説明

赤色素の製造方法及び当該赤色素を含む飲食品

【課題】 本発明は、天然由来であること、特には植物由来である赤色素の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、イリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有するイリドイド化合物とタンパク質加水分解物とを反応させて赤色素を製造する方法を提供する。当該方法は、前記タンパク質加水分解物において、該加水分解物の乾燥重量に対するアミノ酸含有量が35重量%以上であること及び、ニンヒドリン法で測定した場合に、前記アミノ酸のうち50重量%以上がグルタミン酸及びアスパラギン酸であり且つ前記グルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの重量の割合が8%以下であることを特徴とする。前記タンパク質加水分解物と一緒にタウリン又はタウリン含有物質を前記イリドイド化合物と反応させてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤色素の製造方法に関し、特には、イリドイド化合物及びタンパク質加水分解物を用いる赤色素の製造方法に関する。また、本発明は当該方法により得られた赤色素を含む飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の安全性の観点から、食品添加物に対して関心を持つ消費者が増えつつある。そのような消費者が増えつつある状況下において、食品添加物が天然由来であること、特には植物由来であることが、消費者、さらには食品製造業者に好まれる。
食品添加物の一つとして、赤色素が挙げられる。赤色素として、クチナシ赤色素、ベニバナ赤色素、食用赤色2号、3号、40号、アントシアニン、アカビート、コチニール色素など、種々の色素が挙げられる。例えば、クチナシ(Gardenia)の果実抽出物から得られるイリドイド化合物のアグルコンと第一級アミノ基含有物質とを酸性条件下で作用させることにより赤色素が製造される。
【0003】
特許文献1は赤色素の製造方法を記載する。当該製造方法は、イリドイド化合物と、一級アミノ基を持つ物質とを酸性条件下で反応させることを特徴とする。当該一級アミノ基を持つ物質として、アミノ酸、大豆蛋白、及びペプトンが挙げられている(第一表、例IV)。
【0004】
特許文献2の赤色素の製造方法は、イリドイド化合物中イリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有する物質(A)を、物質(A)に対して2モル当量以上のクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、アスコルビン酸及びエリソルビン酸からなる群から選ばれる有機酸及び物質(A)に対して0.7モル当量以上のアルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はこれらの塩をpH3〜6の範囲で反応させることを特徴とする。
【0005】
特許文献3のクチナシ赤色素の製造方法は、イリドイド化合物中イリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有する物質と第一級アミノ基含有物質とを五炭糖の存在下、酸性条件下で反応させることを特徴とする。
【0006】
特許文献4は、イリドイド配糖体のアグルコンとタウリン含有物質を共存させ、好気的条件下で青色色素を製造する方法を記載する。当該方法は、ポリフェノール化合物の存在下で該青色色素の製造をするか、又は青色色素製造後にポリフェノール化合物を添加することを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭54−86668号公報
【特許文献2】特開平3−277663号公報
【特許文献3】特開平5−59296号公報
【特許文献4】特開平7−111896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
食品の安全性の観点から、赤色素が、天然由来であること、特には植物由来であることが求められている。
また、製造された赤色素の色調が明るくそして鮮やかであることが求められている。さらに、当該色素が堅牢であること、すなわち当該色素が十分な耐酸性、耐熱性及び耐光性を有することが求められている。赤色素の用途が広がりつつあり、種々の食品に適用されるために、種々の条件下でもその赤色が保たれることが望ましい。
本発明は、これらの要求を満たす赤色素の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、イリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有するイリドイド化合物とタンパク質加水分解物とを反応させて赤色素を製造する方法を提供する。当該方法は、前記タンパク質加水分解物において、該加水分解物の乾燥重量に対するアミノ酸含有量が35重量%以上であること及び、ニンヒドリン法で測定した場合に、前記アミノ酸のうち50重量%以上がグルタミン酸及びアスパラギン酸であり且つ前記グルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの重量の割合が8%以下であることを特徴とする。さらに、前記グルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するプロリンの重量の割合が15%以下でありうる。本発明において、前記イリドイド化合物を、前記タンパク質加水分解物及びタウリン又はタウリン含有物質と反応させてもよい。当該タウリンの量又は当該タウリン含有物質に含まれるタウリンの量は、好ましくは前記タンパク質加水分解物のアミノ酸含有量に対して0重量%超〜35重量%である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、タンパク質加水分解物を原料として、明るくそして鮮やかな色調を有する赤色素を製造することが可能となった。すなわち、本発明の方法により製造された赤色素は植物由来である。さらに、当該赤色素は明るくそして鮮やかな色調を有する。
【0011】
本発明の方法により製造された赤色素はまた、耐酸性が優れている。すなわち、当該色素を酸性条件に付した場合、沈殿が生じにくい。さらに、本発明の方法により製造された赤色素は、耐光性及び耐熱性が優れている。すなわち、当該色素に光を照射しても色素の退色が少なく、熱にさらしても色素の色力が維持される。また、当該色素に光を照射した場合であってもまたは当該色素を熱にさらした場合であっても、色素の沈殿生成量が少ない。すなわち、本発明の方法により製造された赤色素は堅牢である。その結果、種々の条件下で当該色素を使用することができるので、当該色素は幅広い食品の着色に使用可能である。
【0012】
上記耐酸性は、タンパク質加水分解物とタウリン又はタウリン含有物質とを原料として用いた場合に特に優れている。タンパク質加水分解物とタウリン又はタウリン含有物質とを用いて得られた赤色素は、pH3.5以下の酸性条件下に付したとしても濁りや沈殿が生じにくい。従って、当該赤色素はさらに広範な条件下で赤色素を使用することができるので、さらに幅広い食品の着色、特には酸性の食品に使用可能である。
【0013】
さらに、本発明の方法においてタンパク質加水分解物とタウリン又はタウリン含有物質とを反応に用いて製造された赤色素は、アントシアニン色素と混合しても、濁りや沈殿が生じにくい。すなわち、アントシアニン色素と一緒に本発明の赤色素を使用することが可能である。従って、本発明の赤色素をアントシアニン色素と一緒に用いることにより、飲食品の赤色の色合いを細かく調整することが可能になる。
【0014】
本発明の製造方法では、赤色素の十分な収量が確保される。これにより、効率的な赤色素製造が可能である。その結果、製造コストの削減が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において「イリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有するイリドイド化合物」とは、下記式(I)に示される配糖体および/または下記式(II)に示される化合物である。式(I)に示される配糖体は、例えばゲニポシド酸である。式(II)に示される化合物は、例えばゲニポシド酸のアグルコンである。
【0016】
【化1】

