説明

質量流量制御装置の流量制御補正方法

【課題】 製品出荷後に複数種類の実使用ガスと複数の流量レンジに対応したマスフローコントローラに仕様変更を可能とすること。
【解決手段】 質量流量制御装置の初期状態において、校正ガスを用いて流量設定信号に対する実流量を計測した校正ガス特性データを求め、この校正ガス特性データを制御手段に記憶し、一方、複数種類の実ガス毎に流量設定信号に対する実流量を計測した実ガス特性データを求め、この実ガス特性データを記憶媒体に保存し、その後、前記質量流量制御装置を稼働する前に、実使用ガスの実ガス特性データを前記記憶媒体からコンピュータを介して読み出し、また、前記制御手段に記憶した校正ガス特性データを読み出し、前記実ガス特性データを元に前記校正ガス特性データを制御流量補正データに変換し、制御流量補正データを制御手段に書き込み、この制御流量補正データを基に実ガス流量を補正する流量制御補正方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス等の比較的小流量の流体の質量流量を計測する質量流量制御装置に係り、1つの質量流量制御装置でありながら複数のガス種と流量レンジの流量制御が可能となる流量制御補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体集積回路等の半導体製品等を製造するためには、半導体ウエハ等に対して例えばCVD成膜やエッチング操作等が種々の半導体製造装置において繰り返し行われる。この場合に微量のプロセスガスの供給量を精度良く制御する必要から例えばマスフローコントローラのような質量流量制御装置が用いられている。以下、本明細書ではマスフローコントローラを例に説明する。
この種の半導体製造装置にあっては、複数種類のプロセスガスを微少流量から大流量に亘って処理を行うので質量流量制御装置においても使用ガスに適した、また使用流量レンジに適した質量流量制御装置を用いることが望ましい。また、流量設定信号が示す質量流量(以下、単に「流量」と言うことがある。)に対して実際に流量制御弁で制御されて流れる流量(以下、「実流量」と言うことがある。)が精度良く一致することが必要であるため、流量設定信号と実ガス流量の関係を校正することが望ましい。
【0003】
そこで、特許文献1では、複数のガスが流入されるチャンバと、複数のガスに対応して設けられる複数のマスフローコントローラと、複数のガスの流量を計測するマスフローメータと、複数のガスの流れを制御する複数のバルブとを備えた半導体製造装置であって、半導体製造装置の稼動時においては複数のガスが前記チャンバに直接流入されるように前記複数のバルブの開閉を制御する。他方、マスフローコントローラの検査時においては、検査対象のマスフローコントローラに設定される流量およびコンバージョンファクタに基づいてガスの実流量を計算し、複数のマスフローメータの中から最適な流量レンジを有するマスフローメータにガスが流入されるように前記複数のバルブの開閉を制御するようになした半導体製造装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−214591号公報(請求項1、図1など参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された半導体製造装置では、コンバージョンファクタに基づいて使用ガスの実流量を計算することが示されている。通常マスフローコントローラは、出荷前の初期状態でマスフローコントローラ毎に、例えば窒素ガスを校正ガスとして、流量設定信号に対する実流量の直線性が基準値内になるように調整を行っている。しかしながら、窒素ガスと実使用ガス(例えばアルゴン)ではガスの物性の違いにより窒素ガスと同じ精度の直線性は得られないと言う問題がある。この場合、上記例のようにガス種ごとに予め定められた1つのコンバージョンファクタを用いて補正することが行われるが、実際に実使用ガス(以下、「実ガス」と言うことがある。)を流した場合は、コンバージョンファクタでは補いきれないずれが生じる。また、微少流量から大流量までフルスケール流量の幅が大きい場合、所定の流量レンジ内で適用できるマスフローコントローラであっても100%フルスケール流量と10%フルスケール流量では制御の精度にずれが生じる。このような場合も1つのコンバージョンファクタだけで一様に補正できるものではなかった。
