説明

質量分析計

第1の扇形電場(5)および第2の扇形電場(8)を含むマルチターン飛行時間質量分析器を開示する。第2の扇形電場(8)は、第1の扇形電場(5)と直交するように配置される。イオンは、検出および質量分析される前に質量分析器を複数回周回し得る。これにより、高分解能質量分析器が提供できる。別の実施形態によると、質量分析器は、第1の扇形電場が細長く、かつさらなる扇形電場が第1の扇形電場の長さに沿って千鳥状に配置される開ループ形状を有する。第1および第2の扇形電場(5、8)は、複数の扇形電場区分に細分され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析器およびイオンを質量分析する方法に関する。
【0002】
本好適な実施形態は、質量分解能の高いコンパクトな飛行時間質量分析器に関する。上記好適な質量分析器の飛行経路は、好ましくは非常に長く、かつイオンは、好ましくは質量分析器の回りを複数回周回または旋回するように構成される。好ましくは、質量分析器は、好ましくは互いに直交するように構成される2つの扇形電場を含む。質量分析器の形状は、イオンが空間的に発散することを実質的に防止するように構成される。一好適な実施形態によると、扇形電場のうちの1つ以上は、それぞれ扇形角度を有する複数の扇形電場区分に細分され得る。扇形角度の合計は、好ましくは180°である。
【背景技術】
【0003】
マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源またはエレクトロスプレーイオン化イオン源を内蔵する飛行時間(「TOF」)質量分析計は、特に生化学およびプロテオミクスにおいて強力な分析機器となってきた。そのような質量分析計の固有の特徴は、感度が高いこと、理論的には質量範囲に制限がないこと、高速な測定が可能であることなどがある。したがって、飛行時間質量分析計は、四重極、イオントラップおよび扇形磁場質量分析計などの他のタイプの質量分析計と比較して、潜在的な利点が大きい。しかし、従来の市販の飛行時間質量分析器の質量分解能は、高性能フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FT−ICR」)質量分析計ほど高くはない。100,000FWHM程度の分解能を実現でき、それより分解能の低い機器を使用するとピークが重複してしまうようなデータにおいても質量測定精度の向上が図れるFT−ICR質量分析計が公知である。
【0004】
飛行時間質量分析器の質量分解能Rは、以下のように定義される。
【0005】
【数1】

【0006】
ここで、tは、総飛行時間であり、Δtは、半波高全幅値(Full Width Half Maximum)(「FWHM」)において測定されるピーク幅である。
【0007】
イオンの質量が同じであるとすると、ピーク幅は、初期イオンパケット体積のエネルギーおよび空間的拡散によるずれ(aberrations)、イオン検出器の応答時間、電界不完全性、検出器平坦性許容度、および残留ガス分子との衝突によるイオンパケット発散性による。
【0008】
最終のピーク幅を最小化するために種々のイオン光学技術の適用を図ることは、公知である。例えば、比較的高い運動エネルギーを有するイオンは、若干より長い飛行経路を通って走行して、比較的低い運動エネルギーを有するイオンと実質的に同じ時刻にイオン検出器に到達するように構成され得る。
【0009】
上記式1から分かるように、理論上は、飛行経路(したがって飛行時間)を長くすると、分解能が比例して増加する(但し、ピーク幅がおよそ同じままの場合)。しかし、実際は、飛行経路を何倍にも長くすることは、市販の機器においては現実的でない。なぜなら、そのようにして得られる質量分析器は法外に大きく、かつ高価となるからである。さらなる問題としては、ほとんどの市販の飛行時間質量分析器は、イオンビームの半径方向の発散を抑制しようとしていないことである。したがって、飛行経路の長さを単に増加すると、最終のイオンパケットの直径がこれに応じて増加する。こうすると、今度は、マイクロチャネルプレート(MCP)イオン検出器の直径の大きさを比例して増加させる必要があり、質量分析器のコストおよび複雑性をさらに著しく増加させる。大きなイオン検出器を有する質量分析器は、市販の機器としては現実的でない。
【0010】
ある公知の市販質量分析計(Waters、Inc.(登録商標)製のQ−TOF(登録商標))は、イオンをリフレクトロンを含むイオンミラーに2回別々に通すことによって、飛行時間質量分析器の実効飛行経路を増加させる。これにより、質量分析計の質量分解能は、有効に2倍され、およそ30,000FWHMとなる。
【0011】
種々のマルチターン飛行時間質量分析器の概念が過去に提案されてきた。しかし、そのような概念は、上記の実用上の難点があるために実用化されていない。
【0012】
マルチターン飛行時間質量分析器についての公知の理論的概念の大きな問題は、イオンパケットが複数回周回しても確実に拡大しないようにする機構がないことである。したがって、イオンは、空間的に再集束される必要がある。さらに、空間的に再集束されることに加えて、イオンパケットはまた、イオンの初期エネルギー拡散の結果としていずれの方向にも拡大されなければよい。この集束状態は、完全集束と呼ばれており、詳細は、後述される。完全集束が達成されない場合は、イオンの移送および分解能は、イオンが質量分析器の回りを周回または旋回する回数が増えるにつれ急速に劣化する。
【0013】
対処の必要な別の問題は、比較的低い質量対電荷比を有するイオンが、マルチターン飛行時間質量分析器の回りを複数回周回すると、比較的高い質量対電荷比を有するイオンを追い抜くことである。したがって、ピークの分解能は高い場合もあるが、得られる質量スペクトルにおけるピークの質量を決定することは難しくなる。
【0014】
なお、完全を期すと、非常に長い実効イオン飛行経路を有するFT−ICR質量分析計が公知である。しかし、FT−ICR質量分析計は、本発明の意味においては飛行時間質量分析器として解釈されないほうがよい。FT−ICR質量分析計は、磁場内のイオンのサイクロトロン運動の周期を測定する。サイクロトロン周波数は、イオンの質量に反比例する。FT−ICR質量分析計において、イオンは、まず閉軌道に入るように電気パルスによって衝撃を与えられ、かつそれぞれのサイクロトロン周波数で発振するようにされる。次いで、イオンは、それらが「鳴る」ことを聞くことによって検出される。イオンがイオン検出器の金属表面に近づくと、イオンは、イオン検出器の表面上に電荷を誘導する。誘導された電荷は、接地からイオン検出器の表面上に移動する。誘導された電荷が抵抗器またはインダクタを通ると、電圧信号が生成される。電圧信号は、異なるサイクロトロン周波数を有する多くのイオンが電圧信号に寄与するので時間的に比較的複雑である。しかし、複雑な電圧信号をフーリエ解析することによって、種々のイオンの質量および相対存在量を決定することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
改善された質量分析器を提供することが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一局面によると、
第1の扇形電場と、
第2の扇形電場であって、第2の扇形電場は、第1の扇形電場に直交するように配置される、第2の扇形電場と
を含む質量分析器が提供される。
【0017】
一実施形態によると、第1の扇形電場は、1つの扇形電場を含み得る。第1の扇形電場は、例えば、180°扇形電場を含み得る。
【0018】
別の実施形態によると、第1の扇形電場は、複数の第1の扇形電場区分を含み得る。第1の扇形電場は、2、3、4、5、6、7、8、9、10個または10個より多くの第1の扇形電場区分を含み得る。好ましくは、第1の扇形電場区分のうちの1つ以上は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する。複数の第1の扇形電場区分は、それぞれ扇形角度を有し、かつ複数の第1の扇形電場区分の扇形角度の合計は、好ましくは180°である。
【0019】
上記好適な実施形態によると、第1の扇形電場は、第1の湾曲プレート電極および第2の湾曲プレート電極を含む半円筒形扇形電場を含み得る。一動作モードにおいて、第1の扇形電場の第1の湾曲プレート電極は、好ましくは第1の扇形電場の第2の湾曲プレート電極とは反対の極性に維持される。
【0020】
一動作モードにおいて、第1の扇形電場の第1の湾曲プレート電極は、好ましくは(i)0V、(ii)0〜20V、(iii)20〜40V、(iv)40〜60V、(v)60〜80V、(vi)80〜100V、(vii)100〜120V、(viii)120〜140V、(ix)140〜160V、(x)160〜180V、(xi)180〜200V、(xii)200〜300V、(xiii)300〜400V、(xiv)400〜500V、(xv)500〜600V、(xvi)600〜700V、(xvii)700〜800V、(xviii)800〜900V、(xix)900〜1000V、(xx)1〜2kV、(xxi)2〜3kV、(xxii)3〜4kV、(xxiii)4〜5kV、および(xxiv)>5kVからなる群から選択される電位に維持される。一動作モードにおいて、第1の扇形電場の第2の湾曲プレート電極は、好ましくは(i)0V、(ii)0〜−20V、(iii)−20〜−40V、(iv)−40〜−60V、(v)−60〜−80V、(vi)−80〜−100V、(vii)−100〜−120V、(viii)−120〜−140V、(ix)−140〜−160V、(x)−160〜−180V、(xi)−180〜−200V、(xii)−200〜−300V、(xiii)−300〜−400V、(xiv)−400〜−500V、(xv)−500〜−600V、(xvi)−600〜−700V、(xvii)−700〜−800V、(xviii)−800〜−900V、(xix)−900〜−1000V、(xx)−1〜−2kV、(xxi)−2〜−3kV、(xxii)−3〜−4kV、(xxiii)−4〜−5kV、および(xxiv)<−5kVからなる群から選択される電位に維持される。
【0021】
質量分析器は、好ましくは第1の扇形電場内に設けられるイオン入口ポートであって、使用時に好ましくはイオン源からのイオンがイオン入口ポートを介して質量分析器中に導入される、イオン入口ポートをさらに含む。
【0022】
第1の扇形電場は、好ましくは第1の方向に移送中のイオンを受け取るように構成され、かつ好ましくは第1の方向とは反対の第2の方向にイオンを排出するように構成される。
【0023】
一実施形態によると、第2の扇形電場は、1つの扇形電場を含み得る。第2の扇形電場は、例えば、180°扇形電場を含み得る。
【0024】
別の実施形態によると、第2の扇形電場は、複数の第2の扇形電場区分を含み得る。第2の扇形電場は、2、3、4、5、6、7、8、9、10個または10個より多くの第2の扇形電場区分を含み得る。好ましくは、第2の扇形電場区分のうちの1つ以上は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する。複数の第2の扇形電場区分は、それぞれ扇形角度を有し、かつ複数の第2の扇形電場区分の扇形角度の合計は、好ましくは180°である。
【0025】
上記好適な実施形態によると、第2の扇形電場は、第1の湾曲プレート電極および第2の湾曲プレート電極を含む半円筒形扇形電場を含み得る。一動作モードにおいて、第2の扇形電場の第1の湾曲プレート電極は、好ましくは第2の扇形電場の第2の湾曲プレート電極とは反対の極性に維持される。
【0026】