【0017】
クチナシの果実抽出物は、イリドイド化合物を多量に含有している。クチナシは、例えば、Gardenia augusta Merrill、及びGardenia jasminoides Ellisである。この果実抽出物は、ゲニポシド酸のようにイリドイド骨格の4位にカルボキシル基(−COOH基)を有する化合物、及びゲニポシドのようにイリドイド骨格の4位にメチルエステル基(−COOCH基)を有する化合物を含みうる。当該メチルエステル基を有する化合物のメチルエステル基は、エステル加水分解により上記カルボキシル基に変換することができる。当該エステル加水分解は、アルカリ性溶液、OH型イオン交換樹脂、エステラーゼ活性を有する酵素等を、単独にまたは組み合わせて作用させることにより行われうる。果実抽出物は、例えば、クチナシの乾燥果実から含水エタノールや水で抽出して得られうる。ゲニポシドは、粗製若しくは精製されて純度を高くしたものが市販で入手も可能である。
【0018】
本発明におけるタンパク質加水分解物は、任意のタンパク質を加水分解することにより得られる。当該加水分解は、酸、酵素等により行われうる。当該酸として塩酸が挙げられる。当該酵素として、パパイン、ブロメライン、サーモリシン、麹若しくは麹分解物、又は他のプロテアーゼが挙げられる。
【0019】
本発明の方法において、タンパク質加水分解物は、賦形剤を含む混合物の形で用いてもよい。当該賦形剤として、例えばデキストリン、乳糖、デンプン等の当技術分野で慣用の賦形剤が挙げられる。当該賦形剤は、例えばタンパク質加水分解物の下記噴霧乾燥前に、又は増量剤として乾燥後に当該加水分解物に添加されうる。賦形剤の含有量は、当技術分野の慣用の技術により測定されうる。デキストリン及びデンプンの含有量は例えば、加水分解後にSomogyi−Nelson法又は酵素法を行うことにより測定されうる。乳糖の含有量は例えば、HPLC法により測定されうる。
本発明において、タンパク質加水分解物は、アミノ酸以外の物質、例えば、水、食塩、ペプチド、タンパク質、アミノ酸分析装置にかからない含窒素物質などを含みうる。アミノ酸以外のこれら物質は、タンパク質加水分解物の調製過程で生じ及び/又は添加される物質でありうる。
【0020】
本発明におけるタンパク質加水分解物の例として、グルテン加水分解物が挙げられる。グルテン加水分解物として、コムギグルテン加水分解物、コーングルテン加水分解物、又はオオムギ、ライ麦等の穀類由来のグルテン加水分解物並びにこれらの混合物を挙げることができる。タンパク質加水分解物として、市販されているコムギグルテン加水分解物を用いることもできる。グルテンは、通常、コムギ粉からコムギデンプンを製造する際の副産物として得られる。例えば、コムギ粉に少量の水を加え固く練って得られた混練物を水洗すると、コムギデンプンが水中に懸濁する一方で、水に懸濁しない残留した固形の塊が生じる。当該塊は、グルテンを含み、さらに約60〜70質量%の水分を含みうる。当該塊から保存性を高めるために水分を除去することもできるがそのまま使うこともできる。グルテンの形態は、ペースト状、粉末状、又は顆粒状でありうる。
【0021】
本発明において「加水分解物の乾燥重量」とは、賦形剤及び水分の重量を除いた当該タンパク質加水分解物の重量をいう。乾燥重量は、電子式水分計(株式会社島津製作所、MOC-120H)などによる常圧加熱乾燥法により測定される。当該方法において、加熱乾燥は、赤外線ヒーターで120℃に熱することにより行われる。水分の重量は加熱乾燥において恒量に達したときの減少量に基づく。本発明において、タンパク質加水分解物の乾燥重量に対するアミノ酸含有量の下限は、35重量%、好ましくは36重量%、好ましくは37重量%、好ましくは38重量%、好ましくは39重量%、より好ましくは40重量%、より好ましくは41重量%、さらにより好ましくは42重量%でありうる。このアミノ酸含有量により、好ましい赤色が達成され、色素が堅牢となり、そして十分な色力が達成される。本発明において、タンパク質加水分解物の乾燥重量に対するアミノ酸含有量の上限はいかなる値であってもよいが、例えば、99重量%、98重量%、97重量%、96重量%、95重量%、90重量%、85重量%、80重量%、75重量%又は70重量%であってよい。本発明において、上記アミノ酸含有量の上限及び下限は、上記の値から適宜選択されうるが、例えば35〜99重量%、特には36〜98重量%、さらに特には37〜97重量%でありうる。上記アミノ酸含有量は、ニンヒドリン法によるアミノ酸組成の分析結果から求められる。ニンヒドリン法では、まずHPLC(L−7000、株式会社日立ハイテクノロジーズ)によって、アミノ酸を分離し、そしてニンヒドリン反応による発色の吸光度を測定することにより、当該アミノ酸組成を分析する(例えば、「衛生試験法・注解2005、日本薬学会編、2005年2月発行、金原出版」を参照)。
当該アミノ酸含有量とは、タンパク質加水分解物の乾燥重量のうち、遊離アミノ酸が占める重量%をいい、すなわちアスパラギン酸、スレオニン、セリン、グルタミン酸、プロリン、グリシン、アラニン、システイン、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、グルタミン、アスパラギン及びトリプトファンの合計量が占める重量%をいう。本発明において、遊離アミノ酸とは、タンパク質又はペプチド中に在るアミノ酸を含まない。
本発明において、タンパク質加水分解物中に含まれる遊離アミノ酸の重量は、ニンヒドリン法で測定された値である。ニンヒドリン法で測定した場合、グルタミンはグルタミン酸として求められる。すなわち、ニンヒドリン法で求められたグルタミン酸の量は、遊離アミノ酸中のグルタミン及びグルタミン酸の総量である。同様に、ニンヒドリン法で測定した場合、アスパラギンはアスパラギン酸として求められる。すなわち、ニンヒドリン法で求められたアスパラギン酸の量は、遊離アミノ酸中のアスパラギン及びアスパラギン酸の総量である。
【0022】
本発明において、上記アミノ酸含有量のうちのグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量の下限は、50重量%、好ましくは52重量%、より好ましくは54重量%、さらにより好ましくは56重量%、さらにより好ましくは58重量%である。このグルタミン酸とアスパラギン酸の合計重量により、好ましい赤色が達成され、色素が堅牢となり、そして十分な色力が達成される。当該合計重量の上限はいかなる値であってもよいが、例えば、99重量%、98重量%、97重量%又は96重量%である。本発明において、当該上限及び下限は上記の値から適宜選択されるが、例えば50〜99重量%、52〜98重量%又は54〜97重量%である。
【0023】
本発明において、タンパク質加水分解物中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの重量の割合は8%以下であり、好ましくは7%以下であり、より好ましくは6%以下である。本発明の方法において、上記割合は低いほど好ましく、タンパク質加水分解物中にロイシンが含まれていなくてもよい。上記割合により、明るくそして鮮やかな色調を有する赤色素が得られる。さらに、上記割合により、耐酸性に優れた赤色素が得られ、また、赤色素の十分な収量が確保される。この割合は、上記ニンヒドリン法によってアミノ酸組成を分析することにより求められる。
【0024】
本発明において、タンパク質加水分解物中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するプロリンの重量の割合は15%以下であり、好ましくは12%以下であり、より好ましくは10%以下でありうる。本発明の方法において、上記割合は低いほど好ましく、タンパク質加水分解物中にプロリンが含まれていなくてもよい。この割合により、特に耐熱性又は耐光性に優れた赤色素が得られる。この割合は、上記ニンヒドリン法によってアミノ酸組成を分析することにより求められる。
【0025】
これらの割合は、タンパク質の加水分解、中和、及びろ過、任意的にpH調整や冷却によって沈殿物を生成すること、そして任意的に当該沈殿物を溶解することなどにより達成されうる。
タンパク質加水分解を例えば酸により行った場合、上記割合は、当該タンパク質加水分解物を中和し、次にろ過することによって、そのろ液中において達成されうる。当該酸として、塩酸などが用いられる。当該加水分解の方法は用いるタンパク質及び得られるべき加水分解物によって適宜定められるが、例えば3〜6Mの塩酸による、80〜120℃での10〜20時間の処理である。
当該中和は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを添加することにより行われうる。当該中和の条件は、上記加水分解で用いた酸およびタンパク質並びに得られるべき加水分解物によって適宜定められうる。
当該ろ過は、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過又は遠心ろ過により行われてよく、好ましくは加圧ろ過により行われる。当該加圧ろ過は、フィルタープレスにより行われうる。
当該pH調整は、上記ろ液をpH2〜4に調整して行う。次に当該ろ液を冷却し、攪拌して沈殿物を生成させ、この沈殿物含有ろ液をさらにろ過して得られたケーキは、上記割合を有するタンパク質加水分解物として用いることができる。当該pH調整は、塩酸などの酸により行われうる。当該pH調整の前に、当該ろ液を、エバポレータにより1.2〜2倍に濃縮してもよい。上記冷却においては、当該ろ液の温度を、40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下、さらにより好ましくは10℃以下にする。上記攪拌は、生成した沈殿物が沈降することによって、続くろ過に付される沈殿物の量が少なくなることを回避するように行われうる。当該ろ過は、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過又は遠心ろ過により行われてよい。当該ケーキを、再度水に懸濁して洗浄し、再度ろ過して得られたケーキを乾燥し、上記割合を有するタンパク質加水分解物として用いるが、そのまま用いることもできる。当該洗浄及びろ過を繰り返すことで、上記割合を低めることもできる。
得られたケーキを水に懸濁し、pHを4〜6に調整して当該ケーキを溶解し、次にろ過してろ液が得られる。当該ろ液を、上記タンパク質加水分解物として用いることができる。当該pH調整は、水酸化ナトリウムなどのアルカリにより行われうる。
これらのろ液は、スプレードライヤーにより噴霧乾燥されうる。得られた乾燥粉末を、上記タンパク質加水分解物として用いることもできる。噴霧乾燥前に、デキストリン等の賦形剤がろ液に添加されうる。
【0026】
タウリンは、2−アミノエタンスルホン酸ともいう。タウリンは市販されており、例えばナカライテスク株式会社、和光純薬工業株式会社又は日本クリニック株式会社から購入されうる。本発明においてタウリン含有物質とは、タウリン以外のアミノ酸及びペプチドの合計の含有量が10重量%以下であり且つタウリン含有量が30重量%以上のものをいう。好ましくは、本発明においてタウリン含有物質とは、タウリン含有量が50重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらにより好ましくは95重量%以上のものである。タウリン含有物質は、動物又は魚介の筋肉又は内臓からの抽出物であってよい。タウリン含有物質の例として例えば、イカ若しくはタコの筋肉エキスから抽出されたタウリン含有物質、又はブタ若しくはウシの筋肉エキスから抽出されたタウリン含有物質、又は牡蠣肉から抽出されたタウリン含有物質、又は動物の胆汁から抽出されたタウリン含有物質を挙げることができる。これらのタウリン含有物質を得る方法は、当業者に既知であり、例えば特開2005−179215号公報に記載されている。
【0027】
本発明の方法において、当該タウリンの量又は当該タウリン含有物質に含まれるタウリンの量は、前記タンパク質加水分解物中のアミノ酸含有量に対して0重量%超〜40重量%、好ましくは0重量%超〜35重量%、より好ましくは5重量%〜30重量%である。当該タウリンの量又は当該タウリン含有物質に含まれるタウリンの量により、製造された赤色素の耐酸性、特にはpH3.5以下における耐酸性が著しく向上し、且つ好ましい赤色を有する色素が得られる。当該上限を超す場合、好ましい赤色が得られない。当該下限を下回る場合、pH3.5以下における耐酸性の向上が図られない。また、上記タウリンの量が、35重量%超〜40重量%である場合は、下記に述べるLab系における好ましい赤色の色調を達成する為に、例えば赤色の色調がLab系においてLが70以上且つaが30以上である為に、特には赤色の色調がLab系においてLが70以上、aが30以上且つbが−8以下である為に、当該アミノ酸含有量のうちのグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量の下限が92%超、好ましくは93%超であることを要する。この場合、当該合計重量の上限は、いかなる値であってもよいが、例えば、99重量%、98重量%、97重量%又は96重量%である。
【0028】
本発明の製造方法におけるイリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有するイリドイド化合物とタンパク質加水分解物との反応は、任意の条件下で行われうるが、一般的には以下(a)〜(f)の工程を含む。
【0029】
(a)イリドイド化合物とタンパク質加水分解物との混合
