説明

貼付剤

【課題】 本発明は、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、酢酸dl−α−トコフェロール及びパルミチン酸レチノールの安定性に優れており取扱性にも優れた貼付剤を提供する。
【解決手段】 本発明の貼付剤は、支持体の一面に膏体層が積層一体化されてなる貼付剤であって、上記膏体層は、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、酢酸dl−α−トコフェロール、パルミチン酸レチノール、クワエキス、甘草フラボノイド、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、可塑剤及び粘着力調整剤を含有する組成物からなり、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル成分を70〜95重量%含有し、且つ、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル以外の、アルキル基の炭素数が6以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分を5〜30重量%含有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酸化脂質抑制作用や美白作用などを有するリン酸L−アスコルビルマグネシウムに加え、酢酸dl−α−トコフェロール、パルミチン酸レチノール、クワエキス、甘草フラボノイドを含有してなる貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸L−アスコルビルマグネシウムは、コラーゲンの生成に関与し、チロシナーゼ阻害活性によるメラニン色素生成の抑制作用などの生理活性作用を有することが知られており、皮膚の美白化やコラーゲンの生成促進を目的として、乳液、ローション、クリーム、含水パックなどの化粧品に配合されている。
【0003】
しかしながら、リン酸L−アスコルビルマグネシウムは容易に酸化されるため、種々の安定化剤が試みられているが依然として経時安定性が悪く、pH調整剤を配合するなどして改良が試みられている。
【0004】
特許文献1には、アスコルビン酸及びその誘導体を含むチロシナーゼ抑制活性を有する薬物成分、薬物の皮膚吸収促進剤、薬物安定化剤、薬物溶解剤及び皮膚副作用緩和剤が、疎水性粘着剤に配合されてなる貼付剤が開示されている。
【0005】
又、特許文献2には、リン酸L−アスコルビルマグネシウムと、ビタミンE又はその誘導体を併用した水系の美白化粧料が開示されている。
【0006】
更に、特許文献3には、カルボキシル基又は水酸基を含有するビニルモノマーからなるアルキル共重合体に、可塑剤と架橋剤とアスコルビン酸テトラ脂肪酸エステルを含有する貼付剤が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された貼付剤は、クエン酸、コハク酸及びシュウ酸又は蟻酸などの弱酸の薬物安定化剤や、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類の薬物溶解剤の配合が必要であり、薬物安定化剤や薬物溶解剤は、貼付剤を皮膚に貼付した際に皮膚刺激性を生じるといった問題点や、薬物が安定な貼付剤であっても、皮膚から剥離するときの粘着力が強くて痛く、場合によっては皮膚刺激を生じるといった問題点を有していた。
【0008】
又、特許文献2に開示された美白化粧料は、含水系のクリーム、乳液、パックであることから、使用後に衣服や寝具などに付着して、衣服や寝具を汚したり、折角皮膚に塗布された美白化粧料が衣服や寝具に付着してしまい、十分な効果が得られないといった問題点を有していた。
【0009】
更に、パックでは、拭き取りや洗浄が必要であり、拭き取りや洗浄によって、折角、皮膚に作用したリン酸L−アスコルビルマグネシウムが拭き取られたり或いは洗い流されたりするため、期待した効果が十分に得られなかった。加えて、上記美白化粧料は含水系であることから、保存安定性を高めるためにパラオキシ安息香酸メチルなどの防腐剤を配合する必要があり、この防腐剤が原因となって美白化粧料の使用時に皮膚刺激が生じるといった問題点があった。
【0010】
特許文献3に開示された貼付剤は、皮膚刺激を軽減するために可塑剤を多量に抗体層に含有させ、多官能性イソシアネート、金属キレート化合物、酸塩化物などの架橋剤を含有させている。しかしながら、リン酸L−アスコルビルマグネシウムは、架橋剤と反応するために充分は安定性が得られないといった問題点を有していた。
【0011】
又、酢酸dl−α−トコフェロール及びパルミチン酸レチノールは、肌を健やかに保つ成分としてリン酸L−アスコルビルマグネシウムと併用して用いることが望まれている。しかしながら、酢酸dl−α−トコフェロール及びパルミチン酸レチノールの脂溶性ビタミン誘導体を添加した貼付剤は、これらの脂溶性ビタミン誘導体の添加により膏体層が可塑化して皮膚への貼付性が強くなり、貼付剤を皮膚から剥離させる時に皮膚の角質を剥離してしまって皮膚刺激が発生し、或いは、可塑化された膏体層の糊残りなどの問題を生じていた。
【0012】
