説明

調湿材及びその製造方法

【課題】無酸素囲気中にて、撹拌しながら炭化される炭化装置によって炭化されたもみ殻炭、あるいは杉炭を使用して作製された調湿効果の高い調湿材を提供する。
【解決手段】無酸素囲気中にて、撹拌しながら300℃〜700℃にて炭化される炭化装置にて炭化し、もみ殻炭または杉炭を主成分とする調湿材を製造できる。また、本調湿材を不織布袋に充填し床下または天井裏の湿度の調湿用として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調湿材に関し、特に、無酸素雰囲気中にて攪拌しながら炭化される炭化装置によって炭化された炭化物を主成分とする調湿材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の調湿材に関しては、例えば、特許文献1に記載されている。
特許文献1には、炭化した桐材を用いた調湿材について記載されている。この調湿材を家具類に応用した例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−56988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の調湿材に用いられる炭化物は、バッチ式の炭化炉によって炭化された炭化物であって、賦活工程などを行わなければ比表面積が小さく、また炭化時に素材の天然構造を壊してしまうことから細孔容積も小さい。従って、湿度の吸収及び放出力も弱く、一定の調湿能力に留まっていた。
【0005】
本発明の課題は、無酸素雰囲気で撹拌を加えながら炭化される炭化装置によって炭化されたもみ殻炭、あるいは杉炭を使用して作製された調湿効果の高い調湿材及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の調湿材に使用される、もみ殻炭、あるいは杉炭は、被炭化物を、無酸素雰囲気中で、攪拌しながら炭化される炭化装置にて炭化され、調湿効果が高いことを特徴とする。
【0007】
請求項1に係る発明は、無酸素囲気中にて、撹拌しながら炭化される炭化装置にて炭化されたもみ殻炭を主成分とすることを特徴とする調湿材である。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記もみ殻炭が、炭化される温度条件が、300℃〜700℃であることを特徴とする請求項1記載の調湿材である。
【0009】
請求項3に係る発明は、無酸素囲気中にて、撹拌しながら炭化される炭化装置にて炭化された杉炭を主成分とすることを特徴とする調湿材である。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記杉炭が、炭化される温度条件が、300℃〜700℃であることを特徴とする請求項3記載の調湿材である。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記調湿材が、床下及び天井裏の調湿用として、不織布袋に充填されたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の調湿材である。
【0012】
請求項6に係る発明は、もみ殻を、無酸素囲気中にて、撹拌しながら、300℃〜700℃の範囲の温度にて炭化し、炭化したもみ殻炭を不織布袋に充填することを特徴とする調湿材の製造方法である。
【0013】
請求項7に係る発明は、杉を、無酸素囲気中にて、撹拌しながら、300℃〜700℃の範囲の温度にて炭化し、炭化した杉炭を不織布袋に充填することを特徴とする調湿材の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、2に係る調湿材によれば、無酸素囲気中にて、撹拌しながら炭化される炭化される炭化装置によって炭化されたもみ殻炭を使用して作製された調湿効果の高い調湿材を提供することができる。
【0015】
請求項3,4に係る調湿材によれば、無酸素囲気中にて、撹拌しながら炭化される炭化される炭化装置によって炭化された杉炭を使用して作製された吸湿効果の高い調湿材を提供することができる。
【0016】
請求項5に係る調湿材によれば、床下及び天井裏の調湿用として優れた調湿材を提供することができる。
【0017】
請求項6係る調湿材の製造方法によれば、もみ殻炭を使用した調湿効果の高い調湿材の製造方法を提供することができる。
【0018】
請求項7係る調湿材の製造方法によれば、杉炭を使用した調湿効果の高い調湿材の製造方法を提供することができる。
【0019】
本発明によれば、無酸素囲気中にて、撹拌しながら炭化される炭化される炭化装置によって炭化されたもみ殻炭、あるいは杉炭を使用して作製された調湿効果の高い調湿材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のSUMIXもみ殻炭を、内寸150×150mmの不織布袋に充填する前の状態の写真である。
【図2】本発明のSUMIX杉炭を、内寸150×150mmの調湿炭用不織布袋に充填する前の状態の写真である。
【図3】本発明による調湿材の試験試料と、比較試料との外観の写真である。
【図4】本発明による調湿材の試験試料と、比較試料との湿度50%⇒75%⇒50%での吸放湿量のデータである。
【図5】本発明による調湿材の試験試料と、比較試料との湿度50%⇒90%⇒50%での吸放湿量のデータである。
【図6】本発明による調湿材の試験試料と、比較試料との中湿気域と高湿気域の吸収量の比較である。
【図7】本発明の調湿材に使用されるもみ殻炭あるいは、杉炭を炭化するための、炭化装置の1例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の調湿材に使用される炭化物である、もみ殻炭あるいは、杉炭は、無酸素囲気中にて、撹拌しながら炭化される炭化装置にて炭化されることを特徴としている。
使用する炭化装置としては、被炭化物が、無酸素雰囲気中にて炭化される炭化装置であれば、その形式は問わない。
【0022】
炭化装置の一例としては、図7に本発明のもみ殻、あるいは杉を炭化するための、炭化装置の1例の構成図を示した。図7に示すように、本発明で使用される炭化装置(還元炭化処理装置)は、内部に螺旋羽と攪拌羽1を配置した回転する一つのキルン2と、この一つのキルン2の内部に投入された廃棄物を含む有機物等を無酸素雰囲気の還元状態で間接加熱しつつ有機物等に蓄熱して一つのキルン2の内部全体に熱を供給する燃焼室3と、燃焼室3内に臨むバーナー等の加熱源4と、キルン2の内部に投入された有機物等に含まれる水分を燃焼室3の間接加熱によって蒸発させるようにキルン2の内部にエリア設定された乾燥部2aと、乾燥部2aで乾燥処理された有機物等を間接加熱分解させることで炭化させるようにキルン2の内部にエリア設定された炭化部2bと、を備えている。
本装置は還元滅菌炭化加工機SUMIX(株式会社ガイア環境技術研究所製)と称し、本装置によって製造される炭化物を以後SUMIX炭と称する。もみ殻炭に関しては、SUMIXもみ殻炭と称し、杉炭に関しては、SUMIX杉炭と称する。
【実施例】
【0023】
本発明の調湿材の実施例について、以下説明する。
(試料)
SUMIX炭を内寸150×150mmの不織布袋(株式会社アサクラ製 トレスロンマルチHI)に充填(充填量は任意)、シールし、試料とした。比較試料は、販売・見本品をそのまま使用した。
市販床下調湿材の原料が針葉樹の廃材であることを加味し、もみ殻炭との比較にはSUMIXにて同温度で炭化した杉炭を選択した。
【0024】
図1は、本発明のSUMIXもみ殻炭を、内寸150×150mmの床下調湿炭用不織布袋に充填する前の状態の写真である。
図2は、本発明のSUMIX杉炭を、内寸150×150mmの床下調湿炭用不織布袋に充填する前の状態の写真である。
図3は、本発明による調湿材の試験試料と、比較試料との外観の写真である。
【0025】
表1は、試験試料の一覧表である。
【表1】