イリドイド化合物1モルに対し、タンパク質加水分解物中のアミノ酸(特にはグルタミン、アスパラギン、グルタミン酸及びアスパラギン酸)が0.5モル以上、好ましくは0.5〜5モル、より好ましくは0.6〜3モル、さらにより好ましくは0.7〜2モルとなるように、イリドイド化合物とタンパク質加水分解物とを混合する。イリドイド骨格の4位にメチルエステル基を有するイリドイド化合物を用いる場合、上記混合の前に、当該メチルエステル基を、エステル加水分解によりカルボキシル基にする。当該エステル加水分解は、アルカリ性溶液、OH型イオン交換樹脂、エステラーゼ活性を有する酵素等を単独にまたは組み合わせて作用させることにより行われうる。アルカリ性溶液の例として、水酸化ナトリウム溶液が挙げられるが、ペレット状やフレーク状の固形水酸化ナトリウムをイリドイド化合物水溶液に加えることもできる。例えば10〜40重量%のNaOH溶液と40〜60重量%のイリドイド化合物水溶液とを重量比40:60〜60:40で混合し、さらに水を当該混合物に対して10〜30重量%の量で添加し、30〜70℃で1〜3時間加熱することにより、エステル加水分解が行われる。タンパク質加水分解物と一緒にタウリン又はタウリン含有物質も反応させる場合は、当該タウリン又はタウリン含有物質は、下記(e)の反応液の加熱までに、より好ましくは下記(d)の酵素反応までに、上記混合物に添加されうる。タンパク質加水分解物と一緒にタウリン又はタウリン含有物質も反応させる場合、タンパク質加水分解物中のアミノ酸(特にはグルタミン、アスパラギン、グルタミン酸及びアスパラギン酸)のモル量とタウリンのモル量との合計が、イリドイド化合物1モルに対し0.5モル以上、好ましくは0.5〜5モル、より好ましくは0.6〜3モル、さらにより好ましくは0.7〜2モルとなるように、タンパク質加水分解物及び、タウリン又はタウリン含有物質とイリドイド化合物とを添加する。
【0030】
(b)有機酸の添加
イリドイド化合物とタンパク質加水分解物との混合物に、任意的に有機酸が添加されうる。当該有機酸として、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、アスコルビン酸若しくはコハク酸、又はそれらの混合物が挙げられる。当該有機酸は、イリドイド化合物1モルに対して2モル以上、好ましくは3〜6モルで添加されうる。
【0031】
(c)アルカリによるpHの調整
上記(a)、又は(a)及び(b)により得られた混合物にアルカリ性溶液を添加してpHを3〜6、より好ましくは4〜5に調整する。アルカリ性溶液の例として、10〜40重量%の水酸化ナトリウム溶液が挙げられるが、上記固形水酸化ナトリウムを加えて調整することもできる。
【0032】
(d)β−グルコシダーゼ活性を有する酵素による反応
上記(c)のpH調整後の混合物に、β−グルコシダーゼ活性を有する酵素を添加し、酵素反応をさせる。β−グルコシダーゼ活性を有する酵素として、例えばセルラーゼAP5(天野エンザイム株式会社)、セルラーゼオノズカ3S(ヤクルト薬品工業株式会社)、スミチームAC(新日本化学工業株式会社)、セルラーゼY2−NC又はセルラーゼY−NC(ヤクルト薬品工業株式会社)などが挙げられる。酵素反応の条件は選択された酵素に従い適宜選択される。典型的には、当該酵素反応は30〜70℃で1〜30時間行われる。上記酵素反応によりイリドイド化合物が加水分解されてイリドイド化合物のアグルコンが得られる。当該アグルコンを原料として用い、(a)〜(f)の工程を実行して、(d)を省略できる。
【0033】
(e)反応液の加熱
上記(d)の酵素反応後、反応液を80〜100℃で、0.5〜12時間、好ましくは1〜6時間、より好ましくは2〜3時間加熱する。
【0034】
(f)色素分離
得られた色素の分離手段は、当業者により適宜選択されうる。当該分離手段として、例えば、遠心分離、ろ過、特には限外ろ過、酸性沈殿、親水性有機溶媒添加若しくはイオン交換又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
本発明において、色調とは、Hunter−Lab表色系における色調である。当該表色系は、色度を示すa、b軸よりなる直交座標と、これに垂直なL軸とから構成される色立体を成す表色系である。a値が正側で増加すると赤味、負側で増加すると緑味が増すことを意味する。b値が正側で増加すると黄味、負側で増大すると青味が増していることを意味する。L値は明度に対応する。L=100のときの色は白、L=0のときの色は黒である。L値が大きくなるほど色は明るくなる。本発明の方法により製造される赤色素の色調は、Lab表色系において、Lが70以上、好ましくは71以上、より好ましくは72以上であり、且つ、aが30以上、好ましくは32以上、より好ましくは34以上でありうる。L及びaの値の組み合わせは、上記の値から適宜選択されうるが、Lが70以上であり且つaが30以上であることが好ましく、Lが71以上であり且つaが32以上であることがより好ましく、Lが72以上であり且つaが34以上であることがさらにより好ましい。より好ましくは、本発明の方法により製造される赤色素の色調は、Lab表色系において、Lが70以上、好ましくは71以上、より好ましくは72以上であり、aが30以上、好ましくは32以上、より好ましくは34以上であり、且つbが−8.0以下、より好ましくは−8.2以下、さらにより好ましくは−8.4以下でありうる。L、a及びbの値の組み合わせは、上記の値から適宜選択されうるが、Lが70以上であり、aが30以上であり且つbが−8以下であることが好ましく、Lが71以上であり、aが32以上であり且つbが−8.2以下であることがより好ましく、Lが72以上であり、aが34以上であり且つbが−8.4以下であることがさらにより好ましい。上記L及びaの値を有する色調により、又は上記L、a及びbの値を有する色調により、適度に明るく且つ鮮やかな赤色が達せられる。すなわち、上記L及びaの値を有する色調、又は上記L、a及びbの値を有する色調は明るくそして鮮やかな色調である。さらに上記色調は赤みが強いため、添加されるべき飲食品の赤色を得るために上記色素単独で用いられうる。
色調の測定は、当業者に既知の測定装置を用いて行われうる。当該測定装置として、分光色差計(例えばSD5000(日本電色工業株式会社))、測色色差計(例えばZE6000、SZ−Σ80又はSE−2000(いずれも日本電色工業株式会社))などが挙げられる。
【0036】
本発明の方法により製造された赤色素は、耐酸性に優れている。耐酸性に優れていることにより、色素溶液が酸性条件に付されても、沈殿や濁りが生成しにくい。本発明において、耐酸性とは、酸性条件下の色素水溶液において色素に由来した濁りや沈澱を生じることが少なく、色素水溶液の色力を維持する特性をいう。本発明において、耐酸性に優れているとは、pH3.8に10時間、12時間、14時間、16時間又は18時間付された場合の色素残存率が、75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上であることを意味する。すなわち、本発明の方法により製造された赤色素の当該色素残存率は、75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。本明細書において、色素残存率とは、色素溶液中に生成した濁りや沈殿を除去した上清中に色素がどの程度残っているかを意味する。濁りや沈殿が生じた場合、色素化合物は当該濁りや沈殿中に存在しうる。本発明の方法においてタンパク質加水分解物と一緒にタウリン又はタウリン含有物質も反応させる場合、得られる赤色素は、特に耐酸性に優れている。特に耐酸性に優れているとは、pH3.5に10時間、12時間、14時間、16時間又は18時間付された場合の色素残存率が、75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上であることを意味する。当該色素残存率は、下記実施例4に記載の方法により評価される。
【0037】
本発明はまた、本発明の赤色素を含む飲食品に関する。すなわち、本発明の赤色素は、種々の飲食品に添加されうる。本発明の赤色素が添加される飲食品は、例えば、麺類、リキュール、飲料、菓子、乳飲料、餡、魚肉又は畜肉ソーセージなどであるがこれらに限定されない。また、本発明の赤色素は、他の色素と一緒に用いられてもよい。当該他の色素は、所望の色に応じて当業者により適宜選択されうるが、例えば青色素、黄色素、本発明の赤色素以外の赤色素などが挙げられる。また、本発明の方法においてタウリン又はタウリン含有物質も用いた場合に特に、本発明の赤色素はアントシアニン系色素と一緒に用いられうる。この場合に得られた本発明の赤色素は、当該アントシアニン系色素と混合しても、濁りや沈殿の生成が少ない。当該アントシアニン系色素として例えば、アカキャベツ色素、アカダイコン色素、ムラサキイモ色素、ムラサキトウモロコシ色素、エルダーベリー色素、シソ色素、及びブドウ果皮色素を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0038】
本発明の赤色素は特に、酸性条件にある飲食品に添加されうる。酸性の飲食品は、飲食品単独で酸性であってよく、又は各種酸を添加した結果酸性を示してもよい。本発明の赤色素が添加された飲食品は、その飲食品が酸性であっても、変色が少ない。変色が少ない故に、飲食品の品質が損なわれない。上記酸性条件にある飲食品として、例えばpH5以下の飲食品、pH4.5以下の飲食品、pH4以下の飲食品、又はpH3.5以下の飲食品を挙げることができる。このような飲食品の例として例えば、ゼリー、キャンディー、果汁入り飲料又は果汁風味飲料、冷菓、氷菓及び漬物を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0039】
本発明の赤色素は特に、高温処理される飲食品に添加されうる。そのような飲食品は、例えば、製造工程若しくは調理/加工工程において、輸送中若しくは保管中において、及び/又は商品陳列中において、熱が加えられる飲食品であるがこれらに限定されない。本発明の赤色素が添加された飲食品は、その飲食品に対し、製造工程若しくは調理/加工工程において、輸送中若しくは保管中において、及び/又は商品陳列中において熱が加えられたとしても、変色が少ない。変色が少ない故に、飲食品の品質が損なわれない。
【0040】
本発明の赤色素は特に、光を照射される飲食品に添加されうる。そのような飲食品は、例えば、ポリ袋、ペットボトル、ガラス瓶等の遮光できない袋や容器で販売される飲食品であるがこれらに限定されない。本発明の赤色素が添加された飲食品は、その飲食品に対し光が照射されたとしても、変色が少ない。変色が少ない故に、飲食品の品質が損なわれない。
【0041】
本発明の赤色素の飲食品への添加量は、得られるべき飲食品の色に応じて適宜定められるが、例えば0.001〜15重量%、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。
【0042】
下記に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものでない。
下記の実施例において、色素液の色力及び色調を測定した。これらの測定方法は、以下のとおりである。
色力は、色力測定法により、すなわち色素液を必要に応じて水もしくは緩衝液で希釈し、可視部での極大吸収波長における吸光度を紫外可視分光光度計(UV−2450、株式会社島津製作所)によって測定し、測定値に希釈率を乗じて得た。色力の単位はu/gであり、これは色素液1g当たりの色素量を示し、すなわち極大吸収波長における吸光度で表した色素濃度である。色素量(u)は、色力と色素液の重量(g)との積で示した。すなわち、1uの色素量は、極大吸収波長で測定して、吸光度が1になる、1gの色素液に含まれる色素の量である。
色調は、得られた色素液を、極大吸収波長における吸光度が0.5になるように水もしくは緩衝液で希釈し、当該希釈液を色差計(SZ−Σ80、日本電色工業株式会社)により測定した。
【実施例1】
【0043】
赤色素の製造
(1)コムギグルテン加水分解物の調製
コムギ由来グルテン(和光純薬株式会社)300g、水500g、及び濃塩酸(特級、和光純薬株式会社)350mlをマグネット回転子と共に3L容の2口丸底フラスコに入れた。当該フラスコに温度計及びジムロートをセットし、そしてホットスターラー(SR550、アドバンテック株式会社)に載せたオイルバス中に当該フラスコを漬けた。オイルバスの温度を130〜140℃にし、フラスコ内の回転子を回し、そしてジムロートに水道水を流しながら、15時間当該フラスコを加熱した。加熱後、当該フラスコ内の加水分解液を放冷し、そして当該加水分解液を2L容ビーカーに移した。当該ビーカーを冷やしながら、当該加水分解液に25重量%水酸化ナトリウム(特級、和光純薬株式会社)水溶液を620g加えて、当該加水分解液を約pH6に中和した。当該中和液にセライト500(株式会社東京今野商店)を10g加えた。ブフナーロートに150mmのNo2濾紙(アドバンテック株式会社)をセットし、当該濾紙に10gのセライト500をプレコートした。セライト500を添加した中和液を、吸引瓶及び真空ポンプ(日本ビュッヒ株式会社、Vac. V500型)を用いて吸引濾過した。得られた濾液を、ロータリーエバポレーター(N1、東京理化学器械株式会社)を用いて減圧濃縮し、その液重を1070gにした。この濃縮液を1L容ビーカーに移し入れ、そして濃塩酸約100gを加えることによりこの濃縮液のpHを3.1に調整した。pH調整後、約5℃の冷蔵庫に入れて緩やかな攪拌を2日間続けた。当該攪拌の結果析出した析出物を、125mmのNo2濾紙をセットしたブフナーロートで吸引濾過した。得られたケーキを冷脱イオン水150mlに懸濁し、そして攪拌した後、同様に吸引濾過した。最後に、得られたケーキを約20mlのエタノールで吸引濾過洗浄した。得られた54.5gの洗浄ケーキを、濾紙に載せたままで50℃にしたデシケーターに入れ、7時間真空乾燥した。乾燥後、濾紙から濾過物を外して35.4gの崩れやすい塊状の固体を得た。得られた固体を乳鉢で磨りつぶして微粉化した。得られた微粉を、コムギグルテン加水分解物(以下、「加水分解物1」という)として以下の実験で用いた。
加水分解物1は、ロイシンを0.61重量%含み、プロリンを0重量%含み、(グルタミン酸+アスパラギン酸)を53.45重量%含む。加水分解物1中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの重量の割合は1%である。また、加水分解物1中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するプロリンの重量の割合は0%である。加水分解物1の乾燥重量に対するアミノ酸含有量は、56.36重量%である。加水分解物1におけるアミノ酸総含有量に対する(グルタミン酸+アスパラギン酸)の重量割合は94.84重量%である。これらの割合は、ニンヒドリン法により測定した。表1に加水分解物1のアミノ酸組成を示す。
【0044】
【表1】

