説明

赤外線センサおよびその製造方法

【課題】熱ノイズを低減することが可能な赤外線センサおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】赤外線センサ100は、サーモパイル30aにより構成される感温部30を有し半導体基板1の一表面側に形成されて半導体基板1に支持された熱型赤外線検出部3と、半導体基板1の上記一表面側に形成され感温部30の出力電圧を取り出すためのMOSトランジスタ4とを備える。MOSトランジスタ4のゲート電極46が、ゲート絶縁膜45上の導電性ポリシリコン層46aと、導電性ポリシリコン層46aを覆うシリサイド層46bとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図26および図27に示す構成の赤外線センサ200が提案されている(特許文献1)。この赤外線センサ200は、赤外線を吸収する赤外線吸収部233の温度変化に応じた出力電圧を発生する熱電対型の感温部230を具備する熱型赤外線検出部203とMOSトランジスタ204とを有する画素部202を備えている。また、この赤外線センサ100は、a×b個(図27の例では、4×4個)の画素部202が、ベース基板201の一表面側において2次元アレイ状に配置されている。ここで、ベース基板201は、n形のシリコン基板201aを用いて形成されている。なお、図27(b)では、感温部230の等価回路を、当該熱電対型の感温部230の熱起電力に対応する電圧源で表してある。
【0003】
MOSトランジスタ204は、シリコン基板201aの上記一表面側にp形(p)のウェル領域241が形成され、ウェル領域241内に、n形(n)のドレイン領域243とn形(n)のソース領域244とが離間して形成されている。また、ウェル領域241内には、ドレイン領域243とソース領域244とを囲むp形(p++)のチャネルストッパ領域242が形成されている。ウェル領域241においてドレイン領域243とソース領域244との間に位置する部位の上には、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜245を介してn形のポリシリコン層からなるゲート電極246が形成されている。また、MOSトランジスタ204は、ドレイン領域243上にドレイン電極247が形成され、ソース領域244上にソース電極248が形成され、チャネルストッパ領域242上にグラウンド用電極249が形成されている。
【0004】
上述の赤外線センサ200は、各列の複数の熱型赤外線検出部203の感温部230の一端がMOSトランジスタ204を介して各列ごとに共通接続された複数の垂直読み出し線207と、各行の熱型赤外線検出部203の感温部230に対応するMOSトランジスタ204のゲート電極246が各行ごとに共通接続された複数の水平信号線206とを備えている。また、赤外線センサ200は、各列のMOSトランジスタ204のウェル領域241が各列ごとに共通接続された複数のグラウンド線208と、各グラウンド線208が共通接続された共通グラウンド線209(図27(b)参照)とを備えている。さらに、赤外線センサ200は、各列の複数個の熱型赤外線検出部203の感温部230の他端が各列ごとに共通接続された複数の基準バイアス線205を備えている。
【0005】
また、赤外線センサ200は、各水平信号線206それぞれが、各別の画素選択用のパッドVselに電気的に接続され、各垂直読み出し線207それぞれが、各別の出力用のパッドVopに電気的に接続されている。
【0006】
さらに、赤外線センサ200は、共通グラウンド線209が、グラウンド用のパッドGndに電気的に接続され、共通基準バイアス線205aが、基準バイアス用のパッドVrefinと電気的に接続され、シリコン基板201aが、基板用のパッドVddと電気的に接続されている。
【0007】
しかして、上述の赤外線センサ200では、MOSトランジスタ204が順次オン状態になるように各画素選択用のパッドVselの電位を制御することで各画素部202の出力電圧を順次読み出すことができる。
【0008】
ここで、特許文献1には、基準バイアス用のパッドVrefinの電位を1.65V、グラウンド用のパッドGndの電位を0V、基板用のパッドVddの電位を5Vとしておき、画素選択用のパッドVselの電位を5Vとすれば、MOSトランジスタ204がオンとなり、出力用のパッドVopから画素部202の出力電圧(1.65V+感温部230の出力電圧)が読み出され、画素選択用のパッドVselの電位を0Vとすれば、MOSトランジスタ204がオフとなり、出力用のパッドVopから画素部202の出力電圧は読み出されないことが記載されている。
【0009】
また、特許文献1には、図28に示すように、赤外線センサ200と、当該赤外線センサ200の出力信号である出力電圧を信号処理する信号処理ICチップ300と、赤外線センサ200および信号処理ICチップ300が実装されたパッケージ350とを備えた赤外線センサモジュールが記載されている。ここで、特許文献1には、信号処理ICチッ300に、図29に示すように、赤外線センサ200の複数(図示例では、4つ)の出力用のパッドVopそれぞれがボンディングワイヤからなる配線80を介して各別に電気的に接続される複数(図示例では、4つ)の入力用のパッドVin、入力用のパッドVinの出力電圧を増幅する増幅回路302、複数の入力用のパッドVinの出力電圧を択一的に増幅回路302に入力するマルチプレクサ301などを設ければ、赤外線画像を得ることができることが記載されている。
【0010】
また、従来から、シリコン基板の一表面側の多数の画素形成領域それぞれに、メンブレン構造の熱型センサ素子が配置された赤外線アレイセンサが提案されている(特許文献2)。
【0011】
特許文献2に開示された赤外線アレイセンサは、図30に示すように、シリコン基板411の一表面側において、画素形成領域420を4分割して、4つの熱型センサ素子430を配置してある。
【0012】
ここで、熱型センサ素子430は、ボロメータ型センサ素子であり、第1のSiO薄膜と、第1のSiO薄膜上の金属薄膜抵抗と、金属薄膜抵抗上の第2のSiO薄膜と、第2のSiO薄膜上の赤外線吸収膜との積層体からなるメンブレン構造体となっている。また、特許文献2には、画素形成領域420の4つの熱型センサ素子430の金属薄膜抵抗を直列に接続して4つの金属薄膜抵抗の直列回路の両端電圧を画素の出力とすることで、各画素の出力を温度変化に対して大きくできる旨が記載されている。また、特許文献2に記載された赤外線アレイセンサでは、画素ごとに赤外線の受光量に応じた信号が出力されるように、信号発生回路および選択回路が設けられている。
【0013】
また、特許文献2には、熱型センサ素子430として、ボロメータ型のセンサ素子に限らず、サーモパイル型のセンサ素子を適用してもよい旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−78451号公報
【特許文献2】特開2001−309122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述のような赤外線センサモジュールにおいては、温度分解能のばらつきを小さくすることが望ましい。また、上述の赤外線センサモジュールの赤外線センサ200に代えて、上述の赤外線アレイセンサにおいて熱型センサ素子430をサーモパイル型のセンサ素子としたものを用いることも考えられるが、この場合も、温度分解能のばらつきを小さくすることが望ましい。
【0016】
ところで、上述の赤外線センサモジュールの全体のノイズをNtotal〔V〕、赤外線センサモジュールの温度分解能をNETD〔℃〕、感温部230の出力電圧をVAC〔V/℃〕とすると、
NETD=Ntotal/VAC〔℃〕 (式1)
となる。
【0017】
ここにおいて、赤外線センサモジュールの1/fノイズをN1/f〔V〕、赤外線センサ200の熱ノイズをNTh〔V〕、外来ノイズをNEMS〔V〕、赤外線センサ200以外(信号処理ICチップ300、パッケージ350など)からの熱ノイズや外部からの光ノイズを合わせたノイズをNT&E〔V〕とすると、
total=(N1/f+NTh+NEMS+NT&E1/2〔V〕 (式2)
となる。
【0018】
また、上述の赤外線センサ200において信号読み出し時に直列接続される感温部230の抵抗とMOSトランジスタ204のオン抵抗との直列接続の合成抵抗をR12〔Ω〕とすると、NTh∝R121/2〔V〕となる。すなわち、赤外線センサ200の熱ノイズは、感温部230の抵抗をR1、MOSトランジスタ204のオン抵抗をR2とすると、抵抗R1とオン抵抗R2との直列接続の合成抵抗R12の平方根に比例する。
【0019】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、熱ノイズを低減することが可能な赤外線センサおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の赤外線センサは、サーモパイルにより構成される感温部を有し半導体基板の一表面側に形成されて前記半導体基板に支持された熱型赤外線検出部と、前記半導体基板の前記一表面側に形成され前記感温部の出力電圧を取り出すためのMOSトランジスタとを備えた赤外線センサであって、前記MOSトランジスタのゲート電極は、ゲート絶縁膜上の導電性ポリシリコン層と、前記導電性ポリシリコン層を覆うシリサイド層とを有することを特徴とする。
【0021】
この赤外線センサにおいて、前記サーモパイルの熱電対の2種類の熱電要素が、p形ポリシリコン層とn形ポリシリコン層とであり、前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層それぞれにおける温接点側の端部と冷接点側の端部とがシリサイド層により覆われてなることが好ましい。
【0022】
この赤外線センサにおいて、前記サーモパイルにおける前記p形ポリシリコン層と前記n形ポリシリコン層との少なくとも一方に形成されたシリサイド層の厚さと、前記ゲート電極における前記導電性ポリシリコン層に形成されたシリサイド層の厚さとが同一であることが好ましい。
【0023】
この赤外線センサにおいて、前記サーモパイルは、前記p形ポリシリコン層と前記n形ポリシリコン層とが互いに異なる面上に形成されてなることが好ましい。
【0024】
この赤外線センサにおいて、前記半導体基板の前記一表面側において前記熱型赤外線検出部の一部の直下に空洞部が形成されてなり、前記熱型赤外線検出部は、前記半導体基板の前記一表面側で前記空洞部の周部に形成された支持部と、前記半導体基板の前記一表面側で平面視において前記空洞部を覆う第1の薄膜構造部とを備え、前記第1の薄膜構造部は、前記空洞部の周方向に沿って並設され前記支持部に支持された複数の第2の薄膜構造部と、互いに対向する前記第2の薄膜構造部同士を連結する連結片とを有し、前記各第2の薄膜構造部ごとに前記第2の薄膜構造部と前記支持部とに跨って前記サーモパイルが設けられるとともに、前記各サーモパイルごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全ての前記サーモパイルが電気的に接続されてなることが好ましい。
【0025】