【0026】
(試験方法)
・前処理
超低温恒温恒湿器を用い、23℃・湿度50%の条件で48h前処理を行った。
・設定湿度と測定
23℃・50%・48h(前処理:零点)→75%・24h→50%・24h→90%・24h→50%・24h の5点について、各試料を電子天秤(測定精度0.01mg)により測定した。
【0027】
・測定結果1
図4は、本実施例による調湿材の試験試料と、比較試料との湿度50%⇒75%⇒50%での吸放湿量のデータである。
測定条件は、中湿気域での吸放湿量(50%・48時間前処理時を0としてスタートし、
前処理時生データを100gあたりの吸放湿量(g)に換算した。
【0028】
・測定結果2
図5は、本発明による調湿材の試験試料と、比較試料との湿度50%⇒90%⇒50%での吸放湿量のデータである。
測定条件は、高湿気域での吸放湿量(50%・24時間前処理時を0としてスタート)
【0029】
表2に、各種調湿材の、中湿気域と高湿気域の性能比較を示す。
【表2】

【0030】
(考察)
・SUMIXもみ殻炭について
SUMIXもみ殻炭500℃に関して、市販床下調湿材と同等以上の吸放湿気性能が確認された。特に床下調湿用として期待される高湿条件での性能は非常に高い。本試験結果から、SUMIXもみ殻炭は床下調湿材としての性能を充分に満たすものと結論する。
製品化への障壁は比較的低く、原材料・製造コストの面からも強い競争力を有すると思われるので、早期の製品化が期待できる。
・SUMIX杉炭について
高湿気域での性能において、SUMIX杉チップ炭は市販の調湿材の2〜3倍もの性能を有することが判明した。市販の調湿材の原料が針葉樹の廃材であることから、SUMIXによる炭化が、素材に対して調湿性に優れた特性を付与するものと推定できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の調湿材は、もみ殻炭、あるいは杉炭の調湿効果を利用した各種の用途、例えば床下や天井裏の調湿、畳の下、その他の用途に使用することができる。使用する形体は、不織布袋に充填し、シールする形体、あるいは、その他形体でも良い。
【符号の説明】
【0032】
2…キルン
2a 乾燥部
2b 炭化部
2d 蓄熱部
2c 内部空間
2in 入口
2out 出口
3…燃焼室
3a…排気管
4…加熱源
5…配管部
6…冷却部
7…脱臭部
8…乾留ガス回収部
9…補助加熱源
10…蒸気煙経路
11…油化部
12…配水管
13…ファン
14…ホッパ
15…原料供給配管
16…供給スクリュー
17…第2排出配管
18…冷却装置
19…接続管(下流側排ガス管)
19a 下流側排ガス管上管
19b 下流側排ガス管下管
20…搬送スクリュー
21…搬送スクリュー
22…蒸気抜きパイプ(上流側排ガス管)
22a 上流側排ガス管上管
22b 上流側排ガス管下管
23 煙突部
24 循環管
25 ガス抜きパイプ
30 接続部
60 回収部
P 投入素材
Q 炭化された素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無酸素囲気中にて、撹拌しながら炭化される炭化装置にて炭化されたもみ殻炭を主成分とすることを特徴とする調湿材。
【請求項2】
前記もみ殻炭は、炭化される温度条件が、300℃〜700℃であることを特徴とする請求項1記載の調湿材。
【請求項3】
無酸素囲気中にて、撹拌しながら炭化される炭化装置にて炭化された杉炭を主成分とすることを特徴とする調湿材。
【請求項4】
前記杉炭は、炭化される温度条件が、300℃〜700℃であることを特徴とする請求項3記載の調湿材。
【請求項5】
前記調湿材は、床下または天井裏の湿度の調湿用として、不織布袋に充填されたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の調湿材。
【請求項6】
もみ殻を、無酸素囲気中にて、撹拌しながら、300℃〜700℃の範囲の温度にて炭化し、炭化したもみ殻炭を不織布袋に充填することを特徴とする調湿材の製造方法。
【請求項7】
杉を、無酸素囲気中にて、撹拌しながら、300℃〜700℃の範囲の温度にて炭化し、炭化した杉炭を不織布袋に充填することを特徴とする調湿材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−187548(P2012−187548A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54721(P2011−54721)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(508314283)株式会社ガイア環境技術研究所 (5)
【Fターム(参考)】