【0045】
(2)イリドイド化合物の調製
ゲニポシド液350gに水280g及び24重量%の水酸化ナトリウム350gを添加し、60℃で2時間ケン化をすることによりゲニポシド酸溶液を用意した。得られたゲニポシド酸溶液に、結晶クエン酸(和光純薬工業株式会社、特級クエン酸)334gを加えた。得られた混合液を13等分し、それぞれ300ml容積の三角フラスコに入れた。
【0046】
(3)赤色素の製造
上記三角フラスコの1つを用い、これに加水分解物1を添加し、混合した。加水分解物1の添加量は、加水分解物1に含まれるアミノ酸の平均分子量を139とした場合にゲニポシド酸と当該アミノ酸とが等モルとなるように調節した。当該平均分子量は、市販のグルテン加水分解物(日清ファルマ株式会社、WGH、http://www.wgh.jp/shiryoubako/000010.php)のアミノ酸組成に基づき加重平均をすることにより算出した。次に、24重量%の水酸化ナトリウム溶液を当該混合物に添加して、pHを4.8にした。この混合物にさらに水を加え、液量を220gにした。次に、三角フラスコ内をアルゴンガスで置換した。置換後、1gのセルラーゼY2NC(ヤクルト薬品工業株式会社)を添加し、アルミホイルで蓋をして、53〜55℃で22.5時間、酵素反応をさせた。反応後、加熱器(ヤマト科学株式会社、ウォーターバスインキュベーターBT−25)により、反応物を85〜95℃で3時間加熱した。その後、当該反応物を、水浴(室温)中で約30分間放冷した。当該放冷によって当該反応物が50℃程度になった時点で1.5mlエッペンドルフチューブに当該反応物を採取し、冷却遠心機(エッペンドルフ株式会社、冷却遠心機5415R)により、当該反応物を12000rpmで5分間遠心分離し、上清を赤色素(以下、「赤色素1」という)として得た。
【実施例2】
【0047】
赤色素の製造
(1)コムギグルテン加水分解物の調製
加水分解物1と同様にグルテン加水分解物を3種類(以下、「加水分解物2」、「加水分解物3」及び「加水分解物4」という)調製した。これらの加水分解物は、上記実施例1の加水分解物1製造方法における沈殿生成条件や沈澱の洗浄条件等を適宜調整した製造方法により製造した。
加水分解物2〜4中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの重量の割合は、それぞれ2%、6%及び4%である。また、加水分解物2〜4中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するプロリンの重量の割合はいずれも0%である。加水分解物2、3及び4の乾燥重量に対するアミノ酸含有量はそれぞれ、51.59重量%、44.66重量%及び46.68重量%であった。加水分解物2、3及び4におけるアミノ酸総含有量に対する(グルタミン酸+アスパラギン酸)の重量割合はそれぞれ、88.16重量%、92.43重量%及び87.38重量%である。加水分解物2〜4に含まれるアミノ酸量は、ニンヒドリン法により測定した。表2に加水分解物2〜4のアミノ酸組成を示す。
【0048】
【表2】