本発明の赤外線センサの製造方法は、前記半導体基板の前記一表面側にノンドープポリシリコン層を形成した後、前記ノンドープポリシリコン層のうち前記p形ポリシリコン層と前記n形ポリシリコン層との少なくとも一方に対応する部分と前記導電性ポリシリコン層に対応する部分とが残るように前記ノンドープポリシリコン層をパターニングし、その後、前記ノンドープポリシリコン層に不純物を注入して前記p形ポリシリコン層と前記n形ポリシリコン層との少なくとも一方と前記導電性ポリシリコン層とを形成し、その後、前記p形ポリシリコン層と前記n形ポリシリコン層との少なくとも一方の表面側に前記サーモパイルにおける前記シリサイド層を形成するのと同時に、前記導電性ポリシリコン層の表面側に前記ゲート電極における前記シリサイド層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の赤外線センサにおいては、熱ノイズを低減することが可能となる。
【0027】
本発明の赤外線センサの製造方法においては、熱ノイズを低減することが可能な赤外線センサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態の赤外線センサの要部を示し、(a)〜(c)は概略断面図である。
【図2】同上の赤外線センサの要部の平面レイアウト図である。
【図3】同上の赤外線センサの平面レイアウト図である。
【図4】同上の赤外線センサの等価回路図である。
【図5】同上の赤外線センサの要部等価回路図である。
【図6】同上の赤外線センサを備えた赤外線センサモジュールの概略断面図である。
【図7】同上の赤外線センサの画素部の平面レイアウト図である。
【図8】同上の赤外線センサの画素部の平面レイアウト図である。
【図9】同上の赤外線センサの画素部の要部の平面レイアウト図である。
【図10】同上の赤外線センサの画素部の要部の平面レイアウト図である。
【図11】同上の赤外線センサの要部説明図である。
【図12】同上の赤外線センサに関し、(a)は要部の平面レイアウト図、(b)は、(a)のツェナダイオードの拡大図である。
【図13】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図14】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図15】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図16】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図17】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図18】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図19】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図20】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図21】同上の赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図22】同上の赤外線センサの他の構成例の要部概略断面図である。
【図23】同上の赤外線センサの他の構成例の要部概略断面図である。
【図24】同上の赤外線センサの他の構成例の要部概略断面図である。
【図25】同上の赤外線センサの別の構成例の要部概略断面図である。
【図26】従来例の赤外線センサを示し、(a)は画素部の平面レイアウト図、(b)は(a)のD−E断面に対応する概略断面図である。
【図27】同上の赤外線センサを示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は等価回路図である。
【図28】同上の赤外線センサを備えた赤外線センサモジュールの要部概略平面図である。
【図29】同上の赤外線センサを備えた赤外線センサモジュールの要部説明図である。
【図30】他の従来例を示す赤外線アレイセンサの要部概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施形態1)
以下、本実施形態の赤外線センサについて、図1〜図12を参照しながら説明する。なお、図1(a)は図2のA−B断面、図1(b)は図2のC−D断面、図1(c)は図2のE−F断面にそれぞれ相当している。
【0030】
赤外線センサ100は、a×b個(図3の例では、8×8個)の画素部2が、半導体基板1の一表面側において、a行b列(図3の例では、8行8列)の2次元アレイ状に配置されている。ここにおいて、画素部2は、赤外線による熱エネルギを電気エネルギに変換する熱電変換部である感温部30と、感温部30の出力電圧を取り出すためのMOSトランジスタ4とを具備している。なお、図3の例では、a=8、b=8としてあるが、a≧2、b≧2であればよい。
【0031】
上述のMOSトランジスタ4は、図1(a)に示すように、半導体基板1の上記一表面側に形成された第1導電形のウェル領域41内で、第2導電形のソース領域44と第2導電形のドレイン領域43とが離間して形成されている。本実施形態では、ウェル領域41がチャネル形成用領域を構成している。なお、図4には、第1導電形をp形、第2導電形をn形としてMOSトランジスタ4をnチャネルMOSトランジスタとした場合の等価回路図を示してある。また、図4の等価回路図では、感温部30を抵抗素子の図記号で表してある。
【0032】
また、赤外線センサ100は、各列のb個(8個)の画素部2の感温部30の一端がMOSトランジスタ4のソース領域44−ドレイン領域43を介して各列ごとに共通接続されたb個(8個)の第1の配線101を備えている。
【0033】
また、赤外線センサ100は、各行の感温部30に対応するMOSトランジスタ4のゲート電極46が各行ごとに共通接続されたa個(8個)の第2の配線102と、各行のMOSトランジスタ4のウェル領域41が各列ごとに共通接続されたb個(8個)の第3の配線103と、各列のa個(8個)の感温部30の他端が各列ごとに共通接続されたb個(図示例では、8個)の第4の配線104とを備えている。
【0034】
上述の赤外線センサ100は、第1の配線101が各別に接続された出力用のb個の第1のパッドVout1〜Vout8と、第2の配線102が各別に接続された画素部選択用のa個の第2のパッドVsel1〜Vsel8と、各第3の配線103が共通接続された第3のパッドVchと、第4の配線104が共通接続された基準バイアス用の第4のパッドVrefinとを備えている。しかして、赤外線センサ100は、全ての感温部30の出力を時系列的に読み出すことができるようになっている。すなわち、MOSトランジスタ4が、順次、オン状態になるように各画素部2を選択するための第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位を制御することで各画素部2の出力電圧を順次読み出すことができる。
【0035】
ところで、上述の赤外線センサ100を備えた赤外線センサモジュールの一例を図6に示す。この赤外線センサモジュールは、赤外線センサ100と、この赤外線センサ100を制御する制御手段であるIC素子122と、赤外線センサ100およびIC素子122が収納されたパッケージ133とを備えている。
【0036】
ここにおいて、第1のパッドVout1〜Vout8の電位をVout、第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位をVs、第3のパッドVchの電位をVwell、第4のパッドVrefinの電位をVref、感温部30の出力電圧をVo、チャネル形成用領域であるウェル領域41とソース領域44とで構成される第1の寄生ダイオードおよびウェル領域41とドレイン領域43とで構成される第2の寄生ダイオードのしきい値電圧をVthとするとき、制御手段であるIC素子122は、第2の配線102に接続されたa個(8個)のMOSトランジスタ4をオン状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsをVon、第2の配線102に接続されたa個(8個)のMOSトランジスタ4をオフ状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsをVoffとし、第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsをVonとしたときに、
MOSトランジスタ4がnMOSトランジスタであれば、
−Vth<{Vwell−(Vref+Vo)}<Vth
MOSトランジスタ4がpMOSトランジスタであれば、
−Vth<{(Vref+Vo)−Vwell}<Vth
の関係を満たすように設定されたVref、Vwellの条件で赤外線センサ100を制御する。
【0037】
本実施形態では、半導体基板1として第2導電形のシリコン基板を用いており、第1の寄生ダイオードおよび第2の寄生ダイオードの逆方向のブレークダウン電圧が−10V程度になる一方で、Vthが0.6V〜0.7V程度となる。そこで、IC素子122が、例えば、第4のパッドVrefinの電位Vrefを1.2V、第3のパッドVchの電位Vwellを1.2V、第2の配線102に接続されたa個(8個)のMOSトランジスタ4をオン状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsであるVonを5Vとすれば、MOSトランジスタ4がオンとなり、第1のパッドVout1〜Vout8から画素部2の出力電圧(Vref+Vo)を読み出すことが可能となる。また、第2の配線102に接続されたa個(8個)のMOSトランジスタ4をオフ状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsであるVoffを0Vとすれば、MOSトランジスタ4がオフとなり、第1のパッドVout1〜Vout8から画素部2の出力電圧は読み出されない。なお、半導体基板1は、シリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板を用いてもよく、この場合には、Vthが0.2V〜0.3V程度となる。
【0038】
上述の赤外線センサモジュールでは、上記関係を満たすように設定されたVref、Vwellの条件で赤外線センサ100を制御するので、MOSトランジスタ4がオンのときに、第1の寄生ダイオードおよび第2の寄生ダイオードにリーク電流が流れるのを抑制することができ、S/N比の向上を図れる。すなわち、本実施形態における赤外線センサモジュールでは、MOSトランジスタ4がオンのときに、チャネル形成用領域であるウェル領域41を通るリーク電流が流れるのを抑制することができ、S/N比の向上を図れる。
【0039】
赤外線センサモジュールは、IC素子122が、Vref=Vwellとするようにすれば、感温部30の出力電圧Voが小さい場合でも、第1の寄生ダイオードおよび第2の寄生ダイオードにリーク電流が流れるのを抑制することができる。赤外線センサモジュールでは、IC素子122が、VrefとVwellとを略同じとすることが好ましく、Vref=Vwellとすることがより好ましい。
【0040】
また、赤外線センサ100は、各MOSトランジスタ4のゲート電極46・ソース電極48間に過電圧が印加されるのを防止するために各第2の配線102それぞれにカソードが接続された複数のツェナダイオードZD(図4および図5参照)を備えている。ここで、ツェナダイオードZDは、図12に示すように、半導体基板1の上記一表面側に形成された第1導電形の第1拡散領域81内に第2導電形の第2拡散領域82が形成されたものである。そして、赤外線センサ100は、各ツェナダイオードZDの第1拡散領域81が共通接続された第5のパッドVzdを備えており、第5のパッドVzdの電位をVhogoとするとき、IC素子122は、VhogoとVwellとを異ならせる。ここで、IC素子122は、例えば、上述のように、第3のパッドVchの電位Vwellを1.2Vとする場合、第5のパッドVzdの電位Vhogoを0Vとする。したがって、赤外線センサモジュールは、IC素子122が、VhogoとVwellとを異ならせるので、MOSトランジスタ4のゲート絶縁膜45を保護しつつ、S/N比の向上を図れる。
