説明

赤外線ガスセンサ

【課題】小型かつ薄型で、測定精度の高い簡易な構成の赤外線ガスセンサを提供すること。
【解決手段】本発明の赤外線ガスセンサは、赤外光を含む光を発する赤外光源1と、この赤外光源1からの赤外線を受ける赤外線センサ5と、この赤外線センサ5上に配置された特定の波長を通すバンドパスフィルタ7と、赤外光源1と赤外線センサ5とを支持する基板2と、赤外光源1と赤外線センサ5とを覆うドーム型筐体9とを備えている。赤外線センサ5の受光面の視野内に赤外光源1の発光面はなく、赤外光源1から発した光は、ドーム型筐体9の内面に反射して赤外線センサ5に入射するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線ガスセンサに関し、より詳細には、小型でかつ高性能な赤外線ガスセンサのパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外吸収を利用した赤外線ガスセンサに用いられる測定セルは、円筒形もしくは直方体形状が多く、赤外光源と赤外線センサはこの測定セルの両端に配置するのが一般的である。
【0003】
図6は、従来の赤外線吸収方式(NDIR:Non−Dispersive Infrared Analysis)を用いたCO2ガスセンサを示す断面構成図である。図6に示すように、被測定ガスが流れる測定セル29と、赤外光源21と、2つの赤外線センサ25Aと赤外線センサ25Bにより構成されている。赤外線センサ25Aの前面には、CO2特性吸収帯域の赤外光だけ透過する光学フィルタ27A(例えば、中心波長4.3μmのバンドパスフィルタ)が配置され、赤外線センサ25Bの前には、CO2特性吸収帯域ではない波長の赤外光を透過する光学フィルタ27B(例えば、中心波長3.9μmのバンドパスフィルタ)が配置されている。
【0004】
赤外光源から発せられた赤外光は、測定セル29の中の被測定ガス(例えば、CO2)により吸収され、赤外線センサ25A、赤外線センサ25Bに到達し、それぞれの赤外線センサによって出力された検出信号を演算処理することで、被検出ガスの濃度を出力する。
【0005】
また、それほど精度を必要としない室内モニター用CO2ガスセンサ等では、赤外線センサ25Aのみの出力で、ガス濃度を検出する方式もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−228022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、地球温暖化の影響により、CO2やNOX等の排気ガス濃度をいつでも手軽に測定したいという関心が高まるにつれて、小型かつ薄型の赤外線ガスセンサが求められてきている。
【0008】
しかしながら、図6に示したような一般的な赤外線ガスセンサでは、ガス検知性能は測定セル29の長さ、すなわち、赤外光源と赤外線センサ間の距離に依存するため、測定セルはある程度の長さが必要である。そのため、ガス検知モジュールの構成としては、測定セルを基板上に長軸を平行にして配置されることが多い。
【0009】
また、従来の赤外線ガスセンサでは、十分な検知性能(十分な光路長)を確保する観点から、赤外光源の発光面と赤外線センサの入射面は測定セルを介して対向している必要があり、結果として各パッケージ面を基板面に対して垂直に立てることになり、パッケージ横寸法(=測定セル高さ)がガス検知モジュールの高さの制限となると同時に、高い信頼性でPKGを立てて実装する技術が必要となる。また、該構成では、赤外光源と赤外線センサが位置的に離れているので、それぞれ電気配線を長く引き伸ばす必要があるため、電磁ノイズ等を拾いやすい配置となり、その結果、測定精度低下の一因となっている。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、小型かつ薄型で、測定精度の高い簡易な構成の赤外線ガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するため、本発明者は鋭意検討した結果、以下に記載の本発明により上記課題を解決できることを見出して本発明を完成させた。