上記問題点の改善のため、膏体層の粘着剤に一般的に使用される金属架橋、ウレタン架橋、エポキシ架橋、過酸化物や電子線によるラジカル反応による架橋を施すことも考えられるが、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、場合によっては、酢酸dl−α−トコフェロール及びパルミチン酸レチノールの安定性をも低下させる問題点が生じた。
【0013】
従って、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、酢酸dl−α−トコフェロール及びパルミチン酸レチノールを含有させて、これらの安定性を確保しつつ、美白効果や肌の健やかさを向上させる効果を有しながらも、衣服や寝具を汚すことなく、十分な粘着力を有し、使用後の剥離時に皮膚の角質をはぎ取ることなく、緩和に貼付剤を剥がすことが可能で、皮膚への優れた美白作用や肌を健康に保つ作用を奏する貼付剤が求められていた。
【0014】
【特許文献1】特許第2655983号公報
【特許文献2】特許第2663136号公報
【特許文献3】特開2003−48832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、酢酸dl−α−トコフェロール及びパルミチン酸レチノールの安定性に優れており、使用時に皮膚への充分な粘着力を有する一方、使用後の皮膚からの剥離時に皮膚の角質をはぎ取ることなく剥がすことができ、優れた美白作用及び肌を健やかにする作用を奏する貼付剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の貼付剤は、支持体の一面に膏体層が積層一体化されてなる貼付剤であって、上記膏体層は、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、酢酸dl−α−トコフェロール、パルミチン酸レチノール、クワエキス、甘草フラボノイド、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、可塑剤及び粘着力調整剤を含有する組成物からなり、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル成分を70〜95重量%含有し、且つ、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル以外の、アルキル基の炭素数が6以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分を5〜30重量%含有していることを特徴とする。なお、(メタ)アクリルは、メタクリル又はアクリルを意味する。
【0017】
本発明の貼付剤の膏体層中におけるリン酸L−アスコルビルマグネシウムの含有量は、少ないと、リン酸L−アスコルビルマグネシウムの奏する皮膚の美白化やコラーゲンの生成促進が発現しないことがある一方、多いと、膏体層表面に多量のリン酸L−アスコルビルマグネシウムが析出して貼付剤の貼付性が低下するのに加えて、多くてもリン酸L−アスコルビルマグネシウムの奏する皮膚の美白化やコラーゲンの生成促進効果に顕著な変化がないので、0.5〜10重量%が好ましい。
【0018】
更に、本発明の貼付剤では、より良好な美白作用及び皮膚に潤いを与えて肌を健やかにする作用を発現させるために、貼付剤の膏体層中に、酢酸dl−α−トコフェロール、パルミチン酸レチノール、クワエキス及び甘草フラボノイドが配合されている。
【0019】
そして、貼付剤の膏体層中における酢酸dl−α−トコフェロールの含有量は、少ないと、酢酸dl−α−トコフェロールの作用が発現しないことがある一方、多くても、酢酸dl−α−トコフェロールの奏する作用に顕著な変化がないので、0.2〜25重量%が好ましい。
【0020】
上記と同様の理由で、貼付剤の膏体層中におけるパルミチン酸レチノールの含有量は、0.02〜2重量%が好ましく、貼付剤の膏体層中におけるクワエキスの含有量は0.2〜5重量%が好ましく、貼付剤の膏体層中における甘草フラボノイドの含有量は0.002〜1重量%が好ましい。
【0021】
そして、本発明の貼付剤は、皮膚の中でも特に敏感な顔面にも適用されるため特別な粘着物性を必要とする。即ち、本発明の貼付剤が、目的とする作用を皮膚に付与するためには、膏体層中の有効成分を皮膚に移行、吸収させるための一定時間以上の継続した皮膚への貼付が必要であり、その実現のためには、一定以上の強さの膏体層の粘着力が必要である。特に、本発明の貼付剤は、皮膚の美白作用を目的としていることから、就寝中の貼付を想定しており、枕との擦れや、就寝中の無意識な手による払いのけ動作に耐えるだけの粘着力が必要である。このためには、膏体層の粘着力を強くすればよいが,粘着力を強くすると、貼付剤を皮膚から剥離する際に皮膚を引っ張り、皮膚にダメージを与え、ひどくなると、貼付剤を皮膚から剥離する際に角質をも剥ぎ取ってしまい、これも皮膚刺激の原因となる。
【0022】