【0041】
また、赤外線センサモジュールは、半導体基板1の導電形が第2導電形であって、第1導電形がp形、第2導電形がn形であり、IC素子122が、Vhogo≦Voff、且つ、Vhogo≦Vsubとすることにより、ツェナダイオードZDのリーク電流を抑制することができる。ここにおいて、第1導電形がp形、第2導電形がn形である一例(この一例では、MOSトランジスタ4は、nMOSトランジスタである)について説明したが、第1導電形がn形、第2導電形がp形でもよく、この場合(この場合、MOSトランジスタ4は、pMOSトランジスタである)、制御手段であるIC素子122が、Vhogo≧Voff、且つ、Vhogo≧Vsubとすることにより、ツェナダイオードZDのリーク電流を抑制することができる。
【0042】
また、赤外線センサ100は、半導体基板1が接続された基板バイアス用の第6のパッドVsuを備えており、第6のパッドVsuの電位をVsubとするとき、IC素子122は、Vwell=Vsubとする。すなわち、IC素子122は、例えば、上述のように、第3のパッドVchの電位Vwellを1.2Vとする場合、第6のパッドVsuの電位Vsubを1.2Vとする。要するに、赤外線センサモジュールでは、Vwell=Vsubとするので、チャネル形成用領域であるウェル領域41と半導体基板1との電位差をなくすことが可能となり、ウェル領域41と半導体基板1とで構成される第3の寄生ダイオードD3(図5参照)にリーク電流が流れるのを抑制することが可能となる。なお、図5の等価回路図には、ウェル領域41と半導体基板1とで構成される第3の寄生ダイオードD3、第1拡散領域81と半導体基板1とで構成される第4の寄生ダイオードD4も記載してある。
【0043】
IC素子122は、ASIC(:Application Specific IC)であり、シリコン基板を用いて形成されている。また、IC素子122としてベアチップを用いている。しかして、本実施形態では、IC素子122がベアチップをパッケージングしたものである場合に比べて、パッケージ133の小型化を図れる。
【0044】
IC素子122は、赤外線センサ100を制御する制御回路、赤外線センサ100の各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsu,Vzdそれぞれと電気的に接続される複数のパッド(図示せず)と、第1のパッドVout1〜Vout8それぞれに電気的に接続されたパッドの出力電圧を増幅する増幅回路、第1のパッドVout1〜Vout8それぞれに電気的に接続されたパッドの出力電圧を択一的に上記増幅回路に入力するマルチプレクサなどを備えた回路構成としてあるが、回路構成は特に限定するものではない。また、IC素子122は、後述の自己診断回路も備えている。また、パッケージ133内において、赤外線センサ100の近傍に、絶対温度を測定するためのサーミスタを配置して、IC素子122が、上記サーミスタの出力と感温部30の出力とに基づいて温度を演算するようにしてもよい。
【0045】
パッケージ133は、図6に示すように、赤外線センサ100およびIC素子122が実装されたパッケージ本体134と、パッケージ本体134との間に赤外線センサ100およびIC素子122を囲む形でパッケージ本体134に気密的に接合されたパッケージ蓋135とを有している。
【0046】
上述の赤外線センサモジュールは、パッケージ133の内部空間(気密空間)165を、ドライ窒素雰囲気としてあるが、これに限らず、例えば、真空雰囲気としてもよい。
【0047】
パッケージ本体134は、IC素子122と赤外線センサ100とが横並びで実装されている。一方、パッケージ蓋135は、赤外線センサ100での検知対象の赤外線を透過する機能および導電性を有している。
【0048】
パッケージ本体134は、絶縁材料からなる基体134aに金属材料からなる配線パターン(図示せず)および電磁シールド層144が形成されており、電磁シールド層144により電磁シールド機能を有している。一方、パッケージ蓋135は、レンズ153が導電性を有するとともに、レンズ153がメタルキャップ152に後述の接合部158により固着されており、導電性を有している。そして、パッケージ蓋135は、パッケージ本体134の電磁シールド層144と電気的に接続されている。しかして、本実施形態では、パッケージ本体134の電磁シールド層144とパッケージ蓋135とを同電位とすることができる。その結果、パッケージ133は、赤外線センサ100とIC素子122と上記配線パターンと後述のボンディングワイヤ(図示せず)と含んで構成されるセンサ回路(図示せず)への外来の電磁ノイズを防止する電磁シールド機能を有している。
【0049】
パッケージ本体134は、赤外線センサ100およびIC素子122が一表面側に実装される平板状のセラミック基板により構成してある。要するに、パッケージ本体134は、基体134aが絶縁材料であるセラミックスにより形成されており、上記配線パターンのうち基体134aの一表面側に形成された部位に、赤外線センサ100の各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsu,VzdおよびIC素子122の上記パッドが、適宜、ボンディングワイヤを介して接続されている。なお、赤外線センサモジュールにおいて、赤外線センサ100とIC素子122とは、ボンディングワイヤなどを介して電気的に接続されている。各ボンディングワイヤとしては、Alワイヤに比べて耐腐食性の高いAuワイヤを用いることが好ましい。また、パッケージ本体134は、上述の配線パターンの一部により構成される外部接続電極(図示せず)が、基体134aの他表面と側面とに跨って形成されている。
【0050】
また、赤外線センサ100は、パッケージ本体134に対して、第1のダイボンド剤(例えば、シリコーン樹脂など)からなる複数の接合部115を介して実装されている。また、IC素子122は、パッケージ本体134に対して、第2のダイボンド剤(例えば、シリコーン樹脂など)からなる接合部125を介して実装されている。各ダイボンド剤としては、低融点ガラスやエポキシ系樹脂やシリコーン系樹脂などの絶縁性接着剤、半田(鉛フリー半田、Au−Sn半田など)や銀ペーストなどの導電性接着剤を用いればよい。また、各ダイボンド剤を用いずに、例えば、常温接合法や、Au−Sn共晶もしくはAu−Si共晶を利用した共晶接合法などにより接合してもよい。
【0051】
上述の赤外線センサ100は、複数の接合部115を介してパッケージ本体134に実装してあるので、赤外線センサ100それぞれの裏面の全体が接合部115を介してパッケージ本体134に接合される場合に比べて、赤外線センサ100とパッケージ本体134との間の空間116が断熱部として機能することと、接合部115の断面積の低減とにより、パッケージ本体134から赤外線センサ100へ熱が伝達しにくくなる。
【0052】
この接合部115の数は、特に限定するものではないが、赤外線センサ100の外周形状が矩形状(正方形状ないし長方形状)の場合には、例えば、3つが好ましく、この場合には、赤外線センサ100の外周形状に基づいて規定した仮想三角形の3つの頂点に対応する3箇所に設けることにより、パッケージ本体134への実装時などの温度変化に起因したパッケージ本体134の変形が赤外線センサ100の傾きとして伝わるから、赤外線センサ100が変形するのを抑制することができ、赤外線センサ100に生じる応力を低減することが可能となる。なお、本実施形態では、赤外線センサ100の外周形状が例えば正方形状の場合、赤外線センサ100の外周の1辺の両端の2箇所と、当該1辺に平行な辺の1箇所との3箇所に頂点を有する仮想三角形を規定しているが、仮想三角形の頂点の位置は、赤外線センサ100の外周形状、赤外線センサ100の各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsu,Vzdへのワイヤボンディング時の接合信頼性(言い換えれば、赤外線センサ100の各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsu,Vzdの位置)を考慮して規定することが好ましい。接合部115には、赤外線センサ100とパッケージ本体134との距離を規定するスペーサを混入させてもよく、このようなスペーサを混入させておけば、赤外線センサモジュールの製品間での赤外線センサ100とパッケージ本体134との間の熱絶縁性能のばらつきを低減可能となる。ただし、赤外線センサ100の裏面全体を、接合部115を介してパッケージ本体134に接合してもよい。
【0053】
パッケージ蓋135は、パッケージ本体134側の一面が開放された箱状に形成され赤外線センサ100に対応する部位に開口窓152aが形成されたメタルキャップ152と、メタルキャップ152の開口窓152aを閉塞する形でメタルキャップ152に接合されたレンズ153とで構成されており、メタルキャップ152の上記一面がパッケージ本体134により閉塞される形でパッケージ本体134に気密的に接合されている。ここで、パッケージ本体134の上記一表面の周部には、パッケージ本体134の外周形状に沿った枠状の金属パターン147(図6参照)が全周に亘って形成されており、パッケージ蓋135とパッケージ本体134の金属パターン147とは、シーム溶接(抵抗溶接法)により金属接合されており、気密性および電磁シールド効果を高めることができる。なお、パッケージ蓋135のメタルキャップ152は、コバールにより形成されており、Niめっきが施されている。また、パッケージ本体134の金属パターン147は、コバールにより形成され、Niのめっきが施され、さらにAuのめっきが施されている。
【0054】
パッケージ蓋135とパッケージ本体134の金属パターン147との接合方法は、シーム溶接に限らず、他の溶接(例えば、スポット溶接)や、導電性樹脂により接合してもよい。ここで、導電性樹脂として異方導電性接着剤を用いれば、樹脂(バインダー)中に分散された導電粒子の含有量が少なく、接合時に加熱・加圧を行うことでパッケージ蓋135とパッケージ本体134との接合部の厚みを薄くできるので、外部からパッケージ133内へ水分やガス(例えば、水蒸気、酸素など)が侵入するのを抑制できる。また、導電性樹脂として、酸化バリウム、酸化カルシウムなどの乾燥剤を混入させたものを用いてもよい。
【0055】
なお、パッケージ本体134およびパッケージ蓋135の外周形状は矩形状としてあるが、矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。また、パッケージ蓋135のメタルキャップ152は、パッケージ本体134側の端縁から全周に亘って外方に延設された鍔部152bを備えており、鍔部152bが全周に亘ってパッケージ本体134と接合されている。
【0056】