ここで、1流量領域の流量レンジのマスフローコントローラに対して1種類のガスを流すような専用機器的な使い方をすれば、予め実ガスを用いた校正(流量センサの出力特性の調整)を行えば、その後の実ガスでの流量制御は精度良く正しいものとなる。しかし、この様に1機種1ガス対応の使用には無駄がある。実際、実ガスと流量レンジを加味すると200種類以上のマスフローコントローラが必要になり、製造者側の対応も難しいが、ユーザ側でもこれだけの機種を在庫管理することは困難である。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決すべく創案されたもので、本発明の目的は、校正ガスによって調整したマスフローコントローラであっても、製品出荷後に複数種類の実使用ガスと複数の流量レンジのマスフローコントローラに仕様変更が可能となる質量流量制御装置の流量制御補正方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その為、本発明の質量流量制御装置の流量制御補正方法は、流路に流れるガス体の質量流量を検出して流量信号を出力する質量流量検出手段と、バルブ駆動信号により弁開度を変えることによって質量流量を制御する流量制御弁機構と、外部から入力される流量設定信号と前記流量信号とに基づいて前記流量制御弁機構を制御する制御手段とを設けてなる質量流量制御装置において、前記質量流量制御装置の初期状態において、校正ガスを用いて前記外部から入力される流量設定信号に対する実流量を計測した校正ガス特性データを求め、この校正ガス特性データを前記制御手段に記憶し、一方、複数種類の実ガス毎に前記外部から入力される流量設定信号に対する実流量を計測した実ガス特性データを求め、この実ガス特性データを記憶媒体に保存し、その後、前記質量流量制御装置を稼働する前に、実際に使用する実使用ガスの実ガス特性データを前記記憶媒体からコンピュータを介して読み出し、また、前記質量流量制御装置の制御手段に記憶した校正ガス特性データを読み出し、前記実ガス特性データを元に前記校正ガス特性データを制御流量補正データに変換し、前記制御流量補正データを前記制御手段に書き込み、この制御流量補正データを基に実ガス流量を補正するものである。
【0008】
このように、初期状態の質量流量制御装置(マスフローコントローラ)に対して、通常校正ガスとして使用される例えば窒素ガスを用いて流量設定信号に対する実流量を計測した校正ガス特性データを求め、これをマスフローコントローラに記憶させる。即ち、流量センサの出力特性を測定し記憶する。一方で、複数種類ある実使用ガス毎に、流量設定信号に対する実流量を計測した実ガス特性データを求め、これをパーソナルコンピュータ(PC)やCD−ROM等の記憶媒体に保存する。この記憶媒体がいわゆる変換ソフトとなり、このソフトはユーザー側に提供する。ユーザー側はマスフローコントローラを稼働する際に、パーソナルコンピュータ(PC)とマスフローコントローラを接続し、上記記憶媒体(変換ソフト)の実ガス特性データの中からこれから使用する実ガスを選択し、このガスの特性データを読み出す。また、マスフローコントローラ側に記憶しておいた校正ガス特性データを読み出して、これと前記実ガス特性データとを対比・演算し、前記流量センサの出力特性に補正を加えて実ガスを流したとき直線性精度が向上するような実ガス出力特性に仕様変更する。この仕様変更したデータが制御流量補正データであり、これをマスフローコントローラ側の制御手段に書き込み、マスフローコントローラに新たに記憶させる。以後、このマスフローコントローラは実ガス出力特性に変換された制御流量補正データに基づき流量制御を行うものである。
【0009】
また、本発明の質量流量制御装置の流量制御補正方法は、前記実ガス特性データについては、所定の流量レンジ毎に求めて前記記憶媒体に保存し、実際に稼働する質量流量制御装置のフルスケール流量に合わせて、使用される流量レンジのフルスケール流量を補正することも出来る。つまりこれは、例えばフルスケールが幅広い大流量まで使用可能なマスフローコントローラを、例えば中流量レンジの実ガス特性データに基づき実ガス出力特性に変換して、中流量レンジがフルスケール流量のマスフローコントローラに変更することが出来ることを意味する。よって、実際に制御するフルスケール流量に見合うマスフローコントローラを持ち合わせていない場合でも、フルスケール流量を仕様変更して高精度な流量制御が可能となる。
【0010】
尚、上記した質量流量検出手段(流量センサ)としては、例えばセンサ流路の上流側と下流側に電熱線を巻回し、ブリッジ回路を構成しガスが流れることによる不平衡電圧を検出することによりセンサ流路内を流れるガスの流量を演算するようにした熱式流量センサがある。あるいは、オリフィス上流側のガスの圧力Pとオリフィス下流側のガスの圧力Pを臨界条件下(音速領域)に保持した状態でオリフィスを流通するガスの流量を補正を加えて演算するようにした圧力式流量センサ等があり、これらを用いることが出来る。また、流量制御弁機構は例えば積層型圧電素子を用いたピエゾアクチュエータを用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の質量流量制御装置の流量制御補正方法によれば、複数種類の実使用ガスと複数の流量レンジに精度良く対応したマスフローコントローラに仕様変更できることから、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