一動作モードにおいて、第2の扇形電場の第1の湾曲プレート電極は、好ましくは(i)0V、(ii)0〜20V、(iii)20〜40V、(iv)40〜60V、(v)60〜80V、(vi)80〜100V、(vii)100〜120V、(viii)120〜140V、(ix)140〜160V、(x)160〜180V、(xi)180〜200V、(xii)200〜300V、(xiii)300〜400V、(xiv)400〜500V、(xv)500〜600V、(xvi)600〜700V、(xvii)700〜800V、(xviii)800〜900V、(xix)900〜1000V、(xx)1〜2kV、(xxi)2〜3kV、(xxii)3〜4kV、(xxiii)4〜5kV、および(xxiv)>5kVからなる群から選択される電位に維持される。一動作モードにおいて、第2の扇形電場の第2の湾曲プレート電極は、好ましくは(i)0V、(ii)0〜−20V、(iii)−20〜−40V、(iv)−40〜−60V、(v)−60〜−80V、(vi)−80〜−100V、(vii)−100〜−120V、(viii)−120〜−140V、(ix)−140〜−160V、(x)−160〜−180V、(xi)−180〜−200V、(xii)−200〜−300V、(xiii)−300〜−400V、(xiv)−400〜−500V、(xv)−500〜−600V、(xvi)−600〜−700V、(xvii)−700〜−800V、(xviii)−800〜−900V、(xix)−900〜−1000V、(xx)−1〜−2kV、(xxi)−2〜−3kV、(xxii)−3〜−4kV、(xxiii)−4〜−5kV、および(xxiv)<−5kVからなる群から選択される電位に維持される。
【0027】
質量分析器は、好ましくは第2の扇形電場内に設けられるイオン出口ポートであって、使用時にイオンがイオン出口ポートを介して質量分析器から出射する、イオン出口ポートをさらに含む。
【0028】
第2の扇形電場は、好ましくは第3の方向に移送中のイオンを受け取るように構成され、かつ好ましくは第3の方向とは反対の第4の方向にイオンを排出するように構成される。第1の方向は、好ましくは第4の方向と同じである。第2の方向は、好ましくは第3の方向と同じである。
【0029】
上記好適な実施形態によると、第1の動作モードにおいて、イオンは、第2の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置に出現する。第2の扇形電場の第2の位置から出現するイオンは、好ましくはその後第1の扇形電場に第1の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第2の位置に出現する。第1の扇形電場の第2の位置から出現するイオンは、好ましくはその後第2の扇形電場に第3の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第4の位置に出現する。第2の扇形電場の第4の位置から出現するイオンは、好ましくはその後第1の扇形電場に第3の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第4の位置に出現する。第1の扇形電場の第4の位置から出現するイオンは、好ましくはその後第2の扇形電場の第1の位置へ渡る。x−z平面は、好ましくはy−z平面と直交する。
【0030】
別の実施形態によると、質量分析器は、1つ以上のさらなる扇形電場をさらに含み得る。質量分析器は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個または10個より多くのさらなる扇形電場を含み得る。
【0031】
さらなる扇形電場のうちの1つ以上は、1つの扇形電場を含み得る。さらなる扇形電場のうちの1つ以上は、180°扇形電場を含み得る。
【0032】
一実施形態によると、さらなる扇形電場のうちの1つ以上は、複数の扇形電場区分を含み得る。1つ以上のさらなる扇形電場は、2、3、4、5、6、7、8、9、10個または10個より多くのさらなる扇形電場区分を含み得る。さらなる扇形電場区分のうちの1つ以上は、好ましくは(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する。
【0033】
第2の扇形電場および1つ以上のさらなる扇形電場は、好ましくは第1の扇形電場とは反対に、好ましくは千鳥状に配置される。第1の扇形電場は、好ましくは実質的に細長い。
【0034】
一実施形態によると、第1の動作モードにおいて、イオンは、好ましくは第1の扇形電場に第1の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第2の位置に出現する。第1の扇形電場の第2の位置から出現するイオンは、好ましくはその後第2の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置に出現する。第2の扇形電場から第2の位置で出現するイオンは、好ましくはその後第1の扇形電場に第3の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第4の位置に出現する。第1の扇形電場から第4の位置で出現するイオンは、好ましくはその後第3の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置に出現する。第3の扇形電場から第2の位置で出現するイオンは、好ましくはその後第1の扇形電場に第5の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第6の位置に出現する。第1の扇形電場から第6の位置で出現するイオンは、その後第4の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置に出現する。第4の扇形電場から第2の位置で出現するイオンは、好ましくはその後第1の扇形電場に第7の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第8の位置に出現する。第1の扇形電場から第8の位置で出現するイオンは、好ましくはその後第5の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置に出現する。第5の扇形電場から第2の位置で出現するイオンは、好ましくはその後第1の扇形電場に第9の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第10の位置に出現する。第1の扇形電場から第10の位置で出現するイオンは、好ましくはその後第6の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置に出現する。第6の扇形電場から第2の位置で出現するイオンは、好ましくはその後第1の扇形電場に第11の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第12の位置に出現する。x−z平面は、好ましくはy−z平面と直交する。
【0035】
質量分析器は、イオンを第1の方向に集束させるための1つ以上のイオン光学デバイスをさらに含み得る。質量分析器は、好ましくはイオンを第1の方向と直交する第2の方向に集束させるための1つ以上のイオン光学デバイスをさらに含み得る。1つ以上のイオン光学デバイスは、1つ以上の四重極ロッドセット、1つ以上の静電レンズ構成体または1つ以上のアインツェルレンズ構成体を含み得る。
【0036】
質量分析器は、好ましくはイオンを質量分析器中へおよび/または質量分析器から、直交して抽出、直交して加速、直交して注入または直交して排出するための手段をさらに含む。
【0037】
質量分析器は、閉ループ形状または開ループ形状を有し得る。
【0038】
一実施形態によると、質量分析器は、イオンをイオン検出器上へ偏向するための1つ以上の偏向電極をさらに含み得る。イオンをイオン検出器上へ偏向するために、好ましくはパルス化電圧が1つ以上の偏向電極に印加される。
【0039】
質量分析器は、好ましくはイオン検出器をさらに含む。イオン検出器は、マイクロチャネルプレートイオン検出器を含み得る。
【0040】
質量分析器は、一実施形態によると、1つ以上の検出器プレートをさらに含み、1つ以上の検出器プレートを通るイオンは、1つ以上の検出器プレート上へ電荷を誘導させ得る。質量分析器は、質量分析器の1周または1旋回当りのイオンの飛行時間を決定するためのフーリエ変換解析手段をさらに含み得る。
【0041】
質量分析器は、好ましくは飛行時間質量分析器またはフーリエ変換質量分析器を含む。
【0042】
本発明の別の局面によると、上記のような質量分析器を含む質量分析計が提供される。
【0043】
質量分析計は、好ましくはイオン源をさらに含む。イオン源は、好ましくは(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、および(xvi)ニッケル−63放射性イオン源からなる群から選択される。
【0044】
イオン源は、連続イオン源を含み得る。使用時に質量分析器へ移送されるイオンのパルスを提供するためのイオンゲートおよび/またはイオントラップおよび/またはパルス化デフレクタが提供され得る。あるいは、イオン源は、パルス化イオン源をさらに含み得る。質量分析計は、好ましくは質量分析器の上流および/または内部および/または下流に配置される1つ以上の質量フィルタをさらに含み得る。1つ以上の質量フィルタは、(i)四重極ロッドセット質量フィルタ、(ii)飛行時間質量フィルタまたは質量分析器、(iii)ウィーンフィルタ、および(iv)扇形磁場質量フィルタまたは質量分析器からなる群から選択され得る。
【0045】
質量分析計は、質量分析器の上流および/または内部および/または下流に配置される1つ以上のイオンガイドまたはイオントラップをさらに含み得る。
【0046】
一実施形態によると、質量分析計は、質量分析器の少なくとも一部を(i)<10-7mbar、(ii)<10-6mbar、(iii)<10-5mbar、(iv)<10-4mbar、(v)<10-3mbar、および(vi)>10-3mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成および適合される手段をさらに含み得る。
【0047】
質量分析計は、質量分析器の上流および/または内部および/または下流に配置される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスをさらに含み得る。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、好ましくは(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(vii)赤外放射誘起解離デバイス、(viii)紫外放射誘起解離デバイス、(ix)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(x)インソースフラグメンテーションデバイス、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiii)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xiv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイス、および(xxviii)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイスからなる群から選択される。
【0048】
本発明の別の局面によると、イオンを質量分析する方法であって、
イオンを第1の扇形電場に渡す工程と、
次いで、イオンを第2の扇形電場に渡す工程であって、第2の扇形電場は、第1の扇形電場に直交するように配置される、工程と
を含む方法が提供される。
【0049】
本発明の一局面によると、
第1の扇形電場と、
第2の扇形電場であって、第2の扇形電場は、第1の扇形電場に直交するように配置される、第2の扇形電場と
を含む閉ループ質量分析器であって、
一動作モードにおいて、イオンは、質量分析器を1周以上周回または旋回し、かつ質量分析器を1周または1旋回する間にイオンは、
(i)第2の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
(ii)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(iii)次いで、第1の扇形電場に第1の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