レンズ153は、平凸型の非球面レンズである。しかして、上述の赤外線センサモジュールでは、レンズ153の薄型化を図りながらも、赤外線センサ100での赤外線の受光効率の向上による高感度化を図れる。また、上述の赤外線センサモジュールでは、赤外線センサ100の検知エリアをレンズ153により設定することが可能となる。レンズ153は、赤外線センサ100の半導体基板1とは別の半導体基板(半導体ウェハ)を用いて形成されている。すなわち、レンズ153は、所望のレンズ形状に応じて半導体基板(ここでは、シリコン基板)との接触パターンを設計した陽極を半導体基板の一表面側に半導体基板との接触がオーミック接触となるように形成した後に半導体基板の構成元素の酸化物をエッチング除去する溶液からなる電解液中で半導体基板の他表面側を陽極酸化することで除去部位となる多孔質部を形成してから当該多孔質部を除去することにより形成された半導体レンズ(ここでは、シリコンレンズ)により構成されている。しかして、レンズ153は、導電性を有している。なお、この種の陽極酸化技術を応用した半導体レンズの製造方法については、例えば、特許第3897055号公報、特許第3897056号公報などに開示されている製造方法を適宜適用すればよい。
【0057】
赤外線センサモジュールでは、赤外線センサ100の検知エリアを上述の半導体レンズからなるレンズ153により設定することができる。また、赤外線センサモジュールは、レンズ153として、球面レンズよりも短焦点で且つ開口径が大きく収差が小さな半導体レンズを採用しているので、短焦点化により、パッケージ133の薄型化を図れる。
【0058】
また、レンズ153は、メタルキャップ152における開口部152aの周部に導電性接着剤(例えば、鉛フリー半田、銀ペーストなど)からなる接合部158により固着されている。しかして、赤外線センサモジュールでは、レンズ153が、接合部158およびメタルキャップ152を介してパッケージ本体134の電磁シールド層144に電気的に接続されるので、電磁ノイズに対するシールド性を高めることができ、外来の電磁ノイズに起因したS/N比の低下を防止することができる。
【0059】
上述のレンズ153には、赤外線センサ100での検知対象の赤外線の波長を含む所望の波長域の赤外線を透過し当該波長域以外の赤外線を反射する光学多層膜(多層干渉フィルタ膜)からなるフィルタ部(図示せず)を設けることが好ましい。このようなフィルタ部を設けることにより、所望の波長域以外の不要な波長域の赤外線や可視光をフィルタ部によりカットすることが可能となり、太陽光などによるノイズの発生を抑制することができ、高感度化を図れる。
【0060】
以下では、パッケージ本体134において、赤外線センサ100を実装する領域を第1の領域140、IC素子122を実装する領域を第2の領域142と称する。
【0061】
上述の赤外線センサモジュールでは、パッケージ本体134において、第1の領域140に比べて、第2の領域142の厚みを薄くしてある。ここで、パッケージ本体134の第2の領域142は、基体134aの上記一表面に凹部134bを設けることにより、第1の領域140よりも厚みを薄くしてある。また、パッケージ本体134の第2の領域142では、電磁シールド層144が露出している。
【0062】
また、パッケージ本体134の第2の領域142では、金属材料(例えば、Cuなど)からなる複数のビア(サーマルビア)145が基体134aの厚み方向に貫設されており、各ビア145が電磁シールド層144と接して熱結合されている。
【0063】
ここで、IC素子122は、第2の領域142において電磁シールド層144に接合部125を介して実装されている。しかして、IC素子122で発生した熱を電磁シールド層144におけるIC素子122の直下の部位およびビア145を通してパッケージ133の外側へ効率良く放熱させることが可能となる。
【0064】
上述の赤外線センサモジュールの製造にあたっては、パッケージ本体134に赤外線センサ100およびIC素子122を実装する実装工程を行ってから、所望の雰囲気中でパッケージ蓋135とパッケージ本体134とを接合する接合工程を行うようにすればよい。
【0065】
以下、赤外線センサ100についてさらに説明するが、図7、図9、図10、図12では、サーモパイル30aのn形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35との接続関係を分かりやすくするために、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35それぞれの幅を狭く記載してある。
【0066】
赤外線センサ100は、感温部30が埋設された熱型赤外線検出部3とMOSトランジスタ4とを有する複数(a×b個)の画素部2が、半導体基板1の上記一表面側において2次元アレイ状に配置されている。ここで、半導体基板1の上記一表面は、Si(100)面としてある。感温部30は、複数個(ここでは、6個)のサーモパイル30a(図1および図7参照)を直列接続することにより構成されている。
【0067】
各画素部2の熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の形成用領域に形成されている。また、各画素部2のMOSトランジスタ4は、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域に形成されている。
【0068】
赤外線センサ100は、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の一部の直下に空洞部11が形成されている。熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側で空洞部11の周部に形成された支持部3dと、半導体基板1の上記一表面側で平面視において空洞部11を覆う第1の薄膜構造部3aとを備えている。第1の薄膜構造部3aは、赤外線を吸収する赤外線吸収部33(図7参照)を備えている。ここで、第1の薄膜構造部3aは、空洞部11の周方向に沿って並設され支持部3dに支持された複数の第2の薄膜構造部3aaと、隣接する第2の薄膜構造部3aa同士を連結する連結片3c(図2および図7参照)とを有している。なお、図7の例の熱型赤外線検出部3では、複数の線状のスリット13を設けることにより、第1の薄膜構造部3aが6つの第2の薄膜構造部3aaに分離されている。以下では、赤外線吸収部33(第1の赤外線吸収部33と称する)のうち第2の薄膜構造部3aaそれぞれに対応して分割された各部位を第2の赤外線吸収部33aと称する。
【0069】
熱型赤外線検出部3は、第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aが設けられている。ここで、サーモパイル30aは、温接点T1が、第2の薄膜構造部3aaに設けられ、冷接点T2が、支持部3dに設けられている。要するに、温接点T1は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重なる領域に形成され、冷接点T2は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重ならない領域に形成されている。
【0070】
また、熱型赤外線検出部3の感温部30は、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で、全てのサーモパイル30aが電気的に接続されている。図7の例では、感温部30は、6個のサーモパイル30aを直列接続してある。ただし、上述の接続関係は、複数個のサーモパイル30aの全てを直列接続する接続関係に限らない。例えば、それぞれ3個のサーモパイル30aの直列回路を並列接続すれば、6個のサーモパイル30aが並列接続されている場合や、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて、感度を高めることができる。また、6個のサーモパイル30aの全てが直列接続されている場合に比べて、感温部30の電気抵抗を低くできて熱雑音が低減されるから、S/N比が向上する。
【0071】
ここで、熱型赤外線検出部3では、第2の薄膜構造部3aaごとに、支持部3dと第2の赤外線吸収部33aとを連結する2つの平面視短冊状のブリッジ部3bb,3bbが空洞部11の周方向に離間して形成されている。これにより、2つのブリッジ部3bb,3bbと第2の赤外線吸収部33aとを空間的に分離し空洞部11に連通する平面視U字状のスリット14が形成されている。熱型赤外線検出部3のうち、平面視において第1の薄膜構造部3aを囲む部位である支持部3dは、矩形枠状の形状となっている。なお、ブリッジ部3bbは、上述の各スリット13,14により、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dそれぞれとの連結部位以外の部分が、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dと空間的に分離されている。ここで、第2の薄膜構造部3aaは、支持部3dからの延長方向の寸法を93μm、この延長方向に直交する幅方向の寸法を75μmとし、各ブリッジ部3bbの幅寸法を23μm、各スリット13,14の幅を5μmに設定してあるが、これらの値は一例であって特に限定するものではない。
【0072】
第1の薄膜構造部3aは、半導体基板1の上記一表面側に形成された第1のシリコン酸化膜31と、当該第1のシリコン酸化膜31上に形成された第1のシリコン窒化膜32aと、第1のシリコン窒化膜32a上に形成された第2のシリコン窒化膜32bと、第2のシリコン窒化膜32bの表面側に形成された感温部30と、第2のシリコン窒化膜32bの表面側で感温部30の大部分を覆うように形成された絶縁膜50と、絶縁膜50上に形成されたパッシベーション膜60との積層構造部をパターニングすることにより形成されている。絶縁膜50は、それぞれBPSG膜からなる第2〜第5のシリコン酸化膜52a〜52dの積層膜により構成してある。パッシベーション膜60は、BPSG膜により構成してあるが、これに限らず、例えば、PSG膜と当該PSG膜上に形成されたNSG膜との積層膜や、シリコン窒化膜などにより構成してもよい。
【0073】
上述の熱型赤外線検出部3では、各シリコン窒化膜32a,32bのうち第1の薄膜構造部3aのブリッジ部3bb,3bb以外の部位が第1の赤外線吸収部33を構成している。また、支持部3dは、第1のシリコン酸化膜31と各シリコン窒化膜32a,32bと絶縁膜50とパッシベーション膜60とで構成されている。
【0074】
また、赤外線センサ100は、絶縁膜50とパッシベーション膜60との積層膜が、半導体基板1の上記一表面側において、熱型赤外線検出部3の形成用領域とMOSトランジスタ4の形成用領域とに跨って形成されている。
【0075】
また、各画素部2では、空洞部11の内周形状が矩形状であり、連結片3cは、平面視X字状に形成されており、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に交差する斜め方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に直交する方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結している。
【0076】
サーモパイル30aは、第2のシリコン窒化膜32bの表面側で第2の薄膜構造部3aaと支持部3dとに跨って形成されたn形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35との一端部同士を接続部(以下、第1の接続部と称する)36により電気的に接続した複数個の熱電対を有している。また、サーモパイル30aは、半導体基板1の上記一表面側で互いに隣り合う熱電対のn形ポリシリコン層34の他端部とp形ポリシリコン層35の他端部とが接続部(以下、第2の接続部と称する)37により電気的に接続されている。
