測定して照明条件を調整する調整方法を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての調整方法は、照明光学系を用いて原版を照明し、投影光学系を介して前記原版のパターンの像を基板に投影する際の、照明条件を調整する調整方法において、前記原版のパターンのうち対象領域を決定するステップと、前記投影光学系の物体面に前記原版が配置された状態において、前記照明光学系と前記原版の前記対象領域と前記投影光学系とを通過した、前記投影光学系の像面における光の偏光状態および角度分布を測定する測定ステップと、前記測定ステップにおける測定結果に基づいて、前記光の偏光状態および光強度分布を調整する調整ステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の別の側面としての露光方法は、上述した調整方法を用いて、前記光の偏光状態および角度分布を調整する調整ステップと、前記調整ステップの後、前記原版のパターンの像を前記基板に投影露光する露光ステップと、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の更に別の側面としてのデバイス製造方法は、上述した露光方法を用いて、基板を露光する露光ステップと、露光された基板を現像する現像ステップと、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の更に別の側面としての露光装置は、光源からの光を用いて原版を照明する照明光学系と、前記原版のパターンの像を基板に投影する投影光学系とを備える露光装置であって、前記照明光学系の瞳面における光強度分布を形成する光強度形成部と、前記光源からの光の偏光状態を変換する偏光変換部と、前記原版のパターンのうち対象領域を決定する決定部と、前記投影光学系の像面における光の偏光状態および角度分布を測定する測定部と、前記測定部による測定結果に基づいて、前記光強度形成部および前記偏光変換部を制御する制御部とを有し、前記測定部は、前記投影光学系の物体面に前記原版が配置された状態において、前記照明光学系と前記原版の前記対象領域と前記投影光学系とを通過した光の偏光状態および角度分布を測定することを特徴とする。
【0015】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、例えば、実露光条件における偏光状態を測定して照明条件を調整する調整方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明の一側面としての露光装置1の構成を示す概略ブロック図である。露光装置1は、本実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式でレチクル30のパターンをウエハ50に露光する投影露光装置である。但し、露光装置1は、ステップ・アンド・リピート方式やその他の露光方式も適用することができる。
【0019】
露光装置1は、光源10、照明光学系20、原版としてのレチクル30を支持するレチクルステージ35、投影光学系40、基板としてのウエハ50を支持するウエハステージ55、測定部60、読取部70、制御部80、決定部90を備える。
【0020】
光源10は、例えば、波長約248nmのKrFエキシマレーザーや波長約193nmのArFエキシマレーザーなどのエキシマレーザーを使用する。但し、光源10はエキシマレーザーに限定されず、例えば、波長約157nmのFレーザーなどを使用してもよい。なお、光源10から射出される光束(レーザー光)は略直線偏光である。光源10からの光束は、後述するλ/2位相板(λ/2波長板)201及び位相板(波長板)203によって所望の偏光状態に変換され、レチクル30を偏光照明する。本実施形態では、光源10からの光束は、図1の紙面に対して垂直な方向に電場ベクトルを有する略直線偏光であるとして説明する。
【0021】
照明光学系20は、光源10からの光束を用いてレチクル30を照明する光学系である。照明光学系20は、本実施形態では、λ/2位相板201と、ビーム成形光学系202と、位相板203と、ハエの目レンズ204と、コンデンサレンズ205と、マスキングブレード206と、リレー光学系207及び209と、折り曲げミラー208とを含む。ハエの目レンズ204は、他のオプティカルインテグレータ、例えば、マイクロレンズアレイなどでもよい。
【0022】
λ/2位相板201は、後述する制御部80によって制御され、照明光学系20の光路に挿脱可能に構成される。λ/2位相板201は、光源10からの光束の偏光状態を一律に調整(変換)する機能を有する。λ/2位相板201は、本実施形態では、進相軸方向が光源10からの光束の偏光方向に対して45度の角度を成すように配置される。λ/2位相板201を照明光学系20の光路に挿脱することによって、後段の光学系に入射する光束の偏光状態を、紙面に対して垂直な方向に電場ベクトルを有する直線偏光又は紙面に対して平行な方向に電場ベクトルを有する直線偏光に切り替えることができる。但し、λ/2位相板201を挿脱可能に構成する代わりに、λ/2位相板201を回転可能に構成してもよい。これにより、λ/2位相板201の進相軸方向を、光源10からの光束の偏光方向に対して平行な方向又は光源10からの光束に対して45度傾いた方向に切り替えることが可能となり、同等な効果を得ることができる。
【0023】