【0049】
(2)赤色素の製造
実施例1に記載の加水分解物1の代わりに加水分解物2〜4を用いた以外は、実施例1と同じ方法で赤色素を製造した。加水分解物2、3及び4を用いて製造された赤色素を以下においてそれぞれ「赤色素2」、「赤色素3」及び「赤色素4」という。
【実施例3】
【0050】
赤色素の製造
(1)コムギグルテン加水分解物の調製
コムギグルテン加水分解物(ML−30G、株式会社新進、以下、「加水分解物5」という)を用意した。加水分解物5は、ロイシン含有量が2.1重量%であり且つ(グルタミン酸+アスパラギン酸)の含有量が15.69重量%である。加水分解物5中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの重量の割合は13%である。加水分解物5中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するプロリンの重量の割合は33%である。加水分解物5の乾燥重量に対するアミノ酸含有量は、35.29重量%であった。加水分解物5におけるアミノ酸総含有量に対する(グルタミン酸+アスパラギン酸)の重量割合は44.46重量%である。表3に加水分解物5のアミノ酸組成を示す。
【0051】
【表3】

【0052】
加水分解物4と加水分解物5とを80:20、60:40及び40:60の重量比で混合して、加水分解物中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの重量の割合が5%、6%及び8%であるグルテン加水分解物を調製した。これらの加水分解物の乾燥重量に対するアミノ酸含有量はそれぞれ、44.40重量%、42.12重量%、及び39.85重量%である。これらの加水分解物におけるアミノ酸総含有量に対する(グルタミン酸+アスパラギン酸)の重量割合はそれぞれ、80.56重量%、73.00重量%、及び64.57重量%である。
【0053】
(2)赤色素の製造
実施例1に記載の加水分解物1の代わりに上記調製された3種のグルテン加水分解物をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同じ方法で赤色素を製造した。上記割合が5%、6%及び8%であるグルテン加水分解物を用いて製造された赤色素を以下においてそれぞれ、「赤色素5」、「赤色素6」及び「赤色素7」という。
【0054】
(比較例1)
加水分解物4と加水分解物5とを20:80の重量比で混合して、加水分解物中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの重量の割合が10%であるグルテン加水分解物を調製した。この加水分解物の乾燥重量に対するアミノ酸含有量は37.57重量%である。この加水分解物におけるアミノ酸総含有量に対する(グルタミン酸+アスパラギン酸)の重量割合は55.13重量である。実施例1に記載の加水分解物1の代わりにこのグルテン加水分解物を用いた以外は、実施例1と同じ方法で赤色素(以下、「赤色素8」という)を製造した。
【0055】
(比較例2)
実施例1に記載の加水分解物1の代わりに加水分解物5を用いた以外は、実施例1と同じ方法で赤色素(以下、「赤色素9」という)を製造した。
【0056】
(比較例3)
コーンタンパク質加水分解物(アミシンC、新進株式会社。以下、「加水分解物6」という)を用意した。加水分解物6のロイシン含有量は0.86重量%であり且つ(グルタミン酸+アスパラギン酸)の含有量が5.36重量%である。グルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの重量の割合は16%である。乾燥重量に対するアミノ酸含有量は、12.63重量%であった。アミノ酸総含有量に対する(グルタミン酸+アスパラギン酸)の重量割合は42.44重量%である。表4に加水分解物6のアミノ酸組成を示す。
【0057】
【表4】

【0058】
実施例1に記載された加水分解物1の代わりに加水分解物6を用いた以外は、実施例1と同じ方法で赤色素(以下、「赤色素10」という)を製造した。
【実施例4】
【0059】
実施例1〜3の赤色素1〜7及び比較例1〜3の赤色素8〜10の色力、色調及び耐酸性をそれぞれ測定した。
【0060】
色力及び色調の測定結果を表5に示す。
【0061】
【表5】

【0062】
表5に示された結果より、実施例1〜3の赤色素1〜7においての色調はいずれも、Lが70以上であり、aが30以上であり且つbがさらに−8以下であった。一方、比較例1〜3の赤色素8〜10は、Lが70未満であった。従って、実施例1〜3の赤色素1〜7は、比較例1〜3の赤色素8〜10と比べて、明るくそして鮮やかな色調を有することが分かる。さらに、実施例の赤色素1〜7の色力は、比較例1〜3の赤色素8〜10と比較して高かった。
【0063】
耐酸性の評価を、酸性条件下で一晩放置した色素液の色力を測定することにより行った。当該評価の手順は、以下の通りである。まず、4倍濃くしたMcIlvaine緩衝液を調製した。当該緩衝液は、クエン酸(和光純薬工業株式会社、特級クエン酸)及びリン酸水素二ナトリウム・12水(和光純薬工業株式会社、特級リン酸水素二ナトリウム・12水)をそれぞれ水に溶解してクエン酸水溶液及びリン酸水素二ナトリウム水溶液を調製し、それら水溶液を混合してpH3.0,3.4,3.5,3.8又は4.0の水溶液10gずつを調製した。当該緩衝液(pH3〜4)に、色力5u/gとなる量の赤色素1〜10を混合した。当該混合液を、85重量%のリン酸水溶液(リン酸は、和光純薬工業株式会社の特級リン酸を使用した)で、pH3.0,3.4,3.5,3.8又は4.0に調整した。pH調整後、これらの混合液を冷蔵庫内で一晩静置した。一晩静置後、混合液を試験管に移し、遠心分離機(国産遠心器株式会社、卓上遠心機H−20)を用いて3000rpmで10分間遠心分離して上清を得た。この上清の色力を上記色力測定法により測定した。酸性処理開始時の色力が5u/gであるため、静置後の上清を同じpHの緩衝液で正確に5倍希釈した色素液の吸光度を測定して100を乗じた値を色素残存率とした。この色素残存率が耐酸性の指標である。
【0064】
耐酸性の評価結果を表6に示す。耐酸性の評価基準は、pH3.8における色素残存率が90%以上であれば非常に良好(◎)であり、75%以上90%未満であれば良好(○)であり、75%未満であれば不良(×)である。
【0065】
【表6】

【0066】
表6に示された結果より、実施例1〜3の赤色素1〜6については、pH3.8における色素残存率が90%以上であり、これらの色素の耐酸性は非常に良好であった。実施例の赤色素7については、pH3.8における色素残存率は80.0%であり、この色素の耐酸性は良好であった。他方、比較例の赤色素1〜3では、pH3.8における色素残存率は75%未満であり、これらの色素の耐酸性は不良であった。また、赤色素1〜7では、pH3.4における色素残存率は35%以上であった。他方、比較例の赤色素1〜3では、pH3.4における色素残存率は31%未満であった。
【実施例5】
【0067】
赤色素の製造
(1)コムギグルテン加水分解物
実施例2で用いた加水分解物4をコムギグルテン加水分解物として用いた。
【0068】
(2)イリドイド化合物の調製
ゲニポシド液238gに水100g及び24重量%の水酸化ナトリウム215gを添加し、60℃で2時間ケン化をすることによりゲニポシド酸溶液を用意した。得られたゲニポシド酸溶液に、結晶クエン酸(和光純薬工業株式会社、特級クエン酸)205gを加えた。得られた混合液を8等分し、それぞれ300ml容の三角フラスコに入れた。
【0069】
(3)赤色素の製造
上記三角フラスコの1つを用い、これに10.7gの加水分解物4を添加し、混合した。加水分解物4の添加量は、加水分解物4に含まれるアミノ酸の平均分子量を139とした場合にゲニポシド酸と当該アミノ酸とが等モルとなるように調節した。次に、24重量%の水酸化ナトリウム溶液を当該混合物に添加して、pHを4.7にした。この混合物にさらに水を加え、液量を220gにした。次に、三角フラスコ内をアルゴンガスで置換した。置換後、1gのセルラーゼY2NC(ヤクルト薬品工業株式会社)を添加し、アルミホイルで蓋をして、53〜55℃で22.5時間、酵素反応をさせた。反応後、加熱器(ヤマト科学株式会社、ウォーターバスインキュベーターBT−25)により、反応液を85〜95℃で3時間加熱した。その後、当該反応液を、水浴(室温)中で約30分間放冷した。当該放冷によって、当該反応液が50℃程度になった時点で1.5mlエッペンドルフチューブに当該反応液を採取し、冷却遠心機(エッペンドルフ株式会社、冷却遠心機5415R)により、当該反応液を12000rpmで5分間遠心分離し、上清を赤色素(以下、「赤色素11」という)として得た。
【実施例6】
【0070】
赤色素の製造
加水分解物4に含まれるグルタミン酸及びアスパラギン酸の平均分子量を139とした場合にゲニポシド酸と当該グルタミン酸及びアスパラギン酸とが等モルとなるように加水分解物4の添加量を変更した以外は、実施例5と同じ方法で、赤色素(以下、「赤色素12」という)を製造した。加水分解物4の添加量は12.4gであった。
【0071】
(比較例4)
グルテン加水分解物(以下、「加水分解物7」という)を用意した。加水分解物7中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの重量の割合は14%であった。加水分解物7中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するプロリンの重量の割合は26%であった。加水分解物7の乾燥重量に対するアミノ酸含有量は、8.98重量%であった。加水分解物7におけるアミノ酸総含有量に対する(グルタミン酸+アスパラギン酸)の重量割合は47.66重量%である。加水分解物7は、上記実施例1に記載したグルテン加水分解物の製造方法の加水分解液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、濾過して製造した。加水分解物7に含まれるアミノ酸量は、ニンヒドリン法により測定した。加水分解物7のアミノ酸組成を表7に示す。
【0072】
【表7】

【0073】
加水分解物4の代わりに加水分解物7を用いた以外は、実施例5と同じ方法で赤色素(以下、「赤色素13」という)を製造した。加水分解物7の添加量は、55.7gであった。
【0074】
(比較例5)
加水分解物7に含まれるグルタミン酸及びアスパラギン酸の平均分子量を139とした場合にゲニポシド酸と当該グルタミン酸及びアスパラギン酸とが等モルとなるように加水分解物7の添加量を変更した以外は、比較例4と同じ方法で赤色素を製造した(以下、当該赤色素を「赤色素14」という)。加水分解物7の添加量は116.8gであった。
【0075】
(比較例6)
加水分解物4の代わりに比較例3で用いた加水分解物6を用いた以外は、実施例5と同じ方法で赤色素(以下、「赤色素15」という)を製造した。加水分解物6中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの重量の割合は16%である。加水分解物6中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するプロリンの重量の割合は18%であった。加水分解物6の添加量は39.6gであった。
【0076】
(比較例7)
加水分解物6に含まれるグルタミン酸及びアスパラギン酸の平均分子量を139とした場合にゲニポシド酸と当該グルタミン酸及びアスパラギン酸とが等モルとなるように加水分解物6の添加量を変更した以外は、比較例6と同じ方法で赤色素(以下、「赤色素16」という)を製造した。加水分解物6の添加量は93.3gであった。
【0077】
(比較例8)
加水分解物4の代わりに脱脂大豆加水分解物(アミシン濃口、株式会社新進、以下、「加水分解物8」という)を用いた以外は、実施例5と同じ方法で赤色素(以下、「赤色素17」という)を製造した。加水分解物8中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの重量の割合は10%であった。加水分解物8中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するプロリンの重量の割合は17%であった。加水分解物8の乾燥重量に対するアミノ酸含有量は、14.87重量%であった。加水分解物8におけるアミノ酸総含有量に対する(グルタミン酸+アスパラギン酸)の重量割合は41.02重量%である。加水分解物8の添加量は33.6gであった。加水分解物8のアミノ酸組成を表8に示す。
【0078】
【表8】