【0077】
要するに、サーモパイル30aは、n形ポリシリコン層34の上記一端部とp形ポリシリコン層35の上記一端部と第1の接続部36とを含む温接点T1を有し、n形ポリシリコン層34の上記他端部とp形ポリシリコン層35の上記他端部と第2の接続部37とを含む冷接点T2を有している。
【0078】
また、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35とは、図1に示すように、互いに異なる面上に形成されている。ここで、各ブリッジ部3bbでは、図1および図2に示すようにn形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35とが平面視において縞状に配列されている。さらに説明すれば、本実施形態の赤外線センサ100は、各ブリッジ部3bbの平面視においてn形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35とが交互に配列されているが、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35とが互いに異なる面上に形成されているので、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35とが同一面上に形成されている場合に比べて、平面視において隣り合うn形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35との隙間を短くすることができ、サーモパイル30aにおける熱電対の数を増やすことができ、高感度化を図れる。
【0079】
また、サーモパイル30aは、n形ポリシリコン層34のうち、上述の各ブリッジ部3bbに形成されている第1の部位以外の第2の部位に、シリサイド層38が積層されている。同様に、p形ポリシリコン層35のうち上述の各ブリッジ部3bbに形成されている第3の部位以外の第4の部位に、シリサイド層38が積層されている。シリサイド層38は、高融点金属のシリサイドの一種であるタングステンシリサイド(WSi2)層により構成してあるが、これに限らず、例えば、チタンシリサイド(TiSi2)層により構成してもよい。
【0080】
要するに、サーモパイル30aは、熱電対の2種類の熱電要素が、p形ポリシリコン層35とn形ポリシリコン層34とであり、p形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34それぞれにおける温接点T1側の端部と冷接点T2側の端部とがシリサイド層38により覆われている。
【0081】
また、赤外線センサ100は、空洞部11の形状が、四角錘状であり、平面視における中央部の方が周部に比べて深さ寸法が大きくなっているので、第1の薄膜構造部3aの中央部に温接点T1が集まるように各画素部2におけるサーモパイル30aの平面レイアウトを設計してある。
【0082】
すなわち、図7の上下方向における真ん中の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図7および図9に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向に沿って温接点T1を並べて配置してあるのに対し、当該上下方向における上側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図7および図10に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してあり、当該上下方向における下側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図7に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してある。
【0083】
しかして、本実施形態の赤外線センサ100では、図7の上下方向における上側、下側の第2の薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置が、真ん中の第2の薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置と同じである場合に比べて、温接点T1の温度変化を大きくできるので、感度を向上できる。なお、本実施形態では、空洞部11の最深部の深さを200μmに設定してあるが、この値は一例であり、特に限定するものではない。
【0084】
また、第2の薄膜構造部3aaは、第2のシリコン窒化膜32bの赤外線入射面側においてサーモパイル30aを形成していない領域に、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制するとともに赤外線を吸収するp形ポリシリコン層からなる赤外線吸収層39が形成されている。また、隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cには、当該連結片3cを補強するp形ポリシリコン層からなる補強層39b(図7、図9、10参照)が設けられている。ここで、補強層39bは、赤外線吸収層39と連続一体に形成されている。しかして、赤外線センサ100では、連結片3cが補強層39bにより補強されているので、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止でき、また、製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。なお、本実施形態では、連結片3cの長さ寸法を24μm、幅寸法を5μm、補強層39bの幅寸法を1μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。ただし、半導体基板1としてシリコン基板を用いており、補強層39bがp形ポリシリコン層により形成される場合には、空洞部11の形成時に補強層39bがエッチングされるのを防止するために、補強層39bの幅寸法は、連結片3cの幅寸法よりも小さく設定し、平面視において補強層39bの両側縁が連結片3cの両側縁よりも内側に位置する必要がある。
【0085】
また、赤外線センサ100は、図11(b)に示すように、連結片3cの両側縁と第2の薄膜構造部3aaの側縁との間にそれぞれ面取り部3d,3dが形成され、X字状の連結片3cの略直交する側縁間にも面取り部3eが形成されている。しかして、赤外線センサ100では、図11(a)に示すように面取り部が形成されていない場合に比べて、連結片3cと第2の薄膜構造部3aaとの連結部位での応力集中を緩和でき、製造時に発生する残留応力を低減できるとともに製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。また、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止できる。なお、図示した例では、各面取り部3d,3eをR(アール)が3μmのR面取り部としてあるが、R面取り部に限らず、例えば、C面取り部としてもよい。
【0086】
また、赤外線センサ100は、各熱型赤外線検出部3に、支持部3dと一方のブリッジ部3bbと第2の赤外線吸収部33aと他方のブリッジ部3bbと支持部3dとに跨るように引き回されたp形ポリシリコン層からなる故障診断用配線(故障診断用のヒータ)139を設けて、全ての故障診断用配線139を直列接続してある。しかして、a×b個の故障診断用配線139の直列回路へ通電することで、ブリッジ部3bbの折れなどの破損の有無を検出することができる。
【0087】
要するに、赤外線センサ100は、製造途中での検査時や使用時において、a×b個の故障診断用配線139の直列回路への通電の有無によって、ブリッジ部3bbの折れや故障診断用配線139の断線などを検出することができる。また、赤外線センサ100では、上述の検査時や使用時において、a×b個の故障診断用配線139の直列回路へ通電して各感温部30の出力を検出することにより、感温部30の断線の有無や感度のばらつき(感温部30の出力のばらつき)などを検知することが可能となる。ここにおいて、感度のばらつきに関しては、画素部2ごとの感度のばらつきを検知することが可能であり、例えば、第1の薄膜構造部3aの反りや第1の薄膜構造部3aの半導体基板1へのスティッキングなどに起因した感度のばらつきを検知することが可能となる。また、赤外線センサ100は、平面視において、故障診断用配線139を複数の温接点T1の群の付近において折り返され蛇行した形状としてある。したがって、故障診断用配線139へ通電することにより発生するジュール熱によって、各温接点T1を効率良く温めることができる。上述の故障診断用配線139は、サーモパイル30aのp形ポリシリコン層35と同一平面上に同一厚さで形成されている。
【0088】
上述の赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、p形ポリシリコン層35と同じp形不純物(例えば、ボロンなど)を同じ不純物濃度(例えば、1018〜1020cm−3)で含んでおり、p形ポリシリコン層35と同時に形成されている。また、n形ポリシリコン層34は、n形不純物として、例えば、リンを採用すればよく、不純物濃度を例えば1018〜1020cm−3程度の範囲で適宜設定すればよい。本実施形態では、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であり、熱電対の抵抗値を低減でき、S/N比の向上を図れる。なお、赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、p形ポリシリコン層35と同じp形不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてあるが、これに限らず、例えば、n形ポリシリコン層34と同じ不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてもよい。
【0089】
ところで、本実施形態では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139の屈折率をn、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの厚さt1をλ/4nに設定するようにしている。しかして、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n=3.6、λ=10μmの場合には、t1≒0.69μmとすればよい。
【0090】
また、本実施形態では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であるので、赤外線の吸収率を高くしつつ赤外線の反射を抑制することができて、感温部30の出力のS/N比を高めることができる。また、赤外線吸収層39および故障診断用配線139をp形ポリシリコン層35と同一工程で形成できるから、低コスト化を図れる。
【0091】