本発明の貼付剤は、その膏体層中に、上述したように、リン酸L−アスコルビルマグネシウムの他に、脂溶性の酢酸dl−α−トコフェロール及びパルミチン酸レチノールを含有しており、これらの成分の全てを安定的に含有させておくことが必要であることに加え、使用中に貼付剤が皮膚から不測に剥がれることがないと共に、貼付剤を皮膚から剥離する際に皮膚刺激を生じず且つ糊残りの生じないことが要求され、この要求を満たすべく、本発明の貼付剤では、その膏体層を構成する粘着成分として、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル成分を70〜95重量%含有し、且つ、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル以外の、アルキル基の炭素数が6以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分を5〜30重量%含有してなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、可塑剤及び粘着力調整剤を用いている。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル以外の、アルキル基の炭素数が6以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定されず、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。
【0024】
具体的に、膏体層を構成している(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体としては、例えば、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸n−ドデシル共重合体などが挙げられる。
【0025】
そして、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合成分の一つである、アルキル基の炭素数が6以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおいて、アルキル基の炭素数が6以上である理由は、アルキル基の炭素数が5以下であると、脂溶性の酢酸dl−α−トコフェロールやパルミチン酸レチノールを膏体層中に含有させた場合に、膏体層の皮膚に対する貼付性が強くなり過ぎ、貼付剤を皮膚から剥離する際に痛みを生じたり或いは糊残りを生じるからである。
【0026】
更に、膏体層を構成している(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体において、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル成分の含有量は、少ないと、膏体層が可塑剤の添加で過度に軟化し、膏体層の凝集力が低下し過ぎ、貼付剤を皮膚から剥離した際に糊残りなどを生じることがある一方、多いと、膏体層が硬くなり過ぎて皮膚への充分な貼着力が得られなくなるので、70〜95重量%に限定され、75〜90重量%がより好ましい。
【0027】
同様の理由で、膏体層を構成している(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体において、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル以外の、アルキル基の炭素数が6以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分の含有量は、5〜30重量%に限定され、10〜25重量%が好ましい。
【0028】
そして、膏体層中における(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の含有量は、少ないと、膏体層の凝集力が低くなり、貼付剤を皮膚から剥離した際に皮膚に糊残りを生じる一方、多いと、膏体層が硬くなり過ぎて皮膚への充分な貼着力が得られないことがあるので、40〜80重量%が好ましい。
【0029】
更に、本発明の貼付剤は、皮膚の中でも敏感な顔面に貼着させて用いられるので、皮膚への貼着性と皮膚から剥離する際に痛みがないことが必要であり、このために、膏体層を構成する粘着成分中に可塑剤及び粘着力調整剤を含有させている。
【0030】
このような可塑剤としては、例えば、エステル類、動植物油類、炭化水素類、アルコール類などの化合物が挙げられ、脂肪酸エステルが好ましい。このような脂肪酸エステルとしては、例えば、オクタン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、イソノナン酸イソトリデシル、オレイン酸デシル、ミンク油脂肪酸エチル、乳酸ミリスチルなどの一価アルコール脂肪酸エステル;アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジエチル、コハク酸ジオクチルなどの二塩基酸エステル類;ジカプリン酸プロピレングリコール、トリオクタン酸グリセリル、トリ(オクタン酸・デカン酸)グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、ソルビタンオレート、中性脂肪酸油脂などの多価アルコール脂肪酸エステル類などが挙げられる。
【0031】
又、動植物油類としては、例えば、オリーブ油、サフラワー油、ヤシ油脂肪酸トリグリセライド、綿実油などの動植物油類などが挙げられる。炭化水素類としては、例えば、スクワラン、α−オレフィンオリゴマー、流動パラフィン、ワックスなどが挙げられる。アルコール類としては、セタノール、ベヘニルアルコール、2−ヘキシルドデカノール、2−オクチルドデカノール、オレイルアルコールなどが挙げられる。
