説明

負極集電体用金属箔

【課題】より低い抵抗値を実現できる負極集電体用の金属箔を提供する。
【解決手段】箔表面から裏面に至る貫通孔を複数有し、当該貫通孔の密度が1000個/cm以上である領域を有し、貫通孔の平均内径が100μm以下で、開口率が30%以下であり、2.0>[箔厚み(μm)/開口率(%)]>0.25である負極集電体用金属箔に係る。又貫通孔の密度が1000個/cm未満である領域をさらに含み、貫通孔の密度が1000個/cm以上である領域の面積が100mm2以上である負極集電体用金属箔に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な負極集電体用金属箔に関する。より具体的には、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等の集電体として用いられる負極集電体用貫通箔に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等の正極集電体としてはアルミニウム、ステンレス鋼等が使用され、負極集電体としてはステンレス鋼、銅、ニッケル等が使用されている。
【0003】
ところで、これらリチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等のエネルギー密度を向上させるためにはより高い電圧が必要とされている。エネルギー密度を高めるためには、プレドープ技術を利用し、負極電位を下げることが好ましい。そして、プレドープを効率良く行うためには、集電体に貫通孔を設けることが必要である。すなわち、集電体の貫通孔を通じてリチウムイオンを可逆的に移動可能とすることにより負極活物質にリチウムイオンを担持することができる。
【0004】
貫通孔を有する集電体の作製方法として、例えばパンチング加工、メッシュ加工、エキスパンド加工、網加工等が知られているが、これらの方法で形成される貫通孔の大きさは一般的に0.1〜0.3mm程度である(特許文献1)。ところが、貫通孔を設けるとそれだけ集電体の強度が低下することになり、前記のような比較的大きな孔径では強度低下の問題がより大きくなる。
【0005】
これに対し、比較的微細な貫通孔を有する集電体を用いる電極等が提案されている。例えば、リチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質からなる正極とリチウムイオンを可逆的に担持可能な物質からなる負極を備えており、かつ、電解液としてリチウム塩の非プロトン性有機溶媒電解質溶液を備えたリチウムイオンキャパシタであって、(1)負極及び/又は正極とリチウムイオン供給源との電気化学的接触によってリチウムイオンが負極及び/又は正極にドーピングされ、(2)正極と負極を短絡させた後の正極の電位が2.0V以下であり、(3)前記正極及び/又は負極が、表裏面を貫通する多数の孔を有し、かつこれらの貫通孔の内接円の平均直径が100μm以下である金属箔からなる集電体を有することを特徴とするリチウムイオンキャパシタが知られている(特許文献2)。
【0006】
また、上記のようなリチウムイオンキャパシタに使用される正極集電体として、厚さが20〜45μm及び見掛密度が2.00〜2.54g/cmで、透気度20〜120sの表裏面を貫通する多数の貫通孔を有するアルミニウムエッチング箔よりなる集電体と、前記貫通孔の80%以上が孔径1〜30μmである集電体が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−103314
【特許文献2】国際公開WO2008/078777
【特許文献3】特開2009−62595
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の負極集電体を用いた電極では、電極としての抵抗(内部抵抗)が比較的高く、電池等としての充放電特性に悪影響を及ぼすおそれがある。電極の抵抗値が高くなる原因としては、集電体における貫通孔の分布状態、集電体と活物質との密着性等が原因となることから、これらの特性を改善する必要がある。
【0009】
従って、本発明の主な目的は、より低い抵抗値を実現できる負極集電体用の金属箔を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、貫通孔の分布を特定範囲に制御することより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の負極集電体用金属箔に係る。
1. 箔表面から裏面に至る貫通孔を複数有し、当該貫通孔の密度が1000個/cm以上である領域を有する負極集電体用金属箔。
2. 貫通孔の平均内径が100μm以下である、前記項1に記載の負極集電体用金属箔。