ビーム成形光学系202は、照明光学系20の瞳面における光強度分布(有効光源)を形成する光強度形成部としての機能を有する。ビーム成形光学系202は、例えば、図2(a)乃至図2(c)に示すような形状の有効光源(分布)を形成する。具体的には、図2(a)に示す有効光源分布は、照明光学系20の瞳面上で軸外の2つの領域に明光部LPを有するダイポール(2重極)照明である。図2(b)に示す有効光源分布は、照明光学系20の瞳面上で軸外の4つの領域に明光部LPを有する4重極照明である。図2(c)に示す有効光源分布は、照明光学系20の瞳面上で軸外のリング領域に明光部LPを有する輪帯照明である。ここで、図2は、ビーム成形光学系202によって形成される有効光源分布の一例を示す図である。
【0024】
位相板203は、後述する制御部80によって制御され、照明光学系20の光路に挿脱可能に構成される。位相板203は、光源からの光の偏光状態を変換して、照明光学系20の瞳面において所望の偏光状態を形成する偏光変換部としての機能を有する。λ/2位相板201は、光源10からの光束の偏光状態を一括して変換するが、位相板203は、照明光学系20の瞳面における偏光状態を部分的に独立して調整する。但し、位相板203は、照明光学系20の瞳面における偏光状態を調整しなくてもよく、照明光学系20の瞳面より後段であってレチクル30を照明する前段において、光源10からの光束の偏光状態を所望の偏光状態に調整することができればよい。
【0025】
図3を参照して、位相板203の前後における光束の偏光状態について説明する。図3は、位相板203の前後における光束の偏光状態を示す図である。本実施形態では、ビーム成形光学系202が、図2(b)に示したような4重極照明の有効光源分布を形成する場合を例として説明する。この場合、位相板203の前段及び後段の光量分布は、図3(a)及び図3(c)の上側に示すように、図2(b)に示す有効光源分布の4つの明光部LPに対応して4つの光の存在する領域IAを有する。
【0026】
光源10からの光束は、λ/2位相板201によって、一律な偏光状態となっている。例えば、光源10からの光束の偏光状態が、λ/2位相板201によって、図3(a)に示すように、紙面上下方向に電場ベクトルを有する偏光状態に変換された場合を考える。また、位相板203は、図3(b)に示すように、光量分布の領域IA(有効光源分布の明光部LP)に対応する4つの領域に配置され、4つの位相板203a乃至203dで構成されているものとする。なお、位相板203a及び203cは、45度方向に進相軸を有するλ/2板である。位相板203b及び203dは、上下方向に進相軸を有するλ/2板である。
【0027】
光源10からの光束が、図3(b)に示す位相板203を通過すると、上下方向の領域IAにおける偏光状態は、偏光方向が位相板203a及び203cによって90度回転するため、図3(c)に示すように左右方向に偏光した偏光状態となる。一方、左右方向の領域IAの偏光状態は、位相板203b及び203dの進相軸と光束の偏光方向とが平行であるため偏光方向は回転せず、図3(c)に示すように上下方向に偏光した偏光状態となる。従って、位相板203を通過した光束は、光量分布が4重極で、偏光状態が領域ごとに異なった状態となる。
【0028】
位相板203は、本実施形態では、位相板203a乃至203dを独立して回転(駆動)させる回転機構を有する。これにより、制御部80が位相板203の回転機構を制御することにより、照明光学系20の瞳面における偏光状態を部分的に独立して調整することができる。図4(a)の上側に示す位相板203の状態から、回転機構を介して位相板203cを回転させると、図4(b)の上側に示すように、進相軸方向を変えることができる。これにより、図4(a)及び図4(b)の下側に示すように、位相板203cに相当する領域のみ偏光状態を変えることができる。このように、位相板203a乃至203dの進相軸方向を照明光学系20の瞳面内の領域ごとに可変とすることによって、有効光源分布内の偏光方向を可変とすることができる。ここで、図4は、位相板203a乃至203dの進相軸方向と有効光源分布の偏光状態との関係を示す図である。
【0029】
図2(b)に示す有効光源分布においては、上下の明光部LPからの光が水平方向のパターンの結像に寄与し、左右の明光部LPからの光が垂直方向のパターンの結像に寄与する。従って、図4を用いて説明した例においては、有効光源分布の下の明光部LPの水平方向のパターンに対するS偏光強度が弱くなる(P偏光強度が強くなる)。このように、照明光学系20の瞳面における偏光状態を部分的に独立して調整することで、種々の偏光状態を形成することができる。本実施形態では、有効光源分布内の各領域で独立して位相板203a乃至203dを回転させて偏光状態を調整しているが、位相板203全体を回転させてもよい。
【0030】
なお、図4では、位相板203a乃至203dを回転させることによって位相板203a乃至203dの進相軸方向を変えているが、位相差をλ/2からずらしても同様な効果を得ることができる。例えば、図5(a)の上側に示すように、まず、位相板203を、入射光の電界振動方向(偏光面)にλ/2(π)の位相差を与える位相板203e乃至203hで構成する。本実施形態では、位相板203が図5(a)の上側に示す状態である場合、有効光源分布は、図5(a)の下側に示すような偏光状態であるとする。ここで、図5(b)の上側に示すように、位相板203gの位相差をλ/2からずらす(位相差をλ/2+δとする)と、図5(b)の下側に示すように、位相板203gに相当する領域のみ偏光状態を変えることができる。従って、位相板203e乃至203hの位相差をλ/2からずらすことによって、種々の偏光状態を形成することができる。ここで、図5は、位相板203e乃至203hの位相差と有効光源分布の偏光状態との関係を示す図である。
【0031】
また、照明光学系20の瞳面における偏光状態の一例を図6に示す。なお、図6では、X方向に電場ベクトルを有する偏光光をX偏光と称し、Y方向に電場ベクトルを有する偏光光をY偏光と称する。
