説明

赤外レーザー感熱性平版印刷版材料用の現像液及び赤外レーザー感熱性平版印刷版材料の処理方法

【課題】 珪酸カリウムおよび/または珪酸ソーダ含有現像液で赤外吸収色素、ノボラック樹脂を含有する赤外レーザー感熱性平版印刷版材料を処理する際、製版作業時(現像直前)における指押し跡やられ、除電バーでのこすり跡やられを改良し、さらには、印刷時に発生する非画線部の微点汚れ(スポット状)の改善した赤外レーザー感熱性平版印刷版材料用の現像液及び赤外レーザー感熱性平版印刷版材料の処理方法を提供する。
【解決手段】 赤外レーザー感熱性平版印刷版材料用の現像液が、該現像液中に下記一般式(A)で表される化合物および下記一般式(B)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種と、ケイ酸カリウムおよびケイ酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種とを含むことを特徴とする赤外レーザー感熱性平版印刷版材料用及びその現像液の処理方法。
【化1】


【化2】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性平版印刷版に関する技術であり、さらに詳しくはコンピューター・トゥ・プレートシステム(以下CTP)用版材の品質および処理性能に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オフセット印刷用の印刷版の作製技術において、画像のデジタルデータをレーザー光源で直接感光性印刷版に記録するコンピューター・トゥ・プレートシステム(以下CTP)が開発され、実用化が進んでいる。
【0003】
これらのうち、比較的高い耐刷力を要求される印刷の分野においては、アルミニウム板を支持体としてその上に画像記録層を有する印刷版材料を用いることが知られている。
【0004】
近年、オフセット印刷用の印刷版の作製技術において、画像のデジタルデータをレーザー光源で直接感光性印刷版に記録するコンピューター・トゥ・プレートシステム(以下CTP)が開発され、実用化が進んでいる。サーマルCTPについては多くの記載(例えば、特許文献1〜6参照。)がある。
【0005】
これらのうち、比較的高い耐刷力を要求される印刷の分野においては、アルミニウム板を支持体としてその上に画像記録層を有する印刷版材料を用いることが知られている。
【0006】
赤外線レーザーを光源でアルカリ現像液処理するのが主流であり、現像液の液交換の頻度を少なくしたい要望が大きい。しかし、この要望を満足する方法はまだ知られていない。
【特許文献1】特開2002−123000号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平5−142786号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平6−59461号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平9−171254号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献5】特開平11−65105号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献6】特開平11−115144号公報 (特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、珪酸カリウムおよび/または珪酸ソーダ含有現像液で赤外吸収色素、ノボラック樹脂を含有する赤外レーザー感熱性平版印刷版材料を処理する際、製版作業時(現像直前)における指押し跡やられ、除電バーでのこすり跡やられを改良し、さらには、印刷時に発生する非画線部の微点汚れ(スポット状)の改善した赤外レーザー感熱性平版印刷版材料用の現像液及び赤外レーザー感熱性平版印刷版材料の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0009】
1.赤外レーザー感熱性平版印刷版材料用の現像液が、該現像液中に下記一般式(A)で表される化合物および下記一般式(B)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種と、ケイ酸カリウムおよびケイ酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種とを含むことを特徴とする赤外レーザー感熱性平版印刷版材料用の現像液。
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、A1〜A4は−CH2OH又は−COOMを表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Mは水素原子、アルカリ金属又はその他のカチオンを表す。Xは炭素数2〜6の置換又は未置換のアルキレン基を表す。]
【0012】
【化2】

【0013】
[式中、A1〜A4は前記一般式(A)で定義したものと同義であり、nは1〜8の整数を表す。またB1及びB2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜5の置換又は未置換のアルキレン基を表す。]
2.砂目立てしたアルミニウム板上に赤外線吸収色素、ノボラック樹脂を含有する感熱層を有する赤外レーザー感熱性平版印刷版材料を、赤外光レーザーで露光後、アルカリ性現像液で現像し平版印刷版を作製する赤外レーザー感熱性平版印刷版材料の処理方法において、該アルカリ性現像液が前記1に記載の赤外レーザー感熱性平版印刷版材料用の現像液であることを特徴とする赤外レーザー感熱性平版印刷版材料の処理方法。
【0014】