(iv)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(v)次いで、第2の扇形電場に第3の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第4の位置で出現し、
(vi)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(vii)次いで、第1の扇形電場に第3の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第4の位置で出現し、
(viii)次いで、フィールドフリー領域を通り、
x−z平面は、y−z平面と直交する、
閉ループ質量分析器が提供される。
【0050】
本発明の一局面によると、
イオンを質量分析する方法であって、
第1の扇形電場と、第2の扇形電場であって、第2の扇形電場は、第1の扇形電場に直交するように配置される、第2の扇形電場とを含む閉ループ質量分析器を準備する工程と、
イオンを質量分析器を1周または1旋回以上させる工程であって、質量分析器を1周または1旋回する間にイオンは、
(i)第2の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
(ii)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(iii)次いで、第1の扇形電場に第1の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
(iv)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(v)次いで、第2の扇形電場に第3の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第4の位置で出現し、
(vi)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(vii)次いで、第1の扇形電場に第3の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第4の位置で出現し、
(viii)次いで、フィールドフリー領域を通り、
x−z平面は、y−z平面と直交する、工程と
を含む方法が提供される。
【0051】
本発明の一局面によると、
細長い第1の扇形電場と、
第2の扇形電場と、
第3の扇形電場とを含み、
第2および第3の扇形電場は、第1の扇形電場に直交するように配置される開ループ質量分析器であって、
一動作モードにおいて、イオンは、
(i)第1の扇形電場に第1の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
(ii)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(iii)次いで、第2の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
(iv)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(v)次いで、第1の扇形電場に第3の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第4の位置で出現し、
(vi)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(vii)次いで、第3の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
x−z平面は、y−z平面と直交する、
開ループ質量分析器が提供される。
【0052】
本発明の一局面によると、
イオンを質量分析する方法であって、
細長い第1の扇形電場と、第2の扇形電場と、第3の扇形電場とを含む開ループ質量分析器を準備する工程であって、第2および第3の扇形電場は、第1の扇形電場に直交するように配置される、工程と、
イオンが、
(i)第1の扇形電場に第1の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
(ii)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(iii)次いで、第2の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
(iv)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(v)次いで、第1の扇形電場に第3の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第4の位置で出現し、
(vi)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(vii)次いで、第3の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
x−z平面は、y−z平面と直交する、
ようにさせる工程と
を含む方法が提供される。
【0053】
本発明の一局面によると、
第1の扇形電場と、
第2の扇形電場であって、第2の扇形電場は、第1の扇形電場に直交するように配置される、第2の扇形電場と
イオン検出手段であって、イオン検出手段は、(i)イオンをイオン検出器上へ偏向するための1つ以上の偏向電極、および(ii)1つ以上の検出器プレートであって、1つ以上の検出器プレートを通るイオンが1つ以上の検出器プレート上へ電荷が誘導されるようにする1つ以上の検出器プレート、からなる群から選択され、かつイオン検出手段は、質量分析器の1周または1旋回当りのイオンの飛行時間を決定するためのフーリエ変換解析手段を含む、イオン検出手段とを含むマルチターン飛行時間質量分析器が提供される。
【0054】
本発明の一局面によると、
イオンを質量分析する方法であって、
第1の扇形電場と、第2の扇形電場とを含み、第2の扇形電場は、第1の扇形電場に直交するように配置される、マルチターン飛行時間質量分析器を準備する工程と、
(i)イオンをイオン検出器上へ偏向する1つ以上の偏向電極を提供すること、または(ii)1つ以上の検出器プレートであって、1つ以上の検出器プレートを通るイオンが1つ以上の検出器プレート上へ電荷が誘導されるようにする1つ以上の検出器プレートを提供すること、のいずれかによってイオンを検出する工程とを含み、
前記方法が前記質量分析器の1周または1旋回当りのイオンの飛行時間を決定するためのフーリエ変換解析を更に含む方法が提供される。
【0055】
本発明の別の局面によると、
複数の第1の扇形電場区分を含む第1の扇形電場であって、各第1の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、第1の扇形電場と
複数の第2の扇形電場区分を含む第2の扇形電場であって、各第2の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、第2の扇形電場と
を含む質量分析器であって、
第2の扇形電場区分は、第1の扇形電場区分と直交するように配置される、
質量分析器が提供される。
【0056】
本発明の別の局面によると、
イオンを質量分析する方法であって、
イオンを複数の第1の扇形電場区分を含む第1の扇形電場に渡す工程であって、各第1の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、工程と、
イオンを複数の第2の扇形電場区分を含む第2の扇形電場に渡す工程であって、各第2の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、工程と
を含む方法であって、
第2の扇形電場区分は、第1の扇形電場区分と直交するように配置される、
方法が提供される。
【0057】
本発明の別の局面によると、
使用時に、イオンが第1の平面および第1の平面と直交する第2の平面において移送される、閉ループ飛行時間またはフーリエ変換質量分析器が提供される。
【0058】
本発明の別の局面によると、
使用時に、イオンが第1の平面および第1の平面と直交する第2の平面において移送される、開ループ飛行時間またはフーリエ変換質量分析器が提供される。
【0059】
本発明の別の局面によると、
イオンを質量分析する方法であって、
閉ループ飛行時間またはフーリエ変換質量分析器を準備する工程と、
イオンを第1の平面および第1の平面と直交する第2の平面において移送する工程と
を含む方法が提供される。
【0060】
本発明の別の局面によると、
イオンを質量分析する方法であって、
開ループ飛行時間またはフーリエ変換質量分析器を準備する工程と、
イオンを第1の平面および第1の平面と直交する第2の平面において移送する工程と
を含む方法が提供される。
【0061】
本発明の別の局面によると、
1つ以上の第1の扇形電場区分を含む第1の扇形電場であって、各第1の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、第1の扇形電場と
1つ以上の第2の扇形電場区分を含む第2の扇形電場であって、各第2の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、第2の扇形電場と、
1つ以上の第3の扇形電場区分を含む第3の扇形電場であって、各第3の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、第3の扇形電場と
を含む質量分析器であって、
1つ以上の第2の扇形電場区分は、1つ以上の第1の扇形電場区分と直交するように配置され、かつ1つ以上の第3の扇形電場区分は、1つ以上の第1の扇形電場区分または1つ以上の第2の扇形電場区分のいずれか一方と直交するように配置される、
飛行時間またはフーリエ変換質量分析器が提供される。
【0062】
本発明の別の局面によると、
イオンを質量分析する方法であって、
飛行時間またはフーリエ変換質量分析器を準備する工程と、
イオンを1つ以上の第1の扇形電場区分を含む第1の扇形電場に渡す工程であって、各第1の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、工程と、
イオンを1つ以上の第2の扇形電場区分を含む第2の扇形電場に渡す工程であって、各第2の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、工程と、
イオンを1つ以上の第3の扇形電場区分を含む第3の扇形電場に渡す工程であって、各第3の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、工程と
を含み、
1つ以上の第2の扇形電場区分は、1つ以上の第1の扇形電場区分と直交するように配置され、かつ1つ以上の第3の扇形電場区分は、1つ以上の第1の扇形電場区分または1つ以上の第2の扇形電場区分のいずれか一方と直交するように配置される、
方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下に、本発明の種々の実施形態を、あくまで例として、添付の図面を参照して説明する。
【0064】
図1は、本発明の一実施形態に係る閉ループ形状を有するマルチターン飛行時間質量分析器を示す。
【0065】
図2は、本発明の一実施形態に係るマルチターン飛行時間質量分析器であって、イオンが質量分析器中に直交加速されるマルチターン飛行時間質量分析器を示す。
【0066】
図3は、本発明のさらなる実施形態に係るマルチターン飛行時間質量分析器であって、開ループ形状を有するマルチターン飛行時間質量分析器を示す。
【0067】
図4は、180°扇形電場が2つの45°扇形電場および1つの90°扇形電場によって形成される実施形態を示す。
【0068】
図5は、3つの扇形電場区分がさらなる3つの扇形電場区分に直交するように配置される実施形態を示す。
【0069】