【0032】
図6(a)は、Y偏光小σ照明を示している。Y偏光小σ照明は、レチクル30としてレベソン位相シフトマスク(Alt−PSM)を用いた場合、X方向の繰り返しパターンを転写する際に有効である。
【0033】
図6(b)は、X偏光小σ照明を示している。X偏光小σ照明は、レチクル30としてAlt−PSMを用いた場合、Y方向の繰り返しパターンを転写する際に有効である。
【0034】
図6(c)は、Y偏光Xダイポール照明を示している。Y偏光Xダイポール照明は、レチクル30としてバイナリーマスク又はハーフトーンマスク(Att−PSM)を用いた場合、X方向の繰り返しパターンを転写する際に有効である。
【0035】
図6(d)は、X偏光Yダイポール照明を示している。X偏光Yダイポール照明は、レチクル30としてバイナリーマスク又はAtt−PSMを用いた場合、Y方向の繰り返しパターンを転写する際に有効である。
【0036】
図6(e)は、タンジェンシャル偏光クロスポール照明を示している。タンジェンシャル偏光クロスポール照明は、レチクル30としてバイナリーマスク又はAtt−PSMを用いた場合、X方向及びY方向の両方の繰り返しパターンが混在するパターンを転写する際に有効である。
【0037】
図6(f)は、タンジェンシャル輪帯照明を示している。タンジェンシャル輪帯照明は、レチクル30としてバイナリーマスク又はAtt−PSMを用いた場合、様々な方向の繰り返しパターンが混在するパターンを転写する際に有効である。なお、タンジェンシャル偏光とは、照明光学系20の瞳面内の各点において、光軸中心方向(ラジアル方向)に対して略直交した方向(円周方向)に電場ベクトルが向いている偏光状態である。
【0038】
図6(g)は、ラジアル偏光45度四重極照明を示している。ラジアル偏光45度四重極照明は、レチクル30としてCrレスPSMを用いた場合、コンタクトホールパターンを転写する際に有効である。なお、ラジアル偏光とは、照明光学系20の瞳面内の各点において、光軸中心方向に電場ベクトルが向いている偏光状態である。
【0039】
図1に戻って、ハエの目レンズ204は、光源10からの光束を波面分割し、多数の2次光源を形成する。ハエの目レンズ204の射出面204a近傍は、本実施形態では、照明光学系20の瞳面となり、ハエの目レンズ204の射出面204aにおける光強度分布が有効光源と呼ばれる。
【0040】
コンデンサレンズ205は、ハエの目レンズ204の射出面204a近傍に形成された2次光源からの光束を、マスキングブレード206の位置に重畳的に重ね合わせる。これにより、均一な光強度分布を得ることができる。
【0041】
リレー光学系207及び209は、光束を偏向させる折り曲げミラー208を介して、マスキングブレード206とレチクル30とを光学的に共役な関係にする。
【0042】
レチクル30は、デバイスの回路パターンを有し、レチクルステージ35に支持及び駆動される。レチクル30から発せられた回折光は、投影光学系40を介して、ウエハ50に投影される。露光装置1は、ステップ・アンド・スキャン方式の露光装置であるため、レチクル30とウエハ50とを走査することによって、レチクル30のパターンをウエハ50に転写する。また、レチクル30は、レチクル30のパターン(回路パターン)の情報を示すレチクル情報(原版情報)32を有する。レチクル情報32は、本実施形態では、バーコードとしてレチクル30上に形成される。但し、レチクル情報32の形態はバーコードに限定するものではなく、レチクル30のパターンを識別することができる識別子であればよい。なお、レチクル情報32の具体的な内容については、後で詳細に説明する。
【0043】
レチクルステージ35は、照明光学系20と投影光学系40との間(投影光学系40の物体面)にレチクル30を配置する。また、レチクルステージ35は、後述する制御部80に制御され、レチクル30を位置決めする。レチクルステージ35は、レチクル30を支持し、例えば、リニアモータを利用して、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び各軸の回転方向にレチクル30を移動させる。ここで、レチクル30又はウエハ50の面内で走査方向をY軸、それに垂直な方向をX軸、レチクル30又はウエハ50の面に垂直な方向をZ軸とする。
【0044】
投影光学系40は、レチクル30のパターンをウエハ50に投影する光学系である。投影光学系40は、屈折系、反射屈折系、或いは、反射系を使用することができる。
【0045】
ウエハ50は、レチクル30のパターンが投影(転写)される基板である。但し、ウエハ50は、ガラスプレートやその他の基板に置換することもできる。ウエハ50には、フォトレジストが塗布されている。
【0046】
ウエハステージ55は、ウエハ50を支持し、レチクルステージ35と同様に、リニアモータを利用して、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び各軸の回転方向にウエハ50を移動させる。
【0047】
測定部60は、本実施形態では、ウエハステージ55に配置され、ウエハ50が配置される投影光学系の像面の近傍の光束、詳細には、ウエハ50に投影される光束を測定する。測定部60は、本実施形態では、レチクル30からの回折光(照明光学系20、レチクル30及び投影光学系40を通過した光束)の偏光状態及びレチクル30からの回折光の光強度分布(投影光学系40の瞳面における光強度分布)の少なくとも一方を測定する。ここで、投影光学系40の瞳面における光強度分布は、投影光学系の像面における光の角度分布に対応する。なお、測定部60の測定結果は、制御部80に出力される。
【0048】