3.砂目立て方法が塩酸を主体とする電解浴であることを特徴とする前記2に記載の赤外レーザー感熱性平版印刷版材料の処理方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、珪酸カリウムおよび/または珪酸ソーダ含有現像液で赤外吸収色素、ノボラック樹脂を含有する赤外レーザー感熱性平版印刷版材料(単に平版印刷版材料又は印刷版材料ともいう)を処理する際、製版作業時(現像直前)における指押し跡やられ、除電バーでのこすり跡やられを改良し、さらには、印刷時に発生する非画線部の微点汚れ(スポット状)の改善した赤外レーザー感熱性平版印刷版材料用の現像液及び赤外レーザー感熱性平版印刷版材料の処理方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を更に詳しく説明する。本発明の赤外レーザー感熱性平版印刷版材料用の現像液に用いられる一般式(A)又は(B)において、A1〜A4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、−CH2OH、−PO3(M12又は−COOMを表す。M及びM1はそれぞれ水素原子、アンモニウム基、アルカリ金属原子(例えばナトリウム、カリウム)又は有機アンモニウム基(例えば、メチルアンモニウム基、トリメチルアンモニウム基等)を表す。Xは炭素数2〜6の置換されてもよいアルキレン基を表し、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン等が挙げられる。B1及びB2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜5の置換されてもよいアルキレン基を表す。B1及びB2で表されるアルキレン基としては、メチレン、エチレン、トリメチレン等が挙げられる。X、B1又はB2が表すアルキレン基の置換基としては、ヒドロキシル基、炭素数1〜3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)等が挙げられる。nは1〜8の整数を表し、好ましくは1〜4である。
【0017】
以下に前記一般式(A)及び(B)で示される化合物の好ましい具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
本発明の一般式(A)及び(B)で示される化合物の現像液への添加量としては、0.001〜1.0質量%が好ましく、0.001〜0.1質量%であることがより好ましい。
【0021】
(現像液)
本発明の赤外レーザー感熱性平版印刷版材料用の現像液及び補充液は、前記一般式(A)又は(B)とアルカリ金属とを用いることが好ましい。これらの組み合わせる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウムが好適に用いられる。これらのアルカリ剤は、単独もしくは二種以上を組み合わせて用いられる。その他として、例えば、珪酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウム、メタ珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸リチウム、メタ珪酸アンモニウム、燐酸三カリウム、燐酸三ナトリウム、燐酸三リチウム、燐酸三アンモニウム、燐酸二カリウム、燐酸二ナトリウム、燐酸二リチウム、燐酸二アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素アンモニウム、硼酸カリウム、硼酸ナトリウム、硼酸リチウム、硼酸アンモニウム等があげられ、予め形成された塩の形で加えられてもよい。この場合も、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウムをpH調整に加えることができる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も組み合わせて用いられる。もっとも好ましいものとして珪酸カリウム及び珪酸ナトリウムがあげられる。珪酸塩の濃度は、SiO2濃度換算で1.0〜3.0質量%が好ましい。また、SiO2とアルカリ金属Mのmol比(SiO2/M)が、0.25〜2の範囲であることがより好ましい。
【0022】
尚、本発明で言う現像液とは、現像のスタート時に使用される未使用の液だけでなく、赤外レーザー感熱性平版印刷版材料の処理によって低下する液の活性度を補正するために補充液が補充され、活性度が保たれた液(いわゆるランニング液)を含む。補充液は従って、現像液より活性度(アルカリ濃度)が高い必要があるので、補充液のpHは13.0を超えていてもよい。
【0023】
本発明の現像液及び補充液には、現像性の促進や現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、エチレンジアミンのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体付加物、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などのアニオン界面活性剤、アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などのカチオン性界面活性剤、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類などの両性界面活性剤が挙げられる。以上に記載の各界面活性剤の中で、ポリオキシエチレンとは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンなどのポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらの界面活性剤もまた包含される。更に好ましい界面活性剤は、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系の界面活性剤である。この様なフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型及びパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有ウレタンなどの非イオン型が挙げられる。上記の界面活性剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて使用することができ、現像液中に0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲で添加される。
【0024】