【0079】
(比較例9)
加水分解物8に含まれるグルタミン酸及びアスパラギン酸の平均分子量を139とした場合に、ゲニポシド酸と、当該グルタミン酸及びアスパラギン酸とが等モルとなるように加水分解物8の添加量を変更した以外は、比較例8と同じ方法で赤色素(以下、「赤色素18」という)を製造した。加水分解物8の添加量は82.0gであった。
【実施例7】
【0080】
実施例5〜6の赤色素11〜12及び比較例4〜9の赤色素13〜18の色力及び色調を測定した。色力及び色調の測定結果を表9に示す。
【0081】
【表9】

【0082】
表9に示された結果より、実施例5及び6の赤色素11及び12の色調はいずれも、Lが70以上であり、aが30以上であり且つbがさらに−8以下であった。一方、比較例4〜9の赤色素13〜18は、Lが70未満であり、aも30未満であった。従って、実施例5及び6の赤色素11及び12は、比較例4〜9の赤色素13〜18と比較して、明るくそして鮮やかな色調を有することが分かる。さらに、実施例の赤色素11及び12の色力は、比較例の赤色素13〜18と比較して高かった。なお、実施例4の赤色素1〜10と、本実施例の赤色素11〜18とを、色力に関して比較することはできない。これは、主に酵素反応における反応温度及び反応時間、ならびに反応液のpHが異なるからである。
【0083】
実施例5〜6の赤色素11〜12及び比較例4〜9の赤色素13〜18の耐酸性を評価した。耐酸性の評価を、実施例4に記載の手順により行った。耐酸性の評価結果を表10に示す。
【0084】
【表10】

【0085】
表10に示された結果より、実施例5及び6の赤色素11及び12については、pH3.8における色素残存率が90%以上であり、これらの色素の耐酸性は非常に良好であった。さらに、pH3.6における色素残存率も、90%以上であった。他方、比較例の赤色素16及び18のpH3.8における色素残存率は良好であった。比較例の赤色素13〜15及び17のpH3.8における色素残存率は不良であった。
【実施例8】
【0086】
実施例5〜6の赤色素11〜12及び比較例4〜9の赤色素13〜18の耐熱性を評価した。耐熱性の評価を以下の手順により行った。0.1Mクエン酸及び0.2Mリン酸水素二ナトリウムを調製し、これらの水溶液を適宜混合してpHを調整することによりpH4又は6の緩衝液を作成した。赤色素11〜18の色素液のそれぞれとpH4及び6の緩衝液のそれぞれとを混合し、当該混合液の色力を約1u/gとした。当該色素液の調製後、当該混合液の入った試験管を30分間沸騰水中に浸けた。沸騰処理後に水冷し、濁りが生じた試験液はNo2ろ紙(アドバンテック東洋株式会社)でろ過して色力を測定するとともに、色力を0.5としないで処理液そのまま色調を測定した。沸騰処理後色素液の色力を沸騰処理前色素液の色力で割って色素残存率を求めた。色素残存率及び色調の評価結果を表11に示す。
【0087】
【表11】

【0088】
表11に示された結果より、pH4において、実施例5及び6の赤色素11及び12では色素残存率がそれぞれ102.4%および99.8%であり、これらの赤色素の耐熱性は良好であった。一方、比較例4及び5の赤色素13及び14では、pH4において、色素残存率がそれぞれ47.5%および64.7%であり、耐熱性が不良であった。また、赤色素13及び14については、pH4における沸騰処理によって沈殿が生じたが、他の赤色素では沈殿が生じなかった。さらに、ΔE値を計算式:ΔE=√((L−L´)+(a−a´)+(b−b´))により求めた。上記計算式中L、a及びbは、処理前の値であり、一方、L´、a´及びb´は、処理後の値である。ΔE値は、処理前後の色調の変化の程度を示す。赤色素13及び14に比べて、他の赤色素のΔE値は小さく、色調の変化が少ない。これは特にpH4において明らかである。
【0089】
実施例5〜6の赤色素11〜12及び比較例4〜9の赤色素13〜18の耐光性をそれぞれ評価した。耐熱性の評価は以下の手順で行った。実施例5〜6の赤色素11〜12、及び比較例4〜9の赤色素13〜18の色素液のそれぞれと、上記pH4及び6の緩衝液のそれぞれとを混合し、当該混合液の色力を約1u/gとした。当該混合液に対し、フォトチャンバー(照明付きインキュベーター、FLI−2000HT、東京理化機器株式会社)により20000lxの光を20時間照射した。照射処理後に濁りの生じた色素液はNo2ろ紙でろ過し、色力、及び色力を0.5としない試験液そのままの色調を測定した。照射処理前後の色力から色素残存率を求めた。色素残存率及び色調の評価結果を表12に示す。
【0090】
【表12】

【0091】
表12に示された結果より、pH4において、実施例5及び6の赤色素11及び12では色素残存率がそれぞれ74.3%および72.5%であり、これらの赤色素の耐光性は良好であった。一方、比較例4及び5の赤色素13及び14では、pH4において、色素残存率がそれぞれ27.6%及び41.1%であり、耐光性が不良であった。また、赤色素13及び14については、pH4における光照射処理によって沈殿が生じたが、他の赤色素では沈殿が生じなかった。さらに、ΔE値を計算式:ΔE=√((L−L´)+(a−a´)+(b−b´))により求めた。ΔE値は、処理前後の色調の変化の程度を示す。赤色素13及び14に比べて、他の赤色素のΔE値は小さく、色調の変化が少ないことがわかる。これは特にpH4において明らかである。
【実施例9】
【0092】
赤色素の製造
(1)コムギグルテン加水分解物の調製
加水分解物1と同様にグルテン加水分解物(以下、「加水分解物9」)を調製した。この加水分解物は、上記実施例1の加水分解物1の製造方法における沈殿生成条件や沈澱の洗浄条件等を適宜調整した製造方法により製造した。
加水分解物9中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの重量の割合は0.94%である。また、加水分解物9中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するプロリンの重量の割合は0%である。加水分解物9の乾燥重量に対するアミノ酸含有量はそれぞれ、58.25重量%であった。加水分解物9におけるアミノ酸総含有量に対する(グルタミン酸+アスパラギン酸)の重量割合は95.23重量%である。加水分解物9に含まれるアミノ酸量は、ニンヒドリン法により測定した。表13に加水分解物9のアミノ酸組成を示す。
【0093】
【表13】

【0094】
加水分解物9に加えて、別のコムギグルテン加水分解物を以下の通りに調製した。コムギ由来グルテン(和光純薬株式会社)300g、水500g、及び濃塩酸(特級、和光純薬株式会社)350mlをマグネット回転子と共に3L容の2口丸底フラスコに入れた。当該フラスコに温度計及びジムロートをセットし、そしてホットスターラー(SR550、アドバンテック株式会社)に載せたオイルバス中に当該フラスコを漬けた。オイルバスの温度を130〜140℃にし、フラスコ内の回転子を回し、そしてジムロートに水道水を流しながら、15時間当該フラスコを加熱した。加熱後、当該フラスコ内の加水分解液を放冷し、そして当該加水分解液を2L容ビーカーに移した。当該ビーカーを冷やしながら、当該加水分解液に25重量%水酸化ナトリウム(特級、和光純薬株式会社)水溶液を620g加えて、当該加水分解液を約pH6に中和した。当該中和液にセライト500(株式会社東京今野商店)を10g加えた。ブフナーロートに150mmのNo2濾紙(アドバンテック株式会社)をセットし、当該濾紙に10gのセライト500をプレコートした。セライト500を添加した中和液を、吸引瓶及び真空ポンプ(日本ビュッヒ株式会社、Vac. V500型)を用いて吸引濾過した。得られた濾液を、ロータリーエバポレーター(N1、東京理化学器械株式会社)を用いて減圧濃縮した後、減圧乾燥した。減圧乾燥により得られた粉末を、コムギグルテン加水分解物(以下、「加水分解物10」という)として、以下の実験で用いた。加水分解物10は、ロイシン含有量が1.63重量%であり且つ(グルタミン酸+アスパラギン酸)の含有量が16.38重量%である。加水分解物10中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの重量の割合は9.95%である。加水分解物10中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するプロリンの重量の割合は27.41%である。加水分解物10の乾燥重量に対するアミノ酸含有量は、34.10重量%であった。加水分解物10におけるアミノ酸総含有量に対する(グルタミン酸+アスパラギン酸)の重量割合は48.04重量%である。表14に加水分解物10のアミノ酸組成を示す。
【0095】
【表14】

【0096】
加水分解物9に含まれるアミノ酸の重量と加水分解物10に含まれるアミノ酸の重量との重量比が85:15となるように加水分解物9と加水分解物10とを混合して加水分解物(以下、「加水分解物11」という)を調製した。加水分解物11中のグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの割合が1.38%である。加水分解物11の乾燥重量に対するアミノ酸含有量は54.63重量%であり、そして、アミノ酸総含有量に対する(グルタミン酸+アスパラギン酸)の重量割合は90.81重量%である。
【0097】
(2)イリドイド化合物の調製
ゲニポシド液360gに、水400ml及び24重量%の水酸化ナトリウム194gを添加し、60℃で1時間ケン化をすることによりゲニポシド酸溶液を用意した。得られたゲニポシド酸溶液に、結晶クエン酸(和光純薬工業株式会社、特級クエン酸)240gを加えた。得られた混合液を12等分し、それぞれを12本の300ml容積の三角フラスコに入れ、ゲニポシド酸溶液が入った三角フラスコを合計で12本用意した。
【0098】
(3)タウリンの調製
特開2005−179215号公報の実施例2に記載の方法で、カキから抽出したタウリンを得た。得られたタウリンの純度は80.1%であった。得られたタウリンにタウリン以外の遊離アミノ酸は含まれていなかった。当該純度は、寺垣内穫、山口利也、杉村豊裕、「食品中に含まれるタウリンの分析について」、独立行政法人農林水産消費技術センター調査報告第18号1812、に記載された方法に従ってHPLCにより分析した。
【0099】
(4)赤色素の製造
上記フラスコを7つとり、表15に記載のとおりの量の加水分解物9及び11並びに、上記(3)で得られたタウリンを添加し混合した。表15に、加水分解物9又は11の添加量、タウリンの添加量、タウリンの純度を考慮した正味タウリン添加量、加水分解物中のアミノ酸含有量、並びに当該アミノ酸含有量に対するタウリンの重量の割合(%)を示す。表15において、製造例9−0は、加水分解物9のみを反応に用いた実施例である。製造例9−1〜9−3は、加水分解物9とタウリンとを反応に用いた実施例である。製造例11−0は、加水分解物11のみを反応に用いた実施例である。製造例11−1〜11−2は、加水分解物11とタウリンとを反応に用いた実施例である。
【0100】
【表15】