図7は、測定部60の構成の一例を示す概略断面図である。測定部60は、図7に示すように、ピンホール板601と、フーリエ変換レンズ602と、受光素子603と、位相子604と、偏光素子605とを有する。ピンホール板601は、投影光学系40の結像面(像面)にピンホール601aを配置する。フーリエ変換レンズ602は、ピンホール601aを通過した光束を略平行光束に変換する。受光素子603は、例えば、2次元画像検出素子(CCD等)で構成され、ピンホール601aを通過した光束を受光する。位相子604は、ピンホール板601と受光素子603との間に配置され、入射する光束に対して位相を与えて射出する。偏光素子605は、位相子604と受光素子603との間に配置される。偏光素子605は、光束の偏光状態に応じて異なる透過率を有する。
【0049】
図7を参照するに、ピンホール板601のピンホール601aを通過した光束は、フーリエ変換レンズ602によって、略平行光束に変換される。フーリエ変換レンズ602を通過した光束は、投影光学系40の瞳面における光強度分布を形成し、かかる光強度分布は、受光素子603によって検出される。
【0050】
受光素子603で検出される光強度分布は、振幅Ex及びEy、及び、位相差δの関数である。この関数の未知数は3つ(振幅Ex及びEy、及び、位相差δ)である。従って、独立な3つ以上の偏光状態で光強度分布を計測することが、入射光の偏光状態を計測するために必要となる。
【0051】
独立な3つ以上の偏光状態は、例えば、透過光に異なる位相差を付与する3つの位相子604をプレート上に配置させた構成にすることで実現することができる。プレートをスライドさせ、3つの位相子のうち、光路中に配置する位相子を変えることによって、独立な3つ以上の偏光状態を実現する。また、位相子604を回転可能に構成し、位相子604の回転角度を3つ以上に変化させることで、独立な3つ以上の偏光状態を実現することもできる。位相子604をλ/2波長板とλ/4波長板の2つの波長板から構成し、各々を回転可能にすることでも独立な3つ以上の偏光状態を実現することができる。更に、位相子604をPEM(光弾性変調器)で構成し、かかるPEMに3つ以上の応力を加えることで、透過光の偏光状態に3つ以上の位相差を付与し、独立な3つ以上の偏光状態を実現してもよい。なお、PEMを構成する応力複屈折を示す部材に均一に応力を加えるために、応力部材を共振させて位相変調させることが知られている。また、PEMは、光路内で所定角度だけ回転させた状態で配置する必要がある。従って、部材に加える応力を一定とし、PEMの回転角度を3つ以上に変化させることで、独立な3つ以上の偏光状態を実現することもできる。
【0052】
偏光素子605は、特許第3288976号に提案されているような平行平板状の偏光子、入射角度をブリュースター角近傍に傾けた平行平板状の偏光ビームスプリッター、或いは、プリズム型の偏光ビームスプリッター等である。本実施形態では偏光素子605は固定された状態で構成されている。しかし、偏光素子605は回転可能な構成であっても構わない。位相子604及び偏光素子605は、入射光が平行光束となる光路中に配置することが好ましい。
【0053】
読取部70は、レチクル30のパターンの情報を示すレチクル情報32を読み取って制御部80に出力する。本実施形態では、レチクル情報32がバーコードとしてレチクル30上に形成されているため、読取部70はバーコードリーダーとして構成されている。このように、読取部70は、レチクル情報32の形態に応じた形態で構成される。
【0054】
制御部80は、図示しないCPUやメモリを有し、露光装置1の動作を制御する。制御部80は、本実施形態では、照明光学系20と投影光学系40との間にレチクル30が配置された状態において、測定部60が照明光学系20、レチクル30及び投影光学系40を通過した光束を測定するように制御する。具体的には、制御部80は、レチクルステージ35にレチクル30を位置決めする指示を出力し、レチクル30が位置決めされた後に測定部60に測定の指示を出力する。また、制御部80は、測定部60の測定結果に基づいて、λ/2位相板201、位相板203を制御して、露光装置1としての偏光状態をレチクル30のパターン毎に調整する。同様に、制御部80は、測定部60の測定結果に基づいて、ビーム成形光学系202を制御して、投影光学系40の瞳面における光強度分布をレチクル30のパターン毎に調整することもできる。
【0055】
決定部90は、制御部80と電気的に接続し、読取部70によって読み取られたレチクル情報32に基づいて、レチクル30のパターン領域のうち検出対象領域を決定する。また、決定部90は、検出対象領域からの回折光の分布領域(「回折光着目領域」と称する)を算出(決定)する。但し、決定部90は、検出対象領域をユーザが入力する入力部92を有していてもよい。入力部92は、キーボード、マウス、タッチパネルなどを含み、上述したレチクル情報32と同等な情報をユーザが入力できるように構成される。
【0056】
以下、図8を参照して、照明条件の調整方法、露光装置1を用いた露光方法について説明する。図8は、本発明の一側面としての調整方法及び露光方法を説明するためのフローチャートである。
【0057】
まず、ステップS1002において、制御部80は、露光装置に与えられた露光条件に基づいて、照明光学系20の照明条件(照明モード)を設定すると共に、レチクルステージ35にレチクル30を配置する。露光条件には、例えば、照明条件(有効光源の形状や偏光状態など)、使用するレチクル30などが含まれる。なお、照明光学系20の照明条件は、上述したように、λ/2位相板201、ビーム成形光学系202及び位相板203を制御(駆動)することで設定することができる。
【0058】