本発明の現像液及び補充液には、必要に応じて、種々現像安定化剤を用いることができる。それらの好ましい例として、特開平6−282079号公報記載の糖アルコールのポリエチレングリコール付加物、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩及びジフェニルヨードニウムクロライドなどのヨードニウム塩等が挙げられる。更には、特開昭50−51324号公報記載のアニオン界面活性剤または両性界面活性剤、また特開昭55−95946号公報記載の水溶性カチオニックポリマー、特開昭56−142528号公報に記載されている水溶性の両性高分子電解質がある。更に、特開昭59−84241号公報のアルキレングリコールが付加された有機ホウ素化合物、特開昭60−111246号公報記載のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック重合型の水溶性界面活性剤、特開昭60−129750号公報のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンを置換したアルキレンジアミン化合物、特開昭61−215554号公報記載の質量平均分子量300以上のポリエチレングリコール、特開昭63−175858号公報のカチオン性基を有する含フッ素界面活性剤、特開平2−39157号公報の酸またはアルコールに4モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性エチレンオキシド付加化合物と、水溶性ポリアルキレン化合物などが挙げられる。
【0025】
現像液及び現像補充液には、更に必要により有機溶剤を用いることができる。本発明で用いることのできる有機溶剤としては、水に対する溶解度が約10質量%以下のものが適しており、好ましくは5質量%以下のものから選ばれる。例えば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール及び4−メチルシクロヘキサノール、N−フェニルエタノールアミン及びN−フェニルジエタノールアミンなどを挙げることができる。ただし、有機溶剤の含有量は、使用液の総質量に対して0.1〜5質量%であるが、実質的に含まれないことが好ましく、全く含まれないことが特に好ましい。ここで実質的に含まれないとは1質量%以下であることを示す。
【0026】
本発明の現像液及び補充液には、必要に応じて更に有機カルボン酸を加えることもできる。好ましい有機カルボン酸は、炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸である。脂肪族カルボン酸の具体的な例としては、カプロン酸、エナンチル酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸などがあり、特に好ましいのは炭素数8〜12のアルカン酸である。また、炭素鎖中に二重結合を有する不飽和脂肪酸でも、分岐した炭素鎖のものでもよい。芳香族カルボン酸としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などにカルボキシル基が置換された化合物で、具体的には、o−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸などがあるがヒドロキシナフトエ酸は特に有効である。上記脂肪族及び芳香族カルボン酸は水溶性を高めるためにナトリウム塩やカリウム塩またはアンモニウム塩として用いるのが好ましい。本発明で用いる現像液の有機カルボン酸の含有量は格別な制限はないが、0.1質量%より低いと効果が十分でなく、また10質量%以上ではそれ以上の効果の改善が計れないばかりか、別の添加剤を併用する時に溶解を妨げることがある。従って、好ましい添加量は使用時の現像液に対して0.1〜10質量%であり、よりこのましくは0.5〜4質量%である。
【0027】
本発明の現像液及び補充液には、現像性を高めるために前記の他に以下のような添加剤を加えることができ、例えば、特開昭58−75152号公報記載のNaCl、KCl、KBr等の中性塩、特開昭59−121336号公報記載の[Co(NH3)]6Cl3等の錯体、特開昭56−142258号公報記載のビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸ナトリウムの共重合体等の両性高分子電解質、特開昭59−75255号公報記載のSi、Ti等を含む有機金属界面活性剤、特開昭59−84241号公報記載の有機硼素化合物等が挙げられる。
【0028】
本発明の現像液及び補充液には、更に必要に応じて防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤及び硬水軟化剤などを含有させることもできる。消泡剤としては、例えば、特開平2−244143号公報記載の鉱物油、植物油、アルコール、界面活性剤、シリコーン等が挙げられる。硬水軟化剤としては、例えば、ポリ燐酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸及び1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸などのアミノポリカルボン酸及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸)及び1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸やそれらのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩を挙げることができる。このような硬水軟化剤はそのキレート化力と使用される硬水の硬度及び硬水の量によって最適値が変化するが、一般的な使用量を示せば、使用時の現像液に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲である。この範囲より少ない添加量では所期の目的が十分に達成されず、添加量がこの範囲より多い場合は、色抜けなど、画像部への悪影響がでてくる。現像液及び補充液の残余の成分は水である。
【0029】
また、本発明の現像液及び補充液は、使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は、各成分が分離や析出を起こさない程度が適当であるが、必要により可溶化剤を加えることが好ましい。可溶化剤としては、特開平6−32081号公報記載のトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸及びそれらのアルカリ金属塩等のいわゆるヒドロトロープ剤が好ましく用いられる。
【0030】
(処理方法)