以下に、図1に示すような本発明の一好適な実施形態を考えながら、マルチターン飛行時間質量分析器における完全集束の概念を説明する。完全集束の概念を説明する一番良い例として、完全なマルチターン飛行時間質量分析器のための伝達行列を考える。図1に示すように光軸上に原点Oを有し、かつz方向が初期曲線光軸に沿う座標系(x,y,z)が定義され得る。一定質量のイオンの幾何軌道は、位置ベクトル(x,α,y,β,δ)によって表され、ここで、x、y、α、βは、注目イオンの基準イオンに対する横方向偏移量および角偏移量を表す。基準イオンに対するエネルギー偏移量は、以下の式によって定義され得る。
【0070】
【数2】

【0071】
ここで、U/qおよびU0/q0は、それぞれ任意の注目イオンおよび基準イオンの、電荷に対する運動エネルギーの比である。定義上、基準イオンは、ゼロ初期ベクトル状態を有する。
【0072】
飛行時間拡散を決定するために、経路長偏移量Lの概念が、位置ベクトルに含められる。最終の位置ベクトルは、以下に示すように、一次伝達行列によって初期位置ベクトルに関係付けられる。
【0073】
【数3】

【0074】
Δtを計算するには、Lを基準イオンの速度で割ればよい。
【0075】
質量分析器の各光学構成要素または部分に対する伝達行列は、そのパラメータが公知の場合、一次まで数値計算され得る。完全な系は、扇形電場、四重極レンズ(または、アインツェルレンズ)およびフィールドフリードリフト空間などのいくつかのイオン光学構成要素を含む。総伝達行列は、各個々のイオン光学構成要素に対応する行列を乗算することによって決定され得る。
【0076】
イオンパケットの寸法を保存するには、〈x|x〉、〈y|y〉、〈α|α〉および〈β|β〉は、±1(unity)であればよい。xおよびyにおいて角度集束を保存するには、〈x|α〉および〈x|β〉は、ゼロであればよい。さらに、横方向寸法を維持するには、〈x|δ〉および〈y|δ〉は、ゼロであればよい。また、角偏移量の絶対値を維持するには、〈α|x〉、〈α|δ〉、〈β|y〉および〈β|δ〉は、ゼロであればよい。
【0077】
飛行時間質量分析器については、経路長偏移量は、増加しなければよい。したがって、Δtを最小化するためには、以下のようになる。
【0078】
【数4】

【0079】
したがって、上記のような総伝達行列の17個の行列要素は、上記の必要な条件を満足するように構成されればよい。これは、シンプレックス法を使用して上記集束条件が満足される種々の形状に対する数値解を探すことによって実現され得る。
【0080】
上記好適な実施形態によると、図1に示すように互いに直交する2つの180°円筒形扇形電場5、8を配置することにより、非常に長い実効飛行経路を有しながらもコンパクトな形状および比較的小さなサイズを有する飛行時間質量分析器が提供される。x方向の集束が、y方向の集束を実現するために使用されるものと同一のイオン光学構成要素を使用して実現される点が有利である。上記好適な実施形態は、集束を実現するためにマツダプレートや複雑なトロイダル構成要素を使用する必要がない点が有利である。
【0081】
上記好適な実施形態に係る集束の対称性は、xまたはy平面のいずれかにおいて完全集束条件を満たせばよいので質量分析器全体の設計が簡単になる。四重極ロッドセット6、7、9〜14またはアインツェルレンズなどのオプションのさらなる集束要素が、完全集束条件を二次以上まで満たすために扇形電場5、8の間に適宜配置され得る。
【0082】
一実施形態によると、イオンは、1つ以上の電極プレートを含むイオン検出器(図示せず)によって検出され得る。1つ以上の電極プレートは、好ましくはイオンの飛行経路に隣接するように配置される。イオンが1つ以上の電極プレートを飛行して通り過ぎると、電荷が好ましくは1つ以上の電極プレート上に誘導される。次いで、得られた電圧信号は、好ましくは時間領域内に記録される。次いで、電圧信号は、好ましくは時間領域から周波数領域へ変換される。しかし、FT−ICR機器と異なり、イオン検出器は、サイクロトロン周波数を測定しない。その代わりに、イオン検出器は、質量分析器の1周または1旋回当りの飛行時間を測定する。質量分析器の1周または1旋回当りの測定飛行時間は、
【0083】
【数5】

【0084】
に比例する。生時間データのフーリエ解析によって、質量および存在量スペクトルが生成され得る。この実施形態によると、比較的低い質量対電荷比を有するイオンが、比較的高い質量対電荷比を有するイオンを追い抜いても(一周以上抜いても)、問題はない。なぜなら、イオンの質量対電荷比は、イオンの1周または1旋回当りの飛行時間から決定され得るからである。
【0085】
質量分析器は、好ましくは2つの同一の180°扇形電場5、8を含む。扇形電場5、8は、イオンが好ましくはそれぞれyおよびx方向に集束される(角度および位置において)ように、好ましくは互いに直交するように配置される。イオンは、好ましくは183mmの平均半径上で第1および第2の扇形電場5、8を通って飛行するように構成される。加えて、x方向におけるさらにより高次の集束(およびこれに対応するy方向における非集束)が、好ましくは第1の扇形電場5の近傍に配置される4つの好ましくは同一の四重極ロッドセット6、10、11、14を使用して、適宜実現され得る。同様に、y方向におけるより高次の集束(およびこれに対応するx方向における非集束)が、好ましくは第2の扇形電場8の近傍に配置される4つの好ましくは同一の四重極ロッドセット7、9、12、13を使用して、適宜実現され得る。すべての8つの四重極ロッドセット6、7、9〜14は、好ましくは同一であり、および各四重極ロッドセットは、好ましくは4つの同一のロッドを含む。好ましくは、イオンをx方向に集束させる4つの四重極ロッドセット6、10、11、14は、好ましくはイオンをy方向に集束させる4つの四重極ロッドセット7、9、12、13に対して180°回転される。
【0086】
上記好適な実施形態によると、質量分析計は、好ましくはレーザ1およびMALDI試料または標的プレート2を含むマトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源を含み得る。レーザ1からのレーザビームは、好ましくは試料をイオン化するためにMALDI試料または標的プレート2上に方向付けられる。その結果得られるイオンのパルスは、好ましくは試料または標的プレート2から遠ざかり、質量分析器に向かって加速される。イオンは、好ましくは715eVの運動エネルギーを有するように加速される。次いで、イオンは、好ましくは、第1の扇形電場5の両電極を好ましくは接地ポテンシャルに維持しながら、第1の扇形電場5の外側電極における小さな遮蔽穴4に通すことによって質量分析器に注入される。注目イオンのすべてが質量分析器に入ったら、次いで+100Vの電圧が好ましくは第1の扇形電場5の外側電極に印加され、かつ、−100Vの電圧が好ましくは第1の扇形電場5の内側電極に印加される。同時に、第2の扇形電場8の外側電極は、好ましくは+100Vの一定電圧に維持され、かつ第2の扇形電場8の内側電極は、好ましくは−100Vの一定電圧に維持される。質量分析器に注入されたイオンは、好ましくは四重極ロッドセット6を通り、次いでフィールドフリー領域を通って走行する。
【0087】
上記好適な質量分析器の動作原理を例示するために、イオンは、好ましくは穴あるいはイオン入口ポート4の下流のフィールドフリー領域の中央の2つの扇形電場5、8の間の中間点に位置する仮想原点Oから開始すると考えられ得る。イオンは、好ましくは原点Oから第2の扇形電場8へ向かって移動し続け、そして長さFFR/2を有するフィールドフリー領域を通過する。次いで、好ましくは、イオンは、好ましくはイオンをy平面内に集束させる(これに対応してx平面内では非集束動作する)長さLQを有する四重極ロッドセット7を通過する。次いで、イオンは、好ましくは長さFFRqを有する短いフィールドフリー領域を通った後、第2の扇形電場8に入射する。イオンは、好ましくは第2の扇形電場8に入射し、そして好ましくはx平面内に集束される。
【0088】
イオンは、好ましくは第2の扇形電場8の回りを走行し、次いで、好ましくは長さFFRqを有するさらなる短いフィールドフリー領域を通る。次いで、イオンは、好ましくは四重極ロッドセット9によってy平面内に集束される。四重極ロッドセット9は、好ましくは長さLQを有する。次いで、好ましくは、イオンは、好ましくはイオンをx平面内に集束させる四重極ロッドセット10に到達するまで、長さFFRを有するフィールドフリー領域を通る。イオンは、好ましくは長さLQを有する四重極ロッドセット10を好ましくは通り、次いで、好ましくは長さFFRqを有する短いフィールドフリー領域を好ましくは通る。次いで、イオンは、好ましくは第1の扇形電場5に入射し、そして好ましくはy平面内に集束される。
【0089】
イオンは、好ましくは第1の扇形電場5の回りを走行し、次いで好ましくは長さFFRqを有する短いフィールドフリー領域を通る。次いで、イオンは、好ましくは四重極ロッドセット11によってx平面内に集束される。四重極ロッドセット11は、好ましくは長さLQを有する。次いで、好ましくは、イオンは、好ましくはイオンをy平面内に集束させる四重極ロッドセット12に達するまで、長さFFRを有するフィールドフリー領域を通過する。イオンは、好ましくは長さLQを有する四重極ロッドセット12を好ましくは通過し、次いで好ましくは長さFFRqを有する短いフィールドフリー領域を好ましくは通る。次いで、イオンは、好ましくは第2の扇形電場8に入射し、そして好ましくはx平面内に集束される。
【0090】
イオンは、好ましくは第2の扇形電場8の回りを走行し、次いで好ましくは長さFFRqを有する短いフィールドフリー領域を通る。次いで、イオンは、好ましくは四重極ロッドセット13によってy平面内に集束される。四重極ロッドセット13は、好ましくは長さLQを有する。次いで、好ましくは、イオンは、好ましくはイオンをx平面内に集束させる四重極ロッドセット14に達するまで、長さFFRを有するフィールドフリー領域を通過する。イオンは、好ましくは長さLQを有する四重極ロッドセット14を好ましくは通過し、次いで好ましくは長さFFRqを有する短いフィールドフリー領域を好ましくは通る。次いで、イオンは、好ましくは第1の扇形電場5に入射し、そして好ましくはy平面内に集束される。
【0091】
イオンは、好ましくは第1の扇形電場5の回りを走行し、次いで好ましくは長さFFRqを有する短いフィールドフリー領域を通る。次いで、イオンは、好ましくは四重極ロッドセット6によってx平面内に集束される。四重極ロッドセット6は、好ましくは長さLQを有する。次いで、イオンは、好ましくはイオンが原点Oに戻るまで、長さFFR/2を有するフィールドフリー領域を通る。イオンは、原点Oに到達すると、質量分析器をちょうど1周する。好ましくは質量分析器内に位置するすべての四重極ロッドセット6、7、9〜14は、好ましくは実質的に同じ電圧が印加され、かつ好ましくは実質的に同じ寸法を有する。
【0092】
上記好適な実施形態によると、+/−36.57Vの電圧が好ましくは四重極ロッドセット6、7、9〜14のすべての対向するロッド対に印加される。四重極ロッドセット6、7、9〜14は、好ましくはそれぞれ4つのロッドを有する。各ロッドは、好ましくは長さが20mmである。ロッドの内接半径は、好ましくは15mmである。2つの四重極ロッドセット間の比較的長いフィールドフリー領域FFRは、好ましくは780mmであり、かつ四重極ロッドセット6、7、9〜14と扇形電場5、8との間の比較的短いフィールドフリー領域FFRqは、好ましくは2.6mmである。
【0093】
上記好適な実施形態によると、半周後、イオンは、好ましくは再集束される。しかし、画像が反転されるので、上記のような完全集束が実現されない。質量分析器をちょうど1周した後は、総伝達行列の要素の値は、以下のように計算される。
【0094】
【数6】

【0095】
したがって、上記好適な実施形態に係る質量分析器は、少なくとも一次近似の完全集束を実現することが分かる。四重極ロッドセット6、7、9〜14は、好ましくは二次以上まで完全集束が実現されることを確実にする。
【0096】
上記好適な質量分析器の1周の総経路長は、好ましくは5.597mであり、かつ質量対電荷比が1000であるイオンに対して、マルチターン飛行時間質量分析器による一次の総Δt偏差は、x0=1mm、α0=1mrad、y0=1mm、β0=1mrad、δ0=0.01およびL0=0である入力条件下で1ps未満である。