本実施形態では、例えば、照明条件として、図9に示すような有効光源分布及び偏光状態が与えられているものとする。図9に示す有効光源分布は、照明光学系20の瞳面上で軸外の4つの領域に明光部LPを有する4重極照明である。また、偏光状態はタンジェンシャル偏光であり、照明光学系20の偏光度は最良の状態(本実施形態では、偏光度0.95以上)に設定される。偏光度は、全光量に対する主偏光成分の光量の割合として定義される。なお、主偏光成分とは、所望の偏光成分である。主偏光成分に直交する偏光成分(不要な偏光成分)を副偏光成分と称すると、偏光度が1であれば、主偏光成分と副偏光成分との光量比が1:0であることを意味する。また、偏光度が0.5であれば、主偏光成分と副偏光成分との光量比が1:1であることを意味する。
【0059】
一方、本実施形態で使用するレチクル30は、図10に示すように、Att−PSM(又はバイナリーマスク)であり、種々のパターン(例えば、X方向の繰り返しパターン及びY方向の繰り返しパターンなど)が形成されているものとする。図10は、露光装置1において使用されるレチクル30の一例を示す図である。
【0060】
次いで、ステップS1004において、読取部70がレチクル30のレチクル情報32を読み取る。レチクル情報32は、上述したように、レチクル30のパターンの情報であり、設計値(GDSデータなど)や実測値をデータベース化したものである。レチクル情報32には、レチクル30を偏光照明する際に必要な情報(即ち、露光装置1としての偏光状態を最適化するための情報)が含まれている。レチクル情報は、レチクル30のパターン領域のうち検出対象領域を決定するための着目パターンが形成されている位置座標を含む。また、レチクル情報32は、着目パターンの寸法(着目パターンのライン幅やスペース幅)や着目パターンの位相情報を含む。なお、着目パターンは、レチクルのパターンのうち最も高い結像性能が要求されるパターン(クリティカルパターン)を設定することが好ましい。本実施形態では、図10に示すレチクル30のパターンのうち縦パターン30aが着目パターンとして設定されているものとする。
【0061】
次に、ステップS1006において、決定部90は、読取部70が読み取ったレチクル情報32に基づいて、着目パターンを検査対象領域として決定し、着目パターンからの回折光が分布する回折光着目領域を算出(決定)する。具体的には、決定部90は、予め実験や設計シミュレーションなどで求めた有効光源分布及びレチクル情報32に基づいて、着目パターンのフーリエ変換面に相当する投影光学系40の瞳面の光強度分布を算出することで、回折光着目領域を決定する。また、着目パターンに対するウエハ50面上の像コントラストが所定の値となるように、投影光学系40の瞳面での着目すべき領域(即ち、回折光着目領域)を算出してもよい。本実施形態では、レチクル情報32に基づいて回折光着目領域を算出(決定)しているが、回折光着目領域は、予めレチクル情報32として有していてもよい。
【0062】
なお、回折光着目領域は、レチクル30のパターンの結像に寄与する光束が主に存在する領域である。換言すれば、回折光着目領域は、検出対象領域に相当する領域である。従って、回折光着目領域における偏光状態を制御すれば、露光装置1の解像度を向上させることが可能となる。また、回折光着目領域に着目パターンからの回折光が存在するようにビーム成形光学系202を制御すれば、レチクル30のパターンのうち最も高い結像性能が要求されるパターンに対する結像性能を向上させることが可能となる。
【0063】
次いで、ステップS1008において、制御部80は、マスキングブレード206を駆動し、照明光学系20によって照明されるレチクル30上の照明領域を着目パターンが存在する領域のみに制限する。これは、着目パターンなどの指定領域からの回折光の偏光状態を測定する場合には、かかる指定領域のみを照明することが好ましいからである。
【0064】
次に、ステップS1010において、測定部60は、着目パターン(図10に示すレチクル30の縦パターン30a)からの回折光の偏光状態を測定する。具体的には、図9に示す照明条件で図10に示すレチクル30の縦パターン30aを照明し、かかる縦パターン30aからの回折光を測定する。この際、測定部60は、ウエハステージ55を介して、縦パターン30aからの回折光を測定することができる位置に配置される。
【0065】
次いで、ステップS1012において、制御部80は、測定部60によって測定された着目パターンからの回折光の偏光状態に基づいて、回折光着目領域における偏光度を算出する。図11は、着目パターンからの回折光の偏光状態に基づいて、回折光着目領域における偏光度を算出した結果の一例を示す図である。図11を参照するに、DA及びDAは回折光着目領域であり、回折光着目領域DAにおける偏光度は0.93、回折光着目領域DAにおける偏光度は0.9と算出されている。
【0066】
次に、ステップS1014において、制御部80は、回折光着目領域における偏光度が最適な状態(本実施形態では、偏光度0.95以上)であるか、即ち、規格値を満足するかどうかを判断する。回折光着目領域における偏光度が規格値(偏光度0.95以上)を満足する場合には、ステップS1020において、レチクル30のパターンをウエハ50に露光する。
【0067】
一方、回折光着目領域における偏光度が規格値を満足しない場合には、制御部80は、ステップS1016及びS1018において、回折光着目領域における偏光度が規格値を満足するようにλ/2位相板201及び位相板203を制御する。具体的には、制御部80は、回折光着目領域における偏光度が規格値を満足するために必要なλ/2位相板201及び位相板203の補正量(即ち、/2位相板201及び位相板203の回転量、駆動量及び位置など)を算出する(ステップS1016)。次いで、制御部80は、ステップS1016で算出した補正量に基づいて、λ/2位相板201及び位相板203を制御する(ステップS1018)。なお、λ/2位相板201及び位相板203の制御が完了したら、回折光着目領域における偏光度が規格値を満足したかどうかを確認するために、ステップS1010に戻る。