【0012】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、赤外光を含む光を発する赤外光源と、該赤外光源からの赤外線を受ける赤外線センサと、該赤外線センサ上に配置された特定の波長を通すバンドパスフィルタと、前記赤外光源と前記赤外線センサとを支持する基板と、前記赤外光源と前記赤外線センサとを覆うドーム型筐体とを備え、前記赤外線センサの受光面の視野内に前記赤外光源の発光面がなく、前記赤外光源から発した光が、前記ドーム型筐体の内面に反射して前記赤外線センサに入射するように構成されたことを特徴とする。(図1,実施例1)
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記基板にドーム型の第1の凹部と第2の凹部を設け、前記赤外光源と前記赤外線センサが、前記第1の凹部と前記第2の凹部の内部にそれぞれ配置されていることを特徴とする。(図2,実施例2)
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記基板の上面に前記赤外光源が配置され、前記基板の下面に前記赤外線センサが配置され、前記ドーム型筐体が、前記赤外光源を覆うように配置される第1のドーム型筐体と、前記赤外線センサを覆うように配置される第2のドーム型筐体とからなり、前記赤外光源から発せられた光の少なくとも一部は、前記第1のドーム型筐体の内面に反射し、次に前記第2のドーム型筐体の内面に反射することで前記赤外線センサに入射することを特徴とする。(図3,実施例3)
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の発明において、前記ドーム型筐体は、大きさの異なる穴の開いた薄いプリント基板の積層体からなることを特徴とする。(図5,実施例4)
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記ドーム型筐体が、金属又は樹脂からなり、該ドーム型筐体の内面が、所望の赤外線に対する反射率の高い物質で覆われていることを特徴とする。(実施例1乃至4)
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、前記赤外線センサが、光起電力型赤外線センサであることを特徴とする。(全実施例)
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、赤外光源から発した赤外光は、ドーム型筐体に反射して赤外線センサ入射するので、十分な検知性能(=十分な光路長)を維持しつつ、PKGの長さを半分以下に抑えることが出来る。さらに、従来の円筒形、直方体形状の測定セルでは、赤外光源から直接赤外線センサに入射した赤外光以外の赤外光は、測定セルの内部にランダムに反射して、一部が赤外線センサに入射するが、本発明では、ドーム型筐体の内面を、赤外光源から発した光を反射して、赤外線センサに集光するよう光学的に設計することで、より検知性能をあげることが出来る。
【0017】
また、赤外光源と赤外線センサが同じ基板上の近い位置に、立てることなく通常の状態で実装可能であるので、高い信頼性で組立可能で、電気配線のスペースも小さく、ノイズの影響も小さくすることが出来る。
【0018】
さらに、赤外光源を発する熱を、基板を介して受け、赤外線センサの温度も一定温度に上昇することにより、赤外線ガスセンサの外部気温の影響による、温度特性変動を抑えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る赤外線ガスセンサの実施例1を説明するための断面構成図である。
【図2】本発明に係る赤外線ガスセンサの実施例2を説明するための断面構成図である。
【図3】本発明に係る赤外線ガスセンサの実施例3を説明するための断面構成図である。
【図4】図3に示した本発明に係る赤外線ガスセンサの実施例3のA−A’面から見た上面図である。
【図5】本発明に係る赤外線ガスセンサの実施例4を説明するための断面構成図である。
【図6】従来の赤外線吸収方式を用いたCO2ガスセンサを示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明に係る赤外線ガスセンサの実施例1を説明するための断面構成図である。図中符号1は赤外光源、2は基板、3は電気配線、4は仕切り部、5は赤外線センサ、6は電気配線、7は光学フィルタ、8は基板反射面、9はドーム型筐体、10は凹型反射面、11は凹型反射面の焦点、12はガス出入口を示している。
【0022】