【0097】
一実施形態によると、イオンは、イオンを質量分析器の回りの軌道から逸らし、次いでイオンをイオン検出器16上へ方向付けることによって検出され得る。この実施形態によると、好ましくはイオン経路を横切ってまたは隣接して配置される一対の偏向プレート15が好ましくは設置される。偏向プレート対15には、好ましくはDC電圧がプログラム可能な時間遅延後に印加される。好ましくは軌道から逸れたイオンは、好ましくはイオン検出器16を形成する一対のマイクロチャネルプレート16によって好ましくは検出される。
【0098】
イオンが質量分析器を複数回周回することが可能な場合、記録されたスペクトルデータに質量を割り当てることがより難しくなる。なぜなら、比較的低い質量対電荷比を有するイオンは、比較的高い質量対電荷比を有するイオンを複数回追い抜くことがあるからである。質量をスペクトルに割り当てるためには、電圧パルスが偏向プレート15に印加された際の、特定の質量対電荷比を有するイオンが回った正確な回数または周数を知ることが必要である。周数を比較的低く維持すれば、ピーク割り当て処理は、特に問題にはならない。しかし、複雑なスペクトルを有するより大きな周数に対しては、異なるプログラム可能な遅延時間後に複数のスペクトルを取得することによってピーク割り当てが実現され得る。異なるスペクトル内のピークを関連付け、そして適切な較正アルゴリズムを適用することによって、関連付けられたピークの正確な回数が計算されるので、信頼のある質量割り当てが可能になる。
【0099】
したがって、この実施形態によると、複数セットのデータが異なる時刻に取得され、かつDC電圧が印加された際の偏向プレート15間の位置に存在し得るイオンの質量対電荷比が各データセットに対して決定され得る。次いで、複数セットのデータを分析し、そしてデータセットにおいて観察されるイオンの質量対電荷比を導き出すことが可能である。
【0100】
別の実施形態によると、扇形電場のうちの1つ(この場合、第2の扇形電場8)に印加される電圧は、イオンが注目の扇形電場の外側電極に設置される穴あるいはイオン出口ポート18を通って流れ出ることを可能にするようにOFFに切り換えられ得る。次いで、イオンは、マイクロチャネルプレートイオン検出器19などのイオン検出器によって検出され得る。やはり、異なる遅延時間後に複数のスペクトルが取得され得る。異なるスペクトル内のピークは、適切な較正アルゴリズムを使用して関連付けられ、かつ質量対電荷比が、ピークに割り当てられ得る。
【0101】
さらにおよび/またはあるいは、イオンは、イオンが飛行して検出器プレートを通過する際に検出器プレート上に誘導される電荷によって生じる電圧信号を測定することによって検出され得る。一実施形態によると、第1の扇形電場5と第2の扇形電場8との間に生成される電圧差が使用され得る。高インピーダンス抵抗器17を通って流れる電荷は、測定可能な電圧信号を提供する。次いで、電圧信号はフーリエ変換解析され、そして周波数スペクトルが生成され得る。
【0102】
【数7】

【0103】
に比例する1周または1旋回当りの飛行時間が測定され得、次いで、質量スペクトルが生成され得る。
【0104】
ここで、イオンを質量分析器に注入する別の方法を図2を参照して説明する。この実施形態によると、イオンビーム20からのイオンは、好ましくはイオン注入デバイス21を使用して上記好適な質量分析器の経路中へ直角に加速される。イオン注入デバイス21は、好ましくは対応する加速光学系および集束光学系を有する一対の電極プレートを含む。電極プレートは、好ましくは質量分析器を通るイオン経路に直交する平面内に配置される。一旦イオンが質量分析器中に直角に注入されると、イオン注入デバイス21に印加される電圧が次いで好ましくは接地に戻される。電極プレートおよび加速光学系は、好ましくはイオンビームが実質的に妨害されずにイオン注入デバイス21を通ることが可能となるように100%透過開口(グリッドではなく)を有する。
【0105】
本発明の別の実施形態に係る質量分析器を図3に示す。この実施形態によると、質量分析器は、閉ループ形状ではなく、開ループ形状を有する。質量分析器は、好ましくは第1の細長い扇形電場32および複数の他のより小さい扇形電場33a〜33eを含む。より小さい扇形電場33a〜33eは、好ましくは第1の細長い扇形電場32に対して直交しかつ千鳥状に配置される。イオン検出器34が、好ましくは扇形電場32、33a〜33eの下流に設置される。イオン検出器34は、好ましくはマイクロチャネルプレート検出器34を含む。好ましくはMALDIイオン源30を含むイオン源が好ましくは設けられる。好ましくは、イオン源30は、好ましくはパルス化レーザビームを出力するレーザを含む。パルス化レーザビームは、好ましくはMALDI試料または標的プレート31を標的とする。イオンは、好ましくはMALDI試料または標的プレート31の表面から脱着され、そして好ましくは第1の細長い扇形電場32へ向かって加速される。
【0106】
イオンは、好ましくは第1の細長い扇形電場32によって受け取られ、次いで好ましくは第1の細長い扇形電場32の回りを通され、そして好ましくはy方向に集束される。次いで、イオンは、好ましくは第2の扇形電場33aへ移送される。
【0107】
イオンは、好ましくは第2の扇形電場33aの回りを走行し、そして好ましくはx方向に集束される。次いで、イオンは、好ましくは第1の細長い扇形電場32に戻るように移送される。イオンは、好ましくは第1の細長い扇形電場32の回りを走行し、そして好ましくはy方向に集束される。次いで、イオンは、好ましくは第3の扇形電場33bへ移送される。
【0108】
イオンは、好ましくは第3の扇形電場33bの回りを走行し、そして好ましくはx方向に集束される。次いで、イオンは、好ましくは第1の細長い扇形電場32に戻るように移送される。イオンは、好ましくは第1の細長い扇形電場32の回りを走行し、そして好ましくはy方向に集束される。次いで、イオンは、好ましくは第4の扇形電場33cに移送される。
【0109】
イオンは、好ましくは第4の扇形電場33cの回りを走行し、そして好ましくはx方向に集束される。次いで、イオンは、好ましくは第1の細長い扇形電場32に戻るように移送される。イオンは、好ましくは第1の細長い扇形電場32の回りを走行し、そして好ましくはy方向に集束される。次いで、イオンは、好ましくは第5の扇形電場33dに移送される。
【0110】
イオンは、好ましくは第5の扇形電場33dの回りを走行し、そして好ましくはx方向に集束される。次いで、イオンは、好ましくは第1の細長い扇形電場32に戻るように移送される。イオンは、好ましくは第1の細長い扇形電場32の回りを走行し、そして好ましくはy方向に集束される。次いで、イオンは、好ましくは第6の扇形電場33eに移送される。
【0111】
イオンは、好ましくは第6の扇形電場33eの回りを走行し、そして好ましくはx方向に集束される。次いで、イオンは、好ましくは第1の細長い扇形電場32に戻るように移送される。イオンは、好ましくは第1の細長い扇形電場32の回りを走行し、そして好ましくはy方向に集束される。次いで、イオンは、好ましくはイオン検出器34に移送される。
【0112】
第2、第3、第4、第5および第6の扇形電場33a、33b、33c、33d、33eは、好ましくは第1の細長い扇形電場32に対向してかつその長さに沿って千鳥状に配置される。第2、第3、第4、第5および第6の扇形電場33a、33b、33c、33d、33eは、好ましくは第1の細長い扇形電場32および他の扇形電場33a〜33eに沿ってかつそれらの間を前後するようにイオンを有効に通す。
【0113】
x平面および/またはy平面のいずれかにおいてイオンをより高次に集束させるためのさらなる集束手段(図示せず)が第1の扇形電場32および/または他の扇形電場33a〜33e中へまたはそれらからイオンが入射および出射する位置の直前および/または直後に適宜提供され得る。集束手段は、四重極ロッドセットまたはアインツェルレンズ構成体を含み得る。扇形電場32、33a〜33e、フィールドフリー領域および任意のさらなる集束要素に対する組み合わせ伝達行列は、完全集束条件を満足するように構成され得る。
【0114】
一実施形態によると、図3に示すようなマルチパス飛行時間質量分析器の経路長は、13mよりも長い場合がある。扇形電場32、33a〜33eは、一実施形態によると、183mmの半径を有し得る。質量分析器は、非常に長いイオン飛行経路を有し得るが、それにもかかわらず比較的コンパクトであるという利点がある。なぜなら、質量分析器は、折りたたみ形状を有し、かつ好ましくは占有体積が比較的小さいからである。
【0115】
上記種々の実施形態によると、好ましくはイオン移送の損失を最小限に抑えた高質量分解能質量分析器が好ましくは提供される。質量分析器は、図1および図2に示すように閉ループ形状を有し得る。この場合、イオンが互いに追い抜き合うという問題は、質量分析器の1周または1旋回当りの飛行時間を決定すること、または異なる時刻に複数のデータセットを取得し、種々のデータが取得されたときの検出領域に存在するイオンの質量対電荷比を決定することのいずれかによって解決され得る。あるいは、質量分析器は、イオンが互いに追い抜き合うことのない図3に示すような開ループ形状を含み得る。上記実施形態のいくつかによると、イオンを検出するために比較的安価なMCPイオン検出器が使用されるという利点があり得る。
【0116】
図1〜図3に示す実施形態に関連して上記した180°扇形電場のうちの1つ以上が2つ以上のより小さな扇形電場区分に細分される(扇形電場区分の間には、比較的短いドリフト領域がある)さらなる実施形態が考えられる。
【0117】
円筒形扇形電場を通るイオンは、半径方向(すなわち、イオンが偏向または分散される平面(例えば、y)内)に集束作用を受ける。イオンは、偏向または分散される平面に垂直な方向(円筒形扇形電場の湾曲軸に平行な方向(例えば、z))には集束作用を受けない。
【0118】
円筒形扇形電場の扇形角度をΦeとすると、扇形電場のy方向における集束特性は、ニュートンの厚レンズ公式によって与えられる。
【0119】
【数8】

【0120】
ここで、
【0121】
【数9】

【0122】
式中、reは、イオン軌道の曲率半径であり、le’は、オブジェクト長(イオン源から扇形電場の入口までの距離)、およびle’’は、画像長さ(扇形電場の出口からイオン源の集束画像までの距離)である。
【0123】
イオンビームの無収差集束のためには、イオンが2つの直交する扇形電場を何周するかに関係なく、2つの要件がある。第1に、2つの扇形電場を通る2つの180°円弧および2つの扇形電場間の4つのフィールドフリー領域(d)を有する1周の完全な経路長が、(i)その1周のある点でy方向の線上に形成されるイオンが、次の周の同じ点に到達した際にy方向の線上に再集束され、かつ(ii)その1周のある点でx方向の直線上に形成されるイオンが、次の周の同じ点に到達した際にx方向の線上に再集束される、距離に等しい距離に対応すればよい。第2に、各扇形電場の集束特性が、y方向およびx方向の再集束される線がそれぞれ等倍率を有するようなものであればよい。
【0124】
これらの要件の結果として、1つの扇形電場に対するオブジェクト距離le’および画像距離le’’の合計は、2つの扇形電場間の2つのフィールドフリー領域(d)および他の扇形電場を通る180°円弧を含む経路長に等しければよい。さらに、各扇形電場に対して、オブジェクト長さle’は、画像距離le’’に等しければよい。このように、各扇形電場に対して、以下のようになる。
【0125】
【数10】

【0126】
Φe=Πおよびle’=le’’=leを上記式6に代入すると、le=0.929reとなる。したがって、式10に対してdが正の値となる完全な解は、存在しない。
【0127】
上記好適な実施形態によると、2つの180°扇形電場は、それぞれ2つ以上の扇形電場区分に細分され得る(扇形電場区分間には間隔がある)。扇形電場区分の扇形角度の合計は、好ましくは180°である。この実施形態は、質量分析器のより大きな設計自由度を提供する。
【0128】