【0068】
本実施形態では、ステップS1012で算出された回折光着目領域DAにおける偏光度は0.93、回折光着目領域DAにおける偏光度は0.9であるため、上記規格値を満足していない。これは、照明光学系20の瞳面以降の光学系及びレチクル30の複屈折などによって、偏光状態が変化したことが原因である。そこで、制御部80は、回折光着目領域DAにおける偏光度及び回折光着目領域DAにおける偏光度が0.95以上となるように、λ/2位相板201及び位相板203を制御する。その結果、照明光学系20の瞳面における偏光状態は、図9に示す偏光状態から崩れてしまうが、パターンの結像に寄与する回折光着目領域における偏光度は改善され、露光装置1としての偏光状態は最適な状態となる。
【0069】
なお、S1004〜S1008を行わなくとも、レチクル30を投影光学系の物体面に配置した状態において、レチクル30の任意の領域(位置)からの回折光の偏光状態を測定部60が測定することもできる。このように、露光装置1によれば、実露光条件における偏光状態を測定することが可能であり、露光装置1としての偏光状態が最適な偏光状態となるように調整することができる。
【0070】
本実施形態では、投影光学系40の瞳面の偏光状態として偏光度を例として示したが、位相情報や振幅情報を表現する他の方法を用いてもよい。例えば、偏光状態をミューラー行列として測定する場合には、光束の偏光状態をX方向の直線方向、Y方向の直線偏光、45度方向の直線偏光、円偏光の4つの状態に切り替えて測定することが好ましい。
【0071】
着目パターンの位置座標が複数ある場合(例えば、縦パターン30aがある面積を有しており、サンプリングポイントとして複数点必要な場合)には、複数の位置座標に対応する複数の回折光着目領域を算出する。そして、かかる複数の回折光着目領域における偏光度を算出し、かかる偏光度の平均値が規格値を満足するように調整すればよい。また、着目パターンは、上述したように、クリティカルパターンを設定することが好ましいが、実際の露光結果を反映して着目パターンの設定を変更できるようにしてもよい。更に、縦パターン30aを第1の着目パターンとして、横パターン30bを第2の着目パターンとして設定することも可能である。この場合、第1の着目パターンに対応する回折光着目領域の偏光度は0.95以上、第2の着目パターンに対応する回折光着目領域の偏光度は0.9以上というように、最適な偏光度(規格値)を独立して設定することも可能である。
【0072】
投影露光装置の解像度Rは、光源の波長λ、投影光学系の開口数(NA)、現像プロセスなどによって定まる定数k1を用いて次式で与えられる。
(数1)
R=k1(λ/NA)
解像度Rを向上させるためには、光源の波長λを小さくすること、投影光学系のNAを大きくすること、及び、定数k1を小さくすることが有効である。特に、偏光照明を用いるプロセスは、投影光学系のNAが0.7以上、定数k1が0.25以上0.5以下の場合に有効である。定数k1が0.25以上0.5以下である場合、投影光学系を通過する光束のうち結像に寄与する光束は、開口数(NA)に対して5割以上10割以下の領域に存在する光束となる。従って、回折光着目領域は、投影光学系40の開口数(NA)に対して5割以上10割以下の領域であることが好ましい。
【0073】
回折光着目領域が、例えば、投影光学系の開口数(NA)に対してα割以上10割以下の領域である場合には、測定部60の受光素子603を2次元画像検出素子ではなく、光量検出素子で構成することができる。この場合、投影光学系の開口数(NA)に対してα割以上10割以下の領域に存在する光束を切り出すための開口絞りをフーリエ変換レンズ602と光量検出素子との間に配置すればよい。αは、レチクル30のパターンと照明条件との組み合わせで最適値が求められるが、偏光照明においては、5割≦α≦10割であることが好ましい。
【0074】
また、レチクル30を保持する際の応力複屈折が偏光状態に与える影響を確認する場合には、レチクル上のパターンが形成されていない素抜け領域を通過した光束を測定すればよい。
【0075】
なお、露光装置1には、様々な露光条件が与えられる。例えば、露光装置1に与えられる照明条件として、図12に示すような有効光源分布及び偏光状態が与えられることもある。図12に示す有効光源分布は、照明光学系20の瞳面上で軸上に明光部LPを有するY偏光小σ照明である。また、レチクル30は、図13に示すように、Alt−PSMであり、X方向の繰り返しパターン30cが形成されているものとする。
【0076】
図12に示す照明条件で図13に示すレチクル30の繰り返しパターン30cを照明し、かかる繰り返しパターン30cからの回折光の偏光状態を測定して、回折光着目領域における偏光度を算出した結果を図14に示す。回折光着目領域DA及びDAにおける偏光度が最適な状態でない(即ち、規格値を満足しない)場合には、上述したように、回折光着目領域DA及びDAにおける偏光度が適した状態となるように照明光学系20の瞳面における偏光状態を調整する。但し、照明条件がY偏光小σ照明であるため、回折光着目領域における偏光状態はλ/2位相板201の制御のみで調整し、位相板203は照明光学系20の光路から退避させる。
【0077】