ここで、感温部30の第1の接続部36と第2の接続部37とは、半導体基板1の上記一表面側において、絶縁膜50によって絶縁分離されている(図1参照)。第1の接続部36および第2の接続部37は、各ポリシリコン層34,35上のシリサイド層38の表面および絶縁膜50のコンタクトホール50aの内周面に沿って形成された第1の金属材料(例えば、チタンナイトライドなど)からなる密着層(adhesion layer)53と、コンタクトホール50a内に密着層53を介して埋め込まれた第2の金属材料(例えば、タングステンなど)からなる埋込部(メタルプラグ)54と、p形ポリシリコン層35に接続された埋込部54とn形ポリシリコン層34に接続された埋込部54とに跨って形成された第3の金属材料(例えば、アルミニウムなど)からなる導電部55とを有している。
【0092】
また、MOSトランジスタ4は、上述のように、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域に形成されている。
【0093】
MOSトランジスタ4は、図1に示すように、半導体基板1の上記一表面側に第1導電形であるp形(p)のウェル領域41が形成され、ウェル領域41内に、第2導電形であるn形(n)のドレイン領域43と第2導電形であるn形(n)のソース領域44とが離間して形成されている。さらに、半導体基板1の上記一表面側には、素子間分離用絶縁膜42が形成されている。
【0094】
ウェル領域41においてドレイン領域43とソース領域44との間に位置する部位の上には、ゲート絶縁膜45を介してゲート電極46が形成されている。
【0095】
ゲート絶縁膜45は、シリコン酸化膜(熱酸化膜)により構成してあるが、シリコン酸化膜に限定するものではない。
【0096】
ゲート電極46は、ゲート絶縁膜45上のn形ポリシリコン層からなる導電性ポリシリコン層46aと、この導電性ポリシリコン層46aを覆うシリサイド層46bとを有している。本実施形態では、サーモパイル30aにおけるp形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34とゲート電極46における導電性ポリシリコン層46aとが同一厚さである。また、本実施形態では、サーモパイル30aにおけるシリサイド層38とゲート電極46におけるシリサイド層46bとの厚さを同一としてある。ゲート電極46におけるシリサイド層46bは、サーモパイル30aにおけるシリサイド層38と同様に、タングステンシリサイド層により構成してあるが、これに限らず、例えば、チタンシリサイド層により構成してもよい。
【0097】
ドレイン領域43上には、ドレイン電極47が形成され、ソース領域44上には、ソース電極48が形成されている。
【0098】
ゲート電極46、ドレイン電極47およびソース電極48は、上述の絶縁膜50およびゲート絶縁膜45に連続したシリコン酸化膜45bによって絶縁分離されている。ドレイン電極47は、絶縁膜50とシリコン酸化膜45bとの積層膜に形成したコンタクトホール50bを通してドレイン領域43と電気的に接続され、ソース電極48は、絶縁膜50とシリコン酸化膜45bとの積層膜に形成したコンタクトホール50cを通してソース領域44と電気的に接続されている。
【0099】
上述のドレイン電極47は、ドレイン領域43の表面およびコンタクトホール50bの内周面に沿って形成された導電性材料(例えば、チタンナイトライドなど)からなる密着層53と、コンタクトホール50b内に密着層53を介して埋め込まれた金属材料(例えば、タングステンなど)からなる埋込部54と、埋込部54の表面と絶縁膜50の表面とに跨って形成された金属材料(例えば、アルミニウムなど)からなる導電部56とを有している。同様に、ソース電極48は、ソース領域44の表面およびコンタクトホール50cの内周面に沿って形成された密着層53と、コンタクトホール50c内に密着層53を介して埋め込まれた埋込部54と、埋込部54の表面と絶縁膜50の表面とに跨って形成された導電部56とを有している。
【0100】
赤外線センサ100の各画素部2では、MOSトランジスタ4のソース電極48と感温部30の一端とが電気的に接続され、感温部30の他端が第4の配線104に電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のドレイン電極47が、第1の配線101と電気的に接続され、ゲート電極46が、n形ポリシリコン配線からなる第2の配線102と電気的に接続されている。また、各画素部2では、ウェル領域41における素子分離用絶縁膜42近傍の部位上に、電極49が形成されている。しかして、ウェル領域41は、電極49を介して、第3の配線103と電気的に接続されている。ここで、電極49は、シリコン酸化膜45bと絶縁膜50との積層膜に形成したコンタクトホール50dを通してウェル領域41と電気的に接続されている。この電極49は、ウェル領域41の表面およびコンタクトホール50dの内周面に沿って形成された密着層53と、コンタクトホール50d内にバリア層53を介して埋め込まれた埋込部54と、埋込部54の表面と絶縁膜50の表面とに跨って形成された導電部56とを有している。
【0101】
また、上述のツェナダイオードZDは、図12に示すように、第1拡散領域81上にアノード電極83が形成され、第2拡散領域82上に2つのカソード電極84a,84bが形成されている。このツェナダイオードZDは、アノード電極83が、第5のパッドVzdと電気的に接続され、一方のカソード電極84aが、1つの第2の配線102を介して当該第2の配線102に接続されたMOSトランジスタ4のゲート電極46と電気的に接続され、他方のカソード電極84bが、当該第2の配線102に接続された第2のパッドVsel1〜Vsel8の1つと電気的に接続されている。
【0102】
上述の赤外線センサ100によれば、故障診断用配線139を備えているので、故障診断用配線139へ通電することによりジュール熱を発生させて温接点T1を温め、サーモパイル30aの出力を測定することにより、サーモパイル30aの断線などの故障の有無を判断することが可能となって、信頼性の向上を図れる。しかも、赤外線センサ100は、故障診断用配線139が、熱型赤外線検出部3において半導体基板1の空洞部11に重なる領域でサーモパイル30aと重ならないように配置されているので、故障診断用配線139によるサーモパイル30aの温接点T1の熱容量の増大を防止でき、感度および応答速度の向上を図れる。
【0103】
ここで、赤外線センサ100は、使用時において自己診断を行わない通常時において、故障診断用配線139も外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図れる。なお、赤外線センサ100では、赤外線吸収層39および補強層39bも外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図れる。また、赤外線センサ100の使用時の自己診断は、IC素子122に設けられた自己診断回路(図示せず)により定期的に行われるが、必ずしも定期的に行う必要はない。
【0104】
また、赤外線センサ100は、第1の薄膜構造部3aが、複数の線状のスリット13を設けることによって、空洞部11の内周方向に沿って並設されそれぞれ熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位である支持部3dから内方へ延長された複数の第2の薄膜構造部3aaに分離され、各第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aの温接点T1が設けられるとともに、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全てのサーモパイル30aが電気的に接続されているので、応答速度および感度の向上を図れる。また、赤外線センサ100は、全ての第2の薄膜構造部3aaに跨って故障診断用配線139が形成されているので、熱型赤外線検出部3の全てのサーモパイル30aを一括して自己診断することが可能となる。また、赤外線センサ100は、隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cが形成されていることにより、各第2の薄膜構造部3aaの反りを低減でき、構造安定性の向上を図れ、感度が安定する。
【0105】
また、赤外線センサ100は、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35と赤外線吸収層39と補強層39bと故障診断用配線139とが同一の厚さに設定されているので、第2の薄膜構造部3aaの応力バランスの均一性が向上し、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制することができ、製品ごとの感度のばらつきや、画素部2ごとの感度のばらつきを低減することが可能となる。
【0106】
また、赤外線センサ100は、故障診断用配線139が、第1の熱電要素であるn形ポリシリコン層34もしくは第2の熱電要素であるp形ポリシリコン層35と同じ材料により形成されているので、故障診断用配線139を第1の熱電要素もしくは第2の熱電要素と同時に形成することが可能となり、製造プロセスの簡略化による低コスト化を図れる。
【0107】
また、赤外線センサ100は、赤外線吸収部33および故障診断用配線139を備えた複数の画素部2が、半導体基板1の上記一表面側で2次元アレイ状に設けられているので、製造時や使用時の自己診断に際して各画素部2それぞれの故障診断用配線139に通電することにより、各画素部2それぞれの感温部30の感度のばらつきを把握することが可能となる。
【0108】
以下、赤外線センサ100の製造方法の一例について図13〜図21を参照しながら説明する。なお、図13〜図21において、(a)は図2のA−B断面に対応する工程断面図、(b)は図2のC−D断面に対応する工程断面図、(c)は図2のE−F断面に対応する工程断面図である。
【0109】
まず、第2導電形のシリコン基板からなる半導体基板1の上記一表面側に第1のシリコン酸化膜31と第1のシリコン窒化膜32aとの積層膜からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して当該絶縁層のうち熱型赤外線検出部3の形成用領域に対応する部分の一部を残してMOSトランジスタ4の形成用領域に対応する部分をエッチング除去する絶縁層パターニング工程を行うことによって、図13に示す構造を得る。ここにおいて、第1のシリコン酸化膜31は、半導体基板1を熱酸化することにより形成し、第1のシリコン窒化膜32aは、LPCVD法により形成している。
【0110】
上述の絶縁層パターニング工程の後、半導体基板1の上記一表面側に第1導電形であるp形(p)のウェル領域41を形成するウェル領域形成工程を行う。続いて、半導体基板1の上記一表面側において素子分離部42の形成予定領域に対応する部位に、溝42aを形成する溝形成工程を行うことによって、図14に示す構造を得る。
【0111】
ウェル領域形成工程では、まず、半導体基板1の上記一表面側の露出部位を所定温度でパイロジェニック酸化することにより、第6のシリコン酸化膜(熱酸化膜)51を選択的に形成する。その後、ウェル領域41を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第6のシリコン酸化膜51をパターニングする。続いて、第1導電形の不純物(ここでは、p形の不純物であり、例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、ウェル領域41を形成する。
【0112】