図4および図5は、各扇形電場が3つのより小さい扇形電場区分40a〜40cに細分され、それぞれ45°、90°および45°の扇形角度を有する一好適な実施形態を示す。より小さな扇形電場区分それぞれの間の間隔は、0.9reであり、かつ2つの直交する扇形電場の間隔は、reである。例えば、図4において、各扇形電場におけるイオン軌道の曲率半径reは、100mmであり、より小さな扇形電場区分それぞれの間の間隔は、90mmであり、かつ2つの直交する扇形電場構成体の間隔は、100mmである。
【0129】
この実施形態によると、扇形電場区分の2つの直交するセットは、イオンの質量分析器回りの各周回に対して等倍率の完全な無収差集束を提供する。
【0130】
図4および図5を参照して上記した例は、各周回に対して等倍率の完全な無収差集束を提供する設計の一例に過ぎない。種々の別の設計および変形も可能である。
【0131】
本発明を好適な実施形態を参照して説明してきたが、添付の特許請求の範囲に記載された発明の範囲を逸脱することなく種々の変更が形態および詳細においてなされ得ることが当業者に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る閉ループ形状を有するマルチターン飛行時間質量分析器を示す。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るマルチターン飛行時間質量分析器であって、イオンが質量分析器中に直交加速されるマルチターン飛行時間質量分析器を示す。
【図3】図3は、本発明のさらなる実施形態に係るマルチターン飛行時間質量分析器であって、開ループ形状を有するマルチターン飛行時間質量分析器を示す。
【図4】図4は、180°扇形電場が2つの45°扇形電場および1つの90°扇形電場によって形成される実施形態を示す。
【図5】図5は、3つの扇形電場区分がさらなる3つの扇形電場区分に直交するように配置される実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の扇形電場と、
第2の扇形電場であって、前記第2の扇形電場は、前記第1の扇形電場に直交するように配置される、第2の扇形電場と
を含む質量分析器。
【請求項2】
前記第1の扇形電場は、1つの扇形電場を含む、請求項1に記載の質量分析器。
【請求項3】
前記第1の扇形電場は、180°扇形電場を含む、請求項1または2に記載の質量分析器。
【請求項4】
前記第1の扇形電場は、複数の第1の扇形電場区分を含む、請求項1に記載の質量分析器。
【請求項5】
前記第1の扇形電場は、2、3、4、5、6、7、8、9、10個または10個より多くの第1の扇形電場区分を含む、請求項4に記載の質量分析器。
【請求項6】
前記第1の扇形電場区分のうちの1つ以上は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、請求項4または5に記載の質量分析器。
【請求項7】
前記複数の第1の扇形電場区分は、それぞれ扇形角度を有し、かつ前記複数の第1の扇形電場区分の扇形角度の合計は、180°である、請求項4、5または6に記載の質量分析器。
【請求項8】
前記第1の扇形電場は、第1の湾曲プレート電極および第2の湾曲プレート電極を含む半円筒形扇形電場を含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項9】
一動作モードにおいて、前記第1の扇形電場の前記第1の湾曲プレート電極は、前記第1の扇形電場の前記第2の湾曲プレート電極とは反対の極性に維持される、請求項8に記載の質量分析器。
【請求項10】
一動作モードにおいて、前記第1の扇形電場の前記第1の湾曲プレート電極は、(i)0V、(ii)0〜20V、(iii)20〜40V、(iv)40〜60V、(v)60〜80V、(vi)80〜100V、(vii)100〜120V、(viii)120〜140V、(ix)140〜160V、(x)160〜180V、(xi)180〜200V、(xii)200〜300V、(xiii)300〜400V、(xiv)400〜500V、(xv)500〜600V、(xvi)600〜700V、(xvii)700〜800V、(xviii)800〜900V、(xix)900〜1000V、(xx)1〜2kV、(xxi)2〜3kV、(xxii)3〜4kV、(xxiii)4〜5kV、および(xxiv)>5kVからなる群から選択される電位に維持される、請求項8または9に記載の質量分析器。
【請求項11】
一動作モードにおいて、前記第1の扇形電場の前記第2の湾曲プレート電極は、(i)0V、(ii)0〜−20V、(iii)−20〜−40V、(iv)−40〜−60V、(v)−60〜−80V、(vi)−80〜−100V、(vii)−100〜−120V、(viii)−120〜−140V、(ix)−140〜−160V、(x)−160〜−180V、(xi)−180〜−200V、(xii)−200〜−300V、(xiii)−300〜−400V、(xiv)−400〜−500V、(xv)−500〜−600V、(xvi)−600〜−700V、(xvii)−700〜−800V、(xviii)−800〜−900V、(xix)−900〜−1000V、(xx)−1〜−2kV、(xxi)−2〜−3kV、(xxii)−3〜−4kV、(xxiii)−4〜−5kV、および(xxiv)<−5kVからなる群から選択される電位に維持される、請求項8、9または10に記載の質量分析器。
【請求項12】
前記質量分析器は、前記第1の扇形電場内に設けられるイオン入口ポートであって、使用時にイオン源からのイオンが前記イオン入口ポートを介して前記質量分析器中に導入される、イオン入口ポートをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項13】
前記第1の扇形電場は、第1の方向に移送中のイオンを受け取るように構成され、かつ前記第1の方向とは反対の第2の方向にイオンを排出するように構成される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項14】
前記第2の扇形電場は、1つの扇形電場を含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項15】
前記第2の扇形電場は、180°扇形電場を含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項16】
前記第2の扇形電場は、複数の第2の扇形電場区分を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項17】
前記第2の扇形電場は、2、3、4、5、6、7、8、9、10個または10個より多くの第2の扇形電場区分を含む、請求項16に記載の質量分析器。
【請求項18】
前記第2の扇形電場区分のうちの1つ以上は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、請求項16または17に記載の質量分析器。
【請求項19】
前記複数の第2の扇形電場区分は、それぞれ扇形角度を有し、かつ前記複数の第2の扇形電場区分の扇形角度の合計は、180°である、請求項16、17または18に記載の質量分析器。
【請求項20】
前記第2の扇形電場は、第1の湾曲プレート電極および第2の湾曲プレート電極を含む半円筒形扇形電場を含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項21】
一動作モードにおいて、前記第2の扇形電場の前記第1の湾曲プレート電極は、前記第2の扇形電場の前記第2の湾曲プレート電極とは反対の極性に維持される、請求項20に記載の質量分析器。
【請求項22】
一動作モードにおいて、前記第2の扇形電場の前記第1の湾曲プレート電極は、(i)0V、(ii)0〜20V、(iii)20〜40V、(iv)40〜60V、(v)60〜80V、(vi)80〜100V、(vii)100〜120V、(viii)120〜140V、(ix)140〜160V、(x)160〜180V、(xi)180〜200V、(xii)200〜300V、(xiii)300〜400V、(xiv)400〜500V、(xv)500〜600V、(xvi)600〜700V、(xvii)700〜800V、(xviii)800〜900V、(xix)900〜1000V、(xx)1〜2kV、(xxi)2〜3kV、(xxii)3〜4kV、(xxiii)4〜5kV、および(xxiv)>5kVからなる群から選択される電位に維持される、請求項20または21に記載の質量分析器。
【請求項23】
一動作モードにおいて、前記第2の扇形電場の前記第2の湾曲プレート電極は、(i)0V、(ii)0〜−20V、(iii)−20〜−40V、(iv)−40〜−60V、(v)−60〜−80V、(vi)−80〜−100V、(vii)−100〜−120V、(viii)−120〜−140V、(ix)−140〜−160V、(x)−160〜−180V、(xi)−180〜−200V、(xii)−200〜−300V、(xiii)−300〜−400V、(xiv)−400〜−500V、(xv)−500〜−600V、(xvi)−600〜−700V、(xvii)−700〜−800V、(xviii)−800〜−900V、(xix)−900〜−1000V、(xx)−1〜−2kV、(xxi)−2〜−3kV、(xxii)−3〜−4kV、(xxiii)−4〜−5kV、および(xxiv)<−5kVからなる群から選択される電位に維持される、請求項20、21または22に記載の質量分析器。
【請求項24】
前記質量分析器は、前記第2の扇形電場内に設けられるイオン出口ポートであって、使用時にイオンが前記イオン出口ポートを介して前記質量分析器から出射する、イオン出口ポートをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項25】
前記第2の扇形電場は、第3の方向に移送中のイオンを受け取るように構成され、かつ前記第3の方向とは反対の第4の方向にイオンを排出するように構成される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項26】
第1の動作モードにおいて、イオンは、前記第2の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置に出現する、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項27】
前記第1の動作モードにおいて、前記第2の扇形電場の前記第2の位置から出現するイオンは、その後前記第1の扇形電場に第1の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第2の位置に出現する、請求項26に記載の質量分析器。
【請求項28】
前記第1の動作モードにおいて、前記第1の扇形電場の前記第2の位置から出現するイオンは、その後前記第2の扇形電場に第3の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第4の位置に出現する、請求項27に記載の質量分析器。
【請求項29】
前記第1の動作モードにおいて、前記第2の扇形電場の前記第4の位置から出現するイオンは、その後前記第1の扇形電場に第3の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第4の位置に出現する、請求項28に記載の質量分析器。
【請求項30】
前記第1の動作モードにおいて、前記第1の扇形電場の前記第4の位置から出現するイオンは、その後前記第2の扇形電場の前記第1の位置へ渡る、請求項29に記載の質量分析器。
【請求項31】
前記x−z平面は、前記y−z平面と直交する、請求項27〜30のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項32】
前記質量分析器は、1つ以上のさらなる扇形電場をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項33】
前記質量分析器は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個または10個より多くのさらなる扇形電場を含む、請求項32に記載の質量分析器。
【請求項34】