本発明の赤外レーザー感熱性平版印刷版材料の処理方法において、自動現像機を用いることが好ましい。本発明で用いる自動現像機は、好ましくは現像浴に自動的に補充液を必要量補充する機構が付与されており、好ましくは一定量を超える現像液は、排出する機構が付与されており、好ましくは現像浴に自動的に水を必要量補充する機構が付与されており、好ましくは、通版を検知する機構が付与されており、好ましくは通版の検知をもとに版の処理面積を推定する機構が付与されており、好ましくは通版の検知及び/または処理面積の推定をもとに補充しようとする補充液及び/または水の補充量及び/または補充タイミングを制御する機構が付与されており、好ましくは現像液の温度を制御する機構が付与されており、好ましくは現像液のpH及び/または電導度を検知する機構が付与されており、好ましくは現像液のpH及び/または電導度をもとに補充しようとする補充液及び/または水の補充量及び/または補充タイミングを制御する機構が付与されている。
【0031】
本発明に用いる自動現像機は、現像工程の前に前処理液に版を浸漬させる前処理部を有してもよい。この前処理部は、好ましくは版面に前処理液をスプレーする機構が付与されており、好ましくは前処理液の温度を25℃〜55℃の任意の温度に制御する機構が付与されており、好ましくは版面をローラー状のブラシにより擦る機構が付与されている。またこの前処理液としては、水などが用いられる。
【0032】
上述の組成からなる現像液で現像処理された赤外レーザー感熱性平版印刷版材料は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を主成分とするフィニッシャーや保護ガム液で後処理を施される。本発明に係る赤外レーザー感熱性平版印刷版材料の後処理には、これらの処理を種々組み合わせて用いることができ、例えば、現像後→水洗→界面活性剤を含有するリンス液処理や現像→水洗→フィニッシャー液による処理が、リンス液やフィニッシャー液の疲労が少なく好ましい。更に、リンス液やフィニッシャー液を用いた多段向流処理も好ましい態様である。これらの後処理は、一般に現像部と後処理部とからなる自動現像機を用いて行われる。後処理液は、スプレーノズルから吹き付ける方法、処理液が満たされた処理槽中を浸漬搬送する方法が用いられる。また、現像後一定量の少量の水洗水を版面に供給して水洗し、その廃液を現像液原液の希釈水として再利用する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じてそれぞれの補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の後処理液で処理する、いわゆる使い捨て処理方式も適用できる。このような処理によって得られた赤外レーザー感熱性平版印刷版材料は、オフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0033】
次いで、本発明に係る赤外レーザー感熱性平版印刷版材料の主要な構成要素及び画像形成方法について説明する。
【0034】
(支持体)
本発明の赤外レーザー感熱性平版印刷版材料に用いることができる支持体は、例えばアルミニウム、ステンレス、クロム、ニッケル等の金属板、また、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムに前述の金属薄膜をラミネートまたは蒸着したもの、また、ポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム等の表面に親水化処理を施したもの等が使用できるが、アルミニウム板が好ましく使用され、この場合、純アルミニウム板及びアルミニウム合金板等であってもかまわない。
【0035】
支持体のアルミニウム合金としては、種々のものが使用でき、例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。
【0036】
本発明の赤外レーザー感熱性平版印刷版材料及び本発明の処理方法に用いることができる支持体は、粗面化(砂目立て処理)するに先立って表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。また、脱脂処理には、苛性ソーダ等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、支持体の表面にはスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。
【0037】
粗面化の方法としては、例えば、機械的方法、電解によりエッチングする方法が挙げられるが、機械的研磨方法の場合は、その後に電解研磨法を掛け合わせることが本発明の効果を発揮できる。
【0038】
用いられる機械的粗面化法は特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が好ましい。ブラシ研磨法による粗面化は、例えば、直径0.2〜0.8mmのブラシ毛を使用した回転ブラシを回転し、支持体表面に、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させたスラリーを供給しながら、ブラシを押し付けて行うことができる。ホーニング研磨による粗面化は、例えば、粒径10〜100μmの火山灰の粒子を水に均一に分散させ、ノズルより圧力をかけ射出し、支持体表面に斜めから衝突させて粗面化を行うことができる。また、例えば、支持体表面に、粒径10〜100μmの研磨剤粒子を、100〜200μmの間隔で、2.5×103〜10×103個/cm2の密度で存在するように塗布したシートを張り合わせ、圧力をかけてシートの粗面パターンを転写することにより粗面化を行うこともできる。
【0039】
上記の機械的粗面化法で粗面化した後、支持体の表面に食い込んだ研磨剤、形成されたアルミニウム屑等を取り除くため、酸またはアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。アルカリ水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0040】
この後に施す電気化学的素面化は特に限定されるものではないが、酸性電解液中で電気化学的に粗面化を行う方法が好ましい。酸性電解液は、電気化学的粗面化法に通常用いられる酸性電解液を使用することができるが、塩酸系電解浴が好ましい。
【0041】
電気化学的粗面化方法については、例えば、特公昭48−28123号、英国特許第896,563号、特開昭53−67507号に記載されている方法を用いることができる。この粗面化法は、一般には、1〜50ボルトの範囲の電圧を印加することによって行うことができるが、2〜30ボルトの範囲から選ぶのが好ましい。電流密度は、10〜200A/dm2の範囲を用いることができるが、50〜150A/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。電気量は、100〜2000c/dm2の範囲を用いることができるが、200〜1000c/dm2の範囲から選ぶのが好ましい。この粗面化法を行う温度は、10〜50℃の範囲を用いることができるが、15〜45℃の範囲から選ぶのが好ましい。