【0032】
そして、リン酸L−アスコルビルマグネシウムの安定性を損なわず、皮膚への良好な貼付性を有していると共に皮膚からの剥離時に痛みのない点から、可塑剤としては、ミリスチン酸イソプロピル、流動パラフィンが好ましい。
【0033】
又、膏体層中における可塑剤の含有量は、少ないと、膏体層の粘着力が強くなり過ぎて皮膚から剥離する際に痛みを生じる虞れがある一方、多いと、膏体層が軟化し過ぎて皮膚からの剥離時に糊残りの生じることがあるので、3〜30重量%が好ましく、5〜25重量%がより好ましい。
【0034】
又、粘着力調整剤としては酸化エチレン付加化合物が好ましい。酸化エチレンの平均重合度は、少ないと、粘着力調整剤としての効果が充分でない一方、多いと、貼付剤を皮膚に貼付する時にべたつきを生じるので、5〜30が好ましく、10〜20がより好ましい。
【0035】
又、上記酸化エチレン付加化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコールなどが挙げられ、リン酸L−アスコルビルマグネシウムの安定性を損なわず、皮膚への良好な貼付性を有していると共に皮膚からの剥離時に痛みのない点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(12)ポリプロピレン(35)グリコールが好ましく、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油がより好ましい。なお、酸化エチレン付加化合物は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0036】
そして、上記粘着力調整剤としては、高級アルコールと酸化エチレン付加化合物とを併用することが好ましく、2−オクチルドデカノールと、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とを併用することがより好ましく、2−オクチルドデカノールと、ポリオキシ(10)硬化ヒマシ油とを併用することがより好ましい。
【0037】
又、膏体層中における粘着力調整剤の含有量は、少ないと、膏体層の粘着力が強くなり過ぎることがある一方、多いと、膏体層表面に粘着力調整剤が多量にブリードアウトしてべたつきを生じることがあるので、5〜30重量%が好ましく、10〜25重量%がより好ましい。
【0038】
膏体層の粘着力の目安として、JIS Z1522に準拠してステンレス板を用いて測定された180°引き剥がし粘着力が挙げられ、この180°引き剥がし粘着力が、20g/15mm以下であることが好ましく、10g/15mm以下であることがより好ましい。
【0039】
更に、膏体層には、皮膚刺激性が生じないように、リン酸L−アスコルビルマグネシウムの安定化剤及び溶解剤や、膏体成分の防腐剤、抗菌剤及び酸化防止剤を含有していないことが好ましい。
【0040】
リン酸L−アスコルビルマグネシウムの安定化剤としては、例えば、亜硫酸水素又はその塩などが挙げられる。リン酸L−アスコルビルマグネシウムの溶解剤としては、例えばエタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコールが挙げられる。膏体成分の防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピルなどが挙げられる。膏体成分の抗菌剤としては、例えば、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンゼルコニウムなどが挙げられる。膏体成分の酸化防止剤としては、例えば、ヒドロキシブチルトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
【0041】
更に、膏体層中には、その物性を損なわない範囲内において、使用感を高めるための着香剤や着色剤;界面活性剤;乳化剤;湿潤剤;熱安定剤;光安定剤;紫外線吸収剤;吸収促進剤などの添加剤が添加されてもよい。
【0042】
そして、上記膏体層を支持する支持体としては、特に限定されないものの、一般的には肌の表面に沿って変形し得る柔軟性を有する材料が好ましく用いられる。このような支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの合成樹脂フィルム、コットンシート、ポリオレフィン繊維、ポリエステル系繊維、レーヨン繊維の1種又は2種以上からなる不織布、織布及びこれらを組み合わせたラミネートフィルムなどが挙げられる。
【0043】
更に、上記貼付剤の膏体層は、輸送中や保管中に膏体層を保護するために剥離シートによって剥離自在に被覆、保護されていることが好ましい。このような剥離シートとしては、膏体層を損なうことなく剥離自在に膏体層を被覆できればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、上質紙、グラシン紙などの剥離基材の少なくとも一面にシリコーンを塗布してなるものが挙げられる。
【0044】