前記さらなる扇形電場のうちの1つ以上は、1つの扇形電場を含む、請求項32または33に記載の質量分析器。
【請求項35】
前記さらなる扇形電場のうちの1つ以上は、180°扇形電場を含む、請求項32、33または34に記載の質量分析器。
【請求項36】
前記さらなる扇形電場のうちの1つ以上は、複数の扇形電場区分を含む、請求項32または33に記載の質量分析器。
【請求項37】
前記1つ以上のさらなる扇形電場は、2、3、4、5、6、7、8、9、10個または10個より多くのさらなる扇形電場区分を含む、請求項36に記載の質量分析器。
【請求項38】
前記さらなる扇形電場区分のうちの1つ以上は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、請求項36または37に記載の質量分析器。
【請求項39】
前記第2の扇形電場および前記1つ以上のさらなる扇形電場は、千鳥状に配置される、請求項32〜38のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項40】
前記第1の扇形電場は、実質的に細長い、請求項32〜39のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項41】
第1の動作モードにおいて、イオンは、前記第1の扇形電場に第1の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第2の位置に出現する、請求項32〜40のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項42】
前記第1の動作モードにおいて、前記第1の扇形電場の前記第2の位置から出現するイオンは、その後前記第2の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置に出現する、請求項41に記載の質量分析器。
【請求項43】
前記第1の動作モードにおいて、前記第2の扇形電場から前記第2の位置で出現するイオンは、その後前記第1の扇形電場に第3の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第4の位置に出現する、請求項42に記載の質量分析器。
【請求項44】
前記第1の動作モードにおいて、前記第1の扇形電場から前記第4の位置で出現するイオンは、その後第3の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置に出現する、請求項43に記載の質量分析器。
【請求項45】
前記第1の動作モードにおいて、前記第3の扇形電場から前記第2の位置で出現するイオンは、その後前記第1の扇形電場に第5の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第6の位置に出現する、請求項44に記載の質量分析器。
【請求項46】
前記第1の動作モードにおいて、前記第1の扇形電場から前記第6の位置で出現するイオンは、その後第4の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置に出現する、請求項45に記載の質量分析器。
【請求項47】
前記第1の動作モードにおいて、前記第4の扇形電場から前記第2の位置で出現するイオンは、その後第1の扇形電場に第7の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第8の位置に出現する、請求項46に記載の質量分析器。
【請求項48】
前記第1の動作モードにおいて、前記第1の扇形電場から前記第8の位置で出現するイオンは、その後第5の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置に出現する、請求項47に記載の質量分析器。
【請求項49】
前記第1の動作モードにおいて、前記第5の扇形電場から前記第2の位置で出現するイオンは、その後前記第1の扇形電場に第9の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第10の位置に出現する、請求項48に記載の質量分析器。
【請求項50】
前記第1の動作モードにおいて、前記第1の扇形電場から前記第10の位置で出現するイオンは、その後第6の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置に出現する、請求項49に記載の質量分析器。
【請求項51】
前記第1の動作モードにおいて、前記第6の扇形電場から前記第2の位置で出現するイオンは、その後前記第1の扇形電場に第11の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第12の位置に出現する、請求項50に記載の質量分析器。
【請求項52】
前記x−z平面は、前記y−z平面と直交する、請求項41〜51のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項53】
前記質量分析器は、イオンを第1の方向に集束させるための1つ以上のイオン光学デバイスをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項54】
前記質量分析器は、イオンを前記第1の方向と直交する第2の方向に集束させるための1つ以上のイオン光学デバイスをさらに含む、請求項53に記載の質量分析器。
【請求項55】
前記1つ以上のイオン光学デバイスは、1つ以上の四重極ロッドセット、1つ以上の静電レンズ構成体または1つ以上のアインツェルレンズ構成体を含む、請求項53または54に記載の質量分析器。
【請求項56】
前記質量分析器は、イオンを前記質量分析器中へおよび/または前記質量分析器から、直交して抽出、直交して加速、直交して注入または直交して排出するための手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項57】
前記質量分析器は、閉ループ形状を有する、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項58】
前記質量分析器は、開ループ形状を有する、請求項1〜56のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項59】
前記質量分析器は、イオンをイオン検出器上へ偏向するための1つ以上の偏向電極をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項60】
使用時に、イオンを前記イオン検出器上へ偏向するために、パルス化電圧が前記1つ以上の偏向電極に印加される、請求項59に記載の質量分析器。
【請求項61】
前記質量分析器は、イオン検出器をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項62】
前記イオン検出器は、マイクロチャネルプレートイオン検出器を含む、請求項61に記載の質量分析器。
【請求項63】
前記質量分析器は、1つ以上の検出器プレートをさらに含み、前記1つ以上の検出器プレートを通るイオンは、前記1つ以上の検出器プレート上へ電荷を誘導させる、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項64】
前記質量分析器は、前記質量分析器の1周または1旋回当りのイオンの飛行時間を決定するためのフーリエ変換解析手段をさらに含む、請求項63に記載の質量分析器。
【請求項65】
前記質量分析器は、飛行時間質量分析器を含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項66】
前記質量分析器は、フーリエ変換質量分析器を含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器。
【請求項67】
先行する請求項のいずれかに記載の質量分析器を含む質量分析計。
【請求項68】
前記質量分析計は、イオン源をさらに含む、請求項67に記載の質量分析計。
【請求項69】
前記質量分析計は、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、および(xvi)ニッケル−63放射性イオン源からなる群から選択されるイオン源をさらに含む、請求項68に記載の質量分析計。
【請求項70】
前記質量分析計は、連続イオン源をさらに含む、請求項68または69に記載の質量分析計。
【請求項71】
前記質量分析計は、前記質量分析器へ移送されるイオンのパルスを提供するためのイオンゲートおよび/またはイオントラップおよび/またはパルス化デフレクタをさらに含む、請求項70に記載の質量分析計。
【請求項72】
前記質量分析計は、パルス化イオン源をさらに含む、請求項68または69に記載の質量分析計。
【請求項73】
前記質量分析計は、前記質量分析器の上流および/または内部および/または下流に配置される1つ以上の質量フィルタをさらに含む、請求項67〜72のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項74】
前記1つ以上の質量フィルタは、(i)四重極ロッドセット質量フィルタ、(ii)飛行時間質量フィルタまたは質量分析器、(iii)ウィーンフィルタ、および(iv)扇形磁場質量フィルタまたは質量分析器からなる群から選択される、請求項73に記載の質量分析計。
【請求項75】
前記質量分析計は、前記質量分析器の上流および/または内部および/または下流に配置される1つ以上のイオンガイドまたはイオントラップをさらに含む、請求項67〜74のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項76】
前記質量分析計は、前記質量分析器の少なくとも一部を(i)<10-7mbar、(ii)<10-6mbar、(iii)<10-5mbar、(iv)<10-4mbar、(v)<10-3mbar、および(vi)>10-3mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成および適合される手段をさらに含む、請求項67〜75のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項77】
前記質量分析計は、前記質量分析器の上流および/または内部および/または下流に配置される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスをさらに含む、請求項67〜76のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項78】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(vii)赤外放射誘起解離デバイス、(viii)紫外放射誘起解離デバイス、(ix)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(x)インソースフラグメンテーションデバイス、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiii)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xiv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイス、および(xxviii)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイスからなる群から選択される、請求項77に記載の質量分析計。
【請求項79】
イオンを質量分析する方法であって、
イオンを第1の扇形電場に渡す工程と、
次いで、イオンを第2の扇形電場に渡す工程であって、前記第2の扇形電場は、前記第1の扇形電場に直交するように配置される、工程と
を含む方法。
【請求項80】
第1の扇形電場と、
第2の扇形電場であって、前記第2の扇形電場は、前記第1の扇形電場に直交するように配置される、第2の扇形電場と
を含む閉ループ質量分析器であって、
一動作モードにおいて、イオンは、前記質量分析器を1周以上周回または旋回し、かつ前記質量分析器を1周または1旋回する間にイオンは、