【0042】
該電解液には、必要に応じて、硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、硼酸、酢酸、蓚酸等を加えることができる。好ましくは酢酸である。
【0043】
上記の電気化学的粗面化法で粗面化した後、表面のアルミニウム屑等を取り除くため、酸またはアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。また、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0044】
機械的粗面化法の後には塩酸浴の電気化学的粗面化法を組み合わせることが好ましいが、塩酸浴の電解研磨方法ならば単独で用いることも本発明効果を発揮でき、好ましい。塩酸浴に加える酸としては酢酸が好ましく、添加量は塩酸100にたいして1〜100、さらに好ましくは20〜90である。
【0045】
(陽極酸化)
粗面化処理の次には、陽極酸化処理を行うことができる。本発明において用いることができる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理を行うことにより、支持体上には酸化皮膜が形成される。該陽極酸化処理には、硫酸または燐酸等を10〜50%の濃度で含む水溶液を電解液として、電流密度1〜10A/dm2で電解する方法が好ましく用いられるが、他に、米国特許第1,412,768号に記載されている硫酸中で高電流密度で電解する方法や、同3,511,661号公報に記載されている燐酸を用いて電解する方法、クロム酸、蓚酸、マロン酸等を一種または二種以上含む溶液を用いる方法等が挙げられる。形成された陽極酸化被覆量は、1〜50mg/dm2が適当であり、好ましくは10〜40mg/dm2である。陽極酸化被覆量は、例えばアルミニウム板を燐酸クロム酸溶液(燐酸85%液:35ml、酸化クロム(IV):20gを1Lの水に溶解して作製)に浸積し、酸化被膜を溶解し、板の被覆溶解前後の質量変化測定等から求められる。
【0046】
陽極酸化処理された支持体は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
【0047】
更に、これらの処理を行った後に、水溶性の樹脂、例えばポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体及び共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えば硼酸亜鉛)もしくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。
【0048】
支持体としては上述の様に各種のものが使用でき、また例えば、ポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム等の表面に親水化処理を施したもの等も使用することができ、プラスチックフィルムの親水化処理方法としては、硫酸処理、酸素プラズマエッチング処理、コロナ放電処理、水溶性樹脂層塗布層を設けること等が好ましく用いられる。本発明の実施においては、表面を粗面化処理、陽極酸化処理、封孔処理、及び下塗り処理を施したアルミニウム板が特に好ましい。
【0049】
(赤外レーザー感熱性平版印刷版材料)
本発明の赤外レーザー感熱性平版印刷版材料に用いられる赤外線吸収色素としては、カーボンブラックを挙げることができる。また、染料としては、例えば特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0050】
また、前記染料としては、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物、Epolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125、Epolight V−176A等は好ましく用いられる。
【0051】
本発明で好ましく用いることのできる赤外線吸収色素としては、シアニン系色素、カーボンブラック、チアピリリウム系色素であり、さらに好ましくは、シアニン系色素である。
【0052】
前記顔料又は染料の添加量としては、印刷版材料全固形分に対し0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。前記染料の場合には、0.5〜10質量%が特に好ましく、顔料の場合には、3.1〜10質量%が特に好ましい。前記顔料又は染料の添加量が、0.01質量%未満の場合には、感度が低くなることがある一方、50質量%を超える場合には、感熱層の均一性が失われ、記録層の耐久性が悪くなることがある。
【0053】
前記染料又は顔料は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層に添加してもよい。他の成分とは別の層に添加する場合には、熱分解性でありかつ分解しない状態では結着樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質を含む層と隣接している層中に添加するのが好ましい。また、前記染料又は顔料と結着樹脂とは同一の層中に含まれるのが好ましいが、別の層に含まれていてもよい。
【0054】