(1)流量センサは実際に使用する実使用ガスの出力特性に合致して直線性が向上しているので高精度な流量制御ができる。
(2)ユーザ側で実使用ガスの種類や流量レンジを適宜変更することが出来るので、予備マスフローコントローラの在庫を削減することが出来る。
(3)メーカ側にとっては、製品アイテムを必要最小限に絞れるので、在庫管理や納期短縮に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る質量流量制御装置と流量制御補正方法について図面を参照して説明する。
先ず、図1、図2を用いて質量流量制御装置であるマスフローコントローラについて説明する。図1はマスフローコントローラの構成を示す概略図、図2は熱式流量センサの回路原理を示す構成図である。
図1において、4はマスフローコントローラ2が介設された流体通路であり、この一端はプロセスガス源側に接続され、他端は半導体製造装置の成膜装置等のガス使用系に接続される。マスフローコントローラ2は、流路に流れる流体の質量流量を検出して流量信号S1を出力する質量流量検出手段である流量センサ8と、バルブ駆動信号S4により弁開度を変えることによって質量流量を制御する流量制御弁機構10と、外部から入力される流量設定信号S0と前記流量信号S1とに基づいてバルブ駆動信号を出力し、前記流量制御弁機構10を制御する制御回路などの一連の制御手段18とを備えている。具体的には、流量制御弁機構10は、金属ダイヤフラム22とこれを微少なストロークで押圧する積層圧電素子を備えたアクチュエータ26とを有する流量制御弁27からなり、金属ダイヤフラム22により弁口24の開度を調整してガスの流量を制御するようになっている。また、制御手段18は、流量センサ回路16を介して入力されたセンサ出力信号S1と外部より入力される流量信号S0とを流量制御回路にて比較・演算して、両信号が一致するようにPID制御等を行い弁開度を制御する機能を有している。
【0013】
また、流量制御弁機構10の上流側は、細管が集合したバイパス流路12と、これと並列に導き出された細管よりなるセンサ流路14とに分離されており、両流路12、14には設計上予め定められた一定の分流比でガスが流れるようになっている。そして、このセンサ流路14には、流量センサ回路(図2のブリッジ回路)の一部である2つの発熱抵抗線R1、R2が巻回されている。この発熱抵抗線R1、R2は温度上昇によってその抵抗値が変化する特性を有しており、他の抵抗器R2、R3とで電気的に平衡状態になされている。よって、上流側より下流側へガスが流れることによって生ずる熱の移動をブリッジ回路の不平衡電圧として捉えることにより、このセンサ流路14を流れるガス流量を求め、さらに流路全体に流れる流量を演算して求めている。
【0014】
流量センサ回路16から出力される流量信号S1は一定の幅を持った電圧値でフルスケールに対する流量を表しており、通常は0〜5V(ボルト)の範囲内でその流量を表し、流量制御手段18に入力される。一方、実ガス使用時には、必要とするガス流量が流量設定信号S0として流量制御手段18に入力される。この流量設定信号S0も、一定の幅を持った電圧値でフルスケールに対する流量を表し、この場合も通常は0〜5V(ボルト)の範囲内でその流量を表している。そして、流量制御手段18は、上記流量信号(センサ出力信号)S1と流量設定信号S0との値が一致するように上記流量制御弁機構10の弁開度をPID制御法で制御することにより、バルブ駆動回路28からバルブ駆動信号S4を出力しガス流量を制御するようになっている。例えばフルスケールが100ccmである流量を制御する場合には、流量設定信号S0を5Vに設定すると、流量信号S1が5Vを示すように弁開度が制御され、この時、流体通路全体(バイパス流路12の流量とセンサ流路14の流量の合計)が100ccmとなる。しかし、実際にはこの流量センサの出力特性と実ガスに対するセンサ出力特性の調整はされていないので、現実には100ccmよりも極微少にずれた流量(例えば±1〜2%)となるのが実情である。
【0015】
以下、上記ずれを調整補正する流量制御補正方法について以下の図面を参照して説明する。
図3は本発明の流量制御補正方法を流量特性線図を元に説明する概要図、図4は処理手順を示すフローチャート図、図5は仕様変換の態様を示すイメージ図である。