本実施例1の赤外線ガスセンサは、赤外光を含む光を発する赤外光源1と、この赤外光源1からの赤外線を受ける赤外線センサ5と、この赤外線センサ5上に配置された特定の波長を通すバンドパスフィルタ7と、赤外光源1と赤外線センサ5とを支持する基板2と、赤外光源1と赤外線センサ5とを覆うドーム型筐体9とを備えている。
【0023】
赤外線センサ5の受光面の視野内に赤外光源1の発光面はなく、赤外光源1から発した光は、ドーム型筐体9の内面に反射して赤外線センサ5に入射するように構成されている。この場合、赤外線センサ5は、光起電力型赤外線センサであることが望ましい。
【0024】
つまり、図1に示したように、本実施例1の赤外線ガスセンサは、赤外光を発する赤外光源1が基板2上に配置されており、基板2は、この赤外光源1を水平に保持し、ベース基板としても機能する回路基板で、例えば、プリント基板である。赤外光源1は、赤外光源1を駆動させるための電気配線3、例えば、導電性のワイヤー、バンプ、ボールによって、基板2上の電気回路と電気的に接続されている。
【0025】
また、同じ基板2上には、赤外線センサ5が配置されており、電気配線6、例えば、導電性のワイヤー、バンプ、ボールによって、基板2上の電気回路と電気的に接続されている。本実施例1において赤外線センサ5は、赤外光を吸収して電気信号に変換する光起電力型の赤外線センサであれば特に制限されず、例えば、フォトダイオードやフォトコンダクタなど、光電変換によって信号を出力する「量子型センサ」や、サーモパイルや焦電型センサなど、赤外光吸収による温度変化を電気信号に変換する「熱型センサ」を用いることもできる。
【0026】
赤外線センサ5上には、所定の波長の光だけ透過する光学フィルタ7が配置されており、赤外線センサ5上に直接フィルタ素材を成膜したり、既存の光学フィルタを赤外線センサ5上に配置してもよい。所定の波長としては、被検知ガスの少なくとも1つの吸収帯域の波長が含まれていれば特に制限されず、検出精度や検出感度の観点から適宜設定することが可能である。
【0027】
赤外光源1と赤外線センサ5の間には、仕切り部4が配置されており、赤外光源1から出た赤外光が直接赤外線センサ5に入射するのを防ぐものである。仕切り部4は、赤外光を通さない素材で出来ていることが好ましく、例えば、プリント基板が好適に用いられる。基板2の表面の一部には基板反射面8を備えている。基板反射面8は、赤外領域で高い反射率をもつ素材、例えば、金、アルミニウム、クロムなどの金属膜で基板2の表面の一部をコーティングすることで設けることが可能である。
【0028】
赤外光源1の発光面と赤外線センサ5の受光面側上方には、ドーム型筐体9が配置されている。ドーム型筐体9は、一部にドーム型の空間部を有する筐体であり、このドーム型の空間部が赤外光源1と赤外線センサ5を覆っている。ドーム型筐体9を構成する部材については特に制限されないが、成形容易性の観点から、鋳造用の金属やABS樹脂などを用いることが出来る。
【0029】
図1に示した赤外線ガスセンサでは、ドーム型筐体9のドーム型の空間部の内壁に相当する表面には凹面反射板10を有している。ドーム型筐体9自体が赤外光に対して高い反射率でない材料で構成されている場合、十分な光路長を確保する観点から、この凹面反射板10を備えていることが好ましい。内面である凹面反射板10は、赤外領域で高い反射率をもつ素材で構成されていれば特に制限されず、例えば、金、アルミニウム、クロムなどの金属膜を蒸着等の手段でドーム型筐体9のドーム型の空間部の内壁をコーティングすることで得られる。
【0030】
凹面反射板10の焦点11は、測定感度の観点から、赤外光源1と赤外線センサ5の中間近傍であることが好ましい。また、この焦点11は、赤外光源1と赤外線センサ5の配置している基板2より、下面であることが好ましい。なお、焦点とは、光源と凹面反射板の距離をa、焦点と凹面反射板の距離を焦点距離b、凹面反射板の曲率半径をRとしたときに、1/a+1/b=2/Rの関係で表される距離であり、本実施例1における焦点11は、凹面反射板に平行光が入射したとき(a→∞)の焦点であるb=2/Rで表される点を図示している。
【0031】
ドーム型筐体9には、ガス出入口12が少なくとも1箇所空いており、被検知ガスが出入りするようになっている。
【0032】