本発明において、ノボラック樹脂や側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーなどが挙げられる。ノボラック樹脂は、フェノール類とアルデヒド類を酸性条件下で縮合させた樹脂である。好ましいノボラック樹脂としては、例えばフェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、p−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、o−クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、オクチルフェノールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,o−またはm−/p−,m−/o−,o−/p−混合のいずれでもよい)の混合物とホルムアルデヒドから得られるノボラック樹脂などが挙げられる。これらのノボラック樹脂は、質量平均分子量が800〜100,000で、数平均分子量が200〜10,000のものが好ましい。また、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーも好ましく用いることができる。このポリマーにおいて、ヒドロキシアリール基とは−OH基が1個以上結合したアリール基を示す。アリール基としては例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等を挙げることができるが、入手の容易さ及び物性の観点から、フェニル基あるいはナフチル基が好ましい。従って、ヒドロキシアリール基としては、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、トリヒドロキシフェニル基、テトラヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基、ジヒドロキシナフチル基等が好ましい。これらのヒドロキシアリール基は、さらに、ハロゲン原子、炭素数20個以下の炭化水素基、炭素数20個以下のアルコキシ基及び炭素数20個以下のアリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。これらのヒドロキシアリール基は、ポリマーの側鎖としてペンダント状にポリマー主鎖へ結合しているが、主鎖との間に連結基を有していても良い。好ましくは、m−クレゾールホルマリンノボラック樹脂、p−クレゾールとm−クレゾールの混合クレゾールとフェノールとのホルマリン縮合ノボラック樹脂である。
【0055】
平版印刷版材料には、所望により、その他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、種々の添加剤が挙げられ、そのような添加剤としては、例えば酸分解化合物、光酸発生剤、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ水可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる物質が挙げられる。前記添加剤を添加すれば、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図ることができる。
【0056】
前記酸分解化合物としては、具体的には、特開昭48−89003号、同51−120714号、同53−133429号、同55−12995号、同55−126236号、同56−17345号に記載されているC−O−C結合を有する化合物、特開昭60−37549号、同60−121446号に記載されているSi−O−C結合を有する化合物、特開昭60−3625号、同60−10247号各公報に記載されているその他の酸分解化合物が挙げられ、更に特開昭62−222246号に記載されているSi−N結合を有する化合物、特開昭62−251743号に記載されている炭酸エステル、特開昭62−209451号に記載されているオルト炭酸エステル、特開昭62−280841号に記載されているオルトチタン酸エステル、特開昭62−280842号に記載されているオルトケイ酸エステル、特開昭63−10153号に記載されているアセタール及びケタール、特開昭62−244038号に記載されているC−S結合を有する化合物などが挙げられる。
【0057】
上記のうち特開昭53−133429号、同56−17345号、同60−121446号、同60−37549号、同62−209451号、同63−10153号に記載されているC−O−C結合を有する化合物、Si−O−C結合を有する化合物、オルト炭酸エステル、アセタール類、ケタール類及びシリルエーテル類が好ましい。それらの中でも特開昭53−133429号に記載された主鎖中に繰り返しアセタール又はケタール部分を有し、現像液中でのその溶解度が酸の作用によって上昇する有機重合化合物が特に好ましい。
【0058】
本発明に用いられる酸分解化合物の具体例としては前記各公知例に記載された化合物を挙げることができる。又、該化合物の合成方法も前記各公知例に記載されている。
【0059】
本発明において、酸分解化合物として、−(CH2CH2O)n−基(nは2〜5の整数を表す)を有する化合物が感度及び現像性のバランスの点から好ましい。又、該化合物のうちエチレンオキシ基の連鎖数nが3又は4の化合物が特に好ましい。上記−(CH2CH2O)n−基を有する化合物の具体例としてはジメトキシシクロヘキサン、ベンズアルデヒド及びそれらの置換誘導体と、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びペンタエチレングリコールの何れかとの縮合生成物が挙げられる。
【0060】
前記光酸発生剤としては、各種の公知化合物及び混合物が挙げられる。例えばジアゾニウム、ホスホニウム、スルホニウム、及びヨードニウムのBF4-、PF6-、SbF6-、SiF62-、ClO4-などの塩、有機ハロゲン化合物、オルトキノン−ジアジドスルホニルクロリド、及び有機金属/有機ハロゲン化合物も活性光線の照射の際に酸を形成又は分離する活性光線感光性成分であり、本発明における光酸発生剤として使用することができる。原理的には遊離基形成性の光開始剤として知られるすべての有機ハロゲン化合物はハロゲン化水素酸を形成する化合物であり、本発明における光酸発生剤として使用することができる。
【0061】
前記のハロゲン化水素酸を形成する化合物の例としては米国特許第3,515,552号、同第3,536,489号及び同第3,779,778号及び西ドイツ国特許公開公報第2,243,621号に記載されているものが挙げられ、又例えば西ドイツ国特許公開公報第2,610,842号に記載の光分解により酸を発生させる化合物も使用することができる。又、特開昭50−36209号に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドを用いることができる。
【0062】
前記オニウム塩としてはジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、ジアゾニウム塩が特に好ましく、該ジアゾニウム塩としては、特開平5−158230号公報に記載のものが好ましい。
【0063】