次に、上記貼付剤の製造方法について説明する。この貼付剤の製造方法としては、特に限定されず、例えば、(1)(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の粘着剤溶液に、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、酢酸dl−α−トコフェロール、パルミチン酸レチノール、クワエキス、甘草フラボノイド、可塑剤、及び、粘着力調整剤、必要に応じて添加剤を配合してなる膏体溶液を支持体上に所定厚みに塗布して乾燥させる貼付剤の製造方法、(2)(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の粘着剤溶液に、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、酢酸dl−α−トコフェロール、パルミチン酸レチノール、クワエキス、甘草フラボノイド、可塑剤、及び、粘着力調整剤、必要に応じて添加剤を配合してなる膏体溶液を剥離シート上に所定厚みに塗布して乾燥させた後、この剥離シート上に形成された膏体層を支持体上に転写、積層一体化させる貼付剤の製造方法が挙げられる。
【0045】
上記粘着剤溶液としては、従来から貼付剤の製造で用いられているものが用いられ、例えば、溶剤型粘着剤溶液、エマルジョン型粘着剤溶液等が挙げられる。このような粘着剤溶液としては、例えば、医薬品添加物規格収載品である「アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸n−ドデシル共重合体溶液」がある。
【発明の効果】
【0046】
本発明の貼付剤は、支持体の一面に膏体層が積層一体化されてなる貼付剤であって、上記膏体層は、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、酢酸dl−α−トコフェロール、パルミチン酸レチノール、クワエキス、甘草フラボノイド、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、可塑剤及び粘着力調整剤を含有する組成物からなり、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル成分を70〜95重量%含有し、且つ、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル以外の、アルキル基の炭素数が6以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分を5〜30重量%含有していることを特徴とするので、酢酸dl−α−トコフェロール及びパルミチン酸レチノールといった脂溶性ビタミン誘導体が配合されていても、リン酸L−アスコルビルマグネシウムの安定性に影響を与えることがなく、リン酸L−アスコルビルマグネシウムを安定的に保持して持続的に皮膚に作用させることができ、美白作用や肌を健やかに保つ作用を皮膚に効果的に付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
(実施例1〜14、比較例2,4〜9)
粘着剤溶液として、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸n−ドデシル共重合体を酢酸エチル中に溶解してなる粘着剤溶液A(積水化学工業社製 医薬品添加物 1998年収載、アクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸2−エチルヘキシル・メタクリル酸n−ドデシル共重合体(アクリル酸2−エチルヘキシル成分:9重量%、メタクリル酸2−エチルヘキシル成分:78重量%、メタクリル酸n−ドデシル成分:13重量%)40重量%酢酸エチル溶液)と、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体エマルジョンからなる粘着剤溶液B(日本カーバイド工業社製 商品名「ニカゾールTS−620」、アクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体:60重量%水溶液)を、アクリル酸2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体を酢酸エチル中に溶解してなる粘着剤溶液C(積水化学工業社製 医薬品添加物規格収載、35重量%酢酸エチル溶液)を用意した。
【0048】
上記粘着剤溶液中に、有効成分として、リン酸L−アスコルビルマグネシウム(日光ケミカルズ社製)、酢酸dl−α−トコフェロール(BASF社製)、パルミチン酸レチノール(理研ビタミン社製)、クワエキス(丸善製薬社製)及び甘草フラボノイド(丸善製薬社製)を、粘着力調整剤として、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油(日光ケミカルズ社製、酸化エチレンの平均重合度:10)、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油(日光ケミカルズ社製、酸化エチレンの平均重合度:20)を、軟化剤として、流動パラフィン(丸石製薬)、ミリスチン酸イソプロピル(日光ケミカルズ社製)を所定量づつ添加して均一に攪拌混合して膏体溶液を作製した。
【0049】