赤外光源1から発せられた赤外光は、凹面反射板10に達し、凹面反射板10は2/Rよりも近い位置の光源から発生された光を略平行光として反射するので、多くの光が基板2に対して垂直方向に反射される。基板2に達した赤外光は、基板反射面8によって、再び、凹面反射板10の方向へ反射される。凹面反射板10に達した略平行光の赤外光は、凹面反射板10の焦点11の方向に向かって反射・集光され、その一部の赤外光が赤外線センサ5に入射する。
【0033】
赤外光源1から発せられた赤外光が赤外センサ5に入射するまでの間、ガス出入口12から流入されてドーム型筐体9のドーム型の空間部に漂っている被検知ガス(例えば、CO2)によって、特性吸収帯域の赤外光(CO2ならば4.3μm)のみ吸収される。赤外光源1から発せられ、凹面反射板10によって2回、基板反射面8によって1回反射されて赤外線センサ5に到達した赤外光であれば、同じ空間面積で従来よりも4倍赤外光の光路長が取れることになり、ガス検知精度を上げることが出来る。また、凹面反射板10によって集光しているため、効率的に赤外光を赤外線センサ5に導くことが出来、検知感度の高精度化や、赤外光源の省エネ化を可能にする。
【実施例2】
【0034】
図2は、本発明に係る赤外線ガスセンサの実施例2を説明するための断面構成図である。図中符号13は第1の凹部、14は第2の凹部、13a,14aは凹面反射板を示している。なお、図1と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
【0035】
本実施例2の赤外線ガスセンサは、基板2にドーム型の第1の凹部13と第2の凹部14を設け、第1の凹部13と第2の凹部14の内面には、それぞれ凹面反射板13a,14aが設けられている。赤外光源1と前記赤外線センサ5が、第1の凹部13と第2の凹部14の内部にそれぞれ配置されている。
【0036】
図2で示した赤外線ガスセンサは、図1に示した基板2の一部が凹型にくぼんでおり、赤外光源1と赤外線センサ5はこの凹型部の中にそれぞれ収容されている。赤外光源1の上面部と赤外線センサ5の上面部は、この凹型部の上面より下方にあるため、赤外光源1から発した赤外光は、両者の凹型部間に形成された仕切り部4によって遮光され、直接、赤外線センサに入射することはないように配置されている。
【0037】
図2に示した赤外線ガスセンサでは、赤外光源1及び赤外線センサ5が収容されている凹型の内面で、電気配線以外の部分には、凹面反射板13a,14aがそれぞれ配置されている。基板2自体が赤外線に対して高い反射率ではない材料で構成されている場合、十分な光路長を確保する観点から、この凹面反射板13a,14aを備えていることが好ましい。この凹型反射板13a,14aは赤外領域で高い反射率をもつ素材で構成されていれば特に制限されず、例えば、金、アルミニウム、クロムなどの金属膜を蒸着等の手段で基板2の凹部をコーティングすることで得られる。
【0038】
赤外光源1から発せられた赤外光は、凹面反射板10に達し、多くの光が基板2に対して垂直方向に反射される。基板2に達した赤外光は、基板反射面8や凹面反射板13a,14aによって、再び、凹面反射板10の方向へ反射される。凹面反射板10に達した赤外光は、凹面反射板10の焦点方向に向かって集光され、その一部の赤外光が赤外線センサ5に入射する。
【0039】
赤外光源1から発せられた赤外光は、赤外線センサ5に入射するまでの間、ガス出入口12から流入されたドーム型筐体9のドーム型の空間部に漂っている被検知ガス(例えば、CO2)によって、特性吸収帯域の赤外光(CO2ならば4.3μm)のみ吸収される。
【0040】
また、赤外光源1から基板2に対して水平方向に発せられた赤外光は、凹面反射板13aによって、基板2に対して垂直な方向に反射され、筐体9の凹面反射板10によって、再度反射されて、赤外線センサ5に入射する。
【0041】
上述した実施例1の場合、赤外光源1から基板2に対して水平方向に発せられた赤外光は、仕切り部4によって遮光、吸収されてしまうが、本実施例2の場合、凹面反射板13a,14aによって、基板面に垂直方向に反射され、結果、赤外線センサ5に入射するため、実施例1より多くの赤外光を赤外線センサに導いていることになり、より高感度化と省エネ化が達成される赤外線ガスセンサとなる。
【実施例3】
【0042】
図3は、本発明に係る赤外線ガスセンサの実施例3を説明するための断面構成図である。図中符号8A,8Bは基板反射面、9A,9Bはドーム型筐体、10A,10Bは凹型反射面、11A,11Bは凹型反射面の焦点を示している。なお、図1と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