レチクル30のパターンからの回折光は、照明光(有効光源分布)によって異なるため、優れた結像性能を得るためには、結像に寄与する回折光が投影光学系40の瞳面で効率よく分布するように制御(調整)することが好ましい。露光装置1は、図15に示すように、回折光着目領域を決定することで、かかる回折光着目領域における有効光源分布(即ち、投影光学系40の瞳面における有効光源分布)を最適な状態に調整することもできる。図15は、本発明の一側面としての露光方法を説明するためのフローチャートである。照明条件の設定及びレチクル30の配置(ステップS1002)からレチクル30上の照明領域の制限(ステップS1008)までは図8に示したフローチャートと同じである。
【0078】
図15を参照するに、ステップS1010Aにおいて、測定部60は、着目パターンからの回折光を測定する。
【0079】
次いで、ステップS1012Aにおいて、制御部80は、測定部60によって測定された着目パターンからの回折光に基づいて、回折光着目領域における有効光源分布(光強度分布)を算出する。
【0080】
次に、ステップS1014Aにおいて、制御部80は、回折光着目領域における有効光源分布が適した状態であるか、即ち、規格値を満足するかどうかを判断する。回折光着目領域における有効光源分布が規格値を満足する場合には、ステップS1020において、レチクル30のパターンをウエハ50に露光する。
【0081】
一方、回折光着目領域における有効光源分布が規格値を満足しない場合には、制御部80は、ステップS1016A及びS1018Aにおいて、回折光着目領域における有効光源分布が規格値を満足するようにビーム成形光学系202を制御する。具体的には、制御部80は、回折光着目領域における有効光源分布が規格値を満足するために必要なビーム成形光学系202の補正量を算出する(ステップS1016A)。次いで、制御部80は、ステップS1016Aで算出した補正量に基づいて、ビーム成形光学系202を制御する(ステップS1018A)。なお、ビーム成形光学系202の制御が完了したら、回折光着目領域における有効光源分布が規格値を満足したかどうかを確認するために、ステップS1010Aに戻る。
【0082】
このように、露光装置1によれば、着目パターン(クリティカルパターン)に対応する回折光着目領域における有効光源分布を適した状態に調整することができる。また、図8に示すフローチャートと図15に示すフローチャートとを組み合わせることで、露光装置1は、露光装置1としての偏光状態及び有効光源分布を適した状態に調整することができる。
【0083】
次に、図16及び図17を参照して、露光装置1を利用したデバイス製造方法の実施例を説明する。図16は、デバイス(半導体デバイスや液晶デバイス)の製造を説明するためのフローチャートである。ここでは、半導体デバイスの製造を例に説明する。ステップ1(回路設計)では、デバイスの回路設計を行う。ステップ2(レチクル製作)では、設計した回路パターンを形成したレチクルを製作する。ステップ3(ウエハ製造)では、シリコンなどの材料を用いてウエハを製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は、前工程と呼ばれ、レチクルとウエハを用いてリソグラフィー技術によってウエハ上に実際の回路を形成する。ステップ5(組み立て)は、後工程と呼ばれ、ステップ4によって作成されたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)では、ステップ5で作成された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テストなどの検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ7)される。
【0084】
図17は、ステップ4のウエハプロセスの詳細なフローチャートである。ステップ11(酸化)では、ウエハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)では、ウエハの表面に絶縁膜を形成する。ステップ13(電極形成)では、ウエハ上に電極を蒸着などによって形成する。ステップ14(イオン打ち込み)では、ウエハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)では、ウエハに感光剤を塗布する。ステップ16(露光)では、露光装置1によってレチクルの回路パターンをウエハに露光する。ステップ17(現像)では、露光したウエハを現像する。ステップ18(エッチング)では、現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)では、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行うことによってウエハ上に多重の回路パターンが形成される。かかるデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。このように、露光装置1を使用するデバイス製造方法、並びに結果物としてのデバイスも本発明の一側面を構成する。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、レチクルは、ウエハにパターンを転写するための実レチクル(デバイスの回路パターンが描画されたレチクル)以外であってもよく、露光装置の露光性能を検査するためのテストレチクルやダミーレチクルにも本発明を適用することができる。その場合、実レチクルを用いて露光処理を行うときには、実レチクルのパターンに類似したパターンを有する代表的なレチクルを選択し、光源からの光が、選択されたレチクルを使用する際に適した偏光状態に調整される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一側面としての露光装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】図1に示す露光装置のビーム成形光学系によって形成される有効光源分布の一例を示す図である。