次に、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる剥離基材の一面にシリコーンを塗布してなる剥離シートを用意し、この剥離シートのシリコーン面に上記膏体溶液を乾燥後の厚みが70μmとなるように略一定厚みで塗布した後に60℃で30分間に亘って乾燥させて水分又は酢酸エチルを完全に除去して膏体層を形成した。なお、膏体層中における各成分の含有量を表1及び表2に示した。
【0050】
そして、ポリエチレンフィルムと、ポリオレフィン繊維及びレーヨン繊維からなる不職布とを積層一体化させてなる支持体を用意し、この支持体と剥離シートとを、支持体のポリエチレンフィルムと膏体層とが対向した状態に重ね合わせ、支持体のポリエチレンフィルム上に膏体層を転写、積層一体化させて貼付剤を得た。
【0051】
(比較例1)
グリセリン16.79重量部に、リン酸L−アスコルビンマグネシウム2重量部、酢酸dl−α−トコフェロール1重量部、パルミチン酸レチノール0.2重量部、クワエキス1重量部、甘草フラボノイド0.01重量部、ポリアクリル酸ナトリウム9重量部及び珪酸アルミニウム8.8重量部、パラオキシ安息香酸プロピル0.2重量部を添加し攪拌して均一に分散させて分散液を作製した。
【0052】
一方、水50重量部にゼラチン9重量部及びポリビニルアルコール2重量部を加温して均一に溶解させた水溶液を作製し、この水溶液と上記分散液とを混合して膏体溶液を作製した。
【0053】
次に、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる剥離基材の一面にシリコーンを塗布してなる剥離シートを用意し、この剥離シートのシリコーン面に上記膏体溶液を乾燥後の厚みが約1mmとなるように略一定厚みで塗布して膏体層を形成した。
【0054】
そして、上記剥離シートを支持体となる不織布上に膏体層が不織布に対向した状態に重ね合わせた後、40℃で2日間に亘って熟成し、膏体層を不織布に転写、積層一体化させて貼付剤を作製した。なお、膏体層には水分が多量に残存していた。
【0055】
(比較例3)
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(シェル化学工業社製 商品名「カリフレックスTR−1107」)19重量部に、流動パラフィン38.79重量部、脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業 商品名「アルコンP-90」)35重量部、ブチルヒドロキシトルエン3重量部、リン酸L−アスコルビンマグネシウム2重量部、酢酸dl−α−トコフェロール1重量部、パルミチン酸レチノール0.2重量部、クワエキス1重量部、甘草フラボノイド0.01重量部及びトルエン250重量部を添加して攪拌して均一に混合させて膏体溶液を作製した。
【0056】
次に、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる剥離基材の一面にシリコーンを塗布してなる剥離シートを用意し、この剥離シートのシリコーン面に上記膏体溶液を乾燥後の厚みが70μmとなるように略一定厚みで塗布した後に60℃で30分間に亘って乾燥させてトルエンを略完全に除去して膏体層を形成した。
【0057】
そして、ポリエチレンテレフタレートフィルムとエチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムとを積層一体化させてなる支持体を用意し、この支持体と剥離シートとを、支持体のポリエチレンテレフタレートフィルムと膏体層とが対向した状態に重ね合わせ、支持体のポリエチレンテレフタレートフィルム上に膏体層を転写、積層一体化させて貼付剤を得た。
【0058】
実施例1〜14で得られた貼付剤についてリン酸L−アスコルビルマグネシウムの皮膚移行量を、実施例1〜14及び比較例1〜9で得られた貼付剤について、肌の健やかさ、糊残り、貼付性、剥離時痛さ、着色性、安定性及び粘着力を下記に示した要領で測定し、その結果を表3、4に示した。なお、各実施例及び比較例で得られた貼付剤の膏体層中における各成分の含有量を表1、2に示した。
【0059】
(リン酸L−アスコルビンマグネシウムの皮膚移行量)
貼付剤から一辺が2cmの平面正方形状の試験片を切り出し、この試験片を5名の被験者の上腕に貼付し、4時間後に試験片を被験者の上腕から剥離し、貼付前後における試験片の膏体層中のリン酸L−アスコルビンマグネシウムの含有量をHPLCで定量し、貼付前後における試験片の膏体層中のリン酸L−アスコルビルマグネシウムの含有量の差を算出し、この含有量の差をリン酸L−アスコルビルマグネシウムの皮膚移行量とした。
【0060】
(肌の健やかさ)
貼付剤から一辺が2cmの平面正方形状の試験片を切り出し、この試験片を10名の被験者の両腕の上腕内側に貼付して就寝し、起床後に貼付剤を被験者の上腕から剥離した。続いて、試験片の貼付部位の皮膚と、この貼付部位の周囲の皮膚とを比較観察し、被験者が主観的に感じる肌のしっとり感やきめの細かさを評価内容とし、下記基準に基づいて判断した。各被験者の点数の合計を30で除したものに100を乗じた値を「肌の健やかさ」とした。
3点・・・試験前よりも肌が著しく健やかだった。
2点・・・試験前よりも肌が健やかだった。
1点・・・試験前と肌に変化がなかった。
0点・・・試験前よりも肌がカサついていた。
【0061】