3. 開口率が30%以下である、前記項1又は2に記載の負極集電体用金属箔。
4. 2.0>[箔厚み(μm)/開口率(%)]>0.25である、前記項1〜3のいずれかに記載の負極集電体用金属箔。
5. 貫通孔の密度が1000個/cm未満である領域をさらに含む、前記項1〜4のいずれかに記載の負極集電体用金属箔。
6. 貫通孔の密度が1000個/cm以上である領域の面積が100mm以上である、前記項1〜5のいずれかに記載の負極集電体用金属箔。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、貫通孔の分布を特定範囲内に制御することにより、これを電極用に用いた場合は、従来品よりも低い抵抗値を実現することができる。
【0013】
このような負極集電体用金属箔は、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等の集電体として好適に用いることができる。とりわけ、リチウムイオンキャパシタ又はリチウムイオン二次電池が、1)リチウムイオン及び/又はアニオンを可逆的に担持可能な物質からなる正極、2)リチウムイオンを可逆的に担持可能な物質からなる負極及び3)リチウムイオンを含む電解質溶液を含み、かつ、リチウムイオンが正極及び/又は負極にドーピングされるものの負極集電体として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明金属箔を製造する工程例を示す図である。
【図2】貫通孔を有する金属箔の断面を示す模式図である。
【図3】本発明金属箔において、貫通孔領域と支持領域とのパターン例を示す図である。
【図4】図4(a)は、実施例で作製した金属箔の貫通孔領域と支持領域とのパターン例を示す図である。図4(b)は、形成される貫通孔の間隔を示す図である。
【図5】試験例2で構成した電池の概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.負極集電体用金属箔
本発明の負極集電体用金属箔(本発明金属箔)は、箔表面から裏面に至る貫通孔を複数有し、当該貫通孔の密度が1000個/cm以上である領域(貫通孔領域)を有することを特徴とする。すなわち、本発明金属箔は、任意の箇所の1cmの領域において、箔表面から裏面に至る貫通孔を複数有し、当該貫通孔の密度が1000個/cm以上であることを特徴とするものである。
【0016】
本発明金属箔で用いる金属としては、公知の電池の負極集電体として使用されているものと同様の材料(金属箔)を用いることができる。例えば、銅、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム及びこれらの少なくとも1種を含む合金を好適に用いることができる。この中でも、負極集電体としての電気化学的特性の点から銅を用いることが好ましい。銅を用いる場合は、圧延銅箔、電解銅箔等のいずれも用いることができる。
【0017】
また、金属箔の厚みは限定的ではないが、一般的には3〜100μmの範囲内において、用いる金属箔の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、金属箔として銅箔を用いる場合は、8〜25μmとすることがより好ましい。
【0018】
本発明では、貫通孔は、図2に示すように、金属箔10の表面11から裏面12に貫通する孔13である。
【0019】
貫通孔の密度は、上記の通り1000個/cm以上とし、好ましくは1500〜30000個/cmとし、より好ましくは2000〜20000個/cmとする。貫通孔の密度を上記範囲に設定することによって、貫通孔間の距離が小さくなり、イオンがより通過しやすくなる結果、低い抵抗値の実現に寄与することができる。
【0020】
貫通孔の大きさも特に限定されないが、平均内径が100μm以下、特に90μm以下とすることが好ましい。平均内径を上記範囲に設定することにより、本発明金属箔に活物質(スラリー)を塗工する場合には、塗膜の厚みをより均一に制御することが可能となる。なお、本発明では、貫通孔の平均内径は、貫通孔を円形と仮定してその平均面積から算出した径とした。
【0021】
本発明金属箔における開口率は、一般的には40%以下、特に30%以下とすることが望ましい。従来技術では、イオンが集電体をより通過しやすくするため、開口率をより高く設定していたが、箔強度が低下するだけでなく、活物質を均一に塗工しにくく、貫通孔部分にある活物質が塗工後乾燥時に収縮し、活物質の剥がれや割れが生じやすい。これに対し、本発明金属箔では、開口率を上記範囲に設定することによって、より高い箔強度を維持することができる。なお、本発明において、開口率は、金属箔の表面において、貫通孔を有する領域全体に対して各開口部の合計の面積が占める割合である。