先ず、図3の流量特性線図において、横軸は流量設定信号、縦軸は実流量を示している。図3(a)では窒素(N2)を校正ガスに用いて、外部から入力される流量設定信号に対する実流量を計測して校正ガス特性データ(実線X)を求めている。これは図4の処理手順で言うとステップ(1)に相当する(以下、同様に付記する。)。この校正ガス特性データをテーブルにしてマスフローコントローラ(MFC)の制御手段(制御回路)18に記憶する(図4−ステップ(2))。ところで、このときの流量センサの出力特性は、図3の点線Yで示すような直線性に優れたものではなく、コンバージョンファクターを用いて校正を行ったとしても実線Xのように幾らかのずれがあり、Y線のような直線性の高い精度が得られるものでもない。この理由は、夫々の流量センサ個体の条件が違うので物理的に避けられない面もある。このような不可避的なずれと実使用ガスの物理特性上のずれが重なり上記した±1〜2%の誤差が生じている。
このように校正ガス特性データと実使用ガスのコンバージョンファクターを用いて補正制御を行うことは従来から行われているが、実使用ガスを流すことによって生じる流量センサ特性のずれというのは補正出来ていない。
【0016】
そこで、本発明では、図4のステップ(3)〜(5)に示すように実際に使用するプロセスガス等(Ar, SF6, Cl2等)を用いて上記と同様に流量設定信号に対する実流量を計測した実ガス特性データを求め(図4−ステップ(3))、この実ガス特性データをパーソナルコンピュータ(PC)やCD−ROM等の記憶媒体に格納保存し、これを変換ソフトとなす(図4−ステップ(4))。ここで実ガス特性データは、実際に使用する実ガス毎に、またさらに所定の流量レンジ毎に求めてテーブル化して記憶する(図4−ステップ(5))。流量レンジとは、例えば図6に示すフルスケール流量で区分したもので、この区分によれば0〜50,000[SCCM]までの流量を13種類の流量レンジに設定している。即ち、13種類のマスフローコントローラを準備すれば、図6に示すフルスケール流量内で実ガス特性データを用いて補正することが可能となる。例えば、No10のマスフローコントローラを用いるとすれば、フルスケール流量が5,000[SCCM]までの流量制御が実ガスデータに基づき補正することができる。しかし、実際にはマスフローコントローラの流量制御弁の構造上の制御範囲の制約もあるので、記載したフルスケール流量の1/3程度まで、この場合は約2,001〜5,000[SCCM]のフルスケール流量に亘って高精度のマスフローコントローラに仕様変換することができる。
【0017】
さて、ユーザ側では実際に当該マスフローコントローラを使用する前に、図5に示すようにパーソナルコンピュータPCとマスフローコントローラをデータ通信回線(RS-232C、RS-485等)で接続する(図4−ステップ(6))。
そして、実際に使用するガスと使用するフルスケール流量を選択する(図4−ステップ(7))。次に、マスフローコントローラの制御回路からステップ(2)で記憶した校正ガス特性データを読み出し(図4−ステップ(8))、
さらに、ステップ(4)で得た記憶媒体の変換ソフトをPCに取り入れ、上記で選択したガス種の実ガス特性データを読み出す(図4−ステップ(9))。実ガス特性データのうち変換しようとするフルスケール流量の演算を行う(図4−ステップ(10))。
次に、ステップ(8)と(9)のデータを基に制御流量補正データを演算し求める(図4−ステップ(11))。この制御流量補正データをマスフローコントローラ側の制御回路に書き込み、制御流量補正データを新たに記憶する(図4−ステップ(12))。従い、マスフローコントローラの制御手段には校正ガス特性データと制御流量補正データの両方が保存される。
以後は、この制御流量補正データに基づいて補正をかけて流量制御が行われる(図4−ステップ(13))。
【0018】
従って、流量センサ出力特性としては、図3(a)の校正ガス特性データの線図Xは、実ガス特性データに基づき演算補正され、図3(b)の一点鎖線X’で示す実ガス出力特性に変換される。従い、この一点鎖線X’で示す特性をもつセンサに実ガスを流せば、図3(c)の実線Y’の直線線上に変換されて精度の高い流量制御が行われる。尚、コンバージョンファクターによる補正と本発明による補正を併用して行っても良い。
以上により、窒素ガスでのセンサ出力特性が実ガスに基づいて補正されて、極めて高い直線性を利用した高精度の流量制御が出来ていることになる。その後、このマスフローコントローラに対して別のプロセスガスに用いる場合には、上記と同様の手順で校正ガス特性データを新たな実ガスのデータに基づいて変換し、新たな制御流量補正データを作成する。また、流量レンジについても同じマスフローコントローラであってもフルスケール流量だけを仕様変更して用いることもできる。
【0019】
(実施例)