【0101】
製造例9−0〜9−3における加水分解物9の添加量は、加水分解物9に含まれるアミノ酸の平均分子量を139とした場合に、ゲニポシド酸のモル量と加水分解物9に含まれるアミノ酸のモル量及びタウリンのモル量の合計モル量とが等モルとなるように調節した。製造例11−0〜11−2における加水分解物11の添加量も、加水分解物11に含まれるアミノ酸の平均分子量を139とした場合に、ゲニポシド酸のモル量と加水分解物11に含まれるアミノ酸のモル量及びタウリンのモル量の合計モル量とが等モルとなるように調節した。
次に、24重量%の水酸化ナトリウム溶液をこれらの混合物に攪拌しながら添加して、pHを4.6にした。この混合物にさらに水を加え、液量を200gにした。次に、0.9gのセルラーゼAP5(天野エンザイム株式会社)を添加し、そして三角フラスコ内をアルゴンガスで置換した後にアルミホイルで蓋をして、53℃で22時間、酵素反応をさせた。反応後、加熱器(ヤマト科学株式会社、ウォーターバスインキュベーターBT−25)により、反応物を90℃で1時間加熱した。その後、当該反応物を、水浴(室温)中で約30分間放冷した。当該放冷によって当該反応物が50℃程度になった時点で1.5mlエッペンドルフチューブに当該反応物を採取し、冷却遠心機(エッペンドルフ株式会社、冷却遠心機5415R)により、当該反応物を12000rpmで5分間遠心分離し上清を得た。得られた上清が、赤色素(以下、製造例9−0〜9−3の赤色素をそれぞれ、「赤色素19−0」〜「赤色素19−3」といい、製造例11−0〜11−2の赤色素をそれぞれ、「赤色素20−0」〜「赤色素20−2」という)である。
【0102】
(比較例10)
上記フラスコのそれぞれに、各種量の加水分解物9及び11並びにタウリンを添加した。表16に、加水分解物9及び11の添加量、タウリンの添加量、加水分解物中のアミノ酸含有量、並びに当該アミノ酸含有量に対するタウリンの重量の割合(%)を示す。加水分解物9及び11の添加量及びタウリンの添加量を下記表16のとおりに変更した以外は、実施例9と同じ方法で赤色素を製造した。
【0103】
【表16】

【0104】
比較例9−4で得られた赤色素を「赤色素19−4」といい、比較例11−3及び11−4で得られた赤色素をそれぞれ「赤色素20−3」及び「20−4」という。
【実施例10】
【0105】
実施例9の赤色素19−0〜19−3、赤色素20−0〜赤色素20−2、並びに比較例10の赤色素19−4、20−3及び20−4の色力、色調及び耐酸性を測定し並びにアントシアニン色素と混合したときの濁りや沈殿の生成による色力の低下を試験した
【0106】
色力及び色調の測定結果を表17に示す。
【0107】
【表17】

【0108】
表17に示された結果より、実施例の赤色素では、Lが70以上であり且つaが30以上であった。bが−8以下であった。従って、上記実施例の赤色素は、上記比較例の赤色素と比較して、明るくそして鮮やかな色調を有する。すなわち、加水分解物中のアミノ酸含有量に対するタウリンの重量の割合が40重量%以下である場合に、得られた赤色素は明るくそして鮮やかな色調を有する。しかし、タウリンの添加量が増えるに従って、色力が下がる傾向にあり、色調においてもL、a及びbの値が下がる傾向にある。すなわち、明度が低下し、赤みが減り、青みが増した。
【0109】
実施例9の赤色素19−0〜19−3、赤色素20−0〜赤色素20−2、並びに比較例10の赤色素19−4、20−3及び20−4の耐酸性を評価した。耐酸性の評価は、赤色素を希釈する時のpHを3.0、3.2及び3.5としたこと以外は、実施例4に記載の方法と同じ方法により行った。耐酸性の評価結果を表18に示す。耐酸性の評価基準は、pH3.5における色素残存率が90%以上であれば非常に良好(◎)であり、75%以上90%未満であれば良好(○)であり、75%未満であれば不良(×)である。
【0110】
【表18】

【0111】
表18に示された結果より、pH3.5において、赤色素19−0の色素残存率は40.9%であるのに対して、実施例の赤色素19−1〜19〜3及び比較例の赤色素19−4の色素残存率は100%であった。すなわち、実施例の赤色素19−1〜19−3及び比較例の赤色素19−4の耐酸性は非常に良好であった。pH3.2においても、赤色素19−1の耐酸性は良好であり、実施例の赤色素19−1〜19〜3及び比較例の赤色素19−4の耐酸性は非常に良好であった。pH3.0では、実施例の赤色素19−3及び比較例の19−4の耐酸性が非常に良好であった。すなわち、タンパク質加水分解物中に含まれるタウリンの量が多ければ多いほど、耐酸性が高まる傾向にあることがわかる。赤色素20−0〜20−4についても、同じ傾向がみられた。
上記色調の結果と耐酸性の結果を考慮すると、本発明の製造方法においてタンパク質加水分解物中のアミノ酸含有量に対するタウリンの重量の割合が35重量%以下である場合に、明るくそして鮮やかな色調を有する赤色素が得られ、且つ、得られた赤色素の耐酸性も良好である。タンパク質加水分解物中のアミノ酸含有量に対するタウリンの重量の割合が35重量%超〜40重量%の場合、タンパク質加水分解物のアミノ酸含有量のうちのグルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量の下限が92%超、好ましくは93%超である場合に、明るくそして鮮やかな色調を有する赤色素が得られ、且つ、得られた赤色素の耐酸性も良好である。
【0112】
赤色素をアントシアニン系色素と混合したときの沈殿生成について評価した。当該評価において用いたアントシアニン系色素は、アカキャベツ色素(KCレッドAC、神戸化成株式会社)である。当該評価において用いた本願発明の赤色素は、実施例9で製造した赤色素である。実験手順は以下の通りである。
10mlの目盛り付き蓋付試験管に、pH3.5の上記McIlvaine緩衝液を5ml加えておき、上記赤色素をそれぞれ50u(pH3.5における530nmでの色素量に基づく)添加した。次に、当該試験管にアントシアニン系色素を50u(pH3.5における530nmでの色素量に基づく)添加し、さらに上記緩衝液を加えて、試験管の目盛りで10mlにした後、よく振盪混合した。両色素の混合液を冷蔵庫で一晩静置した。次に、当該混合液を振盪後に、720nmにおける吸光度を測定した。次に、3000rpmで10分間当該混合液を遠心分離し、上清を上記緩衝液により4倍希釈し、その後530nmにおける吸光度を測定した。上記測定波長のうち、測定波長720nmは、混合液中に形成された濁りや沈殿を測定する波長である。すなわち、測定波長720nmにおける吸光度が大きいほど、混合液中に濁りや沈殿がより多く生成されている。一方、530nmにおける測定波長は、赤色素を測定する波長である。すなわち、測定波長530nmにおける吸光度が大きいほど、より多くの赤色素が沈殿生成せずに混合液中に残っている。表19は、吸光度の測定結果を示す。なお、吸光度測定は4倍希釈した液体について行われたので、表19中のデータは測定値そのものに4を乗じた値である。
【0113】
【表19】

【0114】
測定波長720nmにおいて、赤色素19−0の吸光度よりも、赤色素19−1の吸光度のほうが小さく、赤色素19−2、19−3及び19−4は、さらに吸光度が小さい。これは赤色素20−0〜20−4についても同じである。測定波長530nmにおいて、赤色素19−0の吸光度よりも、赤色素19−1の吸光度のほうが大きく、赤色素19−2、19−3及び19−4の場合は、さらに吸光度が大きい。これは赤色素20−0〜20−4についても同じである。即ち、赤色素の製造において、タウリンを反応に用いない場合よりも、タウリンを用いた場合のほうが、アカキャベツ色素と混合しても濁りや沈殿の生成がより少なく、且つ、混合液中の上清に残る赤色素の量がより多い。
また、アカキャベツ色素の試験結果及び上記色調の測定結果を考慮すると、本発明の製造方法において、タウリンとタンパク質加水分解物とをイリドイド化合物と反応させ、且つ、タンパク質加水分解物中のアミノ酸含有重量に対するタウリンの含有量が40重量%以下である場合に、明るくそして鮮やかな色調を有する赤色素が得られ、得られた赤色素はアカキャベツ色素と混合しても濁りや沈殿の生成がより少なく、且つ混合液中の上清に残る赤色素の量がより多い。
【0115】
次に、種々のアントシアニン系色素と本願発明の赤色素との混合液の沈殿形成について試験した。当該評価において用いたアントシアニン系色素は、アカキャベツ色素(KCレッドAC、神戸化成株式会社)、ムラサキイモ色素(KCレッドNNK、神戸化成株式会社)、アカダイコン色素(KCレッドRD−2、神戸化成株式会社)、ムラサキコーン色素(TSレッド・MZA、株式会社タイショーテクノス)、エルダベリー色素(神戸化成株式会社)及びグレープスキン色素(TSレッド、株式会社タイショーテクノス)である。当該評価において用いた本願発明の赤色素は、実施例9で製造した赤色素のうち、赤色素19−0及び赤色素20−0並びに赤色素19−2及び赤色素20−2である。実験手順は上記アカキャベツ色素と本願発明の赤色素との混合液についての試験と同じである。表20に、吸光度の測定結果を示す。
【0116】
【表20】