【0022】
また、本発明では、本発明金属箔における箔厚み及び開口率が、
2.0 > [箔厚み(μm)/開口率(%)]>0.25
の関係にあることが望ましい。特に、1.8≧[箔厚み(μm)/開口率(%)]≧0.27であることがより望ましい。上記値が0.25以下になると、強度が著しく低下するおそれがある。また、2.0以上ではプレドープ時間が長くなる等の問題が生じることがある。
【0023】
本発明金属箔は、貫通孔領域以外の領域を含んでいても良い。すなわち、貫通孔の密度が1000個/cm未満(好ましくは500個/cm以下、より好ましくは100個/cm以下、最も好ましくは0個/cm)の領域(以下「支持領域」ともいう。)を含んでいても良い。支持領域を含む場合は、支持領域が貫通孔領域を支持する役割を果たすため、金属箔全体の強度をより効果的に維持することができる。
【0024】
支持領域の面積及びパターンは、例えば本発明金属箔の厚み、材質、用途等に応じて適宜設定することができる。例えば、図3に示すように、1)矩形状の貫通孔領域の周囲を支持領域とするパターン、2)矩形状の貫通孔領域の片側部を支持領域とするパターン、3)矩形状の貫通孔領域の両側部を支持領域とするパターン、4)ストライプ状に貫通孔領域と支持領域を交互に形成するパターン等を挙げることができる。この場合の貫通孔領域と支持領域との面積比率は限定的でなく、所望の電池特性等に応じて適宜設定すれば良い。特に、本発明では、貫通孔領域の総面積が通常100mm以上とすることが望ましい。
【0025】
2.負極集電体用金属箔の製造方法
本発明金属箔は、貫通孔の密度等を所定範囲に制御することのほかは、公知の方法に従って製造することができる。例えば、所定の厚みを有する金属箔をエッチング処理することにより本発明金属箔を得ることができる。
【0026】
エッチング処理の方法としては、例えば1)金属箔の表面上にフォトレジスト膜を形成する工程(フォトレジスト膜形成工程)、2)フォトマスクを介してUV光をフォトレジスト膜に露光させる工程(露光工程)、3)現像によりフォトレジスト膜の所定のパターン部分を除去する工程(現像工程)、4)エッチングにより金属箔に貫通孔を形成する工程(エッチング工程)、5)残ったフォトレジスト膜を除去する工程(剥離工程)を含む方法を好適に採用することができる。
【0027】
以下、上記方法について、図1に基づいて説明する。図1は、この発明の製造方法の一つの実施の形態によって集電体用金属箔に貫通孔を形成する工程を順に示す模式的な断面図である。
【0028】
金属箔
まず、図1の「1、材料」に示されているように、貫通孔を形成するための金属箔を用意する。金属箔としては、酸又はアルカリでエッチング可能であり、かつ、二次電池用集電材として使用可能なものであれば特に限定されない。このような金属箔としては、一般にアルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔、ステンレス鋼箔、ニッケル箔等の金属箔を用いることができる。金属箔の厚みは限定的ではないが、一般に3〜100μm、好ましくは8〜50μmとすれば良い。金属箔の厚みが3μm未満では、金属箔の強度が極めて弱くなり、集電体の製造工程中において破断しやすい。また、金属箔の厚みが100μmを超えると、最終製品としての二次電池の重量が増加する。
【0029】
また、1種の金属箔又は合金箔だけでなく、同種の金属又は合金からなるクラッド箔を採用することもできる。金属箔としてアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔を用いる場合、アルミニウム又はアルミニウム合金の成分は、二次電池の電解質の種類に応じて、純アルミニウム(JIS 1000系)、アルミニウム−マンガン(Al−Mn)系合金(JIS 3000系)、アルミニウム−マグネシウム(Al−Mg)系合金(JIS 5000系)、アルミニウム−鉄(Al−Fe)系合金(JIS 8000系)等から適宜選択することができる。
【0030】
フォトレジスト膜形成工程
次に、図1の「2、レジストコーティング」に示すフォトレジスト膜形成工程において、金属箔の表面上にフォトレジスト膜を形成する。フォトレジスト膜の形成は、公知の方法に従って実施すれば良く、例えば1)合成樹脂の溶液又は分散液を金属箔に印刷又は塗布する方法、2)合成樹脂の溶液又は分散液に金属箔に浸漬する方法、3)予め形成された合成樹脂フィルムを金属箔に積層する方法等を採用することができる。印刷方法を採用する場合は、例えばグラビア印刷、転写印刷、スクリーン印刷等の各種の方法を採用することができる。また、前記のように、合成樹脂の溶液又は分散液を用いる場合は、通常は30〜150℃で10秒〜10分程度の乾燥を行えば良い。