また、溝形成工程では、まず、半導体基板1の上記一表面側の全面に第2のシリコン窒化膜32bをLPCVD法などにより形成し、その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第2のシリコン窒化膜32bをパターニングする。続いて、第2のシリコン窒化膜32bをマスクとして、第6のシリコン酸化膜51および半導体基板1における上記一表面側の一部をエッチングすることにより、溝42aを形成する。
【0113】
上述の溝形成工程の後、第2のシリコン窒化膜32bをマスクとしてLOCOS(LocalOxidation of Silicon)法により素子分離用絶縁膜42を形成する素子分離工程を行うことによって、図15に示す構造を得る。
【0114】
その後、半導体基板1の上記一表面側において第6のシリコン酸化膜51および第2のシリコン膜32bの不要部分をエッチング除去する。続いて、半導体基板1の上記一表面側に例えば熱酸化によりシリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を形成するゲート絶縁膜形成工程を行う。その後、半導体基板1の上記一表面側の全面にゲート電極46の導電性ポリシリコン層46a、第2の配線102(図7参照)、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139の基礎となる第1のノンドープポリシリコン層120をLPCVD法により形成する第1のポリシリコン層形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第1のノンドープポリシリコン層120をパターニングする第1のポリシリコン層パターニング工程を行うことによって、図16に示す構造を得る。この第1のポリシリコン層パターニング工程では、第1のノンドープポリシリコン層120のうちゲート電極46の導電性ポリシリコン層46a、第2の配線102、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139それぞれに対応する部分が残るように、第1のノンドープポリシリコン層120をパターニングする。
【0115】
上述の第1のポリシリコン層パターニング工程の後、第1のノンドープポリシリコン層120のうちp形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139に対応する部分にp形の不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってからドライブインを行うことによりp形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139を形成するp形ポリシリコン層形成工程を行う。続いて、半導体基板1の上記一表面側にBPSG膜からなる第2のシリコン酸化膜52aを形成する第2のシリコン酸化膜形成工程を行う。その後、第2のシリコン酸化膜52aのうち、p形ポリシリコン層35においてシリサイド層38を積層する部位、第1のノンドープポリシリコン層120において導電性ポリシリコン層46aの基礎となる部位、第1のノンドープポリシリコン層120において第2の配線102の基礎となる部位、ウェル領域41におけるドレイン領域43の形成予定領域、およびウェル領域41におけるソース領域44の形成予定領域それぞれの上方に形成されている部分をエッチングする。続いて、第1のノンドープポリシリコン層120のうち導電性ポリシリコン層46aに対応する部位および第2の配線102に対応する部分、ウェル領域41におけるドレイン領域43の形成予定領域およびソース領域44の形成予定領域に、n形の不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってからドライブインを行うことにより、導電性ポリシリコン層46aおよび第2の配線102、ドレイン領域43およびソース領域44を形成することによって、図17に示す構造を得る。
【0116】
その後、p形ポリシリコン層35、導電性ポリシリコン層46aそれぞれにシリサイド層38,46bを形成するとともに、第2の配線102にシリサイド層(図示せず)を形成する第1のシリサイド層形成工程を行うことによって、図18に示す構造を得る。第1のシリサイド層形成工程において、シリサイド層38,46bの形成にあたっては、半導体基板1の上記一表面側の全面にタングステン層をスパッタ法などにより成膜した後、熱処理により生じるシリサイド反応を利用して選択的にタングステンシリサイド層からなるシリサイド層38,46bを形成し、その後、不要なタングステン層をエッチング除去する。なお、シリサイド層38,46bがチタンシリサイド層の場合には、タングステン層の代わりに、チタン層をスパッタ法などにより成膜してから選択的にチタンシリサイド層からなるシリサイド層38,46bを形成し、その後、不要なチタン層をエッチング除去すればよい。
【0117】
続いて、半導体基板1の上記一表面側にBPSG膜からなる第3のシリコン酸化膜52bを形成する第3のシリコン酸化膜形成工程を行う。その後、半導体基板1の上記一表面側の全面にn形ポリシリコン層34の基礎となる第2のノンドープポリシリコン層(図示せず)をLPCVD法により形成する第2のポリシリコン層形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第2のノンドープポリシリコン層をパターニングする第2のポリシリコン層パターニング工程を行う。その後、第2のノンドープポリシリコン層にn形の不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってからドライブインを行うことによりn形ポリシリコン層34を形成するn形ポリシリコン層形成工程を行うことによって、図19に示す構造を得る。上述の第2のポリシリコン層パターニング工程では、第2のノンドープポリシリコン層のうちn形ポリシリコン層34に対応する部分が残るように、第2のノンドープポリシリコン層をパターニングする。
【0118】
上述のn形ポリシリコン層形成工程の後、半導体基板1の上記一表面側にBPSG膜からなる第4のシリコン酸化膜52cを形成する第4のシリコン酸化膜形成工程を行う。その後、第4のシリコン酸化膜52cのうち、第2のノンドープポリシリコン層の上方に形成されている部分をエッチングする。続いて、n形ポリシリコン層34にシリサイド層38を形成する第2のシリサイド層形成工程を行うことによって、図20に示す構造を得る。第2のシリサイド層形成工程において、シリサイド層38の形成にあたっては、半導体基板1の上記一表面側の全面にタングステン層をスパッタ法などにより成膜した後、熱処理により生じるシリサイド反応を利用して選択的にタングステンシリサイド層からなるシリサイド層38を形成し、その後、タングステン層をエッチング除去する。なお、シリサイド層38がチタンシリサイド層の場合には、タングステン層の代わりに、チタン層を採用すればよい。
【0119】
第2のシリサイド層形成工程の後、BPSG膜からなる第5のシリコン酸化膜52dを形成する第5のシリコン酸化膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して絶縁膜50に各コンタクトホール50aを形成するとともに、シリコン酸化膜45bと絶縁膜50との積層膜にコンタクトホール50b,50c,50dを形成するコンタクトホール形成工程を行う。上述の第2〜第5のシリコン酸化膜形成工程では、半導体基板1の上記一表面側にBPSG膜をCVD法により堆積させてから、所定温度(例えば、800℃)でリフローすることにより平坦化された第2〜第5のシリコン酸化膜52a〜52dを形成する。
【0120】
上述のコンタクトホール形成工程の後、半導体基板1の上記一表面側に第1の接続部36、第2の接続部37、ドレイン電極47、ソース電極48、電極49、第4の配線104、第1の配線101、第3の配線103、各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsuなど(図3、図4参照)を形成することによって、図21に示す構造を得る。ここで、第1の接続部36、第2の接続部37、ドレイン電極47、ソース電極48、電極49の形成にあたっては、例えば、半導体基板1の上記一表面側にTi膜をスパッタ法などにより成膜してから熱処理を行うことにより、チタンナイトライド膜からなる密着層53を形成する。続いて、半導体基板1の上記一表面側にタングステン膜をCVD法により成膜してから、エッチバックを行うことにより半導体基板1の上記一表面側の平坦化を行うことによって埋込部54を形成し、その後、半導体基板1の上記一表面側にアルミニウム膜をスパッタ法などにより成膜し、続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してアルミニウム膜をパターニングすることにより導電部55,56、第4の配線104、第1の配線101、第3の配線103、各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsuなどを形成する。
【0121】
上述の図21の構造を得た後、半導体基板1の上記一表面側(つまり、絶縁膜50の表面側)にBPSG膜からなるパッシベーション膜60をCVD法により形成するパッシベーション膜形成工程を行う。そして、第1のシリコン酸化膜31、第1のシリコン窒化膜32a、第2のシリコン窒化膜32b、絶縁膜50、パッシベーション膜60などを備え、感温部30などが埋設された積層構造部をパターニングすることにより、第2の薄膜構造部3aa、連結片3c、および各スリット13,14を形成する積層構造部パターニング工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsuを露出させる開口部(図示せず)を形成する開口部形成工程を行う。次に、各スリット13,14をエッチング液導入孔としてエッチング液を導入し半導体基板1を異方性エッチング(結晶異方性エッチング)することにより半導体基板1に空洞部11を形成する空洞部形成工程を行うことで、図1に示す構造の赤外線センサ100を得る。ここで、開口部形成工程におけるエッチングはRIEにより行っている。また、空洞部形成工程では、エッチング液として所定温度(例えば、85℃)に加熱したTMAH溶液を用いているが、エッチング液はTMAH溶液に限らず、他のアルカリ系溶液(例えば、KOH溶液など)を用いてもよい。なお、空洞部形成工程が終了するまでの全工程はウェハレベルで行うので、空洞部形成工程が終了した後、個々の赤外線センサ100に分離する分離工程を行えばよい。また、上述の製造方法では、ツェナダイオードZDの製造工程について説明を省略したが、一般的なツェナダイオードの製造方法を適宜採用すればよい。
【0122】
上述の赤外線センサ100では、半導体基板1として上記一表面が(100)面の単結晶のシリコン基板を用いて、エッチング速度の結晶面方位依存性を利用した異方性エッチングにより形成する空洞部11を四角錘状の形状としてあるが、四角錘状の形状に限らず、四角錘台状の形状でもよい。また、半導体基板1の上記一表面の面方位は特に限定するものではなく、例えば、半導体基板1として上記一表面がSi(110)面の単結晶のシリコン基板を用いてもよい。
【0123】
また、半導体基板1の導電形は、n形に限らず、例えば、図22〜図24に示すようにp形でもよい。図22は、p形の半導体基板1がチャネル形成用領域を構成し、ドレイン領域43およびソース領域44の導電形をn形(n)とする例である。また、図23は、p形の半導体基板1に形成したp形(p)のウェル領域41がチャネル形成用領域を構成し、ドレイン領域43およびソース領域44の導電形をn形(n)とする例である。また、図24は、p形の半導体基板1に形成したn形のウェル領域41がチャネル形成用領域を構成し、ドレイン領域43およびソース領域44の導電形をp形(p)とする例である。