【0043】
本実施例3の赤外線ガスセンサは、基板2の上面に赤外光源1が配置され、基板2の下面に赤外線センサ5が配置され、ドーム型筐体が、赤外光源1を覆うように配置される第1のドーム型筐体9Aと、赤外線センサ5を覆うように配置される第2のドーム型筐体9Bとからなっている。
【0044】
また、赤外光源1から発せられた光の少なくとも一部は、第1のドーム型筐体9Aの内面に反射し、次に第2のドーム型筐体9Bの内面に反射することで赤外線センサ5に入射するように構成されている。
【0045】
また、ドーム型筐体9A,9Bは、金属又は樹脂からなり、このドーム型筐体9A,9Bの内面が、所望の赤外線に対する反射率の高い物質で覆われている。
【0046】
つまり、図3に示したように、実施例3の赤外線ガスセンサは、赤外光を発する赤外光源1が基板2上に配置されており、基板2は、この赤外光源1を水平に保持し、ベース基板としても機能する回路基板であり、例えば、プリント基板を用いることが出来る。赤外光源1は、赤外光源1を駆動させるための電気配線3、例えば、導電性のワイヤー、バンプ、ボールによって、基板2上の電気回路と電気的に接続されている。
【0047】
また、同じ基板2の下面には、赤外線センサ5が配置されており、電気配線6、例えば、導電性のワイヤー、バンプ、ボールによって、基板2上の電気回路と電気的に接続されている。
【0048】
基板2の上下表面で、電気回路用配線以外の部分は、基板反射面8A,8Bがあり、赤外領域で高い反射率をもつ素材、例えば、金、アルミニウム、クロムなどの金属膜でコーティングされている。
【0049】
赤外光源1の発光面上方と赤外線センサ5の受光面下方には、第1のドーム型筐体9Aと第2のドーム型筐体9Bがそれぞれ配置されている。第1のドーム型筐体9A,第2のドーム型9Bは、鋳造用の金属やABS樹脂などで出来ている。内部はドーム型の空間が空いている。ドーム型の内面である凹面反射板10A,10Bは、赤外領域で高い反射率をもつ素材でコーティングされており、例えば、金、アルミニウム、クロムなどの金属膜が蒸着されている。
【0050】
図3の赤外線ガスセンサでは、凹面反射板10Aの焦点11Aは、赤外光源1の中心にあり、また、凹面反射板10Bの焦点11Bは、赤外線センサ5の中心にある。
【0051】
第1及び第2のドーム型筐体9A,9Bには、ガス出入口12が少なくとも1箇所空いており、被検知ガスが出入りするようになっている。
【0052】
図4は、図3に示した本発明に係る赤外線ガスセンサの実施例3のA−A’面から見た上面図である。基板2は、第1のドーム型筐体9Aと第2のドーム型筐体9B間を完全に塞ぐのではなく、橋状に配置されており、第1のドーム型筐体9A,第2のドーム型筐体9B内の被検知ガスや赤外光は、基板2の両端の空間を通して、第1のドーム型筐体9A,第2のドーム型9B間を移動できる。
【0053】
赤外光源1から発せられた赤外光は、凹面反射板10Aに達し、ほぼ全ての光が基板2の面に対して垂直方向に反射される。橋状の基板2に達した一部の赤外光は、基板反射面8によって、再び、凹面反射板10の方向へ反射される。基板2には達しなかった他の赤外光は、橋状の基板2の横を通り抜け、凹面反射板10Bに到達する。赤外光は、凹面反射板10Bによって集光され、赤外線センサ5に入射する。
【0054】
赤外光源1から発せられた赤外光は、凹面反射板10A,10Bによってそれぞれ少なくとも1回は反射されるので、同じ空間面積で従来よりも2倍赤外光の光路長が取れることになり、よりガス検知精度を上げることが出来る。また、凹面反射板10A,10Bによって赤外光源1から発した光の大部分を赤外線センサ5に集光しているため、大幅に検知感度の高精度化や赤外光源の省エネ化を可能にする。
【0055】
図3に示した赤外線ガスセンサでは、赤外光源1と赤外線センサ5が位置的に近いため、赤外光源が発光によって発熱し、赤外線センサも室温よりセンサ温度が上昇する。長期的には室温と赤外光源の温度との間の定常状態で安定する。結果、室温のゆらぎを受けにくくなり、センサ感度の温度特性が向上する。
【実施例4】
【0056】
図5は、本発明に係る赤外線ガスセンサの実施例4を説明するための断面構成図である。図中符号91A〜97A,91B〜97Bはプリント基板を示している。なお、図3と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