(i)前記第2の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
(ii)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(iii)次いで、前記第1の扇形電場に第1の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
(iv)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(v)次いで、前記第2の扇形電場に第3の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第4の位置で出現し、
(vi)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(vii)次いで、前記第1の扇形電場に第3の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第4の位置で出現し、
(viii)次いで、フィールドフリー領域を通り、
前記x−z平面は、前記y−z平面と直交する、
閉ループ質量分析器。
【請求項81】
イオンを質量分析する方法であって、
第1の扇形電場と、第2の扇形電場であって、前記第2の扇形電場は、前記第1の扇形電場に直交するように配置される、第2の扇形電場とを含む閉ループ質量分析器を準備する工程と、
イオンを前記質量分析器を1周または1旋回以上させる工程であって、前記質量分析器を1周または1旋回する間にイオンは、
(i)前記第2の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
(ii)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(iii)次いで、前記第1の扇形電場に第1の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
(iv)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(v)次いで、前記第2の扇形電場に第3の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第4の位置で出現し、
(vi)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(vii)次いで、前記第1の扇形電場に第3の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第4の位置で出現し、
(viii)次いで、フィールドフリー領域を通り、
前記x−z平面は、前記y−z平面と直交する、工程と
を含む方法。
【請求項82】
細長い第1の扇形電場と、
第2の扇形電場と、
第3の扇形電場とを含み、
前記第2および第3の扇形電場は、前記第1の扇形電場に直交するように配置される開ループ質量分析器であって、
一動作モードにおいて、イオンは、
(i)前記第1の扇形電場に第1の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
(ii)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(iii)次いで、前記第2の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
(iv)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(v)次いで、前記第1の扇形電場に第3の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第4の位置で出現し、
(vi)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(vii)次いで、前記第3の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
前記x−z平面は、前記y−z平面と直交する、
開ループ質量分析器。
【請求項83】
イオンを質量分析する方法であって、
細長い第1の扇形電場と、第2の扇形電場と、第3の扇形電場とを含む開ループ質量分析器を準備する工程であって、前記第2および第3の扇形電場は、前記第1の扇形電場に直交するように配置される、工程と、
イオンが、
(i)前記第1の扇形電場に第1の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
(ii)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(iii)次いで、前記第2の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
(iv)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(v)次いで、前記第1の扇形電場に第3の位置で入射し、y−z平面において180°回転され、そして第4の位置で出現し、
(vi)次いで、フィールドフリー領域を通り、
(vii)次いで、前記第3の扇形電場に第1の位置で入射し、x−z平面において180°回転され、そして第2の位置で出現し、
前記x−z平面は、前記y−z平面と直交する、
ようにさせる工程と
を含む方法。
【請求項84】
第1の扇形電場と、
第2の扇形電場であって、前記第2の扇形電場は、前記第1の扇形電場に直交するように配置される、第2の扇形電場と
イオン検出手段であって、前記イオン検出手段は、(i)イオンをイオン検出器上へ偏向するための1つ以上の偏向電極、および(ii)1つ以上の検出器プレートであって、前記1つ以上の検出器プレートを通るイオンが前記1つ以上の検出器プレート上へ電荷が誘導されるようにする1つ以上の検出器プレート、からなる群から選択され、前記イオン検出手段は、前記質量分析器の1周または1旋回当りのイオンの飛行時間を決定するためのフーリエ変換解析手段を含む、イオン検出手段と
を含むマルチターン飛行時間質量分析器。
【請求項85】
イオンを質量分析する方法であって、
第1の扇形電場と、第2の扇形電場とを含み、前記第2の扇形電場は、前記第1の扇形電場に直交するように配置される、マルチターン飛行時間質量分析器を準備する工程と、
(i)イオンをイオン検出器上へ偏向する1つ以上の偏向電極を提供すること、または(ii)1つ以上の検出器プレートであって、前記1つ以上の検出器プレートを通るイオンが前記1つ以上の検出器プレート上へ電荷が誘導されるようにする1つ以上の検出器プレートを提供すること、のいずれかによってイオンを検出する工程とを含み、
前記方法が前記質量分析器の1周または1旋回当りのイオンの飛行時間を決定するためのフーリエ変換解析を更に含む方法。
【請求項86】
複数の第1の扇形電場区分を含む第1の扇形電場であって、各第1の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、第1の扇形電場と、
複数の第2の扇形電場区分を含む第2の扇形電場であって、各第2の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、第2の扇形電場と
を含む質量分析器であって、
前記第2の扇形電場区分は、前記第1の扇形電場区分と直交するように配置される、
質量分析器。
【請求項87】
イオンを質量分析する方法であって、
イオンを複数の第1の扇形電場区分を含む第1の扇形電場に渡す工程であって、各第1の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、工程と、
イオンを複数の第2の扇形電場区分を含む第2の扇形電場に渡す工程であって、各第2の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、工程と
を含む方法であって、
前記第2の扇形電場区分は、前記第1の扇形電場区分と直交するように配置される、
方法。
【請求項88】
使用時に、イオンが第1の平面および前記第1の平面と直交する第2の平面において移送される、閉ループ飛行時間またはフーリエ変換質量分析器。
【請求項89】
使用時に、イオンが第1の平面および前記第1の平面と直交する第2の平面において移送される、開ループ飛行時間またはフーリエ変換質量分析器。
【請求項90】
イオンを質量分析する方法であって、
閉ループ飛行時間またはフーリエ変換質量分析器を準備する工程と、
イオンを第1の平面および前記第1の平面と直交する第2の平面において移送する工程と
を含む方法。
【請求項91】
イオンを質量分析する方法であって、
開ループ飛行時間またはフーリエ変換質量分析器を準備する工程と、
イオンを第1の平面および前記第1の平面と直交する第2の平面において移送する工程と
を含む方法。
【請求項92】
1つ以上の第1の扇形電場区分を含む第1の扇形電場であって、各第1の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、第1の扇形電場と、
1つ以上の第2の扇形電場区分を含む第2の扇形電場であって、各第2の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、第2の扇形電場と、
1つ以上の第3の扇形電場区分を含む第3の扇形電場であって、各第3の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、第3の扇形電場と
を含む質量分析器であって、
前記1つ以上の第2の扇形電場区分は、前記1つ以上の第1の扇形電場区分と直交するように配置され、かつ前記1つ以上の第3の扇形電場区分は、前記1つ以上の第1の扇形電場区分または前記1つ以上の第2の扇形電場区分のいずれか一方と直交するように配置される、
飛行時間またはフーリエ変換質量分析器。
【請求項93】
イオンを質量分析する方法であって、
飛行時間またはフーリエ変換質量分析器を準備する工程と、
イオンを1つ以上の第1の扇形電場区分を含む第1の扇形電場に渡す工程であって、各第1の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、工程と、
イオンを1つ以上の第2の扇形電場区分を含む第2の扇形電場に渡す工程であって、各第2の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、工程と、
イオンを1つ以上の第3の扇形電場区分を含む第3の扇形電場に渡す工程であって、各第3の扇形電場区分は、(i)0°〜10°、(ii)10°〜20°、(iii)20°〜30°、(iv)30°〜40°、(v)40°〜50°、(vi)50°〜60°、(vii)60°〜70°、(viii)70°〜80°、(ix)80°〜90°、(x)90°〜100°、(xi)100°〜110°、(xii)110°〜120°、(xiii)120°〜130°、(xiv)130°〜140°、(xv)140°〜150°、(xvi)150°〜160°、(xvii)160°〜170°、および(xviii)170°〜180°からなる群から選択される扇形角度を有する、工程と
を含み、
前記1つ以上の第2の扇形電場区分は、前記1つ以上の第1の扇形電場区分と直交するように配置され、かつ前記1つ以上の第3の扇形電場区分は、前記1つ以上の第1の扇形電場区分または前記1つ以上の第2の扇形電場区分のいずれか一方と直交するように配置される、
方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−530761(P2009−530761A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558899(P2008−558899)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000905
【国際公開番号】WO2007/104992
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】