【0124】
以上説明した本実施形態の赤外線センサ100は、サーモパイル30aにより構成される感温部30を有し半導体基板1の一表面側に形成されて半導体基板1に支持された熱型赤外線検出部3と、半導体基板1の上記一表面側に形成され感温部30の出力電圧を取り出すためのMOSトランジスタ4とを備え、MOSトランジスタ4のゲート電極46が、ゲート絶縁膜45上の導電性ポリシリコン層46aと、導電性ポリシリコン層46aを覆うシリサイド層38とを有しているので、MOSトランジスタ4のゲート電極46の抵抗を低減することができ、熱ノイズを低減することが可能となる。
【0125】
また、本実施形態の赤外線センサ100は、サーモパイル30aの熱電対の2種類の熱電要素が、p形ポリシリコン層35とn形ポリシリコン層34とであり、p形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34それぞれにおける温接点T1側の端部と冷接点T2側の端部とがシリサイド層38により覆われているので、感度の低下を抑制しつつサーモパイル30aの抵抗を低減することができ、熱ノイズを、より低減することが可能となる。
【0126】
また、本実施形態の赤外線センサ100は、サーモパイル30aにおけるp形ポリシリコン層35とn形ポリシリコン層34との少なくとも一方に形成されたシリサイド層38の厚さと、ゲート電極46における導電性ポリシリコン層46aに形成されたシリサイド層46bの厚さとが同一であるので、サーモパイル30におけるシリサイド層38とゲート電極46におけるシリサイド層46bとを同時に形成することが可能となり、製造コストの低減を図れる。
【0127】
この赤外線センサ100の製造にあたっては、半導体基板1の上記一表面側にノンドープポリシリコン層を形成した後、ノンドープポリシリコン層のうちp形ポリシリコン層35とn形ポリシリコン層34との少なくとも一方に対応する部分と導電性ポリシリコン層46aに対応する部分とが残るようにノンドープポリシリコン層をパターニングし、その後、ノンドープポリシリコン層に不純物を注入してp形ポリシリコン層35とn形ポリシリコン層34との少なくとも一方と導電性ポリシリコン層46aとを形成し、その後、p形ポリシリコン層35とn形ポリシリコン層34との少なくとも一方の表面側にサーモパイル30aにおけるシリサイド層38を形成するのと同時に、導電性ポリシリコン層46aの表面側にゲート電極46におけるシリサイド層46bを形成すればよい。
【0128】
上述の図1の例では、p形ポリシリコン層35のシリサイド層38とゲート電極46のシリサイド層46bとを同時に形成することができる。また、上述の図13〜図21および図1を参照しながら説明した製造方法の例では、第1のノンドープポリシリコン層120を形成した後、第1のノンドープポリシリコン層120のうちp形ポリシリコン層35に対応する部分と導電性ポリシリコン層46aに対応する部分とが残るように第1のノンドープポリシリコン層120をパターニングし、その後、第1のノンドープポリシリコン層120に不純物を注入してp形ポリシリコン層35と導電性ポリシリコン層46aとを形成し、その後、p形ポリシリコン層35の表面側にサーモパイル30aにおけるシリサイド層38を形成するのと同時に、導電性ポリシリコン層46aの表面側にゲート電極46におけるシリサイド層46bを形成している。
【0129】
なお、サーモパイル30aにおけるp形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34とゲート電極46における導電性ポリシリコン層46aとを同一厚さとし、サーモパイル30におけるシリサイド層38とゲート電極46におけるシリサイド層46bとの厚さを同一としてもよく、サーモパイル30におけるシリサイド層38とゲート電極46におけるシリサイド層46bとを同時に形成することが可能となり、製造コストの低減を図れる。
【0130】
また、本実施形態の赤外線センサ100は、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の一部の直下に空洞部11が形成されており、熱型赤外線検出部3が、半導体基板1の上記一表面側で空洞部11の周部に形成された支持部3dと、半導体基板1の上記一表面側で平面視において空洞部11を覆う第1の薄膜構造部3aとを備え、第1の薄膜構造部3aが、空洞部11の周方向に沿って並設され支持部3dに支持された複数の第2の薄膜構造部3aaと、互いに対向する第2の薄膜構造部3aa同士を連結する連結片3cとを有し、各第2の薄膜構造部3aaごとに第2の薄膜構造部3aaと支持部3dとに跨ってサーモパイル30aが設けられるとともに、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全てのサーモパイル30aが電気的に接続されている。しかして、本実施形態の赤外線センサ100では、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全てのサーモパイル30aが電気的に接続されていることにより、感度の向上を図れる。また、本実施形態の赤外線センサ100では、第1の薄膜構造部3aが、空洞部11の周方向に沿って並設され支持部3dに支持された複数の第2の薄膜構造部3aaと、互いに対向する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cとを有し、各第2の薄膜構造部3aaごとに第2の薄膜構造部3aaと支持部3dとに跨ってサーモパイル30aが設けられていることにより、各第2の薄膜構造部3aaの反りを低減でき、構造安定性の向上を図れ、感度が安定する。
【0131】
また、本実施形態の赤外線センサ100は、サーモパイル30aが、p形ポリシリコン層35とn形ポリシリコン層34とが互いに異なる面上に形成されているので、p形ポリシリコン層35とn形ポリシリコン層34とが同一面上に形成されている場合に比べて、サーモパイル30aにおける熱電対の数を増やすことが可能となり、高感度化を図ることが可能となる。
【0132】
ところで、上述の赤外線センサ100では、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35とを互いに異なる2つの層に分けて配置してあるが、これに限らず、例えば、図25に示すように、互いに異なる4つの層にn形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35を分けて配置するようにしてもよい。
【0133】
また、上述の赤外線センサ100において、半導体基板1の空洞部11は、半導体基板1の厚み方向に貫通する形で形成してもよく、この場合は、空洞部11を形成する空洞部形成工程において、半導体基板1の上記一表面とは反対の他表面側から、半導体基板1における空洞部11の形成予定領域を、例えば誘導結合プラズマ(ICP)型のドライエッチング装置を用いた異方性エッチング技術を利用して形成すればよい。また、赤外線センサ100は、感温部30を構成するサーモパイル30aの数も複数に限らず、1つでもよい。
【符号の説明】
【0134】
1 半導体基板
3 熱型赤外線検出部
3a 第1の薄膜構造部
3aa 第2の薄膜構造部
3c 連結片
3d 支持部
4 MOSトランジスタ
11 空洞部
30 感温部
30a サーモパイル
34 n形ポリシリコン層
35 p形ポリシリコン層
38 シリサイド層
45 ゲート絶縁膜
46 ゲート電極
46a 導電性ポリシリコン層
46b シリサイド層
100 赤外線センサ
120 第1のノンドープポリシリコン層
T1 温接点
T2 冷接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーモパイルにより構成される感温部を有し半導体基板の一表面側に形成されて前記半導体基板に支持された熱型赤外線検出部と、前記半導体基板の前記一表面側に形成され前記感温部の出力電圧を取り出すためのMOSトランジスタとを備えた赤外線センサであって、前記MOSトランジスタのゲート電極は、ゲート絶縁膜上の導電性ポリシリコン層と、前記導電性ポリシリコン層を覆うシリサイド層とを有することを特徴とする赤外線センサ。
【請求項2】
前記サーモパイルの熱電対の2種類の熱電要素が、p形ポリシリコン層とn形ポリシリコン層とであり、前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層それぞれにおける温接点側の端部と冷接点側の端部とがシリサイド層により覆われてなることを特徴とする請求項1記載の赤外線センサ。
【請求項3】
前記サーモパイルにおける前記p形ポリシリコン層と前記n形ポリシリコン層との少なくとも一方に形成されたシリサイド層の厚さと、前記ゲート電極における前記導電性ポリシリコン層に形成されたシリサイド層の厚さとが同一であることを特徴とする請求項2記載の赤外線センサ。
【請求項4】
前記サーモパイルは、前記p形ポリシリコン層と前記n形ポリシリコン層とが互いに異なる面上に形成されてなることを特徴とする請求項2または請求項3記載の赤外線センサ。
【請求項5】
前記半導体基板の前記一表面側において前記熱型赤外線検出部の一部の直下に空洞部が形成されてなり、前記熱型赤外線検出部は、前記半導体基板の前記一表面側で前記空洞部の周部に形成された支持部と、前記半導体基板の前記一表面側で平面視において前記空洞部を覆う第1の薄膜構造部とを備え、前記第1の薄膜構造部は、前記空洞部の周方向に沿って並設され前記支持部に支持された複数の第2の薄膜構造部と、互いに対向する前記第2の薄膜構造部同士を連結する連結片とを有し、前記各第2の薄膜構造部ごとに前記第2の薄膜構造部と前記支持部とに跨って前記サーモパイルが設けられるとともに、前記各サーモパイルごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全ての前記サーモパイルが電気的に接続されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の赤外線センサ。
【請求項6】
請求項3記載の赤外線センサの製造方法であって、前記半導体基板の前記一表面側にノンドープポリシリコン層を形成した後、前記ノンドープポリシリコン層のうち前記p形ポリシリコン層と前記n形ポリシリコン層との少なくとも一方に対応する部分と前記導電性ポリシリコン層に対応する部分とが残るように前記ノンドープポリシリコン層をパターニングし、その後、前記ノンドープポリシリコン層に不純物を注入して前記p形ポリシリコン層と前記n形ポリシリコン層との少なくとも一方と前記導電性ポリシリコン層とを形成し、その後、前記p形ポリシリコン層と前記n形ポリシリコン層との少なくとも一方の表面側に前記サーモパイルにおける前記シリサイド層を形成するのと同時に、前記導電性ポリシリコン層の表面側に前記ゲート電極における前記シリサイド層を形成することを特徴とする赤外線センサの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate


【公開番号】特開2012−63222(P2012−63222A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207052(P2010−207052)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】