【0057】
本実施例4の赤外線ガスセンサは、実施例3に係る赤外線ガスセンサのドーム型筐体9A、9Bを基板2と同じ材料の積層体で構成した赤外線ガスセンサである。ドーム型筐体9A,9Bは、大きさの異なる穴の開いた薄いプリント基板91A〜97A,91B〜97Bの積層体からなっている。
【0058】
つまり、図5においてドーム型筐体9A,9Bは、複数の穴径の異なった基板91A〜97A,91B〜97Bを重ね合わせた積層体によって構成されている。そしてドーム型筐体9A,9Bのドーム型の空間部の内壁に相当する表面には実施例3で記載したものと同様の凹面反射板10A,10Bを有している。
【0059】
ドーム型筐体9A,9Bを基板2と同じ材料の積層体で構成することにより、筐体組立工程の簡素化、低コスト化、軽量化を実現することが出来る。なお、実施例3以外の実施例においても、ドーム型筐体9を基板2と同じ材料の積層体で構成することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、小型かつ薄型で、測定精度の高い簡易な構成の赤外線ガスセンサとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1,21 赤外光源
2,22 基板
3,6 電気配線
4 仕切り部
5,25A,25B 赤外線センサ
7,27A,27B 光学フィルタ
8,8A,8B 基板反射面
9,9A,9B ドーム型筐体
10,10A,10B 凹型反射面
11,11A,11B 凹型反射面の焦点
12,32 ガス出入口
13 第1の凹部
14 第2の凹部
13a,14a 凹型反射面
29 測定セル
91A〜97A,91B〜97B プリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外光を含む光を発する赤外光源と、該赤外光源からの赤外線を受ける赤外線センサと、該赤外線センサ上に配置された特定の波長を通すバンドパスフィルタと、前記赤外光源と前記赤外線センサとを支持する基板と、前記赤外光源と前記赤外線センサとを覆うドーム型筐体とを備え、
前記赤外線センサの受光面の視野内に前記赤外光源の発光面がなく、前記赤外光源から発した光が、前記ドーム型筐体の内面に反射して前記赤外線センサに入射するように構成されたことを特徴とする赤外線ガスセンサ。
【請求項2】
前記基板にドーム型の第1の凹部と第2の凹部を設け、前記赤外光源と前記赤外線センサが、前記第1の凹部と前記第2の凹部の内部にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1に記載の赤外線ガスセンサ。
【請求項3】
前記基板の上面に前記赤外光源が配置され、前記基板の下面に前記赤外線センサが配置され、前記ドーム型筐体が、前記赤外光源を覆うように配置される第1のドーム型筐体と、前記赤外線センサを覆うように配置される第2のドーム型筐体とからなり、
前記赤外光源から発せられた光の少なくとも一部は、前記第1のドーム型筐体の内面に反射し、次に前記第2のドーム型筐体の内面に反射することで前記赤外線センサに入射することを特徴とする請求項1に記載の赤外線ガスセンサ。
【請求項4】
前記ドーム型筐体は、大きさの異なる穴の開いた薄いプリント基板の積層体からなることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の赤外線ガスセンサ。
【請求項5】
前記ドーム型筐体が、金属又は樹脂からなり、該ドーム型筐体の内面が、所望の赤外線に対する反射率の高い物質で覆われていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の赤外線ガスセンサ。
【請求項6】
前記赤外線センサが、光起電力型赤外線センサであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の赤外線ガスセンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−215396(P2012−215396A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79103(P2011−79103)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】