【0031】
合成樹脂としては、フォトレジスト膜として知られている合成樹脂を採用することができる。例えば、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等を用いることができる。本発明では、アクリル樹脂を好適に用いることができる。より具体的には、アクリル樹脂製のネガ型のレジストが好適に使用される。
【0032】
金属箔上に形成するフォトレジスト膜の厚みは、用いる合成樹脂の種類等に応じて適宜設定できるが、一般的には1〜50μm程度とすれば良い。
【0033】
フォトレジスト膜の形成は、金属箔の片面又は両面のいずれであっても良い。特に、本発明では、金属箔の両面の表面上にフォトレジスト膜を形成することが好ましい。すなわち、図1に示すように両面にすれば、裏面全面にUV光を照射することにより裏面のフォトレジスト膜全面を硬化させることができ、これにより貫通孔のピッチを安定させることができる。
【0034】
露光工程
図1の「3、露光」に示す露光工程において、フォトマスクを介してUV光をフォトレジスト膜に露光させる。UV光の露光時間(照射時間)及び強度は、公知の方法にならって設定すれば良い。フォトマスクは、片面又は両面のいずれでも適用できるが、貫通孔のピッチが安定すること、設備の簡略化等の観点より、フォトマスクは片面とすることが好ましい。すなわち、金属箔の一方の面上のフォトレジスト膜にフォトマスクを介してUV光をフォトレジスト膜に露光させ、金属箔の他方の面上のフォトレジスト膜全面UV光を露光させることが好ましい。これにより、裏面は、フォトマスクなしで裏面全面にUV光を照射することにより裏面のフォトレジスト膜全面を硬化させることができる。
【0035】
露光方法及びフォトマスクの方法は、公知の露光装置(フォトプロッター等)で設定されている条件に従って、所望のパターンを作成して実施すれば良い。図1の「3、露光」に示されているように、所定の貫通孔を形成できるように一定の間隔でフォトマスクを装置上で行い、所定の強度のUV光(紫外線)を一定時間照射すれば良い。UV光の強度も、フォトレジスト膜の厚みに応じて適宜設定することができる。例えば、フォトレジスト膜の厚みが5μm程度であれば、50mj/cm程度で調整すれば良い。
【0036】
現像工程
図1の「4、現像」で示される現像工程において、現像によりフォトレジスト膜の所定のパターン部分を除去する。現像方法は公知の方法と同様にすれば良い。フォトレジスト膜の除去も公知の現像方法に従えば良い。例えば、NaCO(炭酸ソーダ)の1%水溶液(液温30℃)に1分程度浸漬することにより、フォトレジスト膜の除去を行うことができる。
【0037】
エッチング工程
図1の「5、エッチング」で示すエッチング工程において、エッチングにより金属箔に貫通孔を形成する。すなわち、エッチング液に浸漬することにより、現像工程で露出した部分の金属成分を溶出させることにより貫通孔を形成する。エッチング液としては、例えば硫酸、燐酸、クロム酸、硝酸、フッ酸、酢酸、苛性ソーダ、塩化第二鉄、塩化第二銅、過塩素酸等の単独の溶液(又は水溶液)、あるいはこれらの混合溶液を使用することができる。本発明では、水等の溶媒を用いて適当に上記の溶液を希釈してエッチング液として使用しても良い。
【0038】
エッチングの条件は、公知のエッチング方法に従って実施すれば良い。例えば、液温は25〜60℃程度とすれば良く、処理時間は10秒〜5分程度とすれば良い。
【0039】
剥離工程
剥離工程において、残ったフォトレジスト膜を除去する。フォトレジスト膜の除去は、例えば弱アルカリ性水溶液等を使用して行うことができる。弱アルカリ性水溶液としては、例えば水酸化ナトリウムの水溶液を用いることができる。また、本発明では、フォトレジスト膜を除去した後、必要に応じて金属箔を乾燥等の処理を実施しても良い。
【0040】
以上のようにして得られた本発明金属箔は、必要に応じてコイル状に巻き取って製品とすることができる。その後、本発明金属箔は、必要に応じて適当な大きさに切断され、活物質を塗布加工する工程に供給することができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0042】
なお、各物性の測定方法は、次のようにして実施した。
(1)貫通孔の密度
表面をそのままマイクロスコープ(キーエンス製)で観察し、計測した。
(2)開口率
上記マイクロスコープにより取り込んだ画像(貫通孔を視野中に10個以上含むこと、含まない場合は10個以上含むように倍率を変更して撮影)を付属の画像処理ソフトにより2値化した後、貫通孔部分の面積率を測定し開口率とした。