【0117】
測定波長720nmにおいて、いずれのアントシアニン系色素においても、赤色素19−0の吸光度よりも赤色素19−2の吸光度のほうが小さい。これは赤色素20−0及び20−2についても同じである。測定波長530nmにおいて、いずれのアントシアニン系色素においても、赤色素19−0の吸光度よりも赤色素19−2の吸光度のほうが大きい。これは赤色素20−0及び20−2についても同じである。すなわち、上記表18において示された沈殿生成量の減少効果が、アカキャベツ色素だけでなく、他のアントシアニン系色素についても確認された。
【実施例11】
【0118】
(飲むフルーツゼリー)
以下の配合で、本発明の赤色素を含む、飲むフルーツゼリーを製造した。まず、0.8gのゲル化剤と当該ゲル化剤の5倍量の砂糖(4g)と水とを混合した。次に、当該混合液を90℃まで加熱しながら、ゲル化剤及び砂糖を溶解した。溶解後、混合液を75℃に冷却した。冷却後、残りの原料を添加し、そして混合液のpHが3.8となるようにクエン酸を添加し且つ混合液の全重量が100gとなるように水を添加した。得られた混合液を、飲料用容器に充填し、シールし、そして83℃で20分間殺菌を行った。殺菌後、混合液を冷却し、飲むフルーツゼリーを得た。
<配合>
砂糖 18 重量部
1/5濃縮果汁 6 重量部
ホワイトリカー 2 重量部
ゲル化剤 0.8 重量部
実施例1の赤色素1 0.05 重量部
(色価E10%が100に相当する濃さの色素)
水 全体が100重量部となる量
クエン酸 pH=3.8となる量
【0119】
色価E10%とは、着色料溶液の極大吸収波長における吸光度を、10重量/容量%相当溶液の吸光度に換算した数値である。
【実施例12】
【0120】
(羊羹)
以下の配合で、本発明の赤色素を含む羊羹を製造した。まず、寒天と水とを混合し、混合液を15分間沸騰させながら寒天を溶解した。溶解液を70℃まで冷却した後、残りの原料を添加し、そして攪拌して溶解した。最後に、溶解液の全量が約100gになるまで煮詰め、その後容器に充填した。充填後、冷却し、羊羹を得た。
<配合>
生餡 44 重量部
砂糖 51 重量部
水あめ 5 重量部
寒天 0.6 重量部
実施例2の赤色素2 0.1 重量部
(色価E10%が100に相当する濃さの色素)
水 25 重量部
【実施例13】
【0121】
(清涼飲料)
以下の配合で、本発明の赤色素を含む清涼飲料を製造した。原料を熱湯に溶解後、飲料容器に充填した。熱湯溶解後の溶液のpHは3.8であった。
<配合>
砂糖 30 重量部
液糖 25 重量部
クエン酸ナトリウム 1 重量部
ビタミンC 0.5 重量部
実施例2の赤色素3 0.05 重量部
(色価E10%が100に相当する濃さの色素)
熱湯 全体が100重量部となる量
クエン酸 pH=3.8となる量
香料 適量
【実施例14】
【0122】
(ゼリー)
以下の配合で、本発明の赤色素を含むゼリーを製造した。1.2gのゲル化剤と当該ゲル化剤の5倍量の砂糖(6g)と水とを混合した。次に、当該混合液を90℃まで加熱しながら、ゲル化剤及び砂糖を溶解した。次に、当該溶解液を75℃に冷却した。冷却後、残りの原料を添加し及び攪拌して溶解した。この溶解液のpHは3.8であった。当該溶解液をゼリー容器に充填し、シールし、83℃で20分間殺菌を行った。殺菌後、当該溶解液を冷却しゼリーを得た。
<配合>
砂糖 16 重量部
クエン酸ナトリウム 1 重量部
リンゴ酸 1.35 重量部
ゲル化剤 1.2 重量部
実施例2の赤色素4 0.05 重量部
(色価E10%が100に相当する濃さの色素)
水 全体が100重量部となる量
クエン酸 pH=3.8となる量
香料 適量
【実施例15】
【0123】
(ガム)
以下の配合で、本発明の赤色素を含むガムを製造した。ガムベースに他の原料を練りこみ、ガムを製造した。
<配合>
ガムベース 99.5 重量部
アスコルビン酸 0.1 重量部
実施例3の赤色素5 0.05 重量部
(色価E10%が100に相当する濃さの色素)
50重量%クエン酸水 0.35 重量部
【実施例16】
【0124】
(ハードキャンディー)
以下の配合で、本発明の赤色素を含むハードキャンディーを製造した。砂糖とクチナシ赤色素を水あめに添加し、そして混合した。次に、当該混合物を120℃まで加熱した。その後、混合物を70℃まで冷却し、そして次に残りの原料を混合した。最後に、当該混合物を成型してハードキャンディーを調製した。
砂糖 45 重量部
水あめ 55 重量部
クエン酸 1.5 重量部
アスコルビン酸 0.5 重量部
実施例5の赤色素11 0.1 重量部
(色価E10%が100に相当する濃さの色素)
香料 適量
【実施例17】
【0125】
(寒天ゼリー)
以下の表21配合で、本発明の赤色素を含む寒天ゼリーを製造した。
【0126】
【表21】

【0127】
なべに水を入れ、攪拌しながら、寒天、エリスリトール(5g)、アセスルファムK並びにスクラロースを、ままこを生成しないように少量ずつ加えた。そして、なべを加熱して5分間沸騰させた。残りのエリスリトール及びクエン酸三ナトリウムをさらに添加し、溶解させた。溶解液を75℃まで冷却し、L-アスコルビン酸、着色料、香料、さとうきび抽出物及びpH調整剤を添加し混合した。仕上がり重量を確認し、容器に充填し、そしてシールした。その後、85℃、30分間殺菌した。殺菌後、速やかに冷却して、寒天ゼリーを得た。
【実施例18】
【0128】
(ハードキャンディー)
以下の表22配合で、本発明の赤色素を含むハードキャンディーを製造した。
【0129】
【表22】

【0130】
グラニュ糖、水飴、水をなべに入れ、混ぜながら火にかけた。煮詰めて、155℃になったら火からおろした。その後、100℃以下になったら、クエン酸、色素、香料を混合したものを入れ、全体が均一になるまで良く混ぜた。得られたキャンディ生地を引き伸ばし、型に入れて成形し、ハードキャンディーを得た。
【実施例19】
【0131】
(炭酸飲料)
以下の表23の配合で、本発明の赤色素を含む炭酸飲料を製造した。
【0132】
【表23】

【0133】
炭酸水以外の材料を混合し、60℃で30分間滅菌した。滅菌後、混合液を冷却し、冷却後に炭酸水と当該混合液とを混合した。
【実施例20】
【0134】
(pH3.5以下の飲料)
以下の表24の配合で、本発明の赤色素を含む飲料を製造した。
【0135】
【表24】

【0136】
上記原料を混合し溶解した。195gずつ缶に充填しシールした。飲料のpHは、3.5以下であった。
【実施例21】
【0137】
(pH3.5以下の飲料)
以下の表25の配合で、本発明の赤色素を含む飲料を製造した。
【0138】
【表25】

【0139】
上記原料を混合し溶解した。195gずつ缶に充填し、シールした。飲料のpHは、3.5以下であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有するイリドイド化合物とタンパク質加水分解物及びタウリン又はタウリン含有物質とを反応させて赤色素を製造する方法であって、前記タンパク質加水分解物において、該加水分解物の乾燥重量に対するアミノ酸含有量が35重量%以上であること及び、ニンヒドリン法で測定した場合に、前記アミノ酸のうち50重量%以上がグルタミン酸及びアスパラギン酸であり且つ前記グルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの重量の割合が8%以下であることを特徴とし、且つ、当該タウリンの量又は当該タウリン含有物質に含まれるタウリンの量が前記タンパク質加水分解物中のアミノ酸含有量に対して0重量%超〜35重量%であることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
ニンヒドリン法で測定した場合に、前記グルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するプロリンの重量の割合が15%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記赤色素が、Lab表色系において、Lが70以上であり且つaが30以上である色調を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記赤色素が、Lab表色系において、Lが70以上であり、aが30以上であり、且つbが−8以下である色調を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質加水分解物がグルテン加水分解物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記赤色素が、Lab表色系において、Lが70以上であり且つaが30以上である色調を有し、及び前記タンパク質加水分解物がグルテン加水分解物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記赤色素が、Lab表色系において、Lが70以上であり、aが30以上であり、且つbが−8以下である色調を有し、及び前記タンパク質加水分解物がグルテン加水分解物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られた赤色素を含む飲食品。

【公開番号】特開2012−36334(P2012−36334A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179678(P2010−179678)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【特許番号】特許第4605824号(P4605824)
【特許公報発行日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(501190941)三井製糖株式会社 (52)
【Fターム(参考)】