【図3】図1に示す露光装置の位相板の前後における光束の偏光状態を示す図である。
【図4】図1に示す露光装置の位相板の進相軸方向と有効光源分布の偏光状態との関係を示す図である。
【図5】図1に示す露光装置の位相板の位相差と有効光源分布の偏光状態との関係を示す図である。
【図6】図1に示す露光装置の照明光学系の瞳面における偏光状態の一例を示す図である。
【図7】図1に示す露光装置の測定部の構成の一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の一側面としての調整方法及び露光方法を説明するためのフローチャートである。
【図9】図1に示す露光装置に与えられる照明条件(有効光源分布及び偏光状態)の一例を示す図である。
【図10】図1に示す露光装置において使用されるレチクルの一例を示す図である。
【図11】着目パターンからの回折光の偏光状態に基づいて、回折光着目領域における偏光度を算出した結果の一例を示す図である。
【図12】図1に示す露光装置に与えられる照明条件(有効光源分布及び偏光状態)の一例を示す図である。
【図13】図1に示す露光装置において使用されるレチクルの一例を示す図である。
【図14】着目パターンからの回折光の偏光状態に基づいて、回折光着目領域における偏光度を算出した結果の一例を示す図である。
【図15】本発明の一側面としての露光方法を説明するためのフローチャートである。
【図16】デバイスの製造を説明するためのフローチャートである。
【図17】図16に示すステップ4のウエハプロセスの詳細なフローチャートである。
【符号の説明】
【0087】
1 露光装置
10 光源
20 照明光学系
201 λ/2位相板
202 ビーム成形光学系
203 位相板
204 ハエの目レンズ
205 コンデンサレンズ
206 マスキングブレード
207及び209 コンデンサレンズ
208 折り曲げミラー
30 レチクル
35 レチクルステージ
32 レチクル情報
40 投影光学系
50 ウエハ
55 ウエハステージ
60 測定部
601 ピンホール板
601a ピンホール
602 フーリエ変換レンズ
603 受光素子
604 位相子
605 偏光素子
70 読取部
80 制御部
90 決定部
92 入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光学系を用いて原版を照明し、投影光学系を介して前記原版のパターンの像を基板に投影する際の、照明条件を調整する調整方法において、
前記原版のパターンのうち対象領域を決定するステップと、
前記投影光学系の物体面に前記原版が配置された状態において、前記照明光学系と前記原版の前記対象領域と前記投影光学系とを通過した、前記投影光学系の像面における光の偏光状態および角度分布を測定する測定ステップと、
前記測定ステップにおける測定結果に基づいて、前記光の偏光状態および光強度分布を調整する調整ステップと、
を有することを特徴とする調整方法。
【請求項2】
前記調整ステップにおいて、前記原版のパターンに対応して、前記光の偏光状態および角度分布を調整することを特徴とする請求項1に記載の調整方法。
【請求項3】
請求項1に記載された調整方法を用いて、前記光の偏光状態および角度分布を調整する調整ステップと、
前記調整ステップの後、前記原版のパターンの像を前記基板に投影露光する露光ステップと、
を有することを特徴とする露光方法。
【請求項4】
請求項3に記載された露光方法を用いて、基板を露光する露光ステップと、
露光された基板を現像する現像ステップと、
を有することを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項5】
光源からの光を用いて原版を照明する照明光学系と、前記原版のパターンの像を基板に投影する投影光学系とを備える露光装置であって、
前記照明光学系の瞳面における光強度分布を形成する光強度形成部と、
前記光源からの光の偏光状態を変換する偏光変換部と、
前記原版のパターンのうち対象領域を決定する決定部と、
前記投影光学系の像面における光の偏光状態および角度分布を測定する測定部と、
前記測定部による測定結果に基づいて、前記光強度形成部および前記偏光変換部を制御する制御部とを有し、
前記測定部は、前記投影光学系の物体面に前記原版が配置された状態において、前記照明光学系と前記原版の前記対象領域と前記投影光学系とを通過した光の偏光状態および角度分布を測定することを特徴とする露光装置。
【請求項6】
前記原版のパターンの情報を示す原版情報を読み取る読取部を更に有し、
前記決定部は、前記読取部が読み取った原版情報に基づいて、前記対象領域を決定することを特徴とする請求項5記載の露光装置。
【請求項7】
前記原版情報は、前記対象領域を決定するための着目パターンが形成されている位置座標、前記着目パターンの寸法及び前記着目パターンの位相情報の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項5記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−33046(P2009−33046A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197850(P2007−197850)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】