前記o−キノンジアジド化合物としては、1以上のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであれば、種々の構造の化合物が好適に挙げられる。前記o−キノンジアジドは、熱分解により結着剤の溶解抑制能を失わせる効果と、o−キノンジアジド自体が、アルカリ可溶性の物質に変化する効果との双方の効果を有するため、結着剤の溶解促進剤として作用することができる。
【0064】
前記オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適に挙げられる。
【0065】
また、更に感度を向上させる目的で、無水フタル酸などの環状酸無水物、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール等のフェノール類、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の有機酸類を添加することもできる。
【0066】
前記感熱層には、塗布性を向上させるために、界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載のフッ素系界面活性剤等を含有させることができる。
【0067】
本発明の赤外レーザー感熱性平版印刷版材料は、前記各成分を溶媒に溶解させた後、前記の支持体上に塗布して形成される。
【0068】
本発明の赤外レーザー感熱性平版印刷版材料における前記感熱層は市販のCTP用セッターを用い、デジタル変換されたデータに基づいて、赤外線レーザー(830nm)で露光した後、現像等の処理をすることにより、アルミニウム板支持体表面に画像を形成し、平版印刷版として供することができる。
【0069】
本発明における赤外レーザー感熱性平版印刷版材料の前記現像液による現像は、常法に従って、0〜60℃、好ましくは15〜40℃程度の温度で、例えば、露光処理した平版印刷版を現像液に浸漬してブラシで擦る等により行う。さらに自動現像機を用いて現像処理を行う場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液または新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させても良い。このようにして現像処理された平版印刷版材料は特開昭54−8002号、同55−115045号、同59−58431号等の各公報に記載されているように、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を含む不感脂化液で後処理される。本発明の平版印刷版材料の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。上記の様な処理により得られた平版印刷版は特開2000−89478号に記載の方法によるバーニングなどの加熱処理により、耐刷性を向上させることができる。このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0070】
印刷機は、枚葉機および輪転機のオフセット印刷機が使用される。印刷インキとしては、従来のオフセット印刷用の印刷インキが用いられるが、環境対応の印刷インキを用いたとき本発明の効果、すなわち、仕上がり品質の差、が発揮される。
【0071】
環境対応の印刷インキの具体例としては、大日本インキ化学工業社製の、大豆油インキ“ナチュラリス100”、東洋インキ社製の、VOCゼロインキ“TKハイエコーNV”、東京インキ社製のプロセスインキ“ソイセルボ”等があげられる。
【0072】
湿し水としては、市販のオフセット印刷用の酸性の市販の湿し水が用いられる。印刷用紙としては市販の、アート紙、コート紙、上質紙、マット紙等が用いられる。
【実施例】
【0073】
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。
【0074】
実施例1
支持体の作製
厚さ0.30mmのアルミニウム板(材質1050,調質H16)を65℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、1分間の脱脂処理を行った後、水洗した。この脱脂アルミニウム板を、25℃に保たれた10%塩酸水溶液中に1分間浸漬して中和した後、水洗した。次いで、このアルミニウム板を、0.3質量%の塩酸および0.1質量%の酢酸の混酸水溶液中で、25℃、電流密度100A/dm2の条件下に交流電流により60秒間、電解粗面化を行った後、60℃に保たれた5%水酸化ナトリウム水溶液中で10秒間のデスマット処理を行った。デスマット処理を行った粗面化アルミニウム板を、15%硫酸溶液中で、25℃、電流密度10A/dm2、電圧15Vの条件下に1分間陽極酸化処理を行った。
【0075】
更に1%酢酸アンモン水溶液で75℃、15秒間で後処理を行いさらに水洗し、80℃1分の乾燥をおこない支持体を作製した。
【0076】
この時、表面の中心線平均粗さ(Ra)は0.45μm、陽極酸化皮膜量は、2.5g/m2であった。
【0077】
(赤外レーザー感熱性平版印刷版材料の作製)
上記表面処理済み支持体上に、下記組成の赤外光感熱層塗布液を乾燥時2g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、
95℃で1.5分間乾燥した。
【0078】
赤外光感熱層塗布液
樹脂:LB6564−ベークライト(Bakelite)社製フェノール・クレゾール
(仕込み質量比:4/6)とホルマリンとの縮合ノボラック樹脂 89質量部
赤外線吸収色素(染料1) 4質量部
クリスタルバイオレット染料(保土ヶ谷化学製) 0.9質量部
酸分解化合物A 5質量部
2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)1,3,5−トリアジン 1質量部
フッソ系界面活性剤;メガファック F−178K(大日本インキ化学工業製)
0.1質量部
溶剤:1−メトキシプロパン−2−オール 1000質量部
【0079】
【化5】

【0080】
製版・印刷評価
得られた赤外レーザー感熱性平版印刷版材料は下記の露光及び現像をおこなった。現像液ランニングでは長期の現像評価を行った。
【0081】
露光
クレオ社製プレートセッター Trendsetter 3244Fを用いて、出力:9.0W、回転数:150rpm、解像度2400dpi(dpiとは1インチ、即ち2.54cm当たりのドット数を表す)で露光した。85〜99%の絵柄とベタ部のはいった原稿データを用いた。
【0082】