(糊残り)
貼付剤から一辺が2cmの平面正方形状の試験片を切り出し、この試験片を10名の被験者の両腕の上腕内側に貼付して就寝し、起床後に貼付剤を被験者の上腕から剥離した。続いて、試験片の貼付部位の皮膚と、この貼付部位の周囲の皮膚とを比較観察し、下記基準に基づいて判断した。各被験者の点数の合計を30で除したものに100を乗じた値を「糊残り」とした。
3点・・・膏体層の残り及び肌のべたつき感は認められなかった。
2点・・・膏体層の残りは認められなかったが、肌にべたつき感があった。
1点・・・膏体層の残りが部分的に認められると共に肌にべたつき感があった。
0点・・・膏体層の残りが全面的に認められると共に肌にべたつき感があった。
【0062】
(貼付性)
貼付剤から一辺が2cmの平面正方形状の試験片を切り出し、この試験片を10名の被験者の両腕の上腕内側に貼付して就寝し、起床後における貼付剤の貼付状態を目視にて観察し、下記基準に基づいて判断した。各被験者の点数の合計を30で除したものに100を乗じた値を「貼付性」とした。
3点・・・試験終了まで貼付剤が皮膚に全体的に完全に貼付していた。
2点・・・試験終了時に貼付剤のわずかな部分が皮膚から剥離していた。
1点・・・試験終了時に貼付剤の一部が剥がれ、或いは、ずれていた。
0点・・・試験終了までに貼付剤が皮膚から完全に剥がれてしまった。
【0063】
(剥離時痛さ)
貼付剤から一辺が2cmの平面正方形状の試験片を切り出し、この試験片を10名の被験者の両腕の上腕内側に貼付して就寝し、起床後に貼付剤を被験者の上腕から剥離した際の痛みの有無及び程度を下記基準に基づいて判断した。各被験者の点数の合計を30で除したものに100を乗じた値を「剥離時痛さ」とした。
3点・・・剥離時全く痛みを感じなかった。
2点・・・剥離時皮膚が少し引っ張られたが痛みはなかった。
1点・・・剥離時少し痛かった(わずかに角質剥離あった)。
0点・・・剥離時痛かった(角質剥離が多数、あった)。
【0064】
(着色性)
アルミニウム箔の一面にポリエチレンフィルムが積層一体化されてなる包装フィルムを用いて貼付剤を密封して50℃の雰囲気下に1ヶ月間に亘って保存し、保存後の貼付剤の膏体層の着色度合いを目視観察し、下記基準に基づいて判断した。
○・・・着色はなかった
△・・・僅かに着色した
×・・・著しく着色した
【0065】
(安定性)
貼付剤から一辺が5cmの平面正方形状の試験片を切り出し、この試験片を、アルミニウム箔の一面にポリエチレンフィルムが積層一体化されてなる包装フィルムを用いて密封して50℃の雰囲気下に2週間放置した後、試験片の膏体層中のリン酸L−アスコルビルマグネシウムの残存率を液体クロマトグラフ法によって測定した。
【0066】
(粘着力)
貼付剤の粘着力の180°引き剥がし粘着力をJIS Z1522に準拠してステンレス板を用いて測定した。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の一面に膏体層が積層一体化されてなる貼付剤であって、上記膏体層は、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、酢酸dl−α−トコフェロール、パルミチン酸レチノール、クワエキス、甘草フラボノイド、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、可塑剤及び粘着力調整剤を含有する組成物からなり、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル成分を70〜95重量%含有し、且つ、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル以外の、アルキル基の炭素数が6以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分を5〜30重量%含有していることを特徴とする貼付剤。
【請求項2】
粘着力調整剤が、酸化エチレン付加化合物であることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
膏体層が、可塑剤3〜30重量%及び粘着力調整剤5〜30重量%を含有していることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
【請求項4】
膏体層中に、リン酸L−アスコルビルマグネシウム0.5〜10重量%、酢酸dl−α−トコフェロール0.2〜25重量%及びパルミチン酸レチノール0.02〜2重量%含有されていることを特徴とする請求項1に記載の貼付剤。
【請求項5】
膏体層中に、防腐剤、抗菌剤及び酸化防止剤、並びに、リン酸L−アスコルビルマグネシウムの安定化剤及び溶解剤を含有していないことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の貼付剤。

【公開番号】特開2007−302608(P2007−302608A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133138(P2006−133138)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000191755)森下仁丹株式会社 (30)
【Fターム(参考)】