図7は、本発明による補正を行った場合と行わなかった場合の夫々について、所定(任意)のフルスケール流量に対する制御精度を示している。ここで、図7の線図(d)は補正を全く行わなかった場合、(e)はN2ガスによる校正ガス特性データに対して実ガスを流した場合、(f)はN2ガスによる校正ガス特性データに対してN2ガスを流した場合、(g)は本発明に基づく制御流量補正データに対して実ガスを流した場合である。
図7より、全く補正しない場合の流量精度は最大で2%FS程度の誤差が生じている(d参照)。次に、この特性の流量センサ、即ち、同じ流量センサを用いてもN2ガスによる校正ガス特性データを採って補正した場合、これにN2ガスを流せば流量精度は0.1%FSになる(f参照)。しかし、これに実使用ガス(例えば、SF6)を流した場合の流量精度は最大で2%FS程度の誤差が生じている(e参照)。これに対して、本発明によれば、同じ実使用ガスを流した場合でも、流量精度は最大で0.5%FS程度に向上することが分かる。
【0020】
尚、上記した実施態様のマスフローコントローラの流量センサは、熱式流量センサを用いているが、この他にもオリフィス上流側のガスの圧力Pとオリフィス下流側のガスの圧力Pを臨界条件下(音速領域)に保持した状態でオリフィスを流通するガスの流量を補正を加えて演算するようにした圧力式流量センサを用いて本発明を実施することもできる。即ち、このような流量センサの形式を問わず本発明は実施することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る質量流量制御装置(マスフローコントローラ)の構成を説明する概略構成図である。
【図2】熱式質量流量センサを説明する回路図である。
【図3】本発明の流量制御補正方法を流量特性線図を元に説明する概要図である。
【図4】本発明の流量制御補正方法の処理手順を示すフローチャート図である。
【図5】本発明の仕様変換の態様を示すイメージ図である。
【図6】本発明の流量レンジの区分例を示す図である。
【図7】本発明の実施例を示し、フルスケール流量に対する制御精度を示す特性線図である。
【符号の説明】
【0022】
2:質量流量制御装置(マスフローコントローラ)、4:流体通路、6:装置本体、
8:質量流量検出手段(流量センサ)、10:流量制御弁機構、12:バイパス流路、14:センサ流路
16:センサ回路、18:制御手段(制御回路など)、22:金属ダイアフラム、24:弁口
26:積層圧電体素子(ピエゾアクチュエータ)、27:流量制御弁、28:バルブ駆動回路
S0:流量設定信号、S1:流量信号、S4:バルブ駆動電圧、R1、R2:発熱抵抗線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に流れるガスの質量流量を検出して流量信号を出力する質量流量検出手段と、バルブ駆動信号により弁開度を変えることによって質量流量を制御する流量制御弁機構と、外部から入力される流量設定信号と前記流量信号とに基づいて前記流量制御弁機構を制御する制御手段とを設けてなる質量流量制御装置において、
前記質量流量制御装置の初期状態において、校正ガスを用いて前記外部から入力される流量設定信号に対する実流量を計測した校正ガス特性データを求め、この校正ガス特性データを前記制御手段に記憶し、
一方、複数種類の実ガス毎に前記外部から入力される流量設定信号に対する実流量を計測した実ガス特性データを求め、この実ガス特性データを記憶媒体に保存し、
その後、前記質量流量制御装置を稼働する前に、実際に使用する実使用ガスの実ガス特性データを前記記憶媒体からコンピュータを介して読み出し、また、前記質量流量制御装置の制御手段に記憶した校正ガス特性データを読み出し、前記実ガス特性データを元に前記校正ガス特性データを制御流量補正データに変換し、
前記制御流量補正データを前記制御手段に書き込み、この制御流量補正データを基に実ガス流量を補正する
ことを特徴とする質量流量制御装置の流量制御補正方法。
【請求項2】
前記実ガス特性データは、所定の流量レンジ毎に求めて前記記憶媒体に保存し、
実際に稼働する質量流量制御装置のフルスケール流量に合わせて、使用される流量レンジのフルスケール流量を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の質量流量制御装置の流量制御補正方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−39513(P2008−39513A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212226(P2006−212226)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】