(3)貫通孔の平均内径
前記(2)と同様の方法にて無作為に10視野の写真を撮影し、画像解析して貫通孔数及び総貫通孔面積を計測し、各貫通孔を同一円形と仮定して貫通孔の内径を算出する。画像解析装置としては、多目的高速画像解析装置「PCA11」(システムサイエンス株式会社製)を用いた。
【0043】
実施例1
金属箔として、厚み10μm、巾300mm、長さ250mのコイル状の巻き取り品である電解銅箔をネガ型のアクリル樹脂製フォトレジスト溶液にてディップコートを行い、両面に各5μmの塗工を行った後、80℃で乾燥を行った。フォトプロッターにより図4に示すパターンを描画したフォトマスクを通して、片面にUV光を100mj/cm照射し、もう一方の面にはフォトマスクをせず、全面に上記UV光の照射を行った。現像工程として、フォトマスク部分のフォトレジストを溶解させるため、炭酸ソーダ溶液に浸漬しフォトレジストを除去した。得られた材料を液温50℃の塩化第二銅に浸漬して金属箔のエッチングを行った。このときの浸漬時間は30秒とした。エッチングを実施した後、水酸化ナトリウム(NaOH)溶液に浸漬してフォトレジスト層を剥離した。防錆処理と洗浄と乾燥を行った。このようにして、負極集電体用金属箔を得た。
【0044】
比較例1
図4(b)のパターンで、貫通孔の密度及び貫通孔の平均内径を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして作製した。
【0045】
試験例1
実施例1及び比較例1で得られた負極集電体用金属箔について、貫通孔の密度等について調べた。その結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
試験例2
実施例1及び比較例1で得られた負極集電体用金属箔を用い、得られた集電体用金属箔について、エッチング開始後約5mの部分と約900mの部分を長さ方向に約50cm切り出し、カーボン粒子からなる活物質を含むスラリーを塗布し、10cm×20cmの大きさに切断して負極を作製した。その際、上記スラリーを塗布する工程での塗工特性を確認した。次いで、国際公開WO2008/078777の記載に従って、図5に示すような電池を構成し、容量(mAh)及び内部抵抗(mΩ)について調べた。その結果を表2に示す。なお、図5の電池において、電解液:有機系LIC用電解液、電極構造:積層セル ラミネートタイプとした。
【0048】
【表2】

【0049】
なお、表2に示す物性は、それぞれ次のようにして測定した。
(1)容量(mAh)
上記セルを充放電試験し、放電時間により容量値を算出した。電流53mA/cmで放電し、電圧が3.8Vから2.2Vになるまでの放電時間に電流値をかけて容量を算出した。
(2)内部抵抗(mΩ)
上記試験において、充放電切り替え時に起こる電圧降下(IRドロップ)の値と放電電流の値からオームの法則を用いて算出した。
(3)塗工特性
負極活物質を含む電極塗工液を貫通孔を有するCu集電体に、ダイコーターにて両面塗工(片側20μm)した。塗工後の検査にて目抜けチェック(10m)及び表面模様(塗工厚みの差により発生)の発生チェックを行った。目視にて目抜け及び表面模様が認められた場合は「×」、それらが認められなかった場合は「○」と評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箔表面から裏面に至る貫通孔を複数有し、当該貫通孔の密度が1000個/cm以上である領域を有する負極集電体用金属箔。
【請求項2】
貫通孔の平均内径が100μm以下である、請求項1に記載の負極集電体用金属箔。
【請求項3】
開口率が30%以下である、請求項1又は2に記載の負極集電体用金属箔。
【請求項4】
2.0>[箔厚み(μm)/開口率(%)]>0.25である、請求項1〜3のいずれかに記載の負極集電体用金属箔。
【請求項5】
貫通孔の密度が1000個/cm未満である領域をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の負極集電体用金属箔。
【請求項6】
貫通孔の密度が1000個/cm以上である領域の面積が100mm以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の負極集電体用金属箔。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−216364(P2011−216364A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84114(P2010−84114)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】