露光後、非画線部となる露光部と、画線部となるベタ部分(未露光部)に手の親指で強く押した後、2秒から20秒以内に自動現像機で表1に示す現像液1〜17で下記条件で現像処理を行い平版印刷版1−1〜1−17を得た。同時に除電ブラシの柄の部分(木製)で画線部を線状に長さ約10cmのこすりを3回入れた。
【0083】
現像後の版上で画線部の親指の押した跡のやられ、除電ブラシこすり跡のやられ状態(膜減り具合)を目視で観察した、印刷後のインキののり具合も観察し、結果を表2に示した。
【0084】
次に、下記、現像補充液1〜17をそれぞれ対応する現像液に補充しながら、長期の現像ランニングを下記条件で3週間実施した後、上記と同様な露光後、3週間ランニングした現像液で現像し、平版印刷版2−1〜2−17を得た。上記と同じ評価をして、結果を表3に示した。
【0085】
現像液
A珪酸カリ(日本化学工業製ケイ酸カリウム水溶液) 7質量部
苛性カリ(フレーク状) 下記pHとなる添加量(約3質量部)
本発明の化合物(表1に示す) 0.6質量部
エマルミンNL−80(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、三洋化成工業株式会社) 1質量部
水(水道水、硬度100ppm) 1000質量部
pH=12.9
現像補充液
A珪酸カリ(日本化学工業製ケイ酸カリウム水溶液) 7質量部
苛性カリ(フレーク状) 下記pHとなる添加量(4.5質量部)
本発明の化合物(表1に示す) 0.6質量部
エマルミンNL−80(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、三洋化成工業株式会社) 1質量部
水(水道水、硬度100ppm) 1000質量部
pH=13.1
【0086】
【表1】

【0087】
現像条件
自動現像機:Raptor85(Glunz&Jensen製)を用い、フィニシング液(ガム液):FP−2W
(富士写真フィルム(株)製)を用いた。
【0088】
現像時間:30秒、現像温度:28℃
現像補充条件
感光性平版印刷版(1003×800mm;平均画像面積率:35%)1枚処理ごとに処理疲労分として現像補充液を180ml補充する設定とした。また夜間未使用時(12時間分)の空気疲労分は500ml、昼間未使用時の空気疲労分は、時間あたり100mlとして補充をおこなった。
【0089】
現像ランニング条件
100版/日のペースで3週間(21日)間現像処理をおこなった。尚、週2日(土曜、日曜)は夜間と同様に現像処理を止めた。その場合の空気疲労分は500ml/休日とした。
【0090】
印刷条件
上記のようにして露光現像により得られた、平版印刷版1−1〜1−17及び2−1〜2−17を、印刷機:DAIYA1、F−1(三菱重工業(株)製)、印刷インキ:大豆−油インキ(ナチュラリス100(Naturalith))(大日本インキ化学工業(株)製)、湿し水:H液SG−51濃度1.5%(東京インキ(株)製)、印刷用紙:ミューコート4,6判、90kg(北越製紙(株)製)、印刷スピード:8000枚/時で印刷し、下記の評価をして結果は表2、3に示す。
【0091】
印刷物の評価
約500枚印刷時点での印刷物、特に版上の親指の押した跡(画線部および非画線部)のインキ着肉状態、および全体の仕上がり品質を目視で観察し、結果を表2、3に示した。さらに500枚印刷した印刷物の非画線部をルーペにて評価し結果を表2、3に示した。
【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
*1:露光部が完全にクリヤーになる露光エネルギー量(mj/cm2
*2:版のベタ部の目視観察、
A:良、B:やられわずかあり、C:ヤラレあり
*3:印刷スタート後500枚の印刷物のベタ部目視観察、
A:良、B:インク着肉不良わずかあり、C:インク着肉不良あり
*4:印刷をストップし、1時間放置、印刷再スタート後500枚目の印刷物をルーペ(20倍)観察。
非画線部2箇所(10cm×10cm)のスポット状よごれ(約4〜200ミクロンのスポット汚れ)の平均値、
A:0〜1個、B:2〜5個、C:5個以上
表2、3から、本発明の化合物を使用した現像液でサーマルポジCTP版を製版、印刷すると、製版時の指押し跡やられ、除電バーでのこすり部やられがなく、且つ印刷での非画線部の微点汚れ(スポット状汚れ)のない印刷版が得られることが明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外レーザー感熱性平版印刷版材料用の現像液が、該現像液中に下記一般式(A)で表される化合物および下記一般式(B)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種と、ケイ酸カリウムおよびケイ酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種とを含むことを特徴とする赤外レーザー感熱性平版印刷版材料用の現像液。
【化1】

[式中、A1〜A4は−CH2OH又は−COOMを表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Mは水素原子、アルカリ金属又はその他のカチオンを表す。Xは炭素数2〜6の置換又は未置換のアルキレン基を表す。]
【化2】

[式中、A1〜A4は前記一般式(A)で定義したものと同義であり、nは1〜8の整数を表す。またB1及びB2は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜5の置換又は未置換のアルキレン基を表す。]
【請求項2】
砂目立てしたアルミニウム板上に赤外線吸収色素、ノボラック樹脂を含有する感熱層を有する赤外レーザー感熱性平版印刷版材料を、赤外光レーザーで露光後、アルカリ性現像液で現像し平版印刷版を作製する赤外レーザー感熱性平版印刷版材料の処理方法において、該アルカリ性現像液が請求項1に記載の赤外レーザー感熱性平版印刷版材料用の現像液であることを特徴とする赤外レーザー感熱性平版印刷版材料の処理方法。
【請求項3】
砂目立て方法が塩酸を主体とする電解浴であることを特徴とする請求項2に記載の赤外レーザー感熱性平版印刷版材料の処理方法。

【公開番号】特開2007−57662(P2007−57662A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240946(P2005−240946)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】